JP2005126357A - 1,2−アルカンジオールの製造方法 - Google Patents

1,2−アルカンジオールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】オートクレーブのような特別な装置を必要としない温和な条件で、1,2−エポキシアルカンから1,2−アルカンジオールを高収率で得ることができる、1,2−アルカンジオールの製造方法を提供すること。
【解決手段】1,2−エポキシアルカンから1,2−アルカンジオールを得る製造方法において、酸触媒で、1,2−エポキシアルカン(好ましくは炭素数6〜24の1,2−エポキシアルカン)をケトン又はアルデヒド(好ましくは炭素数4〜8のケトン)で1,3−ジオキソラン化した後、加水分解することを特長とする、1,2−アルカンジオールの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は1,2−アルカンジオールの製造方法に関する。
1,2−アルカンジオールは、一般的に、1,2−エポキシアルカンの加水分解により製造されている。
炭素数の比較的少ない1,2−エポキシアルカンは、水との相溶性が高いため加水分解が容易であるが、炭素数の比較的多い1,2−エポキシアルカンは、相溶性が低く加水分解が起こりにくいという問題がある。
炭素数の比較的多い1,2−アルカンジオールの製造方法としては、例えば、(a)アルカリ金属水酸化物若しくはカルボン酸のアルカリ金属塩を触媒として1,2−エポキシアルカンを加水分解する方法(例えば、特許文献1、2を参照)、(b)亜臨界状態の水で1,2−エポキシアルカンを加水分解する方法(例えば、特許文献3を参照)、(c)有機アミンの有機酸塩を触媒として1,2−エポキシアルカンを加水分解する方法(例えば、特許文献4を参照)、(d)1,2−エポキシアルカンを低級脂肪酸でエステル化した後、加水分解する方法(例えば、非特許文献1を参照)等が知られている。
しかしながら、(a)及び(b)の方法は、反応温度が200℃を超えるため、オートクレーブを用いて高温高圧で反応する必要があり、(c)の方法は、反応温度が100℃以下では加水分解が不十分であるため耐圧反応容器が必要で、着色が激しく生成物からの触媒の除去も困難であり、(d)の方法は、収率が低く、多量に生成する低級脂肪酸塩の処理の問題がある。
一方、アルキルグリセリルエーテルの製造方法としては、アルキルグリシジルエーテルをカルボニル化合物と反応させて、1,3−ジオキソラン化した後、加水分解する方法が知られている(例えば、特許文献5等を参照)が、1,2−エポキシアルカンを1,3−ジオキソラン化した後に加水分解することにより、1,2−アルカンジオールを得る方法は知られていなかった。
特開昭48−96506号公報 特開昭49−86307号公報 特開2002−88000号公報 特開昭56−55325号公報 特開昭56−133281号公報 J.Am.Chem.Soc.、1946年、68巻、1504頁
本発明が解決しようとする課題は、オートクレーブのような特別な装置を必要としない温和な条件で、1,2−エポキシアルカンから1,2−アルカンジオールを高収率で得ることができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、1,2−エポキシアルカンを1,3−ジオキソラン化した後、加水分解することにより、温和な条件で1,2−アルカンジオールが得られ、収率が良好であることを見出し、本特許を完成させた。
即ち、本発明は、1,2−エポキシアルカンから1,2−アルカンジオールを得る製造方法において、1,2−エポキシアルカンをケトン又はアルデヒドで1,3−ジオキソラン化した後、加水分解することを特徴とする1,2−アルカンジオールの製造方法である。
本発明の効果は、オートクレーブのような特別な装置を必要としない温和な条件で製造が可能であり、収率も良好な1,2−アルカンジオールの製造方法を提供することにある。
本発明の製造方法に使用できる1,2−エポキシアルカンとしては、例えば、1,2−エポキシエタン(エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(プロピレンオキシド)、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシヘンエイコサン、1,2−エポキシドコサン、1,2−エポキシトリコサン、1,2−エポキシテトラコサン等が挙げられる。
1,2−エポキシアルカンの炭素数が小さい場合には、1,2−エポキシアルカン同士の反応が起こり易く、1,2−エポキシアルカンの炭素数が大きい場合いは、1,3−ジオキソラン化の反応が遅くなることから、炭素数6〜24の1,2−エポキシアルカンが好ましく、炭素7〜20の1,2−エポキシアルカンが更に好ましく、炭素数8〜16の1,2−エポキシアルカンが最も好ましい。
