JP2005132656A - アルミニウム溶湯部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム溶湯との反応物が付着しにくく、耐食性にすぐれたアルミニウム溶湯部材を提供する。
【解決手段】窒化珪素を95モル%以上、Al、Mg及び周期律表第3a族元素の酸化物換算による合計が2モル%以下の窒化珪素焼結体からなることを特徴とするものであり、特に、前記セラミック焼結体の気孔率が10体積%以上であることが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】窒化珪素を95モル%以上、Al、Mg及び周期律表第3a族元素の酸化物換算による合計が2モル%以下の窒化珪素焼結体からなることを特徴とするものであり、特に、前記セラミック焼結体の気孔率が10体積%以上であることが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明はアルミニウム合金等の溶融金属と接触して使用される、ヒータチューブ、ストーク、熱伝対保護管、脱ガス用ロータ、鋳型等の鋳造用冶具や、ダイカストスリーブ又はプランジャーチップ等のアルミニウム溶湯用部品に最適な材料に関する。
アルミニウムは、これまでの鋳鉄などの金属に変わり、軽量な金属として各種の分野で利用されている。例えば、自動車の軽量化が環境問題などと関連して強く要求されていおり、車体部品のアルミニウム化が進められつつある。
このようなアルミニウム部品は、通常アルミニウムの鋳造により製造されている。アルミニウムの溶解、鋳造において例えばアルミニウム溶湯を鋳型内に供給するためのストークやアルミニウム溶湯の温度を測定するための熱電対保護管などは、近年耐食性、耐熱衝撃性に優れた材料としてセラミック焼結体が注目され、そのなかでも窒化珪素焼結体はその高温強度や、耐熱衝撃性に優れることから溶湯部材としての利用が進められている。
例えば、多孔質サイアロン焼結体の気孔寸法、気孔の体積率(気孔率)、気孔の分散性を制御することにより、アルミニウムや鉄の溶融浴に浸漬しても、十分な強度を保ち、且つ高い熱衝撃性とアルミニウムや鉄などの溶融金属(金属溶湯)に対する高い耐食性を具備するサイアロン焼結体を実現することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平6−239667号公報
しかしながら、特許文献1に記載のサイアロン焼結体は、耐衝撃性や耐食性に優れているものの、焼結体表面に反応生成物が付着するため、例えばストークでは溶湯が通りにくくなって鋳型への溶湯供給速度が不均一になり、また熱電対保護管では取り扱いが悪くなるという新たな問題が発生した。
従って、本発明の目的は、アルミニウム溶湯との反応物が付着しにくいアルミニウム溶湯部材を提供することにある。
本発明のアルミニウム溶湯部材は、窒化珪素を95モル%以上、Al、Mg及び周期律表第3a族元素の酸化物換算による合計が2モル%以下の窒化珪素焼結体からなることを特徴とするものである。
特に、前記窒化珪素焼結体の気孔率が10体積%以上であることが好ましい。
また、室温における4点曲げ抗折強度が100MPa以上で,且つ室温から1000℃における抗折強度の劣化率が10%以下であることが好ましい。
さらに、40〜800℃における線膨張係数が3.5×10−6/℃以下であることが好ましい。
さらにまた、前記窒化珪素焼結体に対する溶融アルミニウムの接触角が100°以上であることが好ましい。
本発明は、Al、Mg及び周期律表第3a族元素からなる焼結助剤は、アルミニウム溶湯と反応しやすいため、これらの焼結助剤の含有量を低減することにより、反応物の付着を低減することができるという新規な知見に基づくものであり、アルミニウム溶湯との反応物が付着しにくく、耐食性に優れたアルミニウム溶湯部材を提供することができる。
特に、前記セラミック焼結体の気孔率が10体積%以上であるため、アルミニウム溶湯は表面張力が大きいことから、気孔内部には侵入することなく、接触面積が低下し、さらなる反応性低下、耐食性向上という効果が得られた。
