JP2005124590A - 遠心発酵プロセス - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、その中で相反する遠心力場と液流場により、生細胞または細胞構成生体触媒が固定化される、新規の培養方法および装置よりなる。
【解決手段】固定化細胞または生体触媒は、粒子の三次元配列に配置され、その密度は粒子サイズ、形状、内部密度により、および液流速度および回転の角速度などのパラメーターの組み合わせの選択により決定される。
【選択図】図1

Description

遠心発酵プロセス
本発明は、生体触媒の連続培養の改良方法と装置に関する。詳細には、本発明は、液体の流れに相反する向きの遠心力場に、三次元配列状態に固定された微生物、動物または植物、細胞下細胞成分を培養する方法および装置に関する。本発明では、生体触媒濃度の極めて高い培養物を維持することができ、その生産性を最大限化することが可能である。
本明細書において使用される「発酵(fermentation)」という語は、生きているまたは生きていない生体触媒により引き起こされる、全ての化学反応を意味する。本明細書において使用される「培養物(culture)」という語は、化学反応を維持する目的の液体培地中またはこれに覆われるあらゆるこのような生体触媒の懸濁液または付着物を指す。本明細書において使用される「生体触媒(biocatalyst)」には酵素、ビタミン類、酵素凝集物、固定化酵素、細胞下成分(subceller components)、原核生物、および真核生物が含まれる。「遠心力(centrifugal force)」は基準となる調和して回転するフレームから見て、物体の角回転(angular rotation)の結果生じる求心的な力を指す。
微生物、または動物および植物(組織培養)の培養(発酵)は、多数の商業上重要な化学および生化学的製造プロセスにおける中心に位置する。生細胞は、一般に簡単に入手できる出発材料を使用して、市場価値のある化学物質を安価で合成することができるという事実の結果、これらのプロセスでは生細胞が使用される。
発酵では、栄養培地中で生きた細胞が増殖、または維持される。典型的なバッチ発酵プロセスでは、所望の微生物または真核細胞を、水、栄養化学物質、および溶解ガスからなる定められた培地に添加し、所望の培養濃度まで成長(増殖)させる。液体培地は、細胞がその生命プロセスに必要とする全ての化学物質を必ず含んでおり、またその成長および/または複製を継続するために最適な環境条件でなければならない。このように維持される生細胞は、次いで代謝により、栄養混合液に導入された先駆化学物質から、所望の生成物を産生する。所望の生成物は、液体培地から精製されるかまたは、細胞そのものから抽出される。
典型的な発酵プロセスには、避けられない多数の欠点がある。このようなプロセスでは、大量の水溶液を適切な温度に維持するために、高価なエネルギー費用を要し、プロセスを連続的にモニターし、栄養素濃度とpHを至適値に維持するために添加を行い、滅菌や、次いで好ましくない細胞型が培養培地に混入することのないように非常な注意と費用を費やす必要がある。このような発酵方法、特に好気性微生物を使用するものでは、生物を代謝させるための適当な量の溶存酸素を供給することができない結果、産物の収量が低いか、または産物の発酵速度が小さくなる。最後に、このようなバッチまたは半バッチプロセスが操業できる時間には制限があり、発酵培地中に排泄される廃棄物が蓄積すると、プロセスをシャットダウンしてシステムを清掃、再滅菌、再スタートすることが必要となる。
細胞の固定により、細胞成長の有効密度がかなり大きく改善され、生産可能細胞の生成物流排出への損失を大きく減少した。細胞または酵素固定の初期の方法では、このような生体触媒は、デキストラン、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、アルギン酸カルシウム、または寒天ゲル構造上、または球状のマイクロキャリアビーズ重合体上に捕えられる。これらの固定方法には、ガスの拡散による干渉、物理的特性が貧弱、高圧問題
の原因となるゲルトラップ培地の高圧縮率、マイクロキャリアビーズが押しつぶされる、およびかき混ぜられるタンクリアクター内の水圧による剪断力(hydraulic shear forces)による付着細胞の破壊など多数の欠点がある。
現在使用されている別の生細胞または酵素を固定化する他の方法では、充填ベッド式(paced bed)リアクターを使用している。こういった方法では、遊離の細胞またはマイクロキャリアビーズに結合させた細胞を培養バイオリアクター中の固体または半固体のマトリックス中に懸濁させる。これらの固定化方法はすべて、特に生産サイズにスケールアップした際に多くの問題が生じる。
最近開発されたあるタイプの細胞固定化方法では、所望の細胞を二枚の合成膜の間に閉じ込める。こういったプロセスでは、栄養素液の流入と廃棄液(waste liquid)の流出が細胞をいれるスペースと別の経路を使用するという環境に細胞を置き、および、同様にガス流入および流出を、これも細胞をいれるスペースと分離された同様の経路で提供するものである。残念ながら、このような方法には、特に商業用にスケースアップした使用途では、膜の製造が高価、組み立てが困難、細胞が孔に付着するおよび/または栄養素供給液または廃棄流出液中の不溶物で孔が詰まって膜が濡れる、および多数の高価な入口および出口ポートと外部設備を使用するなど、多くの問題点がある。
別のタイプの細胞固定化方法では、その壁に多数のマイクロ孔を有する中空の毛細管ファイバー(通常は、多数の長いファイバーの束の形状をとる)を使用する。具体的には、細胞をファイバー束をいれた閉鎖されたチャンバー内で培養する。栄養水溶液は毛細管の管内を自由に流れ、この液流の水圧により、毛細管外の空間を流入口から開始する外向きで放射状の濃度勾配で栄養素液を満たす。同様にこの水圧差により、「使用後」の培地が細胞チャンバーから外向き流となって毛細管腔に戻り、ここで廃棄物が除去される。毛細管外の間隙の細胞は、溶液中で自由にまたは、ファイバーの毛細管の外側の壁に付着して増殖する。典型的には、ポンプ機構を介して接続させた外部タンクにより、毛細管外の間隙の液体部分に酸素が溶解される。毛細管内の廃棄産物は、細胞チャンバーの外部に循環される液体中で逆浸透処理を行って除去することもできる。中空毛細管ファイバーによる細胞固定化方法に基づく方法を使用するには、多くの困難な問題点がある。Cracauer(米国特許番号4,804,628)らはこれらの問題点を広範に記載している。
生細胞を大量培養する別のタイプの方法には、流動層バイオリアクターを使用するものがある。流動層方法、特にエアーリフト発酵(airlift fermentor)と呼ばれる方法の主な欠点は、リアクター中に空気または酸素泡を発生させる必要があり、結果としてリアクター容量全体に気体−液体接触面ができることになる。気体泡があると、液体力学およびたんぱく質フォーミング(foaming)が破壊され、広い気体−液体接触面において、細胞破壊および栄養素や産物の変性が起こる。連続操業において、特に動物細胞培養においては、細胞の流出はまず避けられない。
生細胞を大量培養するまた別のタイプの方法は、二軸連続流バイオリアクタープロセッシングとして知られているものである。このタイプのバイオリアクターにおいては、バイオリアクター内容物を有効に内部混合するために垂直軸に直角の軸を中心とするリアクターチャンバーの回転を使用する一方、垂直軸を中心とする回転により、回転の垂直軸からの放射距離に、粗に粒子状とした物質(matter)を止め置く。このタイプの方法は、質量の小さい微生物、特に気体状の栄養を要求し、気体状の廃棄産物を産生する微生物の固定化には有効でない。
「不均一遠心フィルムバイオリアクター」と呼ばれる好気性細胞の培養を目的とした別のタイプのバイオリアクターが、米国特許番号5,248,613に教授されている。こ
の方法の目的は気相と接触する薄い液体フィルムを形成させることにより、「最大量の気相の液相へのエントレインメント」を最大限にし、さらに遠心力で小さな液体のしずくを形成させ、これを比較的変動の少ない気相中に落下させバルク液相に戻すことである。生細胞の大量固定化の最後の方法は、「連続遠心バイオプロセッシング」と呼ばれるもので、ヴァン・ウィー(Van Wie)ら米国特許番号4,939,087に教示される。この方法ではその中へ、およびその中から液流がポンプで供給される、回転するバイオリアクターチャンバー内に、培養物を維持するために、細胞は遠心力場中の速度勾配によって「補足」される。 図1に示されるように、基本的な概念は、その回転の結果として粒子を回転するバイオリアクターチャンバー中し懸濁し、「遠心」力を粒子にかけて、これにより通常は粒子をより長い遠心半径に移動させるというものである。遠心力場と相反する反対力を与えるために、液流を回転チャンバーの外周部から導入(そして短径から排出)し、この結果として粒子が液流中の特定の半径に固定される。サンダーソン及びバード(Sanderson and Bird's)(Sanderson,R.J.and Bird,K.E.(1977)Methods in Cell Biology,15,1-14)のこのプロセスにおける粒子および液体力学の数学的分析の重要な性質は、図2に示される。
サンダーソン及びバード(Sanderson and Bird)、およびベッグマンインストゥルメンツ(Beckman Instruments)の開発陣が行ったように、遠心分離に応用すると、この理論を、大きさおよび/または密度の異なる細胞の分離に短期的に使用することができる。残念ながら、理論上の根拠が正しくないために、長期間の細胞または生体触媒の固定化には全く応用できない。図3に示されるように、特に長期間にわたり粒子を固定化する場合(発酵の場合など)に考慮しなければならない、懸濁粒子に作用する別の力が存在する。この力は粒子質量によるものである。微生物や動物細胞の重量は非常に軽いがゼロではなく、結果として重力が作用し、期間が長くなるほどその作用は大きくなる。これは、図4にさらにグラフで示される。このグラフに示されるように、派生(derivation)において粒子質量にかかる重力の影響を考慮することを無視しているため、流れる液体中において、粒子が負荷される遠心場中の放射半径のどの位置に固定化されるかを簡単に説明できない。この「理論からの逸脱」の結果は、遠心分離(centrifugal elutriation)実験において明らかで、実験ではより長い分離時間が必要で、図5にグラフを示す。懸濁された粒子の重量( 図5のバイオリアクターチャンバーの円形断面図中において、黒丸で示される)のため、より長い時間をかけて、当初チャンバー内にこれらの粒子を懸濁させていた力のバランスが崩れて、これらの粒子はバイオリアクターチャンバーの最下部に位置するようになる。さらに、個々の粒子と実際同じ密度のこれらの粒子によるさらに大きな粒子の「凝集体」が、より強い遠心作用を作りだし、これにより、凝集体がより長い半径を移動して、最終的に液体注入口を詰まらせることになる。
従来技術は、細胞の固定化が培養液中の生細胞の生産性を向上させる非常に望ましい方法である一方、それぞれのタイプの方法には多数の欠点が伴うことを示している。このような培養方法全ての中心的問題は、培養細胞への適切な酸素供給で、さらに効率的で経済的な設計開発をおこなうにあたり、二酸化炭素の除去が制限的要因となっている。
生細胞または生体触媒による細胞下成分は、気体状の酸素を全く利用できない。生細胞または生体触媒は、粒子を取り囲む培地水溶液中に溶存する酸素のみを利用することができる。微生物生産において一般的なバッチ発酵では、空気または高酸素濃度の気体を栄養培地水溶液中に吹きつけるのは、代謝する細胞によって消費された溶存酸素を置換する目的でおこなわれる。この方法では、気体の大半は未利用のまま出ていく一方で、溶存酸素レベルはある値に維持される。同様に、動物細胞培養に使用するに先立って空気(または酸素)を栄養培地に吹きつけるのは、培地中の溶存酸素濃度を一定値に維持するためである。水中の通常の酸素濃度は、約0.2から0.3mMの範囲にあるが(pHやイオン強度などの要因で変動する)、水溶液に約2気圧の酸素圧をかけることにより、この濃度を
0.5mMまでも高くすることができる。
発酵培地中において適切な酸素濃度を維持するために、大半の従来技術では、(1)極めて小さい大きさの泡を作成(sparging pore sizeの関数)、(2)液相に入ってくる酸素の率を増大するために高速振とうを使用、または(3)培養培地上に1または2気圧の気体の過圧を使用して溶存酸素濃度を増大させることにより、気体と液体の接触を増大することに注目してきた。動物細胞培養の場合、動物培養細胞チャンバーの典型的なデザインでは、これまで、1気圧の分圧よりも大きい過圧の使用を考えることが困難であった。このように、酸素濃度を増大させるための最も一般的な方法は、溶存酸素濃度を維持するために、栄養液流と接触する気体透過性膜またはファイバーを使用している。
