JP2005147868A - 放射線画像変換プレートの製造方法、放射線画像変換プレート - Google Patents

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Abstract

【課題】 輝尽性蛍光体層の厚さを薄くし、高感度で、粒状性にすぐれ、輝尽性蛍光体層厚内での放射線や励起光の拡散が減少し鮮鋭性の優れた放射線画像変換プレートを気相堆積方法により作製する放射線画像変換プレートの製造方法及び放射線画像変換プレートの製造方法により製造する放射線画像変換プレートの提供。
【解決手段】 基材上に少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を気相堆積装置を使用して形成する放射線画像変換プレートの製造方法において、該気相堆積装置は排気手段で減圧される蒸着室と、該蒸着室には基材配置手段と、原料容器内の原料温度を指示温度に保つ原料温度制御手段を有する原料蒸発手段とを有し、該原料温度制御手段により該原料温度の制御を行いながら基材上に原料堆積を行うことを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換プレートの製造方法及びその製造方法により作製された放射線画像変換プレートに関し、詳しくは基材上に気相堆積法により形成された輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換プレートの製造方法及びその製造方法により作製された放射線画像変換プレートに関する。
X線画像のような放射線画像は、病気診断用等の分野で多く用いられている。このX線画像を得る方法としては、被写体を通過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせた後、この可視光を通常の写真を撮るときと同様にして、ハロゲン化銀写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)に照射し、次いで現像処理を施して可視銀画像を得る、いわゆる放射線写真方式が広く利用されている。
しかしながら、近年では、ハロゲン化銀塩を有する感光材料による画像形成方法に代わり、蛍光体層から直接画像を取り出す新たな方法が提案されている。
この方法としては被写体を透過した放射線を蛍光体に吸収せしめ、しかる後この蛍光体を例えば光または熱エネルギーで励起することによりこの蛍光体が上記吸収により蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を検出し画像化する方法が開示されている。
具体的には、例えば、米国特許第3,859,527号及び特開昭55−12144号等に開示されている様に基材上に輝尽性蛍光体層を形成した放射線画像変換プレートを使用するものである。この方法は、この放射線画像変換プレートの輝尽性蛍光体層に被写体を透過した放射線をあてて、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを輝尽性蛍光体層に蓄積させて潜像(蓄積像)を形成し、その後、この輝尽性蛍光体層を輝尽励起光(レーザ光が用いられる)で走査することによって各部に蓄積された放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号を、例えば、光電変換して、電気信号を得て、この信号をハロゲン化銀写真感光材料等の記録材料、CRT等の表示装置上に可視像として再生するものである。
上記の放射線画像の再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せによる放射線写真法と比較して、はるかに少ない被曝線量で、かつ情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点を有している。
このように輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用的には、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線画像変換プレートは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ、繰り返し使用が可能である。つまり従来の放射線写真法では、一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法では放射線画像変換プレートを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
この放射線画像変換プレートには、基材上に結着樹脂溶液の蛍光体粒子分散液を塗布乾燥する方法によって形成された分散タイプの輝尽性蛍光体層を有するものと、基材上に気相堆積法によって形成された蒸着タイプの輝尽性蛍光体層を有するものとがあり、何れにしても放射線画像変換プレートの輝尽性蛍光体層には、放射線吸収率及び光変換率が高いこと、画像の粒状性がよく、高鮮鋭性であることが要求される。
通常、放射線感度を高くするには輝尽性蛍光体層の膜厚を厚くする必要があるが、余り厚くなりすぎると、輝尽性蛍光体粒子間での輝尽発光の散乱のため発光が外部に出てこなくなる現象があり限界がある。鮮鋭性については、輝尽性蛍光体層を薄層化するほど向上するが、薄すぎると感度の減少が大きくなる。又、粒状性についても画像の粒状性は放射線量子数の場所的ゆらぎ(量子モトル)或いは放射線画像変換プレートの輝尽性蛍光体層の構造的乱れ(構造モトル)等によって決定されるので、輝尽性蛍光体層の層厚が薄くなると輝尽性蛍光体層に吸収される放射線量子数が減少してモトルが増加したり、構造的乱れが顕在化して構造モトルが増加したりして画質の低下を生ずる。従って画像の粒状性を向上させるためには輝尽性蛍光体層の層厚が厚い必要があった。
蒸着タイプの輝尽性蛍光体層は、分散タイプの輝尽性蛍光体層に比較すると、輝尽性蛍光体が100%であることから、輝尽性蛍光体が同じ場合、同じ輝尽性蛍光体層の厚さでは感度が優れ、放射線吸収率が高いことで相対的に量子モトルが減少して粒状性も優れる放射線画像変換プレートを与え、感度を同じ程度にすれば輝尽性蛍光体層厚を薄くできて、輝尽性蛍光体層厚内での放射線や励起光の拡散が減少し鮮鋭性の優れた放射線画像変換プレートを与える筈であるが、感度の優れた放射線画像変換プレートを与えることは上述のように容易であっても、粒状性と鮮鋭性も共に優れた放射線画像変換プレートを与えることは容易でなかった。