また、室温における4点曲げ抗折強度が100MPa以上で,且つ室温から1000℃における抗折強度の劣化率が10%以下であるため、本発明のアルミニウム溶湯溶部材を用いた鋳型にアルミニウム溶湯を高圧で注入しても破損することが少なく、また繰返し使用しても破壊し難いという効果が得られた。
さらに、40〜800℃における線膨張係数が3.5×10−6/℃以下であるため、室温と高温との間での熱サイクルによって異常な応力がかかりにくく、欠損を回避できるという効果が得られた。
さらにまた、前記窒化珪素焼結体に対する溶融アルミニウムの接触角が100°以上であるため、反応性をさらに低減することができる。
本発明のアルミニウム溶湯部材は、窒化珪素を95モル%以上含有することが重要である。窒化珪素は、焼結助剤に比べてアルミニウム溶湯との反応性が低いため、窒化珪素の含有量を高める、アルミニウム溶湯との反応性の高い焼結助剤、特にAl、Mg及び周期律表3a族の元素の含有量を低減することによって、アルミニウム溶湯との反応物が付着しにくいアルミニウム溶湯部材を実現することができる。
アルミニウム溶湯との反応性をより効果的に低減するため、特に、窒化珪素の含有量が97モル%、更には99モル%以上、より好適には99.9モル%以上であることが好ましい。
また、アルミニウム溶湯との反応性が高いAl、Mg及び周期律表第3a族元素の合計含有量は、酸化物換算で2モル%以下の割合に制限することが重要である。これらの元素の含有量を低減することで、Al、Mg及び周期律表第3a族元素と溶融アルミニウムとの反応物の生成を抑制することができ、反応物を減らす効果が顕著である。
接触角が大きい点において、Al、Mg及び周期律表第3a族元素の合計含有量は、1モル%以下、特に0.5モル%以下、更には0.1モル%以下、最も好適には実質的に0モル%であることが好ましい。このようにAl、Mg及び周期律表第3a族元素の含有量を低減することにより、相対的に窒化珪素の含有量が増加し、アルミニウム溶湯部材の耐食性を高めることができる。なお、実質的に0モル%とは、不可避不純物以外に含有しないことを意味する。
また、線膨張係数を小さくする点において、Al、Mg及び周期律表第3a族元素の合計含有量が実質的に含有しないことが好ましい。ここで、実質的に含まないとは、不可避不純物以外には含まれないことを意味するものである。
さらに、より高い強度を得る点においては、Al、Mg及び周期律表第3a族元素の合計含有量は、0.5モル%以上、特に1モル%以上であるのが好ましい。
このように、耐食性、残留応力に影響する線膨張係数、強度を考慮して、所望の組成を採用することができる。
焼結助剤として、Al、Mg及び周期律表第3a族元素以外にも、他の元素の化合物、例えば、Li、Ca、Baの少なくとも1種を、用いることもできる。また、溶融アルミニウムとの反応性の低い材料、例えば、W、Moの少なくとも1種を含有することも可能である。これらの含有量は5モル%を越えない範囲であり、特に3%未満、更には1%未満、より好適には0.1%未満であるのは言うまでもない。
本発明のアルミニウム溶湯部材に用いる窒化珪素焼結体の気孔率は、10体積%以上、特に20体積%以上、更には30体積%以上であることが好ましい。このように、気孔率を高めることにより、アルミニウム系合金、例えば、JISアルミ合金ADC3、AC4C、AC4D等の溶湯との接触面積を減少し、アルミニウム溶湯治具とアルミニウム系合金との反応が抑制され、反応物の付着をより効果的に抑制することが可能である。
気孔率の上限は、十分な耐熱衝撃性を維持するための強度を確保するため、60体積%、特に50体積%、40体積%であることが好ましい。
平均気孔径が大きすぎる場合、溶融アルミニウムが気孔内部に侵入してしまい、アルミニウム溶湯を冷却すると、アルミニウム溶湯部材とアルミニウムが固着したり、アルミニウム表面の表面粗さが大きくなることがあり、より表面の平滑なアルミニウム鋳造体を得るため、平均気孔径を50〜2μm、特に30〜5μm、更には20〜10μmとすることが好ましい。
また、最大気孔も同様の理由により、100μm以下、特に50μm以下、更には30μm以下とすることが好ましい。
