JP2005138756A - 車両のシートベルト装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 衝突予知および衝突検知の状況に応じて、シートベルトの拘束力の大きさおよび作動タイミングを適正に制御するシートベルト装置の提供。
【解決手段】 シートベルトを引き取って乗員を拘束するシートベルトプリテンショナが、衝突予知時に作動して第1張力によって乗員を拘束する第1プリテンショナと、衝突検知時に作動して第2張力によって乗員を拘束する第2プリテンショナとを備え、第1プリテンショナは、衝突予知手段による衝突予知に関する検知信号と、車両挙動検知手段による車両挙動に関する検知信号とに基づいて、前記第1張力の作動力および作動過程を制御する車両のシートベルト装置。
【選択図】 図3

Description

本発明は、車両に搭載されるシートベルト装置に関し、特に座席に着座した乗員を拘束して保護する車両のシートベルト装置に関する。
シートベルト装置は、衝突が検知されたときに作動して、シートベルトの引出しを規制するとともに、シートベルトを巻き取って座席に着座した乗員の上半身および下半身の移動を速やかに規制して乗員を拘束することによって、エアバッグ、サイドエアバッグ等と協働して乗員を保護するための装置である(特許文献1参照)。
このシートベルト装置として、特許文献2には、衝突が予測された場合に、シートベルトを初期位置から巻き取って第1張力F1を発生させて衝突回避のための運転操作が可能な範囲で乗員を拘束する第1のプリテンショナ機構と、衝突時に前記第1張力F1の状態にあるシートベルトを巻き取って第2張力F2を発生させて乗員を拘束する第2のプリテンショナ機構とを備える装置が提案されている。
この従来のシートベルト装置における各機構の作動過程を図8に示す概念図で説明すると、下記の(1)→(4)の一連の過程によって、乗員の拘束が行われる。
(1)レーダ101が車両前方の障害物(他車)を検知して前方の障害物(車両、物体)との衝突を予知した場合、制御手段104に検知信号を送信する。検知信号を受信した制御手段104は、シートベルト作動機構(プリテンショナ105)をスタンバイ状態にする。
(2)運転者が衝突を予測して、制動のためブレーキペダルの踏み込みを行うと、ブレーキ検知手段102がブレーキの踏み込みを検知し、ブレーキアシスト103が作動してブレーキの踏み込み動作を補助する。このとき、運転者によるブレーキの踏み込みを検知したブレーキ検知手段102は、制御手段104にブレーキの踏み込みに関する検知信号を送信する。
(3)レーダ101とブレーキ検知手段102から、それぞれ検知信号を受信した制御手段104は、プリテンショナ105を構成する第1プリテンショナ105aに作動指令を送信する。その作動指令を受信した第1プリテンショナ105aは、第1張力F1を発生させて乗員を1次拘束する。
(4)車両に備えられた車体加速度検知手段(Gセンサ:図示せず)等によって、実際に車両が衝突したことが検知されると、衝突の検知を通知する信号(衝突信号)が制御手段104または他の制御機器からプリテンショナ105に送信される。その衝突信号を受信したプリテンショナ105は、第2張力F2の作動の要否を判断する。そして、プリテンショナ105が第2張力F2の作動が必要であると判断すると、第2プリテンショナ105bを作動させて、火薬の爆発、圧縮ガス等によって第2張力F2を発生させて乗員を2次拘束する。
しかしながら、こうした従来のシートベルト装置においては、図8(b)に示すように、第1プリテンショナ105aの作動によって第1張力F1が作用している状態Aから、第2プリテンショナ105bの作動によって第2張力F2が作用している状態Bに連続的に移行する。
したがって、こうした従来のシートベルト装置は、衝突予知センサによって検知される衝突可能性の高さと、運転者による運転操作状況とを連係させて第1プリテンショナ105aと第2プリテンショナ105bの作動を制御せず、衝突の可能性の高低を判断してシートベルトによる張力(張力)の強弱を制御し、さらには衝突の切迫性の変化に応じてシートベルトによる張力を変化させるタイミングを制御することは行われていなかった。そのため、第1張力が作用している段階から第2張力が加わった瞬間に乗員に第1張力と第2張力との合力が作用し、乗員は急激な衝撃を受けることになる。そこで、乗員が受ける衝撃を抑制するため、第1張力を低く設定する必要があった。これでは、本来の乗員の拘束による保護という効果が充分に得られないおそれがあった。
特開平6−255447号公報(請求項1、図1) 特許第2946995号明細書(請求項1、図3)
