JP2005146978A - 内燃機関の動弁装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 機関弁を開弁駆動する液圧アクチュエータを備える内燃機関の動弁装置において、高精度で安定したバルブ作動特性を得る。
【解決手段】 内燃機関の動弁装置Vは、吸気弁13および排気弁14を開弁駆動する液圧アクチュエータ31と、液圧アクチュエータ31に対する作動液の給排を行う液圧回路32とを備える。液圧回路32は、内燃機関の潤滑系統とは分離されて設けられる。そして、液圧回路32の一部は内燃機関の冷却回路により構成され、作動液として前記冷却回路の冷却液が使用される。さらに、機関温度の上昇による作動液の温度上昇を抑制するために、前記冷却回路に設けられるラジエータが利用される。
【選択図】 図2
【解決手段】 内燃機関の動弁装置Vは、吸気弁13および排気弁14を開弁駆動する液圧アクチュエータ31と、液圧アクチュエータ31に対する作動液の給排を行う液圧回路32とを備える。液圧回路32は、内燃機関の潤滑系統とは分離されて設けられる。そして、液圧回路32の一部は内燃機関の冷却回路により構成され、作動液として前記冷却回路の冷却液が使用される。さらに、機関温度の上昇による作動液の温度上昇を抑制するために、前記冷却回路に設けられるラジエータが利用される。
【選択図】 図2
Description
本発明は、吸気弁または排気弁からなる機関弁を開弁駆動する液圧アクチュエータを備える内燃機関の動弁装置に関する。
内燃機関の機関弁を液圧アクチュエータにより開弁駆動する技術として、例えば特許文献1に開示された動弁機構がある。この動弁機構では、機関弁とカムとの間に設けられた第1,第2弁リフタの間に形成された油圧室に対して、内燃機関のオイルパンから汲み上げられた作動油が開閉弁で制御されて給排されることにより、機関弁と当接可能な第1弁リフタの押し下げ量が変更されて、機関弁のリフト量が変更される。
特開平8−158829号公報
内燃機関の機関弁が液圧アクチュエータにより開弁駆動される動弁装置では、液圧アクチュエータの作動時期や作動量を液圧制御弁で変更させることで、機関弁の開閉時期やリフト量であるバルブ作動特性を、比較的簡単な構造で多様に制御できる利点がある一方で、高精度のバルブ作動特性を得るためには、液圧アクチュエータを精度よく制御することが必要である。そこで、液圧アクチュエータに供給される作動液には、その性状、例えば粘度や体積の変化が液圧アクチュエータの作動環境下で大きく変化しないことが求められる。また、異物が作動液に混入することは、極力回避することが好ましい。
この点で、特許文献1のように、液圧アクチュエータの作動液として内燃機関の潤滑系統の潤滑油が使用されるものでは、内燃機関の温度に応じて潤滑油の温度が大きく変化することから、油圧室に供給される作動油の温度の変化に伴って、作動油の粘度や体積が大きく変化して、高精度で安定したバルブ作動特性を得ることが困難である。また、潤滑系統の潤滑油には、ブローバイガスとの接触によりその生成が促進されるスラッジ、高温部分との接触により生成されるカーボン粒子、さらに潤滑箇所である摺動部での摩耗により発生した金属粉などの異物が混入し易いことから、この点でも、潤滑系統の潤滑油が作動液として使用される場合、高精度で安定したバルブ作動特性の確保が困難になることがあるため、潤滑油の異物除去機能強化等の設計的工夫を要する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1−4記載の発明は、機関弁を開弁駆動する液圧アクチュエータを備える内燃機関の動弁装置において、高精度で安定したバルブ作動特性を得ることを目的とする。さらに、請求項3,4記載の発明は、液圧回路の簡素化により内燃機関の小型・軽量化およびメンテナンス性の向上を図ることを目的とする。
