JP2005134117A - 転がり軸受の寿命評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 比較的短時間でかつばらつきなく寿命を把握しうる転がり軸受の寿命評価方法を提供する。
【解決手段】 軸受用鋼からなる転がり軸受用軌道輪の軌道面に圧痕を付与する。圧痕の周囲に形成された盛り上がり部のX線半価幅から圧痕が付与されていない軌道面の表層部のX線半価幅を減じたX線半価幅変化量、および前記盛り上がり部の残留オーステナイト量から圧痕が付与されていない軌道面の表層部の残留オーステナイト量を減じた残留オーステナイト変化量に基づいて、前記転がり軸受用軌道輪を用いた転がり軸受の寿命を評価する。
【選択図】 図3
【解決手段】 軸受用鋼からなる転がり軸受用軌道輪の軌道面に圧痕を付与する。圧痕の周囲に形成された盛り上がり部のX線半価幅から圧痕が付与されていない軌道面の表層部のX線半価幅を減じたX線半価幅変化量、および前記盛り上がり部の残留オーステナイト量から圧痕が付与されていない軌道面の表層部の残留オーステナイト量を減じた残留オーステナイト変化量に基づいて、前記転がり軸受用軌道輪を用いた転がり軸受の寿命を評価する。
【選択図】 図3
Description
この発明は転がり軸受の寿命評価方法、さらに詳しくは、潤滑油に異物が混入した環境下で使用される転がり軸受の寿命を評価する方法に関する。
転がり軸受の軌道輪は、JIS SUJ2のような高炭素クロム軸受鋼や、JIS SCR420のような肌焼き鋼などの軸受用鋼を用いて形成されるが、このような軌道輪を有する転がり軸受が、たとえば自動車部品のように、周囲の部品の摩耗粉などの異物が混入した異物混入潤滑環境下で使用される場合、短寿命領域の転がり疲れ現象である表面起点剥離が発生し、著しく短寿命となる。そのため、予めこのような異物混入潤滑環境下での寿命を把握しておく必要がある。
従来、転がり軸受の異物混入潤滑環境下での寿命は、寿命試験機を密封状態にし、潤滑油に故意に所定の粒径および硬さを有する異物を混入させて転がり寿命試験を行い、表面起点剥離が発生するまでの時間を測定することにより把握されている(たとえば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来の方法では、使用潤滑油、試験機内温度などの影響を受けて異物の攪拌程度が異なり、安定した異物濃度環境下で試験を行うことが困難になって試験結果にばらつきが生じるという問題がある。また、寿命を求めるのに長時間かかるという問題がある。
特開平5−271779号公報
この発明の目的は、上記問題を解決し、比較的短時間でかつばらつきなく寿命を把握しうる転がり軸受の寿命評価方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、表面起点剥離は異物により軌道輪の軌道面に形成される圧痕の周囲の盛り上がり部への応力集中が原因であり、この盛り上がり部の性状に基づいて転がり軸受の寿命を評価しうることを見出した。
この発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
この発明による第1の転がり軸受の寿命評価方法は、軸受用鋼からなる転がり軸受用軌道輪の軌道面に圧痕を付与し、圧痕の周囲に形成された盛り上がり部のX線半価幅から圧痕が付与されていない軌道面の表層部のX線半価幅を減じたX線半価幅変化量、および前記盛り上がり部の残留オーステナイト量から圧痕が付与されていない軌道面の表層部の残留オーステナイト量を減じた残留オーステナイト変化量に基づいて、前記転がり軸受用軌道輪を用いた転がり軸受の寿命を評価することを特徴とするものである。
