JP2005154637A - アクリル系ブロック共重合体組成物 - Google Patents

アクリル系ブロック共重合体組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐薬品性、ならびに接着性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物を提供すること。更に詳しくは、耐エタノール性、ならびに、ウレタンとの接着性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)アクリル系ブロック共重合体100重量部と、(B)エステル系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤、炭化水素系滑剤、及びシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種0.1〜20重量部、を含有することを特徴とする組成物により達成される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐薬品性、ならびに接着性に優れた、アクリル系ブロック共重合体組成物に関するものである。更に詳しくは、耐エタノール性、ならびに、ウレタンとの接着性に優れた、アクリル系ブロック共重合体組成物に関するものである。また、パウダースラッシュ成型用の組成物、および、その組成物を用いたパウダースラッシュ成型品に関するものである。
メタアクリル酸メチルなどをハードセグメント、アクリル酸ブチルなどをソフトセグメントに有するアクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーとしての特性を有することが知られている。たとえば、イニファーター法で製造したメタアクリルブロックとアクリルブロックを有するアクリル系ブロック共重合体の機械特性が開示されている(特許文献1)。
アクリル系ブロック共重合体は、耐候性、耐熱性、耐久性および耐油性に優れるという特徴を有している。また、ブロック体を構成する成分を適宜選択することで、スチレン系ブロック体などの他の熱可塑性エラストマーに比べて極めて柔軟なエラストマーを与えることが可能である。
このようなアクリル系ブロック共重合体の特性を活かした用途として、種々の表皮材、内装材、その他触感を生かして直接人手に触れる部材の材料としての展開が期待されている。これら表皮材などに必要な物性として、機械特性、耐擦り傷性、耐熱性、歪回復性などに加えて、接触可能性のある薬剤に対する耐性、さらに表皮と基材とを直接接着させる場合には表皮と基材との接着性、表皮と基材との間に緩衝材を設ける場合には表皮と緩衝材との接着性が挙げられる。この表皮材の成形方法として、たとえば、パウダースラッシュ成型があり、生産性、触感、シボ転写性のバランスから好ましい。パウダースラッシュ成形とは、原料となる樹脂パウダーを成形金型に流し込み、溶融成形させ、ある一定時間経過後に冷却固化された成形体を取り出す方法である。
しかしながら、耐薬品性は、アクリル系ブロック共重合体の組成設計に左右される事が多く、通常の手法では改善することが困難であることが予想される。具体的には、耐薬品性に劣るアクリル系ブロック共重合体に、耐薬品性に優れるポリマーを少量ブレンドしても、飛躍的な改善は困難であることが予想される。
さらに、アクリル系ブロック共重合体の製造過程において、ブロッキング防止剤として添加している成分が、特定の材料との接着性、具体的にはウレタンフォームとの接着性を阻害することが課題となっている。
特許第2553134号公報
本発明は、耐薬品性、ならびに接着性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物を提供することにある。更に詳しくは、耐エタノール性、ならびに、ウレタンとの接着性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物を提供することにある。また、パウダースラッシュ成型用の組成物、および、その組成物を用いたパウダースラッシュ成型品を提供することにある。
本発明者らは、耐薬品性、ならびに接着性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物について鋭意検討した結果、特定の滑剤の添加が有用であり、更に、それらを併用することで、耐薬品性と接着性を両立可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(A)アクリル系ブロック共重合体100重量部と、(B)エステル系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤、炭化水素系滑剤、及びシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種0.1〜20重量部、を含有することを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物に関する。
好ましい実施態様としては、(A)成分であるアクリル系ブロック共重合体が、メタアクリル系重合体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(A1)10〜60重量%と、アクリル系重合体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(A2)90〜40重量%からなることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系重合体ブロック(A2)が、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、およびアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/又は他のビニル系単量体50〜0重量%からなることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物に関する。
好ましい実施態様としては、(A)成分であるアクリル系ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が30,000〜500,000であることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物に関する。
好ましい実施態様としては、(A)成分であるアクリル系ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下であることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物に関する。
好ましい実施態様としては、(A)成分であるアクリル系ブロック共重合体が、原子移動ラジカル重合により製造されたブロック共重合体であることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物に関する。
好ましい実施態様としては、エステル系滑剤が、50〜90℃の範囲の融点を持つ脂肪酸のエステルであることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物に関する。
好ましい実施態様としては、シリコーンオイルが、25℃における粘度が50〜50,000mm2/sのポリジメチルシロキサンを主成分とするものであることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物に関する。
好ましい実施態様としては、(A)アクリル系ブロック共重合体100重量部、(B1)エステル系滑剤0.5〜5重量部、(B2)シリコーンオイル0.1〜2重量部、
を含有することを特徴とするアクリル系共重合体組成物に関する。
好ましい実施態様としては、パウダースラッシュ成型に使用されることを特徴とするアクリル系共重合体組成物に関する。
また本発明は、上記の組成物を用いた、パウダースラッシュ成型品に関する。
好ましい実施態様としては、自動車内装用の表皮に使用されることを特徴とするパウダースラッシュ成型品に関する。