請求項1記載の発明は、 吸気弁または排気弁からなる機関弁を開弁駆動する液圧アクチュエータと、前記液圧アクチュエータに対する作動液の給排を行う液圧回路とを備える内燃機関の動弁装置において、前記液圧回路は、前記内燃機関の潤滑系統とは分離されて設けられ、前記内燃機関の運転に起因する前記作動液の温度変化を抑制するための温度調整手段を備える内燃機関の動弁装置である。
これによれば、内燃機関の潤滑系統を流通する潤滑油が液圧回路を流通することがないため、スラッジ、カーボン粒子および摩耗により発生した金属粉などの異物が作動液に混入することが防止または抑制される。さらに、温度調整手段により、内燃機関の運転に起因する機関温度の温度変化による作動液の温度変化、例えば機関温度の上昇に伴う作動液の温度上昇が抑制されるので、作動液の粘度や体積などの性状の変化を小さい範囲に止めることができる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関の動弁装置において、前記作動液は、前記潤滑系統に使用される潤滑油とは異なる性質を有するものである。
これによれば、温度変化による粘度や体積の変化が小さい作動液を使用することができるなど、潤滑系統に使用される潤滑油に求められる性質とは無関係に、内燃機関の運転時における液圧アクチュエータの作動の高精度化および安定化に効果的な作動液を使用することができる。
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の内燃機関の動弁装置において、前記内燃機関は冷却回路を流通する冷却液により冷却される液冷式内燃機関であり、前記液圧回路の一部は前記冷却回路により構成され、前記作動液は前記冷却液であるものである。
これによれば、液圧回路の一部が内燃機関の冷却回路を利用して構成され、しかも作動液として該冷却回路を流通する冷却液が使用されるので、液圧アクチュエータに専用の液圧回路を独立して設ける必要がない。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の内燃機関の動弁装置において、前記温度調整手段は、前記冷却回路のラジエータであるものである。
これによれば、冷却回路のラジエータにより温度調整手段が構成されるので、液圧回路が一層簡素化される。また、内燃機関のラジエータは、冷却液の温度上昇を抑えて、冷却液の温度をほぼ一定または狭い変化範囲内に維持することができるので、液圧アクチュエータに対して給排される冷却液の粘度や体積などの性状をほぼ一定に維持することができる。
請求項1記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、液圧回路に異物が混入することが防止または抑制され、しかも内燃機関の運転中に作動液の温度変化による作動液の粘度や体積などの性状の変化を小さい範囲に止めることができるので、機関弁を開弁駆動する液圧アクチュエータを備える内燃機関の動弁装置において、高精度で安定したバルブ作動特性を得ることができる。
請求項2記載の発明によれば、内燃機関の運転時における液圧アクチュエータの作動を高精度化および安定化させる観点から、適切な作動液を使用することができるので、引用された請求項記載の発明の効果が一層高められた効果が奏される。
請求項3記載の発明によれば、引用された請求項記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、液圧アクチュエータ専用の液圧回路を独立して設ける必要がないので、液圧回路が簡素化されて、内燃機関の小型・軽量化され、しかも内燃機関の点検箇所も少なくなることから、メンテナンス性が向上する。
請求項4記載の発明によれば、内燃機関の冷却回路のラジエータを利用して、液圧アクチュエータに対して給排される冷却液の粘度や体積などの性状をほぼ一定または狭い変化範囲内に維持することができるので、引用された請求項記載の発明の効果がさらに高められた効果が奏され、特に、内燃機関の運転期間の殆どを占める暖機完了後の運転期間中、一層高精度で安定した前記バルブ作動特性を得ることができる。
以下、本発明の実施形態を図1ないし図3を参照して説明する。
