本発明は被照射面におけるビームスポットのエネルギー分布をある特定の領域で均一化するビームホモジナイザ及びそれを用いたレーザ照射装置に関する。さらに、当該レーザ照射装置を用いた半導体装置の作製方法に関する。
近年、ガラス等の絶縁基板上に形成された非単結晶半導体膜(非単結晶半導体であって、すなわち単結晶ではなく多結晶、微結晶等の結晶性を有する半導体膜若しくは非晶質半導体)に対し、レーザアニールを施す技術が、広く研究されている。なお、ここでいうレーザアニールとは、半導体基板又は半導体膜に形成された損傷層や非晶質層を再結晶化する技術や、基板上に形成された非単結晶半導体膜を結晶化させる技術を指している。また、半導体基板又は半導体膜の平坦化や表面改質に適用される技術も含んでいる。
結晶化にレーザアニールが使用されるのは、ガラス基板の融点が低いからである。レーザは基板の温度をあまり変えずに非単結晶半導体膜にのみ高いエネルギーを与えることができる。
エキシマレーザ等の出力の大きいパルス発振式のレーザビームを、被照射面において、数cm角の四角いスポットや、長辺方向の長さ10cm以上の長方形状となるように光学系にて加工し、ビームスポットの照射位置を被照射面に対して相対的に走査させて、レーザアニールを行う方法が、量産性が良く、工業的に優れているため、好んで使用される。なお、長方形状のビームスポットの内、特にアスペクト比が高いものを線状のビームスポットと呼ぶこととする。
特に、線状のビームスポットを用いると、前後左右の走査が必要な点状のビームスポットを用いた場合とは異なり、線状のビームスポットのビーム幅が長い方向に直角な方向だけの走査で大面積の被照射面にレーザビームを照射することができるため、高い量産性が得られる。ビーム幅の長い方向に直角な方向に走査するのは、それが最も効率のよい走査方向であるからである。この高い量産性により、現在のレーザアニールにはパルス発振のエキシマレーザのビームスポットを適当な光学系で加工した線状のビームスポットを使用することが主流になりつつある。
図12に、被照射面においてビームスポットの断面形状を線状に加工するための光学系の例を示す。図12中に示す光学系はきわめて一般的なものである。この光学系は、ビームスポットの断面形状を線状に変換するだけでなく、同時に、被照射面におけるビームスポットのエネルギー分布均一化を果たすものである。一般に、ビームスポットのエネルギー分布を均一化する光学系を、ビームホモジナイザと呼ぶ。図12に示した光学系もビームホモジナイザである。
XeClエキシマレーザ(波長308nm)を光源に使用するならば、上記光学系の母材は石英で形成されている。その他のエキシマレーザで、さらに短波長のものを光源とする場合は、フローライトやMgF2などの母材が用いられている。
図12(a)の側面図では、XeClエキシマレーザであるレーザ発振器1201から発せられたレーザビームは、シリンドリカルレンズアレイ1202aと1202bにより、レーザビームのスポットを1方向に分割されている。この分割された方向を、縦方向と呼ぶことにする。縦方向は、光学系の途中でミラーが入ったとき、ミラーが曲げた光の方向に曲がるものとする。この構成では、4分割となっている。これらの分割されたスポットは、シリンドリカルレンズ1204により、いったん1つのスポットにまとめられる。再び分離したスポットはミラー1206で反射され、その後、ダブレットシリンドリカルレンズ1207により、被照射面1208にて再び1つのスポットに集光される。ダブレットシリンドリカルレンズとは、2枚のシリンドリカルレンズで構成されているレンズのことをいう。これにより、線状のビームスポットの縦方向のエネルギー均一化がなされ、縦方向の長さが決定される。
図12(b)の平面図で見ると、レーザ発振器1201から発せられたレーザビームは、シリンドリカルレンズアレイ1203により、レーザビームのスポットを、縦方向に対し直角方向に分割する。この直角方向を、横方向と呼ぶことにする。横方向は、光学系の途中でミラーが入ったとき、前記ミラーが曲げた光の方向に曲がるものとする。この構成では、7分割となっている。その後、シリンドリカルレンズ1205にて、7分割されたスポットは被照射面1208にて1つに合成される。ミラー1206以降が破線で示されているが、破線は、ミラー1206を配置しなかった場合の正確な光路とレンズや被照射面の位置を示している。これにより、線状のビームスポットの横方向のエネルギーの均一化がなされ、横方向の長さが決定される。
上述したように、シリンドリカルレンズアレイ1202aとシリンドリカルレンズアレイ1202bとシリンドリカルレンズアレイ1203とがレーザビームのスポットを分割するレンズとなる。これらの分割数により、得られる線状ビームスポットのエネルギー分布の均一性が決まる。
エキシマレーザの発生するレーザビームの形状は一般的に長方形状であり、アスペクト比で表現すると、1〜5位の範囲に入る。レーザビームのスポットの強度は、レーザビームのスポットの中央ほど強い、ガウシアンの分布を示す。前記レーザビームのスポットサイズは、図12に示した光学系により、エネルギー分布が一様のスポット形状320mm×0.4mmの線状のビームスポットに変換される。
上記の構成で加工された線状のビームスポットをそのビームスポットの縦方向に徐々にずらしながら重ねて照射する。そうすると、非単結晶珪素膜全面に対しレーザアニールを施して結晶化させたり結晶性を向上させることができる。現在は、量産工場において、上記のような光学系により長く線状に加工されたビームスポットを使って半導体膜のレーザアニールが行われている。
ビームホモジナイザには、反射鏡を用いているもの(例えば、特許文献1参照。)がある。
特開2001−291681号公報
パルス発振式であるエキシマレーザの発振状態の変化によるビーム軸の変動やビーム広がり角の変化、エキシマレーザのレーザ媒質であるガスと外気を遮断するウインドウのクリーニングにより、被照射面におけるビームスポットの均一性が悪化するなど、量産装置としての完成度はあまり高いものとは言えない。なお、ビーム軸とはビームが通る道筋のことであり、ビーム軸の変動とは、ビームの平行移動を含むビームの進行方向の変化を意味する。本発明は上記の問題点を鑑みて、エキシマレーザの発振状態の変化や、メンテナンス前後において、被照射面におけるビームスポットのエネルギー分布の変化を極力抑えるビームホモジナイザを提供する。また、本発明は前記ビームホモジナイザを用いたレーザ照射装置及び半導体装置の作製方法を提供する。