この様に様々な要因から放射線画像変換プレートを用いた放射線画像変換方法の画質及び感度は決定される。これらの感度や画質に関する複数の因子を調整して感度、画質を改良するため、これまで様々な気相堆積方法が検討されてきた。
例えば、精密な薄膜成長法に適用でき、作製される膜の厚みを非常に薄い精度で作製するために、真空中にて熱フィラメントから放出された電子を加速し且つ磁場又は電場により偏向し電子ビームとして蒸発物質に照射し、これを加熱して蒸発させる蒸着装置であり、蒸発物質を収容するルツボの周囲部分の表面に接触する熱電対と、この熱電対の出力信号を入力し、熱電対の出力値が所定の値に保持されるように、熱フィラメントへの給電量を制御する制御手段を設ける蒸着装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
しかし、この方法では蒸発原料の温度を直接測定しているわけではないことと、測定自体が蒸発気流の影響を受けるため誤差を生じる可能性が高い。また、上記のような蒸発量制御を行う場合でも蒸着作業開始直後は、蒸着量安定制御領域に比べて概ね異なる蒸着量となってしまう。この蒸着量の違いがある原料蒸発成分が基材上へ膜形成されることにより、放射線画像変換パネルの性能を損ねる可能性がある。
又、他の蒸着装置としては、均一な組成、特性をもつ蒸着膜を連続的に作製するため、蒸着原料を蒸着源の加熱面に対して下から連続的に、あるいは独立かつ連続的に供給する蒸着装置が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
しかしこの方法では原材料が溶融状態にある場合にそのままの形で原材料が流入することによる温度低下や蒸着乱れが発生しやすくなり安定した蒸着膜を得ることが困難となり、これは特に蒸発量が多いときに顕著となり、放射線画像変換プレートの性能を損ねる可能性がある。
この様な状況から、輝尽性蛍光体層の厚さを薄くし、高感度で、粒状性にすぐれ、輝尽性蛍光体層厚内での放射線や励起光の拡散が減少し鮮鋭性の優れた放射線画像変換プレートを気相堆積方法により作製する放射線画像変換プレートの製造方法及び放射線画像変換プレートの製造方法により製造する放射線画像変換プレートの開発が望まれている。
特開平5−222534号公報 特開平6−322521号公報
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は輝尽性蛍光体層の厚さを薄くし、高感度で、粒状性にすぐれ、輝尽性蛍光体層厚内での放射線や励起光の拡散が減少し鮮鋭性の優れた放射線画像変換プレートを気相堆積方法により作製する放射線画像変換プレートの製造方法及び放射線画像変換プレートの製造方法により製造する放射線画像変換プレートを提供することである。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
(請求項1)
基材上に少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を気相堆積装置を使用して形成する放射線画像変換プレートの製造方法において、該気相堆積装置は排気手段で減圧される蒸着室と、該蒸着室には基材配置手段と、原料容器内の原料温度を指示温度に保つ原料温度制御手段を有する原料蒸発手段とを有し、該原料温度制御手段により該原料温度の制御を行いながら基材上に原料堆積を行うことを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
(請求項2)
基材上に少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を気相堆積装置を使用して形成する放射線画像変換プレートの製造方法において、該気相堆積装置は排気手段で減圧される蒸着室と、該蒸着室には基材配置手段と、原料容器内の原料温度に対応して、該基材上への原料堆積の開始を制御する原料堆積制御手段を有する原料蒸発手段とを有し、該原料堆積制御手段により前記基材上への原料堆積の開始を制御しながら前記基材上に原料堆積を行うことを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
(請求項3)
基材上に少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を気相堆積装置を使用して形成する放射線画像変換プレートの製造方法において、該気相堆積装置は排気手段で減圧される蒸着室と、該蒸着室には基材配置手段と、原料容器内の原料の減少に対応して、該原料容器の開口率を制御する開口率制御手段と、原料温度を測定する手段を有する原料蒸発手段とを有し、該開口率を制御手段により前記原料容器の開口率を制御しながら基材上に原料堆積を行うことを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
(請求項4)
基材上に少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を気相堆積装置を使用して形成する放射線画像変換プレートの製造方法において、該気相堆積装置は排気手段で減圧される蒸着室と、該蒸着室には基材配置手段と、原料蒸発手段とを有し、該原料蒸発手段は加熱手段を有した主原料容器と、加熱手段を有する補助原料容器とを有し、該補助原料容器から加熱された原料を主原料容器へ供給しながら基材上に原料堆積を行うことを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
(請求項5)
前記主原料容器は、該主原料容器内の原料温度を指示温度に保つ原料温度制御手段を有することを特徴とする請求項4に記載の放射線画像変換プレートの製造方法。
(請求項6)
前記蒸着室は、主原料容器内の原料温度に対応して、基材上への原料堆積の開始を制御する原料堆積制御手段を有することを特徴とする請求項4又は5記載の放射線画像変換プレートの製造方法。
(請求項7)
前記主原料容器は、該主原料容器内の原料の減少に対応して、前記主原料容器の開口率を制御する開口率制御手段を有することを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の放射線画像変換プレートの製造方法。
(請求項8)
請求項1に記載の放射線画像変換プレートの製造方法において、原料蒸発手段は原料容器内の原料温度に対応して、該基材上への原料堆積の開始を制御する原料堆積制御手段を有することを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
(請求項9)
