(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の車両用照明装置のブロック図である。
図1のように、この車両用照明装置は、第一の出力光部12a、第二の出力光部12bを含む照明具1と、駆動手段2と、演算手段4と、旋回状態検出手段3としての旋回半径検知手段5及び視点誘導距離検出手段6とからなっている。
前記旋回状態検出手段3で検出された車両の旋回状態に基づき演算手段4が駆動量を演算し、駆動手段2へ出力する。駆動手段2は、入力された駆動量の信号に基づいて第一、第二の出力光部12a,12bを駆動し、前記第一の出力光部12aの照射方向を前記第二の出力光部12bよりも旋回方向側へ変化させる。
即ち、第一、第二の出力光部12a,12bの照射方向を前記旋回方向へ変化させると共に、前記第二の出力光部12bの照射方向角度の変化を第一の出力光部12aの照射方向角度の変化よりも小さくし、又は前記第一の出力光部12aの照射方向を前記旋回方向へ変化させると共に、前記第二の出力光部12bの照射方向を車両中心線方向とするか反旋回方向側に変化させる。
従って、車両の旋回走行中に運転者は、自車が向かうべき進路の先を第一の出力光部12aによる中心光用の明るい配光により視認することができると共に、車両の正面側或いは反旋回方向側も第二の出力光部12bによる周辺光用の配光により視認可能となる。こうして、車両の旋回方向の視認性を向上させ、且つ車両正面側或いは反旋回方向側の視認性をも確保することが可能となる。
前記第一、第二の出力光部12a,12bを含む照明具1は、図2のように車両C前部に設けられた左右のヘッドランプ11で構成されている。ヘッドランプ11の詳細は、後述する。
前記演算手段4は、マイクロコンピュータなどによって構成され、車両Cのインストルメントパネルの内部などに配置されている。
前記旋回半径検出手段5は、前記車両C前方の進路の形状を検知する進路形状検知手段として、車両前方を撮像する車両前方画像撮像手段と、車両の位置を検知する車両位置検知手段及び車両が走行している道路情報を含む地図データベースとの少なくとも何れか一方又は双方を備え、前記撮像した車両前方画像に基づき前記進路の形状を検知するか、前記検知した車両の位置及び地図データベースに基づき車両が走行している道路の地点を特定し該特定された道路地点を基準にした道路区間の形状から前記進路の形状を検知するかの少なくとも何れか一方又は双方である。
前記車両前方画像撮像手段は、図2のように車両C前方を撮像するカメラ100を車両C前部のグリル内に備えて構成され、カメラ100で撮影された画像が画像処理され、前方道路の曲率、勾配などの進路形状、横断歩道、標識、交差点などの道路付帯施設の有無や距離を検出するようになっている。
前記車両位置検知手段としては、図2の車両CにGPS(Global Positioning System:衛星航法システム)信号を受信するためのGPS受信装置(GPS受信手段)が設置され、GPSの情報から受信位置の緯度経度を抽出し該抽出され緯度経度情報から車両Cの位置を正確に特定している。
また、前記車両位置検知手段としては、図2の車両Cに情報伝達用アンテナ300を備え、道路インフラと情報信号を授受しあったり(道路自動車間)、車両Cの回りの他の車両との信号の授受(自動車相互間)により得られる情報から前記車両の位置を特定することもできる。かかる場合は、GPS信号が受信できないような場合においても車両Cの位置を知ることができる。
即ち、前記車両位置検知手段としては、GPSの信号を受信するGPS受信手段を備え、受信されたGPS信号から受信位置の緯度経度を抽出し該抽出され緯度経度情報から前記車両Cの位置を特定するか、道路インフラ又は他の車両から得られる情報から前記車両Cの位置を特定するか一方又は双方とすることができる。
前記地図データベースは、前記車両内部に配置され、道路の曲率、勾配などの進路形状情報、横断歩道、標識、交差点などの道路付帯施設の設置位置情報が記録されている。
そして前記のようにして特定された車両Cの位置を前記地図データベースで参照する演算を行うことにより車両Cが存在している地点近傍の道路情報を得て、前方道路の曲率、勾配などの進路形状、横断歩道、標識、交差点などの道路付帯施設の有無や距離が検出できる。
また、前記旋回半径検知手段は、前記車両Cに車速を検知する車速センサと、車両の操舵角を検知する舵角センサとを備え、検知された車速及び舵角と車両が持っている運動特性値とに基づき前記旋回半径を演算することもできる。処理の詳細は後述する。
更に、前記旋回半径検知手段は、前記車両Cに横加速度を検知する横加速度検知センサと、車両の操舵角を検知する舵角センサとを備え、検知された横加速度及び舵角に基づき前記旋回半径を演算することもできる。処理の詳細は後述する。
尚、自動車相互間、道路自動車間の情報の授受によって前方道路の曲率、勾配などの進路形状、横断歩道、標識、交差点などの道路付帯施設の有無や距離の情報を収集することもできる。
次に、前記ヘッドランプ11を図3〜図9により更に説明する。
図3は、左側のヘッドランプ11の詳細図、図4は、配光制御の配光パターン、図5は、配光制御して走行したときの状態を上面から見た状態を示している。
尚、右側のヘッドランプについては左側のヘッドランプと左右対称に構成されているため、説明は省略する。
前記ヘッドランプ11には、ハイビームを照射するためのハイビームランプ111と車幅を支持するために点灯する車幅ランプ115とロービームの配光を制御するための3段の配光制御ランプ121,122,123とが設けられている。
前記上段の配光制御ランプ121は、カットライン用ランプであり図4,図5の配光パターン1211を照射している。中段の配光制御ランプ122は、第一の出力光部としてのホットゾーン用ランプであり、図4,図5の配光パターン1221を照射している。ここで、ホットゾーンとは、図4で示す水平ラインHより下側に存在する明るい中心光のエリアであり、水平ラインHはヘッドランプ11の光源を含むラインである。下段の配光制御ランプ123は、第二の出力光部としての周辺光用ランプであり、図4、図5の配光パターン1231を照射し、ホットゾーンを広く囲み中心光よりも照射範囲が広いぼんやりと明るい部分である。