本発明において、被照射面におけるビームスポットのエネルギー分布を均一化する方法に、レーザビームの入射側面に曲面形状を有し、かつ向い合う二つの反射面を有する光学素子を用いる。このような光学素子として、例えばライトパイプや光導波路があげられる。ライトパイプとは、通常、全反射によって一端から他端に光を伝送する直方体、円錐、ピラミッド形、円柱などの形状に形成された透明部材からなる光学素子のことを言い、照明光学の分野に属するものである。また、光導波路とは、光ファイバー等に代表されるような光通信分野に属し、放射光を一定領域に閉じ込め、その光線の流れを案内して目的の領域に光伝送する能力を持った光学素子である。なお、光伝送にはミラーによる反射を用いることもある。したがって、ライトパイプと光導波路は属する分野が異なるものの、光学的な作用はほぼ同じと見なすことができる。
本発明のビームホモジナイザは、被照射面におけるビームスポットを長方形状に形成するためのビームホモジナイザであって、前記長方形状の長辺方向または短辺方向のエネルギー分布を前記被照射面において均一化する光学素子を有し、前記光学素子はレーザビームの入射側面に曲面形状を有することを特徴とする。ここで、入射側面とは、光学素子を構成する面であって、レーザビームの入射側に配置され、レーザビームが最初に該光学素子に入射する面と定義する。曲面形状として例えばレンズがあげられる。
本発明において、前記光学素子のレーザビームの入射側面に曲面形状を有する理由は以下のとおりである。ビーム軸の中心軸が前記光学素子の中心軸と一致しない場合、レーザビームは前記光学素子の入射側面に対して斜め方向から入射することになる。レーザビームが前記光学素子の入射側面に対して斜め方向から入射すると、前記光学素子におけるレーザビームの反射が光学素子の中心軸に対して非対称となり、前記光学素子の射出口におけるレーザビームのビームスポットのエネルギー分布が十分に均一化されない。そこで、前記光学素子の入射側面に曲面形状を設け、前記光学素子内におけるレーザビームの反射を光学素子の中心軸に対称もしくは対称に近い状態に修正することでき、前記光学素子のレーザビームの射出口でのビームスポットのエネルギー分布を均一化することが可能となる。
本発明は、被照射面におけるビームスポットを長方形状に形成するためのビームホモジナイザであって、前記長方形状の長辺方向または短辺方向のエネルギー分布を前記被照射面において均一化する光学素子と、前記光学素子により形成されるエネルギー分布の均一な面を前記被照射面に投影する一つもしくは複数のシリンドリカルレンズとを有し、前記光学素子は、レーザビームの入射側面に曲面形状を有し、かつ向かい合う二つの反射面を有することを特徴する。
本発明は、被照射面におけるビームスポットを長方形状に形成するためのビームホモジナイザであって、前記ビームホモジナイザーは複数の光学素子を有し、前記複数の光学素子のうち少なくとも、前記長方形状の長辺方向のエネルギー分布を前記被照射面において均一化する第1の光学素子と、前記長方形状の短辺方向のエネルギー分布を前記被照射面において均一化する第2の光学素子とを有し、前記第1の光学素子及び前記第2の光学素子はレーザビームの入射側面に曲面形状を有し、かつ向かい合う二つの反射面を有することを特徴とする。
本発明は、上記の被照射面におけるビームスポットを長方形状に形成するビームホモジナイザにおいて、被照射面における前記長方形状のビームスポットの長辺方向または短辺方向のエネルギー分布を均一化する光学素子を、ライトパイプまたは光導波路に置き換えたものである。
本発明のビームホモジナイザにおいて、前記曲面形状はシリンドリカル面で構成され、前記光学素子が作用する方向に曲率を有することを特徴とする。
本発明は、上記のビームホモジナイザにおいて、被照射面におけるビームスポットのアスペクト比が10以上、好ましくは100以上の長方形状であることを特徴としている。
本発明のレーザ照射装置は、被照射面におけるビームスポットが長方形状であるレーザ照射装置であって、レーザ発振器と、ビームホモジナイザとを有し、前記ビームホモジナイザにおいて、前記長方形状の長辺方向または短辺方向のエネルギー分布を均一化する手段として光学素子を有し、前記光学素子は、レーザビームの入射側面に曲面形状を有し、かつ向い合う二つの反射面を有することを特徴とする。
本発明は、被照射面におけるビームスポットが長方形状であるレーザ照射装置であって、レーザ発振器と、ビームホモジナイザと、前記ビームホモジナイザにより形成されるエネルギー分布の均一な面を前記被照射面に投影する一つもしくは複数のシリンドリカルレンズとを有し、前記ビームホモジナイザにおいて、前記長方形状の長辺方向または短辺方向のエネルギー分布を均一化する手段として光学素子を有し、前記光学素子のレーザビームの入射側面に曲面形状を有し、かつ向かい合う二つの反射面を有することを特徴とする。
本発明は、被照射面におけるビームスポットが長方形状であるレーザ照射装置であって、レーザ発振器と、ビームホモジナイザとを有し、前記ビームホモジナイザーは複数の光学素子を有し、前記複数の光学素子のうち少なくとも、前記長方形状の長辺方向のエネルギー分布を均一化する手段として第1の光学素子と、前記長方形状の短辺方向のエネルギー分布を均一化する手段として第2の光学素子とを有し、前記第1の光学素子及び前記第2の光学素子のレーザビームの入射側面に曲面形状を有し、かつ向かい合う二つの反射面を有することを特徴とする。
本発明は、被照射面におけるビームスポットが長方形状であるレーザ照射装置であって、上記の長方形状のレーザビーム形成用光学系おいて、被照射面におけるビームスポットの長辺方向または短辺方向のエネルギー分布を均一化する光学素子を、ライトパイプまたは光導波路で実現するものである。
本発明のレーザ照射装置において、前記曲面形状は前記光学素子が作用する方向に曲率を持つシリンドリカル面で構成されることを特徴とする。
本発明は、上記のレーザ照射装置の発明において、被照射面におけるビームスポットのアスペクト比が10以上、好ましくは100以上の長方形状であることを特徴としている。
本発明は、上記のレーザ照射装置の発明において、前記被照射面を有する被照射体をビームスポットに対し相対的に移動させる走査ステージ、および前記被照射面を有する被照射体を前記走査ステージに運搬する自動搬送装置を有することを特徴としている。
本発明は、上記のレーザ照射装置の発明において、前記レーザ発振器は、エキシマレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、Arレーザ、GdVO4レーザのいずれかであることを特徴としている。
本発明の半導体装置の作製方法は、基板上に非単結晶半導体膜を形成する工程と、レーザ発振器で発振したレーザビームを、前記非単結晶半導体膜を被照射面として、前記レーザビームを均一化する光学素子を有する光学系を用いて被照射面において長方形状のビームスポットに整形して、前記ビームスポットの位置を移動させながら前記非単結晶半導体膜をレーザアニールする工程とを有し、前記光学素子は前記長方形状のビームスポットの長辺方向または短辺方向に作用し、前記光学素子におけるレーザビームの入射側面には、曲面形状を有し、かつ向い合う二つの反射面を有することを特徴とする。