本発明によれば、室温強度F(r)が100MPa以上、且つ1000℃における高温強度F(h)の劣化率F(h)/F(r)が10%以下であることが好ましい。実際のアルミニウム溶湯の状況において、鋳型等にはその重量がかかり、強度を100MPa以上にすることにより、アルミニウム溶湯治具の破損を抑制することが容易になるとともに、繰り返して使用する場合、即ち、室温と高温との温度サイクルが増えても、繰り返しの熱応力によるクラック発生を抑制することが容易になる。
室温強度が、特に150MPa以上、更には200MPa以上、より好適には250MPa以上、1000℃における強度の劣化率が特に8%以下、更には6%以下であることが好ましい。なお、室温強度及び高温強度は、JISR1601に基づく4点曲げ抗折強度によって評価した。
本発明のアルミニウム溶湯部材に用いる窒化珪素焼結体の線膨張係数は、3.5×10−6/℃以下、特に3.3×10−6/℃以下、更には3.0×10−6/℃以下であることが、耐熱衝撃性を高め、熱サイクルにおいて異常な応力がかかり、欠損という状況が発生するのを抑制する点で望ましい。
また、アルミニウム溶湯部材と溶融アルミニウムの濡れ性が小さい程反応性が低く、反応物が少なくなるため、アルミニウム溶湯部材に対する溶融アルミニウムの接触角が100°以上、特に110°以上、更には130°以上が好ましい。
なお、本発明における周期律表第3a族元素は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybのうち少なくとも1種である。
次に、本発明のアルミニウム溶湯部材の製造方法について説明する。
まず、窒化珪素、アルミナ及びシリカの原料粉末を準備する。
Si3N4粉末は、純度が98%以上、特に99%以上、平均粒径が1.0μm以下、特に0.5μm以下、アルファ率90%以上、特に95%以上が好ましい。また、Al2O3粉末は、純度99%以上、平均粒径2.0μm以下が好ましい。さらに、Y2O3粉末は、純度99%以上、平均粒径2.0μm以下が好ましい。まら、SiO2粉末は、純度99%以上、平均粒径1.0μm以下が好ましい。
これらの原料粉末を、窒化珪素が95モル%い上含有し、Al、Mg及び周期律表第3a族元素を酸化物換算で2モル%以下となる所定の組成に調合し、水、アルコール等の溶媒と窒化珪素ボールとともに混合粉砕し、所望の方法で成形する。成形は、金型プレス成形、押出し成形、テープ成形、射出成形、排泥成形等の周知の成形方法を用いることができる。例えば、スラリーを乾式造粒して顆粒を製作し、金型プレス成形及び/又は冷間静水圧成形(CIP)によって成形する。
得られた成形体を所望の寸法に切削や切断等の周知の方法によって加工した後、必要に応じて脱脂を行ない、さらに、これを焼成する。
焼成は、周知の手法を採用することができる。例えば、常圧焼成法、ガス圧焼成法、ホットプレス焼成法、熱間等方加圧焼成(HIP)法を用いることができる。特に、常圧焼成法は経済性の点で好ましい。
本発明によれば、気孔率を10%以上にするための方策としては調合組成にもよるが、成形時の成形体密度を低くすること、焼成温度を低くすること、焼成時間を短くすることの他に、数μm程度の樹脂製ボールをスラリー中に添加し、成形体中に均一に分散させ、焼成時に樹脂製ボールを焼き飛ばして空洞を形成しても良い。
抗折強度を高く維持しつつ、気孔率を高めてアルミニウム系合金との反応性をより低減するためには、樹脂製ボール等の昇華性分散体を成形体中に分散させて気孔を強制的に形成し、分散体以外の部位での成形体密度を高くし、焼成温度を高く、焼成時間を十分とって、分散体以外の部位での焼結体密度を高くすることが好ましい。
このようにして作製した窒化珪素焼結体は、アルミニウム系合金との反応性が低く、アルミニウム溶湯部材として好適に使用することができる。
窒化珪素粉末(平均粒径が0.5μm、α化率が95%)に対し、焼結助剤として平均粒径が0.5μm、純度99%のAl2O3、平均粒径が1.0μm、純度99%のY2O3、平均粒径が1.0μm、純度99%のMgOを準備し、成形体組成が表1に示す組成になるように調合し、混合粉砕後に、得られた顆粒を98MPaで金型プレス成形した。その後、成形体を窒素中、表1に示す条件で常圧焼成をした。