栄養培地中の溶存酸素の濃度を増大させるためのこれらの方法には、多くの問題点が伴う。まず、最大の問題点は、これらの方法ほぼすべてにおいて、細胞培養プロセスの他の成分が一般に損なわれやすい特性のために、溶存酸素濃度を大気圧で得られる値以上にすることが不可能である。次に、酸素溶解率を増大させるために液体−気体混合物を激しく振とうする方法は、非常に破損しやすく水のせん断力で簡単に損傷を受ける動物細胞には適用できない。最後に、培養培地上の気体に過圧をかけて溶存酸素濃度を増大させる方法は、すぐに、細胞収穫物または生産物を単離するために培養細胞を破壊することなく細胞の入った液体培地を扱うことができなくなるために、約1から2気圧の過圧までの大きさにしかスケールアップすることができない。しかし、上記それぞれの方法の教授は、個々に検討するに値する。
米国特許番号4,897,359(オークレーらに対して認可)は、細胞培養容器中にその後導入するための動物細胞培養培地への酸素供給法を開示しており、この方法では、酸素化された気体を、不特定の圧力で、酸素供給する対象の液体培地がその周囲に存在する複数の気体透過性チューブに通す。オークレーらの発明の方法は細胞培養培地に、大気圧で得られる最大溶存酸素濃度があることを確認するにおいてのみ有用である。
最後に、細胞または微生物の固定化は、細胞密封チャンバーがプロセスシステムの一部であることが要求されるため、比較のために最近の文献を調査した。多数の細胞培養チャンバーが存在した。これらのチャンバーの多くは液流の流入および流出口を備え、幾つかは観察ポートを有し、全てのチャンバーには、その上に細胞が付着できる表面、またはその中で懸濁された細胞を培養するチャンバーがあった。いずれの場合も、これらの「密封チャンバー」の運転圧力は1気圧(またはそれ以下)で、これらのチャンバーは高い溶存酸素濃度が望まれるプロセスには不適当で、必然的に大気圧で得られる溶存酸素濃度値に限定される。
現在の最先端技術は微生物、動物細胞、またはその細胞下成分の大量培養の経済的な利用を困難にする次の三つのそれぞれに関連した問題点を明らかにしている。(1)細胞固定化に関する従来技術の全てより明らかなように、多くの研究の焦点は、細胞培養の密度を増大させることであった。生物学的生成物の経済的な生産は、所望の細胞型の大きな凝集体を有効に培養する能力に直接関連することは明らかである。残念ながら、細胞培養密度の増大に向けての探究は、二つの二次的な問題を引き起こすに至った。(2)高密度の細胞凝集体への適当な栄養供給ができないこと、および(3)高密度好気性細胞集団への適切な酸素供給ができないことである。細胞密度の増大に伴い、適切な液体栄養を凝集体へ供給する唯一の方法は液流量の増大で、これは従来技術における全ての場合において、最終的に固定化方法の全体的な規模を制限する。同様に、細胞密度の増大に伴い、適切な溶存酸素(または他の気体)の細胞凝集体への供給ができないことは、さらに重要な制限要因で、培養の規模を大きく低下させるものである。
このように、連続的に培養、供給を行い、および生化学的生成物を、微生物または真核細胞またはその細胞下成分から、これらの生体触媒の高密度の凝集体を生きたまま維持しながら抽出する装置および方法が、依然必要とされている。さらに、様々な栄養、生長、および生殖パラメーターと細胞生存性および生産性に与える作用との関係をより正確に把握するためのこれらパラメータの研究材料となるサンプル生体触媒集団を確実に固定化する方法も必要とされる。
米国特許第4,804,628号明細書 米国特許第5,248,613号明細書 米国特許第4,939,087号明細書 米国特許第4,897,359号明細書 サンダーソン,アール.ジェイ.及びバード,ケー.イー.(Sanderson,R.J.and Bird,K.E.)著、「メソッド イン セルバイオロジー (Methods in Cell Biology) 」,(米国),1977年,15.p.1−14
発明の概要
本発明は、遠心場内に設置されたバイオリアクターチャンバー内に生きている細胞または細胞下生体触媒が固定されるとともに、栄養液がいかなる気体と接触することなく前記固定化チャンバーに流入およびこれから流出する、新規な培養方法および装置を含むものである。細胞または生体触媒は三次元粒子配列となるように整列し、その密度は粒子サイズ、形状、内部密度により、および液体の流速および回転の角速度などの簡単に制御できるパラメーターの組み合わせの選択により決まる。
本発明によれば、細胞または生体触媒をある容量のバイオリアクターチャンバー内に閉じ込めることができる。このチャンバーを出入りするのは、液体(溶存気体を含んでいてもよい)のみである。チャンバー内の細胞または生体触媒の三次元配列内に栄養液が流れるようにするために、正の変位ポンプを使用して正の水圧によりチャンバー内で栄養液を移動させる。閉じ込められた細胞または生体触媒は水圧の変化が頻繁でないかぎり、この水圧上昇の影響をうけない。このように、プロセスが実行されている間中、新鮮で最適の液体栄養培地が閉じ込められた細胞または生体触媒に常時供給される一方、所望の細胞生産物を密閉チャンバーのアウトプットからすぐに回収できる。
本発明は、バクテリア、酵母、真菌、真核細胞のような生体触媒、ミトコンドリアなどのような細胞下小器官、または固定化酵素複合体から、工業用化学品あるいは医薬品を高収率で生産するために、使用されうる。これらの細胞および細胞構成物は、天然のものでも、所望の生成物を生産するように遺伝子操作されたものでもよい。本発明は、以下の二種類の態様のいずれかにおいて使用できる。
(1)定められたバイオリアクターベッド容積を維持するために、栄養制限を使用する態様。この態様は、所望の生成物が固定化生体触媒から放出され、液体の流れにともなって、バイオリアクターから排出されるような培養に適用される。
(2)過剰の栄養インプットを行い、バイオリアクターの容積制限の過剰成長を起こす態様。この態様は、細胞内生成物を含有する成熟細胞の連続生産およびアウトフローに有用である。
このように、本発明の目的は、生体触媒を遠心固定化チャンバー内に固定し、該チャンバー内に栄養液を供給し、所望の代謝産物を含有する流出液がチャンバーから流出する方法と装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、生細胞集団を含む生体触媒を固定化し、好気性または嫌気性発酵を行って、液状栄養および基質栄養を、生成物を含有するアウトプット液流に変換する方法、および装置を提供することである。
本発明のさらなる目的は、バクテリア細胞集団を固定化し発酵を行って、液状栄養および基質培地を、生成物を含有するアウトプット液流に変換する方法および装置を提供することである。
本発明のさらなる目的は、真菌の細胞集団を固定化し発酵を行って、液状栄養および基質栄養を、生成物を含有するアウトプット液流に変換する方法および装置を提供することである。
本発明のさらなる目的は、酵母の細胞集団を固定化し発酵を行って、液状栄養および基質栄養を、生成物を含有するアウトプット液流に変換する方法および装置を提供することである。
本発明のさらなる目的は、動物の真核細胞集団を固定化し発酵を行って、液状栄養および基質栄養を、生成物を含有するアウトプット液流に変換する方法および装置を提供することである。
本発明のさらなる目的は、植物の真核細胞、原核細胞集団を固定化し発酵を行って、液状栄養および基質栄養を、生成物を含有するアウトプット液流に変換する方法および装置を提供することである。
本発明のさらなる目的は、固体支持体上に固定化された酵素または酵素系、固体支持体上に固定化された触媒、または固体支持体上に固定化された細胞または細胞成分を、固定化し、触媒による化学変換を効率的に行い、その液状基質栄養素を、生成物を含有するアウトプット液流に変換する方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、細胞密封チャンバー内に向かって流れる栄養液中の溶存酸素(または他の溶存気体)の濃度を、負荷する水圧に従い所望の値にまで上昇させる方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、細胞密封チャンバー内に向かって流れる栄養インプット液体中の栄養気体基質(たとえば酸素)またはアウトプット液流中の排出された呼吸ガス(例えば二酸化炭素)を、液体と気体の分離が望まれるまで、一般には細胞固定化コンパートメントのずっと下流まで、溶存した状態に維持する方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、所望の生成物のための入手可能な化学基質の変換を一連の段階的な生体触媒に媒介される変換により効率的に行うことができ、各々の化学変換段階が液流中に直列または並列に挿入される一連の遠心固定化チャンバーの一つにより効率化される方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、大きな変化なしにあらゆる種類の細胞に適用することのできる、細胞培養または発酵のための非特異的で一般的な方法および装置を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、生体触媒を遠心固定チャンバー内に固定化し、毒性のある化学物質を含有する培地をチャンバーに供給してチャンバー内の生体触媒が毒性化学物質を中和することにより、環境に優しい生成物に変換する方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、生産資本および労力コストおよび製造設備の両方を大幅に削減する、細胞培養、または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、日和見生成物による汚染を受けることが非常に少ない細胞培養、または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、所望の生体触媒を浸す液体環境が、基本的には時間によって変化しない、すなわち、pH、イオン強度、栄養素濃度、廃棄物濃度または温度が生体触媒の環境において時間の関数として変化しない、細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、連続した発酵または細胞培養の方法を提供することである。
本発明の他の目的は、増殖、成長または生成物生成のサイクルが、投入される栄養供給組成を変化させることにより簡単に完了することができる、細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、固定化された微生物または細胞タイプの寿命期間にわたって継続することのできる、細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、生体触媒から得られる生成物の収量を有意に増大する条件下における生体触媒の培養方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、培養プロセスの変換効率(基質から生成物への)を増大する細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、培養プロセスをサポートするのに必要な水溶性培地の加熱および冷却のコストを大きく削減する、細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、微生物発酵で得られる抗生物質などの生成物の収量をより高くするような細胞培養、または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、微生物発酵で得られる酵素や他のたんぱく質などの生成物の収量をより高くするような細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、微生物発酵で得られるエタノールや他の短鎖アルコールおよび酸などの生成物の収量をより高くするような細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、形質転換された微生物から得られるたんぱく質ホルモンなどの生成物の収量をより高くするような細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、真核生物から得られるたんぱく質ホルモンなどの生成物の収量をより高くするような細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、微生物発酵で得られるアミノ酸、窒素性塩基(nitrogenous bases
)、アルカロイドなどの生成物の収量をより高くするような細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、糖を含有する農業材料の酵母発酵で得られる燃料用エタノールなどの生成物の収量をより高くするような細胞培養または発酵のための方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、ビールやワインなどのアルコール飲料の製造で要求される発酵時間を短縮する方法および装置を提供することである。
本発明の他の目的は、商業的に使用できる細胞培養または発酵のための簡単にスケールアップできる方法および装置を提供することである。
本発明のこれらのおよび他の目的、特徴、長所は、下記の開示された実施例の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を検討することにより、明らかなものとなる。