そこで、本発明の目的は、前記の事情に鑑みて、衝突予知および衝突検知の状況に応じて、シートベルトの張力の大きさおよび作動タイミングを適正に制御するシートベルト装置を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、車両に設けられた座席に着座した乗員に装着するシートベルトと、前記車両と障害物との衝突を予知する衝突予知手段と、前記車両の挙動を検知する車両挙動検知手段と、前記衝突を検知する衝突検知手段と、シートベルトプリテンショナとを備える車両のシートベルト装置であって、前記シートベルトプリテンショナは、前記シートベルトを第1張力で引き取って前記乗員を1次拘束する第1プリテンショナと、前記シートベルトを第2張力で引き取って前記乗員を2次拘束する第2プリテンショナとを備え、前記第1プリテンショナは、前記衝突予知手段による衝突予知に関する検知信号と、前記車両挙動検知手段による車両挙動に関する検知信号とに基づいて、前記第1張力の作動力および作動過程を制御することを特徴とする車両のシートベルト装置を発明の構成とする。
このシートベルト装置では、前記第1プリテンショナが、前記衝突予知に関する検知信号と、前記車両挙動に関する検知信号とに基づいて、前記第1張力の作動力および作動過程を制御することによって、衝突予知および車両挙動の状況に応じて、シートベルトの張力の大きさおよび作動タイミングが制御される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両のシートベルト装置において、前記第2プリテンショナは、前記衝突検知手段によって衝突が検知された場合に、前記第1張力の作動過程に応じて、前記第2張力を作動させる作動タイミングを制御することを特徴とする。
このシートベルト装置では、前記第2プリテンショナが、前記衝突予知後に前記衝突検知手段によって衝突が検知された場合に、前記第1張力の作動過程に応じて、第2張力を作動させる作動タイミングを制御することによって、衝突に備えて第2張力を適正に作動させることができる。
請求項1に記載の発明によれば、衝突予知および車両挙動の状況に応じて乗員に適切な第1張力を作用させることが可能となり、シートベルトによる乗員の保護を向上させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、衝突に備えて適切な時期に第2張力を作動させることが可能となり、エアバッグ等の他の装置と協働してシートベルトによる乗員の保護をより適切に行うことができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両のシートベルト装置の構成を示す概念図である。
この図1に示す構成を有するシートベルト装置1は、車両Cに設けられた座席Sに着座した乗員に装着するシートベルト2と、衝突予知手段3と、車両挙動検知手段4と、衝突検知手段5と、シートベルトプリテンショナ8とから構成される。
シートベルト2は、車両Cのセンタピラ(図示せず)の下端に設けられた第2プリテンショナ7から上方へ引き出されたウェビングWが、センタピラ上端に設けられた肩ベルトアンカ9を経て斜め下方へ延びて形成される肩ベルト部10と、そのウェビングWがタングプレート11で折り返されて形成される腰ベルト部12とを有する。そして、腰ベルト部12を構成するウェビングWの先端は、第1プリテンショナ6に連結されている。また、前記タングプレート11は、座席Sに着座する乗員にシートベルト2を装着する際に、車両Cの床面に立設されたバックル13に連結される。
シートベルトプリテンショナ8は、第1プリテンショナ6と、第2プリテンショナ7と、プリテンショナ制御手段14とを備える。プリテンショナ制御手段14は、衝突予知手段3による衝突予知に関する検知信号と、車両挙動検知手段4による車両挙動の異常に関する検知信号とに基づいて、第1プリテンショナ6および第2プリテンショナ7の作動を制御するものである。
第1プリテンショナ6は、前記腰ベルト部12を構成するウェビングWの先端が巻回され、モータ、バネ部材等の駆動手段により回転駆動される巻取軸(図示せず)を有する。この第1プリテンショナ6は、衝突予知時にプリテンショナ制御手段14から指令信号を受信すると、前記駆動手段によって巻取軸を回転駆動させて腰ベルト部12のウェビングWを巻き取る。これによって、シートベルト2(腰ベルト部12および肩ベルト部10)が引き取られ、第1張力F1が発生する。この第1張力F1によって座席Sに着座している乗員が1次拘束される(1次拘束段階)。
