JP2005134931A - 光学素子 - Google Patents

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章 森本
Yoshiyuki Shimizu
義之 清水
Akira Hosomi
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Abstract

【課題】 光学機器に取付ける際の取付け方向決定を容易にする光学素子を提供する。
【解決手段】 胴型内で摺動する一対の押圧型の間に供給された光学素材を軟化点近傍の温度に加熱した状態で前記押圧型を前記摺動方向に押圧して成形される光学素子200であって、光軸方向に対向する2つの面201、201′のうち、少なくとも一方の面の光学機能範囲以外の部分に、光学機器取付け用であり、かつ2つの面201、201′のうち面201′を判別するための方向決定手段204を有する。
【選択図】図8





Description

本発明は、光学機器に使用されるレンズ、プリズム等の高精度光学ガラス素子を超精密ガラス成形法により成形する光学素子成形型、光学素子成形方法及び光学素子に関するものである。
高精度光学素子、特に非球面ガラスレンズ等の製造方法の1つとして、例えば、特許文献1に示されているように、研磨工程を経ることなく、ガラス素材を変形可能な温度、例えば、軟化点近傍の温度に加熱し、押圧成形する方法が提案されている。この方法は、高精度な成形型を必要とする。以下図面を参照しつつ、従来の光学素子成形型及び一般的に用いられている光学素子成形装置について説明する。図9は従来の光学素子成形型の構成を示す断面図であり、図10は一般的な光学素子成形装置の構造を示す部分断面図である。
図9に示す従来の光学素子成形型は、略円筒形の胴型100と、胴型100の上下の開口部101及び102と嵌合し、軸103方向に摺動可能な上押圧型120及び下押圧型130で構成されている。ガラス素材140は、上押圧型120と下押圧型130の間に供給される。上押圧型120の下面には、例えば非球面レンズを形成するための凹面121が形成されており、下押圧型130の上面の成形面131には、例えばグレーティング132等の軸非対称面が形成されている。胴型100と上押圧型120及び下押圧型130とは固定もしくは係合されておらず、矢印Aで示すように、軸103の回りに回転可能である。
図10に示す一般的な光学素子成形装置は、順に並列された金型投入口132、加熱ステージ127、押圧ステージ129、冷却ステージ131及び金型取り出し口133と、各ステージに対向するように配置された加熱ヘッド126、押圧ヘッド128及び冷却ヘッド130と、光学素子成形型(従来例及び後述する本発明の各実施例を含む)を各ステージへ矢印C方向に移送させるための移送アーム134等で構成されている。投入口132から投入された光学素子成形型は、加熱ステージ127においてガラス素材140が変形可能な温度、例えば、軟化点近傍の温度に加熱され、押圧ステージ129において、矢印Bで示す方向に押圧され、冷却ステージ131においてガラス素材140の軟化点以下の温度に冷却され、取り出し口133より取り出される。その結果、所定形状の光学素子が成形される。
特開昭61−21927号公報
しかしながら、上記従来の光学素子成形型では、胴型100と上押圧型120及び下押圧型130とは固定もしくは係合されておらず、軸103の回りに回転可能であるため、移送アーム134により光学素子成形型を各ステージへ移送する際、上押圧型120及び下押圧型130が軸103の回りに回転する場合も生じる。もし、回転した押圧型が例えば下押圧型130のように軸非対称面を有する場合、軸非対称面の転写が行われる前後で光学素子転写面にズレを生じ、例えば図11に示すように、必要とするグレーティング135と実際に形成されたグレーティング136との間に格子ずれが生じ、所望の光学素子性能を有した光学素子が得られないという問題点を有していた。
また、従来の光学素子成形型では、胴型100の内周部も、上押圧型120及び下押圧型130の外周部の凹凸のない円であるため、成形された光学素子の外周も凹凸のない円形となる。そのため、軸非対称面を有する光学素子のように取り付け方向が決っている場合や、光学素子が両凸又は両凹の球面又は非球面レンズであって、両面の曲率半径が近い場合、これらの光学素子を光学機器に取り付ける際、顕微鏡やレーザスポット検査機等の評価機器を用いて光学素子の光学機器への取り付け方向をマークしなければならず、生産性が悪いという問題点を有していた。