図1,図2は第1実施形態を説明するためのものである。図1を参照すると、本発明が適用された動弁装置V(図2参照)を備える内燃機関Eは、冷却液により冷却される液冷式の4ストローク内燃機関であり、車両としての自動二輪車に搭載される。ここで、冷却液は、内燃機関Eの冷却に使用される任意のものであってよく、さらに温度変化による粘度変化が小さいものが好ましい。
図1,図2は第1実施形態を説明するためのものである。図1を参照すると、本発明が適用された動弁装置V(図2参照)を備える内燃機関Eは、冷却液により冷却される液冷式の4ストローク内燃機関であり、車両としての自動二輪車に搭載される。ここで、冷却液は、内燃機関Eの冷却に使用される任意のものであってよく、さらに温度変化による粘度変化が小さいものが好ましい。
単気筒または多気筒の内燃機関Eは、ピストン6が往復動可能に嵌合するシリンダブロック1と、シリンダブロック1に結合されるシリンダヘッド2と、シリンダヘッド2に結合されるヘッドカバー3と、シリンダヘッド2とは反対側でシリンダブロック1に結合されてクランク室5を形成する下部クランクケース4とから構成される機関本体を備える。ピストン6は、コンロッド7を介して、クランク室5内に配置されて前記機関本体に回転可能に支持されるクランク軸8に連結される。また、シリンダヘッド2とピストン6との間には、シリンダヘッド2に形成された凹部からなる燃焼室9を含む燃焼空間10が形成される。
シリンダヘッド2には、燃焼室9に開口する吸気口11aを有すると共に吸気装置からの吸気を燃焼室9に導く吸気ポート11と、燃焼室9に開口する排気口12aを有すると共に燃焼ガスを排気ガスとして排気装置に導く排気ポート12とが形成され、さらに吸気口11aおよび排気口12aをそれぞれ開閉する吸気弁13および排気弁14が設けられる。吸気弁13および排気弁14は、弁ばね15(図2参照)の弾発力により閉弁するように付勢されている。
そして、燃料供給装置である燃料噴射弁から供給された燃料がシリンダヘッド2に設けられた点火栓により点火されて燃焼空間10内で燃焼し、発生した燃焼ガスの圧力により駆動されて往復運動するピストン6が、コンロッド7を介してクランク軸8を回転駆動する。
内燃機関Eの冷却回路20は、クランク軸8の動力により駆動されて冷却液を圧送する冷却液ポンプ21と、内燃機関Eの暖機時に閉弁し、暖機完了後に開弁するサーモスタット22と、走行風により冷却されて前記機関本体を冷却した後の冷却液の熱を外部に放熱するラジエータ23とを備える。そして、冷却液ポンプ21、サーモスタット22およびラジエータ23は、冷却回路20に設けられる冷却液通路24を介して連通する。冷却液通路24は、前記機関本体の内部に形成されて冷却液ポンプ21から吐出された冷却液が導かれる内部冷却液通路と、前記機関本体の外部で導管群により形成される外部冷却液通路とを含む。
前記内部冷却液通路は、シリンダブロック1に形成されて冷却液ポンプ21から吐出された冷却液が導かれるブロック側冷却ジャケット25と、シリンダヘッド2に形成されてブロック側冷却ジャケット25から流出した冷却液が導かれるヘッド側冷却ジャケット26とを含む。前記外部冷却液通路は、ヘッド側冷却ジャケット26から流出した冷却液をラジエータ23に導く流出通路27と、ラジエータ23で放熱して温度が低下した冷却液をラジエータ23から冷却液ポンプ21に導く流入通路28とを含む。そして、冷却液ポンプ21は流入通路28の下流端付近に設けられ、サーモスタット22は流出通路27の上流端付近に設けられる。
それゆえ、冷却液ポンプ21から吐出された冷却液は、ブロック側冷却ジャケット25に流入してシリンダブロック1を冷却した後、ヘッド側冷却ジャケット26に流入してシリンダヘッド2を冷却し、次いでサーモスタット22が開弁しているときは、サーモスタット22および流出通路27を流通してラジエータ23に流入し、さらにラジエータ23で温度が低下した後、流入通路28を流通して冷却液ポンプ21に吸入され、冷却回路20を循環する。また、サーモスタット22の閉弁時は、冷却液は、ヘッド側冷却ジャケット26と流入通路28とを連通させるバイパス通路を流通して冷却液ポンプ21に吸入されて、前記内部冷却液通路を循環する。