得られた窒化珪素焼結体について水銀圧入法により気孔率を測定し、アルキメデス法により嵩密度を測定し、相対密度を算出した。また、窒化珪素焼結体をJIS−R1601にて指定されている形状まで研磨した試料を作成した。この試料について、室温と1000℃での4点曲げ抗折強度を測定した。次に線膨張係数を、JISR1618−1994に準拠して測定した。
また、最大平均気孔径、平均気孔径を水銀圧入法により、測定した。
さらに、窒化珪素焼結体とアルミニウム溶湯との接触角を測定した。即ち、直径20mm厚み6mmの円盤形状の上記窒化珪素焼結体を作成し、その円盤上にアルミ溶湯部材(直径7mm厚み7mm)を置き、炉中1000℃2時間、真空度27kPaで熱処理を行った。得られたサンプルを横から写真撮影した。得られたフィルムを拡大投影し、形状から接触角を測定した。
また、耐熱衝撃性を以下のようにして評価した。JIS−R1601に基づいて加工された試験片を水中投下し、その後強度測定を行った。水中投下前後の強度から耐熱衝撃性を評価した。
本発明の試料No.1〜8は溶融アルミニウム系合金による濡れ性評価で接触角が110度以上であり濡れ性が悪い(反応性が低い)ことがわかる。さらに、断面のSEM観察から観察された反応層も1μm以下と少ない。即ち、溶融アルミニウム系合金との反応が抑制されている。
一方、助剤量が2モル%以上である試料No.9および21〜25は溶融アルミニウム系合金による濡れ性評価で接触角が90度以下であり濡れ性が良い(反応性が高い)。さらに反応層も5μm異常と厚く、溶融アルミニウム系合金との反応が抑制できていない。
今後においては、アルミニウム溶湯部材の改良により、従来使われていた単なるアルミニウム溶湯の冶具のみならず、エンジン、飛行機・船舶・自動車等の車体部品等にも応用展開が望める。
Claims (5)
- 窒化珪素を95モル%以上、Al、Mg及び周期律表第3a族元素の酸化物換算による合計が2モル%以下の窒化珪素焼結体からなることを特徴とするアルミニウム溶湯部材。
- 前記窒化珪素焼結体の気孔率が10体積%以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム溶湯部材。
- 室温における4点曲げ抗折強度が100MPa以上、該室温における抗折強度に対する1000℃における抗折強度の劣化率が10%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム溶湯部材。
- 40〜800℃における線膨張係数が3.8×10−6/℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム溶湯部材。
- 前記窒化珪素焼結体に対する溶融アルミニウムの接触角が100°以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアルミニウム溶湯部材。
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JP2003368787A JP2005132656A (ja) | 2003-10-29 | 2003-10-29 | アルミニウム溶湯部材 |
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JP2005132656A true JP2005132656A (ja) | 2005-05-26 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007222904A (ja) * | 2006-02-23 | 2007-09-06 | Kyocera Corp | ストークおよびこれを用いた差圧鋳造機 |
JP2015210016A (ja) * | 2014-04-25 | 2015-11-24 | 京セラ株式会社 | 保護管 |
-
2003
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