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、胴型と軸非対称面を有する押圧型とを光学素材の変形が可能な状態の時に固定し、金型を移動させる際に、光学素子転写面にずれを生じさせることなく成形する光学素子成形型及び光学素子成形方法を提供し、さらに、光学素子を光学機器に取り付ける際、評価機器等を用いて光学素子の取り付け方向をマークすることなく、容易に光学機器に取り付けることのできる光学素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の光学素子成形型は、両端に開口部を有する胴型と、前記胴型の各開口部に嵌合し、前記胴型内で摺動する一対の押圧型を有する光学素子成形型であって、前記押圧型の少なくとも一方は光学機能面光軸に対して非対称(軸非対称)な成形面を有し、前記軸非対称な成形面を有する押圧型の前記摺動方向を軸とする回転を阻止するように、前記軸非対称な成形面を有する押圧型と前記胴型とを嵌合させたものである。
上記構成において、前記軸非対称な成形面を有する押圧型及び前記胴型の接触部近傍において、前記軸非対称な成形面を有する押圧型及び前記胴型のそれぞれの外周部に切欠部を設け、前記切欠部に係合部材を係合させたことが好ましい。
また、前記押圧型のフランジ部の一部及び前記胴型の端面の一部に切欠溝を設け、前記係合部材は前記溝に嵌合する略直方体のキーブロックであることが好ましい。
または、上記構成において、前記軸非対称な成形面を有する押圧型及び前記胴型の接触部近傍において、前記軸非対称な成形面を有する押圧型及び前記胴型に前記摺動方向の穴を設け、前記穴に係合部材を係合させたことが好ましい。
上記各構成において、前記係合部材は、前記押圧型及び前記胴型よりも大きい熱膨張率を有する金属材料を用いたことが好ましい。
また、本発明の別の光学素子成形型は、両端に開口部を有する胴型と、前記胴型の各開口部に嵌合し、前記胴型内で摺動する一対の押圧型を有する光学素子成形型であって、前記押圧型の少なくとも一方の成形面の光学機能部分以外の部分に切欠部を設けたものである。
上記構成において、前記切欠部は、前記成形面と所定の角度をなす傾斜面を形成するように設けられ、前記一対の押圧型の間に供給された光学素材を押圧する際、前記切欠部に充填された前記光学素材が前記傾斜面を押圧し、前記切欠部が形成された押圧型の前記摺動方向を軸とする回転を阻止することが好ましい。
また、前記傾斜面が形成された成形面は軸非対称であることが好ましい。
また、前記傾斜面の稜線が前記軸非対称の成形面の主軸又は副軸のいずれかに平行であることが好ましい。
また、本発明のさらに別の光学素子成形型は、両端に開口部を有する胴型と、前記胴型の各開口部に嵌合し、前記胴型内で摺動する一対の押圧型を有する光学素子成形型であって、前記押圧型の少なくとも一方の成形面の光学機能部分以外の部分に突起部を設けたものである。
上記構成において、前記突起部が設けられた成形面は軸非対称であることが好ましい。
また、前記突起部は前記軸非対称の成形面の主軸又は副軸のいずれかに平行であることが好ましい。
また、本発明のさらに別の光学素子成形型は、両端に開口部を有する胴型と、前記胴型の各開口部に嵌合し、前記胴型内で摺動する一対の押圧型を有する光学素子成形型であって、前記胴型及び前記押圧型の前記胴型と嵌合する部分は、前記押圧型の摺動方向に直交する方向の断面が矩形である。
また、本発明のさらに別の光学素子成形型は、両端に開口部を有する胴型と、前記胴型の各開口部に嵌合し、前記胴型内で摺動する一対の押圧型を有する光学素子成形型であって、前記胴型及び前記押圧型の前記胴型と嵌合する部分は、前記押圧型の摺動方向に直交する方向の断面が1組の平行な辺及び対向する1組の円弧状の辺で構成されている。
一方、本発明の光学素子成形方法は、胴型内で摺動する一対の押圧型の間に光学素材を供給し、前記光学素材を軟化点近傍の温度に加熱した状態で前記押圧型を前記摺動方向に押圧し、前記光学素材を所定形状に成形し、その状態で冷却する光学素子成形方法であって、前記押圧型の少なくとも一方の成形面は軸非対称であり、前記押圧型が前記摺動方向を軸として回転しないように、前記軸非対称の成形面を有する押圧型と前記胴型とを係合させる。
また、本発明の別の光学素子成形方法は、胴型内で摺動する一対の押圧型の間に光学素材を供給し、前記光学素材を軟化点近傍の温度に加熱した状態で前記押圧型を前記摺動方向に押圧し、前記光学素材を所定形状に成形し、その状態で冷却する光学素子成形方法であって、前記押圧型の少なくとも一方の成形面は軸非対称であり、前記軸非対称の成形面を有する押圧型の前記成形面の光学機能範囲以外の部分に前記成形面と所定の角度をなす傾斜面を形成するように切欠部を設け、前記光学素材を前記切欠部に充填し、前記充填された光学素材を介して前記傾斜面を押しつけ、前記切欠部が形成された押圧型の前記摺動方向を軸とする回転を阻止する。
