JP2005139292A - 抗菌性樹脂組成物及び抗菌性製品 - Google Patents

抗菌性樹脂組成物及び抗菌性製品 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な抗菌活性と外観維持性とを備える抗菌性の樹脂マトリックスを形成可能な抗菌性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】抗菌剤2を、コア粒子4と、該コア粒子4の表面の少なくとも一部を被覆する難水溶性銀塩8とで構成し、この抗菌剤2と樹脂材料とを含む抗菌性樹脂組成物とする。この組成物によれば、難水溶性銀塩を均一に樹脂マトリックスに分布させることができ、耐久性に優れた抗菌活性と耐変色性とを備える抗菌性製品を得ることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、抗菌性樹脂組成物及び抗菌性製品に関する。
近年、清潔志向の高まりに伴って、多くの分野において抗菌化が進められている。従来より、抗菌剤としては有機系抗菌剤と無機系抗菌剤とが知られている。これらの抗菌剤は、樹脂材料に混合され、抗菌性の樹脂成形品、抗菌性繊維、抗菌性コートとして供給されることが多い。一般に、無機系抗菌剤が、安全性及び抗菌活性の面において優れているとされているが、溶解性ガラス等の溶解を伴う抗菌剤では、抗菌活性の耐久性が低い傾向があるが、一定以上の抗菌活性を維持するためにマトリックスへの添加量を増大させるのに必要な分散性を備えておらず、また、銀担持ゼオライト系抗菌剤では、抗菌活性の耐久性に優れるものの外部環境により耐変色性が低下する傾向があった。
ここに、無機系抗菌剤として、銀塩を均一に酸化ジルコニウム中に分散担持させた抗菌剤や一定粒径以下に微粉化した塩化銀と塩化カリウムなどのアルカリ金属塩化物との混合物を有効成分とする銀系抗菌剤が開示されている(特許文献1、特許文献2)。前者の抗菌剤は、担体である酸化ジルコニウムの原料と銀塩の原料とを含有するスラリーから水を除去し熱処理を行うことで得られるが、得られる銀塩担持酸化ジルコニウム粉末の流動性等をコントロールすることは困難であった。また、後者の抗菌剤は、混合粉末ゆえに粒径制御が困難であるとともに、抗菌成分たる塩化銀以外に大量のアルカリ金属塩化合物を伴っているという問題があった。
特開平11−228320号公報 特開2002−161012号公報
本発明者によれば、樹脂マトリックスに分散される場合には、樹脂材料に良好に分散され、あるいは最終的に得られる樹脂マトリックスにおいて抗菌剤が良好に分散されて保持されていないと、抗菌活性が発揮されないとともに抗菌活性が低下しやすい他、耐変色性が低下することがわかった。すわなち、樹脂材料や樹脂マトリックスに対して十分な分散性能を有していない抗菌剤は、使用状態において抗菌活性及び耐変色性が低下することがわかった。
本発明は、良好な抗菌活性と外観維持性とを備える抗菌性の樹脂マトリックスを形成可能な抗菌性樹脂組成物及びかかる抗菌性樹脂マトリックスを備える抗菌性製品を提供することを、一つの目的とする。
本発明者は、従来抗菌性が低くしかも凝集しやすくて分散性が低い難水溶性の銀塩に着目して検討し、かかる銀塩をコア粒子の表面に被膜状に形成することで、予想を超えて高い抗菌活性を発揮するとともに、凝集が抑制されて樹脂材料との混合性や樹脂マトリックスへの良好な分散性能を実現できることを見出して本発明を完成した。
すわなち、本発明によれば以下の手段が提供される。
本発明の抗菌性樹脂組成物は、
抗菌性樹脂組成物であって、
樹脂材料と、
コア粒子と、該コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する難水溶性銀塩とを備える銀系抗菌剤と、
を含有している。
本発明の抗菌性樹脂組成物によれば、コア粒子と該コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する難水溶性銀塩とを銀系抗菌剤として含有するため、難水溶性銀塩の樹脂材料への分散性が向上され、樹脂組成物及び硬化された樹脂マトリックスに難水溶性塩を良好に分散させることが可能となっている。この結果、本抗菌性樹脂組成物によれば、耐久性ある抗菌活性と耐変色性とを備える樹脂組成物を得ることができるとともに、耐久性ある抗菌活性と耐変色性とを備える樹脂マトリックスを備える抗菌性製品を得ることができる。本抗菌性樹脂組成物は、抗菌性成形体用(特に射出成形用)、抗菌性塗料用、抗菌性繊維用、抗菌性コート用、抗菌性フィルム用、抗菌性シート用、抗菌性接着剤用、抗菌性インク用、抗菌性トナー用等とすることができる。なお、抗菌性樹脂組成物は、樹脂材料と銀系抗菌剤とを含有する他、本発明の目的を損なわない範囲で任意の材料を含有することができ、樹脂材料等の形態に応じ、粉末、液体、ペースト、スラリー、ゲル、成形用のペレットあるいはコンパウンド等各種の形態を採ることができる。また、樹脂マトリックスは、抗菌性樹脂組成物の樹脂材料組成物が成形されて形成されるマトリックスであり、三次元形状を有する成形体、被膜、層体、フィルム、シート等の各種の形態を採ることができる。
本抗菌性樹脂組成物においては、前記コア粒子は前記樹脂材料と同一あるいは異なる組成の樹脂製粒子であることが好ましく、該樹脂製粒子は、熱可塑性樹脂材料であることが好ましく、該熱可塑性樹脂材料は、ポリプロピレン又はポリエチレンであることが好ましい。また、前記コア粒子は、平均粒径が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。さらに、前記コア粒子は球状であることが好ましい。