この発明による第2の転がり軸受の寿命評価方法は、軸受用鋼からなる転がり軸受用軌道輪の軌道面に圧痕を付与した後清浄な潤滑油を用いて転がり運転を行い、圧痕の周囲に形成された盛り上がり部における運転開始前と所定時間運転した後の残留オーステナイト変化量と、前記盛り上がり部における運転開始前と所定時間運転した後の高さ変化量とに基づいて前記転がり軸受用軌道輪を用いた転がり軸受の寿命を評価するものである。
この発明による第3の転がり軸受の寿命評価方法は、軸受用鋼からなる転がり軸受用軌道輪の軌道面に圧痕を付与した後清浄な潤滑油を用いて転がり運転を行い、圧痕の周囲に形成された盛り上がり部における運転開始前と所定時間運転した後の硬さ変化量に基づいて、前記転がり軸受用軌道輪を用いた転がり軸受の寿命を評価することを特徴とするものである。
なお、前記第2および第3の方法において、転がり運転の時間は、表面起点剥離が発生するまでの時間に比べて短くてよい。
この発明の第1の方法は上述のように構成されているので、転がり運転を全く行うことなく、極めて短時間で転がり軸受の寿命を把握することができる。しかも、長寿命の転がり軸受の開発指標として役立たせることができる。
この発明の第2および第3の方法は上述のように構成されているので、実際に剥離が発生するまでの長時間にわたる寿命試験を実施しなくても、短時間で転がり軸受の寿命を正確に把握することができる。しかも、長寿命の転がり軸受の開発指標として役立たせることができる。
以下、この発明の実施形態について説明する。
JIS SUJ2を用いて型番6206の深溝玉軸受用内輪素材を形成した後、これらの素材に異なる熱処理を施して、4種類の内輪(試料1〜4)を作製した。これらの内輪の軌道面表層部の硬さ(ロックウェルC硬さ)および表層部の残留オーステナイト量(γR)を、熱処理方法とともに表1に示す。なお、熱処理方法1は焼入処理であり、熱処理方法2は浸炭窒化処理であり、熱処理方法3は低温浸炭処理+160℃焼戻し処理であり、熱処理方法4は低温浸炭処理+サブゼロ処理+185℃焼戻し処理である。また、前記表層部とは、軌道面の最表面から、転動体との接触による最大せん断応力が作用する深さまでの部分を意味するものとする。
ついで、図1および図2に示すように、各試料の軌道面(1)における1直径上に位置する2つの部分の幅方向の中央部に、直径1.0mmのSi3N4からなる球を圧子とするロックウェル硬さ試験機を用いて荷重1471Nでそれぞれ圧痕(2)を付与した。
そして、各試料における圧痕(2)の周囲に形成された盛り上がり部(3)のX線半価幅から軌道面(1)における圧痕(2)が付与されていない円滑部(4)の表層部のX線半価幅を減じたX線半価幅変化量、および前記盛り上がり部(3)の残留オーステナイト量から円滑部(4)の表層部の残留オーステナイト量を減じた残留オーステナイト変化量を求めた。なお、X線半価幅は、X線回折装置として、リガク社製のRINT2000を使用し、X線:Cr−Kα線、管速電圧40kV、管電流200mA、回折面:α(211)面という条件で測定した。
その結果を図3に示す。図3から明らかなように、試料1および2においては、すべてのものがX線半価幅変化量が0.2度以上でかつ残留オーステナイト変化量が1%以上であった。
次に、圧痕(1)が付与された試料1〜4と、JIS SUJ2からなりかつ通常の浸炭窒化処理が施されてなる外輪および玉と組み合わせて玉軸受を組み立て、清浄な潤滑油を使用して、剥離が生じるまで転がり運転を行った。この運転の際に、所定の運転時間毎に転がり軸受を分解し、盛り上がり部(3)の残留オーステナイト量、高さおよび硬さを測定し、再び転がり軸受を組み立てて運転を行った。運転条件は表2に示す通りである。
なお、表2に示す試験機は、同時に2個の玉軸受の試験を行うことが可能であり、表2中のラジアル荷重は、1つの玉軸受のラジアル荷重を意味する。