本発明を用いることにより、耐薬品性と、接着性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物を得ることが可能になる。また、本発明の組成物は、パウダースラッシュ成型に好適に使用できる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明は、耐薬品性と、接着性に優れたアクリル系ブロック共重合体組成物であって、(A)アクリル系ブロック共重合体100重量部と、(B)エステル系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤、炭化水素系滑剤、及びシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種0.1〜20重量部、を含有することを特徴とする。
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体であってもよく、分岐状(星状)ブロック共重合体であってもよく、これらの混合物であってもよい。ブロック共重合体(A)の構造は、必要とされるブロック共重合体(A)の物性に応じて使いわければよいが、コスト面や重合容易性の点から、線状ブロック共重合体であるのが好ましい。
前記線状ブロック共重合体は、いずれの線状ブロック構造のものであってもかまわないが、その物性または組成物にした場合の物性の点から、アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(A1)(以下、重合体ブロック(A1)またはブロック(A1)ともいう)およびアクリル系重合体ブロック(A2)(以下、いずれも重合体ブロック(A2)またはブロック(A2)ともいう)が、一般式:(A1−A2)n、一般式:A1−(A2−A1)n、一般式:(A2−A1)n−A2(nは1〜3の整数)で表わされるブロック共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であることが好ましい。これらの中でも、加工時の取扱い容易性や、組成物にした場合の物性の点から、A1−A2型のジブロック共重合体、A1−A2−A1型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは30,000〜500,000、さらに好ましくは50,000〜40,0000である。数平均分子量が小さいと粘度が低く、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなる傾向があるので、必要とする加工特性に応じて設定される。
ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も特に限定されないが、好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下である。Mw/Mnが1.8を超えるとブロック共重合体の均一性が低下する傾向がある。
ブロック共重合体(A)のメタアクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の組成比は、ブロック(A1)が5〜90重量%、ブロック(A2)が95〜10重量%である。成型時の形状の保持およびエラストマーとしての弾性の観点から、組成比の好ましい範囲は、(A1)が10〜60重量%、(A2)が90〜40重量%であり、さらに好ましくは、(A1)が15〜50重量%、(A2)が85〜50重量%である。(A1)の割合が5重量%より少ないと成形時に形状が保持されにくい傾向があり、(A2)の割合が10重量%より少ないとエラストマーとしての弾性および成形時の溶融性が低下する傾向がある。
エラストマー組成物の硬度の観点からは、(A1)の割合が少ないと硬度が低くなり、また、(A1)の割合が多いと硬度が高くなる傾向があるため、エラストマー組成物の必要とされる硬度に応じて設定することができる。また加工の観点からは、(A1)の割合が少ないと粘度が低く、また、(A1)の割合が多いと粘度が高くなる傾向があるので、必要とする加工特性に応じて設定することができる。
<メタアクリル系重合体ブロック(A1)>
メタアクリル系重合体ブロック(A1)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、メタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(A1)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。また、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸シクロヘキシルなどを共重合させることによって、ガラス転移点を高くすることができる。更には、耐熱性を上げる為に、酸無水物を導入する際の前駆体としてメタアクリル酸−t−ブチルが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(A1)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド化合物などをあげることができる。
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−アミノエチル、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。ケイ素含有不飽和化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。不飽和ジカルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系重合体ブロック(A2)との相溶性などの観点から好ましいものを選択することができる。
(A1)のガラス転移温度は、エラストマー組成物の熱変形の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。(A1)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より低いと、凝集力の低下により、熱変形しやすくなる場合がある。
以上述べた観点から、メタアクリル系重合体ブロック(A1)は、メタアクリル酸メチルを主成分とし、また、ガラス転移点を制御する目的でアクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチルおよびアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を重合してなるブロックであることが好ましい。
<アクリル系重合体ブロック(A2)>
アクリル系重合体ブロック(A2)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、アクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成するアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル系重合体ブロック(A1)を構成する単量体として例示したアクリル酸エステルと同様の単量体をあげることができる。
これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ゴム弾性、低温特性およびコストのバランスの点で、アクリル酸−n−ブチルが好ましい。さらに低温特性と機械特性と圧縮永久歪が必要な場合は、アクリル酸−2−エチルヘキシルを共重合させればよい。耐油性と機械特性が必要な場合は、アクリル酸エチルが好ましい。また、低温特性と耐油性の付与、及び樹脂の表面タック性の改善が必要な場合は、アクリル酸−2−メトキシエチルが好ましい。また、耐油性および低温特性のバランスが必要な場合は、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルの組み合わせが好ましい。そして、耐熱性を上げる為に、酸無水物基を導入する際の前駆体として、アクリル酸−t−ブチルが好ましい。
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物としては、アクリル系重合体ブロック(A2)を構成する単量体として例示したものと同様の単量体をあげることができる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(A2)に要求されるガラス転移温度および耐油性、メタアクリル系重合体ブロック(A1)との相溶性などのバランスの観点から、好ましいものを選択することができる。