第2プリテンショナ7は、車両衝突時や急制動時に、乗員に作用する慣性力によるウェビングWの引き出しをロックさせるものであり、通常は自由にウェビングWを引き出すことができるものである。この第2プリテンショナ7は、肩ベルト部10の一端に連結され、衝突検知時にプリテンショナ制御手段14から指令信号を受信すると、肩ベルト部10を瞬間的に巻き取って第2張力F2を発生させて乗員の2次拘束を行うものである(2次拘束段階)。この第2プリテンショナ7としては、火薬、高圧ガス、バネ等を用いて爆発的な力で肩ベルト部10の一端が巻回された巻取軸(図示せず)を瞬間的に回転駆動して肩ベルト部10を急速に巻き取る装置を用いることができる。この第2プリテンショナ7は、特に制限されず、公知の装置を用いることができる。
この第2プリテンショナ7として、例えば、図2に示す巻取装置21を用いることができる。この巻取装置21は、図2(a)に示すとおり、肩ベルト部10の一端10aが巻回される巻取軸31と、この巻取軸31に連結され、巻取軸31を瞬間的に回転駆動して肩ベルト部10を巻き取る瞬間巻取駆動部21aとを備えるものである。
瞬間巻取駆動部21aは、図2(b)の断面図に示すとおり、圧縮空気または高圧ガスが通るガス供給管22と、このガス供給管22に連結したシリンダ23と、このシリンダ23内に移動自在に収納されたピストン24と、このピストン24に一体に設けられたラック25と、このラック25に噛み合うピニオン26と、このピニオン26と一体的に回転するとともに巻取軸31(図2(a)参照)に複数のギヤを介して連結した回転軸27とを備える。これらのピニオン26、複数のギヤ及び回転軸27は、ケース28内に収納される。また、シリンダ23内に吹込まれた圧縮空気または高圧ガスにより移動したピストン24及びラック25を押し戻すために、ピストン24とケース28との間にリターンスプリング29が介装されている。
この巻取装置21は、ガス供給管22を通じてガス供給部(図示せず)から供給される圧縮空気または高圧ガスによって、肩ベルト部10を巻取軸31に巻き取って第2張力を発生させるものである。
衝突予知手段3は、車両Cの前部に配置され、自車両と、前方車両等の障害物との衝突が生ずる可能性を検知するものであり、例えば、レーザ、レーダ、超音波センサ等の非接触型距離センサによって所定時間毎に自車と障害物との間の距離を計測する装置を用いることができる。非接触型距離センサは、車両前部のバンパ等に埋設すれば前方の障害物の検知に有効であり、1つに限らず複数を衝突が予想される方向の車体面に配置することが好ましい。
この衝突予知手段3において、所定時間毎に計測される自車と障害物との距離の時間的変化から相対速度を計算する。そして、距離を相対速度で除算して衝突までの時間を計算する。該時間が予め設定された所定時間(しきい値)以下なら、衝突の可能性があるとして衝突予知の検知信号を出力する。この衝突予知の検知信号は、シートベルトプリテンショナ8に設けられたプリテンショナ制御手段14に入力され、プリテンショナ制御手段14において第1プリテンショナ6の作動が必要と判断されると、第1プリテンショナ6に指令信号が出力される。
また、車両挙動検知手段4は、車両Cの前後方向および横方向の挙動を検知し、車両Cの急加減速、横すべり、回転、急操舵等による車両挙動の異常を検知するものである。この車両挙動検知手段4として、車体の前後方向および横方向の加速度を検知する加速度センサを用いることができる。この加速度センサによって、車体加速度の大きさおよび方向、変化率等を検知して、所定のしきい値と比較対照することによって車両挙動の異常を検知することができる。この加速度センサとして、車両Cの各種制御を行う装置に装備されているものを利用することができる。例えば、ブレーキ信号あるいは車両ブレーキング時の減速度を検知して、ブレーキの作動を制御するABS(アンチ・ロック・ブレーキシステム)に装備される加速度センサを利用してもよい。
この車両挙動検知手段4においては、車両挙動の異常を検知すると、その車両挙動の異常に関する検知信号がプリテンショナ制御手段14に出力される。
衝突検知手段5は、自車両と他車両等の障害物との衝突を検知するものであり、例えば、車体中央、前席左右、後席左右等に配置され、車両が障害物に衝突して所定のしきい値以上の加速度が車体に作用すると、この加速度を検知して閉じる接点を有するセンサを用いることができる。この接点が閉じることによって、プリテンショナ制御手段14に衝突の検知信号(図3中、衝突検知信号)を出力するものである。
