しかしながら、上述のローラハース形連続炉101では、ワークWをバスケットBに収容して移送するため、本来、加熱する必要のないバスケットBまで加熱することになり、その分だけ余分にエネルギーを消費していた。例えば鉄製のバスケットBを使用する場合、即ち軽いアルミニウム合金製のワークWを重い鉄製のバスケットBに収容して移送する場合、合計重量の半分近くがバスケットBの重量になることもあり、バスケットBの加熱に要する損失熱量はワーク加熱に要する正味熱量の半分近くに達することもある。
また、バスケットBに複数のワークWを並べる場合、並べる位置によってワークWの加熱に要する時間が異なる。つまり、バスケットBの中央に載せたワークWは、周辺に載せたワークWよりも熱を受け難く温度上昇が遅れる傾向にある。したがって、全てのワークWを加熱するためには、温度上昇が遅い中央位置のワークWにあわせて加熱時間を設定する必要がある。このため、加熱時間が長くなり、炉長が長くなってしまう。
なお、バスケットBを使用せずにワークWをローラ上に直接載せて移送することも考えられるが、ワークWの形状や大きさが様々であることから、ワークの搬送時の姿勢が不安定となったり移動・落下したりして、特に小形のワークWの搬送には適さない。
また、バスケットBを使用せずにワークWを移送する装置として、図14に示すように、炉床108に取り付けられた固定ビーム106に対して、炉床108に設けられた楕円の孔109から突出する移動ビーム107を垂直面内で矩形状に動かしてワークWを移送するウォーキングビーム式のワーク移送装置があるが、炉内に熱風を循環させるアルミニウム合金鋳物の熱処理炉では舞い上がった鋳砂が固定ビーム106の隙間及び移動ビーム107の孔109等に詰まり移動ビーム107の動きを妨げる虞があるので採用は困難である。また、炉床108に固定ビーム106や移動ビーム107を設置すると熱風循環に支障をきたすと共に砂回収の弊害となる。
さらに、メッシュベルトやチェーンコンベア等を使用したワーク移送装置を採用することも考えられるが、これらのワーク移送装置の場合にも可動部分への鋳砂の目詰まりが問題となり、また、鋳砂によってブッシュ等が早期に摩耗し易く、やはり採用し難い。
本発明は、エネルギーロスの少ない工業炉を提供することを目的とする。また、本発明は、砂型によって鋳造された鋳物の加熱に好適な工業炉を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求項1記載の発明は、炉内に設けたワーク移送装置によってワークを前方に移送しながら加熱する工業炉であって、ワーク移送装置は、前後方向に往復移動可能な前後移動ビームと、前後移動ビームの移動を妨げることなく上下方向に往復移動可能な上下移動ビームとを備え、前後移動ビームは前進時にワークを載せて移送し、上下移動ビームは前後移動ビームの前進時には前後移動ビームの搬送面よりも下に退避すると共に前後移動ビームの後退時に前後移動ビームの搬送面よりも上に突出して前後移動ビームからワークを持ち上げて前後移動ビームを空移動させるものである。
上下移動ビームを前後移動ビームよりも高く上げると、前後移動ビーム上のワークを持ち上げて浮かすことができる。一方、上下移動ビームを前後移動ビームよりも下に降ろすと、持ち上げていたワークを前後移動ビーム上に載せ換えることができる。上下移動ビームは前後移動ビームの前後移動を妨げないので、上下移動ビームの上げ下げと前後移動ビームの前後移動によってワークを前方に移送したり、ワークを後退させずに前後移動ビームのみを後方に戻すことができる。つまり、ワークを前方に移送する場合には、上下移動ビームを下げた状態で前後移動ビームを前進させる。そして、前後移動ビームを後方に戻す場合には、上下移動ビームによってワークWを持ち上げ、前後移動ビームのみを空移動させる。
また、請求項2記載の工業炉は、前後移動ビームと上下移動ビームとはワークの搬送方向と直交する炉の幅方向に交互に配置され、上下移動ビームは前後移動ビームの間から突出してワークを持ち上げるものである。
したがって、前後移動ビームの前後移動を妨げることなく、上下移動ビームを上下に移動させることができる。また、小型のワークであっても、上下移動ビームによって持ち上げることができる。
