JP2005149771A - 緑色植物と酵素固定電極を利用した生物燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 藻類が行う光合成反応と生物燃料電池の原理を利用して、太陽光に依存して半永久的な発電を可能にする植物型生物燃料電池を提供すること。
【解決手段】 糖産生共生藻培養槽でミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)由来の共生藻によって産生された糖を酵素によって転換して得られるグルコースをマイクロフィルタを介して陰極室に導入・濃縮せしめ、該グルコースを陰極に固定化された過酸化水素産生酵素によって酸化して電子を取り出しまた、過酸化水素産生共生藻培養槽でパラコートの存在下に産生された過酸化水素をマイクロフィルタを介して陽極室に導入して陽極に固定化された過酸化水素消去酵素によって分解し電子を受容する反応によって起電力を生ぜしめるようにした緑色植物と酵素固定電極を利用した生物燃料電池。
【選択図】 図1
【解決手段】 糖産生共生藻培養槽でミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)由来の共生藻によって産生された糖を酵素によって転換して得られるグルコースをマイクロフィルタを介して陰極室に導入・濃縮せしめ、該グルコースを陰極に固定化された過酸化水素産生酵素によって酸化して電子を取り出しまた、過酸化水素産生共生藻培養槽でパラコートの存在下に産生された過酸化水素をマイクロフィルタを介して陽極室に導入して陽極に固定化された過酸化水素消去酵素によって分解し電子を受容する反応によって起電力を生ぜしめるようにした緑色植物と酵素固定電極を利用した生物燃料電池。
【選択図】 図1
Description
本発明は、太陽光を透過する容器内で培養した緑藻(ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)由来の共生藻)に光合成産物である糖を産生させて酵素的にグルコースに転換し、一方、共生藻をパラコートの存在下、光化学反応によって過酸化水素を発生せしめ陰陽2種類の酵素固定電極を用いて電力を取り出す緑色植物と酵素固定電極を利用した生物燃料電池による太陽光発電システムに関する。
緑藻を含む光合成生物は、二酸化炭素と水から光合成産生物として糖を合成する。一方、緑藻であるクロレラにパラコート処理を施して太陽光を照射することによって高濃度の過酸化水素を産生させる技術が開発され、航空機燃料などへの利用が検討されているが、過酸化水素から直接的にエネルギを取り出す手段として、過酸化水素を電力に変換する技術も有効である。
過酸化水素産生酵素(グルコースオキシダーゼ等)や消去酵素(ペルオキシダーゼ等)を固定化した電極を用いて、糖と過酸化水素から電力を取り出す生物燃料電池が知られている。この既知の生物燃料電池にあっては、糖やコーンシロップ等を生物燃料電池システムに繰り返し投入する必要がある。反応始動には、一定量の過酸化水素の存在が必要である。
一方、微生物の代謝過程において発生する還元力を細胞表面を通じて消費する微生物を用いることにより、有機物が酸化されるときに発生する還元力を電気エネルギに直接的に転換する生物燃料電池も知られている(たとえば、特許文献1参照)。
特開平10−233226号公報
前記過酸化水素産生酵素(グルコースオキシダーゼ等)や消去酵素(ペルオキシダーゼ等)を固定化した電極を用いて、糖と過酸化水素から電力を取り出す生物燃料電池の場合、糖やコーンシロップ等を生物燃料電池システムに繰り返し投入する必要がある。また、生物燃料電池システムを開閉して糖の注入を繰り返すから、装置内部を滅菌状態に保つことができないため微生物によって電極固定の酵素が分解される。さらに、グルコースオキシダーゼを使う反応においては酸素が消費される。