また、プリテンショナ制御手段14は、前記第1プリテンショナ6と前記第2プリテンショナ7の作動を制御するものであり、衝突予知手段3からの衝突予知の検知信号、および車両挙動検知手段4からの車両挙動に関する検知信号が入力され、その衝突予知の検知信号の入力の有無、車両挙動の異常に関する検知信号の入力の有無に応じて、第1プリテンショナ6による第1張力F1の作動力および作動過程を制御する。そして、次に、衝突検知手段5から衝突の検知信号が入力されると、プリテンショナ制御手段14は、第2プリテンショナ7に指令信号を出力して第2プリテンショナ7を作動させ第2張力F2を発生させ、乗員の2次拘束がなされる(2次拘束段階)。
次に、以上に述べたシートベルト装置1の作動機構を説明する。
図3は、シートベルト装置1の作動機構を説明するためのブロック図である。
このシートベルト装置1において、衝突予知手段3は、所定時間毎に自車と障害物との距離を計測し、その時間的変化から自車と障害物との相対速度を計算する。そして、距離を相対速度で除算して衝突までの時間を計算し、その計算された時間が予め設定された所定時間(しきい値)以下であれば、衝突の可能性があるとして衝突予知の検知信号をシートベルトプリテンショナ8のプリテンショナ制御手段14に出力する。
一方、車両挙動検知手段4は、車体の前後方向に加わる車体加速度によって車両挙動を検知して、その車両挙動に関する検知信号をシートベルトプリテンショナ8に設けられたプリテンショナ制御手段14に入力する。ここで、車体加速度が所定のしきい値以上となり、また、車体加速度が所定の変化率以上で変化した場合、車両挙動の異常の検知信号をプリテンショナ制御手段14に入力する。
プリテンショナ制御手段14は、衝突予知手段3からの衝突予知の検知信号の入力の有無、および車両挙動検知手段4からの車両挙動の異常に関する検知信号の入力の有無に応じて、第1プリテンショナ6による第1張力の作動力および作動過程を制御する。例えば、プリテンショナ制御手段14は、下記の表1に示すCase1〜Case4に応じて、第1プリテンショナ6の作動の要否および作動過程を判断して、第1プリテンショナ6に第1張力F1(F12,F13,F14)の作動力および作動過程について指令信号を出力する。ここで、F12<F13<F14とする。例えば、張力F12およびF13の大きさは、それぞれ張力F14の40〜60%および60〜80%の大きさに設定される。
Figure 2005138756
(1)Case1:衝突予知手段3から衝突予知の検知信号が入力されず(NO)、車両挙動検知手段4からも車両挙動の異常に関する検知信号が入力されない(NO)場合には、プリテンショナ制御手段14は、第1プリテンショナ6に指令信号を出力しない。このとき、乗員には第1張力が作用していない。
(2)Case2:衝突予知手段3から衝突予知の検知信号が入力され(YES)、車両挙動検知手段4から車両挙動の異常に関する検知信号が入力されない(NO)場合には、プリテンショナ制御手段14は、第1プリテンショナ6に指令信号を送信して、図4(a)に示すように、第1張力F12を作動させる。
(3)Case3:衝突予知手段3から衝突予知の検知信号が入力されず(NO)、車両挙動検知手段4から車両挙動の異常に関する検知信号が入力された(YES)場合には、プリテンショナ制御手段14は、第1プリテンショナ6に指令信号を出力して、図4(b)に示すように、第1張力F13を作動させる。
(4)Case4:衝突予知手段3から衝突予知の検知信号が入力され(YES)、車両挙動検知手段4からも車両挙動の異常に関する検知信号が入力された(YES)場合には、プリテンショナ制御手段14は、第1プリテンショナ6に指令信号を送信して、図4(c)に示すように、第1張力F14を作動させる。
プリテンショナ制御手段14から指令信号が入力された第1プリテンショナ6は、駆動手段によって巻取軸を回転駆動させてウェビングWを巻き取り、図4(a)〜図4(c)に示すように、第1張力F1(F12,F13,F14)を発生させる。これによって、シートベルト2(腰ベルト部12および肩ベルト部10)が引き取られ、この第1張力F1(F12,F13,F14)によって、腰ベルト部12のたるみが完全に解消され、またタングプレート11を介して肩ベルト部10のたるみもある程度解消されるとともに、座席Sに着座している乗員が1次拘束される(1次拘束段階)。