また、本抗菌性樹脂組成物においては、前記難水溶性銀塩は、塩化銀、ヨウ化銀、及び硫酸銀からなる群から選択される1種あるいは2種以上であることが好ましく、より好ましくは、難水溶性銀塩は塩化銀である。また、前記難水溶性銀塩を、前記コア粒子1重量部に対して0.001重量部以上1.0重量部以下備えることが好ましい。さらに、本抗菌性樹脂組成物においては、前記銀系抗菌剤を樹脂材料100重量部に対して0.01重量部以上10重量部以下含有することが好ましい。
本発明の抗菌性製品は、
抗菌性製品であって、
該抗菌性製品の少なくとも一部に、
樹脂マトリックスと、該樹脂マトリックス中に分散されたコア粒子及び難水溶性銀塩とを含有する、
抗菌相を備えることもできるし、また、
該抗菌性製品の少なくとも一部に、
樹脂マトリックスと、該樹脂マトリックスに分散された該樹脂マトリックスの樹脂とは異なる組成の樹脂分散相及び難水溶性銀塩を含有する、
抗菌相を備えることもできる。
また、本発明の抗菌性製品は、
抗菌性製品であって、
該抗菌性製品の少なくとも一部に、
上記いずれかの抗菌性樹脂組成物が成形されて形成された抗菌相を備えている。
これら本発明の抗菌性製品によれば、難水溶性銀塩が樹脂マトリックスに分散される結果、良好な抗菌活性と耐変色性とを備えるものとなっている。
本発明の抗菌性製品の製造方法は、
抗菌性製品の製造方法であって、
上記いずれかの抗菌性樹脂組成物を成形する工程、
を備えている。この方法によれば、樹脂マトリックスに難水溶性銀塩が良好に分散されて良好な抗菌活性と耐変色性とを発揮する抗菌相を備える抗菌性製品を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について適宜図面を参照しながら説明する。なお、これらの図面に示される本発明の各種の形態は本発明を説明するための一例であって本発明を限定するものではない。
(抗菌性樹脂組成物)
(樹脂材料)
本抗菌性樹脂組成物の樹脂材料は、特に限定しないで、本組成物の適用先に応じた各種の熱可塑性樹脂材料あるいは熱硬化性樹脂材料を用いることができる。熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、液晶ポリマー、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は単独で、あるいは2種以上をそれぞれあるいは組み合わせてポリマーブレンドとして用いることができる。好ましくは、ポリエステル、ABS、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等を用いることができ、なかでも、ポリエステル、ABS、ポリプロピレン及びポリエチレンを含むポリオレフィンがより好ましい。
また、熱硬化性樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂等)等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は単独で、あるいは2種以上をそれぞれあるいは組み合わせてポリマーブレンドとして用いることができる。好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等である。
(銀系抗菌剤)
次に、本抗菌性樹脂組成物に含まれる銀系抗菌剤について説明する。銀系抗菌剤の一形態を図1に示す。この銀系抗菌剤2は、表面が難水溶性銀塩8によって被覆されたコア粒子4を有している。
(コア粒子)
本銀系抗菌剤におけるコア粒子は、難水溶性銀塩をその外表面に被膜状に保持させるための担体粒子である。したがって難水溶性銀塩の被膜を備えうる表面を備えている限り中空状であっても中実状であってもよく、また、多孔質であってもよいが、好ましくは中実状である。また、コア粒子の外形形状は、球状、薄片状、針状、不定形状等各種の形態を採ることができるが、抗菌剤調製時における溶媒分散性や溶媒との濡れ性、抗菌剤として調製された後の流動性や分散性を考慮すると球状であることが好ましい。
コア粒子の平均粒径は0.1μm以上であることが好ましい。0.1μm未満であると、難水溶性銀塩で被覆したコア粒子同士の凝集傾向が大きくなり、流動性が低下し、最終製品への分散性が低下する傾向にあるからである。好ましくは、1μm以上である。1μm以上であると1μm未満の場合と比較して、流動性の低下を十分に抑制して取り扱いやすい抗菌剤を得ることができる。また、コア粒子の平均粒径は100μm以下であることが好ましい。100μmを超えると均一な難水溶性銀塩の被膜を形成できず、また、得られる抗菌剤の耐久性低下及び変色傾向の増大等によって最終製品の外観不良が早期に生ずる傾向にある。好ましくは50μm以下である。50μm以下であると、50μm超の場合と比較してこれらの性能の低下傾向を十分に抑制することができる。したがってコア粒子の粒径の好ましい範囲としては0.1μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上50μm以下とすることができる。なお、コア粒子の平均粒径は、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法等によって測定することができ、好ましくは、レーザー回折法によって測定する。