図6,図7は前記配光制御ランプ121,122,123の概略構成を示す概略平面図、概略側面図を示し、図8,図9は作動状態を示す概略平面図、概略側面図を示している。
図6,図7のように、前記配光制御ランプ121,122,123は、それぞれ独立して駆動できるように構成され、それぞれリフレクタ131内に光源132を、外部に駆動手段として2個のモータM1,M2を、前部にズームレンズ126をそれぞれ備えている。リフレクタ131、光源132、ズームレンズ126は一体に構成され、支点F1を軸に回転可能となるようにベース127に取り付けられている。前記ズームレンズ126は、その調整によってランプ121,122,123の照射範囲を変更する。
前記ベース127は、モータM1の駆動軸で回転可能なように車両本体に装着されている。モータM1を駆動することにより、ベース127を含むランプ121、又はランプ122、又はランプ123全体がそれぞれ図8のように左右方向へ振られるように作動し、左右方向の光軸調整を行わせることができる。
また、前記ベース127には、モータM2が固定され、該モータM2の駆動軸にはギヤ128が取り付けられている。ギヤ128は、リフレクタ131、ズームレンズ126側に設けられた弧状のラック129に噛み合っている。モータM2を駆動することにより、リフレクタ131、光源132、ズームレンズ126を一体に含む灯体部分が図9のように上下方向へ振られるように作動し、上下方向の光軸調整を行わせることができる。
即ち、本実施形態においては、ランプ121,122,123の全てが可動構成されている。但し、少なくとも第一の出力光部に相当する配光制御ランプ122のみを可動に構成することができる。
図10は、前記ホットゾーン用の配光制御ランプ122を左方へ作動させた状態を示し、(a)は配光パターンの変化を示す正面図、(b)は配光制御ランプ122を照射して走行している状態を上面から見た平面図、(c)はそのときのヘッドランプ11の正面図である。このようにホットゾーン用の配光制御ランプ122を左方へ指向させるとホットゾーン用の配光パターン1221が左方へ移動し、カットライン用、周辺光用の配光パターン1211,1231はそのままの状態を維持する。
図11は、前記カットライン用の配光制御ランプ121を左方へ作動させた状態を示し、(a)は配光パターンの変化を示す正面図、(b)は配光制御ランプ121を照射して走行している状態を上面から見た平面図、(c)はそのときのヘッドランプ11の正面図である。このようにカットライン用の配光制御ランプ121を左方へ指向させるとカットライン用の配光パターン1211が左方へ移動し、ホットゾーン用、周辺光用の配光パターン1221,1231はそのままの状態を維持する。
図12は、前記周辺光用の配光制御ランプ123を右方へ作動させた状態を示し、(a)は配光パターンの変化を示す正面図、(b)は配光制御ランプ123を照射して走行している状態を上面から見た平面図、(c)はそのときのヘッドランプ11の正面図である。このように周辺光用の配光制御ランプ123を右方へ指向させると周辺光用の配光パターン1231が右方へ移動し、ホットゾーン用、カットライン用の配光パターン1221,1211はそのままの状態を維持する。
次にシステムの処理状況についてフローチャートを用いて説明する。
図13は、システム全体の処理の流れを示す。
まず、処理が開始されるとステップS1(以下、「ステップS」は単に「S」と称す。)でシステムの稼働判断が行われ、配光制御が可能か否かの判断が行われる。次に車両の旋回半径の検出処理S2が行われ、視点誘導距離設定処理S3が行われる。S4では車両の旋回半径と設定された視点誘導距離とを基に配光制御処理が行われ、システムの稼働判断S1に戻される。
前記システムの稼働判断S1について、図14のフローチャートを用いて説明する。処理が開始されると、自車の走行状態の検出S11が行われ、自車が走行状態か否かの判断が行われる。自車が走行状態であればS12YES、処理を続行し、走行状態でなければS12NO、処理は終了する。
処理が続行されれば配光制御の可・不可判断S13、が行われ、次のS14で配光制御が可能と判断されればS14YES、次の処理S2へと移行する。配光制御が不可S14NOであれば、処理は走行状態の検出S11へと戻る。
図14の走行状態の検出S11では、図15に示すようにエンジンの起動状態を検出しS111、エンジンが起動状態であれば走行しているとしS112YES、S113、エンジンが起動していなければ走行していないとするS112NO、S114。
図14の配光制御の可、不可判断S13では、図16のように配光制御モードのスイッチ状態を検出しS131、スイッチがオンになっていれば配光制御可能と検出しS132YES、S133、スイッチがオフになっていれば配光制御不可と検出するS132NO、S134。
配光制御モードのスイッチとしては、運転者自らが手動でオン、オフするスイッチの他、車両の走行環境を検出してその状況に応じて配光モードになるという自動スイッチなどがある。
次に、旋回半径の検知処理S2について、図17,図18,図19のフローチャートを用い、三通り説明する。
図17は、車両の速度と舵角とに基づき旋回半径を算出するフローチャートである。まず、自車の車速Vの検出S21と、舵角δTの検出S22とが行なわれる。検出された車速Vと舵角δTとの情報から
(A:車両固有係数、l:ホイールベース)
により、旋回半径Rが算出されるS23。前記車両固有係数A、及びホイールベースlは、車両が持っている運動特性値、例えば、車両Cの旋回特性を決める値である。