また、請求項3記載の工業炉は、前後移動ビームを、その後端を炉のワーク搬入口の外に突出可能にしている。したがって、前後移動ビームをその後端がワーク搬入口の外に出るまで後方に移動させると、前後移動ビーム上にワークを直接載せることができる。即ち、ワークを搬入することができる。
また、請求項4記載の工業炉は、前後移動ビームを、その前端を炉のワーク搬出口の外に突出可能にしている。したがって、前後移動ビームの前端近傍にワークを載せた状態で、前後移動ビームを前方に移動させると、加熱したワークを炉外に直接搬出することができる。
また、請求項5記載の工業炉は、ワークは砂型によって鋳造された鋳物であり、ワークから剥離した鋳砂を炉外に排出する砂排出装置を備え、砂排出装置は、ワーク移送装置の下方に炉の長手方向に沿って設けられた回収手段と、回収手段によって回収した砂を炉外に搬出する移送手段を有するものである。
したがって、ワークから剥離した鋳砂は回収手段によって回収され、移送手段によって炉外に排出される。回収手段は炉の長手方向に沿って設けられているので、1つの回収手段によって広い範囲をカバーできる。
また、請求項6記載の工業炉は、炉気を循環させるファンを備えるものである。したがって、熱風を炉内に循環させることができ、炉内の加熱方式の主体を対流加熱にすることができる。
しかして、請求項1記載の工業炉では、ワーク移送装置が、前後方向に往復移動可能な前後移動ビームと、前後移動ビームの移動を妨げることなく上下方向に往復移動可能な上下移動ビームとを備え、前後移動ビームは前進時にワークを載せて移送し、上下移動ビームは前後移動ビームの前進時には前後移動ビームの搬送面よりも下に退避すると共に前後移動ビームの後退時に前後移動ビームの搬送面よりも上に突出して前後移動ビームからワークを持ち上げて前後移動ビームを空移動させるようにしているので、バスケットやトレーを使用しなくても、ワークを確実に移送することができる。このため、バスケットやトレーの加熱に要するエネルギーロスの発生を防止することができる。また、構造上、バスケット上の位置によるワークの加熱時間のばらつきが無くなるので、ワークの加熱時間を短くすることができ、炉長を短くすることができると共に、エネルギーのロスをより一層防止することができる。さらに、ワークから剥離した鋳砂による悪影響を受け難く、砂型によって鋳造された鋳物の加熱に好適な工業炉を提供することができる。
また、請求項2記載の工業炉では、前後移動ビームと上下移動ビームは炉の幅方向に交互に配置され、上下移動ビームは前後移動ビームの間から突出してワークを持ち上げるので、前後移動ビームの前後移動を妨げることなく、上下移動ビームを上下に移動させることができる。また、小型のワークであっても、上下移動ビームによって持ち上げることができる。
また、請求項3記載の工業炉では、前後移動ビームを、その後端が炉のワーク搬入口の外に突出可能にしているので、ワーク移送装置によってワークを炉内に直接搬入することができ、フォークリフト等の装置類を不要にすることができる。
また、請求項4記載の工業炉では、前後移動ビームを、その前端が炉のワーク搬出口の外に突出可能にしているので、ワーク移送装置によってワークを炉外に直接搬出することができ、フォークリフト等の装置類を不要にすることができる。
また、請求項5記載の工業炉では、ワークは砂型によって鋳造された鋳物であり、ワークから剥離した鋳砂を炉外に排出する砂排出装置を備え、砂排出装置は、ワーク移送装置の下方に炉の長手方向に沿って設けられた回収手段と、回収手段によって回収した砂を移送する移送手段を有するので、ワークから剥離した鋳砂を回収して排出することができる。このため、砂型によって鋳造された鋳物の加熱に好適な工業炉を提供することができる。また、炉の長手方向に沿って回収手段を設けているので、1つの回収手段によって広い範囲をカバーすることができ、回収手段の数を少なくすることができる。
さらに、請求項6記載の工業炉では、炉気を循環させるファンを備えているので、炉内の加熱方式の主体を対流加熱にすることができ、アルミニウム合金鋳物の熱処理に適した工業炉を提供することができる。
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