内燃機関Eにおいて、潤滑油が循環する潤滑系統では、クランク軸8の動力で駆動されるオイルポンプにより、下部クランクケース4の底部により構成されるオイルパン16から汲み上げられて吐出された潤滑油が、供給油路を流通して前記機関本体の摺動部などの潤滑箇所に導かれた後、戻り油路を経て、またはクランク室5内で落下して、オイルパン16に帰還する。
図2を併せて参照すると、内燃機関Eの機関弁を構成する吸気弁13および排気弁14は、動弁装置Vにより開閉作動するように駆動されて、クランク軸8の回転位置に対応して、所定のリフト量および所定の開閉時期に吸気口11aおよび排気口12aをそれぞれ開閉する。動弁装置Vは、吸気弁13および排気弁14をそれぞれ開閉する液圧アクチュエータ31と、液圧アクチュエータ31に対する作動液の給排を行う液圧回路32とを備える。そして、液圧アクチュエータ31および液圧回路32は、前記潤滑系統とは分離されて設けられる。このため、前記潤滑系統の潤滑油が液圧回路32および液圧アクチュエータ31に導かれることはない。
吸気弁13および排気弁14に対応して設けられる液圧アクチュエータ31は、同じ基本的構造を有し、それぞれ、シリンダヘッド2に固定される作動シリンダ31aと、作動シリンダ31aに摺動可能に収容されると共に吸気弁13または排気弁14の弁ステムの先端部13a,14aに当接する作動ピストン31bとを備える。作動シリンダ31aと作動ピストン31bとの間に形成される可変容積室である作動室31cに対して、作動液が液圧回路32により給排される。そして、作動室31c内の作動液の液圧に応じて作動ピストン31bに作用する開弁力が、弁ばね15による閉弁力に打ち勝つとき、該開弁力で吸気弁13または排気弁14が開弁駆動され、前記開弁力が前記閉弁力よりも小さいとき、該閉弁力により吸気弁13または排気弁14が閉弁する。
液圧回路32は、冷却回路20と、作動室31cに導かれる作動液を高圧にする高圧形成部としての高圧ポンプ33と、電子制御ユニットにより液圧アクチュエータ31に対する作動液の給排を制御する液圧制御弁34とを備える。そして、冷却回路20、高圧ポンプ33および液圧制御弁34は、液圧回路32に設けられる液圧通路35を介して連通する。
ここで、冷却液通路24が形成される前記機関本体および前記導管群は、液圧回路32においては作動液の供給源であり、冷却液ポンプ21は、液圧回路32においては、前記供給源から汲み上げた作動液を高圧ポンプ33に供給する低圧ポンプであり、ラジエータ23は、液圧回路32においては、内燃機関Eの運転に起因する作動液の温度変化を抑制するための温度調整手段であり、冷却液通路24は、液圧回路32においては液圧通路35の一部である。それゆえ、第1実施形態では、液圧回路32の一部は冷却回路20により構成され、冷却回路20を流通する冷却液が作動液である。
そして、液圧通路35は、ヘッド側冷却ジャケット26内の冷却液(作動液)を高圧ポンプ33に導く通路37(図2参照)および前記内部冷却液通路から構成されて、冷却液ポンプ21から吐出された冷却液を高圧ポンプ33に導く供給通路36と、高圧ポンプ33から吐出された高圧の冷却液を作動室31cに導く吐出通路38と、吐出通路38から分岐して、吐出通路38の冷却液を液圧回路32の低圧部に導く戻り通路39とを含む。ここでは、前記低圧部は、ヘッド側冷却ジャケット26または冷却液ポンプ21の吸入側での流入通路28である。供給通路36、吐出通路38および戻り通路39は、シリンダヘッド2を含む前記機関本体または導管により形成される。供給通路36には、冷却液ポンプ21から高圧ポンプ33への冷却液の流通を許容し、高圧ポンプ33からポンプへの冷却液の流通を阻止する逆止弁40が設けられる。