従来技術においては、(1)夜間に、太陽光に由来する電気エネルギを利用することができない。(2)光合成生物の光合成エネルギを電力に変換することができない。(3)共生藻由来の糖は2糖類或は多糖類であるため、直接電力を取り出せる形のエネルギではない。(4)従来の生物燃料電池にあっては、燃料である糖を外部から供給する必要があり、燃料である糖が消費されてしまえば再供給が必要になる。(5)電池システムが滅菌状態ではないから、糖は微生物によって容易に分解される。また、糖を養分としてカビ等夾雑微生物が多量に発生する。(6)発電時には、密閉状態であるために、酸素の消費に伴いグルコースオキシダーゼ活性が低下する虞がある。
本発明は、上記従来技術における問題を解決し、藻類が行う光合成反応と生物燃料電池の原理を利用して、太陽光に依存して半永久的な発電を可能にする植物型生物燃料電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、グルコースオキシダーゼといった過酸化水素産生酵素を固定化した陰極を有する陰極室と、ペルオキシダーゼといった過酸化水素消去酵素を固定化した陽極を有する陽極室と、ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)由来の共生藻を培養するとともに該共生藻が産生する糖を分解酵素(maltase)を用いてグルコースに転換する糖産生共生藻培養槽と、ミドリゾウリムシ由来の共生藻を培養するとともに該共生藻が死滅しない範囲内の濃度のパラコートの存在下に光化学反応によって過酸化水素を発生する過酸化水素産生共生藻培養槽とからなり、前記糖産生共生藻培養槽で産生された糖を酵素(maltase)によって転換し産生したグルコースをマイクロフィルタを介して陰極室に導入せしめさらに、該グルコースを陰極に固定化された過酸化水素産生酵素によって酸化して電子を取り出しまた、前記過酸化水素産生共生藻培養槽で産生された過酸化水素をマイクロフィルタを介して陽極室に導入して陽極に固定化された過酸化水素消去酵素によって分解し電子を受容する反応によって起電力を生ぜしめるよう構成してなる緑色植物と酵素固定電極を利用した生物燃料電池である。
本発明における共生藻は、光合成により自立的に成育し培養を続け得るから共生藻が生存し続ける限り半永久的に起電力を維持できる。光合成に必要な二酸化炭素は、外気取り込み口からガス透過フィルムを通じて大気中から取り込まれる。グルコース酸化反応で消費される酸素は、共生藻の光合成および外気取り込みフィルタより供給される。
通常、藻類が体外に糖を分泌することはないが、ミドリゾウリムシ由来の共生藻を用いることにより糖を培養液中に蓄積することができる。また、共生藻がグルコースを分泌することはないが、共生藻が分泌したマルトースをマルターゼによって酵素的にグルコースに転換することによって糖からの発電を効率よく行うことができる。さらに、従来の太陽光を利用する発電においては、夜間の電力供給ができない。本発明においては、共生藻が光エネルギを糖および過酸化水素という蓄積・貯蔵可能なエネルギに転換し、糖および過酸化水素から電力を取り出すので夜間であっても蓄積した糖および過酸化水素からの発電が可能であり、24時間利用できる太陽光電池としての機能をもつ。
本発明における糖産生共生藻培養槽と過酸化水素産生共生藻培養槽は、何れも反応生成物である過酸化水素によって滅菌状態に保たれるから微生物の混入がなく、従って、糖が微生物によって分解されることや糖を養分としてカビ等夾雑微生物が大量発生することがなく、糖が有効に酵素反応に利用されるほか、電極に固定化された酵素を微生物による分解から護ることができる。
通常、藻類は、糖を細胞外に放出することはない。従って、藻類を糖の供給源とする場合、培養液中に糖を放出させる工夫が必要である。本発明においては、原生生物であるミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)由来の共生藻を利用している。ミドリゾウリムシの体内には、クロレラに類似した緑藻が共生して光合成に携わっている。この共生藻は、光合成によって産生した糖を細胞外に分泌し、宿主であるミドリゾウリムシに養分として供給している。