コア粒子の材料は特に限定しないで、抗菌剤調製時あるいは抗菌剤の適用先を考慮して公知の材料から選択して用いることができる。例えば、各種の有機材料及び無機材料を用いることができる。無機材料としては、ガラス、セラミックスの他、無機塩類などの各種無機化合物の粉末を用いることができる。有機材料としては、ゴムや樹脂などの高分子材料を主体とすることが好ましい。特に、コア粒子を樹脂製粒子とすれば、粒径制御や密度など流動性及び分散性に関連する特性を制御することが容易であるからである。また、抗菌剤調製時に使用する溶媒に応じて適切な濡れ性や溶媒分散性を得ることのできる表面特性(疎水性及び親水性)や密度を制御するのが容易であるからである。
コア粒子として樹脂製粒子とする場合の樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、液晶ポリマー、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は単独で、あるいは2種以上をそれぞれあるいは組み合わせてポリマーブレンドとして用いることができる。熱可塑性樹脂を主体とするコア粒子は、抗菌剤をプラスチックマトリックスへ適用する場合にコア粒子を溶融させてプラスチックマトリックスに複合化させることもできる。懸濁重合法が適用される熱可塑性樹脂は球状の粒子を容易に得ることができる点において好ましい。熱可塑性樹脂としては、好ましくは、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれらの誘導体等を用いることができる。
なかでも、スチレン単量体ユニットからなるポリマー(ポリスチレン)あるいはスチレン単量体ユニットを有するコポリマーあるいはこれらのいずれかと他のポリマーとのポリマーブレンドを含むスチレン系ポリマーを用いることが好ましい。スチレン系ポリマーは、懸濁重合によって取得される場合には球に近い粒子形状が得られやすいとともに、表面疎水性や密度の面において、抗菌剤調製時に使用する溶媒が水のときに有効である。また、スチレン系ポリマーは、水を溶媒として塩化銀などの難水溶性銀塩で被覆した抗菌剤のコア粒子として使用したときには、溶媒除去後に複合粒子の分離性が良好であり、解砕を省略することも可能である。これらのスチレン系ポリマーは、スチレン単量体ユニットの芳香環の1あるいは2以上の水素原子が置換基により置換されていてもよいし、また、ジビニルベンゼンなどの架橋剤を用いて架橋されていてもよい。
また、メタクリル酸メチル単量体ユニットからなるホモポリマー(ポリメタクリル酸メチル)あるいはこの単量体ユニットを有するコポリマーあるいはこれらのポリマーとのポリマーブレンドを含むメタクリル酸メチル系ポリマーを用いることも好ましい。メタクリル酸メチル系ポリマーは、懸濁重合によって取得される場合には球に近い粒子形状が得られやすい。また、粒径制御の点においても有効である。
また、例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂等)等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は単独で、あるいは2種以上をそれぞれあるいは組み合わせてポリマーブレンドとして用いることができる。
コア粒子として樹脂製粒子を用いる場合、該樹脂製粒子の樹脂の組成は、本抗菌性組成物の樹脂材料と同一の組成とすることもできるし、異なる組成とすることもできる。樹脂製コア粒子の樹脂組成と樹脂材料とが同一組成であるときには、本抗菌性樹脂組成物を加熱し成形する場合に、樹脂材料の軟化あるいは溶融及び硬化とともにコア粒子も同様に軟化あるいは溶融及び硬化させることができる。また、コア粒子と樹脂材料で形成される樹脂マトリックスに粒子形態をほとんど残さずに一体化させることができる。一方、樹脂製コア粒子の樹脂組成と樹脂材料の樹脂組成とが異なるときには、両者の樹脂組成、すなわち、使用する樹脂成分の種類や配合比によって、樹脂材料の成形時にその形態を維持するか、樹脂材料とともにあるいは樹脂材料に先だって軟化あるいは溶融するかを適宜設定することができる。
なお、コア粒子の材料を選択することで、本抗菌性樹脂組成物から得られる抗菌性製品の機械的強度等の特性を調整することもできる。例えば、コア粒子を、エポキシ樹脂等の機械的強度の高いエンジニアリングプラスチックを用いて形成することで、抗菌性樹脂組成物を成形して得られる樹脂マトリックスに抗菌性以外に高い機械的強度等を付与することができる。また、コア粒子として金属、セラミックス、ゴム等を用いることで、それぞれ抗菌性樹脂組成物を成形して得られる樹脂マトリックスにそれらの特性に応じた特性、例えば、金属等の場合には機械的強度や導電性等、セラミックスの場合には耐磨耗性や耐熱性及び硬度等、ゴム等の場合には弾性等、を付与することができる。さらにまた、コア粒子の形状を選択することによって、抗菌性製品の強度等の特性を調整することもできる。例えば、繊維状のコア粒子を選択することで、樹脂マトリックスに靭性を付与することもできる。
(難水溶性銀塩)
コア粒子の少なくとも表面の一部を被覆する難水溶性銀塩は、水に難溶あるいは不溶の銀塩をいい、例えば、塩化銀、ヨウ化銀、臭化銀などのハロゲン化銀、炭酸銀、硫酸銀などの無機酸銀、酢酸銀などの有機酸銀を挙げることができる。難水溶性銀塩を実質的な抗菌成分である銀イオンの供給源として用いることで、遊離の銀イオンの溶出を抑制し、結果として適用製品における変色傾向を抑制することができる。また、好ましくは、塩化銀、ヨウ化銀、硫酸銀であり、より好ましくは塩化銀である。塩化銀は、凝集性が強く本抗菌剤への適用が有効であるとともに、水における溶解性が低いため水系から容易に析出させることができるからである。