冷却液ポンプ21から吐出された冷却液を吸入して、高圧になった冷却液を吐出通路38に吐出する高圧ポンプ33は、シリンダヘッド2に固定されたシリンダ33aと、シリンダ33aに摺動可能に収容されるピストン33bとを備え、シリンダ33aとピストン33bとの間にはポンプ室33cが形成される。各高圧ポンプ33は、クランク軸8の動力により駆動機構41を介して駆動される。駆動機構41は、クランク軸8に伝動機構を介して連結されると共にその1/2の回転速度で回転するカム軸42と、カム軸42に設けられる駆動カム43により押圧されて揺動するカムフォロア44とを備える。シリンダヘッド2に固定される支持軸45に揺動可能に支持されるカムフォロア44は、隆起部43aを有する駆動カム43に転がり接触するローラ44aと、ピストン33bを押圧する押圧部44bとを有する。
そして、動弁装置Vにおいて、液圧アクチュエータ31、高圧ポンプ33、駆動機構41、液圧制御弁34は、シリンダヘッド2およびヘッドカバー3により形成される動弁室R内に配置される。
戻り通路39に設けられる液圧制御弁34は、戻り通路39を開閉すると共に、開弁時には戻り通路39を流通する冷却液の流量を制御することにより、作動室31c内の液圧を制御する。そして、前記電子制御ユニットからの指令に基づいて、液圧制御弁34が戻り通路39を開閉する時期、および液圧制御弁34が制御する冷却液の流量により、液圧アクチュエータ31の作動ピストン31bの作動状態が制御され、ひいては吸気弁13または排気弁14の開閉時期およびリフト量であるバルブ作動特性が制御される。
前記電子制御ユニットには、機関回転速度や機関負荷など、内燃機関Eの運転状態を検出する機関運転状態検出手段からの信号と、車速などの前記自動二輪車の走行状態を検出する車両走行状態検出手段からの信号が入力される。そして、前記電子制御ユニットは、前記運転状態および前記走行状態に応じて液圧制御弁34を制御し、ひいては吸気弁13および排気弁14の前記バルブ作動特性を、前記運転状態および前記走行状態に応じた最適な値となるように変更する。
なお、吸気弁13および排気弁14に対応してそれぞれ設けられる液圧回路32の構成要素である高圧ポンプ33および液圧制御弁34などの基本的構造は同じである。
次に、前述のように構成された第1実施形態の作用および効果について説明する。
内燃機関Eが運転されて、クランク軸8によりカム軸42が回転駆動されると、クランク軸8の回転に同期して回転する駆動カム43により揺動するカムフォロア44を介して往復駆動されるピストン33bにより、高圧ポンプ33が、ヘッド側冷却ジャケット26内の、冷却液ポンプ21により加圧された冷却液を供給通路36を通じてポンプ室33cに吸入し、高圧となった冷却液を吐出通路38に吐出する。前記電子制御ユニットにより制御される液圧制御弁34の開閉時期により設定される時期および開弁時の液圧制御弁34による戻り通路39での冷却液の流量に応じて、作動室31c内の液圧が制御され、その液圧に応じた開閉時期およびリフト量で、吸気弁13または排気弁14が開閉作動する。このようにして、前記バルブ作動特性が前記運転状態および前記走行状態に応じて変更されて、最適な前記バルブ作動特性が得られる。
内燃機関Eが運転されて、クランク軸8によりカム軸42が回転駆動されると、クランク軸8の回転に同期して回転する駆動カム43により揺動するカムフォロア44を介して往復駆動されるピストン33bにより、高圧ポンプ33が、ヘッド側冷却ジャケット26内の、冷却液ポンプ21により加圧された冷却液を供給通路36を通じてポンプ室33cに吸入し、高圧となった冷却液を吐出通路38に吐出する。前記電子制御ユニットにより制御される液圧制御弁34の開閉時期により設定される時期および開弁時の液圧制御弁34による戻り通路39での冷却液の流量に応じて、作動室31c内の液圧が制御され、その液圧に応じた開閉時期およびリフト量で、吸気弁13または排気弁14が開閉作動する。このようにして、前記バルブ作動特性が前記運転状態および前記走行状態に応じて変更されて、最適な前記バルブ作動特性が得られる。