請求項1に記載の放射線画像変換プレートの製造方法において、原料蒸発手段は原料容器内の原料の減少に対応して、該原料容器の開口率を制御する開口率制御手段を有することを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
(請求項10)
請求項2に記載の放射線画像変換プレートの製造方法において、原料蒸発手段は原料容器内の原料の減少に対応して、該原料容器の開口率を制御する開口率制御手段を有することを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
(請求項11)
請求項1〜10の何れか1項に記載の放射線画像変換プレートの製造方法により製造された放射線画像変換プレートにおいて、基材上に形成された少なくとも1層の輝尽性蛍光体層に含まれる輝尽性蛍光体が柱状結晶を含有することを特徴とする放射線画像変換プレート。
(請求項12)
前記柱状結晶が下記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項11に記載の放射線画像変換プレート。
一般式(1) CsX:A
〔式中、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、TbまたはCeを表す。〕
輝尽性蛍光体層の厚さを薄くし、高感度で、粒状性にすぐれ、輝尽性蛍光体層厚内での放射線や励起光の拡散が減少し鮮鋭性の優れた放射線画像変換パネルを作製することが可能な気相堆積方法及びこの気相堆積方法により作製した放射線画像変換パネルを提供することが出来、画質・品質向上及び、ロット間ばらつきの軽減による製品安定化、収率向上、生産性向上によるコストダウンが可能となった。
本発明に係る実施の形態を図1〜図4を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は気相堆積法によって基材上に形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換プレートを使用した放射線画像変換パネルの一例を示す概略断面図である。
図中、1は放射線画像変換パネルを示す。放射線画像変換パネル1は輝尽性蛍光体プレート1aの上に設けた保護層1bを設けた後、カーボン繊維強化樹脂(CFRC)、ガラスエポキシ樹脂等で出来たトレー1c上に接着剤で固定し、輝尽性蛍光体プレート1aの周縁部を接着剤(不図示)で封入して、輝尽性蛍光体層1a2が密閉された構造となっている。輝尽性蛍光体プレート1aは、基材1a1上に気相堆積法により形成された輝尽性蛍光体層1a2とを有している。
輝尽性蛍光体層1a2の層厚は目的とする放射線像変換パネル1の放射線に対する感度、輝尽性蛍光体の種類等によって異なるが、10〜1000μmが好ましく、20〜800μmがより好ましい。10μm未満の場合は、輝尽性蛍光体の種類によっては輝尽発光の不足により、感度低下となる場合がある。1000μmを越える場合は、輝尽性蛍光体の種類によっては放射線や励起光の拡散が増大することにより、粒状性が劣化する場合がある。
輝尽性蛍光体層102に用いられる輝尽性蛍光体としては、例えば特開昭59−75200号等に記載されているBaFX:Eu2+系(X:Cl、Br、I)蛍光体、同61−72087号等に記載されているようなアルカリハライド蛍光体、同61−73786号、61−73787号等に記載のように、共賦活剤としてTl+およびCe3+、Sm3+、Eu3+、Y3+、Ag+、Mg2+、Pb2+、In3+の金属を含有するアルカリハライド蛍光体などが挙げられる。特に、アルカリハライド蛍光体は、蒸着、スパッタリング等の方法で柱状の輝尽性蛍光体層を形成させやすく好ましい。また、アルカリハライド蛍光体の中でもRbBr及びCsBr系蛍光体が高輝度、高画質である点で好ましく、中でもCsBr系蛍光体が特に好ましい。
輝尽性蛍光体層102は下記一般式(1)で示される輝尽性蛍光体の柱状結晶であることが好ましい。
一般式(1)
CsX:A
式中、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、TbまたはCeを表す。
輝尽性蛍光体を基材上に気相堆積させ輝尽性蛍光体層を形成させる方法としては蒸着法、スパッタ法及びCVD法等がある。蒸着法は基材を蒸着装置内に設置したのち、装置内を排気して1.333×10-4Pa程度の真空とし、次いで、輝尽性蛍光体の少なくとも1つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法などの方法で加熱蒸発させて支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚みに堆積させる。この結果、結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層が形成されるが、蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。また、蒸着工程では複数の抵抗加熱器或いはエレクトロンビームを用いて蒸着を行うことも可能である。また蒸着法においては、輝尽性蛍光体原料を複数の抵抗加熱器或いはエレクトロンビームを用いて蒸着し、基材上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。更に蒸着法においては、蒸着時に必要に応じて基材を冷却或いは加熱してもよい。また、蒸着終了後、輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
スパッタ法は前記蒸着法と同様に基材をスパッタ装置内に設置した後、装置内を一旦排気して1.333×10-4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタ用のガスとしてAr、Ne等の不活性ガスを装置内に導入して1.333×10-1Pa程度のガス圧とする。次に、前記輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さ堆積させる。このスパッタ工程では蒸着法と同様に複数回に分けて輝尽性蛍光体層を形成することも可能であるし、それぞれを用いて同時或いは順次、前記ターゲットをスパッタリングして輝尽性蛍光体層を形成することも可能である。また、スパッタ法では、複数の輝尽性蛍光体原料をターゲットとして用い、これを同時或いは順次スパッタリングして、支持体上で目的とする輝尽性蛍光体層を形成する事も可能であるし、必要に応じてO2、H2等のガスを導入して反応性スパッタを行ってもよい。更に、スパッタ法においては、スパッタ時必要に応じて基材を冷却或いは加熱してもよい。また、スパッタ終了後に輝尽性蛍光体層を加熱処理してもよい。