アクリル系重合体ブロック(A2)のガラス転移温度は、エラストマー組成物のゴム弾性の観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。アクリル系重合体ブロック(A2)のガラス転移温度が、エラストマー組成物の使用される環境の温度より高いとゴム弾性が発現されにくいので不利である。
以上述べた観点から、アクリル系重合体ブロック(A2)は、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチル及びアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする単量体を重合してなるブロックであることが好ましい。
<ブロック共重合体(A)の製造方法>
(重合)
製造方法としては、特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合および近年開発されたリビングラジカル重合をあげることができる。リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造制御の点ならびに架橋性官能基を有する単量体を共重合できる点から好ましい。
リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれ、本発明におけるリビングラジカル重合は、重合末端が活性化されたものと不活性化されたものが平衡状態で維持されるラジカル重合であり、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(Journal of American Chemical Society,1994,116,7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules,1994,27,7228)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される(例えば、Matyjaszewskiら, Journal of American Chemical Society,1995,117,5614、Macromolecules,1995,28,7901、Science,1996,272,866、またはSawamotoら, Macromolecules,1995,28,1721)。
これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み時の比率によって自由にコントロールすることができる。
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物を使用できる。これらは目的に応じて使い分けることができる。ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましい。x−y−x型のトリブロック共重合体、y−x−y型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用することが好ましい。分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用することが好ましい。
一官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
65−CH2
65−CHX−CH3
65−C(CH32
1−CHX−COOR2
1−C(CH3)X−COOR2
1−CHX−CO−R2
1−C(CH3)X−CO−R2
1−C64−SO2
式中、C64はフェニレン基を表わす。フェニレン基は、オルト置換、メタ置換およびパラ置換のいずれでもよい。R1は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。R2は炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。
二官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
X−CH2−C64−CH2−X
X−CH(CH3)−C64−CH(CH3)−X
X−C(CH32−C64−C(CH32−X
X−CH(COOR3)−(CH2n−CH(COOR3)−X
X−C(CH3)(COOR3)−(CH2n−C(CH3)(COOR3)−X
X−CH(COR3)−(CH2n−CH(COR3)−X
X−C(CH3)(COR3)−(CH2n−C(CH3)(COR3)−X
X−CH2−CO−CH2−X
X−CH(CH3)−CO−CH(CH3)−X
X−C(CH32−CO−C(CH32
X−CH(C65)−CO−CH(C65)−X
X−CH2−COO−(CH2n−OCO−CH2−X
X−CH(CH3)−COO−(CH2n−OCO−CH(CH3)−X
X−C(CH32−COO−(CH2n−OCO−C(CH32−X
X−CH2−CO−CO−CH2−X
X−CH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X
X−C(CH32−CO−CO−C(CH32−X
X−CH2−COO−C64−OCO−CH2−X
X−CH(CH3)−COO−C64−OCO−CH(CH3)−X
X−C(CH32−COO−C64−OCO−C(CH32−X
X−SO2−C64−SO2−X
式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基または炭素数7〜20アラルキル基を表わす。C64はフェニレン基を表わす。フェニレン基は、オルト置換、メタ置換およびパラ置換のいずれでもよい。C65はフェニル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。
多官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
63(CH2X)3
63(CH(CH3)−X)3
63(C(CH32−X)3
63(OCO−CH2X)3
63(OCO−CH(CH3)−X)3
63(OCO−C(CH32−X)3
63(SO2X)3
式中、C63は三置換フェニル基を表わす。三置換フェニル基は、置換基の位置は1位〜6位のいずれでもよい。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。
これらの開始剤として用いられうる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基、フェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御することができる。
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としてはとくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体をあげることができる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。
1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などをあげることができる。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために、2,2′−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加することもできる。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh33)も触媒として使用する事ができる。
ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加することもできる。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh32)、および、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu32)も触媒として使用できる。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、特に限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定することができる。