図3および表3より、転がり運転を行う前のX線半価幅変化量および残留オーステナイト変化量が大きくなるほど寿命が長くなることが分かる。したがって、転がり軸受の寿命は、転がり運転を行う前のX線半価幅変化量および残留オーステナイト変化量に基づいて評価することが可能であり、たとえばX線半価幅変化量が0.2度以上でかつ残留オーステナイト変化量が1%以上であれば、長寿命であると評価することができる。
その理由は、次の通りであると推定される。
すなわち、試料1および2のように、残留オーステナイト変化量およびX線半価幅変化量がともに大きい傾向にある場合、盛り上がり部において歪み誘起マルテンサイト変態により残留オーステナイトからマルテンサイトへの新たな変態が生じ、結晶格子の歪みの尺度とされるX線半価幅の増加量が大きくなっていると考えられる。一方、試料3および4のように、X線半価幅変化量に対して残留オーステナイト変化量が依存しない傾向にある場合、盛り上がり部においては歪み誘起マルテンサイト変態による残留オーステナイトからマルテンサイトへの変態が少ないと考えられる。一般的な加工硬化は転位密度の増加で強化される(以下、転位強化という)が、残留オーステナイト変化量およびX線半価幅変化量がともに大きい場合には、転位強化に加えて歪み誘起マルテンサイト変態による強化も寄与し、その結果転がり寿命が長くなると推定される。
ここで、試料1〜4の盛り上がり部(3)および軌道面(1)における圧痕(2)が付与されていない円滑部(4)の硬さを、マイクロビッカース硬度計(荷重50g)により測定した結果を図4に示す。なお、盛り上がり部(3)では、測定箇所は図2にXで示す4箇所であり、その平均値をとった。また、円滑部(4)では、測定箇所は図2にYで示す深さの4箇所であり、その平均値をとった。図4から明らかなように、同程度の円滑部(4)の硬さを有する試料1および3を比べた場合、試料1の盛り上がり部(3)の硬さは試料3の盛り上がり部(3)の硬さよりもはるかに大きくなっていることが分かる。また、円滑部(4)の硬さが試料3よりも小さい試料2の盛り上がり部(3)の硬さは、試料3の盛り上がり部(3)の硬さよりも大きくなっていることが分かる。そして、盛り上がり部(3)の硬さが大きいほど、寿命が長くなることが分かる。
図5は、運転時間と、盛り上がり部(3)における運転開始の前後の残留オーステナイト変化量、すなわち運転開始前の盛り上がり部(3)の残留オーステナイト量から所定時間経過した後の盛り上がり部(3)の残留オーステナイト量を減じた残留オーステナイト減少量との関係を示す。図6は、転がり運転時間と、盛り上がり部(3)における運転開始前と所定時間運転した後の高さ変化量、すなわち運転開始前の盛り上がり部(3)の高さから所定時間運転した後の盛り上がり部(3)の高さを減じた高さ減少量との関係を示す。
図5、図6および表3より、転がり運転開始後所定時間経過した際の盛り上がり部(3)の残留オーステナイト変化量が大きく、かつ高さ変化量が小さくなるほど寿命が長くなることが分かる。したがって、転がり軸受の寿命は、圧痕(2)を付与した後、清浄油を用いて転がり運転を行い、盛り上がり部(3)における運転開始前と所定時間運転した後の残留オーステナイト変化量と、盛り上がり部(3)における運転開始前と所定時間運転した後の高さ変化量とに基づいて評価することが可能であり、運転開始後、たとえば1時間経過した際の残留オーステナイト変化量がたとえば1%以上でありかつ高さ変化量がたとえば0.8μm以下であれば、長寿命であると評価することができる。
その理由は、次の通りであると考えられる。