図1に、本発明を適用した工業炉の実施形態の一例を示す。工業炉1は、例えばアルミニウム合金鋳物のT6処理の焼き入れを行う焼入炉(以下、焼入炉1という)であり、図2〜図6に示すように、焼入槽2及び焼戻炉3と併設されている。つまり、焼入炉1と焼入槽2と焼戻炉3によりT6熱処理炉を構成している。なお、焼入炉1のワーク移送装置4と同様のものが焼戻炉3のワーク移送装置にも採用されている。また、焼戻炉3について、焼入炉1の構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
焼入炉1は、炉内に設けたワーク移送装置4によってワークWを前方に移送しながら加熱するものであり、ワーク移送装置4は、前後方向に往復移動可能な前後移動ビーム5と、前後移動ビーム5の移動を妨げることなく上下方向に往復移動可能な上下移動ビーム6とを備える。そして、図12の(A)及び(B)に示すように、前後移動ビーム5は前進時にワークWを載せて移送し、上下移動ビーム6は前後移動ビーム5の前進時には前後移動ビーム5の搬送面(ワーク搬送時にワークWを受け支える面)よりも下に退避すると共に前後移動ビーム5の後退時に前後移動ビーム5の搬送面よりも上に突出して前後移動ビーム5からワークWを持ち上げて前後移動ビーム5を空移動させるものである。
前後移動ビーム5は第1の枠体7に取り付けられている。第1の枠体7は、図7及び図8等に示すように、炉の長手方向(前後方向)に沿う例えば4本のレール7aと、レール7aの前端、中央、後端の3箇所をそれぞれ連結する横棒7bより構成されている。各横棒7bには所定間隔で複数のブラケット8が取り付けられており、レール7aの前端を連結する横棒7bのブラケット(前側ブラケット)8とレール7aの中央を連結する横棒7bのブラケット(中央ブラケット)8との間、および中央ブラケット8とレール7aの後端を連結する横棒7bのブラケット(後側ブラケット)8との間にそれぞれ前後移動ビーム5を水平に渡して固定している。前側ブラケット8と中央ブラケット8の間に渡された前後移動ビーム5と、中央ブラケット8と後側ブラケット8の間に渡された前後移動ビーム5はワークWの移送方向に並んでいる。
本実施形態では、前後移動ビーム5を幅方向に例えば12列(4列×3グループ)設けている。また、上述のようにして構成した第1の枠体7を前後に2つ連結している。なお、2つの第1の枠体7の連結部分は、横棒7bとブラケット8を共有している。即ち、前側の第1の枠体7の後端を連結する横棒7bは、後側の第1の枠体7の前端を連結する横棒7bでもあり、前側の第1の枠体7の後側ブラケット8は、後側の第1の枠体7の前側ブラケット8でもある。
第1の枠体7は複数の駆動ローラ9によって前後に往復移動される。第1の枠体7のレール7aは駆動ローラ9に載せられており、図示しないモータによって駆動ローラ9を回転させることで第1の枠体7を前後方向に移動させることができる。即ち、前後移動ビーム5を前後方向に移動させることができる。そして、前後移動ビーム5は、その後端5bを炉のワーク搬入口10の外に、その前端5aを炉のワーク搬出口11の外にそれぞれ突出可能になっている。ワーク搬入口10及びワーク搬出口11は、油圧シリンダで操作される扉32,34によって開閉される。
上下移動ビーム6は第2の枠体12に取り付けられている。第2の枠体12は、図7及び図8等に示すように、炉の長手方向(前後方向)に沿う例えば4本のレール12aと、レール12aの前端、中央、後端の3箇所をそれぞれ連結する横棒12bより構成されている。横棒12bには所定間隔で複数のブラケット13が取り付けられており、レール12aの前端を連結する横棒12bのブラケット(前側ブラケット)13とレール12aの中央を連結する横棒12bのブラケット(中央ブラケット)13との間、および中央ブラケット13とレール12aの後端を連結する横棒12bのブラケット(後側ブラケット)13との間にそれぞれ上下移動ビーム6を水平に渡して固定している。前側ブラケット13と中央ブラケット13の間に渡された上下移動ビーム6と、中央ブラケット13と後側ブラケット13の間に渡された上下移動ビーム6はワークWの移送方向に並んでいる。
本実施形態では、上下移動ビーム6をワークの搬送方向と直交する炉の幅方向に例えば15列(5列×3グループ)設けている。また、上述のようにして構成した第2の枠体12を前後に2つ連結している。なお、2つの第2の枠体12の連結部分は、横棒12bとブラケット13を共用している。即ち、前側の第2の枠体12の後端を連結する横棒12bは、後側の第2の枠体12の前端を連結する横棒12bでもある。また、前側の第2の枠体12の後側ブラケット13は、後側の第2の枠体12の前側ブラケット13でもある。