1,2−エポキシアルカンを1,3−ジオキソラン化するのに用いることができるケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−sec−ブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、メチルペンチルケトン、メチルイソペチルケトン、エチルブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルイソペチルケトン、メチル−sec−ヘキシルケトン、エチルペンチルケトン、エチルイソペンチルケトン、エチル−sec−イソペンチルケトン、プロピルブチルケトン、プロピルイソブチルケトン、プロピル−sec−ブチルケトン、イソプロピルブチルケトン、メチルヘプチルケトン、メチル−sec−ヘプチルケトン、エチルヘキシルケトン、エチル−sec−ヘキシルケトン、プロピルペンチルケトン、プロピル−sec−ペンチルケトン、イソプロピルブチルケトン、イソプロピル−sec−ペンチルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジ(sec−ブチル)ケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキシルケトン、アセトフェノン、ジベンゾフェノン等が挙げられる。
また、1,2−エポキシアルカンを1,3−ジオキソラン化するのに用いることができるアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクトルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
これらのケトン及びアルデヒドの中でも、反応性が高く、生成する1,3−ジオキソラン化物の加水分解も容易であることから、炭素数3〜8のケトンが好ましく、炭素数4〜7の分枝のケトンが更に好ましく、炭素数5〜6の分枝のケトンが最も好ましい。
ケトン又はアルデヒドの使用量は、1,2−エポキシアルカン1モルに対して、2〜200モルが好ましく、3〜100モルが更に好ましく、5〜50モルが最も好ましい。
ケトン又はアルデヒドの使用量が、1,2−エポキシアルカンに対して2モル未満では、1,3−ジオキソラン化が不十分となるばかりでなく、1,2−エポキシアルカン同士の反応が起こり易くなり、200モルを超えると1,2−アルカンジオールの生産性が低下するからである。
1,2−エポキシアルカンをケトン又はアルデヒドで1,3−ジオキソラン化するには、酸触媒を用いる。
酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、3フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化スズ、4塩化チタン、塩化第二鉄等、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸、リンバナドタングステン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルホン酸型イオン交換樹脂、リン酸型イオン交換樹脂、酸性白土、活性白土等が挙げられる。
これらの酸触媒の中でも、反応性に優れ、着色も少ないことから、リン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、3フッ化ホウ素及び塩化スズが好ましく、ベンゼンスルホン酸、3フッ化ホウ素及び塩化スズが更に好ましく、3フッ化ホウ素が最も好ましい。
酸触媒の添加量は、触媒の活性や形状によっても異なるが、1,2−エポキシアルカン100質量部に対して、0.1〜100質量部であることが好ましく、0.5〜50質量部であることが更に好ましく、1〜20質量部であることが最も好ましい。
また、1,3−ジオキソラン化の反応温度は、触媒の活性やその添加量によっても異なるが、3フッ化ホウ素等の活性の高い触媒の場合には10〜80℃程度、酸性白土、活性白土等の活性の低い触媒の場合には70〜200℃程度である。1,2−エポキシアルカンを酸触媒でケトン又はアルデヒドと反応させる場合は、これらを一括して仕込んで反応してもよいが、ケトン又はアルデヒドに酸触媒を溶解若しくは分散しておき、1,2−エポキシアルカンを滴下、分割添加等の方法により徐々に添加すると、副反応が抑えられる。
1,2−エポキシアルカンは、1,3−ジオキソラン化した後、必要に応じて、過剰のケトン若しくはアルデヒドを除去し、加水分解される。
加水分解する場合の水の量は、特に限定されないが、あまりに量が少ない場合には反応が不十分となる場合があり、あまりに量が多い場合には使用量に見合う反応性の向上は見られず、反応後に除去する廃水が増えてしまう。
このため、加水分解に使用する水の量は、反応に使用した1,2−エポキシアルカン1モルに対して、2〜200モルであることが好ましく、5〜100モルであることが更に好ましく、10〜50モルであることが最も好ましい。
加水分解の温度が、あまりに低い場合には反応が不十分となる場合があり、また、あまりに高い場合には水の蒸気圧のために反応系が加圧になり加圧に耐えられる特別な反応装置が必要となる。
このため、加水分解の温度は、40〜110℃が好ましく、50〜100℃が更に好ましく、60〜90℃が最も好ましい。
加水分解を行う場合は、加熱還流下に、加水分解により生成するケトン若しくはアルデヒドを除去しながら反応を行うことが好ましい。
1,3−ジオキソラン化物の加水分解においては、反応性を向上させるために触媒を用いることが好ましい。
触媒は、1,3−ジオキソラン化に使用した酸触媒を除去せずに、そのまま使用してもよいし、更に他の触媒を添加してもよい。
なお、触媒が、水により分解する触媒である場合;例えば、3フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化スズ、4塩化チタン、塩化第二鉄等の場合には、水による分解により生成したフッ酸や塩酸が触媒となる。
加水分解反応の触媒としては、先に挙げた酸触媒の他に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の塩基触媒が挙げられる。