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種溶媒中で行なうことができる。前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などをあげることができ、これらは少なくとも1種を混合して用いることができる。また、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする反応速度(即ち、撹拌効率)の関係から適宜決定することができる。
また、前記原子移動ラジカル重合は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは50〜150℃の範囲で行なわせることができる。前記原子移動ラジカル重合温度が室温より低いと粘度が高くなり過ぎて反応速度が遅くなる場合があるし、200℃を超えると安価な重合溶媒を使用できない場合がある。
前記原子移動ラジカル重合により、ブロック共重合体を製造する方法としては、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などをあげることができる。これらの方法は、目的に応じて使い分けることができる。製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
(重合触媒などの除去)
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、有機酸を添加して金属錯体を除去する。引き続き、吸着処理により不純物を除去することで、アクリル系ブロック共重合体溶液を得ることができる。
使用することができる有機酸は、特に限定されないが、カルボン酸基、もしくは、スルホン酸基を含有することが好ましい。
その中でも、有機溶媒への分散しやすさ、酸と金属錯体の反応との生成物の性状、入手しやすさなどから、ベンゼンスルホン酸もしくはその誘導体が好ましく、それらの中ではp−トルエンスルホン酸がより好ましい。
本発明で使用する有機酸の量は、銅を中心とする金属錯体に含有される銅1mol当たり、有機酸1mol以上であることが好ましい。また、配位子の配位座1mol当たり、使用する有機酸の量は0.5mol以上であることが好ましく、1.0mol以上であることが更に好ましい。但し、有機酸の量を増やす程反応時間は短縮されるものの、コストの観点、余剰の有機酸を除く必要の観点などを考慮すると、反応時間を勘案した必要量に抑えることが望ましい。
本発明の、有機酸の添加による反応は、無溶媒(ポリマーの融液)または各種の溶媒中で行うことができる。
反応の結果生成した金属塩を除去する方法は特に制限されないが、必要に応じて、フィルタープレスなどの濾過、デカンテーション、遠心沈降など公知の方法を使用することが出来る。また必要に応じて、金属塩を除去せずに、次の中和工程に進むことも可能である場合がある。しかしこの場合でも、中和工程終了後には金属塩を除去しなければならない。金属塩が固体状アクリル系ブロック共重合体に残存した場合は、減圧押出機による揮発成分除去中に重合体劣化を起こしていたり、成形体の着色や、機械物性低下などの悪影響を及ぼす恐れがある。
重合体と、銅を中心金属とする金属錯体を含有する混合物に、有機酸を添加することで金属錯体を除去した後、系が酸性側に寄ることがあり、それが問題になる場合がある。その場合は、系を中和させる工程が必要になる。系を中和させる方法としては既知の方法を使用することができ、特に制限はないが、たとえば、塩基性の固体を使用する方法があげられる。塩基性の固体の例としては、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体などをあげることができる。塩基性吸着剤としては、キョーワード500SH(協和化学製)などをあげることができる。固体無機酸としては、Na2O、K2O、MgO、CaOなどをあげることができる。陰イオン交換樹脂としては、スチレン系強塩基性陰イオン交換樹脂、スチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂、アクリル系弱塩基型陰イオン交換樹脂などをあげることができる。
上記中和工程時に添加した吸着剤を除去する方法は特に制限されないが、必要に応じて、フィルタープレスなどの濾過、デカンテーション、遠心沈降など公知の方法を使用することが出来る。
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒及び未反応モノマーを除去してアクリル系ブロック共重合体を単離する。蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横形蒸発方式などを用いることができる。アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、上記蒸発方式の中でも押出しスクリューを備えた横形蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
(官能基変換)
重合反応により重合体ブロックに導入された単量体のエステル部位を必要に応じて官能基変換反応させることによりカルボキシル基、酸無水物基を導入することができる。
カルボキシル基を有するブロック共重合体の合成方法としては、特に限定はないが、例えば、メタアクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応、たとえば特開平10−298248号公報、および特開2001−234146号公報などに記載の方法によってカルボキシル基を生成させる方法がある。また、下に示す方法により誘導した酸無水物基を加水分解してカルボキシル基を生成させる方法もある。
酸無水物基を有するブロック共重合体の合成方法としては、前記のカルボキシル基を有するブロック共重合体を、加熱により脱水もしくは脱アルコール反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。もしくは、メタアクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、上記のように加熱により脱アルコール反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。
この方法により誘導した酸無水物基を有するブロック共重合体は、たとえばオートクレーブ中で精製水と加熱することで加水分解することができ、酸無水物基をカルボキシル基に変換することができる。加水分解の条件は特に制限されないが、200℃で2時間加熱する事などがあげられる。
メタアクリル系重合体ブロック(A1)あるいはメタアクリル系重合体ブロック(A2)中にt−ブチル基が含有される場合は、上記記載方法により、カルボン酸基、またはカルボン酸基と酸無水物基の両方に変換することができる。
<添加剤(B)>
本発明で有用とする添加剤としては、エステル系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤、炭化水素系滑剤、及びシリコーンオイルが挙げられる。
ここでいうポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤には、それぞれ、酸化ポリエチレン系滑剤、酸化ポリプロピレン系滑剤が含まれる。
(A)と(B)との配合比は、(A)アクリル系ブロック共重合体100重量部に対して、(B)エステル系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤、炭化水素系滑剤、及びシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種0.1〜20重量部である。0.1重量部より少ない場合には、改善の効果が劣る場合があり、20重量部より多い場合には、成形不良などを引き起こす場合がある。
このうち、エステル系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤および炭化水素系滑剤は耐エタノール性の向上に効果がある。物性発現のメカニズムはいまだ詳細には分かっていないが、配合されたこれらの滑剤が、成形体表面に浸出することで保護皮膜を形成するためと推定される。従って、これらの滑剤のうちどれが好ましいかは、加工温度、アクリル系ブロック共重合体(A)の組成や分子量、アクリル系ブロック共重合体(A)との極性や粘度の関係によって左右されるが、幅広い加工温度に対応することができ、アクリル系ブロック共重合体(A)とある親和性があることから、エステル系滑剤が好ましい。また、これらの配合量は、効果と、その他の物性に及ぼす影響を勘案して、(A)100重量部に対して、(B1)0.5〜5重量部であることが好ましい。0.5重量部未満の場合は、効果が不十分となりやすい。また、5重量部を越えて20重量部以下の場合も、別途述べる目的のために使用可能である。