上記各構成において、前記光学素材を軟化点近傍の温度に加熱する工程と、前記押圧型を押圧する工程と、前記冷却する工程とがそれぞれ異なったステージで実行され、前記胴型と前記一対の押圧型を含む光学素子成形型が前記ステージ間を移動することが好ましい。
また、本発明の光学素子は、胴型内で摺動する一対の押圧型の間に供給された光学素材を軟化点近傍の温度に加熱した状態で前記押圧型を前記摺動方向に押圧して成形される光学素子であって、光軸方向に対向する2つの面のうち、少なくとも一方の面の光学機能範囲以外に部分に、光学機器取付け用であり、かつ前記2つの面のうちのいずれかを判別するための方向決定手段を有する。
上記構成において、前記光軸方向に対向する2つの面は、両凸又は両凹の球面又は非球面であることが好ましい。
また、前記方向決定手段は、光学素子の円周方向位置決めを兼ねることが好ましい。
また、前記方向決定手段は、光学素子の光軸に対して平行方向位置決めを兼ねることが好ましい。
また、前記方向決定手段は、光学素子の光軸に対して垂直方向位置決めを兼ねることが好ましい。
また、前記光学機器取付け用の方向決定手段は突起又は溝であることが好ましい。
また、前記光学機器取付け用の方向決定手段が施された面は軸非対称であることが好ましい。
また、前記光学機器取付け用の方向決定手段は、前記軸非対称な面の主軸又は副軸のいずれかに平行であることが好ましい。
または、上記構成において、前記光軸方向に対向する2つの面は、それぞれ曲率が近似した両凸又は両凹の球面又は非球面であることが好ましい。
上記各構成において、前記光軸に直交する断面形状が略矩形であることが好ましい。
または、前記光軸に直交する断面形状が1組の平行な辺及び対向する1組の円弧状の辺で構成されていることが好ましい。
本発明の光学素子によれば、光学素子を光学機器に取り付ける際、評価機器等を用いて光学素子の取り付け方向をマークすることなく、容易に光学機器に取り付けることができる。
本発明の光学素子成形型及び光学素子成形方法の第1の実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は第1の実施例の光学素子成形型の構成を示す断面図であり、図2は上押圧型を除いた状態における平面図である。図1及び図2に示すように、第1の実施例の光学素子成形型は、略円筒状の胴型10と、胴型10の上下の開口部11及び12にそれぞれ嵌合する上押圧型20及び下押圧型30と、胴型10と下押圧型30とを軸13に対して回転できないように係合させる係合部材40等で構成されている。
胴型10は、例えば超硬合金製であり、その外周部で、且つ下部開口部12の近傍には、係合部材40と係合するための切欠又は溝14が設けられている。上押圧型20及び下押圧型30もそれぞれ超硬合金製であり、上押圧型20の下面には曲率半径5.0mmの非球面形状の成形面21が施されている。また、下押圧型30の上面の成形面33にはグレーティング34が施されている。グレーティング34の断面形状は、幅1mm、ピッチ0.5mm、深さ250nmの矩形状である。
上押圧型20と下押圧型30は、胴型10内で軸13の方向に摺動可能である。本実施例の場合、下押圧型30に形成されたグレーティング34が軸非対称面であるため、下押圧型30のフランジ部31にも、係合部材40と係合するための切欠又は溝32が設けられている。胴型10の溝14及び下押圧型30の溝32は、例えば幅1.5mm、深さ2.0mmである。係合部材40は、略直方体であり、その材料としては、胴型10、上押圧型20及び下押圧型30の材料である超硬合金の熱膨張率よりも高い熱膨張率を有する金属部材、例えばSUS304等を用いる。なお、例えばSF−8等のガラス素材50は、従来例と同様に、上押圧型20と下押圧型30との間に供給される。
以上のように構成された第1の実施例の光学素子成形型を用いた光学素子成形方法について説明する。図1に示すように、上押圧型20と下押圧型30の間にガラス素材50を供給し、下押圧型30のフランジ部31の溝32と胴型10の下端の溝14に係合部材40を係合させる。このようにして組立てられた光学素子成形型を、例えば図9に示す光学素子成形装置の投入ステージ132より供給し、移送アーム134により加熱ステージ127に移送し、ガラス素材50の軟化点近傍(約505℃)まで昇温する。加熱ステージ127に移送された光学素子成形金型は、係合部材40の材料であるSUS304と、胴型10及び下押圧型30の材料である超硬合金の熱膨張率の差により、軸13に対して成形面33にグレーティング34を施した下押圧型30と胴型10とが相対的に回転移動をしないように固定される。