本発明の半導体装置の作製方法は、基板上に非単結晶半導体膜を形成する工程と、レーザ発振器で発振したレーザビームを、前記非単結晶半導体膜を被照射面として、前記レーザビームを均一化する光学素子と前記光学素子により形成されるエネルギー分布の均一な面を前記被照射面に投影する一つもしくは複数のシリンドリカルレンズとを有する光学系を用いて前記被照射面において長方形状のビームスポットに整形して、前記ビームスポットの位置を移動させながら前記非単結晶半導体膜をレーザアニールする工程とを有し、前記光学素子は前記長方形状のビームスポットの長辺方向または短辺方向に作用し、前記光学素子におけるレーザビームの入射側面には、前記光学素子が作用する方向に曲面形状を有し、かつ向い合う二つの反射面を有することを特徴とする。
本発明の半導体装置の作製方法は、基板上に非単結晶半導体膜を形成する工程と、レーザ発振器で発振したレーザビームを、前記非単結晶半導体膜を被照射面として、複数の光学素子を有する光学系を用いて前記被照射面において長方形状のビームスポットに整形して、前記ビームスポットの位置を移動させながら前記非単結晶半導体膜をレーザアニールする工程とを有し、前記複数の光学素子の内少なくとも、前記長方形状のビームスポットの長辺方向に作用する第1の光学素子と、前記長方形状のビームスポットの短辺方向に作用する第2の光学素子とを有し、前記第1の光学素子及び前記第2の光学素子におけるレーザビームの入射側面には、それぞれ前記第1の光学素子及び前記第2の光学素子が作用する方向に曲面形状を有し、かつ向い合う二つの反射面を有することを特徴とする。
本発明は、上記の半導体装置の作製方法の発明において、上記の長方形状のレーザビーム形成用光学系において、被照射面におけるビームスポットの短辺方向のエネルギー分布を均一化する光学素子を、ライトパイプまたは光導波路に置き換えたものである。
本発明の半導体装置の作製方法において、前記曲面は前記光学素子が作用する方向に曲面形状を有するシリンドリカル面であることを特徴としている。
本発明は、上記の半導体装置の作製方法の発明において、被照射面におけるビームスポットのアスペクト比が10以上、好ましくは100以上の長方形状であることを特徴としている。
本発明は、上記の半導体装置の作製方法の発明において、前記レーザ発振器は、エキシマレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、Arレーザ、GdVO4レーザのいずれかであることを特徴としている。
本発明に係るレーザビームの入射側面に曲面形状を有し、レーザビームを均一化する光学素子を用いて長方形状のビームスポットを形成するビームホモジナイザを用いれば、エネルギー分布が均一な長方形状のビームスポットを被照射面において形成することが可能となる。また、被照射面上に形成されるビームスポットの位置及びエネルギー分布がレーザ発振器の発振状態の影響を受けにくくなるため、ビーム形状の安定性を高めることが可能となる。
本発明のビームホモジナイザを用いたレーザ照射装置から射出される長方形状のビームスポットを、半導体膜に長方形状の短辺方向に走査すると、ビームスポットのエネルギー分布の不均一性に起因する結晶性の不均一性の発生を抑制することができ、基板面内の結晶性の均一性を向上させることができる。また、本発明により、レーザ照射装置としての高い安定性が確保でき、またメンテナンス性の向上により、ランニングコストの低減が図れる。本発明を、ポリシリコンTFTの量産ラインに適用すれば、動作特性の高い特性の揃ったTFTを効率良く生産することができる。さらに、前記ポリシリコンTFTを液晶表示装置や、EL素子に代表される発光素子を用いた発光装置に適用すると、表示むらの極めて少ない表示装置を作製することが可能となる。
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
最初に、図11を用いて、ビームスポットのエネルギー分布を均一化する方向にレーザビームを反射する向かい合う2つの反射面を有する光学素子によるエネルギー分布の均一化の方法を説明する。まず、図11(a)の平面図について説明する。向い合う2つの反射面1102a、1102bを有する光学素子1102と、被照射面1103を用意し、光線を紙面左側から入射させる。前記光線は、光学素子1102が存在するときの光線を実線1101aで、光学素子1102が存在しないときの光線を破線1101bで示す。光学素子1102が存在しないとき紙面左側から入射する光線は、破線1101bで示したように、被照射面1103の1103a、1103b及び1103cの領域に到達する。
一方、光学素子1102が存在するときには、光線1101aで示すように、光線は光学素子1102の反射面によって反射され、すべての光線が被照射面1103の1103bの領域に到達する。つまり、光学素子1102が存在するときには、光学素子1102が存在しないときに被照射面1103a及び1103cの領域に到達する光線が、すべて被照射面1103bの領域に到達する。従って、光学素子1102に光線を入射すると、前記光学素子内において反射を繰り返し、射出口に至る。つまり入射する光線が折りたたまれるように、同じ位置である被照射面1103bに重ね合わされることになる。この例において、光学素子がない場合の被照射面1103での光の拡がり1103a、1103b、1103cをあわせた長さをAとし、光学素子がある場合の被照射面1103での光の拡がり1103bの長さをBとしたとき、A/Bが背景技術で述べたホモジナイザの分割数に相当する。このように、入射する光線を分割し、分割される光線を同じ位置に重ね合わせることで、重ね合わされた位置における光線のエネルギー分布は均一化される。
ホモジナイザは一般的に光線の分割数が多くなるほど、分割された光線が重ね合わされた位置でのエネルギー分布の均一性は高くなる。上記光学素子1102において、光線の分割数を多くするには、上記光学素子1102内での反射回数を多くすることで可能となる。つまり、光学素子が有する2つの反射面の光線入射方向における長さを長くするとよい。また、向い合う反射面の間隔を小さくすることでも分割数を大きくすることができる。あるいは、入射する光線のNA(開口数)を大きくすることによっても分割数を大きくすることができる。
上記光学素子にビームスポットのエネルギー分布を均一化する方向にレーザビームを反射する向かい合う2つの反射面を有するライトパイプまたは光導波路を用いても、光線のエネルギー分布は均一化される。