難水溶性銀塩は、コア粒子1重量部に対して0.001重量部以上の範囲の重量比でコア粒子表面に付与されていることが好ましい。0.001重量部未満であると十分な抗菌性を発揮させることが困難だからである。より好ましくは0.01重量部以上である。0.01重量部以上であると0.01重量部未満である場合と比較して良好な抗菌性を得ることができる。また、難水溶性銀塩は、コア粒子1重量部に対して1.0重量部以下であることが好ましい。1.0重量部を超えると、コア粒子表面上において付与された難水溶性銀塩同士が凝集して抗菌剤の流動性が低下しやすくなるからである。また、変色性が顕著になるからである。より好ましくは0.1重量部以下である。0.1重量部以下であると0.1重量部を超えたときと比べて流動性の低下をよく抑制し、変色性をよく抑制できるからでる。したがって、難水溶性銀塩のコア粒子に対する好ましい重量比の範囲は、0.001重量部以上1.0重量部以下とすることができ、より好ましくは、0.01重量部以上0.1重量部以下である。
難水溶性銀塩は、コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆するように備えられていればよく、コア粒子の難水溶性銀塩による被覆形態は、コア粒子のおおよそ全表面を被覆する形態に限定するものではない。なお、コア粒子表面における難水溶性銀塩の存在形態は、難水溶性銀塩粒子が密にコア粒子の表面に付着して膜状となる他、分散して付着する形態であってもよい。このようにコア粒子の表面において該表面を被覆するように難水溶性銀塩を備えることで、理論的には明らかではないが、難水溶性の銀塩であっても有効な抗菌活性を発揮しかつ維持することができる。さらに、かかる抗菌特性とともに銀塩において顕著である変色を有効に抑制して良好な耐変色性を実現することができる。加えて、凝集性の強い粉末であっても取り扱いに適した流動性を付与することができ、この結果、樹脂材料と良好に混合され、良好に銀系抗菌剤あるいは難水溶性銀塩が分散された抗菌性樹脂組成物を得ることができる。さらに、かかる抗菌性樹脂組成物の樹脂材料に基づいて成形したときには、形成される樹脂マトリックスにも、銀系抗菌剤あるいは難水溶性銀塩が良好な分散性をもって保持されることになる。このように樹脂マトリックスに抗菌剤あるいは難水溶性銀塩が混合される。抗菌剤が適用される樹脂マトリックスにおいて銀系抗菌剤あるいは難水溶性銀塩がよく分散されて保持される結果、抗菌活性を安定して維持でき、しかも耐変色性に優れる適用製品を得ることができる。さらに、難水溶性銀塩は、耐水性及び耐熱性にも優れている。
銀系抗菌剤は、良好な抗菌活性と耐変色性とを備える結果、抗菌活性や耐変色性のそれぞれの要請に応じた適切な配合比率で抗菌性樹脂組成物に配合することができる。良好な抗菌活性を有することから、低い添加量でも十分な抗菌性能を発現させることができる。低い添加量によれば、最終的に得られる抗菌性製品の外観や性能を損なうことがないという利点がある。さらに、銀系抗菌剤は、良好な分散性を備えるため、低い添加量であっても良好に樹脂材料に分散され、樹脂材料を成形して得られる樹脂マトリックスにおいても良好に分散され、抗菌性製品の外観を損なうことなく、良好な抗菌活性と耐変色性を発揮することができる。樹脂材料100重量部に対して0.01重量部以上で含有されていることが好ましい。0.01重量部未満であると十分な抗菌効果が得られにくいからである。好ましくは、0.04重量部以上である。0.04重量部以上であると0.04重量部未満のときと比べて耐水性が顕著に向上するからである。また、銀系抗菌剤は樹脂材料100重量部に対して10.0重量部以下であることが好ましい。10.0重量部を超えると変色程度が増大することがあり、また、表面が荒れたりする場合があるからである。好ましくは、1.0重量部以下である。1.0重量部以下であると1.0重量部超のときと比べて十分な耐候性を確保できるからである。したがって、銀系抗菌剤は、樹脂材料100重量部に対して0.01重量部以上10.0重量部以下であることが好ましい。より好ましくは、0.04重量部以上1.0重量部以下である。
なお、樹脂材料に対して銀系抗菌剤を上記範囲で含有することにより、樹脂材料100重量部に対して、難水溶性銀塩としては、0.0001重量部以上1.0重量部以下であることが好ましく、より好ましくは、0.0004重量部以上0.1重量部以下である。
(銀系抗菌剤の製造)
なお、このような銀系抗菌剤は、例えば以下の方法によって製造することができる。
すなわち、その方法は、銀イオンと、銀イオンと難水溶性銀塩を生成可能な対イオンと、コア粒子と、該コア粒子を分散可能な溶媒と、を含む難水溶性銀塩析出系を調製して、前記難水溶性銀塩を前記コア粒子表面に析出させる工程と、
前記難水溶性銀塩を析出後の前記難水溶性銀塩析出系から溶媒を除去する工程と、
を備えている。まず、析出工程について説明する。析出工程は、コア粒子の表面に難水溶性銀塩を析出させてその表面の一部を被覆させる工程である。この析出工程では、難水溶性銀塩の構成要素である、銀イオンとその対イオンのほか、コア粒子と、該コア粒子を分散可能な溶媒とを備えている。
コア粒子としては、既に述べた各種形態、サイズ、及び材料のものから、本析出工程に適合するものを選択して用いることができる。特に、析出系に使用する溶媒との関係において、適切なものを選択することが好ましい。すわなち、使用溶媒における不溶性及び分散性、乾燥後における解砕性などを考慮して選択することが好ましい。