下押圧型30と胴型10とが固定された後、移送アーム134により次ステージである押圧ステージ129に移送され、上押圧型20が図中矢印Bで示す方向に押圧され、ガラス素材50が所定形状に成形される。成形後、光学素子成形型が冷却ステージ131に移動され、冷却ステージ131において、光学素子成形金型及びガラス素材50が冷却され、完成した光学素子が取り出し口133から取り出される。光学素子成形型を冷却ステージ131に移動させる際、下押圧型30と胴型10とが係合部材40により固定されているため、グレーティング34が施された下押圧型30が軸13の回りに回転移動することはなく、図11に示したようなグレーティングのずれは生じない。
従来の光学素子成形金型を用いて成形した光学素子(従来品)と、本実施例の光学素子成形金型を用いて成形した光学素子(本発明品)を比較したところ、従来品の透過波面収差が0.05λ以上だったのに対して、本発明品の透過波面収差は0.04λ以下であった。また、従来品はグレーティングがずれているため無数に分光し、グレーティング機能を得られなかったが、本発明品はグレーティングがずれていないため、グレーティングの機能が得ることができ、分光比(1次光:0次光:−1次光)=1:5:1の設計どおりの光学素子が得られることが確認された。
なお、本実施例では、ガラス素材50として軟化点約505℃のSF−8を用いたが、他の硝材、例えばランタン系硝材や低融点ガラス等のガラス素材を用いても良い。また、胴型10、上押圧型20及び下押圧型30の材料として超硬合金を用いたが、耐熱性や高温強度に優れた素材であれば、他の材料であっても良い。また、下押圧型30と胴型10とを係合させる手段として、下押圧型30及び胴型10に断面が略矩形の溝を設け、略直方体の係合部材40を用いたが、下押圧型30及び胴型10に円形断面の穴を設け、略円柱状の係合部材を用いても同様の効果が得られる。また、軸非対称面を有する下押圧型30と胴型10とを係合させるように構成したが、上押圧型20のフランジ部及び胴型10の上端11の近傍にも溝を設け、係合部材40を用いて両者を係合させるように構成してもよい。
次に、本発明の光学素子成形型及び光学素子成形方法の第2の実施例について図面を参照しながら説明する。図3は第2の実施例の光学素子金型の構成を示す断面図であり、図4は上押圧型を除いた状態における平面図である。図3及び図4に示すように、第2の実施例の光学素子成形型は、略円筒状の胴型60と、胴型60の上下の開口部61及び62にそれぞれ嵌合する上押圧型70及び下押圧型80で構成されている。胴型60及び上押圧型70は図9に示す従来例のものと実質的に同じである。下押圧型80の上面の成形面81にはグレーティング82が施されている。グレーティング82の断面形状は三角波形状であり、ピッチ0.2mm、深さ370nmである。また、下押圧型80の成形面81のグレーティング82の格子方向と平行な方向の両端部には、深さ約2mmで、成形面とのなす角が30°の傾斜面83が形成されている。ガラス素材90は、第1の実施例と同様に、上押圧型70と下押圧型80との間に供給される。ガラス素材90としては、例えばBK−7(転移点553℃、屈伏点614℃)を用いる。
以上のように構成された第2の実施例の光学素子成形型を用いた光学素子成形方法について説明する。図3に示すように、上押圧型70と下押圧型80の間にガラス素材90を供給し、組立てられた光学素子成形型を、例えば図10に示す光学素子成形装置の投入ステージ132より供給し、移送アーム134により加熱ステージ127に移送し、ガラス素材90(BK−7)の軟化点近傍(約520℃)まで昇温する。
次に、移送アーム134により次ステージである押圧ステージ129に移送され、上押圧型70が図中矢印Bで示す方向に押圧され、ガラス素材90が所定形状に成形される。その際、下押圧型80の成形面81の両端部に施した傾斜面83近傍の凹部へガラス素材90が充填される。充填されたガラス素材90は、下押圧形80の成形面81となす角30゜の傾斜面83を押さえつける。このとき、下押圧型80には、傾斜面83を押されたことによる垂直方向の力の他に、水平方向の分力が作用し、事実上軸63の回りの回転が阻止される。さらに、押圧ステージ129から冷却ステージ131に移送される際、ガラス素材90が冷却され、収縮するので、ガラス素材90が傾斜面83を押さえつける力が増す。そのため、ガラス素材90と下押圧型80の軸63を中心とする回転移動が阻止される。
さらに、移送アーム134により、光学素子成形型が押圧ステージ129から冷却ステージ131に搬送する際にも、下押圧型80のグレーティング82とガラス素材90とが回転移動することない。その後、冷却ステージ131において、光学素子成形型及びガラス素材90は、所望の光学性能を得るために徐々に冷却温度(約420℃)まで冷却される。移送アーム134により、光学素子成形型は取り出し口133まで搬送され、完成した光学素子が取り出される。