そして、動弁装置Vは吸気弁13および排気弁14を開弁駆動する液圧アクチュエータ31と液圧回路32とを備え、液圧回路32は、前記潤滑系統とは分離されて設けられ、しかも冷却回路20に設けられるラジエータ23を備えることにより、前記潤滑系統を流通する潤滑油が液圧回路32を流通することがないことから、スラッジ、カーボン粒子および摺動部での摩耗により発生した金属粉などの異物が作動液(冷却液)に混入することが防止または抑制される。しかも、ラジエータ23により、内燃機関Eの運転に起因する機関温度の上昇に伴う冷却液の温度上昇が抑制されることから、冷却液の粘度や体積などの性状の変化を小さい範囲に止めることができるので、機関弁を開弁駆動する液圧アクチュエータ31を備える内燃機関Eの動弁装置Vにおいて、高精度で安定した前記バルブ作動特性を得ることができる。
液圧回路32の一部は、冷却回路20の全体、すなわち冷却液ポンプ21、ラジエータ23および冷却液通路24などの構成要素を利用して構成されることにより、液圧アクチュエータ31に専用の液圧回路を独立して設ける必要がないので、液圧回路32が簡素化されて、内燃機関Eが小型・軽量化され、しかも内燃機関Eの点検箇所も少なくなることから、メンテナンス性が向上する。また、作動液は冷却回路20を流通する冷却液であることにより、ロングライフクーラントなどの温度変化による粘度の変化が小さい冷却液を使用することで、機関温度の変化に伴う冷却液の粘度の変化が一層抑制されるので、より高精度で安定した前記バルブ作動特性を得ることができる。
そして、前記温度調整手段が冷却回路20のラジエータ23であることにより、ラジエータ23が、内燃機関Eの暖機完了後は、機関温度の上昇による冷却液の温度上昇を抑えて、冷却液の温度をほぼ一定または狭い変化範囲内に維持することができる機能を有することから、液圧アクチュエータ31に対して給排される冷却液の粘度などの性状をほぼ一定または狭い変化範囲内に維持することができるので、高精度で安定した前記バルブ作動特性、特に、内燃機関Eの運転期間の殆どを占める暖機完了後の運転期間中、一層高精度で安定した前記バルブ作動特性を得ることができる。
次に、図3に図2を併せて参照して、本発明の第2実施形態を説明する。この第2実施形態は、液圧アクチュエータ31および液圧回路50が冷却回路20から分離されて、動弁装置Vに専用の液圧回路として設けられる点で第1実施形態と相違し、その他は基本的に同一の構成を有するものである。そのため、同一の部分についての説明は省略または簡略にし、異なる点を中心に説明する。なお、第1実施形態の部材と同一の部材または対応する部材については、必要に応じて同一の符号を使用した。
図3を参照すると、冷却回路20から分離されて設けられる液圧回路50は、前記供給源として、作動液が貯留されたタンク51と、前記温度調整手段として、ラジエータ23とは別個のラジエータ52と、図2に示されるように、動弁室R内に配置されると共にカム軸42により駆動されてタンク51の作動液を汲み上げる低圧ポンプ53(図2中、二点鎖線で示される。)とを備える。そして、タンク51の作動液を低圧ポンプ53に導く吸入通路54(図2中、二点鎖線で示される。)を含む液圧通路35において、供給通路36(図2中、その一部が二点鎖線で示される。)は低圧ポンプ53から吐出された作動液を高圧ポンプ33に導き、戻り通路55(図2中、その一部が二点鎖線で示される。)は吐出通路38の作動液を、液圧回路50の低圧部としてのタンク51に導く。
なお、液圧アクチュエータ31、高圧ポンプ33、駆動機構41、吐出通路38、液圧制御弁34および電子制御ユニットは、第1実施形態と同じである。また、吸入通路54および戻り通路55は、シリンダヘッド2を含む前記機関本体または導管により形成される。
タンク51と、吸入通路54に設けられるラジエータ52とは、前記自動二輪車の走行時に、走行風により冷却される位置で、内燃機関Eまたは前記自動二輪車の車体に取り付けられる。