本発明で開示する長方形状のビームスポット形成光学系を、図3を用いて説明する。まず、図3(b)の側面図について説明する。レーザ発振器301から出たレーザビームは図3中、矢印の方向に伝播される。まず、レーザビームは球面レンズ302a及び302bにより拡大される。この構成は、レーザ発振器301から出るビームスポットが十分に大きい場合には必要ない。
以降、長辺方向、短辺方向とは、それぞれ被照射面307上に形成される長方形状のビームスポットの長辺方向、短辺方向と同じ方向とする。レーザビームはシリンドリカルレンズ304により、短辺方向にビームスポットを絞られ、シリンドリカルレンズ304の後方に配置されたビームスポットのエネルギー分布を均一化する方向にレーザビームを反射する向かい合う2つの反射面および入射側面に曲面形状を有する光学素子305に入射する。ここで曲率の方向は、短辺方向、つまりエネルギー分布を均一化する方向である。レーザビームは、前記光学素子内にて全反射を繰り返しながら射出口に至り、前記光学素子305の射出側面に長方形状のビームスポットの短辺方向のエネルギー分布の均一面が形成される。ここで、射出側面とは、光学素子を構成する面であって、レーザビームの射出側に配置され、レーザビームが最後に該光学素子を通過する面と定義する。なお、光学素子305と空気の境界面においてレーザビームが全反射する条件を満たすようシリンドリカルレンズ304の曲率を考慮する必要がある。
図1及び図2を用いて、光学素子305のレーザビームの入射側面に曲面形状を設ける理由を説明する。図1、図2ともに、図示しないレーザ発振器から発せられたレーザビームをシリンドリカルレンズ101及び201で絞り、ビームスポットのエネルギー分布を均一化する方向に、レーザビームを反射する向かい合う2つの反射面を有する光学素子102及び202に入射している様子を、エネルギー分布を均一化しようとする方向に対して垂直方向からみた図である。レーザビームは図1、図2ともに光学素子の中心軸に対しある角度をもって斜め方向から、光学素子102及び202に入射する。
図2において、レーザビームはシリンドリカルレンズ201により絞られ光学素子202に斜め方向から入射した後、光学素子内において光学素子の中心軸に対して非対称な反射を繰り返し、光学素子の射出口に至り、射出側面にエネルギー分布が不均一なビームスポットを形成する。一方、図1においては、レーザビームはシリンドリカルレンズ101によって絞られた後、入射側面に曲面形状を有する光学素子102に入射する。光学素子の入射側面に曲面形状を設けることにより、光学素子に対し斜め方向から入射されるレーザビームを広げ、光学素子に入射されたレーザビームの反射が光学素子の中心軸に対称もしくは対称に近くなるよう修正することで、光学素子の射出側面にはエネルギー分布の均一なビームスポットを形成することが可能となる。
この曲面形状は、前段にあるレンズの仕様(NA)即ち入射角、光学素子の長さおよび幅に基づいて決定される。
以上のように、入射側面に曲面形状を有する光学素子を用いることにより、レーザ発振器から射出されるビームのポインティングスタビリティーの影響やパルス毎及びメンテナンス等によるビーム軸の変化が発生しても、光学素子によって形成されるビームスポットのエネルギー分布を均一に保つことができる。また、光学素子を使用することにより、均一面の位置が光学系により完全に固定される利点が得られる。これにより、レーザ発振器の状態の変化に左右されない均一なビームを被照射面に得ることが可能となる。
光学素子305の入射方向への長さが長ければ長いほど、また、シリンドリカルレンズ304の焦点距離が短ければ短いほどエネルギー分布の均一化は進む。しかしながら、光学系の大きさを考えて実際の系は作製されなければならないため、前記光学素子の長さや、前記焦点距離は系の大きさに合わせて実際的なものとしなくてはならない。
図3中、光学素子305の後方に配置したダブレットシリンドリカルレンズ306により、前記ダブレットシリンドリカルレンズの後方に配置した被照射面307に光学素子305直後に形成された前記エネルギー分布の均一面を投影する。ダブレットシリンドリカルレンズとは、2枚のシリンドリカルレンズ306a、306bで構成されているレンズのことをいう。これにより、光学素子305の射出側面に形成された均一面を他の面(被照射面)に投影することができる。すなわち、前記均一面と、被照射面307とは、ダブレットシリンドリカルレンズ306に対して共役な位置にある。光学素子305とダブレットシリンドリカルレンズ306により、長方形状のビームスポットの短辺方向のエネルギー分布の均一化がなされ、短辺方向の長さが決定される。なお、被照射面においてビームスポットの均一性をあまり要求しない場合、あるいはダブレットシリンドリカルレンズのF値(F=レンズ焦点距離/入射瞳径)が非常に大きい場合は、シングレットシリンドリカルレンズを用いても良い。
次に、図3(a)の平面図について説明する。レーザ発振器301から出たレーザビームは、シリンドリカルレンズアレイ303により、ビームスポットが長辺方向に分割される。シリンドリカルレンズアレイ303は、シリンドリカルレンズを曲率方向に並べたものである。本実施形態においては、シリンドリカルレンズを5個並べたシリンドリカルレンズアレイを用いている。これにより、長方形状のビームスポットの長辺方向のエネルギー分布の均一化がなされ、長辺方向の長さが決定される。なお、シリンドリカルレンズアレイの後方に前記シリンドリカルレンズアレイによって分割された光線を合成するシリンドリカルレンズを配置してもよい。
本発明のビームホモジナイザと組み合わせるレーザ発振器は、大出力でかつ半導体膜によく吸収される波長域が好ましい。半導体膜として珪素膜を用いた場合、吸収率を考慮し、用いるレーザ発振器の出すレーザビームの波長は600nm以下であることが好ましい。このようなレーザビームを出すレーザ発振器には、例えば、エキシマレーザ、YAGレーザ(高調波)、ガラスレーザ(高調波)がある。
また、現在の技術ではまだ大出力は得られていないが、珪素膜の結晶化に適当な波長のレーザビームを発振するレーザ発振器として、例えば、YVO4レーザ(高調波)、YLFレーザ(高調波)、Arレーザ、GdVO4レーザがある。
本発明の光学系は、空気中で用いても良いし、高いエネルギーを持ったレーザ光によるライトパイプやレンズ表面の損傷を小さくするために窒素やAr雰囲気下で使用してもよい。
本実施形態においては、ビームスポットのエネルギー分布の均一化に向かい合う二つの反射面を有する光学素子を用いる例を示したが、光学的に同等の効果をもつライトパイプまたは光導波路を用いてもよい。
以下、本発明のビームホモジナイザ及びレーザ照射装置を用いた本発明の半導体装置の作製方法について説明する。まず、基板としてガラス基板を用意する。この基板には600℃までの温度であれば充分な耐久性のあるものを使用する。前記ガラス基板上に下地膜として酸化珪素膜を成膜し、さらに、その上から非単結晶珪素膜を成膜する。成膜は、共にスパッタ法にて行う。あるいはプラズマCVD法にて成膜してもよい。