従来の光学素子成形金型では、グレーティングを施した下押圧型が、上下押圧型と胴型の摺動方向を軸として回転するため、これを用いて成形した光学素子(従来品)はグレーティングのずれが生じていた。一方、本実施例の光学素子成形金型を用いることにより、上下押圧型と胴型との摺動方向を軸とした回転を防止することができ、光学素子(本発明品)をグレーティングずれを起こすことなく成形することができた。従来品はグレーティングがずれているため無数に分光し、グレーティング機能を得られなかったが、本発明品はグレーティングがずれていないため、グレーティングの機能が得ることができ、設計どおりの光学素子が得られることが確認された。
なお、第2の実施例の光学素子成形型及び光学素子成形方法により成形された光学素子(例えば、図3におけるガラス素材90が固化したもの)は、傾斜面83を形成する切欠部に充填された部分(突起)が、光学機器に取り付ける際の方向決定手段として機能することは言うまでもない。
次に、本発明の光学素子の実施例について図面を参照しつつ説明する。図5は本発明の光学素子及びそれに適する光学機器鏡筒の構成の一実施例を示す断面図であり、図6は本実施例の光学素子をグレーティング面側から見た斜視図である。図5において、光学素子200の上面には、例えば曲率半径が150mmの非球面形状のレンズ機能面201が設けられており、下面にはグレーティング202が設けられている。グレーティング202の断面形状は、例えば幅0.5mm、ピッチ0.8mm、深さ200nmの矩形状である。光学素子200の下面のグレーティング202の方向と平行な端部には、それぞれ、例えば幅1mm、深さ0.5mmの切欠部203が設けられている。光学素子200のガラス素材としては、SF−6(転移点426℃、屈伏点467℃)を用いた。光学素子200の外径は約φ5、厚さ3mmである。また、光学機器鏡筒210は、例えば真鍮等の金属製であり、中央部に矢印D方向からの光線の軌跡を遮断しないためのφ3の貫通穴212が設けられている。さらに、光学機器鏡筒210には、光学素子200に設けられた切欠部203と係合するように、幅1mm、高さ0.5mmの凸部211が設けられている。
上記本発明の光学素子は、前記本発明の光学素子成形型及び光学素子成形方法を応用して成形したものであり、例えば光学素子成形型の軸非対称面を有する下押圧型の成形面に切欠部203を成形するための突起等(図示せず)を設けることにより行う。この場合、胴型及び押圧型(図示せず)の胴型と嵌合する部分の光軸方向に断面は略矩形である。光学素子200に設けられた切欠部203は、グレーティング202の格子方向に対して平行にHカット加工されている。同様に、光学機器鏡筒210にも、光学素子200切欠部203と係合する凸部211が設けられている。そのため、光学素子200を光学機器に取り付ける際、光学素子200を吸着ペン(図示せず)により保持し、光学素子200を回転させることにより、光学素子200の光学機能方向を容易に検知することができる。なお、一般的には光学素子200に設けられた切欠部203の深さが0.5mm以下であると、光学素子200を吸着ペンで保持しての光学機能方向検出は困難である。
従来の光学素子では、光学素子を光学機器に取付けすための方向を、顕微鏡、レンズスポット等の検出機器によりグレーティング方向を検出し、光学素子を光学機器に取り付けるための方向を検知し、光学素子に方向をマークした後、光学機器に取り付けを行っていたので、光学素子を1個光学機器に取り付けを行うのに1分〜5分の時間を要し、生産性が非常に悪かった。しかし、本発明の光学素子を用いることにより、光学素子を吸着ペンにより保持し、回転させるだけで光学機器に取り付けることができ、光学素子を光学機器に1個取り付けるのに約30秒という短い時間で行うことができた。
なお、本実施例では、光学素子200の取付け方向決定手段として、光学素子200の下面に切欠部203を設け、光学機器鏡筒210に凸部211を設けるように構成したが、光学素子の光学的機能を阻害する事がなく、精度よく光学機器に取り付けすることができれば、他の構成を用いてもよい。例えば、図7において、(a)はグレーティング202が施された成形面に位置及び方向決定用の三角状断面を有する突起204を設けた一例であり、突起204は軸非対称な光学機能面であるグレーティング202の方向と平行に設けられている。この光学素子を成形する光学素子成形型の押圧型(図示せず)の成形面には、グレーティングと平行に断面が略三角の溝が形成され、溝の傾斜面が図3に示した第2の実施例における傾斜面83と同様に機能を果たす。そのため、押圧型の光軸の回りの回転が阻止され、グレーティング202のずれは生じない。また、成形された光学素子200の突起204が光学機器に取り付ける際の方向決定手段として機能する。