析出系を構成する溶媒は、コア粒子を分散可能であってかつ難水溶性銀塩を析出する条件を形成可能な溶媒を用いる。用いる溶媒の種類は特に限定しないが、難水溶性銀塩を析出生成させることから、少なくとも溶媒の一部として水を用いることができる。また、適宜、コア粒子の分散性や表面濡れ性を確保するべく適宜有機溶媒を用いることができる。例えば、コア粒子としてスチレン系ポリマーを用いる場合には、析出系の溶媒として、水のみとするほか、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸などの有機溶媒を水と混合して用いることができる。
析出系における銀イオンの供給体としては、単独で溶媒への溶解性を示す銀塩あるいは酸あるいは塩基の添加により溶媒への溶解性を示す銀塩を用いることができる。例えば、硝酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀等を用いることができる。好ましくは、硝酸銀である。なお、銀イオン供給体としての銀塩は単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
析出系における対イオンの供給体は、析出させようとする難水溶性銀塩の種類によって選択することができる。また、溶解性や溶媒のpHを考慮して適切な化合物を選択することができる。対イオンとしての塩化物イオンの供給体としては、塩酸、塩化アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物等を用いることができる。これらは1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒に水を用いる場合には、溶解性及びpHの観点から塩化ナトリウムなどの中性塩類を用いることが好ましい。なお、対イオンとしては、各種ハロゲンイオン、炭酸イオン、硫酸イオン等の無機酸イオン、酢酸等の有機酸イオン等を挙げることができる。
析出系においては、銀イオンとその対イオンとは、難水溶性銀塩の理論構成比に対応させる配合比で含めることが好ましい。こうすることで、確実に所望の難水溶性銀塩を生成及び析出させることができる。例えば塩化銀(AgCl)を析出させる場合には、銀イオンと塩化物イオンとが1:1のモル比となるようにすることが好ましい。
析出系は、析出させようとする難水溶性銀塩の種類に応じて、各種イオン供給体、溶媒、さらには液性調整成分などが選択されて調製される。例えば、塩化銀の場合には、一般に硝酸銀溶液(硝酸酸性中)に塩化物溶液を加えて析出させることができる。したがって、銀イオンあるいは塩素イオンと、コア粒子と、溶媒とを含む系を準備しておき、ここに、塩素イオンあるいは銀イオンを添加し混合することで、両イオンが均一に分布して良好な状態で塩化銀を析出可能な析出系を調製することができる。好ましくは、塩素イオンとコア粒子と溶媒とともに系を準備しておき、この系に銀イオン(硝酸銀)水溶液を加えることが好ましい。こうすることで、コア粒子表面に得ようとする銀塩を確実に析出させることができる。難水溶性塩を形成する対イオンがない状態あるいは銀イオンに対して相対的に少ない状態下でコア粒子に対して銀イオンを添加すると、コア粒子の表面電荷特性等(特に、コア粒子が樹脂製の場合に生じやすい)によって、銀イオンが還元され難水溶性塩が析出する前に還元銀が生じて黒化しやすくなるからである。このように、銀が難水溶性銀塩を形成する前に、析出系にて還元銀のほか、コロイドや金属銀などといった安定な形態となることを避けて対イオンとの反応性を維持させるために、コア粒子と対イオンとが予め存在する状態で銀イオンを添加することが好ましいのである。
このように予備的な系に対して銀イオンあるいは対イオンを加えて、両者を含む析出系を調製することのほか、両イオンの存在下、系の液性を調整することによって難水溶性銀塩を析出可能な析出系を調製することもできる。例えば、銀イオン(硝酸酸性中)、コア粒子と溶媒とを含む予備的系に炭酸水素ナトリウムなどの対イオンとして炭酸イオンを供給したときには、炭酸銀は生成・析出しないが、液性を中性域とすると、炭酸銀が析出してくる。
析出系の調製時及び析出系における銀塩の析出過程においては、析出系を遮光することが好ましい。銀塩が光の照射によって分解して暗色化し、あるいは所望の銀塩が生成されないおそれがあるからである。また、析出系の調製時においては、均一な系を形成するべく系を攪拌することが好ましいが、気泡等を発生させない程度に緩やかに攪拌することが好ましい。また、コア粒子を析出系において良好に分散させるためには、予めコア粒子の分散性の良好な有機溶媒中にコア粒子を分散させてスラリー状とした上で析出系溶媒に添加することが有効である。例えば、コア粒子としてスチレン系ポリマーを用いる場合には、エタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒を用いてスラリー状とすることができる。
難水溶性銀塩の析出工程を終えたら、析出した銀塩を含む析出系から溶媒を除去する。溶媒の除去方法は、溶媒の種類によって、ろ過、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥(フリーズドライ)、噴霧乾燥(スプレードライ)等などを単独であるいは組み合わせて用いることができる。例えば、ろ過を行った後、加熱乾燥および/または送風乾燥を行うこともできる。また、凍結乾燥は、熱変性を回避できる点において有利であり、噴霧乾燥は凝集を抑制できる点において有利である。なお、溶媒除去工程においてあるいは該工程に先立って、析出系における銀イオン及び対イオン以外の成分を適当な溶媒にて洗浄しておくことが好ましい。