車両固有係数Aはスタビリティファクターとも呼ばれ、(数2)式で表わされる。ここで、mは車両重量、lfは車両重心から前輪車軸までの距離、lrは車両重心から後輪車軸までの距離、Kf、Krはそれぞれ前輪と後輪のコーナリングフォースである。このコーナリングフォースKf、Krは速度Vの関数であるが、車両固有係数Aはあまり大きく変化しないため、通常0.002という値が用いられている。
図18は、車両の速度Vと横加速度γとから旋回半径Rを算出するフローチャートである。まず、自車の車速Vの検出S21と、横加速度γの検出S24とが行なわれる。検出された車速Vと横加速度γとの情報から
により、旋回半径Rが算出されるS23。
図19は、車両前方の道路形状を認識して旋回半径Rを算出するフローチャートである。まず、車両に設置されたカメラにより撮像された車両前方の画像に画像処理を施し、進路形状を認識して道路曲率dの算出処理S25が行われる。道路曲率dと旋回半径Rとは逆数関係にあるので
により、旋回半径Rが算出されるS23。
次に、前記車両前方の道路形状を認識して道路曲率dを算出する処理S25を、図20,図21,図22のフローチャートを用いて、三通り説明する。
図20は、自車Cに取り付けられているカメラ100で撮影された前方の道路状況の画像を画像処理して道路曲率を求めている。まず、カメラ100から取り込んだ画像を演算手段のコンピュータで画像処理が行なわれ、走行車線の白線の抽出S252が行われる。抽出された画像上の白線形状から道路曲率の算出処理S253が行われる。処理の詳細は後述する。
図21は、特定された車両位置より地図データから車両前方の道路曲率を求めている。まず、車両の位置を検出する処理S254が行われ、車両位置の経度緯度情報が地図データベースと照合され、車両前方の道路曲率の情報が地図データベースから抽出されるS255。
図22は、即ち、自車Cと道路インフラとの間の道路自車間の情報伝達や自車C以外の他の車両との間の情報伝達による外部情報によって車両前方の道路曲率を求めている。まず、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車以外の他の車両との間の情報伝達によって受信される外部情報信号を自車Cによって受信されるS256。自車Cによって受信された信号は、演算手段のコンピュータで解析され、車両前方の道路曲率情報を示す信号の抽出が行われる。
前記図21の車両の位置検出処理S254を、図23,図24のフローチャートを用いて、二通り説明する。
図23は、GPSを用いている。即ち、GPSからの信号がGPS信号受信装置によって受信されS2541、受信信号が演算手段に入力され、演算手段内部で受信信号の中から受信位置の経度緯度を特定する情報が抽出されるS2542。
図24は、外部情報信号を用いている。即ち、自車Cの回りに存在する他の車両や道路インフラからの信号が情報伝達用アンテナ300によって受信されS2543、受信信号が演算手段に入力され、演算手段内部で受信信号の中から受信位置の緯度経度を特定する情報が抽出されるS2544。
次に、抽出された画像上の白線形状から道路曲率の算出処理S253について詳細に説明する。
(1)直線適合
まず、図25に示すような追跡領域内で、エッジ点画像G(x,y)から各直線の候補点を探索する。そして、候補点の座標から直線適合を行ない、各直線式を求める。図25において、(1)は第1のレーンマーカの左端線、(2)は第1のレーンマーカの右端線、(3)は第2のレーンマーカの左線、(4)は第2のレーンマーカの右端線である。本実施例では直線1は第1のレーンマーカの右端に対応する直線、直線2は第2のレーンマーカの左端に対応する直線として直線適合を行なっていく。
候補点の探索領域は、図25に示すように2つの領域で行なう。すなわち、直線1の候補点は同一の領域(j=1)内で探索する。直線2(領域j=2)も同様である。2つの探索領域を添字jで区別する。探索の走査は、画面中央から外側に向かって行なう。すなわち、左側の領域(j=1)は右から左へ行ない、右側の領域(j=2)は左から右に行なう。候補点としては、各ラインの走査において最初に現れたエッジ点とし、その座標値を記憶する。
上記のようにして2つの探索領域から候補点を得た後、それぞれ直線適合を行なって2本の直線式を求める。
直線式の求め方は候補点の中で任意の2点を選び、2点を結ぶ線分上に他の候補点が何点乗っているかをカウントする。そして全ての2点の組み合わせの中で、カウント数の最も大きな値を与える2点を直線の端点として決定する。端点として選ばれた2点の座標から直線式
x=ai・y+bi (i=1〜2)を得る。
(2)消失点の決定
2本のレーンマーカは、路面上で平行であり、かつレーンマーカ幅も一定であると仮定すると、無限遠点の画像上での座標で2本の直線が必ず交わる。この交点を消失点とすると消失点の座標xsとysは直線1の式と直線2の式で表される連立方程式を解くことで求めることができる。
(3)エッジ点追跡
エッジ点追跡は、曲線適合のための候補点座標を求めるために行なう。或る直線において、画面下方のymaxにおけるxの値を直線式から求めて、x0とおく。すなわち、x0=aiymax+bi(i=1〜2)である。そして、エッジ点画像G(x,y)において、G(x0,ymax)がエッジ点であるか否かを調べる。もしエッジ点でなければB(x0+1,ymax),B(x0−1,ymax)などの近傍点について調べる。エッジ点があれば、その点の座標をx1,y1として記憶する。次にx1,y1を出発点としてエッジの追跡を行ない、エッジ点として抽出された座標をxj,yjとして記憶していく。
(4)曲線適合
以上の処理を各直線についてそれぞれ行なうと2組のエッジ点座標列が得られるので、それぞれの組で曲線適合を行なう。曲線適合は、当てはめる曲線は下記(数5)式で示されるものとし、係数ci,di,ei(i=1〜2)を求めることによって行なう。
上記の曲線式を用いると、係数diは、実際の道路の曲率に比例した量として求まる。上記の曲線適合は最小自乗法で容易に求めることができる。すなわち、エッジ点列xj,yjとし、N点のデータがあるとする。また、