図7における(b)は、略円筒状の光学素子200の外周部をグレーティング202の方向と平行に取付け方向決定及び押圧型の回転阻止用の平面205及び傾斜面207を形成した一例である。この光学素子を成形する光学素子成形型の胴型及び押圧型(図示せず)の胴型と嵌合する部分の断面は略小判型であり、対向する1組の平行な辺と、対向する1組の円弧状辺を有する。この場合、胴型と押圧型とが平面を介して嵌合するので、押圧型は光軸の回りには回転しない。また、形成された光学素子200の平面205が光学機器に取り付ける際の方向決定手段として機能する。
図7における(c)は、略円筒状の光学素子200の外周部近傍に取付方向決定及び押圧型回転阻止用の略円形断面を有する切欠部206を設けた一例である。この光学素子を成形する光学素子成形型の胴型(図示せず)は、例えば略円筒状であり、その円筒内周面に切欠部206と逆形状の半円筒状の突起が形成されている。胴型と嵌合する押圧型(図示せず)も光学素子と同様に円筒外周面に切欠が設けられており、この切欠と突起の係合により、押圧型の軸回りの回転が阻止される。また、成形された光学素子200の切欠部206が光学機器に取り付ける際の方向決定手段として機能する。
図8における(d)は、図7の(a)と同様に、グレーティング202が施された成形面に位置及び方向決定用の三角状断面を有する突起204を設けた一例であり、突起204は軸非対称な光学機能面であるグレーティング202の方向と平行に設けられている。図8における(e)は、図7の(b)とは逆に、略円筒状の光学素子200の外周部をグレーティング202の方向と平行に取付け方向決定及び押圧型の回転阻止用の突起204及び傾斜面207を形成した一例である。図8における(f)は、曲率半径の近い球面または非球面201及び201´を有する光学素子の取り付け方向判別に、突起204を用いた例を示す。
以上のように、本発明の光学素子成形型によれば、両端に開口部を有する胴型と、胴型の各開口部に嵌合し、胴型内で摺動する一対の押圧型を有し、押圧型の少なくとも一方は光学機能面光軸に対して非対称(軸非対称)な成形面を有し、軸非対称な成形面を有する押圧型の摺動方向を軸とする回転を阻止するように、軸非対称な成形面を有する押圧型と胴型とを係合させたので、例えばガラス素材等の光学素材を軟化点近傍の温度に加熱し、押圧型を押圧して光学素材を所定の形状に成形する際、軸非対称な成形面を有する押圧型が胴型に対して固定され、軸回りには回転しない。そのため、押圧型が押圧される工程から冷却される工程に移行する際に、光学素子成形型が回転を含めて動いたとしても、胴型と押圧型とは相対的に固定されているため、形成された光学素子の軸非対称な光学機能面には、ずれが生じない。
胴型と押圧型とを固定する手段として、軸非対称な成形面を有する押圧型及び胴型の接触部近傍において、軸非対称な成形面を有する押圧型及び胴型のそれぞれの外周部に切欠部を設け、切欠部に係合部材を係合させることにより、容易に胴型及び押圧型を製作することができる。または、従来の光学素子成形型を容易に改造することができる。また、押圧型のフランジ部の一部及び胴型の端面の一部に切欠溝を設け、係合部材を溝に嵌合する略直方体のキーブロックとすることにより、周知のフライス加工や市販の部品等を用いることができる。
または、軸非対称な成形面を有する押圧型及び胴型の接触部近傍において、軸非対称な成形面を有する押圧型及び胴型に摺動方向の穴を設け、当該穴に係合部材を係合させることにより、同様に、容易に胴型及び押圧型を製作し、または、従来の光学素子成形型を容易に改造することができる。また、係合部材の材料として押圧型及び前記胴型の材料よりも大きい熱膨張率を有する金属材料を用いることにより、押圧型と胴型とが強固に固定される。
また、本発明の別の光学素子成形型によれば、両端に開口部を有する胴型と、胴型の各開口部に嵌合し、胴型内で摺動する一対の押圧型を有する光学素子成形型であって、押圧型の少なくとも一方の成形面の光学機能部分以外の部分に切欠部を設けることにより、成形された光学部品に凸部を形成することができる。この凸部を、光学素子を光学機器に取り付ける際の方向及び位置決定手段として用いることができる。