上記成膜済の基板を、窒素雰囲気中で加熱処理を施し、非単結晶珪素膜中の水素濃度を減らす。膜中の水素が多すぎると膜がレーザのエネルギーに対して耐えきれないので本工程を入れる。前記膜内の水素の濃度は1020/cm3程度が適当である。ここで、1020/cm3とは、1cm3あたりに水素原子が1020個存在するという意味である。このとき、基板の加熱処理時間及び温度は、実施者が適宜決めればよい。ただし、加熱温度はガラス基板の耐久性を考慮したものでなければならない。
本実施の形態では、レーザ発振器として、XeClエキシマレーザを使う。前記エキシマレーザは、パルスレーザである。基板1枚をレーザ処理する間、該パルスレーザの1パルスごとのエネルギー変動は、±5%以内、好ましくは±2%以内に収まっていると、均一な結晶化が行える。なお、本実施形態で示したレンズ及びレーザビームの入射側面に曲面形状を有し、レーザビームを均一化する光学素子は、XeClエキシマレーザに対して高い透過率とレーザ耐性をもつ合成石英製とする。
ここで述べているレーザエネルギーの変動は、以下のように定義する。基板1枚を照射している期間のレーザエネルギーの平均値を基準とし、その期間の最小エネルギーまたは最大エネルギーと前記平均値との差を%で表したものである。
レーザビームの照射は例えば、図3に示した被照射面307をのせたステージを長方形状のビームスポットの短辺方向に走査させながら行う。このとき、被照射面におけるビームスポットのエネルギー密度や、走査のスピードは、実施者が適宜決めればよい。だいたいの目安は、エネルギー密度200mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲である。走査のスピードは、長方形状のビームスポットの短辺方向の幅が好ましくは90%程度、もしくは80%以上で互いに重なり合う範囲で適当なものを選ぶと、均一なレーザアニールを行える可能性が高い。最適な走査スピードは、レーザ発振器の周波数に依存し、前記周波数に比例すると考えてよい。
こうして、レーザアニール工程が終了する。上記工程を繰り返すことにより、多数の基板を処理できる。前記基板を利用して例えばアクティブマトリクス型の液晶ディスプレイやEL表示装置を公知の方法に従って作製することができる。
上記の例ではレーザ発振器にエキシマレーザを用いた。エキシマレーザはコヒーレント長が数μmと非常に小さいため、上記例の光学系に適している。以下に示すレーザにはコヒーレント長が長いものもあるが、作為的にコヒーレント長を変えたものを用いればよい。YAGレーザの高調波やガラスレーザの高調波を用いても珪素膜にレーザビームのエネルギーが良く吸収されるので好ましい。珪素膜の結晶化に適当なレーザ発振器として、YVO4レーザ(高調波)、YLFレーザ(高調波)、Arレーザ、GdVO4レーザなどがある。これらのレーザビームの波長域は珪素膜によく吸収される。
上記の例では、非単結晶半導体膜には非単結晶珪素膜を使ったが、本発明は他の非単結晶半導体にも適用できることが容易に推測できる。例えば、非単結晶半導体膜に非単結晶珪素ゲルマニウム膜や多結晶珪素ゲルマニウム膜などの化合物半導体膜を使用しても良い。あるいは、非単結晶半導体膜に多結晶珪素膜を使用してもよく、以下に示すように形成する多結晶珪素膜を使用してもよい。
ガラス基板上に下地膜として酸化珪素膜を成膜し、さらにその上から非単結晶珪素膜を成膜する。前記酸化珪素膜及び前記非単結晶珪素膜は共にスパッタ法もしくはCVD法にて形成する。またプラズマCVD法を用いてもよい。なお、この後、前記非単結晶珪素膜上にヒドロ処理を行って酸化珪素膜を形成してもよい。ここで、酸化珪素膜を形成するのは、後のニッケルを含んだ酢酸塩溶液を塗布する工程で、非単結晶珪素膜の表面全体に酢酸塩溶液を行き渡らせるためである。例えば、非単結晶珪素膜の表面に直接酢酸塩溶液を塗布した場合には非単結晶珪素が酢酸塩溶液を弾いてしまい、非単結晶珪素膜の表面全体に均一にニッケルを導入することができず、結晶化を均一に行うことができない。従って、酸化珪素膜を形成することにより濡れ性を改善する。次に、前記非単結晶珪素膜に、酢酸塩溶液中のニッケル濃度を1〜100ppmとした酢酸塩溶液を添加し、加熱処理を行って結晶化し、結晶性珪素膜とする。
図4に本実施例で説明する光学系の例を示す。まず、図4(b)の側面図について説明する。XeClエキシマレーザ発振器401から出たレーザビームは図4中、矢印の方向に伝播される。まず、レーザビームは球面レンズ402a及び402bにより拡大される。この構成は、レーザ発振器401から出るビームスポットが十分に大きい場合には必要ない。なお、本実施例で示すレンズ及びレーザビームの入射側面に曲面形状を有し、レーザビームを均一化するライトパイプは、XeClエキシマレーザに対して高い透過率とレーザ耐性をもつ合成石英製とする。
以降、長辺方向、短辺方向とは、それぞれ被照射面408上に形成される長方形状のビームスポットの長辺方向、短辺方向と同じ方向とする。第1面が曲率半径486mm、厚さ20mm、第2面が平面のシリンドリカルレンズ405により、短辺方向にビームスポットを絞る。レンズ面は光が入射する面を第1面、射出する面を第2面とする。また、曲率半径の符号は、曲率中心がレンズ面に対して光線の射出側にある時が正、曲率中心がレンズ面に対して入射側にある時を負とする。シリンドリカルレンズ405の後方1000mmに配置された、ビームスポットのエネルギー分布を均一化する方向にレーザビームを反射する向かい合う2つの反射面および入射側面に曲率半径−38mmの円筒状の曲面形状を有するライトパイプ406に入射したレーザビームは、ライトパイプ406内で全反射を繰り返し射出口に至る。これにより、被照射面における長方形状のビームスポットの短辺方向のエネルギー分布が均一化される。なお、ここで円筒状の曲率の方向は、短辺方向、つまりエネルギー分布を均一化する方向である。前記ライトパイプ406は光線の入射方向に長さ250mm、全反射面間の距離が2mmとする。
なお、本実施例においては、ライトパイプ406は媒質である合成石英の波長308nmの光に対する屈折率が約1.486と外気である空気(屈折率は約1)より大きく、光線が臨界角以上の角度でライトパイプ406に入射するため、反射面において光線は全反射する。つまり、このときはライトパイプの光線の透過率は全反射しない場合と比べて高くなる。従って、より高効率で光源であるレーザ発振器401からの光線を被照射面408に集光することができる。