また、ポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤、炭化水素系滑剤、およびシリコーンオイルは、ウレタンとの接着性との向上に効果がある。物性発現のメカニズムはいまだ詳細には分かっていないが、配合されたこれらの滑剤・オイルが、成形体表面に浸出することで、アクリル系ブロック共重合体(A)に添加されているブロッキング防止剤の悪影響を打ち消すものと推定される。ブロッキング防止剤としては、一般的に使用されている、ステアリン酸アミドのようなアミド系のものがあげられる。従って、これらの滑剤のうちどれが好ましいかは、加工温度、アクリル系ブロック共重合体(A)の組成や分子量、アクリル系ブロック共重合体(A)との極性や粘度の関係によって左右されるが、幅広い加工温度に対応することができ、少量でも効果が認められることから、シリコーンオイルが好ましい。また、これらの配合量は、効果と、その他の物性に及ぼす影響を勘案して、(A)100重量部に対して、(B2)0.1〜2重量部であることが好ましい。0.1重量部未満の場合は、効果が不十分となりやすい。また、2重量部を越えて20重量部以下の場合も、別途述べる目的のために使用可能である。
もちろん、耐エタノール性の向上に効果がある添加剤と、ウレタンとの接着性との向上に効果がある添加剤を併用してもかまわない。この場合は、(A)100重量部、(B1)エステル系滑剤0.5〜5重量部、(B2)シリコーンオイル0.1〜2重量部とすることが好ましい。
また、アクリル系ブロック共重合体(A)単体ではパウダースラッシュ性に劣る場合には、(A)100重量部に対して、添加剤(B)を5〜20重量部配合することで、パウダースラッシュ性を改善できる場合がある。
以下、滑剤およびオイルの例を挙げるが、もちろんこれらに限定されることなく使用できる。
エステル系滑剤としては、牛脂45硬化油(融点45℃;日本油脂(株)製、以下同じ)、牛脂51硬化油(融点51℃)、牛脂54硬化油(融点54℃)、牛脂極度硬化油(融点60℃)、LicowaxE(滴点79〜85℃;クラリアントジャパン(株)製、滴点は同社カタログより引用、以下同じ)、LicowaxF(滴点77〜83℃)、LicowaxKP(滴点81〜87℃)、LicowaxKP303(滴点86〜92℃)、LicowaxKPS(滴点80〜85℃)、LicowaxKSL(滴点79〜85℃)、LicowaxKFO(滴点86〜92℃)、LicowaxKST(滴点56〜63℃)、LicowaxWE4(滴点78〜85℃)、LicowaxWE40(滴点73〜79℃)、LicowaxBJ(滴点72〜78℃)、LicowaxRT(滴点77〜83℃)、LicowaxKPE(滴点79〜85℃)、LicowaxKLE(滴点82〜88℃)、LicowaxNE(滴点74〜82℃)、LicowaxX102(滴点81〜87℃)などを挙げることが出来る。なお、滴点は融点とは異なる測定方法により得られる数値であるが、類似した数値になると解釈できる。これらの中では、50〜90℃の範囲の融点を持つ滑剤が好ましい。融点が50℃に満たない場合は、保存中におけるブリードが問題になる場合があり、90℃を越える場合は、耐薬剤性が劣る場合がある。さらに、この中では、牛脂極度硬化油が好ましい。
ポリエチレン系滑剤としては、LicowaxPE520(クラリアントジャパン(株)製、以下同じ)、LicowaxPE130、LicowaxPE190、LicowaxPE810、LicowaxPE820、LicowaxPE830、LicowaxPE840、Ceridust130、Ceridust3620、Ceridust3615など、さらに酸化ポリエチレン系滑剤としては、LicolubH12、LicolubH22、LicowaxPED521、LicowaxPED522、LicowaxPED121、LicowaxPED136、LicowaxPED153、LicowaxPED191、LicowaxPED192、LicowaxPED1101、LicowaxPED821、LicowaxPED822、Ceridust3715、Ceridust3719などを挙げることが出来る。
ポリプロピレン系滑剤としては、LicowaxPP230(クラリアントジャパン(株)製、以下同じ)、LicowaxVP−PP220、CeridustVP6071など、さらに酸化ポリプロピレン系滑剤としては、LicomontAR504を挙げることが出来る。
炭化水素系滑剤としては、LicowaxR21(クラリアントジャパン(株)製、以下同じ)、LicolubH4を挙げることが出来る。
シリコーンオイルとしては、TSF451(ジメチルシリコーンオイル;GE東芝シリコーン(株)製、以下同じ)、TSF410(高級脂肪酸変性シリコーンオイル)、TSF4427(アルキルアラルキル変性シリコーンオイル)、TSF4421(アルキル変性シリコーンオイル)、TSF484(メチルハイドロジェンシリコーンオイル)、TSF431(メチルフェニルシリコーンオイル)、TSF4440(ポリエーテル変性シリコーンオイル)、TSF4700(アミノ変性シリコーンオイル)、XF42−B0970(カルビノール変性シリコーンオイル)、TSF4730(エポキシ変性シリコーンオイル)、TSF4770(カルボキシル変性シリコーンオイル)などを挙げることが出来る。この中では、コストや取り扱いやすさの観点から、ジメチルシリコーンオイルが好ましい。また、それらの粘度についても特に限定されないが、25℃における粘度が50〜50,000mm2/sの範囲にあることが好ましい。粘度が50mm2/sに満たない場合には、揮発分が多いことや引火点が低いことが問題になることがあり、粘度が50,000mm2/sを越える場合には、ウレタンとの接着性が劣る場合がある。
<その他の配合物>
本発明の組成物について、製造、加工、成形、流通、製品としての使用、廃棄あるいはリサイクルの過程で必要な性能を満たすために、各種の添加剤を配合することが必要になる場合がある。
成形加工時の熱安定性、成形加工時ならびに長期使用時の耐酸化劣化性などを考えて、安定剤を配合することが望ましい。
安定剤としては、熱劣化防止剤、一次酸化安定剤、二次酸化安定剤を組み合わせて用いることが望ましい。ただし、熱劣化防止剤および/または一次酸化安定剤に限った使用も可能である。
熱劣化防止剤としては、フェノールアクリレート系があげられる。たとえば、スミライザGM、スミライザGS(以上、住友化学工業(株)製)が例示できる。
一次酸化安定剤としては、フェノール系、アミン系があげられる。たとえば、フェノール系としては、スミライザBHT、スミライザMDP−S、スミライザGA−80(以上、住友化学工業(株)製)、イルガノックス1010(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)、また、アミン系としては、スミライザ9A(以上、住友化学工業(株)製)が例示できる。
二次酸化安定剤としては、イオウ系、リン系があげられる。たとえば、イオウ系としては、スミライザTPS、スミライザTP−D(以上、住友化学工業(株)製)、また、リン系としては、Sandstab P−EPQ、Hostanox par24(以上、クラリアントジャパン(株)製)が例示できる。
また、必要に応じて次のような添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、各種重合体、可塑剤、柔軟性付与剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などが挙げられる。これらの添加剤は、組成物が使用される用途などに応じて、適宜最適なものを選択すればよい。