また、作動液は、内燃機関Eの前記潤滑系統に使用される潤滑油とは異なる性質を有する液体であり、温度変化に対して粘度の変化が少ない液体が使用される。このような作動液として、例えば、ナフサを原料として製造される化学合成油や内燃機関Eの冷却液としても使用されるロングライフクーラント、車両のブレーキ装置に使用されるブレーキ液がある。
第2実施形態によれば、次の作用および効果が奏される。
内燃機関Eが運転されて、カム軸42により駆動される低圧ポンプ53が、タンク51からラジエータ52で冷却された作動液を吸入通路54を通じて吸入する。第1実施形態と同様に高圧ポンプ33が、低圧ポンプ53により加圧された作動液を供給通路36を通じてポンプ室33cに吸入し、高圧となった作動液を吐出通路38に吐出する。そして、第1実施形態と同様に、液圧制御弁34により高圧ポンプ33からの作動液が供給される液圧アクチュエータ31の作動室31c内の液圧が制御されて、吸気弁13または排気弁14の前記バルブ作動特性が前記運転状態および前記走行状態に応じて変更されて、最適な前記バルブ作動特性が得られる。
内燃機関Eが運転されて、カム軸42により駆動される低圧ポンプ53が、タンク51からラジエータ52で冷却された作動液を吸入通路54を通じて吸入する。第1実施形態と同様に高圧ポンプ33が、低圧ポンプ53により加圧された作動液を供給通路36を通じてポンプ室33cに吸入し、高圧となった作動液を吐出通路38に吐出する。そして、第1実施形態と同様に、液圧制御弁34により高圧ポンプ33からの作動液が供給される液圧アクチュエータ31の作動室31c内の液圧が制御されて、吸気弁13または排気弁14の前記バルブ作動特性が前記運転状態および前記走行状態に応じて変更されて、最適な前記バルブ作動特性が得られる。
それゆえ、第2実施形態によれば、第1実施形態における液圧回路50が前記潤滑系統から分離されて形成されることおよび作動液として冷却液が使用されることによる作用および効果と同様の作用および効果が奏されるほか、次の作用および効果が奏される。すなわち、作動液は、前記潤滑系統に使用される潤滑油とは異なる性質を有することにより、前記潤滑系統に使用される潤滑油に求められる性質とは無関係に、温度変化による粘度や体積の変化が小さい作動液を使用することができることのほかに、冷却回路20の冷却液が作動液である場合に比べて、冷却液に求められる性質とも無関係に、内燃機関Eの運転時における液圧アクチュエータ31の作動の高精度化および安定化に効果的な作動液を使用することができるので、機関温度の変化に伴う作動液の粘度および体積の変化が一層抑制されて、一層、高精度で安定した前記バルブ作動特性を得ることができる。
また、前記自動二輪車の走行中は、ラジエータ52ばかりか、タンク51も走行風により冷却されて、機関温度の上昇による作動液の温度上昇を抑制できるので、この点でも機関温度の変化に伴う作動液の粘度および体積の変化が抑制されて、高精度で安定した前記バルブ作動特性の確保に寄与できる。
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
前記高圧形成部は、少なくとも高圧ポンプ33およびアキュムレータを含んで構成されて、作動液が該アキュムレータから作動室31cに導かれてもよい。駆動カム43は、吸気弁13用および排気弁14用の各高圧ポンプ33に対して、別個に設けられてもよいし、該各高圧ポンプ33の位置によっては共用されてもよい。
前記高圧形成部は、少なくとも高圧ポンプ33およびアキュムレータを含んで構成されて、作動液が該アキュムレータから作動室31cに導かれてもよい。駆動カム43は、吸気弁13用および排気弁14用の各高圧ポンプ33に対して、別個に設けられてもよいし、該各高圧ポンプ33の位置によっては共用されてもよい。
また、吸気弁13および排気弁14のいずれか一方または一部が、液圧アクチュエータ31により駆動され、残りが、カム軸42に形成された動弁カムにより開弁駆動されてもよい。動弁装置Vにより得られる前記バルブ作動特性は、前記運転状態および前記走行状態に関わらず、一定であってもよい。