CVD法は目的とする輝尽性蛍光体或いは輝尽性蛍光体原料を含有する有機金属化合物を熱、高周波電力等のエネルギーで分解することにより、支持体上に結着剤を含有しない輝尽性蛍光体層を得るものであり、いずれも輝尽性蛍光体層を支持体の法線方向に対して特定の傾きをもって独立した細長い柱状結晶に気相成長させることが可能である。
本発明においては、気相堆積法として蒸着法が好ましく用いられる。本発明に係る気相堆積法に関しては図3、図4で詳しく説明する。
本発明に係る輝尽性蛍光体層は、保護層を有していても良い。保護層は、保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、あらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。あるいは別途形成した保護層上に輝尽性蛍光体層を形成する手順を取ってもよい。
保護層の材料としては酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の通常の保護層用材料が用いられる。また、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2、SiN、Al23などの無機物質を積層して形成してもよい。これらの保護層の層厚は一般的には0.1〜2000μm程度が好ましい。また、透光性が良く、シート状に形成できるものを用いることができる。例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラスや、PET、OPP、ポリ塩化ビニル等の有機高分子があげられる。
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる基材としては各種のガラス、高分子材料、金属等が用いられるが、例えば石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラス、又、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート或いは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。これら基材の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。また、本発明においては、基材と輝尽性蛍光体層の接着性を向上させるために、必要に応じて基材の表面に予め接着層を設けてもよい。これら基材の厚みは用いる基材の材質等によって異なるが、一般的には80〜2000μmであり、取り扱い上の観点から、更に好ましいのは80〜1000μmである。
図2は放射線画像変換パネルを用いた放射線像変換方法を示す模式図である。
図中、2aは放射線発生装置、2bは被写体、2cは本発明に係わる放射線画像変換プレートを用いた放射線画像変換パネル、2dは放射線画像変換パネル2cの放射線画像変換プレートの放射線潜像を輝尽発光として放出させるための輝尽励起光源、2eは放射線画像プレートにより放射された輝尽蛍光を検出する光電変換装置、2fは光電変換装置2eで検出された光電変換信号を画像として再生する再生装置、2gは再生された画像を表示する表示装置、2hは輝尽励起光と輝尽蛍光とを分離し、輝尽蛍光のみを透過させるフィルタである。尚、光電変換装置2e以降は放射線画像変換プレートからの光情報を何らかの形で画像として再生できるものであればよく、上記に限定されるものではない。
図2に示されるように、放射線発生装置2aからの放射線(R)は被写体2bを通して変換パネル2cに入射する(RI)。この入射した放射線は放射線画像変換プレートの輝尽層に吸収され、そのエネルギーが蓄積され、放射線透過像の蓄積像が形成される。次にこの蓄積像を輝尽励起光源2dからの輝尽励起光で励起して輝尽発光として放出する。放射される輝尽発光の強弱は蓄積された放射線エネルギー量に比例するので、この光信号を例えば光電子倍増管等の光電変換装置2eで光電変換し、画像生成装置2fによって画像として再生し画像表示装置2gによって表示することにより、被写体の放射線透過像を観察することができる。
輝尽励起光源2dとしては、放射線画像変換プレートに使用される輝尽性蛍光体の輝尽励起波長を含む光源が使用される。特にレーザ光を用いると光学系が簡単になり、また、輝尽励起光強度を大きくすることができるために輝尽発光効率を上げることができ、より好ましい結果が得られる。
レーザとしては、He−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、N2レーザ、YAGレーザ及びその第2高調波、ルビーレーザ、半導体レーザ、各種の色素レーザ、銅蒸気レーザ等の金属蒸気レーザ等がある。通常はHe−NeレーザやArイオンレーザのような連続発振のレーザが望ましいが、パネル1画素の走査時間とパルスを同期させればパルス発振のレーザを用いることもできる。また、フィルタ2hを用いずに特開昭59−22046号に示されるような、発光の遅延を利用して分離する方法によるときは、連続発振レーザを用いて変調するよりもパルス発振のレーザを用いる方が好ましい。上記の各種レーザ光源の中でも、半導体レーザは小型で安価であり、しかも変調器が不要であるので特に好ましく用いられる。
図3は蒸着法により基材上に輝尽性蛍光体層を形成する気相堆積装置の一例を示す模式図である。図3の(a)は蒸着法による気相堆積装置の一例を示す模式図である。図3の(b)は原料蒸発手段を構成している各部材の関係を示す概略ブロック図である。
図中、3は気相堆積装置を示す。301は蒸着室を示し、302は排気口を示し排気手段(不図示)に繋がっており、メインバルブ303を介して蒸着室301を一旦ある値以下の真空度にするようになっている。更に、304は蒸着室301の真空度をさらに低下させて指定値以下にするための調整口を示し、排気手段(不図示)に繋がっており、リークバルブ305を介して蒸着室301の真空度を指定の真空度以下に保時する様になっている。蒸着室301の真空度は原料の種類によっても、輝尽性蛍光体層の厚さによっても異なるため、必要に応じて適宜設定することが可能となっている。
306は不活性ガス導入口を示し、必要に応じてガス導入バルブ307を介してN2、Ar、Ne、He等の不活性ガスが雰囲気ガスとして導入される。308は蒸着室301の上部に設けられた基材配置手段を示し、4は基材配置手段に配置された基材を示す。基材4は複数枚配置しても良く、配置手段のいかなる位置に配置することも可能となっている。基材配置手段4は固定である必要は無く、駆動手段(不図示)により回転や往復運動等を行わせても良い。