また、切欠部を成形面と所定の角度をなす傾斜面を形成するように設け、一対の押圧型の間に供給された光学素材を押圧する際、切欠部に充填された光学素材が傾斜面を押圧することにより、傾斜面を押圧する力が押圧型の摺動方向に直交する方向にも分力され、切欠部が形成された押圧型の摺動方向を軸とする回転を阻止することができる。また、傾斜面が形成された成形面は軸非対称である場合、形成された光学素子の軸非対称な光学機能面には、ずれが生じない。また、傾斜面の稜線を軸非対称の成形面の主軸又は副軸のいずれかに平行とすることにより、傾斜面の稜線の方向を基準として、光学素子を光学機器に取り付ける際の方向決定を行うことができる。
また、本発明のさらに別の光学素子成形型によれば、両端に開口部を有する胴型と、胴型の各開口部に嵌合し、胴型内で摺動する一対の押圧型を有する光学素子成形型であって、押圧型の少なくとも一方の成形面の光学機能部分以外の部分に突起部を設けたので、成形された光学素子には突起部とは逆の形状の凹部が形成される。当該凹部を基準として、光学素子を光学機器に取り付ける際の方向決定を行うことができる。この構成は、特に突起部が設けられた成形面は軸非対称である場合に有効である。また、突起部は軸非対称の成形面の主軸又は副軸のいずれかに平行とすることにより、光学素子を光学機器に取り付ける際の角度設定が容易になる。
また、本発明のさらに別の光学素子成形型によれば、両端に開口部を有する胴型と、胴型の各開口部に嵌合し、胴型内で摺動する一対の押圧型を有する光学素子成形型であって、胴型及び押圧型の胴型と嵌合する部分の押圧型の摺動方向に直交する方向の断面を略矩形としたので、押圧型は摺動方向を軸として胴型に対する相対的な回転は不可能である。そのため、形成された光学素子が軸非対称な光学機能面を有する場合にも、ずれが生じない。また、成形された光学素子の断面も矩形となるので、光学素子を光学機器に取り付ける際の方向決定が容易になる。
また、本発明のさらに別の光学素子成形型によれば、両端に開口部を有する胴型と、胴型の各開口部に嵌合し、胴型内で摺動する一対の押圧型を有する光学素子成形型であって、胴型及び押圧型の胴型と嵌合する部分は、押圧型の摺動方向に直交する方向の断面が1組の平行な辺及び対向する1組の円弧状の辺で構成されてた、いわゆる小判型としたので、押圧型は摺動方向を軸として胴型に対する相対的な回転は不可能である。そのため、形成された光学素子が軸非対称な光学機能面を有する場合にも、ずれが生じない。また、成形された光学素子の断面も小判型となるので、光学素子を光学機器に取り付ける際の方向決定が容易になる。
一方、本発明の光学素子成形方法によれば、胴型内で摺動する一対の押圧型の間に光学素材を供給し、光学素材を軟化点近傍の温度に加熱した状態で押圧型を摺動方向に押圧し、光学素材を所定形状に成形し、その状態で冷却する光学素子成形方法であって、押圧型の少なくとも一方の成形面は軸非対称であり、押圧型が摺動方向を軸として回転しないように、軸非対称の成形面を有する押圧型と胴型とを係合させたので、光学素材を軟化点近傍の温度に加熱し、押圧型を押圧して光学素材を所定の形状に成形する際、軸非対称な成形面を有する押圧型が胴型に対して固定され、軸回りには回転しない。そのため、押圧型が押圧される工程から冷却される工程に移行する際に、光学素子成形型が回転を含めて動いたとしても、胴型と押圧型とは相対的に固定されているため、形成された光学素子の軸非対称な光学機能面には、ずれが生じない。
また、本発明の別の光学素子成形方法によれば、胴型内で摺動する一対の押圧型の間に光学素材を供給し、光学素材を軟化点近傍の温度に加熱した状態で押圧型を摺動方向に押圧し、光学素材を所定形状に成形し、その状態で冷却する光学素子成形方法であって、押圧型の少なくとも一方の成形面は軸非対称であり、軸非対称の成形面を有する押圧型の成形面の光学機能範囲以外の部分に成形面と所定の角度をなす傾斜面を形成するように切欠部を設け、光学素材を前記切欠部に充填し、充填された光学素材を介して傾斜面を押しつけ、切欠部が形成された押圧型の摺動方向を軸とする回転を阻止するので、傾斜面を押圧する力が押圧型の摺動方向に直交する方向にも分力され、切欠部が形成された押圧型の摺動方向を軸とする回転を阻止することができる。また、傾斜面が形成された軸非対称な成形面には、ずれが生じない。
また、光学素材を軟化点近傍の温度に加熱する工程と、押圧型を押圧する工程と、冷却する工程とがそれぞれ異なったステージで実行され、胴型と前記一対の押圧型を含む光学素子成形型がステージ間を移動するように構成することにより、一般的な光学素子成形装置をそのまま改造することなく用いることができる。
また、本発明の光学素子によれば、胴型内で摺動する一対の押圧型の間に供給された光学素材を軟化点近傍の温度に加熱した状態で押圧型を摺動方向に押圧して成形し、光軸方向に対向する2つの面のうち、少なくとも一方の面の光学機能範囲以外に部分に、光学機器取付け用の方向決定手段を有するので、光学素子の少なくとも1面の光学機能面が軸非対称であっても、当該光学素子を光学機器の取り付ける際の方向決定を容易に行うことができる。