析出系から溶媒を除去した後は、必要に応じて解砕等を行い、本発明の抗菌剤を得ることができる。以上のプロセスによれば、コア粒子表面に容易に難水溶性銀塩を被膜状に備えさせることができる。また、凝集性の強い難水溶性銀塩を流動化し、適用するマトリックスへの分散性、混合性に優れた抗菌剤を提供することができる。また、本方法によれば、抗菌活性に優れるとともに、耐変色性及び/又は流動性を兼ね備える抗菌剤を提供することができる。さらに、耐水性や耐熱性に優れる抗菌剤も提供することができる。
本抗菌剤は、以上説明した方法によって製造されることが好ましいが、この方法によらないで、例えば、コア粒子に対して一般的なコーティング装置によって難水溶性銀塩をコーティングすることも可能であり、あるいは化学的機械的処理法によってコア粒子の表面に難水溶性銀塩を付着し被覆させることもできる。
なお、本抗菌性樹脂組成物は、樹脂材料及び銀系抗菌剤の他、本発明の目的を損なわない範囲で他の抗菌剤、無機あるいは有機充填剤、顔料、有機溶剤あるいは水などの溶媒、酸化防止剤、帯電防止剤、離型剤、潤滑剤、熱安定化剤、難燃剤、ドリップ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、遮光材、金属不活性化剤、老化防止剤、可塑剤等を適宜含めることができる。
本抗菌性樹脂組成物は、樹脂材料と銀系抗菌剤との他、適宜用途に応じた成分を混合することにより得ることができる。各種成分の添加、混合における方法としては、樹脂材料の種類や本抗菌性組成物の用途に応じて当業者に周知の各種方法を用いることができる。例えば、本抗菌性樹脂組成物が、抗菌性の樹脂成形品用であるときには、各成分を公知の方法で混合した単なるブレンド物の形態の他、1軸押出機、2軸押出機等の押出機、パンバリーミキサー、加圧ニーダー等公知の混練機を用いて混合・混練し、可塑化した上でペレット状あるいは所定の三次元形状を備える仮成形体の形態とすることができる。また、本抗菌性樹脂組成物が、抗菌性塗料用、抗菌性接着剤用、抗菌性コート用、抗菌性インクあるいはトナー用等であるときには、必要な成分を添加し混合し、用途に応じて、エマルジョン、スラリー、ペースト、ゲル等とすることができる。さらにまた、抗菌性繊維用等であるときには、必要な成分を添加し混合し、ブレンド物等適切な形態とすることができる。
(抗菌性製品)
本抗菌性樹脂組成物が含有する樹脂材料を可塑化後所定形状に硬化させることで樹脂マトリックスを備える抗菌性樹脂成形体を得ることができる。樹脂マトリックスには、抗菌性樹脂組成物中の他の成分である銀系抗菌剤あるいは難水溶性銀塩が良好に分散保持されている。かかる樹脂マトリックスは、含有する難水溶性銀塩の抗菌性に基づいて抗菌性を発揮し、抗菌相として機能する。本抗菌相における銀系抗菌剤あるいは難水溶性銀塩の含有量は、既に記載した抗菌性樹脂組成物におけるこれらの配合比率に対応するものとなっている。なお、抗菌相は、付与される形状により、立体的な三次元形状を有する成形体、繊維状、シート状、フィルム状、基材表面を被覆するコート状、基材間に介装される層状等の各種の形態を備えることができる。抗菌性樹脂成形体は、それ自体が抗菌性製品を構成する場合の他、繊維状、コート状、層状等の場合には、他の基材とともに抗菌性製品を構成する場合がある。
樹脂マトリックス中の銀系抗菌剤は各種の形態を採ることができるが、いずれの状態においても、樹脂マトリックスに難水溶性銀塩が分散された状態となっている。抗菌性樹脂組成物の成形過程において、コア粒子の形態がそのまま維持されかつコア粒子と樹脂マトリックスとが異質の組成である場合には、樹脂マトリックス中に、コア粒子と難水溶性銀塩が存在していることが観察できる。難水溶性銀塩は、コア粒子の近傍(周囲)に存在するときもあり、コア粒子と分離して樹脂マトリックス全体に分布するときもある。また、成形過程において、コア粒子が軟化あるいは溶融等してその形状が変形する場合であって樹脂マトリックスとコア粒子とが異質の組成である場合には、コア粒子に由来する分散相が存在し、その近傍にあるいは分散して難水溶性銀塩が存在する。コア粒子が樹脂製で樹脂マトリックスと異なる組成のときには、コア粒子由来相は分散相として樹脂マトリックス中区別できるときもありうる。一方、コア粒子が樹脂マトリックスと同一組成のときにはコア粒子由来相は観察するのが困難であり、樹脂マトリックスには、難水溶性銀塩が分散された状態が観察されるであろう。さらに、抗菌性樹脂組成物の成形過程において、コア粒子が軟化あるいは溶融はしないが破砕等されて細片化される場合には、細片化された状態のコア粒子(相)が樹脂マトリックスに分散された状態が観察できる。
このような抗菌相を抗菌性製品の少なくとも一部に備えることで、該一部においては抗菌性を発現し、細菌やカビの繁殖、付着を防ぎ、良好な外観と表面状態を維持することができる。また、この抗菌相は、抗菌活性の耐水性、耐熱性に優れるとともに、抗菌活性の耐久性が良好である。また、良好な耐変色性を有している。特に、銀系抗菌剤のコア粒子が樹脂製粒子である場合には、樹脂マトリックスに良好に複合化されて抗菌相の外観を損ないにくく、さらに樹脂製粒子が成形過程において溶融あるいは軟化されるか、あるいはその組成が樹脂マトリックスの組成と同一あるいは相溶性が高いなどの場合には、コア粒子が樹脂マトリックスに対してよく一体化されているため、抗菌性製品の外観も良好でかつ難水溶性銀塩も良好に樹脂マトリックスに保持される。