rj=yj−ys, sj=1/(yj−ys)
とおく。上式においてysは先に求めた消失点のy座標である。添字jを略して、
ej=c・rj+d・sj+e−xj
を誤差と考え、下記(数6)式を最小にするc,d,eを求めればよい。
上記(数6)式を最小とするc,d,eを求めるには、下記(数7)式から下記(数8)式に示す方程式が求められるので、(数8)式を解けばよい。
上記(数8)式を解くことにより、c,d,eはそれぞれ下記(数9)式に示すようにして求められる。
ただし、上記(数9)式において、Dは下記(数10)式に示すごときものである。
以上の処理により、各レーンマーカに対する曲線パラメータci,di,ei(i=1〜6)が求められる。
次に、カーブ度(曲率)を決定する。2本のレーンマーカは平行に描かれているものと仮定すると、理論上は画像上における曲率に対応した量diの値は等しく(d1=d2)となる。エッジ点追跡において、レーンマーカが必ずしも1本のつながったラインであるとは限らず、例えばセンターラインのように途切れた線は、遠方まで追跡できないため、曲線式の適合結果もよい精度で求まるとは限らない。2本の曲線それぞれのdiの値を平均化して曲率とする。このとき確からしさとしてはNiを用いる。
上記の平均化した曲率をdaとすると、daは下記(数11)式で求められる。
平均化した曲率daを道路曲率dとして設定する。
次に、前記視点誘導距離の設定処理S3を、図26,図28のフローチャートを用いて二通り説明する。
図26は、ランプの照度分布から視点誘導距離を求めている。まず、ランプの物理的諸量の検出S31が行われる。ランプの物理的諸量とは、ランプ光軸の車両基準平面に対する傾きや地上高などランプの配光の基本パターンとは直接は関係ないパラメータである。次にランプの光学的諸量の検出S32を行なう。ランプの光学的諸量とは光源の明るさやリフレクタの形状などランプの配光の基本パターンを決定するのに必要なパラメータである。これら2種類のパラメータ群から図27に示すようなランプ光軸の車両の水平面に対する傾きにおける照度分布を算出する処理S33を行なう。求められた照度分布からもっとも明るいエリアまでの距離Lsを求める処理S34を行なう。
一般道路を走行するような50km/h前後の速度で走行しているとき運転手の視点はランプの光が照射されているもっとも明るいエリアに視点が集中する。
よってヘッドランプの配光が動くと視点もこの明るいエリアを追うように移動するので、照度分布の中でもっとも明るいエリアまでの距離を視点誘導距離Lsとして設定S35する。
図28は、ランプの照度分布と車速とから視点誘導距離を求めている。図28においてランプの物理的諸量の検出S31から車両基準平面における照度分布を算出する処理S33までは図26に示すものと同一であり、説明を省略する。
一方、前記車両基準平面における照度分布を算出する処理S33で求められた照度分布の中でもっとも明るいエリアまでの距離Lsminを求める処理S34を行なう。求められた照度分布から視認可能な照度の光が到達している最大距離Lsmaxを求める処理S36を行う。視認可能な照度とは、例えば一般に5ルックスの照度が該当し、該照度が存在していれば物体の視認は可能であるといわれている。図29に示す照度分布では、等照度分布線の最外線が5ルックスの等照度ラインを示しており、その先端の位置までの距離を最大距離Lsminとしている。
次に車両の車速センサから速度の検出処理S37を行なう。検出した速度に応じて、照度分布の中でもっとも明るいエリアまでの距離Lsminと視認可能な照度の光が到達している距離Lsmaxの間で視点誘導距離Lsの設定S38を行なう。
一般道路を走行するような50km/h前後の速度で走行しているときについては運転手の視点はランプの光が照射されているもっとも明るいエリアに視点が集中するが、高速道路を走行するような速度が大きい場合は速度が大きくなるに従って視点は徐々に遠くに移動する。しかし、ランプを照射してそのランプの照射する光によって障害物を視認しながら走行する状況は夜間など車両周囲の環境照度が暗い場合であるから、昼間のように環境照度が明るい場合のように速度が大きくなれば無限に視点位置が大きくなるわけではなく、視点の移動はあくまでもランプの光によって物体が視認できる範囲に限られてくる。よって図30に示すグラフのように速度がV1(例えば一般道路を走行するような速度として50km/h)からV2(例えば高速道路を走行するような速度として100km/h)へと変化すると、視点誘導距離Lsは照度分布の中でもっとも明るいエリアまでの距離Lsminから視認可能な照度の光が到達している距離Lsmaxへとリニアに変化する。また、速度がV1以下の場合、視点誘導距離Lsは照度分布の中でもっとも明るいエリアまでの距離Lsminに固定され、速度がV2以上になれば視認可能な照度の光が到達している距離Lsmaxを視点誘導距離Lsとして設定する。
次に前記配光制御処理S4について図31のフローチャートを用いて説明する。
まず、これまでの処理によって得られた車両の旋回半径Rと視点誘導距離Lsにより演算手段4が照明具1の中にある中心光用の配光制御ランプ122の光軸の移動量の算出処理S41を行なう。
具体的な算出方法を図32を用いて説明する。
図32に示すように車両Cが車線中央を円旋回している。車両Cの中にいる運転手は車両進行線上を視認していると仮定すると、視点誘導距離Lsだけ離れた車両進行線上の点Psが運転手に視認させたい位置となる。このとき円旋回の中心Oと運転手に視認させたい位置点Psと車両Cの前端中央点Pcとでできる三角形は二等辺三角形となる。車両Cの前端中央点Pcから運転手に視認させたい位置点Psまでの距離が視点誘導距離Ls、円旋回の半径がRであるならば、車両前端中央部Pc、運転手に視認させたい位置点Psとでできる線分と車両Cの車両の前方方向とがなす角度θpは、