すなわち、図5より、試料1および2は、残留オーステナイト量が転動開始直後から漸減していく傾向が認められたのに対し、試料3および4は、残留オーステナイト量が転動開始直後から1時間経過するまでほとんど変化せず、その後漸減していく傾向を示している。一方、図6より、試料2〜4においては転がり運転開始直後に盛り上がり部の高さが急激に減少し、その後転がり運転時間の増加に伴って盛り上がり部の高さが漸減し、さらに剥離に向かって再び盛り上がり部の高さが急激に減少していく傾向を示している。また、図6より、試料1においては転がり運転開始直後の盛り上がり部の高さの急激な減少はなく、転がり運転開始初期から盛り上がり部の高さが漸減し、その後剥離に向かって盛り上がり部の高さが急激に減少していく傾向を示している。そして、図5および図6を照らし合わせると、試料1および2においては、運転開始直後から歪み誘起マルテンサイト変態によって残留オーステナイトからマルテンサイトへの新たな変態が生じ、前記転位強化に加えて歪み誘起マルテンサイト変態による強化も寄与し、その結果転がり寿命が長くなると推定される。これに対し、試料3および4においては残留オーステナイトの分解が進行しておらず、盛り上がり部の高さは減少するものの残留オーステナイト減少量が小さいので、歪み誘起マルテンサイト変態は生じておらず、前記転位強化のみに支配されて転がり寿命が短くなると推定される。
図7は、転がり運転時間と、盛り上がり部の硬さ変化量、すなわち所定時間運転した後の盛り上がり部の硬さから運転開始前の盛り上がり部の硬さを減じた硬さ減少量との関係を示す。
図7および表3より、硬さ変化量が0になる運転時間が長いほど寿命が長くなることが分かる。したがって、転がり軸受の寿命は、硬さ変化量に基づいて評価することが可能であり、たとえば硬さ変化量が0になる転がり運転時間が5時間以上であれば、長寿命であると評価することができる。
次に、上述した実験から推定される各試料の疲労課程について述べる。
試料1においては、転がり運転開始前に圧痕を付与することにより形成された盛り上がり部の硬化は、変形による転位強化と歪み誘起マルテンサイト変態による強化の両者が支配しているため、硬さ増加量はかなり大きい。すなわち、盛り上がり部の硬さが大きく変形しにくいので、転がり運転初期において盛り上がり部の高さは緩慢に漸減する。また、転がり運転初期において盛り上がり部の高さが急激に減少していないにもかかわらず、その段階での硬さの上昇は比較的大きくかつ残留オーステナイト減少量が比較的大きい。したがって、転がり運転初期における盛り上がり部の硬さ上昇には、転位強化に加えて、残留オーステナイトの歪み誘起マルテンサイト変態による強化も寄与している。その後、転がりによる繰り返し応力を受けることにより、転がり運転初期に導入された高密度の転位が再配列し、組織の回復、再結晶化といった組織変化が発生する転がり運転終期への移行する。一般的に転位強化は固溶強化や分散析出強化といった他の強化機構と比べて転位の繰り返し運動に対する抵抗が小さく、再配列し易いため疲労強度が低下するといわれている。しかしながら、試料1の場合、転位強化に加えて、固溶強化の範疇に入る歪み誘起マルテンサイト変態による強化が認められるので、組織変化抵抗性に優れ、その結果寿命が長くなると考えられる。なお、試料1における盛り上がり部からの剥離発生過程は、転がり運転開始前の圧痕付与時の変形に伴う転位強化と歪み誘起マルテンサイト変態による強化とによる硬さ上昇→転がり運転開始初期の盛り上がり部の緩慢な減少に伴う転位強化と歪み誘起マルテンサイト変態による強化とによるさらなる硬さ上昇→転がり運転中の転位の繰り返し運動による再配列およびそれに伴う組織変化による硬さ低下→硬さ低下に伴う強度低下→共同低下領域からの亀裂発生→剥離発生である。
試料2においては、盛り上がり部の硬さ変化量および残留オーステナイト減少量については、試料1と同様な経時変化となる。但し、試料2の場合、転がり運転初期の盛り上がり部の高さ減少量が試料1よりも大きくなっている。これは運転開始前の盛り上がり部の硬さが試料1よりも低いことに起因し、これにより試料1に比べて、残留オーステナイトの歪み誘起マルテンサイト変態による強化の寄与が少なく、試料1に比べて寿命は短くなると考えられる。