発明の詳細な説明
本固定化および培養プロセスの開発は、その発端を4つの異なる知識分野に置いている。プロセス全体の機能は、その適切な機能についての4つの分野全ての情報の使用によって決まる。その分野とは、(1)ストークスの法則および向流式遠心法の理論、(2)流速と遠心場強度の幾何学的関係、(3)ヘンリーの気体の法則、および(4)単細胞生物および多細胞生物、その細胞および細胞成分に対する水圧の作用である。
本発明のプロセスの主な目的は、粒子(細胞、細胞下構成物、凝集した生体触媒)の三次元配列の固定化、およびこれらにその生存力と生産力を最大にする溶存気体を含有する液体環境を提供することにある。このような細胞には原核細胞、細菌、または、ラン藻細胞、植物細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、爬虫類細胞、および哺乳動物細胞などの真核細胞が含まれるが、これに限定されるものではない。該生体触媒には、細胞下成分、酵素複合体、および/または固体支持体に固定化された酵素複合体があるが、これに限定されるものではない。
本発明の溶存気体には、空気、O2、NH3、NO2、Ar、He、N2およびH2またはこれらの混合物のいずれもが含まれるが、これに限定されるものではない。
本方法は粒子の配列を固定化するという、新規に改良された様式の「向流式遠心法」を利用している。固定化粒子には重力も作用するが、その重力の影響に対する措置と組み合わせてストークスの法則を適切に適用することによって、そのような粒子の高密度配列の相対固定化を可能にする数学的関係が得られる。第3図ないし第5図に図示されている上記の重力の影響は、第6図に示されているように回転軸線の選択を変更することによって排除することができる。生物遠心法では最も一般的である垂直軸線(z)回りの回転に代えて水平軸線(y)回りの回転を選択した場合、固定化粒子に対する重力の影響は、常にx−z平面上だけの作用に限定されるであろう。この平面は、遠心力および液体の流れに関連する力の両方が作用を限定されている平面と同じ平面であるので、回転サイクル中のいずれの点における拘束粒子の運動も、それに作用する3種類の力の合力の結果によるものである。
x−z平面を示す第7図の挿入図Aに示されているように、半径方向の遠心場(Fc)内で浮遊している粒子であって、内向きに流れる液体によって、まったく同じ大きさであるが向きが逆の力(Fb)を受けている粒子の位置に対する重力(Fg)の影響は、等式
1〜4の値を求めることによって計算される。ここで、(k)は(a)に等しいロータ位置の回転中に重力によって加えられるx−z平面上での下向き変位量を表している。[2π×(k/a)]<R(低質量粒子)の場合にこれらの条件下での粒子の運動を分析すると、その運動が周期的であるという結論に達する。すなわち、(平衡に達した後)粒子運動は360度、1回転した後にそれの始点へ戻る。第7図に示されているように、遠心力と流れに関連する力が逆向きであるが等しいことから固定化されているはずの粒子においては、その運動に対する重力の影響のため、象限I及びIIでの半径方向位置が減少し、象限III及びIVで半径方向に全く等しく長くなる。このため、粒子の回転軸線からの半径方向距離も、360度、1回転する間に周期運動する。数学的には、運動の周期数の測定には、測定を90度または180度で開始する場合は1回転必要なだけであるが、測定を0度または180度で開始する場合では2回転必要であり、それは、後者の場合には元のものとは異なった新しい平衡半径方向距離が生じるからである。
1回転サイクル中の粒子の有効運動が、第8図の挿入図に示されている。粒子が浮遊している容器の側部に番号1及び2(第8図の丸で囲んだ番号)を付けると、1回転サイクル中の粒子の運動は、粒子容器の「前縁部」側へ中心が変位した円を描く。このため、遠心場にこれと等しい液体流動場が対向しているような遠心場内に浮遊している粒子は、その移動中に半径方向の力の釣り合いを維持できるならば、周期運動に限定される(このため、効果的に固定化される)。
これらの理論的要件を考慮に入れながら、次に第2図にグラフ表示されているサンダーソン及びバードの仮説に戻る。補正したグラフが第9図に示されており、この場合の回転軸線は(y)軸である。これらの条件下において、サンダーソン及びバードの仮説を、ここで言い換えれば、粒子の長期固定化に応用することができる。ここでは、第9図の等式3が適用される。重力場の存在下においても内向きの液体流と正確に対向する遠心場において粒子が相対的に固定化される位置を表す数値が等式3から得られる、z軸からの半径方向距離(rz)である。さらに、粒子の大きさ、形状及び密度が均一で、液体流も均等であるという条件でストークスの法則(等式1)を簡略化すると、等式2が得られ、それから、粒子の沈降速度(SV)が適用される遠心場の簡単な一次関数であることがわかる。同様に、等式3を同じ条件で書き直すと、等式4が得られ、この式では液体速度(等式3のV)が液体流速(FV)に置き換えられている。等式4から、定数(C)の数値に対応させることができる液体流速及び適用遠心場の連続体があり、そのすべてが相対粒子固定化の要件を満足させることがわかる。さらに、液体流速を(z)の関数として変化させることができる場合、各半径方向距離においてこの等式を個別に適用することができるであろう。回転軸線から単一の半径方向距離における二次元粒子配列の固定化の場合と異なって、三次元粒子配列の相対固定化には、等式4の含意を考慮することが重要である。
粒子が入っている密封チャンバーが(第10図に図形表示されているような)円筒形であって、液体がこの室内へ回転軸線から最も離れた端部から流入する場合、この液体流の(第10図の等式1で定められる)流速は、粒子層が存在しないすべての点で単一の値を取ることは明らかである。その結果、二次元粒子配列が、等式2(但し、CFは遠心場の強さで、FVは液体流速である)に示されているように、特定の半径方向距離(A1)で位置的平衡状態になる場合、A1より大きいか、またはそれより小さい半径方向距離の位置を取るように強いられた粒子、例えば第10図のA2またはA3の粒子では、必然的に拘束力が不均一になり、その結果、粒子に正味の平行移動が生じる。このため、A1より長い半径方向距離であるA2の位置の粒子は、A1のものより大きい遠心力を受けるので、必然的に移動する半径方向距離が大きくなる(等式3)。反対に、A3の位置の粒子は、小さい遠心力を受けるので、移動する半径方向距離が小さくなる(等式4)。このように、第10図のような「平行壁」の密封チャンバー内に三次元粒子配列を形成することは不可能である。
しかし、密封チャンバーが第11図にグラフ表示されているように、回転半径の減少に伴って断面積が増加するような構造である場合、固定化粒子の三次元配列を形成することが数学的に可能である。これは、相対遠心場が回転半径に正比例して変化する(等式2)のに対して、液体流の顕微鏡的流速は断面積に反比例して変化する(等式1)結果である。二次元粒子配列が回転半径A1において固定化されるように流速及び回転速度の値を選択した場合(等式3)、最初に半径方向距離A2の位置にあった粒子に対して、力がほぼ一致するか、あるいは等式4に示されているように、チャンバーの中心へ戻す正味の運動を生じるような力の不一致が見られるように、密封チャンバーの側壁の「アスペクト比」を調節することが数学的に可能である。同様なことがA3の位置にある粒子にも適用される(等式5を参照されたい)。第11図に示されているような密封チャンバーの構造は円錐台であるが、回転半径の減少に伴ってチャンバーの断面積が増加するという制約に従う限り、他の形状を選択的に使用することもできることに注意されたい。このため、第12図に示されるように、選択された密封チャンバー構造によって、回転半径が減少する時の流速の低下を遠心場の強さの減少以上にすることができる場合、液体流場が相対する変動遠心場内に三次元粒子配列を形成することが可能となる。第12図において選択された構造、すなわち円錐台では、各回転半径(Rc)における二次元粒子配列の各々が、対向力が正確に一致する半径に向かう運動に限定されるであろう。
一見したところでは、上記説明から、固定化を生じる半径以外のすべての半径での力の不釣り合いの実効影響によって、すべての粒子が適当な半径を中心にした狭い領域内へ「詰め込まれる」ことになるように思われるが、実際にはそうではない。第13図に図形表示されているように、各粒子層が隣接層に接近するにつれて、各粒子層は「衝撃効果」が各層を離隔状態に維持する領域内へと移動する(第13図の水平方向の矢印)。隣接粒子層が食い違い状になることができないことを説明するのは、各層を通る顕微鏡的流速の概略的な分析の結果である。第14図において、円形断面の1つのチャンバー層内で特定の半径方向距離に限定された球形粒子の1つの代表的な層が示されている。第14図の断面の直径に対する粒子の直径の比は12:1である。チャンバー断面の空部分を通る液体の流速の大きさは、その地点におけるチャンバーの寸法から単純に数値を求めることができるが、粒子層が存在する領域を通る流速は、液体が通過しなければならない断面積が大幅に小さくなる結果、必然的に層が存在しない場合よりもはるかに大きくなるであろう。第14図のグラフからわかるように、上記寸法の層を通過する流速の増加は、各側の層に隣接した自由空間で測定された値の2倍より大きい。各層の領域の局部的流速の顕微鏡的増加が、各隣接層を分離状態に維持する「クッション」を効果的に生じている。
実際の使用に際して、円錐台のチャンバー構造の場合、円錐台の最も先端の領域が、遠心力と液体流速との正確な一致が得られる領域であることが好ましい。円錐断面の「アスペクト比」(上側直径に対する下側直径の比)は、第15図に示されている2つの等式を同時に解くことによって決定される。等式2で、粒子のその「最下」層での固定化の所望境界条件が示される。それは、重力による粒子の固有沈降速度(S.R.)にその半径方向距離で加えられる相対遠心場(RCF)を掛けたものが、その地点での液体流速(F.V.)の大きさに正確に一致することを示している。等式1で、粒子配列の反対側表面での所望境界条件が示される。密封チャンバー内のすべての粒子を確実に捕捉するため、S.R.及びRCFの積がその半径方向距離での流速の大きさの2倍になる境界条件が任意に選択されてきた。所望の境界条件の等式を同時に解くことによって、上側直径及び円錐長さが与えられた時の円錐断面の直径の比を求めることができる。
第16図は、そのサイズが大径=6.0cm、小径=3.67cm、深さ=3.0cmである本例の円錐断面の密封チャンバーにおける流れに関連する力と遠心力の相対強さの概要を示すグラフである。ここで、相対沈降速度を、最適温度の培養液内での重力による粒
子の固有沈降速度と適用遠心場の積として定義する。密封チャンバーの基端部が回転軸線から9.0cmである上記寸法のチャンバー内に所定の流速(本例では10mL/分)を与えた場合、所望の境界状態を満足させるように、重力による固有粒子沈降速度と角速度との積が、与えられた流速に対して一定になる(第15図を参照)。言い換えると、角速度は固定化しようとする個々の粒子の種類だけでその値が決まるので、ここで詳述する必要がない。点線は密封チャンバーの底部から上部までの遠心場の強さの直線的な変化を示しているのに対して、実線は流速の対応値を示している。チャンバーの底部(最先端部)では、力が一致しており、この位置の粒子は正味の力をまったく受けない。チャンバーの上部では、粒子は遠心力の大きさのわずか半分の流れ関連力を受けることになるので、流速が大幅に増大する縮小断面積の領域(チャンバーの液体出口ポート)が近接領域に存在していても、チャンバーから流出しようとしないであろう。
以上の説明から、回転半径の減少に伴って断面積が増加するという必要条件に従えば、いずれの半径方向距離においても適用遠心場と液体流速の力の境界及び中間関係を確立して、三次元粒子配列において所望の合力関係が確立されるように操作できる形状であれば、他の形状のチャンバー構造にしてもよい。しかし、実際には、回転平面と直交する平面上で作用するコリオリの力の異常効果のため、矩形断面の形状を使用することは望ましくない。矩形断面の場合、他の場合には重要でないこれらの力が中間層の粒子の運動に影響を与える可能性がある。
さらに以上の説明から、適用遠心力に影響されないで行動する個々の粒子質量に作用する重力の影響(第7図及び第8図を参照)は、先に説明したものよりもさらに重要性が低くなることが明らかである。特に、他の点では固定化された粒子に対する重力の基本的影響は、半径方向に長くするか、半径方向に短くすることであり、粒子のそのような運動によって、必然的に粒子が流速値の大きい(長半径)領域か、流速値の小さい(短半径)領域へ移動するため、遠心場の強さの変化がさらに大幅に小さくなる(第16図を参照)。その結果、固有質量に対する重力の影響による粒子の周期運動が大きく減衰されて、このような不釣り合いの対向力の場の存在が的確に消し去られ、生体触媒等の低質量粒子の場合、「原位置振動」になるであろう。