によって求めることができ、これを中心光用の配光制御ランプ122の光軸の移動量(第1の光軸移動量)θp1として設定する。
次に中心光用の第一の出力光部である配光制御ランプ122の光軸移動量の算出処理S41によって算出された第1の光軸移動量θp1に基づいてランプ1の中にある周辺光用の第二の出力光部である配光制御ランプ123の光軸の移動量の算出処理S41を行なう。周辺光用の配光制御ランプ123の光軸の移動量(第2の光軸移動量)θp2は第1の移動量θp1の0.5倍と設定する。
また、第2の光軸移動量θp2は次のようにしてもよい。
図33の様に周辺光用の配光制御ランプ123の照射範囲1231は車両の中心軸を中心に左側θaL、右側θaR、さらに照射距離Laで広がっている。車両の側方位置でPHだけ離れている道路の外周線L1(一定曲率の円弧)が周辺光用の配光制御ランプ123の照射範囲1231にかからないような場合(図33の曲線(1)の曲率半径より大きい場合)は照射方向の移動は行なわない。
次に図34に示すように道路の外周線L1が曲線(1)と曲線(2)の間にあるような場合は周辺光用の配光制御ランプ123の照射範囲1231の端点Paが道路の外周線L1に合うように配光制御ランプ123の照射方向を求め、第2の光軸移動量θp2とする。なお、曲線(2)は車両の中心軸上で周辺光用の配光制御ランプ123の照射距離Laの地点で交差し、車両の側方位置でPHだけ離れている一定曲率の円弧である。
前記光軸移動量θp2は次式のようにして求めることができる(諸量は図36を参照)。
次に図35に示すように道路の外周線L1が曲線(2)よりも曲率半径が小さくなった場合は、第2の光軸移動量θp2を周辺光用の配光制御ランプ123の照射範囲1231の照射方向の移動方向とは反対の広がり量(図35では照射方向の移動方向が左であるから右側の広がり量θaR)を第2の光軸移動量θp2とする。
このときの第1の移動量θp1と第2の光軸移動量θp2の関係の一例を図37に示す。横軸は道路曲率(曲率半径の逆数)である。
次に中心光用の配光制御ランプ122の光軸調整用アクチュエータであるモータM1(駆動手段2)を駆動S43させる。演算手段4は中心光用の配光制御ランプ12の光軸が第1の光軸移動量θP1まで到達したか否かを判断S44する。配光制御ランプ122の光軸が第1の光軸移動量θp1まで到達したと判断したときS44YES、配光制御ランプ122の光軸調整用アクチュエータであるモータM1の駆動を終了S45し、光軸が第1の光軸移動量まで達していないと判断したときS43NO、同モータM1の駆動を継続する。
次に周辺光用の配光制御ランプ123の光軸調整用アクチュエータであるモータM1(駆動手段2)を駆動S46させる。演算手段4は、配光制御ランプ123の光軸が第2の光軸移動量θp2まで達したか否かを判断S47する。配光制御ランプ123の光軸が第2の光軸移動量θp2まで達したと判断したときS47YES、配光制御ランプ123の光軸調整用アクチュエータであるモータM1の駆動を終了S48し、処理をシステムの稼働判断S1へと戻す。また、配光制御ランプ123の光軸が第2の光軸移動量θp2まで達していないと判断したときS47NO、配光制御ランプ123の光軸調整用アクチュエータであるモータM1の駆動を継続して行なう。
図38には本システムでの左右のヘッドランプ11による配光制御の状況を示している。
中心光用配光パターン1221は、車両の旋回半径にあわせて運転者を誘導すべき点を照射するように光軸を車両中心線前方に対してθp1だけ移動して照射方向を変化させている。これにより運転者はカーブの先の状況が視認しやすくなる。一方、周辺光配光パターン1231は中心光用配光パターン1221より小さな移動量θp2だけ光軸を車両中心線前方に対して移動して照射方向を変化させている。このため、周辺光配光パターン1231を中心光用配光パターン1221と同じθp1だけ車両中心線前方に対して光軸を移動した場合(図中点線で示しているエリア1232)に比べ、旋回方向とは反対側の周辺を広く照射できるようになり、車両の旋回方向の視認性を向上させ、且つ車両正面側或いは反旋回方向側の視認性をも確保することが可能となる。
尚、前記第一の出力光部である中心光用の配光制御ランプ122の照射方向を前記第二の出力光部のである周辺光用の配光制御ランプ123の照射方向よりも旋回方向側へ変化させればよく、θp1に対してθp2を零とし、或いはθp2を車両中心線を挟んで反対方向に採ることもできる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態は左右の周辺光配光パターンの照射方向を独立に変化できるように第二の出力光部として左周辺光用出力光部と右周辺光用出力光部とを備えた例である。
基本的なシステムの構成並びに車両C等の構成は第1実施形態と同一であり、重複した説明は省略する。
ここで、ランプ1を図39から図41により更に説明する。
図39は左側のヘッドランプ11の詳細図、図40は配光制御ランプによる配光パターンの正面図、図41は配光制御ランプを照射して走行したときの配光パターンの状態を上面から見た平面図を示している。なお右側のヘッドランプについては左側のヘッドランプと左右対称に構成されている。
前記左側のヘッドランプ11には、ハイビームを照射するためのハイビームランプ111と車幅灯を点灯するための車幅ランプ115とともにロービームの配光を制御するための配光制御ランプ121,122,124,125が4段になって構成されている。最上段の配光制御ランプ121はカットライン用ランプであり、図40ならびに図41の配光パターン1211の部分を照射している。2段目の配光制御ランプ122は、ホットゾーン用ランプとして中心光用の第一の出力光部を構成し、図40ならびに図41の配光パターン1221の部分を照射している。ここでホットゾーンとは図40で示す水平ラインHより下側に存在する明るいエリアであり、水平ラインHは左側のヘッドランプユニット11の光源からでる光軸を含むラインである。3段目の配光制御ランプ124は左側周辺光用ランプとして第二の出力光部を構成し、図40ならびに図41の配光パターン1241の部分を照射してホットゾーンの左側を広く囲むぼんやりと明るい部分である。最下段の配光制御ランプ1251は右側周辺光用ランプとして第二の出力光部を構成し、図40ならびに図41の配光パターン1251の部分を照射してホットゾーンの右側を広く囲むぼんやりと明るい部分である。