ラジエータ20,52は、走行風のみでなく、冷却ファンによる冷却風で冷却されてもよい。前記温度調整手段が、作動液を加熱する加熱手段、例えばヒータを備え、内燃機関Eの運転に起因する機関温度の変化による作動液の粘度の変化範囲が狭くなるように、作動液が低温になる極冷間時に、加熱手段により作動液の温度を上昇させてもよい。また、車両は、自動二輪車以外の車両であってもよい。
1…シリンダブロック、2…シリンダヘッド、3…ヘッドカバー、4…下部クランクケース、5…クランク室、6…ピストン、7…コンロッド、8…クランク軸、9…燃焼室、10…燃焼空間、11…吸気ポート、12…排気ポート、13…吸気弁、14…排気弁、15…弁ばね、16…オイルパン、20…冷却回路、21…冷却液ポンプ、23…ラジエータ、24…冷却液通路、25…ブロック側冷却ジャケット、26…ヘッド側冷却ジャケット、27…流出通路、28…流入通路、31…液圧アクチュエータ、32…液圧回路、33…高圧ポンプ、34…液圧制御弁、35…液圧通路、36…供給通路、37…通路、38…吐出通路、39…戻り通路、40…逆止弁、41…駆動機構、42…カム軸、43…駆動カム、44…カムフォロア、45…支持軸、50…液圧回路、51…タンク、52…ラジエータ、53…低圧ポンプ、54…吸入通路、55…戻り通路、
E…内燃機関、V…動弁装置、R…動弁室。
E…内燃機関、V…動弁装置、R…動弁室。
Claims (4)
- 吸気弁または排気弁からなる機関弁を開弁駆動する液圧アクチュエータと、前記液圧アクチュエータに対する作動液の給排を行う液圧回路とを備える内燃機関の動弁装置において、
前記液圧回路は、前記内燃機関の潤滑系統とは分離されて設けられ、前記内燃機関の運転に起因する前記作動液の温度変化を抑制するための温度調整手段を備えることを特徴とする内燃機関の動弁装置。 - 前記作動液は、前記潤滑系統に使用される潤滑油とは異なる性質を有することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の動弁装置。
- 前記内燃機関は冷却回路を流通する冷却液により冷却される液冷式内燃機関であり、前記液圧回路の一部は前記冷却回路により構成され、前記作動液は前記冷却液であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関の動弁装置。
- 前記温度調整手段は、前記冷却回路のラジエータであることを特徴とする請求項3記載の内燃機関の動弁装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003385293A JP2005146978A (ja) | 2003-11-14 | 2003-11-14 | 内燃機関の動弁装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003385293A JP2005146978A (ja) | 2003-11-14 | 2003-11-14 | 内燃機関の動弁装置 |
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JP2005146978A true JP2005146978A (ja) | 2005-06-09 |
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ID=34693411
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007148523A1 (ja) * | 2006-06-19 | 2007-12-27 | Yamaha Hatsudoki Kabushiki Kaisha | 自動二輪車 |
-
2003
- 2003-11-14 JP JP2003385293A patent/JP2005146978A/ja active Pending
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