さらに、上記より明らかであるが、実用面において固定化粒子配列の上記方式での維持に関して、これらの粒子が好気性細胞、微生物、または生体触媒組織である場合は深刻な問題が生ずるだろう。このような組織体には、液体栄養素の他に、常温常圧では気体状態の特定の栄養を供給することが必要である。例えば、市販される生化学製品の製造を行う上で有用な細胞または微生物の大半は好気性であり、すなわち、これらは生きるために酸素を必要とする。これらの生きている生物(またはその細胞下成分)は、溶存された形態の酸素しか利用できないにもかかわらず、これまで溶存酸素を供給する唯一の方法は、効率よく溶解させるために細胞を懸濁する栄養液中で気体をバブリングしたりスパージングすることであった。さらに、大半の生きている生物(特定の嫌気性生物を含む)は、気体の代謝排泄物(例えば、二酸化炭素やメタン)を産生する。大量の気体が、上記の固定化された三次元粒子配列中で起こっている代謝プロセスに導入されたり、あるいは、この代謝プロセスから発生したら、これらを固定化している微妙な力のバランスが破壊される。
したがって、本発明の遠心固定化プロセスが適切に機能するためには、密封チャンバー内への気体の導入または、チャンバー内での気体の発生の可能性をなくす設備が必要である。これらの細胞が利用可能な(またはこれらの細胞により産生される)、他の場合には気体である化学物質の唯一の形態は、水溶液に溶解した形態であるため、本発明のプロセス中に必ず用いる必要があるのはこの形態である。この状態をヘンリーの法則、簡単に述べると、液体中に溶解される気体の量はその系の圧力の関数であるという法則を応用して実現しようとする場合もあるであろう。このように、液体を含む系(密封チャンバーおよ
びチャンバーに入るまたはこれから出るライン)の水圧を、導入する気体の必要量を完全に溶解し、および産生された全ての気体を溶解したままにするのに十分な水圧に維持すれば、固定化の力学に乱れが生じることはない。
図17は、このような気体を含まない、完全な液体系を周囲圧(常圧)より高い水圧にて維持できる一つの方法を示すブロックダイアグラムである。この系において、示されるポンプはすべて、正の排出(positive displacement)ポンプである。すなわち、液体はポンプを通って矢印の方向に動かされる。ポンプ3は、第一供給ポンプで、これが遠心ローター中に設置される細胞固定化チャンバー内へまたはチャンバーから外へ液体を移動させる。ポンプ3および細胞固定化チャンバーを含む回路中の水圧の上昇は、液圧レギュレーター、システム圧レギュレーターを、回路中の細胞固定化チャンバーの下流に設置することで実現される。このように、システム圧レギュレーターへの圧力限界を周囲圧よりも高く設定することにより、正の排出ポンプ、ポンプ3が十分な液を回路内に移動させシステムの水圧をこの設定値近くにするまでは、この回路には液体は流れないことになる。いったん平衡システム圧に到達すると、ポンプ3の下流の加圧された液が、ポンプ3に制御されて設定された速度で連続的に流れる。
適当な量の所望の栄養気体をポンプ3への導入液体に溶かすために、ポンプ3に通じる導入路に気体−液体吸収タンク(Gas-Liquid Adsorption Reservoir)を設置する。気体供給されていない液体は、培地タンク(Media Reservoir)から気体−液体吸収タンクにポンプ1を介して移動する。大量の所望の気体(例えば、空気または酸素)が、同時に、栄養液中に所望の濃度のこの気体を溶解させるに必要な気体圧に設定されたプレッシャーレギュレーターを経由してこのタンクに流入する。定常状態においては、ポンプ1は、ポンプ3の設定値と同じ流量で運転されることに注意されたい。ポンプ2は、ポンプ1および3よりも大きい流量で運転される再循環ポンプである。ポンプ2は、栄養液中に溶解された気体の所望の濃度が、吸収タンク中の大量の液体中で維持されるように、気体−液体吸収タンクの気相と液相間の接触を増大するために使用される。正の排出ポンプの性質のために、システム圧レギュレーターにより設定されるシステム圧の大きさを、気体−液体吸収タンクにおいて設定されている圧の値より高くすることが重要である。平衡状態の十分量の液を、所望の気体濃度で随時使用可能な状態におくために、ポンプ3の導入口にあるバルブを使用して、実際に使用するのに先立ってこのような平衡状態になるようにすることができる。同様に、切替えバルブを使用して、ポンプ3への液体導入を、 図17に示されるタンクからいずれかの所望の他の導入タンクに、このタンクの水圧がシステム圧レギュレーターの設定する水圧値よりも低いという制約を条件に、変更することができる。
図18は、代表的な、市販されている液体圧レギュレーターを示す。レギュレーター14に流れ込む液流は、シート11を押さえつけているバネ式ニードルバルブ10により妨げられる。導入液の水圧が十分高くなると、このニードルバルブがシートより離れ、液流がプレッシャーレギュレーター15から出ることができる。ニードルバルブバネ12で設定される一定圧は、調整バネ13による圧力を増大または低下させることで調節できる。
図17のブロックダイアグラムは、気体を伴わない加圧液を、遠心固定化チャンバーを通って流すために使用される多数のプロセスフロー配列の一例を示すものであることは明白である。特に、決められた量の気体を液体中に溶解させるため、気体と液体を適切に混合する多数の異なる方法を挙げることができる。本発明のプロセスの主要なものは、(1)遠心固定化チャンバーとこのチャンバーに出入りする周囲圧よりも高い水圧で運転される液体ラインからなる液体回路、(2)遠心固定化チャンバーに続く液体回路へ入る前に、液体に所望の量の気体を溶解する設備があること、および(3)システムの水圧を、システム圧レギュレーターの上流とポンプ3の下流において、導入気体および液体回路中
の溶液中の生物系により産生される呼吸ガスの双方を保持するのに十分な高い値に維持すること、である。我々の方法では、全ての考えられる細胞密度および細胞数の条件について、100から2,000psigの水圧で、気体を含まない液体環境の維持に十分であることが証明されている。
10,000psig未満の水圧においては、遠心密封チャンバー内の環境の水圧上昇を必要とする結果として、培養される動物細胞または微生物、もしくはこれらの細胞下成分に対して、認め得る有害な作用はないであろう。50psig未満の圧力範囲に限定されるが、バイオリアクターのヘッドスペース圧を使用する生細胞の培養は、うまくいくことが証明され、確立された培養方法である(Yang,J.and Wang,N.S.(1992)Biotechnol.Prog.8,244-251、およびその参考文献を参照)。15,000から30,000psigの水圧においては、非共有結合によるたんぱく質複合体の一部で季離が認められているが、単量体のたんぱく質を変性するには90,000psigより高い圧力が必要である(Yarmush, et al.(1992)Biotechnol.Prog.8,168-178)。生細胞(およびその構成成分)は、上記の限界値未満の水圧に影響されるず、実際にこれを感じることがないという事実は、十分に理解されてはいないがよく知られている。このことは、海洋微生物に対する水圧の影響を考えると、もっともよく理解できるであろう。海面下10m毎に約1気圧(14.7psig)の圧力がかかる。このように、例えば、生化学プロセスおよび代謝経路を示す底生生物は、浅瀬または陸生のこれに相当する生物と同じく、おそらく1インチ四方あたり3,000ポンドを超える水圧で、この状況に対して全く無頓着に環境上の適所に生息し、かつ活発に増殖する。同様に、陸生哺乳類細胞が生存する水圧は常圧よりも高く、例えば人間では常圧よりも約90から120mmHg高い。水系における水圧がその「力学上のキャリア(force carrier)」として水分子を有することを認識すれば、生体システム中の水圧が「目に見えない」という説明が理解され得る。生細胞の境界膜を形成する脂質二重層は、水分子に対して完全に透過性であるため、水系に加えられた水圧は、水分子の動きにより細胞または細胞下小器官の境界膜を越えて伝達され、外部から加えられた水圧に対して細胞内部が迅速に平衡状態となる。
例えば、水系の圧力場が高頻度で変化し、細胞境界膜を境にした圧力差により細胞の破壊が起こる可能性がある場合など、水圧が生細胞に好ましくない場合もある。しかし、このような致死的作用に必要な頻度は非常に高く、一秒間に数千というオーダーである。本発明のプロセスにおけるポンプの脈圧が、こういった限界より低ければ、非常に壊れやすい細胞についてさえも圧力変動によって細胞の生存性に影響はない。さらに、細胞の複製は、高い水圧で培養しても全く影響を受けない。
回転系へ、および回転系からの加圧液流の導入および回収の問題は、過去20年間にわたるシールの設計における革新により解決されている。デュラメタリック社(49001、ミシシッピー州、カラマゾ、ファクトリストリート2104)によるものなどのように、2000psigを越える生産物流の水圧を維持しながら、毎分5000回転を越える回転速度での運転が可能な高性能のメカニカル端面シールが入手可能である。このような高性能メカニカルシールの漏れ率は、一年あたり5リットル未満で、この漏れ率で生産物流中に不注意に漏れても、生体系には影響のない加圧冷却液体により冷却することができ、および生産物流中の絶対的無菌状態の維持を行えるような方法で運転できる。メカニカル端面シールを遠心バイオリアクター系に使用することに対する説明できない反感(米国特許4,939,087号および5,151,368号等を参照)の結果、従来の設計においてフレキシブルチューブ(およびその「よじれをなくす」ための複雑なメカニズム)の接続の必要性が認められている。このような設計は、結果として、(1)チューブのフレキシビリティ要件の結果として水圧を1気圧付近に制限し、(2)これらの曲がる接続の激しい動きの結果、回転速度が低くなり、バイオリアクターの稼働時間が短くなる。最新の高性能メカニカル端面シールが、遠心バイオリアクターの性能におけるこれらすべての
欠点を解決する。
内向きの液流に相対する外向きの遠心力からなる力場中における粒子の三次元配列の固定化について記載してきた。長時間において非常に小さい軽い粒子に対してさえも必ず作用する重力の影響は、適切な回転軸を選択することにより、実質的に無効となり、小さい定期的な「その場での振動」に減少することができる。この系に可能な気体の導入による破壊的作用は、そうでなければ気体である化学物質が流れる液中に溶解したままとなるような値まで液系の水圧を上昇させるということが原因とされている。水圧の必要な上昇は、細胞、微生物、またはその細胞下成分などの生物学的単位に対して何の影響もないことが強調されている。
以下の段落では、遠心発酵プロセスの設計を提示し、その設計の性能を分析する。 図19に本発明の装置の構成を示す。金属壁22に区切られた安全封止チャンバー内の水平のモーター駆動式回転軸21に円筒形のローターボディ20が取り付けられている。ローターボディは、回転軸21上の場所にロッキングカラー23により固定される。回転軸は、ベアリング24によりローターのいずれかの側面で支持される。回転軸は、安全封止チャンバー22の外側にある長さまで突き出ており、その末端は外部ハウジング25中に取り付けられたターミナルベアリングと末端キャップ29に入る。液流は、回転軸21の内部で液体流路と通じている液体導入口メカニカル端面シール28および液体排出口メカニカル端面シール27によって、ローター中に取り付けられたバイオリアクターチャンバー26内に導入され、ここから排出される。ローターボディの一例の具体的なサイズ(a=36cmおよびb=15cm)は、非常に合理的で当業者の知るローターサイズに匹敵するものである。
図20は、具体的なローターボディ20を回転軸と平行の方向から見たときの図である。円筒形ローターボディは、軸取り付けチャネル30がその中央を通り、回転軸上に取り付けられるように形成され、円筒形の取り外し可能なバイオリアクターチャンバー(図19の26)を設置できるチャンバー位置決め凹部32を有するように作成され、さらにバイオリアクターに通じる金属の液体路を設置できる径方向直線チャネル33を有する。実際の使用において、ローターを閉じるための円形のカバー(図示せず)を 図20に記載のローターの表面に設置する。
図21には、取り外し可能なバイオリアクターチャンバーのひとつを示す(図19の、26に示される)。チャンバーは円筒形で、2片の金属の厚い壁、円錐形切削凹部と先端が液体をバイオリアクターから排出する排出口の圧縮取り付け具41となっている切削された通路を有する上部40と、所望の幾何学的形状の生体触媒固定化チャンバー43を内部に切削した同じ金属でできた下部42から構成される。図21に示される固定化チャンバーの形状は、切頭円錐形で、その上面に短い円筒状容積、底面に短い円錐形の容積を有する。先端が導入口の圧縮取り付け具44である切削された通路により、固定化チャンバー内に流入液体が入る。チャンバーの二つの部分は、さら形アセンブリースクリュー45でボルト止めされ、一つまたは複数のOリング圧縮シール46により内部の正の水圧に対してシールされている。固定化細胞とチャンバー内部の金属壁が接触してはいけないようなある動物細胞培養の場合、このような接触を防ぐために、例えばポリエチレンなどでできた適当な円錐形挿入物を使用するのが適当である。または、固定化チャンバーの内部を同じ効果を与える適当なライニング材でコーティングしてもよい。