309は蒸着室301の下部に設けられた原料蒸発手段を示す。原料蒸発手段309は、加熱手段(不図示)を有する原料容器309aと、原料容器309a内の原料(輝尽性蛍光体)309bの温度を測定するための測定手段309cと、原料温度制御手段の電流供給部309a1と、原料容器309aの開口部309dの開口率を制御する開口率制御手段の蓋309eとを有している。原料容器309aの加熱手段としては特に限定は無く、例えばスパッタ方式、抵抗加熱方式等が挙げられる。本図では抵抗加熱方式の場合を示している。
蓋309eはどのような形でもよく、原料蒸発手段の口をすべて覆う形状でなくても良い。
310は基材4への原料(輝尽性蛍光体)の堆積を制御する原料堆積制御手段の遮蔽板を示す。遮蔽板310はどのような形式でもかまわないが、機能としては完全に閉じることで基材4の蒸気堆積を完全に防止できる形式のものが好ましい。なお、本図に示す遮蔽板は開閉式であり、開閉を制御することが可能となっている。
電流供給部309a1は原料容器309aへの電流供給をCPUとメモリーとを有する制御部5により制御することが可能となっている。原料容器309aの開口率の制御は蓋309eを移動することにより行われ、蓋309eの移動はCPUとメモリーとを有する制御部5により移動を制御することが可能となっている。遮蔽板310の開閉はCPUとメモリーとを有する制御部5により制御することが可能となっている。
測定手段309cとしては特に限定は無く、例えば熱電対、温度センサー等が挙げられる。309f1は蓋309eを移動させる駆動手段を示し、駆動手段309e1としては、例えばエアーシリンダーが挙げられる。310aは遮蔽板310の開閉を行う駆動手段を示し、駆動手段310aとしては、例えばエアーシリンダーが挙げられる。
蒸着室301を構成している各部材の関係を図3の(b)に示す概略ブロック図により説明する。
測定手段309cにより測定された原料容器309a内の輝尽性蛍光体309bの温度に関する情報は制御手段5のCPUに入力される。制御手段5に入力された情報はメモリーに予め入力されている設定温度と演算処理を行い、原料容器309aの加熱源の電流供給部309a1の電流調整を行うことで原料容器309a内の原料(輝尽性蛍光体)309bの温度を設定温度に対して−5〜+5℃で保持することが可能となっている。
原料(輝尽性蛍光体)309bの温度を指定温度に保持することで、基材4に略一定温度の原料(輝尽性蛍光体)が気相堆積され安定した原料層(輝尽性蛍光体層)が形成される。
時間により換算された原料容器309a内の輝尽性蛍光体309bの量に関する情報は制御手段5のCPUに入力される。制御手段5に入力された情報はメモリーに予め入力されている原料容器309a内の原料(輝尽性蛍光体)309bの量と演算処理を行い、駆動手段309e1を稼働させ原料容器309aの蓋を移動させ開口率を変えることが可能となっている。例えば原料容器309a内の輝尽性蛍光体309bの量が100%のときは開口率を100%とし、原料容器309a内の輝尽性蛍光体309bの量が50%の時は50%とするようになっている。
原料(輝尽性蛍光体)309bの堆積速度を略一定に保持することで、基材4に一定の原料(輝尽性蛍光体)が気相堆積され安定した原料層(輝尽性蛍光体層)が形成される。
測定手段309cにより測定された原料容器309a内の原料(輝尽性蛍光体)309bの温度に関する情報は制御手段5のCPUに入力される。制御手段5に入力された情報はメモリーに予め入力されている原料堆積開始温度と演算処理を行い、駆動手段310aを稼働させ遮蔽板310の開閉を行うことで、蒸着室内の原料(輝尽性蛍光体)309bの濃度が不安定な加熱初期の基材4への輝尽性蛍光体の気相堆積防止が可能となっている。例えば予め入力されている原料堆積開始温度と測定手段309cにより測定された原料容器309a内の原料(輝尽性蛍光体)309bの温度との差が−10〜+10℃になってから少なくとも30sec経過した後、遮蔽板を開き、20℃以上になったら閉じる様になっている。
加熱初期の輝尽性蛍光体の濃度が不安定な時期での気相堆積を防止することで、基材4に一定の原料(輝尽性蛍光体)が気相堆積され安定した原料層(輝尽性蛍光体層)が形成される。
図4は蒸着法で基材上に輝尽性蛍光体層を形成する気相堆積装置の他の一例を示す模式図である。図4の(a)は蒸着法による気相堆積装置の他の一例を示す模式図である。図4の(b)は補助原料容器の制御を示す概略ブロック図である。
図中、309a1は主原料容器を示し、309fは補助原料容器を示す。補助原料容器309fの加熱手段は主原料容器309a1の加熱手段と同じであっても良い。本図では主原料容器309a1の加熱手段と同じ抵抗加熱方式の場合を示している。309gは補助原料容器309f中の加熱された原料(輝尽性蛍光体)309hを主原料容器309a1へ供給する供給管を示す。309f1は補助原料容器309fの加熱用の電源を示す。補助原料容器309f中の加熱された原料(輝尽性蛍光体)309hは、補助原料容器309fの上部から供給されるガスによる圧力で供給管309gを介して主原料容器309a1へ供給することが可能になっている。309iはガス供給管を示し、309jはガス量調整バルブを示す。補助原料容器309f中の原料(輝尽性蛍光体)309hの加熱温度としては、主原料容器309a1中の原料堆積を開始する原料温度に対して−100〜+50℃であることが好ましい。−100℃より低い場合は、原料の種類によっては原料が溶けていないことにより、主原料容器内に原料を供給出来なくなる場合がある。50℃を越えた場合は、原料蒸発速度が上昇することにより、主原料容器内の温度が不均一になり、安定した堆積層が得られなくなる場合がある。
補助原料容器309f中の原料の温度及び主原料容器への原料の移動の制御方法の一例を図4の(b)に示す概略ブロック図により説明する。
測定手段309cにより測定された主原料容器309a1内の輝尽性蛍光体309bの温度に関する情報は制御手段5のCPUに入力される。制御手段5に入力された情報はメモリーに予め入力されている補助原料容器309fの設定温度と演算処理を行い、補助原料容器309fの加熱源の電流供給部309f1の電流調整を行うことで補助原料容器309f内の原料(輝尽性蛍光体)309hの温度を設定温度に対して−5〜+5℃で保持することが可能となっている。原料(輝尽性蛍光体)309hの温度を指定温度に保持することで、補助原料容器309fから主原料容器309a1内へ原料が移動しても主原料容器309a1内の輝尽性蛍光体309bの温度を一定にたもつことが可能となり、基材4に略一定温度の原料(輝尽性蛍光体)が気相堆積され安定した原料層(輝尽性蛍光体層)が形成される。