また、光学機器取付け用の方向決定手段を突起又は溝とすることにより、光学素子成形型の構成が簡単になる。これらの構成は、光学機器取付け用の方向決定手段が施された面が軸非対称である場合に特に有効である。また、光学機器取付け用の方向決定手段を軸非対称な面の主軸又は副軸のいずれかに平行とすることにより、光学素子を光学機器に取り付ける際の方向決定が容易になる。または、光軸方向に対向する2つの面が、それぞれ曲率が近似した両凸又は両凹の球面又は非球面である場合、一般に表裏の取り付け方向を間違えやすいが、光学機器取付け用の方向決定手段を施すことにより、このような間違いを防止することができる。また、光軸に直交する断面形状を略矩形とすることにより、矩形断面の各辺が方向決定手段として機能する。または、光軸に直交する断面形状が1組の平行な辺及び対向する1組の円弧状の辺で構成されている場合も同様である。
本発明の光学素子によれば、光学素子を光学機器に取り付ける際、評価機器等を用いて光学素子の取り付け方向をマークすることなく、容易に光学機器に取り付けることのできるので、光学機器に取り付ける際に方向決定の必要な光学素子に有用である。
本発明の光学素子成形型の第1の実施例の構成を示す断面図 本発明の光学素子成形型の第1の実施例における、上押圧型を取り除いた状態における平面図 本発明の光学素子成形型の第2の実施例の構成を示す断面図 本発明の光学素子成形型の第2の実施例における、上押圧型を取り除いた状態における平面図 本発明の光学素子の一実施例の構成を示す断面図 本発明の光学素子の一実施例におけるグレーティングが施された成形面を上にした斜視図 (a)、(b)及び(c)はそれぞれ本発明の光学素子の他の実施例の構成を示す斜視図 (d)、(e)及び(f)はそれぞれ本発明の光学素子の他の実施例の構成を示す斜視図 従来の光学素子成形型の構成を示す断面図 一般的な光学素子成形装置の構成を示す部分断面図 従来の光学素子成形型を用いて成形したグレーティングずれを生じた光学素子を示す平面図
符号の説明
10 胴型
11 開口部
12 開口部
13 軸
14 溝
20 上押圧型
21 成形面
30 下押圧型
31 フランジ部
32 溝
33 成形面
34 グレーティング
40 係合部材
50 ガラス素材
60 胴型
61 開口部
62 開口部
63 軸
70 上押圧型
80 下押圧型
81 成形面
82 グレーティング
83 傾斜面
90 ガラス素材
200 光学素子
201 レンズ機能面
202 グレーティング
203 切欠部
204 突起
205 平面
206 切欠部
207 傾斜面
210 光学機器鏡筒
211 凸部
212 貫通穴

Claims (11)

  1. 胴型内で摺動する一対の押圧型の間に供給された光学素材を軟化点近傍の温度に加熱した状態で前記押圧型を前記摺動方向に押圧して成形される光学素子であって、光軸方向に対向する2つの面のうち、少なくとも一方の面の光学機能範囲以外の部分に、光学機器取付け用であり、かつ前記2つの面のうちのいずれかを判別するための方向決定手段を有する光学素子。
  2. 前記光軸方向に対向する2つの面は、両凸又は両凹の球面又は非球面である請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記方向決定手段は、光学素子の円周方向位置決めを兼ねる請求項1又は2に記載の光学素子。
  4. 前記方向決定手段は、光学素子の光軸に対して平行方向位置決めを兼ねる請求項1又は2に記載の光学素子。
  5. 前記方向決定手段は、光学素子の光軸に対して垂直方向位置決めを兼ねる請求項1又は2に記載の光学素子。
  6. 前記光学機器取付け用の方向決定手段は突起又は溝である請求項1から5のいずれかに記載の光学素子。
  7. 前記光学機器取付け用の方向決定手段が施された面は軸非対称である請求項1から6のいずれかに記載の光学素子。
  8. 前記光学機器取付け用の方向決定手段は、前記軸非対称な面の主軸又は副軸のいずれかに平行である請求項7に記載の光学素子。
  9. 前記光軸方向に対向する2つの面は、それぞれ曲率が近似した両凸又は両凹の球面又は非球面である請求項1から5のいずれかに記載の光学素子。
  10. 前記光軸に直交する断面形状が略矩形である請求項1から9のいずれかに記載の光学素子。
  11. 前記光軸に直交する断面形状が1組の平行な辺及び対向する1組の円弧状の辺で構成されている請求項1から9のいずれかに記載の光学素子。






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