図42はホットゾーン用の配光制御ランプ122が独立に左方に動いた状況を示したもので、(a)は配光パターンの変化を示す正面図、(b)は配光制御ランプを照射して走行したときの配光パターンの状態を上面から見た平面図、(c)はそのときの左側のヘッドランプ11の動作状況を示す正面図である。
このようにホットゾーン用の配光制御ランプ122のみを左方へ向くように移動させるとホットゾーン用の配光パターン1221のみが左方へ移動し、カットライン用、左右周辺光用の配光パターン1211,1241,1251はそのままとなる。
図43は、カットライン用の配光制御ランプ121が独立に左方に動いた状況を示したもので、(a)は配光パターンの変化を示す正面図、(b)は配光制御ランプ121を照射して走行したときの配光パターンの状態を上面から見た平面図、(c)はそのときの左側のヘッドランプ11の動作状況を示す正面図である。このようにカットライン用の配光制御ランプ121のみを左方へ向くように移動させるとカットライン用の配光パターン1211のみが左方へ移動し、ホットゾーン用、左右周辺光用の配光パターン1221,1241,1251はそのままとなる。
図44は各々の左側周辺光用の配光制御ランプ124が独立に左方に動いた状況を示したもので、(a)は配光パターンの変化を示す正面図、(b)は配光制御ランプ124を照射して走行したときの配光パターンの状態を上面から見た平面図、(c)はそのときの左側のヘッドランプ11の動作状況を示す正面図である。このように左側周辺光用の配光制御ランプ124のみを左方へ向くように移動させると左周辺光用の配光パターン1241のみが左方へ移動し、ホットゾーン用、カットライン用、右周辺光用の配光パターン1221,1211,1251はそのままとなる。
図45は各々の右側周辺光用の配光制御ランプ125が独立に右方に動いた状況を示したもので、(a)は配光パターンの変化を示す正面図、(b)は配光制御ランプを照射して走行したときの配光パターンの状態を上面から見た平面図、(c)はそのときの左側のヘッドランプ11の動作状況を示す正面図である。このように右側周辺光用の配光制御ランプ125のみを右方へ向くように移動させると右周辺光用の配光パターン1251のみが左方へ移動し、ホットゾーン用、カットライン用、左周辺光用の配光パターン1221,1211,1241はそのままとなる。
システム全体の流れおよびシステムの稼働判断S1、車両の旋回半径の検出処理S2、視点誘導距離設定処理S3に関しては、第1実施形態と同一なので、説明は省略する。
配光制御処理S4については、図46のフローチャートを用いて説明する。
まず、これまでの処理によって得られた車両の旋回半径Rと視点誘導距離Lsにより演算手段4がランプ1の中にある中心光用の配光制御ランプ122の光軸の移動量の算出処理S41を行なう。該中心光用の配光制御ランプ122の光軸の移動量(第1の光軸移動量)θp1の具体的な算出方法は第1の実施形態と同一なので、説明は省略する。
次に第2の光軸移動量で光軸を移動する周辺光用の配光制御ランプの選択S49を行なう。中心光用の配光制御ランプ122の光軸の移動量の算出処理S41によって算出された中心光用の配光制御ランプ122の光軸の移動方向に対し反対側の周辺光用の配光制御ランプが選択される。具体的には中心光用の配光制御ランプ122の光軸が右方向に移動する場合は左側周辺光用の配光制御ランプ124が選択され、中心光用の配光制御ランプ122の光軸が左方向に移動する場合は右側周辺光用の配光制御ランプ125が選択される。
なお、ここで選択されなかったもう一方の周辺光用ランプは中心光用の配光制御ランプ122と同じ第1の光軸移動量で制御される。
次に中心光用の配光制御ランプ122の光軸移動量の算出処理S41によって算出された第1の光軸移動量θp1に基づいて、照明具1の中にある第2の光軸移動量で光軸を移動する周辺光用の配光制御ランプの光軸の移動量の算出処理S41を行なう。第2の光軸移動量で光軸を移動する周辺光用の配光制御ランプの光軸の移動量(第2の光軸移動量)θp2は第1の光軸移動量θp1の0.5倍と設定する。
次に中心光用の配光制御ランプ122および第1の光軸移動量で制御される周辺光用の配光制御ランプの光軸調整用アクチュエータであるモータM1(駆動手段2)を駆動S43させる。演算手段4は中心光用の配光制御ランプ122および第1の光軸移動量で制御される周辺光用の配光制御ランプの光軸がS41で算出された光軸の第1の光軸移動量θp1まで達したか否かを判断S44する。
中心光用の配光制御ランプ122の光軸および第1の光軸移動量で制御される周辺光用の配光制御ランプが光軸の第1の光軸移動量θp1まで達したと判断したときS44YES、中心光用の配光制御ランプ122および第1の光軸移動量で制御される周辺光用の配光制御ランプの光軸調整用アクチュエータであるモータM1(駆動手段2)の駆動を終了S45する。
中心光用の配光制御ランプ122の光軸および第1の光軸移動量で制御される周辺光用の配光制御ランプの光軸が第1の光軸移動量まで達していないと判断したときS43NO、中心光用の配光制御ランプ122および第1の光軸移動量で制御される周辺光用の配光制御ランプの光軸調整用アクチュエータであるモータM1(駆動手段2)の駆動を継続して行なう。
次に第2の光軸移動量で光軸を移動する周辺光用の配光制御ランプの光軸調整用アクチュエータであるモータM1(駆動手段2)を駆動S46させる。制御手段3は第2の光軸移動量で光軸を移動する周辺光用の配光制御ランプの光軸が光軸の第2の光軸移動量θp2まで達したか否かを判断S47する。