時間により換算された主原料容器309a1内の輝尽性蛍光体309bの量に関する情報は制御手段5のCPUに入力される。制御手段5に入力された情報はメモリーに予め入力されている主原料容器309a1内の原料(輝尽性蛍光体)309bの量と演算処理を行い、ガス量調整バルブ309jの開閉調整を行うことで補助原料容器309fから主原料容器309a1へ原料を移動させることが可能となっている。勿論、手動操作でガス量調整バルブ309jの開閉調整を行うことで補助原料容器309fから主原料容器309a1へ原料を移動させることが可能となっている。尚、補助原料容器から原料容器への原料(輝尽性蛍光体)の移動は、本図に示す方法以外に物理的押出しなどのいかなる方法でもかまわない。尚、蓋309e、遮蔽板310、主原料容器309a1の制御は図3と同じである。他の符号は図3と同義である。
本図に示す如く様に補助原料容器を配設し加熱した原料(輝尽性蛍光体)を原料容器へ供給することで次の効果が得られる。1)原料(輝尽性蛍光体)補給時の温度変動が無くなるため、基材上に安定した気相堆積を行うことが出来、性能が安定した輝尽性蛍光体パネルの作製が可能となる。2)主原料容器内の原料レベルを一定にすることができ、基材上に安定した気相堆積を行うことができる。3)原料を一度昇温させて供給するため、気相堆積に要する時間を短縮することが可能である。
本発明に係る蒸発源は必ずしも輝尽性蛍光体である必要はなく、輝尽性蛍光体原料を混和したものであってもよい。また、賦活剤は母体(basic substance)に対して賦活剤(actibator)を混合したものを蒸着してもよいし、母体のみを蒸着した後に賦活剤をドープしてもよい。例えば、母体であるRbBrのみを蒸着した後、例えば賦活剤であるTlをドープしてもよい。ドーピングは形成された蛍光体の母体層中にドーピング剤(賦活剤)を熱拡散、イオン注入法によって行うことができる。
また、輝尽性蛍光体層中に高光吸収率の物質、高光反射率の物質等を充填してもよい。これにより輝尽性蛍光体層の補強効果をもたせるほか、輝尽性蛍光体層に入射した輝尽励起光の横方向への光拡散をほぼ完全に防止できる。
高光反射率の物質とは、輝尽励起光(500〜900nm、特に600〜800nm)に対する反射率の高いものをいい、例えばアルミニウム、マグネシウム、銀、インジウムその他の金属等、白色顔料及び緑色から赤色領域の色材を用いることができる。
白色顔料は輝尽発光も反射することができる。白色顔料として、TiO2(アナターゼ型、ルチル型)、MgO、PbCO3・Pb(OH)2、BaSO4、Al23、M(II)FX(但し、M(II)はBa、Sr及びCaの中の少なくとも1種であり、XはCl、及びBrのうちの少なくとも1種である。)、CaCO3、ZnO、Sb23、SiO2、ZrO2、リトポン(BaSO4・ZnS)、珪酸マグネシウム、塩基性珪硫酸鉛、塩基性燐酸鉛、珪酸アルミニウム等が挙げられる。これらの白色顔料は隠蔽力が強く、屈折率が大きいため、光を反射したり、屈折させることにより輝尽発光を容易に散乱し、得られる放射線画像変換パネルの感度を顕著に向上させ得る。
また、高光吸収率の物質としては、例えば、カーボン、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄等及び青の色材が用いられる。このうちカーボンは輝尽発光も吸収する。
また、色材は、有機または無機系色材のいずれでもよい。有機系色材としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学製)、D&CブルーNo.1(ナショナルアニリン製)、スピリットブルー(保土谷化学製)、オイルブルーNo.603(オリエント製)、キトンブルーA(チバガイギー製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土ヶ谷化学製)、レイクブルーAFH(協和産業製)、プリモシアニン6GX(稲畑産業製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学製)、シアンブルーBNRCS(東洋インク製)、ライオノイルブルーSL(東洋インク製)等が用いられる。またカラーインデクスNo.24411、23160、74180、74200、22800、23154、23155、24401、14830、15050、15760、15707、17941、74220、13425、13361、13420、11836、74140、74380、74350、74460等の有機系金属錯塩色材も挙げられる。無機系色材としては群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−Co−NiO系顔料が挙げられる。
以下実施例により本発明を説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
以下の方法に従って、蒸着型蛍光体層を有する蛍光体パネルを作製した。
(基材の準備)
厚さ1mm、大きさ30cm×30cmの結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)を基材として準備した。
(輝尽性蛍光体プレートの作製)
図3に示した蒸着装置を用いて膜形成時の原料容器中の輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)の温度を750℃とし、その後温度を一定に維持するように制御部により原料容器の加熱手段への電流供給量を制御して、準備した基材上へ厚さ300μmの輝尽性蛍光体層を形成し輝尽性蛍光体プレートを作製し1−1とした。又、比較として、膜形成時の原料容器中の輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)の温度を同じとし、その後の原料容器の加熱手段への電流供給量を一定として、準備した基材上へ300μmの輝尽性蛍光体層を形成し輝尽性蛍光体プレートを作製し1−2とした。
尚、輝尽性蛍光体層の形成にあたっては、準備した基材を蒸着室の上部に設けられた基材配置手段に配設し、ついで輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)原料を蒸着源として水冷した原料容器に入れた。その後、蒸着室内を一旦排気し、その後Arガスを導入し0.133Paに真空度を調整した後、基板の温度を約200℃に保持しながら蒸着を実施した。この際、基板と蒸発源の距離を60cmとした。原料容器の開口率は100%とした。輝尽性蛍光体堆積を開始する輝尽性蛍光体温度を750℃とした。輝尽性蛍光体層の厚さが300μmとなったところで蒸着を終了させ、この輝尽性蛍光体層を温度400℃で加熱処理した。