宿主とは独立して共生藻を培養する場合でも、宿主からのシグナル物質を単離し利用することで、または培養液のpHを制御することによって共生藻に任意に糖を分泌させることができる。本発明においては、この共生藻を発電システムにおける糖の供給源として用いる。また、共生藻が死滅しない範囲内の低濃度のパラコートを適用することによって、過酸化水素と糖の産生比率を自由に制御することができる。
図1に、本発明の緑色植物と酵素電極を利用した生物燃料電池の概要を示す。図1において、Aは陰極室であって、共生藻培養装置に設置される。陰極室Aには、図1に示すように、グルコースオキシダーゼ(GOX)をフェロセン・グラファイトに固定化した電極(陰極)が配設される。Bは陽極室であり、共生藻培養装置に設置される。この実施例においては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(POX)をフェロセン・グラファイトに固定化した電極(陽極)が配設される。陰極室Aと陽極室Bは、電流を通過させる隔膜Mで仕切られる。そして、陰極と陽極間には、負荷(図1においては、抵抗で示されている。)を配置する。
Cは糖産生共生藻培養槽であって、光を透過するガラス製またはプラスチック製である。培地には、最小限必要なミネラルのみを含み酵素反応に好適な反応液で満たされた液体培地を用いる。培養装置には、外部から大気中の二酸化炭素を取り込む換気口を設ける。この換気口には、液体培地の乾燥を防ぐべく、ガスを透過し水分を透過しないガス交換フィルタを装着する。糖産生共生藻培養槽Cにおいては、必要があれば低pHで共生藻を培養しマルトース等の糖分泌効率を高める。また、糖の産生量は、太陽光等光の照射量によって制御することができる。糖産生共生藻培養槽Cには、マルターゼたとえばα−グルコシダーゼが固定化され、共生藻が産生した糖をグルコースに転換すべく機能する。陰極室Aと糖産生共生藻培養槽C間は、マイクロフィルタで仕切られる。
Dは過酸化水素産生共生藻培養槽であり、光を透過するガラス製またはプラスチック製である。培地には、最小限必要なミネラルのみを含み酵素反応に好適な反応液で満たされた液体培地を用いる。培養装置には、外部から大気中の二酸化炭素を取り込む換気口を設ける。この換気口には、液体培地の乾燥を防ぐべく、ガスを透過し水分を透過しないガス交換フィルタを装着する。過酸化水素産生共生藻培養槽Dには、共生藻が生育できる範囲内の低濃度のパラコート(paraquat)が添加される。このパラコートの添加によって緑藻(共生藻)のもつ光合成能に依存した過酸化水素生成が行われ、糖産生共生藻培養槽Cによる糖産生と過酸化水素産生共生藻培養槽Dによる過酸化水素産生が同時に可能になる。過酸化水素の産生量は、光照射量およびパラコート添加量を調節することによって制御できる。陽極室Bと過酸化水素産生共生藻培養槽D間は、マイクロフィルタで仕切られる。
上記のように構成される本発明の緑色植物と酵素固定電極を利用した生物燃料電池の動作を説明する。本発明の生物燃料電池による太陽光発電においては、ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)由来の共生藻を用いる。通常の植物は、体外に糖を分泌しないが、ミドリゾウリムシ由来の共生藻は、2糖類を培養液中に分泌・蓄積させることができる。図1に示すように、ガラス或は透明プラスチックを通して太陽光が糖産生共生藻培養槽Cおよび過酸化水素産生共生藻培養槽Dに照射され、糖産生共生藻培養槽Cにおいては、培養液中に、光合成によって共生藻が産生した糖が蓄積される。糖としては、主としてマルトースが分泌される。必要に応じて低pHで培養し、マルトース分泌効率を高くする。