第2の枠体12は複数の回転アーム14によって上下に往復移動される。第2の枠体12のレール12aは回転アーム14の先端に連結されており、図示しないモータによって回転アーム14が取り付けられたシャフト15を回転させることで第2の枠体12を上下方向に移動させることができる。即ち、上下移動ビーム6を上下方向に移動させることができる。
前後移動ビーム5と上下移動ビーム6は炉の幅方向に交互に配置されている。このため、図7に示すように、上下移動ビーム6を前後移動ビーム5の間から突出させてワークWを持ち上げることができる。即ち、前後移動ビーム5同士の間隔、上下移動ビーム6同士の間隔は、ワークWの大きさよりも狭くなっており、各ビーム5,6上にワークWを載せることができる。また、前後移動ビーム5と上下移動ビーム6は、ワークWから剥離した鋳砂を良好に落下させる程度の間隔をあけて配置されている。
本実施形態では、前後移動ビーム5と上下移動ビーム6を例えば3グループに分けており、ワークWを3列に並べて移送することができる。ワークWは、例えば砂型によって鋳造されたアルミニウム合金鋳物である。
この焼入炉1は、ワークWから剥離した鋳砂を炉外に排出する砂排出装置16を備えている。砂排出装置16は、ワーク移送装置4の下方に炉の長手方向に沿って設けられた回収手段17と、回収手段17によって回収した鋳砂を移送する移送手段18を有している。
回収手段17は、ワークWから剥離した鋳砂を受けるホッパー19と、ホッパー19の傾斜面を滑り落ちた鋳砂を移送手段18に送るスクリュウコンベア20より構成されている。回収手段17のホッパー19とスクリュウコンベア20を炉の長手方向に沿って設けているので、炉を長くしても回収手段17の数を増やさずに対応することができる。即ち、図12に示す従来の溶体化処理炉のように炉の幅方向に沿って回収手段を設ける構造では、炉が長くなればその分だけ多くの回収手段が必要になるが、本発明の焼入炉1では、炉が長くなっても回収手段17を長くすれば良く、その数を増やす必要はない。回収手段17の数を増やすよりも、回収手段17を長くする方が製造コストの上昇を抑えることができるので、本発明の焼入炉1は経済的である。本実施形態では、炉の長手方向中央に配置した移送手段18を挟んで前後両側に回収手段17を2列ずつ設けている。
移送手段18は、回収手段17が回収した鋳砂を炉外に排出するコンベアである。排出された鋳砂は砂タンク21に溜められて再利用される。
炉内には水平隔壁22が設けられており、炉内空間を上下に分割して熱風が循環する経路を形成している。水平隔壁22の上の上部空間23には、炉気を循環させるファン24が設けられている。バーナ25によって加熱された炉気はファン24に吸引されて上部空間23に吐出され、500℃程度の循環流となって第1の送風口26から水平隔壁22の下の下部空間27に流入する。循環流は下部空間27内を3列のワークWの移送方向とは逆方向に流れながらワークWを加熱する。3列のワークWは、下部空間27内を移送される間に所定温度まで加熱される。そして、ワークWを加熱した循環流は、第2の送風口28から上部空間23へと流入し、バーナ25によって加熱される。第1及び第2の送風口26,28にはダンパ29が設けられている。
次に、ワーク移送装置4によるワークWの移送について説明する。上下移動ビーム6を下げた状態では、図7に実線で示すように、上下移動ビーム6は前後移動ビーム5よりも低くなるので、ワークWは前後移動ビーム5上に載せられる。一方、上下移動ビーム6を上げると、図7に二点鎖線で示すように、上下移動ビーム6は前後移動ビーム5よりも高くなるのでワークWを前後移動ビーム5上から持ち上げる。