ライトパイプ406の1250mm後方に配置した第1面の曲率半径が97mm、第2面が平面、厚さ30mmシリンドリカルレンズ407により、前記シリンドリカルレンズ407から後方220mmに配置した被照射面408に長方形の短辺方向にライトパイプ406から射出される光線を集光する。つまり、ライトパイプ406の射出側面に形成されるエネルギー分布の均一な面をシリンドリカルレンズ407により、被照射面408に投影する。これにより、長方形状のビームスポットの短辺方向のエネルギー分布の均一化がなされ、短辺方向の長さが決定される。
次に、図4(a)の平面図について説明する。レーザ発振器401から出たレーザビームは、シリンドリカルレンズアレイ403により、スポットが長方形の長辺方向に分割される。シリンドリカルレンズアレイ403は、第1面の曲率半径が24.5mmで、厚さが5mm、長辺方向の幅6.5mmのシリンドリカルレンズを曲率方向に7個並べたものである。
シリンドリカルレンズアレイ403の後方500mmに配置された第1面の曲率半径が2140mm、第2面が平面のシリンドリカルレンズ404によって前記シリンドリカルレンズアレイ403によって分割された光線が被照射面408上で重ね合わされる。これにより、長方形状のビームスポットの長辺方向のエネルギー分布の均一化がなされ、長辺方向の長さが決定される。シリンドリカルレンズ404は、発明実施の形態においては、用いていない。このレンズが入ることにより長方形のビームスポットの長辺方向における両端で発生する、エネルギーの減衰部分を少なくすることが可能になる。しかしながら、装置構成上、本レンズの焦点距離が著しく長くなる場合があり、このようなときは、本レンズの効果が薄くなるため用いなくてもよいことがある。
以上のように、入射側面に曲面形状を有する光学素子を用いたビームホモジナイザを使用することにより、ビーム軸に変化が起きても被照射面上にエネルギー分布が均一化な長辺方向の長さが320mm、短辺方向の長さが0.4mmの長方形状のビームスポットを成形することができる。
本実施例で示した光学系を利用して、例えば発明実施の形態に従った方法にて、半導体膜のレーザアニールを行う。また、前記半導体膜を利用して例えばアクティブマトリクス型の液晶ディスプレイやEL表示装置を作製することができる。前記作製は、実施者が公知の方法に従って行えばよい。
本実施例では、以上で記載した光学系とは別の光学系の例を挙げる。図6に本実施例で説明する光学系の例を示す。なお、本実施例で示すレンズは、XeClエキシマレーザに対して高い透過率とレーザ耐性をもつ合成石英製とする。
図6中、レーザビームの入射側面に曲面形状を有し、レーザビームを均一化する光学素子606以外は、実施例1で図4に示した光学系と全く同じ光路を通る。光学素子606は、ライトパイプ406同様に向い合う2つの反射面を有する。図4においてレーザビームは、入射側面に曲率を持ち、媒質がXeClエキシマレーザに対し屈折率が約1.486である合成石英であるライトパイプ406の媒質中を伝播し、全反射を繰り返し射出口に至るのに対し、図6に示す光学素子606は、反射面が向い合う2つのミラー606a及び606bと光学素子606のレーザビームの入射位置に配置したシリンドリカルレンズ607から構成され、シリンドリカルレンズ607以外の前記ミラーに挟まれた空間が中空である。この点で両者は異なる。光学素子606は、ミラー間の距離が2mm、ビーム軸方向の長さが250mmで、シリンドリカルレンズ607は、第1面の曲率半径が−38mm、第2面が平面、厚さが5mmとする。光学素子606に入射したレーザビームは、シリンドリカルレンズ607によって長方形状のビームスポットの短辺方向に広げられ、光学素子606内を光学素子606の中心軸対称に反射しながら、射出口に至り、エネルギー分布が均一化される。
本実施例で示した光学系の光学シミュレーションを行い、長方形状のビームスポットを確認した。光学素子606の入射角が0度となるよう光学系を設定し、光学シミュレーションを行なった結果を図5(a)に示す。ここでいう入射角は図16を用いて次のように定義される。なお、図16はシリンドリカルレンズ405及び光学素子606の拡大図である。入射角とは、長方形状ビームスポットの短辺方向を含みかつ光学素子606の中心軸に平行な面内において、シリンドリカルレンズ405のレンズ頂点、光学素子の中心軸および入射側面との交点とを結ぶ線(図16中点線で示す)と、光学素子606の中心軸(図16中鎖線で示す)とがなす角θである。短辺方向に対するエネルギー分布は、図5(a)に示されるように均一な分布が得られた。次に、レーザビームの光学素子606への入射角が0.086度となるよう光学系を設定し、光学シミュレーションを行なったところ、図5(b)のように均一な分布が得られた。一方、光学素子606の入射側面を平面とし、同様に入射角が0.086度となるよう光学系を設定し、光学シミュレーションを行なったところ、図5(c)に示されるような不均一な分布のビームスポットが得られた。
以上のように、入射側面に曲面形状を有する光学素子を用いたビームホモジナイザを使用することにより、ビーム軸に変化が起きても被照射面上にエネルギー分布が均一化な長辺方向の長さが320mm、短辺方向の長さが0.4mmの長方形状のビームスポットを成形することができる。
また、レーザビームの光学素子606への入射角が0.17度となるように光学系を設定し、入射側面の曲率半径が異なる光学素子606を用いて短辺方向における光学シミュレーションを行った結果を図13、図14および図15に示す。図13a)、b)、図14a)、b)および図15a)、b)の曲率半径は、各々−300、−100、−50、−38、−26、−20mmである。図13a)およびb)では不均一なエネルギー分布であったのに対し、図13a)−図15b)の曲率半径−50から−20mmでは均一なエネルギー分布が得られた。しかしながら、図15b)の曲率半径−20mmの光学素子を通過したレーザは、次のシリンドリカルレンズ407の大きさ以上に拡大されており、シリンドリカルレンズ407に入射されたレーザのみが均一化されていた。これは、シリンドリカルレンズ407を大きく、もしくは光学素子606との距離を短くすることで解決できる。
以上のように、曲率半径−50mm以下を有する光学素子を用いることで、ビーム軸に変化が起きても被照射面上のレーザのエネルギー分布を均一化することが可能である。
本実施例で示した光学系を利用して、例えば発明実施の形態に従った方法にて、半導体膜のレーザアニールを行う。また、前記半導体膜を利用して例えばアクティブマトリクス型の液晶ディスプレイやEL表示装置を作製することができる。前記作製は、実施者が公知の方法に従って行えばよい。
本実施例では、以上に記載した光学系とは別の光学系の例を挙げる。図7に本実施例で説明する光学系の例を示す。なお、本実施例で示すレンズは、XeClエキシマレーザに対して高い透過率とレーザ耐性をもつ合成石英製とする。