第2の光軸移動量で光軸を移動する周辺光用の配光制御ランプの光軸が第2の光軸移動量θp2まで達したと判断したときS47YES、第2の光軸移動量で光軸を移動する周辺光用の配光制御ランプの光軸調整用アクチュエータであるモータM1(駆動手段2)の駆動を終了S48し、処理をシステムの稼働判断S1へと処理を戻す。
また、第2の光軸移動量で光軸を移動する周辺光用の配光制御ランプの光軸が第2の光軸移動量θp2まで達していないと判断したとS47NO、第2の光軸移動量θp2まで光軸を移動する周辺光用の配光制御ランプの光軸調整用アクチュエータであるモータM1(駆動手段2)の駆動を継続して行なう。
図47には本システムでの配光制御の状況を示している。
中心光用配光パターン1221は車両の旋回半径にあわせて運転者の視点を誘導すべき点を照射するように光軸を車両前方に対してθp1だけ移動している。
これにより運転手はカーブの先の状況が視認しやすくなる。また、左側周辺光配光パターン1241も中心光用配光パターン1221と同じθp1だけ光軸を移動しているため、旋回方向の視認性向上に寄与している。一方、カーブは左旋回であるため右側周辺光配光パターン1251は中心光用配光パターン1221より小さな移動量θp2だけ光軸を車両前方に対して移動している。このため右側周辺光配光パターン1251を中心光用配光パターンと同じθp1だけ車両前方に対して光軸を移動した場合(図中点線で示しているエリア1251)に比べて旋回方向と反対側の周辺を広く照射できるようになる。
右旋回走行の時は、右側周辺光配光パターン1251が中心光用配光パターン1221と同じθp1だけ光軸を右へ移動させ、左側周辺光配光パターン1251は中心光用配光パターン1221より小さな移動量θp2だけ光軸を車両前方に対して移動する。
尚、本実施形態においても、θp1に対してθp2を零とし、或いはθp2を車両中心線に対し反対方向に採ることもできる。
(第3実施形態)
図48は、第3実施形態に係る車両用照明装置のブロック図である。
図48のように車両用照明装置は、照明具1と駆動手段2と演算手段4と旋回半径検知手段5と視点誘導距離設定手段6と車両進路形状検出手段7と他車両検出手段8と移動障害物検出手段9と車両前方付帯施設検出手段10とからなっている。前記車両進路形状検出手段7と他車両検出手段8と移動障害物検出手段9と車両前方付帯施設検出手段10とは、車両の前方状況を検出する車両前方状況検出手段を構成している。
そして、前記旋回半径検知手段5が車両の旋回半径を検知し、前記視点誘導距離設定手段6が車両の走行状態に応じ運転者に視認させるべき視点と運転者との間の視点誘導距離を、前記照明具1の配光パターンの範囲内で設定する。一方、前記車両前方状況検出手段は、車両の前方状況を検出し、該前方状況に応じて前記設定された視点誘導距離を補正する。前記演算手段4は、検知された旋回半径及び補正された視点誘導距離に基づいて前記照明具1の配光パターンの変化量を演算し、該演算結果に基づいて駆動手段2の制御を介し前記照明具1を駆動して配光パターンを変更する。このような制御により、本来運転者が視認しなければならない位置を正確に視認させることができる。
前記照明具1、駆動手段2、演算手段4、旋回半径検知手段5、視点誘導距離設定手段6、車両Cの構成は、第一実施形態のものと同様であり、その説明は省略する。ただし、前記照明具1に関し、本実施形態においては、その中心光用の配光制御ランプ122、カットライン用の配光制御ランプ121、周辺光用の配光制御ランプ123の光軸を一体に移動させる構成、或いは中心光用の配光制御ランプ122のみの光軸を変化させる構成にすることもできる。
前記進路形状検出手段7は、自車の前方の道路線形を検出して、ブラインドとなる事象を検出し、ブラインドとなる事象が検出されたときは自車前方の見通し距離を測定して演算手段4に信号を入力するものである。具体的には、前記第一実施形態の旋回半径検出手段5に含まれる進路形状検知手段と同様に構成され、カメラ100で撮影された画像が画像処理され、前方道路の曲率、勾配などの進路形状、横断歩道、標識、交差点などの道路付帯施設の有無や距離を検出するようになっている。
前記他車両検出手段8は、自車の前方の車両の存在を検出して、自車の前方に車両が検出されたときはその車両までの距離を測定して演算手段4に信号を入力するものである。
前記移動障害物検出手段9は、自車の前方の移動障害物の存在を検出して、自車の前方に移動障害物が検出されたときはその移動障害物までの距離を測定して演算手段4に信号を入力するものである。
これら他車両検出手段8、移動障害物検出手段9は、前記カメラ100で撮影された画像を処理して、他車両の有無や距離、歩行者、自転車などの移動障害物の有無や距離を検出する。移動障害物が体温など温度を有するものとして特定するのであれば前記カメラ100として赤外線カメラを用いることもできる。
又、車両C前部のグリル内にレーザレーダを配置し、他車両の有無や距離、歩行者、自転車などの移動障害物の有無や距離を検出することもできる。
更に、前記車両Cの情報伝達用アンテナ300により、道路インフラと情報信号を授受しあったり(道路自動車間)、車両Cの回りの他の車両との信号の授受(自動車相互間)することにより、他車両の有無や距離、歩行者、自転車などの移動障害物の有無や距離を検出することもできる。
前記車両前方付帯施設検出手段10は自車の前方の道路付帯施設の存在を検出して、自車の前方に道路付帯施設が検出されたときはその道路付帯施設までの距離を測定して演算手段4に信号を入力するもので、前記進路形状検出手段7と同様の構成である。
尚、車両Cには、走行状態検出手段として車速センサ、舵角センサ、横加速度センサが備えられ、各センサにより計測された車速、舵角、横加速度が前記演算手段4に入力されるようになっている。
システム全体の処理、システムの稼働判断等の処理状況は、第1実施形態の図13〜図30までと同様である。