試料3においては、転がり運転開始前に圧痕を付与することにより形成された盛り上がり部の硬化は、試料1と異なり、主として変形による転位強化に支配されているため、硬さ増加量も比較的小さい。そのため、転がり運転開始直後において盛り上がり部の高さは急激に減少する。また、転がり運転開始直後において盛り上がり部の高さが急激に減少している段階での硬さの上昇も試料1に比べて小さくかつ残留オーステナイト減少量も試料1に比べて小さい。したがって、転がり運転初期における盛り上がり部の硬さ上昇には、主として転位強化が寄与している。その後、転がりによる繰り返し応力を受けることにより、転がり運転初期に導入された高密度の転位が再配列し、組織の回復、再結晶化といった組織変化が発生する転がり運転終期への移行する。一般的に転位強化は固溶強化や分散析出強化といった他の強化機構と比べて転位の繰り返し運動に対する抵抗が小さく、再配列し易いため疲労強度が低下するといわれており、組織変化抵抗性におとり、その結果寿命が短くなると考えられる。
試料4においては、転がり運転開始前に圧痕を付与することにより形成された盛り上がり部には、予歪みにより高密度の転位が形成されている。このときの硬さ上昇は転位強化に支配されており、歪み誘起マルテンサイト変態による強化は寄与していない。そして、転がり運転初期の段階においてまず盛り上がり部の高さが急激に減少し、その変形に伴う加工硬化により硬さがさらに上昇する。このとき、残留オーステナイト量は減少していないため、歪み誘起マルテンサイト変態は生じておらず、この加工硬化も転位強化のみに支配されている。その後、さらに転がりによる繰り返し応力を受けることにより、転がり運転初期に導入された高密度の転位が再配列し、組織の回復、再結晶化といった組織変化が発生する転がり運転終期への移行する。この転がり運転終期において残留オーステナイトの分解が開始するが、この組織変化は歪み誘起マルテンサイト変態が生じたためではなく、疲労組織(400℃前後の焼戻しトルースタイト〜ソルバイト組織)に変化したために起こると考えられる。そして、疲労組織の発生および変化に起因する硬さ低下および硬さ低下に伴う局所的な強度低下が起こり、その領域がさらに繰り返し応力を受けることにより亀裂が発生して剥離が発生し、その結果寿命が短くなると考えられる。
Claims (3)
- 軸受用鋼からなる転がり軸受用軌道輪の軌道面に圧痕を付与し、圧痕の周囲に形成された盛り上がり部のX線半価幅から圧痕が付与されていない軌道面の表層部のX線半価幅を減じたX線半価幅変化量、および前記盛り上がり部の残留オーステナイト量から圧痕が付与されていない軌道面の表層部の残留オーステナイト量を減じた残留オーステナイト変化量に基づいて、前記転がり軸受用軌道輪を用いた転がり軸受の寿命を評価することを特徴とする転がり軸受の寿命評価方法。
- 軸受用鋼からなる転がり軸受用軌道輪の軌道面に圧痕を付与した後清浄な潤滑油を用いて転がり運転を行い、圧痕の周囲に形成された盛り上がり部における運転開始前と所定時間運転した後の残留オーステナイト変化量と、前記盛り上がり部における運転開始前と所定時間運転した後の高さ変化量とに基づいて前記転がり軸受用軌道輪を用いた転がり軸受の寿命を評価することを特徴とする転がり軸受の寿命評価方法。
- 軸受用鋼からなる転がり軸受用軌道輪の軌道面に圧痕を付与した後清浄な潤滑油を用いて転がり運転を行い、圧痕の周囲に形成された盛り上がり部における運転開始前と所定時間運転した後の硬さ変化量に基づいて、前記転がり軸受用軌道輪を用いた転がり軸受の寿命を評価することを特徴とする転がり軸受の寿命評価方法。
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