図7中、シリンドリカルレンズ707以外は、実施例2で図6に示した光学系と全く同じ光路を通る。レーザビームの入射側面に曲面形状を有し、レーザビームを均一化する光学素子706は、光学素子606同様に向い合う2つの反射面を有する。図6において、光学素子606に入射したレーザビームは、光学素子606中の入射位置付近に設置された凹型のシリンドリカルレンズ607によって、長方形状のビームスポットの短辺方向に広げられるのに対し、図7において、光学素子706に入射したレーザビームは、光学素子706中の入射位置付近に設置された凸型のシリンドリカルレンズ707によって、長方形状のビームスポットの短辺方向にいったん絞られた後に広げられる。この点で両者は異なる。光学素子706は、ミラー間の距離が2mm、光軸方向の長さが250mmで、シリンドリカルレンズ707は、第1面の曲率半径が38mm、第2面が平面、厚さが5mmとする。光学素子706に入射したレーザビームは、シリンドリカルレンズ707によって長方形状のビームスポットの短辺方向にいったん絞られた後に広げられ、光学素子706内を光学素子706の中心軸対称に反射しながら、射出口に至り、エネルギー分布が均一化される。
図7に示した光学系により、被照射面709上に短辺方向の長さが0.4mm、長辺方向の長さが320mmのエネルギー分布が均一な長方形状ビームスポットを形成することができる。
本実施例で示した光学系を利用して、例えば発明実施の形態に従った方法にて、半導体膜のレーザアニールを行う。また、前記半導体膜を利用して例えばアクティブマトリクス型の液晶ディスプレイやEL表示装置を作製することができる。前記作製は、実施者が公知の方法に従って行えばよい。
本実施例では、ライトパイプを長方形状のビームスポットの長辺方向の均一化に用いた光学系の例を挙げる。図8に本実施例で説明する光学系の例を示す。なお、本実施例で示すレンズ及びレーザビームの入射側面に曲面形状を有し、レーザビームを均一化するライトパイプは、XeClエキシマレーザに対して高い透過率とレーザ耐性をもつ合成石英製とする。以降、長辺方向、短辺方向とは、それぞれ被照射面808上に形成される長方形状のビームスポットの長辺方向、短辺方向と同じ方向とする。
まず、図8(a)の平面図に沿って説明する。XeClエキシマレーザ発振器801から出たレーザビームは図8中、矢印の方向に伝播され、第1面が曲率半径194.25mm、第2面が平面、厚さ20mmのシリンドリカルレンズ802により、長辺方向にビームスポットを絞る。シリンドリカルレンズ802の後方400mmに配置された、ビームスポットのエネルギー分布を均一化する方向にレーザビームを反射する向かい合う2つの反射面および入射側面に曲率半径−50mmの円筒状の曲面形状を有するライトパイプ803に入射したレーザビームは、ライトパイプ803内で全反射を繰り返し射出口に至る。これにより、被照射面における長方形状のビームスポットの長辺方向のエネルギー分布が均一化される。なお、ここで曲率の方向は、長辺方向、つまりエネルギー分布を均一化する方向である。前記ライトパイプ803は光線の入射方向に長さ300mm、全反射面間の距離が2mmとする。
ライトパイプ803の20mm後方に配置した第1面の曲率半径が9.7mm、第2面が平面、厚さ5mmシリンドリカルレンズ804により、前記シリンドリカルレンズ804から後方3600mmに配置した被照射面808にライトパイプ803から射出される光線を集光する。つまり、ライトパイプ803の射出側面に形成されるエネルギー分布の均一な面をシリンドリカルレンズ804により、被照射面808に投影する。これにより、長方形状のビームスポットの長辺方向のエネルギー分布の均一化がなされ、長辺方向の長さが決定される。
次に、図8(b)の側面図について説明する。レーザ発振器801から出たレーザビームは、シリンドリカルレンズアレイ805a及び805bにより、スポットが短辺方向に分割される。シリンドリカルレンズアレイ805aは、第1面の曲率半径が200mm、第2面が平面、厚さが5mm、短辺方向の幅が4mmのシリンドリカルレンズを曲率方向に7個並べたもので、シリンドリカルレンズアレイ805bは、第1面が平面、第2面の曲率半径が160mm、厚さが5mm、短辺方向の幅が4mmのシリンドリカルレンズを曲率方向に7個並べたものである。シリンドリカルレンズアレイ805a及び805bによって分割されたスポットは、第1面の曲率半径が486mm、第2面が平面、厚さが20mmシリンドリカルレンズ806によって集光され、シリンドリカルレンズ806から後方1000mmの位置に短辺方向の長さが2mmのエネルギー分布の均一な面が形成される。
さらに、前記エネルギー分布の均一な面を、シリンドリカルレンズ806の後方1250mmに配置したダブレットシリンドリカルレンズ807によって、ダブレットシリンドリカルレンズ807の後方230mmにある被照射面808に投影する。これにより、長方形状のビームスポットの短辺方向のエネルギー分布の均一化がなされ、短辺方向の長さが決定される。ダブレットシリンドリカルレンズ807は、シリンドリカルレンズ807aとシリンドリカルレンズ807bから構成される。シリンドリカルレンズ807aは、第1面の曲率半径が125mm、第2面の曲率半径が77mm、厚さ10mmのシリンドリカルレンズで、シリンドリカルレンズ807bは、第1面の曲率半径が97mm、第2面の曲率半径が−200mm、厚さ20mmのシリンドリカルレンズで、シリンドリカルレンズ807aとシリンドリカルレンズ807bとの間隔は5.5mmである。
図8に示した光学系により、被照射面808上に短辺方向の長さが0.4mm、長辺方向の長さが320mmのエネルギー分布が均一な長方形状ビームスポットを形成することができる。
本実施例で示した光学系を利用して、例えば発明実施の形態に従った方法にて、半導体膜のレーザアニールを行う。また、前記半導体膜を利用して例えばアクティブマトリクス型の液晶ディスプレイやEL表示装置を作製することができる。前記作製は、実施者が公知の方法に従って行えばよい。
本実施例では、以上で記載した光学系とは別の光学系の例を挙げる。図17に本実施例で説明する光学系の例を示す。なお、本実施例で示すレンズは、XeClエキシマレーザに対して高い透過率とレーザ耐性をもつ合成石英製とする。