(放射線画像変換パネルの作製)
作製した輝尽性蛍光体プレート1−1の輝尽性蛍光体層の上に保護層を設けた後、カーボン繊維強化樹脂製のトレーに接着剤で固定し、輝尽性蛍光体プレートの周縁部を接着剤で封入して、輝尽性蛍光体層が密閉された構造の放射線画像変換パネルを作成し、試料101とした。同じ条件で比較として作製した輝尽性蛍光体プレート1−2を使用し放射線画像変換パネルを作成し、比較試料102とした。
尚、保護層として硼珪酸ガラスを使用し、厚さ1mmとした。接着剤は、ポリウレタン系弾性接着剤を使用した。
(評価)
作製した各試料101、102に付き鮮鋭性、画像欠陥、粒状性を以下に示す評価方法、評価ランクに従って評価した結果を表1に示す。
鮮鋭性評価
各試料101、102の鮮鋭性は、変調伝達関数(MTF)を求めて評価した。MTFは、放射線画像変換パネル試料にCTFチャートを貼付した後、各試料101、102に80kVpのX線を10mR(被写体までの距離:1.5m)照射した後、100μmφの直径の半導体レーザ(680nm:パネル上でのパワー40mW)を用いてCTFチャート像を走査読み取りして求めた。以下の値は、2.0lp/mmのMTF値を足し合わせた値(%)で示す。
画像欠陥評価
Regius330(コニカミノルタエムジー(株)製)を使用し、80kVp、70mAの条件下でX線管球と各試料101、102の間の距離を2mにしてX線撮影をした後、X線撮影後画像情報を読み取りβ画像信号を得る。このβ画像信号を2000×2000画素毎に分割して画素毎の信号値を得て画像信号とした。得られた画像信号の中で隣り合う信号値差が50step以上差がある画素を検出した個数を欠陥数とした。
画像欠陥評価ランク
○:1m2当たりの欠陥数が0個
△:1m2当たりの欠陥数が10個未満
×:1m2当たりの欠陥数が10個以上
粒状性評価
各試料101、102に対して放射線画像の形成を下記に記載のX線照射条件にて行い、次に、励起光として680nmの半導体レーザ光を用いて放射線画像の読取を行った。読取の後、フィルム出力したX線のベタ露光画像を目視評価し、5段階ランク評価した。
X線照射条件:80kVp、200mA、0.1sec
フィルム出力条件:γ(階調)=3.0出力
評価ランク
5:粒状がほとんどわからず極めて良好
4:若干の粒状が認められるものの良好
3:粒状が認められる
2:粒状感がある
1:粒状がはっきり目立つ
Figure 2005147868
本発明の有効性が確認された。
実施例2
(基材の準備)
厚さ1mm、大きさ30cm×30cmの結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)を基材として準備した。
(輝尽性蛍光体プレートの作製)
図3に示した蒸着装置を用いて膜形成時の主原料容器中の輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)の温度を750℃に一定とし、輝尽性蛍光体堆積を開始する前に到達させる輝尽性蛍光体温度を表2の様に変えて輝尽性蛍光体プレートを作製し2−1〜2−4とした。その他の条件は、実施例1の輝尽性蛍光体プレート1−1の作製条件と同じにして行った。
Figure 2005147868
(放射線画像変換パネルの作製)
作製した各輝尽性蛍光体プレート2−1〜2−4の輝尽性蛍光体層の上に実施例1と同じ方法で同じ保護層を設けた後、実施例1と同じ方法で放射線画像変換パネルを作成し、試料201〜204とした。
(評価)
作製した各試料201〜204に付き実施例1と同じ評価項目につき実施例1と同じ評価方法、評価基準に従って評価した結果を表3に示す。
Figure 2005147868
本発明の有効性が確認された。
実施例3
(基材の準備)
厚さ1mm、大きさ30cm×30cmの結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)を基材として準備した。
(輝尽性蛍光体プレートの作製)
図3に示した蒸着装置を用いて原料容器中の輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)の量に合わせて原料容器の開口率を変えた他は実施例1の輝尽性蛍光体プレート1−1と同じ条件で輝尽性蛍光体プレートを作製し3−1とした。開口率の変化は、原料容器中に輝尽性蛍光体が原料容器の容積に対して100%入っている状態では原料容器の開口率を100%とし、原料容器中に輝尽性蛍光体が無くなった状態で原料容器の開口率を50%になる様に制御部により原料容器の蓋を移動させ制御した。その他の条件は実施例1の輝尽性蛍光体プレート1−1の作製条件と同じにして行った。
尚、比較として原料容器の開口率を50%に固定した以外は全て輝尽性蛍光体プレート3−1と同じ条件で輝尽性蛍光体プレートを作製し3−2とした。
(放射線画像変換パネルの作製)
作製した各輝尽性蛍光体プレート3−1、3−2の輝尽性蛍光体層の上に実施例1と同じ方法で同じ保護層を設けた後、実施例1と同じ方法で放射線画像変換パネルを作成し、試料301、302とした。
(評価)
作製した各試料301、302に付き実施例1と同じ評価項目につき実施例1と同じ評価方法、評価基準に従って評価した結果を表4に示す。
Figure 2005147868
尚、本発明の輝尽性蛍光体プレートNo.3−1を作製するのに要した堆積必要時間は2時間30分であるのに対して、比較の輝尽性蛍光体プレートNo.3−2を作製するのに要した堆積必要時間は4時間であり生産性が高いことも確認され、本発明の有効性が確認された。
実施例4
(基材の準備)
厚さ1mm、大きさ30cm×30cmの結晶化ガラス(日本電気ガラス社製)を基材として準備した。
(輝尽性蛍光体プレートの作製)
図4に示した蒸着装置を用いて、補助原料容器に輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を入れ、加熱手段により輝尽性蛍光体を輝尽性蛍光体堆積を開始する主原料容器の輝尽性蛍光体の温度に対して、10℃低くなるように加熱し、加熱された原料を連続的に主原料容器へ供給し、輝尽性蛍光体溶融液面を略一定に保ち輝尽性蛍光体プレートを作成し4−1とした。輝尽性蛍光体堆積を開始する原料容器の輝尽性蛍光体の温度は750℃とした。その他の条件は実施例1の輝尽性蛍光体プレート1−1の作製条件と同じにして行った。
比較として、補助原料容器を使用せず、主原料容器の容積を大きくした他は全て同じ条件で輝尽性蛍光体プレートを作成し4−2とした。