上記の重合体としては、特に限定されないが、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−プロピレン−フッ化ビニリデンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO)、エチレン−アクリルゴム、ノルボルネンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー(TPVC)、およびフッ素系熱可塑性エラストマーなどが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記の可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレートのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコール等のアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチル等のセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチル等のフマル酸誘導体;トリメリト酸トリス−2−エチルヘキシル等のトリメリト酸誘導体;ピロメリト酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノール酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコールおよび一価アルコールなどとのポリマーであるポリエステル系可塑剤、グルコール誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート誘導体等が挙げられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されるいことがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。これらの化合物は、ブロック共重合体(A)の粘度を低くすることが期待できる。市販されている可塑剤としては、チオコールTP(モートン社製)、アデカサイザーO−130P、C−79、UL−100、P−200、RS−735(旭電化社製)などが挙げられる。これら以外の高分子量の可塑剤としては、アクリル系重合体、ポリプロピレングリコール系重合体、ポリテトラヒドロフラン系重合体、ポリイソブチレン系重合体などがあげられる。特に限定されないが、このなかでも低揮発性で加熱による減量の少ない可塑剤であるアジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、グルタル酸誘導体、トリメリト酸誘導体、ピロメリト酸誘導体、ポリエステル系可塑剤、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、などが好ましい。
上記の柔軟性付与剤としては、特に限定はなく、プロセスオイル等の軟化剤;動物油、植物油等の油分;灯油、軽油、重油、ナフサ等の石油留分などが挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイルが挙げられ、より具体的には、パラフィンオイル;ナフテン系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル等が挙げられる。植物油としては、例えばひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パインオイル、トール油等が例示でき、これらの柔軟性付与剤は少なくとも1種用いることができる。
上記の滑剤としては、添加剤(B)以外の次の化合物が挙げられるが、添加剤(B)以外であれば特に限定はなく、モンタン酸系ワックス、ステアリン酸などの有機脂肪酸、ステアリン酸アミドなどの有機酸アミド、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムなど有機酸金属塩などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記の難燃剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモンなどが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記の顔料としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、カーボンブラック、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記の充填剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、無定形フィラー、板状フィラー、針状フィラー、球状フィラー、機能性フィラー、繊維状フィラー、金属粉末などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
無定形フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛(亜鉛華)、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムなど、板状フィラーとして、タルク、マイカ、ガラスフレーク、合成ハイドロタルサイトなど、針状フィラーとして、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウムなど、球状フィラーとして、ガラスビーズ、シリカビーズ、ガラス(シリカ)バルーンなど、機能性フィラーとして金属系導電性フィラー、非金属系導電性フィラー、カーボン系導電性フィラー、磁性フィラー、圧電、焦電フィラー、摺動性フィラーなど、また、繊維状フィラーとしてガラス繊維、金属繊維、アスベスト、ミルドファイバーなどの有機、無機、金属の各種ファイバーなどが例示できる。この中では、コスト、分散性、取り扱いやすさなどから、炭酸カルシウム、シリカが好ましい。また、合成ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムを用いた場合には、アクリル系ブロック共重合体(A)および他の成分に由来する酸成分を中和することができるため、これら成分から出る酸成分がさびを引き起こすことが問題となる使用用途において有用である。
<組成物の製造方法>
組成物の製造方法には特に制限はないが、例えばバッチ式混練装置としてはミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーが使用でき、連続混練装置としては単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いても良い。さらに、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。混練時の温度は、使用するアクリル系ブロック共重合体(A)および添加剤(B)、さらに、それ以外の配合物を使用する場合にあってはそれらの溶融温度、またそれらの溶融粘度などに応じて調整するのがよく、例えば、100〜300℃で溶融混練することにより製造できる。
<成型体の用途および使用方法>
本発明の組成物の成型方法としては、パウダースラッシュ成型が例示されるが、それ以外にも射出成型、射出ブロー成型、ブロー成型、押出ブロー成型、押出成型、カレンダー成型、真空成型、プレス成型などに適用可能である。
得られた成型体は、表皮材料、触感材料、外観材料、耐磨耗性材料、耐油性材料、制振材料、粘着材料のような目的を有する材料として、形状としてはシート、平板、フィルム、小型成型品、大型成型品その他任意の形状として、またパネル類、ハンドル類、グリップ類、スイッチ類のような部品として、さらにそれ以外にもシーリング部材として用いることができる。用途としては、特に制限されないが、自動車用、家庭用電気製品用、または事務用電気製品用が例示される。たとえば、自動車用表皮材料、自動車用触感材料、自動車用外観材料、自動車用パネル類、自動車用ハンドル類、自動車用グリップ類、自動車用スイッチ類として、また、家庭用または事務用電気製品用パネル類、家庭用または事務用電気製品用スイッチ類などを例示することができる。この中でも、自動車内装用表皮に好適に使用される。
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示す分析装置、条件で測定した。
使用機器:島津製作所(株)製ガスクロマトグラフィーGC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製、キャピラリーカラムSupelcowax−10、0.35mmφ×30m