図17中、レーザビームの入射側面に曲面形状を有し、レーザビームを均一化する光学素子1503以外は、実施例4で図8に示した光学系と全く同じ光路を通る。光学素子1503は、ライトパイプ803と同様に向い合う2つの反射面を有する。図4においてレーザビームは、入射側面に曲面形状を有し、媒質がXeClエキシマレーザに対し屈折率が約1.486である合成石英であるライトパイプ406の媒質中を伝播し、全反射を繰り返し射出口に至るのに対し、図8に示す光学素子1503は、反射面が向い合う2つのミラー1503a及び1503bと光学素子1503のレーザビームの入射位置に配置したシリンドリカルレンズ1504から構成され、シリンドリカルレンズ1504以外の前記ミラーに挟まれた空間が中空である。この点で両者は異なる。光学素子1503は、ミラー間の距離が2mm、ビーム軸方向の長さが300mmで、シリンドリカルレンズ1504は、第1面の曲率半径が−50mm、第2面が平面、厚さが5mmとする。光学素子1503に入射したレーザビームは、シリンドリカルレンズ1504によって長方形状のビームスポットの長辺方向に広げられ、光学素子1503内を光学素子1503の中心軸対称に反射しながら、射出口に至り、エネルギー分布が均一化される。
図17に示した光学系により、被照射面808上に短辺方向の長さが0.4mm、長辺方向の長さが320mmのエネルギー分布が均一な長方形状ビームスポットを形成することができる。図9に、図17に示した光学系で形成された長方形状のビームスポットの長辺方向のエネルギー分布を示す。
本実施例で示した光学系を利用して、例えば発明実施の形態に従った方法にて、半導体膜のレーザアニールを行う。また、前記半導体膜を利用して例えばアクティブマトリクス型の液晶ディスプレイやEL表示装置を作製することができる。前記作製は、実施者が公知の方法に従って行えばよい。
本実施例では、ライトパイプを長方形状のビームスポットの短辺方向と長辺方向の均一化に用いた光学系の例を挙げる。図10に本実施例で説明する光学系の例を示す。なお、本実施例で示すレンズ及びレーザビームの入射側面に曲面形状を有し、レーザビームを均一化するライトパイプは、XeClエキシマレーザに対して高い透過率とレーザ耐性をもつ合成石英製とする。以降、長辺方向、短辺方向とは、それぞれ被照射面1008上に形成される長方形状のビームスポットの長辺方向、短辺方向と同じ方向とする。
まず、図10(a)の平面図に沿って説明する。XeClエキシマレーザ発振器1001から出たレーザビームは図10中、矢印の方向に伝播される。第1面が曲率半径194.25mm、第2面が平面、厚さ20mm、のシリンドリカルレンズ1002により、長辺方向にビームスポットを絞る。シリンドリカルレンズ1002の後方400mmに配置された、ビームスポットのエネルギー分布を均一化する方向にレーザビームを反射する向かい合う2つの反射面および入射側面に曲率半径−38mmの円筒状の曲面形状を有するライトパイプ1003に入射したレーザビームは、ライトパイプ1003内で全反射を繰り返し射出口に至る。これにより、被照射面における長方形状のビームスポットの長辺方向のエネルギー分布が均一化される。なお、ここで曲率の方向は、長辺方向、つまりエネルギー分布を均一化する方向である。前記ライトパイプ1003は光線の入射方向に長さ300mm、全反射面間の距離が2mmとする。
ライトパイプ1003の20mm後方に配置した第1面の曲率半径が9.7mm、第2面が平面、厚さ5mmシリンドリカルレンズ1004により、前記シリンドリカルレンズ1004から後方3600mmに配置した被照射面1008にライトパイプ1003から射出される光線を集光する。つまり、ライトパイプ1003の射出側面に形成されるエネルギー分布の均一な面をシリンドリカルレンズ1004により、被照射面1008に投影する。これにより、長方形状のビームスポットの長辺方向のエネルギー分布の均一化がなされ、長辺方向の長さが決定される。
次に、図10(b)の側面図について説明する。XeClエキシマレーザ発振器1001から発せられたレーザビームを、第1面が曲率半径486mm、厚さ20mm、第2面が平面のシリンドリカルレンズ1005により、短辺方向にビームスポットを絞る。シリンドリカルレンズ1005の後方1000mmに配置された、ビームスポットのエネルギー分布を均一化する方向にレーザビームを反射する向かい合う2つの反射面および入射側面に曲率半径−38mmの円筒状の曲面形状を有するライトパイプ1006に入射したレーザビームは、ライトパイプ1006内で全反射を繰り返し射出口に至る。これにより、被照射面における長方形状のビームスポットの短辺方向のエネルギー分布が均一化される。なお、ここで曲率の方向は、短辺方向、つまりエネルギー分布を均一化する方向である。前記ライトパイプ1006は光線の入射方向に長さ250mm、全反射面間の距離が2mmとする。
なお、本実施例においては、ライトパイプ1003及び1006は媒質である合成石英の波長308nmの光に対する屈折率が約1.486と外気である空気(屈折率は約1)より大きく、光線が臨界角以上の角度でライトパイプ1003及び1006に入射するため、反射面において光線は全反射する。つまり、このときはライトパイプの光線の透過率は全反射しない場合と比べて高くなる。従って、より高効率で光源であるレーザ発振器1001からの光線を被照射面1008に集光することができる。
ライトパイプ1006の1250mm後方に配置した第1面の曲率半径が97mm、第2面が平面、厚さ30mmシリンドリカルレンズ1007により、前記シリンドリカルレンズ1007から後方200mmに配置した被照射面1008にライトパイプ1006から射出される光線を集光する。つまり、ライトパイプ1006の射出側面に形成されるエネルギー分布の均一な面をシリンドリカルレンズ1007により、被照射面1008に投影する。これにより、長方形状のビームスポットの短辺方向のエネルギー分布の均一化がなされ、短辺方向の長さが決定される。
以上に示した光学系によって、長辺方向の長さが320mm、短辺方向の長さが0.4mmのエネルギー分布が均一な長方形状のビームスポットを形成することができる。
本実施例で示した光学系を利用して、例えば発明実施の形態に従った方法にて、半導体膜のレーザアニールを行う。また、前記半導体膜を利用して例えばアクティブマトリクス型の液晶ディスプレイやEL表示装置を作製することができる。前記作製は、実施者が公知の方法に従って行えばよい。
本発明の手段を説明する図。
本発明の手段を説明する図。
本発明が開示するビームホモジナイザの例を示す図。
本発明が開示するビームホモジナイザの例を示す図。
ビームスポットのエネルギー分布を示す図。
本発明が開示するビームホモジナイザの例を示す図。
本発明が開示するビームホモジナイザの例を示す図。
本発明が開示するビームホモジナイザの例を示す図。
ビームスポットのエネルギー分布を示す図。
本発明が開示するビームホモジナイザの例を示す図。
光学素子によるエネルギー分布の均一化を説明する図。
背景技術を説明する図。
ビームスポットのエネルギー分布を示す図。
ビームスポットのエネルギー分布を示す図。
ビームスポットのエネルギー分布を示す図。
入射角を説明する図。
本発明が開示するビームホモジナイザの例を示す図。