ワーク移送装置4は、上下移動ビーム6を下げてワークWを前後移動ビーム5上に載せた状態でこの前後移動ビーム5を前進させることで、ワークWを前方に移送する。そして、前後移動ビーム5を元の位置に戻す(後退させる)場合には、上下移動ビーム6を上昇させてワークWを前後移動ビーム5から持ち上げ、前後移動ビーム5のみを空移動させる。前後移動ビーム5を元の位置に空移動させた後、上下移動ビーム6を下げるとワークWを上下移動ビーム6上から前後移動ビーム5上に載せ換えることができ、前後移動ビーム5を前進させてワークWを前方に移送することができる。また、全てのワークWを同時に移送する必要はなく、例えば先頭のワークWなど一部のワークWのみを前後移動ビーム5上に載せると共に、その他のワークWを上下移動ビーム6上に載せておくことで、一部のワークWのみを移送することもできる。
図8及び図9に基づいて具体的に説明する。図8に焼入中のワークW、前後移動ビーム5、上下移動ビーム6等の位置関係を示す。この状態では、上下移動ビーム6は下降しており、図中、番号2〜20を付したワークWは前後移動ビーム5に載っている。また、前後移動ビーム5は、上下移動ビーム6よりもワーク1個分だけ前進している。
先頭の20番ワークWについて加熱所要時間が経過して所定温度に達すると、上下移動ビーム6が上昇する(図9(a))。前後移動ビーム5は、上下移動ビーム6よりもワーク1個分だけ前進しているので、上下移動ビーム6は2番ワークWから19番ワークWを持ち上げる。したがって、20番ワークWは前後移動ビーム5上に残される。
次に、図9(b)に示すように、ワーク搬出口11を開き、前後移動ビーム5を前進させてその先端5aを炉外に突出させる。これにより先頭の20番ワークWを炉外にそのまま搬出することができる。即ち、前後移動ビーム5を前進させることで、所定温度まで加熱した20番ワークWをそのまま焼入槽2のエレベータリフト30に載せることができる。
また、同時にワーク搬入口10を開き、新たに焼き入れを開始する1番ワークWを炉内に搬入する。ワーク搬入口10が開くと装入装置31のフォークリフトが自動的に前進し、テーブル上の1番ワークWを炉内に運び込んで上下移動ビーム6の手前側位置(後端6b近傍位置)に載せる。そして、装入装置31のフォークリフトが元の位置に戻ると、ワーク搬入口10を閉める。
20番ワークWを焼入槽2のエレベータリフト30に載せた後、前後移動ビーム5を1番ワークW〜19番ワークWの下方位置まで後退(空移動)させ、ワーク搬出口11を閉める(図9(c))。そして、上下移動ビーム6を下げて上下移動ビーム6上のワークWを前後移動ビーム5上に載せ換えた(図9(d))後、図8に示す位置まで前後移動ビーム5を前進させる。これにより、1番ワークW〜19番ワークWがワーク1個分だけ前方に移送され、2番ワークW〜20番ワークWとなり加熱される。
このように、上述の動作を繰り返し行ってワークWを所定温度まで加熱し、焼入槽2に供給する。
ワークWの加熱によってワークWの凹部等に付着していた鋳砂のバインダが熱分解し、鋳砂が剥離して落下する。ワーク移送装置4の下方には炉の長手方向に沿って回収手段17のホッパー19が設けられているので、ワークWから剥離した鋳砂は回収手段17のホッパー19内に落ちる。そして、この鋳砂はスクリュウコンベア20によって集められ、移送手段18によって炉外の砂タンク21に投入される。
ワーク移送装置4の前後移動ビーム5と上下移動ビーム6の間にはある程度の間隔があいているので、ワークWから剥離した鋳砂はビーム5,6間に詰まることはなく良好に落下する。また、前後移動ビーム5を第1の枠体7に取り付けて駆動ローラ9によって駆動するようにしており、上下移動ビーム6を第2の枠体12に取り付けて回転アーム14によって駆動するようにしているので、可動部分に鋳砂が詰まり難い駆動構造となっている。このため、ワークWの移送を確実に行うことができる。
このワーク移送装置4は、ワークWの搬出時に前後移動ビーム5の前端5aをワーク搬出口11の外にまで突出(前進)させるので、後工程の焼入槽2のエレベータリフト30との間で直接、ワークWの受け渡しを行うことができる。このため、加熱したワークWを素早く焼入槽2の中に入れることができる。また、炉内からワークWを取り出すフォークリフト等の専用の搬出装置を不要にすることができる。さらに、ワーク搬出口11を小さくすることができ、炉内の熱を外に逃がし難くすることができる。
次に、焼戻炉3に設置したワーク移送装置4の作動を、図10及び図11に基づいて具体的に説明する。