また、プリテンショナ制御手段14は、前記Case2またはCase3の段階、すなわち、張力F12による拘束状態または張力F13による拘束状態のいずれかの状態にあるときに、さらに、衝突予知手段3からの衝突予知の検知信号または車両挙動検知手段4からの車両挙動の異常に関する検知信号が入力され、Case4の状態となったとき、そのCase4に応じた第1張力F14を作動させる指令信号を第1プリテンショナ6に出力する。これによって、図5(a)に示すようにCase2の段階(F12)からCase4の段階(F14)への移行、また、図5(b)に示すようにCase3の段階(F13)からCase4の段階(F14)への移行を行うことによって、衝突予知および車両挙動の状況に応じて、より適正な第1張力による乗員の拘束を行うことができる。このように、衝突予知手段3による衝突予知の検出信号の有無と車両挙動検知手段4からの車両挙動に関する検知信号の有無とによって、第1プリテンショナ6によってシートベルトのウェビングWを引き取る張力の大きさを制御し、さらに、Case2からCase4への作動タイミング、またはCase3からCase4への作動タイミング、すなわち、張力F12からF14への張力の切り替え、あるいは張力F13から張力F14への切り替えを行う時期を、プリテンショナ制御手段14によって適正に制御するようにすれば、衝突に備えてより適切に乗員を拘束することができる。
一方、衝突検知手段5は、車両が障害物に衝突して、所定のしきい値以上の加速度が車体に作用すると、車体中央、前席左右、後席左右等に配置された個々のセンサがその加速度を検知して接点を閉じ、この接点が閉じることによって、シートベルトプリテンショナ8のプリテンショナ制御手段14に衝突の検知信号を出力する。
プリテンショナ制御手段14は、衝突を検知した衝突検知手段5から衝突の検知信号が入力されると、シートベルトプリテンショナ8の第1プリテンショナ6に指令信号を出力して第1張力(F12,F13,F14)を解除させるとともに、第2プリテンショナ7に指令信号を出力して第2プリテンショナ7を作動させる。プリテンショナ制御手段14から指令信号が入力された第2プリテンショナ7は、急速巻取駆動装置を瞬間的に回転駆動して肩ベルト部10のウェビングWを巻き取って、図6に示すように、第1張力による1次拘束段階に続いて第2張力F2を発生させ、車両衝突時に乗員の拘束を行う(2次拘束段階)。このとき、プリテンショナ制御手段14は、前記第1張力の作動過程に応じて、前記第2張力を作動させる作動タイミングを制御する。第2張力F2の作動タイミングは、衝突検知→第1プリテンショナ6による第1張力F1(F12,F13,F14)の解除→第2プリテンショナ7の作動による第2張力F2の発生の順序で行われる。
このとき、プリテンショナ制御手段14は、第1プリテンショナ6による第1張力F1(F12,F13,F14)の作動の解除、第2プリテンショナ7による第2張力F2の作動タイミングを制御することが好ましい。すなわち、Case2、Case3、またはCase4における1次拘束段階から張力の緩和段階を経て2次拘束段階へ移行する、またはCase1の非拘束段階から2次拘束段階へ移行するに際して、第2プリテンショナ7による第2張力F2の作動タイミングを制御する。例えば、下記の場合に応じて、第2張力F2の作動タイミングを制御する。
(1)Case1の段階から衝突が検知された場合は、第1張力F1が作用していない状態から第2張力F2が作用する2次拘束段階へ移行する。
(2)Case2の段階から衝突が検知された場合は、張力F12が作用している状態から第2張力F2が作用する2次拘束段階へ移行する。
(3)Case3の段階から衝突が検知された場合は、張力F13が作用している段階から第2張力F2が作用する2次拘束段階へ移行する。
(4)Case4の段階から衝突が検知された場合は、張力F14が作用している段階から第2張力F2が作用する2次拘束段階へ移行する。
(5)Case2またはCase3の段階からCase4の段階へ移行した後、衝突が検知された場合は、張力F14が作用している段階から第2張力が作用する2次拘束段階へ移行する。
なお、Case2、Case3またはCase4の段階で、衝突検知手段5によって所定時間、衝突が検知されない場合は、プリテンショナ制御手段14は、第2プリテンショナ7の作動の指令信号を出力せずに、第1プリテンショナ6の作動を解除して、シートベルト2による乗員の拘束を停止する。これによって、衝突または車両挙動の異常がない状態でシートベルト2によって乗員の運転操作が阻害されることなく、また、乗員がシートベルト装薬によって受ける違和感を最小限にすることができる。