図22は、回転軸と平行な、ローターボディ(図19の20に示される)の横断面図である。この図に示されるように、バイオリアクターチャンバー26は、中心に位置する軸チャネル50と回転軸21内の偏心軸液導入路51に、排出液体輸送ライン53と導入液体輸送ライン54により接続されている。各液体輸送ラインは金属チューブで、これはロ
ーター軸中の切削通路およびバイオリアクターチャンバー上の圧縮取り付け具中にねじ込む圧縮取り付け具に接続される。ローターボディの正確な加工を、図22にさらに示されるような、点線で示された位置での断面図、つまり回転軸と垂直なローターボディの5つの異なる断面図(図23から27)で検討できる。
図23から27に、ローターボディ20の5つの異なる内部加工部位の、サイズおよび構成を示す。 図23と27は、ローターボディ20を回転軸、 図19の21、にロケーティングカラー(図19の23)と結合する軸取り付けチャネル30と同心のスプロケット型凹部60により取り付けるひとつの方法を示す。S−1は、軸取り付けチャネル30とスプロケット型凹部60の断面図である。図24は、液体導入ライン(図22の54)がその中を移動するローターボディ内部に切削された4つの径方向直線チャネル33を示す。 図25は、その中に円筒形バイオリアクターチャンバーが設置されるローターボディ中に切削されたチャンバー配置凹部32の形状、およびこれらの凹部と径方向直線チャネル33との関係を示す。径方向直線チャネル33は、チャンバー配置凹部32を越えてさらに放射状に伸び、これらがさらに「上向きに」伸びてバイオリアクターチャンバー(
図22参照)の導入口圧縮取り付け具(図21の44)と接続して、液体ラインを載せるための支持チャネルを提供することに注意されたい。導入液体ライン(金属チューブの長さ)が、各バイオリアクターチャンバー(図24、S−2部参照)の導入口圧縮取り付け具44の末端まで移動するのに適当な角度を形成する時、これが最も遠位の径方向直線チャネル33の壁によりかかることで支持されているということにより、この系の回転運動の結果としてこれらのラインに負荷される過剰な遠心力ストレスがない。
図26は、バイオリアクターチャンバーの図21の41の排出口圧縮取り付け具に対する、 図22の排出液体輸送ライン53のメカニカルアタッチメントに作業空間(working room)を作成するために必要な液体排出ラインアタッチメント凹部70のためのローターボディ20の内部切削を詳細に示す。図22に示されるように、排出液体輸送ライン53は、バイオリアクターチャンバーの排出口圧縮取り付け具へのメカニカル接続中にその長さが調節できるように、U字形の形状(この図中では誇張されている)に曲げられる。バイオリアクターチャンバー26は、遠心ストレスに対してチャンバー配置凹部32の遠位壁により支持される。遠心力の結果として、排出液体ラインには重量がかからない(それ自体の重量はのぞく)。
図28は、その上にローターボディ20を取り付ける回転軸21の部分の図で、回転軸のこの部分に、液流をバイオリアクターチャンバー26の中およびその外へと移動させる液体排出口メカニカル端面シール27と液体導入口メカニカル端面シール28とが取り付けられる。回転軸21は、2本の液体輸送軸チャネル、中央に位置する軸チャネル51、および偏心軸液体導入チャネル50を含む。中央に位置する軸チャネル51は、バイオリアクターチャンバーの排出液体を液体排出口メカニカル端面シール27に、放射方向に延びる短い結合通路82を通って輸送し、偏心軸液体導入チャネル50は、ここでもまた放射方向に延びる短い結合通路81を通して液体導入口メカニカル端面シール28からバイオリアクターチャンバーに液体を輸送する。中央に位置する軸チャネル51および偏心軸液体導入チャネル50は、軸の一端からローターボディが設置される領域まで延びている。圧縮プラグ80は、これらのチャネルの軸末端開口部を密閉する。
図29は、ローターボディを取り付ける回転軸21の部分の半径方向に配設された液体分配チャネルハブの図である。径方向排出液体ラインチャネル90と径方向導入液体ラインチャネル92の二対のチャネルが、軸の二箇所の断面を通って作成されている。これらのチャネルは、径方向排出液体ラインチャネル90の場合は中央に位置する軸チャネル51に直接通じている。径方向導入液体ラインチャネル92の場合は、偏心軸液体導入チャネル50と径方向導入液体ラインチャネル92の中心接続部とを繋ぐ、さらなる径方向
通路94が加工される。このさらなる径方向通路94は、回転軸21の表面において圧縮プラグ95により密閉される。実際の使用においては、特にローターシステムを高速運転する場合は、中央に位置する軸チャネル51と偏心軸液体導入チャネル50の両方の軸パッセージを、バランスをとるために回転軸に対して偏心的、および回転軸の直径に対して対称的に配置するのが好ましい。
図30は、図19に示される液体排出口メカニカル端面シール27などのようなメカニカル端面シール機構を示す図である。液体排出口メカニカル端面シール27を、回転軸21に取り付け、シールの内部液体部への開口部を回転軸21の中に切削される中心に位置する軸チャネル51に通じる短い半径方向の接続通路82の上に設置する。液体排出口メカニカル端面シール27の回転部と静止部の間のシールは、回転シール面102に静止シール面100が接触することで行われる。シール部材に作用する遠心力を考慮する必要がある、本発明のプロセスにおいて使用できる高性能端面シールの場合は、全てのバネ要素はシール機構の静止部分に設置する。 図30に示されるシール構成は、シール1個であるが、シール2個および/またはシール3個の端面シール形状の方が、長期間の使用においてはより好ましいかもれない。シール機構中の温度平衡を維持するために必要な加圧冷却液体通路と外装部材が図に示されていない。こういったシール機構を本発明の回転軸に取り付ける場合は、シール機構の静止部に圧縮取り付け結合具を経由して水溶液をポンプで供給し、供給した液体は点線103で示す経路を通って中心に位置する軸チャネル51に通じ、これがこの液体をローターボディ20に取り付けられたバイオリアクターチャンバー26から外へ出す(図28参照)。
その系の目的が動物細胞または微生物などの生物体を培養することである場合、回転系へのまたは回転系からの液体移動のためのメカニカルシールの使用についてのこれまでの主な欠点は、殺菌状態の維持の問題であった。過去において、低圧のメカニカルシールは、有害な微生物が端面シール表面を円滑にする内部の液体の薄いフィルムを通してバイオリアクターシステムに侵入する経路となるものであった。本発明のプロセスにおいては、内部の液体は常に周囲圧(常圧)よりも高い水圧に維持されており、液体が漏れる場合は必ず系の外側に対して漏れる。したがって、有害な汚染が系に侵入してくる可能性のある経路がない。さらに、本発明のプロセスのメカニカルシールを通ってバイオリアクター系から外への考えられる(例えば特定の応用における微生物を含有する可能性がある)内部の栄養液または生産物液の少量の漏れが、環境中に自由に分散していくことはない。高速、高圧のメカニカルシールの運転特性により、シール部材を加圧された冷却液流中に置くことが必要となる。実際には、こういったシールを冷却するのに適当な粘度とフロー特性を有する理想的な液体は、75〜85%グリセロールであることが判明している。本発明のプロセスにおいて、内部の液体が外部に漏れる場合は必ず、この再循環液の中に分散することになる。この濃度のグリセロール中では、多数の代表的な動物細胞または微生物の成長を持続させることはまったく不可能であることが分かっている。これは、おそらく一般的な現象で、浸透圧により水分が生細胞内からグリセロールへと移動するためであると考えられる。したがって、漏れた量で薄められた時点でグリセロールの冷却液を定期的に衛生的に廃棄して新しいグリセロールと交換することで、系中で液体が漏れる可能性のある唯一の場所における殺菌性を維持することができることになる。最後に、長期間の使用後、内部系圧力の減少またはシールシステムの初期の不良により、液流がシール面を越えて逆流する可能性があるために、このようにしてバイオリアクター系中に漏れる少量のグリセロールは、流れる内部プロセス液体中で薄められた場合には追加的な栄養素となるだけであることを指摘しておくことは重要なことである。
図19、20、22〜29中の文字で示されたサイズのローターボディおよび、 図21に示されるような取り外し可能な円筒形バイオリアクター固定化チャンバーを含むローターボディ(サイズは文字により表記)の性能を分析するためのデータを得るために、い
くつかのスケールサイズおよび境界平衡(boundary equation)を任意に選び、これを使用して本発明の典型的な実施態様の運転特性を測定する必要があった。固定化境界平衡は、
図15の方程式1および2中にリストされる。この実施例のために選択され、図19〜29において文字で示されているローターのサイズは、以下の通りである。
a: 15.0cm j: 10.0cm s: 2.54cm
b: 36.0cm k: 1.50cm t: 4.0cm
c: 1.27cm l: 6.0cm u: 6.14cm
d: 1.0cm m: 0.5cm v: 1.0cm
e: 1.73cm n: 1.0cm w: 1.0cm
f: 3.0cm o: 1.0cm x: 6.5cm
g: 7.0cm p: 5.0cm y: 5.0cm
h: 2.0cm q: 6.0cm z: 5.5cm
i: 2.0cm r: 4.0cm
この実施例において、実施例のバイオリアクターチャンバー26の内部固定化領域43の図形は、切頭円錐である。 図31に示されるように、境界条件拘束による、実施例のバイオリアクターチャンバーの内部固定化領域の「アスペクト比」の大きさの問題は、円錐部分の大きな半径および小さな半径と円錐部の高さの間の幾何学的関係を調べることで軽減できる。
図31Aに示されるように、バイオリアクターチャンバーの一例の円錐形固定化領域(回転面から見た場合)は、基部面が回転の中心からRxの距離にあり、切頭長さがRcである切頭三角形110で示される。遠心力(RFC)の作用で、固定化容量中で粒子111が長径へ並進移動し、一方液流力(FV)の作用で、短径へと並進移動する。 図31Bの方程式(1)は、回転速度から、径方向長さ(Rx)における相対的遠心力の大きさを求める式である。方程式(2)は、液体流量および円錐部の大きい直径から、径方向長さ(Rx)における液体流速の大きさを求める式である。方程式(3)は、回転速度から、径方向長さ(Rx+Rc)における相対的遠心力の大きさを求める式である。方程式(4)は、液体流量および示される三角形とその断面の与えられたサイズから、この後者の径方向長さにおける流速の大きさを求める式である。ローターボディの物理的サイズが与えられたとき、ある境界条件を満足する円錐部分の「アスペクト比」(直径の比率)を測定するために、われわれは、この円錐の長さからその部分が導かれる円錐の長さ(L)における、円錐部の狭端の半径を表すことを選んだ。
所望の境界条件は、(1)重力による固定化粒子の内因性の沈降速度(SR)と負荷される遠心場(RFC)との積が、チャンバーの最も遠位の部分における流れによる力(FV)の大きさと全く同じであること、および(2)この積は、チャンバーの最も近位部分において、液体流力の二倍の大きさであることである。したがって、
遠心半径=Rx+Rcにおいて
(SR)×(RCF)=FV
遠心半径=Rxにおいて
(SR)×(RFC)=2×FV
これらの方程式において、 図31の方程式(1〜4)から得たRCFとFVについてのサイズの仕様(dimensional specification)を代入すると、液体流量、系の回転速度および円錐形の固定化チャンバーのサイズに関する二つの同様の方程式が得られる。
Figure 2005124590
これらの方程式の解に到達するために、ローターシステムの一例の物理的サイズの限界に基づく以下の代入を行う。
x=90mm
c=30mm
q=30mm
同時に方程式は次のようになる。
Figure 2005124590
方程式(2)を方程式(1)に代入すると、次のようになる。
Figure 2005124590
この二次式の解は、L=77.4mm、および
Figure 2005124590
先に以下が求められているため(図31参照)、
Figure 2005124590
このように、境界条件を満足する切頭円錐の短い半径は、
1=18.4mm
である。
これで、同時に二つの方程式が以下のようになる。
(1) (SR)C1(120)=C2(2.67)
(2) (SR)C1(90)=C2(2)
(1)から(2)を引いて、項を集めると次に到達する。
(3) (SR)(30)C1=(0.67)C2
(3)にC1およびC2の値を代入すると、次のようになる。
Figure 2005124590
これで、制御可能な変数、RPMおよびFRから所望の境界条件と物理サイズ拘束を満足する式を得た。
Figure 2005124590
このように、ローターシステムおよびバイオリアクター固定化チャンバーの物理的サイズが決まれば、バイオリアクター中で粒子を固定化するローター角速度(RPM)および系の液流量(FR)の範囲は、重力による粒子物体の固有の沈降速度(SR)にのみ依存する単純な関係に従う。上記の条件下では、固定化の最大容量はバイオリアクターチャンバーひとつあたり、約56mLであることに注意されたい。