分離条件:初期温度60℃、3.5分間保持
昇温速度40℃/min
最終温度140℃、1.5分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料調整:サンプルを酢酸エチルにより約3倍に希釈し、酢酸ブチルを内部標準物質とした。
<耐エタノール性試験>
本実施例に示す耐エタノール性は以下に示す条件で測定した。
実施例にて作成した、シボ模様のシートを平面に設置し、ピペットにてエタノール(和光純薬(株)製)を1滴滴下し、室温で放置した。その後表面を目視で観察し、跡のないものを5点、わずかに跡が認められるが白化はないものを4点、軽度の跡が認められるが白化はないものを3点、中程度の跡が認められるが白化はないものを2点、白化が認められるものを1点として5点法で評価した。
<ウレタン接着性試験>
実施例に従って組成物をプレス成型して表皮材を作成した。主成分が4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートであるカートリッジタイプポリウレタン(エアータイト(株)製)を金属板上に塗布し、すぐにその発泡体上に表皮材を乗せ接着させた。12時間以上経過した後(完全に発泡体が硬化している状態)で、発泡ウレタンから表皮材を手で剥離させて破壊の状態を観察し、ウレタン材料で破壊が起こっているものを5点、シートとウレタンの界面で破壊が起こっているものを1点として5点法で評価した。
<パウダースラッシュ性試験>
実施例に従って、組成物の塊を作成した。ドライアイスで冷却した小型粉砕機SK−M2(協立理工(株)製)に組成物の塊を投入し、ドライアイスを加えつつ粉砕した。得られたパウダーを、以下の条件にて評価した。
使用機器:皮シボ付金属板(板厚4.5mm、シボ深さ80%)
加熱条件:250℃
加熱時間:1分
冷却時間:5分(空気中で空冷)
評価指標:目視にて、シボ転写性が良好で、ピンホール/気泡がないもの:○、いずれか1つの項目が不良であるもの:△、シボ形成不良個所有りかつピンホール/気泡有るもの:×として評価した。
(製造例1)
窒素置換した500L反応機にアクリル酸n−ブチル53.7kg、アクリル酸−2−メトキシエチル27.2kg、及び臭化第一銅0.649kgを仕込み、攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.905kgをアセトニトリル6.82kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットに温水を通水し、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間撹拌した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン94.5mLを加えて、第一ブロックの重合を開始した。
転化率が95%に到達したところで、トルエン79.1kg、塩化第一銅0.448kg、メタアクリル酸メチル43.5kg、及びペンタメチルジエチレントリアミン94.5mLを加えて、第二ブロックの重合を開始した。転化率が92%に到達したところで、トルエン200kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが67152、分子量分布Mw/Mnが1.37であった。
得られたブロック共重合体溶液に対しトルエン60kgを加えて重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸を1.55kg加え、反応機内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.39kg添加した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m)を用いて固体分を分離した。
濾過後のブロック共重合体溶液約478kgに対し、キョーワード500SH1.79kgを加え反応機内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m)を用いて固体分を分離し、重合体溶液を得た。
引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100(伝熱面積1m2)を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を90Torr、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し重合体溶液の蒸発を実施した。重合体は排出機を通じ、φ4mmのダイスにてストランドとし、アルフローH50ES(主成分:エチレンビスステアリン酸アミド、日本油脂(株)製)の3%懸濁液で満たした水槽で冷却後、ペレタイザーにより円柱状のペレットを得た(重合体ペレット1)。
(製造例2)
窒素置換した500L反応機にアクリル酸n−ブチル53.7kg、アクリル酸−2−メトキシエチル27.2kg、及び臭化第一銅0.609kgを仕込み、攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.611kgをアセトニトリル6.82kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットに温水を通水し、内溶液を75℃に昇温をしつつ30分間撹拌した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン88.7mLを加えて、第一ブロックの重合を開始した。
アクリル酸n−ブチルの転化率が96%に到達したところで、トルエン80.5kg、塩化第一銅0.420kg、メタアクリル酸メチル43.5kg、及びペンタメチルジエチレントリアミン88.7mLを加えて、第二ブロックの重合を開始した。MMAの転化率が95%に到達したところで、トルエン220kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが108300、分子量分布Mw/Mnが1.33であった。その後は製造例1と同様にして、円柱状のペレットを得た(重合体ペレット2)。
(製造例3)
窒素置換した500L反応機にアクリル酸n−ブチル80.5kg、及び臭化第一銅0.648kgを仕込み、攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.904kgをアセトニトリル7.06kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットに温水を通水し、内溶液を75℃に昇温しつつ30分間撹拌した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン94.4mLを加えて、第一ブロックの重合を開始した。
アクリル酸n−ブチルの転化率が90%に到達したところで、トルエン80.0kg、塩化第一銅0.447kg、メタアクリル酸メチル43.2kg、及びペンタメチルジエチレントリアミン94.4mLを加えて、第二ブロックの重合を開始した。MMAの転化率が92%、BAの転化率が98%に到達したところで、トルエン220kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが68300、分子量分布Mw/Mnが1.37であった。
その後は製造例1と同様にして、円柱状のペレットを得た(重合体ペレット3)。
(実施例1)
製造例1で得られた重合体ペレット1を、エステル系滑剤である牛脂極度硬化油(日本油脂(株)製)、カーボンブラック(旭カーボン(株)製、旭#15)によりコンパウンド処理した。ペレット100重量部に対し、牛脂極度硬化油2重量部、カーボンブラック0.5重量部の比率で原料を供給し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて170℃で溶融混練し、ブロック状サンプルを得た。得られたサンプルを設定温度170℃で熱プレス成形し、革シボで修飾されたプレス板にて革シボ模様が転写された厚さ1mmの評価用の成形体を得た。これらの成形体について、耐エタノール性、ウレタン接着性、パウダースラッシュ性を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