これらの5つの場合に応じて、プリテンショナ制御手段14は、第2プリテンショナ7の作動タイミングを制御する。例えば、第1張力F1が作動していない非拘束段階から衝突検知時t0から第2プリテンショナ7による第2張力F2の作動時期t1、および第1張力F1(F12,F13,F14)の作動している段階において、衝突検知時t0から第2プリテンショナ7による第2張力F2の作動時期t2,t3,t4,t5、までの時間T1、T2、T3、T4、T5をT1>T2>T3>T4>T5の順で短くする。すなわち、Case1<Case2<Case3<Case4の順で第2プリテンショナ7の作動タイミングを早くする(例えば、Case2:係数=0.9、Case3:係数=0.8、Case4:K=0.7)これによって、衝突の切迫性に応じて第2張力F2を適正に作動させて乗員を2次拘束して保護することができるとともに、前記第1張力F1(F12,F13,F14)から第2張力F2への移行時に乗員が受ける衝撃が緩和される。
このようなシートベルト装置1の作動を図7を用いて説明すると、まず、(a)通常走行時には、座席Sに着座した乗員に装着したシートベルト2は、肩ベルト部10および腰ベルト部12にウェビングWのたるみを解消する張力TWが第1プリテンショナ6または第2プリテンショナ7によって作用している。
そして、衝突が予知された場合((b)衝突予知時)第1プリテンショナ6が作動して第1張力F1によりシートベルト2が引き取られて乗員が一次拘束される(1次拘束段階)。
次に、衝突が検知された場合((c)衝突検知時)、第2プリテンショナ7が作動して第2張力F2によりシートベルトが引き取られて乗員が2次拘束される(2次拘束段階)。
このように、第1プリテンショナ6による1次拘束段階における第1張力F1(F12,F13,F14)の作動過程、および第2プリテンショナ7による2次拘束段階における第2張力F2の作動タイミングを制御することによって、衝突予知および衝突検知の段階に応じて乗員の下半身の移動が有効に防止されるとともに、肩ベルト部8もたるみが予め解消されているから、上半身の移動は少なく、エアバッグ等との協働により効果的に乗員が保護される。さらに、衝突予知手段、車両挙動検知手段の検知信号に基づいて第1プリテンショナが作動している状態においても、運転者が衝突回避操作等の運転操作を適切に行うことができる。
本発明の実施形態におけるシートベルト装置の構成を示す概念図である。 (a)は第2プリテンショナの一例である急速巻取装置を示す模式図、(b)はその急速巻取装置の構成を示す断面図である。 本発明のシートベルト装置の作動機構を説明するブロック図である。 (a)〜(c)は、それぞれ衝突予知および車両挙動の検知状況に応じて第1プリテンショナによって作動する張力の作動力を説明する図である。 (a)および(b)は、それぞれ衝突予知および車両挙動の検知状況に応じてシートベルト装置によって作動する第1張力の作動過程を示す図である。 シートベルト装置における第2張力の作動過程を示す図である。 シートベルト装置における張力の作動過程を示す図である。 (a)は、従来のシートベルト装置の構成を示すブロック図、(b)は、従来のシートベルト装置の作動過程を説明する図である。
符号の説明
1 シートベルト装置
2 シートベルト
3 衝突予知手段
4 車両挙動検知手段
5 衝突検知手段
6 第1プリテンショナ
7 第2プリテンショナ
8 シートベルトプリテンショナ
9 肩ベルトアンカ
10 肩ベルト部
11 タングプレート
12 腰ベルト部
13 バックル
14 プリテンショナ制御手段
S 座席
W ウェビング

Claims (2)

  1. 車両に設けられた座席に着座した乗員に装着するシートベルトと、前記車両と障害物との衝突を予知する衝突予知手段と、前記車両の挙動を検知する車両挙動検知手段と、前記衝突を検知する衝突検知手段と、シートベルトプリテンショナとを備える車両のシートベルト装置であって、
    前記シートベルトプリテンショナは、前記シートベルトを第1張力で引き取って前記乗員を1次拘束する第1のプリテンショナと、前記シートベルトを第2張力で引き取って前記乗員を2次拘束する第2のプリテンショナとを備え、
    前記第1のプリテンショナは、前記衝突予知手段による衝突予知に関する検知信号と、前記車両挙動検知手段による車両挙動に関する検知信号とに基づいて、前記第1張力の作動力および作動過程を制御することを特徴とする車両のシートベルト装置。
  2. 前記第2のプリテンショナは、前記衝突検知手段によって衝突が検知された場合に、前記第1張力の作動過程に応じて、前記第2張力を作動させる作動タイミングを制御することを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。
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