生体触媒を含有するこの方法と装置は、遠心場の向きが重力場の作用する平面と平行な平面内の方向に向いており、遠心場が、周囲の大気圧よりも高い水圧で連続して流れる液と直径方向に対向するような遠心力場内にあるバイオリアクターチャンバー内に生体触媒を含有する工程を含む。
本発明において多くのこの他のバイオリアクターチャンバーの形状が考えられた。このようなこの他の実施態様のひとつは、その主軸が負荷される遠心場と平行に配置され、その大きい直径がその頂点よりも回転軸により近い直円錐形状の内部空間を有するバイオリアクターチャンバーである。
さらに別の実施態様は、その主軸が負荷される遠心場と平行ではなく負荷される遠心場との間の角度が0〜90度の間にある直円錐の形状の内部空間を有するバイオリアクターチャンバーである。さらに、その主軸が負荷される遠心バイオリアクターと平行に配置され、その大きい直径が小さい直径よりも軸により近い直円錐台の形状の内部空間を有するようなバイオリアクターチャンバー内部空間も本発明に含まれる。
さらに、本発明には、その主軸が負荷される遠心場と平行ではなく負荷される遠心場との間の角度が0〜90度の間にある直円錐台の形状の内部空間を有するバイオリアクターチャンバーが含まれる。
本発明には、負荷される遠心場が、球状のバイオリアクターチャンバーの円形の断面と垂直である球の形状の内部空間を有するバイオリアクターチャンバー、および負荷される遠心場が球状のバイオリアクターチャンバーの円形の断面と垂直ではなく、円形の断面との間の角度が0〜90度の間にあるチャンバーを含む。
さらに、本発明には、負荷される遠心場が球の円形の断面と垂直である切形球(turncated sphere)の形状の内部空間を有するバイオリアクターチャンバー、および負荷される遠心場が円形の断面と垂直ではなく、円形の断面との間の角度が0〜90度の間にあるチャンバーを含む。
本発明は、様々な円形断面を有し、負荷される遠心場が円形の断面に垂直であるような形状の内部空間を有するバイオリアクターチャンバーおよび負荷される遠心場が円形の断面と垂直ではなく、円形の断面との間の角度が0〜90度の間にあるチャンバーを含む。
さらに本発明は、様々な楕円形断面を有し、負荷される遠心場が楕円形の断面に垂直であるような形状の内部空間を有するバイオリアクターチャンバーおよび負荷される遠心場が楕円形の断面と垂直ではなく、楕円形の断面との間の角度が0〜90度の間にあるチャンバーを含む。
また本発明は、負荷される遠心場と軸に沿って垂直な円形と楕円形の組み合わせの断面の形状の内部空間を有するバイオリアクターチャンバー、および負荷される遠心場に対して円形および/または楕円形の断面が垂直ではなく、その間の角度が0〜90度の間にあるような軸に沿って円形と楕円形の組み合わせの断面の形状の内部空間を有するチャンバーを含む。
本発明のプロセスは、微生物、真核細胞、これらの細胞下小器官、およびこういった生体触媒の天然または人工の凝集体などの生体触媒の固定化を目的とする。したがって、このプロセスのシステムは、かなり軽い粒子を固定化できなければならない。このような粒子の、重力による沈降速度は、小さなバクテリアでのおよそ0.01mm/分から、小さな動物細胞での0.1mm/分まで、また、壁の厚い微生物(酵母など)やビーズ固定化細胞などの生体触媒凝集体での10.0mm/分以上までの範囲であることが分かっている。われわれは、上記の概略した寸法の構成を使用して、本発明の遠心バイオリアクターシステムの性能特性を分析して、以下にその結果を示す。
図32は、図19〜27に概略を記載したローターおよびバイオリアクターサイズについて、2つの小さい沈降速度範囲の典型的な生物学的に重要な粒子を用いた場合の、先に記載した境界条件を満足するローター速度と液流量の値の概要を示すものである。上の線は、固有の沈降速度が0.001mm/分である(この沈降速度の値は、全ての調査対象微生物について測定したものよりも係数10だけ小さい値である)粒子を固定化する際の連続的な液流量およびローター速度を示すものである。10mL/分の流量のときでさえも、固定化を維持できるローター速度は物理的に合理的な値であり、必要な最大遠心力がおよそ9400Xgと、平均的な品質の遠心分離システムの物理的限界内の値であることに注意されたい。下の線は、沈降速度0.01mm/分(この沈降速度の値は、典型的な代表的バクテリアが示す値に近い値である)の粒子に対応するプロフィールを示すものである。ここでも、この線は固定化条件を満足させる連続値を表す。このように例えば、「バクテリアA」の三次元配列となった特定サイズの粒子に適切な栄養を与えるのに必要な流量が2.0mL/分の場合、1200rpm程度のローター速度で十分であるが、必要な流量が8.0mL/分の場合は2500rpmに近いローター速度が要求される。SR=0.01mm/分より重い粒子は、流量が10.0mL/分のときには、1000Xg
程度のわずかな最大遠心力しか必要としないことに注意されたい。
図33は、図19〜27に概略を示したローターおよびバイオリアクターサイズについて、3つの比較的大きい沈降速度範囲を有する典型的な生物学的に重要な粒子を用いた場合の、先に記載した境界条件を満足するローター速度と液流量の値の概要を示すものである。上の線は、大型の微生物または小型の動物細胞(例えば、哺乳類の赤血球)に匹敵する固有の沈降速度0.1mm/分の粒子を固定化する際の連続的な液流量およびローター速度を示すものである。真ん中の線は、より典型的な動物細胞(直径約30マイクロメーター)の固定化に対応する値を示し、下の線は、真核酵母などのより大きな密度の高い細胞の固定化を行う際の連続の値を示すものである。図32に示される傾向と同様に、 図33のデータから、この流量範囲で必要とされる最大ローター速度および最大遠心力は、重力による固有の粒子沈降速度が増大するにつれて小さくなることが明らかである。このように、10.0mL/分の流量においては、平均的な大きさの動物細胞の三次元的配列が固定化されるには、約10Xgの相対遠心力しか必要としない。
図34は、図19〜27に概略を示したローターおよびバイオリアクターサイズについて、3つの最も大きい沈降速度範囲で100mL/分という流量を採った場合における、先に記載した境界条件を満足するローター速度と液流量の値の概要を示すものである。このように固定化された粒子のベッド(ベッド容量は例えば56mL)に栄養を与えるのに必要な流量が10倍になったとしても、必要な最大遠心力およびローター速度は、技術的には特記すべきものではない。動物細胞(SR=1.0mm/分)の場合、100mL/分という流量は6.0L/時間に相当し、この流量は考えられるあらゆる条件において、このような細胞三次元的配列に適切に栄養を供給するのに必要とされる流量よりも明らかに大きい。
液流中で例えば細菌の集団を固定化した結果として、液体が通過するのは細胞の表面であるために細胞の破壊を引き起こすことはない(多くの微生物がその細胞質膜を液体の剪断力から保護するための細胞外鞘を有するため)ことが明らかではあるが、(このような細胞外保護手段を持たない)デリケートな動物細胞がこれらの条件下で生き残れるかどうかはあまりよく分かっていない。しかし、図33に示されるように、10mL/分の液流において、平均的な大きさの動物細胞の固定化を維持するのに必要な最大RCFは、約10Xgである。この液流を、予想されるいかなる栄養要求(100mL/分)よりも明らかに高いレベルに増大した場合でも、必要とされる最大RCFは約100Xgでしかない(図34)。流れる液中におけるこのような細胞の固定化は、静止状態の液体において細胞を移動させるのと数学的に同等であることに留意する必要がある。したがって、従来の実験室における100Xgを越えるRCFでの液体中での動物細胞の沈降が、特異な現象ではないことから、本発明のプロセスにおいてこういった細胞に作用する剪断力は、その細胞膜の破壊を引き起こさないことになる。この仮定は、これにより本明細書中に記載され本発明のプロセスのための値よりもずっと大きい流量およびRCFに露出された後に生きた動物細胞が良好に回収されるという、関連装置であるベックマンJE5.0遠心分離システムの運転特性により裏付けられる。
本発明により、生物学的に重要な粒子の三次元的配列を固定し、完全な液体流によって固定化粒子に適切な栄養を供給することが可能である。特に、上記の小規模の模範的な遠心プロセスでは、必要な遠心力および液流量は通常の範囲内のもので、例えば特別に高い回転速度や流量を必要とするなどの新たな問題もない。さらに、このような粒子の三次元的配列の固定化を維持するための、流量と角速度の対での値の範囲が広いことが証明されている。
このような粒子配列の固定化に使用することができる流量およびこれに対応する回転速
度の範囲が広いことは、大変重要である。従来の培養方法を使用した場合、大規模の培養において生じる主な問題は、高密度の大量の代謝活性生物単位に適切な栄養を供給できないことであったといえる。従来の哺乳動物細胞培養においては、この理由のために長期間にわたって、例えば、1×106細胞/mLを越える細胞密度を維持することはほぼ不可能であった。同様に、1×107細胞/mLよりも高い細菌細胞密度は、同じ理由で従来方法の大量培養においては得ることが難しかった。本発明のプロセスの方法を使用すると、細胞密度および有効ベッド容積が増大するにつれて(細胞の増殖またはバイオリアクターへの添加により)、より大きなまたは密度の高い培養のために増大した栄養要求に、導入液流を増大し同時に負荷する遠心場を増大することで対応できる。本発明のプロセスを使用すれば、従来の10の二乗倍の濃度の哺乳類細胞を維持することができ、またほぼ1×1010細胞/mLの細菌細胞密度も同様に実現可能である。
同様に、好気性生物の高密度培養に対しては、培養物への至適な溶存酸素の適切な供給という従来の問題が、本発明のプロセスで簡単に解決される。典型的な培養培地中に100mMを越える分子酸素を溶解することが可能なことから(1500psigの水圧を使用して)、考えられる高密度の培養における、至適溶存酸素の供給の問題は、システムの水圧を、所望の酸素濃度の溶解を維持できる値に調節することで簡単に解決できる。溶存酸素を至適レベルに維持できることは、製造効率を大きく向上させることになる。多くの研究者が気づいているように、生体内で観察されるのに近い細胞の生産効率を得ることができないことが、従来の動物培養技術における大きな欠点である(The Scientist,8 #22,pg.16 November 14,1994)。さらに、高密度の培養物において正常に近い好気性効率を得ることができることは、他にあまり明らかではない利点を有する。すなわち、熱の発生である。液体細胞環境を至適温度にするための高価なエネルギーを必要とする代わりに、本発明のプロセスのポンプで送られる液体を、過剰な代謝熱を取り去るために、低温の細胞環境に送る必要があるであろう。
本発明のプロセスの他の重要な長所は、生体触媒の三次元的配列を固定化する液体環境の化学成分が相対的に変化しないことである。配列には連続的に新しい至適な液体栄養導入が提供され、およびこれらの配列からは連続したプロセスフローにより連続的な排液が行われているため、細胞環境の化学成分は時間が経過しても完全に不変である。これらの配列の放射方向の長さに対して栄養素、生成物、および代謝物のわずかな化学的な濃度勾配が生じるであろうが、この長さは配列の最も短い長さであるため、これらの濃度勾配は非常に軽度で培地成分を調整することにより簡単に補正できる。例えば、配列の深さについてのpH変化は、少量の緩衝により補正でき、配列の深さについての導入栄養素の濃度勾配も同様に補正できる。しかし、最も重要なのは、代謝排出産物が、液体プロセスフローによって連続して細胞環境から取り除かれることである。細胞環境から、代謝排出物の除去が不可能なことおよび連続的に所望の生成物を除去が不可能なことが、細胞あたりの生産性を低下させる大きな要因であることから、本発明のプロセスを使用することで一般的な細胞生産性が大きく向上するであろう。
本発明のプロセスにおける生体触媒の固定化集団への至適な導入液体栄養培地は、従来の栄養培地とはまったく異なる。特に本プロセスの至適培地成分は、固定化バイオリアクターを一回通過すると完全に消費される。典型的な栄養培地には、30またはそれ以上の栄養化学物質、その全てが生体触媒の即時的な栄養要求よりもずっと大量である、の混合物を含有する、というのも、この培地は場合によっては100時間もの長時間の間代謝プロセスを維持する必要があるからである。同様に、従来の培地には、pH緩衝物質および標識物質およびホルモン刺激剤(胎児血清および/またはサイトカニンなど)を生体触媒の即時的な要求量よりもずっと大量に含む。本発明のプロセスにおいては、導入液体培地は、固定化された生体触媒の即時的な代謝に直接必要な濃度の栄養素と刺激剤を含むように調節できる。理想的には、バイオリアクターから出る排出液には、栄養素が全くなく、
塩類、代謝廃棄物、および生成物分子のみが含まれている。固定化細胞集団を細胞増殖を促進または阻害するような栄養状態に維持するために、導入培地を調整できる可能性がこのように実現される。細胞の分割に至適な栄養混合が、細胞周期の中で静止状態の細胞による生化学物質の産生に至適である可能性は非常に低い。