牛脂極度硬化油の代わりに、ポリエチレン系ワックスであるLicowaxPE520(クラリアントジャパン(株)製)を2重量部使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、物性を測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
牛脂極度硬化油の代わりに、ポリプロピレン系ワックスであるLicowaxPP230(クラリアントジャパン(株)製)を2重量部使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、物性を測定した。結果を表1に示す。
(実施例4、5、6)
牛脂極度硬化油の代わりに、それぞれ、シリコーンオイルである、TSF451−1000(東芝シリコーン(株)製、以下同じ)、TSF451−12500、TSF451−1Mを0.5重量部使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、物性を測定した。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1において、さらにシリコーンオイルTSF451−1000を0.5重量部追加して使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、物性を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
牛脂極度硬化油を使用しなかったほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、物性を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2005154637
このように、エステル系滑剤である牛脂極度硬化油、ポリエチレン系ワックスであるLicowaxPE520、ポリプロピレン系ワックスであるLicowaxPP230に耐エタノール性向上効果があり、その中でも牛脂極度硬化油が最も優れることが分かる。
また、ポリエチレン系ワックスであるLicowaxPE520、ポリプロピレン系ワックスであるLicowaxPP230、シリコーンオイルである、TSF451−1000、TSF451−12500、TSF451−1Mにウレタン接着性向上効果があり、その中でもTSF451−1000が少量で効果を発揮することが分かる。
(実施例8)
製造例2で得られた重合体ペレット2を、LicowaxPP230、カーボンブラック(旭カーボン(株)製、旭#15)、炭酸カルシウム(備北粉化工業製、ソフトン3200)によりコンパウンド処理した。ペレット70重量部に対し、LicowaxPP230を10重量部、カーボンブラック0.5重量部、炭酸カルシウム30重量部の比率で原料を供給し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて170℃で溶融混練し、ブロック状サンプルを得て、パウダースラッシュ性を測定した。良好な表皮が得られた。結果を表2に示す。
(実施例9)
LicowaxPP230の代わりに、LicolubH4を10重量部使用したほかは、実施例8と同様にしてパウダースラッシュ性を測定した。良好な表皮が得られた。結果を表2に示す。
(比較例2)
添加剤であるLicowaxPP230を配合しなかったほかは、実施例8と同様にしてパウダースラッシュ性を測定した。表皮にはピンホールが見られる結果となった。結果を表2に示す。
Figure 2005154637
このように、パウダースラッシュ性に劣る(A)の場合に、配合剤を10重量部使用することで、パウダースラッシュ性を向上させることが可能であることが分かる。
(実施例10)
製造例3で得られた重合体ペレット3を、エステル系滑剤である牛脂極度硬化油(日本油脂(株)製)、カーボンブラック(旭カーボン(株)製、旭#15)、シリコーンオイル(TSF451−1000)、炭酸カルシウム(備北粉化工業製、ソフトン3200)によりコンパウンド処理した。ペレット70重量部に対し、牛脂極度硬化油2重量部、カーボンブラック0.5重量部、シリコーンオイル0.5重量部、炭酸カルシウム30重量部の比率で原料を供給し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて170℃で溶融混練し、ブロック状サンプルを得た。得られたサンプルを設定温度170℃で熱プレス成形し、革シボで修飾されたプレス板にて革シボ模様が転写された厚さ1mmの評価用の成形体を得た。これらの成形体について、耐エタノール性、ウレタン接着性を測定した。また、パウダースラッシュ性を測定した。良好な表皮が得られた。結果を表3に示す。
Figure 2005154637

Claims (12)

  1. (A)アクリル系ブロック共重合体100重量部と、
    (B)エステル系滑剤、ポリエチレン系滑剤、ポリプロピレン系滑剤、炭化水素系滑剤、及びシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種0.1〜20重量部、
    を含有することを特徴とするアクリル系ブロック共重合体組成物。
  2. (A)成分であるアクリル系ブロック共重合体が、メタアクリル系重合体を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(A1)10〜60重量%と、アクリル系重合体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(A2)90〜40重量%からなることを特徴とする請求項1に記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  3. アクリル系重合体ブロック(A2)が、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、およびアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/又は他のビニル系単量体50〜0重量%からなることを特徴とする請求項2に記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  4. (A)成分であるアクリル系ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が30,000〜500,000であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  5. (A)成分であるアクリル系ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  6. (A)成分であるアクリル系ブロック共重合体が、原子移動ラジカル重合により製造されたブロック共重合体であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  7. エステル系滑剤が、50〜90℃の範囲の融点を持つ脂肪酸のエステルであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  8. シリコーンオイルが、25℃における粘度が50〜50,000mm2/sのポリジメチルシロキサンを主成分とするものであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体組成物。
  9. (A)アクリル系ブロック共重合体100重量部、
    (B1)エステル系滑剤0.5〜5重量部、
    (B2)シリコーンオイル0.1〜2重量部、
    を含有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のアクリル系共重合体組成物。
  10. パウダースラッシュ成型に使用されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のアクリル系共重合体組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の組成物を用いた、パウダースラッシュ成型品。
  12. 自動車内装用の表皮に使用されることを特徴とする請求項11に記載のパウダースラッシュ成型品。
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