添加量は、添加する水1モルに対して0.2〜40ミリモルであることが好ましく、1〜10ミリモルであることが更に好ましい。
加水分解終了後、必要に応じて触媒を中和し、水洗した後、溶剤抽出、蒸留等の公知の方法により精製して、1,2−アルカンジオールが得られる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、%は特に記載が無い限り質量基準である。
〔実施例1〕
攪拌機、温度計、還流器付き分水器、窒素導入管を備えた反応容器に、メチルイソブチルケトン400g(4モル)及び3フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体の50%ジエチルエーテル溶液1.55g(0.05モル)を仕込み、攪拌しながら、25℃で、1,2−エポキシデカン156g(1モル)を30分かけて滴下した後、25℃で1時間及び100℃で1時間攪拌を続け、1,3−ジオキソラン化した。
次いで、反応容器に水54g(3モル)を添加してから加熱すると、水/メチルイソブチルケトンが共沸して留出するので、メチルイソブチルケトンを分水器により除去し、水を反応容器に戻した。
3時間後、メチルイソブチルケトンが留出しなくなったので、更に2時間加熱還流した後、100℃で圧力が1kPa以下になるまで反応容器内を減圧することにより、過剰の水を除去したところ、淡褐色液状の粗生成物が169g得られた(粗収率97%)。
なお、この粗生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−デカンジオールが91質量%含有されていることがわかった(収率88%)。
〔実施例2〕
実施例1と同様の反応容器に、アセトン300g(5モル)及び3フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体の50%ジエチルエーテル溶液1.55g(0.05モル)を仕込み、攪拌しながら、25℃で、1,2−エポキシドデカン184g(1モル)を30分かけて滴下した後、25℃で1時間及び65℃で1時間攪拌を続け、1,3−ジオキソラン化した。
次いで、65℃で反応容器内を減圧して、過剰のアセトンを除去してから、水72g(4モル)を添加し、100℃で6時間攪拌することにより加水分解を行った。
この後、100℃で圧力が1kPa以下になるまで反応容器内を減圧することにより、過剰の水及び加水分解により生成したアセトンを除去したところ、淡黄色固体の粗生成物が192g得られた(粗収率95%)。
なお、この粗生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ドデカンジオールが87質量%含有されていることがわかった(収率83%)。
〔比較例1〕
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、95%ギ酸97g(2モル)及び溶媒としてトルエン200gを仕込み、攪拌しながら、70℃で、1,2−エポキシデカン156g(1モル)を3時間かけて滴下した後、70℃で2時間攪拌を続け、エステル化した。
次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液352g(2.2モル)を添加し、60℃で1時間攪拌することより、エステルを鹸化した後、攪拌を停止し30分静置した。
2層に分離したので、下層(ギ酸ナトリウムを含有する水層)を除去し、60℃の温水400gによる水洗を3回繰り返した。
水洗終了後、反応容器内を減圧することにより、トルエン及び水を除去したところ淡褐色液状の粗生成物が156g得られた(粗収率97%)。
なお、この粗生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−デカンジオールが65質量%含有されていることがわかった(収率63%)。
〔比較例2〕
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた耐圧反応容器に、45%トリメチルアミン水溶液66g(トリエチルアミン0.5モル及び水2モル)を仕込み、冷却しながら酢酸30g(0.5モル)を徐々に添加した。
次いで、1,2−エポキシドデカン184g(1モル)を添加し、120℃で6時間攪拌することにより加水分解を行った。
反応生成物は、乳化しており、トルエン等を添加しても分離しなかった。この後、100℃で圧力が1kPa以下になるまで耐圧反応容器内を減圧することにより、水を除去したところ、褐色固体の粗生成物が243g得られた(粗収率120%)。
なお、この粗生成物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、1,2−ドデカンジオールが48質量%含有されていることがわかった(収率58%)。

Claims (3)

  1. 1,2−エポキシアルカンから1,2−アルカンジオールを得る製造方法において、酸触媒で、1,2−エポキシアルカンをケトン又はアルデヒドで1,3−ジオキソラン化した後、加水分解することを特徴とする1,2−アルカンジオールの製造方法。
  2. 1,2−エポキシアルカンが、炭素数6〜24の1,2−エポキシアルカンである請求項1に記載の1,2−アルカンジオールの製造方法。
  3. ケトン又はアルデヒドが、炭素数4〜8のケトンである請求項1又は2に記載の1,2−アルカンジオールの製造方法。
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