図10に焼戻炉3内で焼き戻し中のワークW、前後移動ビーム5、上下移動ビーム6等の位置関係を示す。この状態では、上下移動ビーム6は下降しており、2番ワークWから17番ワークWは前後移動ビーム5上に載っている。なお、前後移動ビーム5は先頭の18番ワークWの位置よりも手前側(移送方向後側)に停止しているので、18番ワークWは上下移動ビーム6上に載っている。
先頭の18番ワークWについて加熱所要時間が経過して所定温度に達すると、上下移動ビーム6が上昇し、全てのワークWを持ち上げる(図11(a))。その後、ワーク搬出口(抽出口)11を開き、抽出装置35が18番ワークWを取り出す。即ち、ワーク搬出口11が開くと抽出装置35のフォークリフトが自動的に前進し、上下移動ビーム6上から18番ワークWを取り出して抽出テーブル33上に載せる(図11(b))。18番ワークWが炉内から取り出されると、ワーク搬出口11が閉まる。
また、同時にワーク搬入口(装入口)10を開き、前後移動ビーム5を後退(空移動)させてその後端5bを炉外に突出させて、焼入槽2のエレベータリフト30から焼入処理済みの1番ワークWを受け取る。そして、1番ワークWが前後移動ビーム5上の2番ワークWに当たらない位置まで前後移動ビーム5を前進させてワーク搬入口10を閉じる(図11(c))。
次に、上下移動ビーム6を下げて2番ワークW〜17番ワークWを前後移動ビーム5上に載せ換えた後、即ち全てのワークWを前後移動ビーム5上に載せた後(図11(d))、前後移動ビーム5を前進させる。これにより、1番ワークW〜17番ワークWがワーク1個分移送され、2番ワークW〜18番ワークWとなる(図11(e))。
そして、上下移動ビーム6を一旦上昇させて全ワークWを上下移動ビーム6上に載せ換えてから、前後移動ビーム5をワーク1個分だけ後退(空移動)させた後、上下移動ビーム6を下降させる。これにより、2番ワークW〜17番ワークWが前後移動ビーム5上に載せ換えられ、先頭の18番ワークWのみ上下移動ビーム6上に残る(図10)。そして、この状態で各ワークWを加熱する。
このように、上述の動作を繰り返し行ってワークWを加熱し焼き戻しを行う。
焼戻炉3のワーク移送装置4は、ワークWの搬入時に前後移動ビーム5の後端5bをワーク搬入口10の外にまで突出(後退)させるので、前工程の焼入槽2のエレベータリフト30との間で直接、ワークWの受け渡しを行うことができる。このため、焼き入れしたワークWを素早く焼き戻しすることができる。また、炉内にワークWを運び込むフォークリフト等の専用の搬入装置を不要にすることができる。さらに、ワーク搬入口10を小さくすることができ、炉内の熱を外に逃がし難くすることができる。
本発明のワーク移送装置4は、ワークWをバスケットに収容せずにビーム5,6上に直接載せて移送することができる。このため、構造上、バスケット上の位置によるワークWの加熱むらが発生せず、全てのワークWを均一に加熱することができるので、加熱時間を短くすることができ、炉長を短くして炉を小型化することができる。
また、バスケットを加熱する必要がないので、その分だけエネルギーロスの発生を防止することができる。さらに、バスケットにワークWを並べる手間や、バスケットからワークWを取り出す手間を省くことができる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上述の説明では、前後移動ビーム5を取り付けた第1の枠体7を駆動ローラ9によって前後に往復移動させるようにしていたが、必ずしもこの構造に限るものではない。例えば、駆動ローラ9に代えてピニオンギヤを設けると共に、第1の枠体7のレール7aの底面にラックを設け、ピニオンギヤとラックを噛み合わせ、ピニオンギヤを回転駆動することで、第1の枠体7即ち前後移動ビーム5を前後方向に移動させるようにしても良い。または、水平方向に回転するアームによって第1の枠体7を水平方向(前後方向)に往復移動させるようにしても良い。さらには、その他の駆動手段によって前後移動ビーム5を前後方向に移動させるようにしても良い。
また、上述の説明では、上下移動ビーム6を取り付けた第2の枠体12を回転アーム14によって上下に往復移動させるようにしていたが、必ずしもこの構造に限るものではない。例えば、カムによって第2の枠体12を上下に往復移動させるようにしても良い。
さらに、上述の説明では、アルミニウム合金鋳物の熱処理を行う焼入炉1や焼戻炉3を例にしていたが、本発明を適用できる工業炉はこれらに限るものではないことは勿論である。