液体培地は、当業者にとって既知の調合であっても、用いる生体触媒に必要な特別の個々の成分を含んでもよい。培地の種類には、栄養培地、平衡塩溶液、または1種類もしくは複数種類の有機溶媒を含有する培地があるが、これに限定されるものではない。培地は、嫌気および好気条件下での生体触媒の成長のための溶存気体を含んでいてもよい。培地は、培地中に観察される生体触媒生成物または、移動可能な生体触媒がより簡単に単離できるように調合されてもよい。
他のあまり明らかでない本プロセスの方法の使用の含意は、規模の効果である。先に記載した模範的な例において、4つのバイオリアクターローターの全容量は、約224mLである。しかしながら、ローターの半径を大きくすると、システムの容積は半径の三乗で増大することに注意されたい。このことは、図35にグラフで示しており、このグラフの最下点が模範的な例に相当する(総容積=225mL)。半径1.5mのローターの容積は、約120リットルである。さらに、培養物の平均密度は従来方法の約100倍で、相当する培養容積はこれに比例して大きくなる。このように、半径1.5mのローターを使用した遠心発酵ユニットは、現在の技術を使用した場合のおよそ12,000リットルの発酵に相当する。最後に、本発明のプロセスには、規模に関して更なる長所がある。相対的遠心力は、半径長に直接比例するが、角速度の二乗にも直接比例するため、ある遠心場強度に必要な回転速度は、回転半径が増大すると小さくなる。このことは、 図36にグラフで示される。RCF=100Xgを維持するのに必要な回転速度は、半径18cmのローターでは約810rpmであるが、この必要回転速度は、回転半径が1.5mに増大すると300rpm未満にまで低下し、回転速度の50%を越える減少となる。
本発明のプロセスのスケールアップが工業生産設備に有利であることは明らかであるが、特定の細胞型の小さな均一集団の「代謝生理学」を分析研究するにあたり、この遠心発酵プロセスの小規模実施態様が有用であることにも留意されたい。われわれの知る範囲では、例えば細菌集団の最大増殖を得る正確な栄養条件は分かっておらず、これは固定化テスト集団に供給する導入栄養液の成分を変動させ、同時に成長を示すなんらかのアウトプットパラメーターを測定することにより、迅速かつ簡単に測定できるであろう。同様に、正確にどんな栄養混合が、生物学的生成物の細胞生産について、至適であるのか(最大限の増殖が得られる栄養混合と同じである可能性が非常に低いと考えられる栄養混合)を把握することが望まれるが、そのようなパラメーターはここでもまだ分かっていない。本発明のプロセスの小規模な実施は、これまで実施が不可能であったような方法で、「分析微生物学」または「分析細胞生物学」を発展させるために、有効に利用することができると考えられる。
本発明の方法の最も即時的で明らかな使用途は、おそらく、流出する液流中に分泌または放出される生物学的生成物の連続生産である。このように、例えばこのプロセスを、その固定化「ベッド容積」を定常状態に維持するために、栄養供給により成長速度(および死滅速度)を操作された固定化微生物集団から放出される生成物を連続的に回収するために使用することができる。こういったプロセスは、理論的には、永久に使用できることになる。同様に、分泌性動物細胞集団の固定化により、所望の生成物を大量に含む液体の連続流出が得られる。
非分泌性の生成物の場合(遺伝子操作を施された大腸菌内での細胞質ソルの蛋白質蓄積など)には、本発明のプロセスが非常に有用である。上記のバイオリアクターシステム内
で維持される固定化細胞集団を、過剰栄養供給条件下におくと、集団は迅速に成長してベッド容量が増大し、ここから連続的に過剰の細胞が流出する液体流中に「漏れ」出る。このように、本発明のプロセスは、「生産牛(production cow)」すなわち、所望の生成物を多量に含む成熟細胞の産生、流出のための連続インキュベーター、として運用できる。次いで、所望の生成物を得る為に、流出する細胞流の下流での単離および破壊を、従来の生成物精製方法を使用しておこなう。
本発明のプロセスは、複数の別個の動物細胞集団または微生物集団によるいくつかの中間段階を経る生物−有機物質の連続的、段階的内部変換の可能性を提供するものである。生体触媒集団を完全に固定化する一方、固定化集団内および外へ連続的に液体流を流すという本発明のプロセスの能力の結果、ある集団と別の集団との相互汚染を確実に排除した上で、別個の異種の固定化集団をひとつの流れるプロセス中に順に結合できるようになった。これを実施するには、本明細書に記載されるいくつかの装置を順に結合し、材料流がある装置から別の装置へと、さらにそれに続く装置へと流れるようにする。
図37に示されるように、第一培地タンク中で溶解された栄養として供給される生化学基質が、第一遠心ローター内に固定化された生体触媒集団を通過することにより、中間「生成物A」に変換され、さらに、第二遠心ローター内に固定化された生体触媒集団を通過することにより、「生成物B」に変換されるように、プロセスは流れる。さらに、どちらの遠心固定化チャンバーも、もう一方と同じ速度および角速度で動くように制約されていないので、二つの固定化集団で液体栄養供給ストックの成分を変えることもできる。従って、図37に示されるように、第二遠心ローターへ流入する液流は、第二培地タンクより必要な栄養を供給する追加のポンプを使用して変更することができ、第二遠心ローターを通過する単位時間あたりの総流量は単純に第一遠心ローターを通過する量より多い。
このタイプのこのような段階的変換プロセスの商業的に有用な例は、酢酸の生物学的生産である。溶存酸素と追加的な栄養を第二培地タンク経由で供給させた場合(例えば、図17に示した酸素化スキームを使用して)、第一遠心ローター中におけるサッカロマイセス セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)などの酵母菌の固定化集団によるグルコースからエタノールへの嫌気性の生物変換に続いて、第二遠心ローター中に存在する細菌アセトバクター アセティー(Acetobacter acetii)の固定化集団によるエタノールから酢酸への好気性の変換が行われる。
同様の方法で、特定の遠心バイオリアクターユニットを通過する単位時間あたりの総流量を減少しなければならないようなプロセスフロー機構では、一連の理想的遠心バイオリアクターユニットをプロセス流フローに並列に接続し、これによって各ユニットを通過する部分フローにまで個々の単位時間あたりの流量を減少できる。このようにして、本発明の装置を並列配置に接続する。
本発明で使用される微生物には、遠心分離またはろ過で回収される乾燥細胞または湿細胞が含まれるが、これに限定されるものではない。これらの微生物は、以下のグループに分類される、細菌、放線菌、真菌、酵母および藻類である。第一グループの細菌、Class Shizomycetesに分類上属するものは、シュードモナス(Pseudomonas)属、アセトバクター(Acetobacter)属、グルコノバクター(Gluconobacter)属、バチルス(Bacillus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、レウコノストック(Leuconostoc)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、クロストリジウム(Clostridium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、アーソロバクター(Arthrobacter)属またはエルウィニア(Erwinia)属などがある(R.E.Buchran and N.E.Gibbons,Bergey's Manual of Determinative Bacteriology,8th ed.,(1974),Williams and Wilkins Co.を参照のこと)。第二のグループの放線菌、ClassShizomycetesに分
類上属するものは、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、ノカルディア(Nocardia)属またはマイコバクテリウム(Mycobacterium)属などがある(R.E.Buchran and N.E.Gibbons,Bergey's Manual of Determinative Bacteriology,8th ed.,(1974),Williams and Wilkins Co.を参照のこと)。第三のグループの真菌、Class Phycomycetes、Ascomycetes、Fungi imperfectiおよび Bacidiomycetesに分類上属するものは、ムコール(Mucor)属、リソプス(Rhisopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、モナスクス(Monascus)属またはネウロスポリウム(Neurosporium)属などである(J.A.von Ark,"The Genera of Fungi Sporulating in Pure Culture"in Illustrated Genera of Imperfect Fungi,k 3rd ed.,V.von J.Cramer,H.L.Barnett,and B.B.Hunter,eds.(1970),BurgessCo.)。第四のグループの酵母、Class Ascomycetesに分類上属するものは、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ピチア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、キャンディダ(Candida)属、トルトプシス(Torulopsis)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、クロエシェラ(Kloechera)属などである(J.Lodder,The Yeast: A Taxonomic Study,2nd ed.,(1970),North-Hollandを参照のこと)。第五のグループの藻類は、クロレラ(Chlorella)属およびセデスムス(Scedesmus)属に属するラン藻およびスピルリナ(Spirulina)属に属するラン藻がふくまれる(H.Tamiya,Studies on Microalgae and Photosynthetic
Bacteria,(1963)Univ.Tokyo Pressを参照のこと)。前記の微生物のリストは、本発明による発酵プロセスで使用できる微生物の代表的な種類という意味で記載されたものである。
本発明の培養プロセスは、単層または懸濁培養中のいずれかで成長できる植物および動物細胞にも適用できる。細胞の種類には、一次および二次細胞培養、二倍体および一倍体細胞株が含まれるが、これに限定されるものではない。ウイルス増殖および回収に使用される他の細胞も適当である。ハイブリドーマ、新生細胞、および形質転換および未形質転換細胞株のような細胞も適当である。胎児、成人、またはガン組織からの一次培養および確立された細胞株の細胞も使用できる。このような細胞の代表的な例には、一次アカゲサル腎臓細胞(MK−2)、幼ハムスター腎臓細胞(BHK21)、ブタ腎臓細胞(IBRS2)、胎児ウサギ腎臓細胞、マウス胎児線維芽細胞、マウス腎腺ガン細胞(RAG)、マウス髄質ガン細胞(MPC−11)、マウス−マウスハイブリドーマ細胞(I−152F9)、ヒト二倍体線維芽細胞(FS−4またはAG1523)、ヒト肝臓腺ガン細胞(SK−HEP−1)、正常ヒトリンパ球性細胞、正常ヒト肺胎児線維芽細胞(HEL299)、WI38またはWI26ヒト胎児肺線維芽細胞、HEP No.2ヒト類表皮ガン細胞、ヒーラ子宮頚管ガン細胞、一次および二次ニワトリ線維芽細胞および、例えば、SV−40またはポリオーマウイルスで形質転換された様々な種類の細胞(WI38VA13、WI26VA4、TCMK−1、SV3T3など)があるが、これに限定されるものではない。本発明の方法に使用できる他の適切な確立された細胞株は、当業者には明白なものである。
本発明を実施することによって得られる生成物は、細胞、すなわち真核細胞または原核細胞か、ミトコンドリア、核、リソゾーム、小胞体、ゴルジ体、ペルオキシソーム、または細胞質膜などの細胞下小器官または成分またはこれらの組み合わせか、または酵素複合体で天然の複合体または人工の複合体のいずれか、すなわち、所望の生成物を得るために複数の酵素が一緒に複合したもの、のいずれかを培養することによる全ての代謝産物である。
本発明の長所のひとつは、その細胞(およびその化学物質)を商業的な規模で生産できるよう、その化学物質の遺伝子を単離し、その遺伝子を適当な細胞に挿入する手間のかかるプロセスを行う必要なく、所望の化学物質を生産できることである。本発明を実施することにより、所望の化学物質を大量に製造する本発明によって、所望の化学物質を製造す
ることが知られている哺乳類細胞を、直接、高密度で培養できる。