(放射線画像変換パネルの作製)
作製した各輝尽性蛍光体プレート4−1、4−2の輝尽性蛍光体層の上に実施例1と同じ方法で同じ保護層を設けた後、実施例1と同じ方法で放射線画像変換パネルを作成し、試料401、402とした。
(評価)
作製した各試料401、402に付き実施例1と同じ評価項目につき実施例1と同じ評価方法、評価基準に従って評価した結果を表5に示す。
Figure 2005147868
本発明の有効性が確認された。
気相堆積法によって基材上に形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換プレートを使用した放射線画像変換パネルの一例を示す概略断面図である。 放射線画像変換パネルを用いた放射線像変換方法を示す模式図である。 蒸着法に基材上に輝尽性蛍光体層を形成する気相堆積装置の一例を示す模式図である。 蒸着法で基材上に輝尽性蛍光体層を形成する気相堆積装置の他の一例を示す模式図である。
符号の説明
1、2c 放射線画像変換パネル
1a1、4 基材
1a2 輝尽性蛍光体層
1b 保護層
1c トレー
2a 放射線発生装置
2b 被写体
2d 輝尽励起光源
2e 光電変換装置
2f 再生装置
2g 表示装置
3 気相堆積装置
301 蒸着室
302 排気口
303 メインバルブ
304 調整口
305 リークバルブ
306 不活性ガス導入口
307 ガス導入バルブ
308 基材配置手段
309 原料蒸発手段
309a 原料容器
309a1 主原料容器
309b 原料(輝尽性蛍光体)
309c 測定手段
309d 開口部
309e 蓋
309f 補助原料容器
309i ガス供給管
310 遮蔽板
5 制御部

Claims (12)

  1. 基材上に少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を気相堆積装置を使用して形成する放射線画像変換プレートの製造方法において、該気相堆積装置は排気手段で減圧される蒸着室と、該蒸着室には基材配置手段と、原料容器内の原料温度を指示温度に保つ原料温度制御手段を有する原料蒸発手段とを有し、該原料温度制御手段により該原料温度の制御を行いながら基材上に原料堆積を行うことを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
  2. 基材上に少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を気相堆積装置を使用して形成する放射線画像変換プレートの製造方法において、該気相堆積装置は排気手段で減圧される蒸着室と、該蒸着室には基材配置手段と、原料容器内の原料温度に対応して、該基材上への原料堆積の開始を制御する原料堆積制御手段を有する原料蒸発手段とを有し、該原料堆積制御手段により前記基材上への原料堆積の開始を制御しながら前記基材上に原料堆積を行うことを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
  3. 基材上に少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を気相堆積装置を使用して形成する放射線画像変換プレートの製造方法において、該気相堆積装置は排気手段で減圧される蒸着室と、該蒸着室には基材配置手段と、原料容器内の原料の減少に対応して、該原料容器の開口率を制御する開口率制御手段と、原料温度を測定する手段を有する原料蒸発手段とを有し、該開口率を制御手段により前記原料容器の開口率を制御しながら基材上に原料堆積を行うことを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
  4. 基材上に少なくとも1層の輝尽性蛍光体層を気相堆積装置を使用して形成する放射線画像変換プレートの製造方法において、該気相堆積装置は排気手段で減圧される蒸着室と、該蒸着室には基材配置手段と、原料蒸発手段とを有し、該原料蒸発手段は加熱手段を有した主原料容器と、加熱手段を有する補助原料容器とを有し、該補助原料容器から加熱された原料を主原料容器へ供給しながら基材上に原料堆積を行うことを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
  5. 前記主原料容器は、該主原料容器内の原料温度を指示温度に保つ原料温度制御手段を有することを特徴とする請求項4に記載の放射線画像変換プレートの製造方法。
  6. 前記蒸着室は、主原料容器内の原料温度に対応して、基材上への原料堆積の開始を制御する原料堆積制御手段を有することを特徴とする請求項4又は5記載の放射線画像変換プレートの製造方法。
  7. 前記主原料容器は、該主原料容器内の原料の減少に対応して、前記主原料容器の開口率を制御する開口率制御手段を有することを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の放射線画像変換プレートの製造方法。
  8. 請求項1に記載の放射線画像変換プレートの製造方法において、原料蒸発手段は原料容器内の原料温度に対応して、該基材上への原料堆積の開始を制御する原料堆積制御手段を有することを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
  9. 請求項1に記載の放射線画像変換プレートの製造方法において、原料蒸発手段は原料容器内の原料の減少に対応して、該原料容器の開口率を制御する開口率制御手段を有することを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
  10. 請求項2に記載の放射線画像変換プレートの製造方法において、原料蒸発手段は原料容器内の原料の減少に対応して、該原料容器の開口率を制御する開口率制御手段を有することを特徴とする放射線画像変換プレートの製造方法。
  11. 請求項1〜10の何れか1項に記載の放射線画像変換プレートの製造方法により製造された放射線画像変換プレートにおいて、基材上に形成された少なくとも1層の輝尽性蛍光体層に含まれる輝尽性蛍光体が柱状結晶を含有することを特徴とする放射線画像変換プレート。
  12. 前記柱状結晶が下記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体であることを特徴とする請求項11に記載の放射線画像変換プレート。
    一般式(1) CsX:A
    〔式中、XはBrまたはIを表し、AはEu、In、TbまたはCeを表す。〕
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