このような抗菌相を少なくとも一部に備える抗菌性製品としては、抗菌相を外部に曝される表層側に備えることが好ましいが、抗菌性製品全体が本抗菌相で構成されていてもよい。このような抗菌性製品としては、各種電子機器、電気機器、サニタリー用品、台所用品、文具、建築内外装材、車両等の移動体の内外装材、各種繊維製品、容器、包装材等を挙げることができる。
例えば、抗菌相自体が三次元形状を有する成形体である抗菌性製品は、抗菌性樹脂組成物を、プレス成形、射出成形、押出し成形等の公知の成形手段により任意の三次元形状を付与して製造することができる。なお、表層等に抗菌相を備える樹脂成形体である抗菌性製品も、抗菌相とともに他の相を成形し、成形と同時にあるいは逐次一体化する公知の方法により得ることができる。このような抗菌性製品としては、例えば、各種電子製品、電気製品のハウジングやパネル等の部材、各種容器、洗面台、浴槽、便座、便器等のサニタリー用品のハウジングやパネル等の部材、床材、天井材、壁材等の建築用内外装材、自動車等の車両、航空機、船舶等の移動体の各種部材や内外装材、台所用品、ペット用品等を挙げることができる。
また、抗菌相が繊維状である抗菌性製品は、抗菌性樹脂組成物を、公知のフィラメント製造方法等によってフィラメント化して、長繊維あるいは短繊維とし、これらを単独であるいは他の繊維とともに紡績したりあるいは撚糸したりして繊維あるいは糸とすることもできる。これらの繊維は、織物、編物、不織布、あるいはブラシ等の各種形態とすることができる。なお、抗菌性樹脂組成物を繊維表面にコート(付着)することによって抗菌性繊維とすることもできる。
さらに、抗菌相がシート状あるいはフィルム状である抗菌性製品は、抗菌性樹脂組成物を公知の手段によりこれらの形状とすることで製造することができ、必要に応じて基材表面に対する粘着層等の固定手段を備えるよう加工することができる。シート状あるいはフィルム状の抗菌性樹脂成形体は、そのまま使用する他、他の基材に積層あるいはラミネートされることで抗菌性製品を構成することもできる。このような抗菌性製品としては、包装用フィルムあるいはシート、保存用フィルムあるいはシート、化粧板用表層シート等の内装用フィルムあるいはシート、防護用フィルムあるいはシート等を挙げることができる。
また、任意の基材表面を被覆するコート状(塗膜、印刷等を含む)や任意の基材に介装される層状の抗菌相を備える抗菌性製品は、抗菌性樹脂組成物を、例えば、グラビアコート、ロールコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、ホイラーコート、カーテンフローコート、はけ塗り、スクリーン印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、凹版印刷等により、基材表面に付与することで得ることができる。このような抗菌性製品としては、化粧紙、内外装用ボード等の建築用内外装材、自動車等の車両、航空機、船舶等の移動体の各種表示部、内外装材、電子製品及び電気製品のハウジングやパネル等の部材を挙げることができる。
以下、本発明を具体例を挙げて説明するが、これらの具体例は本発明を説明するものであって本発明を限定するものではない。
(抗菌剤の製造)
本実施例では、表1に示す各種のコア粒子を用い、抗菌成分として塩化銀(AgCl)を用いて試料1〜6の計6種の抗菌剤を製造した。表1には、析出系における銀イオン濃度、塩素イオン濃度、反応時間及び温度を示す。なお、いずれの試料においても、反応溶液10mlに対してコア粒子1gを使用した。
まず、析出時において表1に示す各種の塩素イオン濃度となるように予め濃度が調整された塩化ナトリウム水溶液を調製し、所定量の塩化ナトリウム水溶液に対して所定量の各種コア粒子を分散させた。なお、試料2及び3においては、予めエタノールに使用するコア粒子の全量を分散させておき、この全量を塩化ナトリウム水溶液に加えて分散させた。なお、コア粒子が別途スラリーとして添加される場合には、予め塩化ナトリウム水溶液において所定の濃度調整がされている。次いで、塩素イオンとコア粒子とが存在する水溶液を攪拌しつつ、析出系の調製時において表1に示す銀イオン濃度となるように予め調整された硝酸銀水溶液の所定量を静かに注ぎ入れた後、反応容器を遮光した。それぞれ5時間静置して塩化銀を析出させた。5時間経過後、反応溶液をろ過し、多量の水で洗浄後、固形分を70℃〜80℃のオーブンにて乾燥させた。
反応溶液の残分(ろ液)をICP発光分光分析装置(Optima 2000DV、パーキンエルマージャパン製)にて分析して、銀イオン濃度(mg/L)を測定し、準備した反応液から析出した塩化銀量を算出するとともに、コアの重量で除してコアの重量当たりの塩化銀量を算出した。また、ろ液中の銀イオン濃度(mg/L)をもとに、塩化銀の反応率(被膜分収率)%を算出した。
また、得られた試料1〜6の各種抗菌剤について、以下の項目を評価した。なお、比較例として1.8重量%の銀を組成中に含むホウ酸系ガラス抗菌剤を用いて併せて評価を行った。
1.外観
目視にて色を確認した。
2.耐変色性
ポリプロピレン(トクヤマ製、ME440)に試料1〜6の各種抗菌剤を0.2重量%混合し混練し、その後、射出成形機にてプレート(長さ40mm×幅40mm×厚さ2mm)を作製し、これらのプレートの変色傾向を自記分光光度計(日立U−4000)にて測定した目視にて観察した。ΔEが1未満のときを○、1以上のときを×とした。なお、プレートは、キセノンウェザー試験機で24時間光照射した。
3.抗菌性(初期)