本発明により製造できる生成物には、インターフェロン、インターロイキンなどの免疫調節物質、エリスロポイエチンなどの成長因子、モノクローナル抗体、微生物の産生する抗生物質、第VIII因子などの凝固たんぱく、組織プラスミノーゲンアクチベータおよびプラスミノーゲンアクチベータインヒビターなどの線維素溶解たんぱく質、血管由来たんぱく質、および成長ホルモン、プロラクチン、グルカゴン、インシュリンなどのホルモンが含まれるが、これに限定されるものではない。
「培養培地」という用語には、微生物、植物または動物細胞の至適成長のためのすべての培地、または酵素基質、補因子、緩衝剤、およびその他、酵素反応または選択される酵素系の至適な反応に必要な要素が含まれるが、これに限定されず、酵素反応のための全ての培地を含む。細胞の成長に適切な培養培地は、同化できる窒素、炭素、および無機塩類源を含み、およびさらに緩衝剤、標識物質または抗生物質を含んでいてもよい。
本発明において、微生物、細胞または生体触媒の培養に至適であることが知られている全ての培養培地が使用できる。このような培地は、一般に、生きている生物を培養するという性質のために、水性であるが、ジメチルホルムアミド、メタノール、ジエチルエーテルなどの有機溶媒または、水と有機溶媒のミセル混合物も、固定化生体触媒を使用する生物変換など有効性が証明されているプロセスに使用することもできる。プロセスシステム中の液体培地の通過は、1回通過、または基質をより有効に生成物に変換するために液流を再循環させることもできる。所望の栄養および刺激化学物質を、低圧栄養供給または細胞チャンバーの上流のプロセスフロー中への注入することにより、プロセスフローに導入する。
本発明が、これらに限定されないが、塩基性イーグルの培地(BME)、イーグルの最小必須培地(MEM)、ダルベッコの改良イーグルの培地(DMEM)、ベントレックス培地、ロズウェルパーク培地(RPMI 1640)、199培地、HamのF−10、Iscoveの改良ダルベッコ培地、リン酸緩衝塩培地(PBS)および様々な栄養素で補強されたイーグルのまたはハンクの平衡化塩溶液(BBS)などの、広く知られている全ての組織培養培地に適用できることは理解されるであろう。これらは、市販の組織培養培地で、H.J.Morton(1970)In Vitro 6,89-108に詳細に記載されている。これらの従来の培養培地は、既知の必須アミノ酸、ミネラル塩、ビタミン類、および炭水化物を含んでいる。これらは、また、しばしば、インシュリンおよび子ウシ血清を含むがこれに限定されない哺乳類の血清、静細菌および静真菌抗生物質などで補強されている。
遠心細胞チャンバー内における細胞の成長または細胞の呼吸は、直接には見ることができないが、このような代謝は基質の消費、溶存酸素濃度、二酸化炭素産生などの化学的測定により簡単にモニターできる。このように、例えば、Saccharomyces cerevisiae属の発酵の場合、固定化チャンバーに少量の細胞のスターター用集団を摂取し、次いで好気性発酵処理を行い、この間、細胞密封チャンバー中のグルコース消費、溶存酸素消費、および二酸化炭素産生を化学的または適当な測定電極の使用のいずれかで測定する。このように、至適な細胞ベッドサイズに到達するまで細胞複製を進行させる。この時点で溶存酸素導入を停止することにより、固定化酵母細胞がグルコースの嫌気性発酵に移行し、その結果エタノールが産生されるが、このプロセスは同様に化学的にモニターできる。
同様に、プロセスに変更を加えないで、本発明のプロセスは固定化化学触媒、酵素、または酵素系のバイオリアクターとして使用することができる。このようなプロセスにおいては、触媒、酵素または酵素系は、珪藻土、シリカ、アルミナ、セラミックビーズ、活性炭、またはポリマービーズまたはガラスビーズを含むがこれに限定されない、次いでバイ
オリアクターチャンバーに投入される固体の支持体に化学的に固定される。水性、有機溶媒、または水性と有機溶媒の混合物のいずれかである反応培地は、バイオリアクター中のプロセスシステムおよび、固形支持体の三次元配列中を流れる。触媒酵素、または酵素系は、プロセスフロー培地中の反応物を、所望の生成物または複数の生成物に変換する。同様に、他の応用においては、細胞または、ベクター、プラスミド、または核酸配列(RNAまたはDNA)などを含むがこれに限定されない細胞成分を、固形支持体マトリックスに固定化し、投入される反応物を所望の生成物に変換するうえで同様の用途のために閉じ込めることもできる。
本発明の商業的な応用は、抗ガン因子、ホルモン類、治療用酵素、ウイルス抗原、抗生物質、およびインターフェロンなどを含むがこれに限定されない医薬関連の細胞由来分子の産生において行える。本発明の方法を使用することにより、うまく作成することのできる可能性のある生成物分子の例は、脳下垂体細胞の産生するウシ成長ホルモン、プロラクチン、およびヒト成長ホルモン、腎臓細胞の産生するプラスミノーゲンアクチベータ、培養肝臓細胞の産生するA型肝炎抗原、ハイブリドーマ細胞の産生するウイルス、ワクチン、および抗体、インシュリン、血管形成因子、フィブロネクチン、HCG、リンホカイン、IgGなどを含むがこれに限定されない。他の生成物は、当業者には明かであろう。
本発明の上記説明は、開示された正確な形態に本発明を限定するためのものではない。多くの改良や変更が可能である。記載された特定の実施態様は、本発明の原則を説明する目的で用いられており、したがって実際の応用により、関連技術の当業者は、特定の使用に適当と考えられるような本発明を様々な実施態様、および様々な変更をもって利用できる。添付の特許請求の範囲中において、そのような全ての改良、変更、変化が本発明のプロセスの範囲内にあることを意図したものである。
図1は、向流式遠心法の主な特徴を示す図である。 図2は、向流式遠心法における運転力の分析を示す図である。 図3は、向流式遠心法の主な問題点を示す図である。 図4は、向流式遠心法の従来処理における数学上の欠点を示す図である。 図5は、長時間にわたって従来の向流式遠心法を使用した際の固定化粒子への影響を示す図である。 図6は、本発明のプロセスに使用される改良された向流式遠心法を示す図である。 図7は、液体の流れと全く逆向きの遠心場に拘束されている時の粒子に作用する重力による粒子の動きを算定する数学的計算を示す図である。 図8は、 図7により算定された粒子の動きを示す図である。 図9は、ある半径に固定化された状態での数学的評価を示す図である。 図10は、回転する円筒形の固定化チャンバー中における遠心力と流速力のバランスを分析した図である。 図11は、回転する円錐形の固定化チャンバー中における遠心力と流速力のバランスを分析した図である。 図12は、回転する円錐形の固定化チャンバー中における粒子の三次元配列を示す図である。 図13は、回転する円錐形の固定化チャンバー中における粒子の三次元配列における層間の(inter-stratum)「緩衝領域」を示す図である。 図14は、回転する円錐形の固定化チャンバー中における粒子の二次元配列における層間の流速の変位の数学的分析を示す図である。 図15は、円錐形の固定化チャンバーおよび、その寸法を決定する境界条件の一例を示す図である。 図16は、 図15のチャンバー中における流量10mL/分のときの遠心と流速力の位置的変化を分析した図である。 図17は、遠心バイオリアクターへの液体導入において、所望の溶存気体濃度を維持するように設計された工程配列のブロックダイアグラムである。 図18は、液流圧レギュレーターの図である。 図19は、遠心発酵プロセスの実施例の一例を回転軸に平行の方向から見たときの断面図である。 図20は、図19のローターボディを回転軸に平行の方向から見たときの図である。 図21は、図19の取り外し可能な生体触媒固定化チャンバーの一つの横断面図である。 図22は、図19のローターボディを回転軸に垂直の方向から見たときの断面図である。 図23は、回転軸に平行の方向から図22中に示される点線沿いに見たときの図19のローターボディの断面図である。 図24は、回転軸に平行の方向から図22中に示される点線沿いに見たときの 図19のローターボディの断面図である。 図25は、回転軸に平行の方向から 図22中に示される点線沿いに見たときの 図19のローターボディの断面図である。 図26は、回転軸に平行の方向から図22中に示される点線沿いに見たときの 図19のローターボディの断面図である。 図27は、回転軸に平行の方向から図22中に示される点線沿いに見たときの 図19のローターボディの断面図である。 図28は、図19の回転シャフト中の軸チャンネルおよびその末端の図である。 図29は、 図28の回転シャフトの分配ハブの詳細図である。 図30は、代表的な高性能端面シールの断面図である。 図31は、 図21のバイオリアクター固定チャンバーの内部コンパートメントのグラフック表現および数学的表現である。 図32は、図19のローターボディを用いて、0.001および0.01mm/分の沈降速度の粒子を図15に示される寸法および境界条件拘束(boundary condition constraints)下で粒子固定した際の、10mL/分までの流量における、流量とローター速度の関係を示すグラフである。 図33は、 図19のローターボディを用いて、0.1、1.0および10.0mm/分の沈降速度の粒子を図15に示される寸法および境界条件拘束下で粒子固定した際の、10mL/分までの流量における、流量とローター速度の関係を示すグラフである。 図34は、図19のローターボディを用いて、0.1、1.0および10.0mm/分の沈降速度の粒子を 図15に示される寸法および境界条件拘束下で粒子固定した際の、100mL/分までの流量における、流量とローター速度の関係を示すグラフである。 図35は、本発明のプロセスの実施例のローターサイズと容量の関係を示すグラフである。 図36は、本発明のプロセスの実施例における、ローターサイズと100 Xgの相対遠心力を維持するのに必要な回転速度の関係を示すグラフである。 図37は、二つの遠心バイオリアクターを経由する先駆化学物質の継続的プロセッシングが行えるように設計された、遠心工程配列のブロックダイアグラムである。

Claims (20)

  1. 遠心力場に存在する少なくとも一つのチャンバー内に生体触媒を収容することを含む生体触媒の収容方法であって、液体の連続流が遠心力場に相反する力を生じるように作用し、重力は生体触媒に作用するすべての力のベクトルの総和に寄与し、前記重力、遠心力および前記液体の相反する力は生体触媒をチャンバー内のある位置に実質的に固定し、液体の水圧は周囲圧よりも大きく、かつ前記チャンバー内には気相が存在しないことを特徴とする生体触媒の収容方法。
  2. 前記チャンバーの主軸が遠心力場に平行に設けられたことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記チャンバーの主軸が、遠心力場とおよそ0〜90度の間の角度をなすことを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 生体触媒を収容するステップが、遠心力場内の複数のチャンバーを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 液体が溶存気体を含有する請求項1記載の方法。
  6. 生体触媒が細胞である請求項1記載の方法。
  7. 生体触媒が細胞成分である請求項1記載の方法。
  8. 下記工程を含む、生体触媒由来の生成物を製造する方法。
    a.遠心力場に存在する少なくとも一つのチャンバー内に生体触媒を収容する工程;ここで、液体の連続流は遠心力場に相反する力を生じるように作用し、重力は生体触媒に作用するすべての力のベクトルの総和に寄与し、生体触媒は前記重力、遠心力および前記液体の相反する力によりチャンバー内のある位置に実質的に固定され、液体の水圧は周囲圧よりも大きく、かつ前記チャンバー内には気相は存在しない;
    b.チャンバー外部の液体の連続流をこれに含まれる生成物とともに回収する工程。
  9. 培地が溶存気体を含有する請求項8記載の方法。
  10. 生体触媒が細胞である請求項8記載の方法。
  11. 生体触媒が細胞成分である請求項8記載の方法。
  12. さらに、過剰の生体触媒を遠心バイオリアクターから液流中に排出させる工程を含む請求項8記載の方法。
  13. 培地が溶存気体を含有する請求項12記載の方法。
  14. 生体触媒が細胞である請求項12記載の方法。
  15. 生体触媒が細胞成分である請求項12記載の方法。
  16. 遠心場内で流れる液体培地に懸濁された生体触媒を収容するための少なくとも一つのチャンバー、遠心力を得るために容器を回転させる手段、液体培地に気相が接触することなく前記培地をポンプで供給する手段、および容器の水圧を周囲の大気圧よりも高く維持す
    る手段を備える生体触媒をインキュベートする装置。
  17. 複数の装置が直列に配列されたことを特徴とする請求項16記載の装置。
  18. 複数の装置が並列に配列されたことを特徴とする請求項16記載の装置。
  19. さらに、生体触媒を有する請求項16記載の装置。
  20. 生体触媒を収容するステップが、遠心力場内の複数のチャンバーを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。

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