糖産生共生藻培養槽Cで共生藻が産生した2糖1分子をマルターゼ(maltase)によってグルコース2分子に転換する。グルコースは、マイクロフィルタを透過して陰極室Aに導入される。陰極において、グルコースが陰極に固定化されているグルコースオキシダーゼ(GOX)によって酸化されて電子が取り出され、電流が流れる。同時に、反応産物として過酸化水素が生成される。酸化反応は、光合成で生じた酸素によって促進される。
過酸化水素産生共生藻培養槽Dにおいてはパラコートの存在下、共生藻が光化学反応によって過酸化水素(H2O2)を放出する。過酸化水素は陽極室Bに移動し、陽極に固定化されているペルオキシダーゼ(POX)によって分解される。その際、電子を受け取る受容体として機能する。陰陽両極での反応によって起電力を生じる。
既存の生物燃料電池の電圧は0.2V程度であり、液晶表示の時計や計算機に利用し得る程度の電力を供給できる。しかし、燃料としての糖類の追加供給なしには電力供給可能時間が非常に短い。本発明の緑植物と酵素固定電極を利用した生物燃料電池においては、発電に直接的に関わる電気化学の原理は既存のシステムと同じであるため同程度の起電力を望める。そして、起電力が半永久的に持続する利点を有する。この長所を実現するためには、陽極側、陰極側それぞれにおいて500ml程度の培養液で107細胞/mlの密度のミドリゾウリムシ由来の共生藻を維持することが必要である。この細胞の量は、通常の培養で容易に調製することができる量である。
本発明の生物燃料電池を直列に接続することで、電圧をより高めることができる。上限8台〜10台程度の生物燃料電池を直列に接続することで、乾電池と同程度の電圧を得ることができる。また、本発明の生物燃料電池を並列に接続することで電流の調節を行い、培養装置のスケールを大きくすることで電力需要に対するキャパシティを増大させることができる。
本発明の緑植物と酵素固定電極を利用した生物燃料電池による太陽光発電は、燃料である糖の補給を行うことなしに半永久的に利用できる。また、共生藻が産生する糖を蓄積・貯蔵できる処から、起電力を夜間でも維持できる。従って、24時間利用可能な太陽光生物燃料電池としての利用が可能である。而して、離島など遠隔地における電子計測機器の電力源として利用できる。また、光合成可能な太陽光存在下での発電を利用して、光合成研究のためのポータブル光合成有効日照量計測機器として利用できる。
A 陰極室
B 陽極室
C 糖産生共生藻培養槽
D 過酸化水素産生共生藻培養槽
− 陰極
+ 陽極
I 電流の流れ
e- 電子の流れ
GOX グルコースオキシダーゼ
POX ペルオキシダーゼ
Symbiotic algae 共生藻
B 陽極室
C 糖産生共生藻培養槽
D 過酸化水素産生共生藻培養槽
− 陰極
+ 陽極
I 電流の流れ
e- 電子の流れ
GOX グルコースオキシダーゼ
POX ペルオキシダーゼ
Symbiotic algae 共生藻
Claims (1)
- 過酸化水素産生酵素を固定化した陰極を有する陰極室と、過酸化水素消去酵素を固定化した陽極を有する陽極室と、ミドリゾウリムシ(Paramecium bursaria)由来の共生藻を培養するとともに該共生藻が産生する糖を分解酵素(maltase)を用いてグルコースに転換する糖産生共生藻培養槽と、ミドリゾウリムシ由来の共生藻を培養するとともに該共生藻が死滅しない範囲内の濃度のパラコートの存在下に光化学反応によって過酸化水素を発生する過酸化水素産生共生藻培養槽とからなり、前記糖産生共生藻培養槽で産生された糖を酵素(maltase)によって転換して得られるグルコースをマイクロフィルタを介して陰極室に導入せしめさらに、該グルコースを陰極に固定化された過酸化水素産生酵素によって酸化して電子を取り出しまた、前記過酸化水素産生共生藻培養槽で産生された過酸化水素をマイクロフィルタを介して陽極室に導入して陽極に固定化された過酸化水素消去酵素によって分解し電子を受容する反応によって起電力を生ぜしめるよう構成してなる緑色植物と酵素固定電極を利用した生物燃料電池。
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