2.耐変色性におけるのと同様の方法でプレートを作製し、これらのプレートについて、JIS Z2801:2000に基づいて大腸菌に対する抗菌効果を評価した。生菌数が検出限界以下のときを「◎」とし、抗菌活性値が2.0以上のときを「○」とし、抗菌活性値が2.0未満のときを「×」とした。
4.抗菌性(耐水処理(耐水区分2)後)
2.耐変色性におけるのと同様の方法でプレートを作製し、これらのプレートの抗菌加工面積1cmあたり2±0.4mlの蒸留水を入れ、抗菌製品技術協議会の抗菌加工製品の抗菌力持続性試験法(2003年度版)の(1)耐水性試験4.操作(1)の項において耐水性の試験の区分2で規定される50℃で、プレートを浸漬し、保持した。16時間経過後にプレートを取り出し、乾燥させ、JIS Z2801:2000に基づいて抗菌性を評価した。生菌数が検出限界以下のときを「◎」とし、抗菌活性値が2.0以上のときを「○」とし、抗菌活性値が2.0未満のときを「×」とした。
これらの結果を表1に併せて示す。
Figure 2005139292
表1に示すように、作製した抗菌剤は白〜薄青灰色であり、被覆量が多くなると作製時において着色する傾向があったがいずれも十分に着色性が低いものであった。また、試料6を除いては、いずれのプレートの変色傾向も認められなかった。このことは同時に、難水溶性銀塩がプレートの樹脂マトリックスに凝集することなく良好に分散されていることを支持している。
さらに、抗菌性については、試料2を除いて十分に良好な結果であった。すなわち、0.2重量%という抗菌剤含有量にかかわらず有効な抗菌性を示していた。このことは同時に、抗菌剤がプレートの樹脂マトリックスに良好に分散されていることを支持している。なお、試料2において抗菌性が低いのは、抗菌成分である塩化銀の被覆量が少なく、0.2重量%の抗菌剤含有量のプレートでは抗菌活性を発現する有効量に至らなかったことによるものと考えられた。また、耐水処理後の抗菌性は、当初から抗菌性が低かった試料2のプレートを除き、いずれも良好な抗菌性を示していた。
これらの試料1〜6に対して、比較例であるホウ酸系ガラス抗菌剤では、プレートの耐変色性は不十分であり、また、抗菌性の劣化も激しかった。
以上のことから、コア粒子の表面の少なくとも一部に難水溶性銀塩が膜状に付着した銀系抗菌剤を用いることで低い添加量でも良好な抗菌活性と耐変色性を発揮させることができることがわかった。
本発明の一実施形態の銀系抗菌剤を示す図である。
符号の説明
2 銀系抗菌剤、4 コア粒子、8 難水溶性銀塩。

Claims (17)

  1. 抗菌性樹脂組成物であって、
    樹脂材料と、
    コア粒子と、該コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する難水溶性銀塩とを備える銀系抗菌剤と、
    を含有する、抗菌性樹脂組成物。
  2. 前記コア粒子は前記樹脂材料と同一あるいは異なる組成の樹脂製粒子である、請求項1に記載の抗菌性樹脂組成物。
  3. 前記コア粒子は、平均粒径が0.1μm以上100μm以下である、請求項1又は2に記載の抗菌性樹脂組成物。
  4. 前記コア粒子は球状である、請求項1〜3いずれかに記載の抗菌性樹脂組成物。
  5. 前記難水溶性銀塩は、塩化銀、ヨウ化銀、及び硫酸銀からなる群から選択される1種あるいは2種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の抗菌性樹脂組成物。
  6. 前記難水溶性銀塩は塩化銀である、請求項5に記載の抗菌性樹脂組成物。
  7. 前記難水溶性銀塩を、前記コア粒子1重量部に対して0.001重量部以上1.0重量部以下備える、請求項1〜6のいずれかに記載の抗菌性樹脂組成物。
  8. 前記銀系抗菌剤を、前記樹脂材料100重量部に対して0.01重量部以上10重量部以下含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌性樹脂組成物。
  9. 前記樹脂材料は、熱可塑性樹脂材料である、請求項1〜8のいずれかに記載の抗菌性樹脂組成物。
  10. 前記熱可塑性樹脂材料は、ポリプロピレン又はポリエチレンである、請求項9に記載の抗菌性樹脂組成物。
  11. 成形体用、塗料用、接着剤用、繊維用、コート用、フィルム用、シート用、インク用及びトナー用のいずれかである、請求項1〜10のいずれかに記載の抗菌性樹脂組成物。
  12. 抗菌性製品であって、
    該抗菌性製品の少なくとも一部に、
    樹脂マトリックスと、該樹脂マトリックス中に分散されたコア粒子及び難水溶性銀塩とを含有する、
    抗菌相を備える、抗菌性製品。
  13. 前記コア粒子は、前記樹脂マトリックスと同一あるいは異なる組成の樹脂製粒子である、請求項12に記載の抗菌性製品。
  14. 前記難水溶性銀塩は前記コア粒子周囲に存在する、請求項12又は13に記載の抗菌性製品。
  15. 抗菌性製品であって、
    該抗菌性製品の少なくとも一部に、
    樹脂マトリックスと、該樹脂マトリックスに分散される該樹脂マトリックスの樹脂とは異なる組成の樹脂分散相及び難水溶性銀塩とを含有する、
    抗菌相を備える、抗菌性製品。
  16. 抗菌性製品であって、
    該抗菌性製品の少なくとも一部に、
    請求項1〜11のいずれかに記載の抗菌性樹脂組成物が成形されて形成された抗菌相を備える、抗菌性製品。
  17. 抗菌性製品の製造方法であって、
    請求項1〜11のいずれかに記載の抗菌性樹脂組成物を成形する工程、
    を備える、方法。
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