配光制御処理S4は、図49の様になっている。まず、これまでの処理によって得られた車両の旋回半径Rと視認誘導距離Lsにより演算手段4が照明具1の中にある配光制御ランプ121、122、123の光軸の移動量の算出処理を行うS41。具体的な算出方法は図32で説明したのと同様であり省略する。
次に光軸調整用アクチュエータであるモータM1(駆動手段2)を駆動させるS42。ついで、配光制御ランプ121、122、123の光軸がS41で算出された光軸の移動量まで達したか否かを判断しS43、配光制御ランプ121、122、123の光軸が前記移動量まで達したと判断したときS43YES、モータM1の駆動を終了しS44、システムの稼働判断S1へ処理を戻す。又、配光制御ランプ121、122、123の光軸が前記移動量まで達していないと判断されたときS43NO、モータM1の駆動は継続される。
こうして、配光制御ランプ121、122、123による配光パターンは、車両の旋回半径にあわせて運転者の視点を誘導すべき点を照射するように光軸を車両中心線前方に対してθpだけ移動して照射方向を変化させている。これにより運転者はカーブの先の状況が視認しやすくなる。
また、検出された前方状況に応じて設定された視点誘導距離を補正し、検知された旋回半径及び補正された視点誘導距離に基づいて照明具1の配光パターンを変化させることができ、本来運転者が視認しなければならない位置を正確に視認させることができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態はカーブの先がブラインドによって視認できないような場合についての例である。
照明具1を搭載する車両C等の構成は第1実施形態と同一なので、重複した説明は省略する。
図50はシステム全体の処理の流れを示している。
まず処理が開始されるとシステムの稼働判断S1が行なわれ、配光制御が可能な状況か否かを判断する。次に車両の旋回半径の検出処理S2を行ない、視点誘導距離設定処理S3を行なう。
次に車両前方の進路形状を認識してブラインドとなる事象の検出処理S5を行ない、ブラインドとなる事象が検出されればS6YES、見通し距離の算出処理S7を行なう。ここで、見通し距離とはブラインドとなる事象までの距離のことをいう。ブラインドとなる事象が検出されなければS6NO、配光制御処理S4を行なう。視点誘導距離設定処理S3で設定された視点誘導距離Lsと見通し距離の算出処理S7で算出された見通し距離を比較S8して、視点誘導距離Lsより見通し距離の方が小さければS8YES、見通し距離を視点誘導距離Lsとして再設定S9し、配光制御処理S4を行なう。視点誘導距離Lsより見通し距離の方が大きければS8NO、配光制御処理S4を行なう。
システムの稼働判断S1、車両の旋回半径の検出処理S2、視点誘導距離設定処理S3、配光制御処理S4に関しては第1実施形態と同一なので、説明は省略する。
車両前方の進路形状を認識してブラインドとなる事象の検出処理S5を、図51,図55,図56のフローチャートを用いて三通り説明する。
図51は、自車C1に取り付けられている前方の道路状況を撮影するカメラ100から取り込まれた画像を画像処理してブラインドとなる事象の有無を検出している。
まず、カメラ100から画像の取り込みS51を行なう。取り込んだ画像を演算手段3のコンピュータで画像処理を行ない、走行車線の白線の抽出S52を行なう。
前記ブラインドとは道路前方の視界が何らかの原因で見通しが効かなくなる現象であり、ブラインドとなる事象とは道路前方の視界の見通しが効かなくなくなる原因のことである。図54はブラインドとなる事象が存在しない状況であり、図52,図53は代表的なブラインドの例である。図52は旋回方向側路側に切り通しなどの壁WAが存在して、カーブの先が視認できない状態になっており、図53は凸勾配の道路であり、凸の頂点SUから先が視認できない状態になっている。
図52,図53,図54を見て分かるように見通しの効く道路では画像上では白線WL1、WL2、WL3は略一点に集中している。よって抽出した白線WLが画像上で略一点に集中しているかどうかの判断処理S53を行ない、抽出した白線WLが画像上で略一点に集中していればS53YES、ブラインドとなる事象なしと検出S55され、図26のブラインドとなる事象は存在するかの判断処理S6へ移る。抽出した白線WLが画像上で略一点に集中していなければS53NO、ブラインドとなる事象ありと検出S54され、図50のブラインドとなる事象は存在するかの判断処理S6へ移る。
図55は、車両の位置を特定し、特定した車両位置より地図情報からブラインドとなる事象の有無を検出している。
まず、車両の位置を検出する処理S254を行ない、車両位置の緯度経度を情報を地図データベースと照合し車両前方の道路形状の情報を地図データベースから抽出する。
抽出された道路形状情報からブラインドとなる対象を探査処理S56を行なう。即ち、各地点の高度(標高)の情報が含まれている地図データから車両前方の道路形状を3次元的に表現する。3次元的に表現された道路形状の中に処理をしている時点での車両状態(若しくは処理に時間がかかるであれば微小時間Δt秒後の予測された状態)を、その道路形状の中に重ねる。既に求められている視点誘導距離だけ離れた道路地点と車両のドライバーアイポイント位置(厳密な位置を測定しても良いが、設計で用いる平均的な位置で十分)を結んだ線が何も遮らなければ(線が空中だけで結ばれたならば)ブラインドは無し。線が道路自身や道路側壁などで遮られたら(線が地面の中を通っているならば)ブラインドありと判断する。
ブラインドとなる事象が抽出されなければS58NO、ブラインドとなる事象なしと検出S55され、図50のブラインドとなる事象は存在するかの判断処理S6へ移る。ブラインドとなる事象が抽出されればS58YES、ブラインドとなる事象ありと検出S54され、図50のブラインドとなる事象は存在するかの判断処理S6へ移る。
図56は、自車C1と道路インフラとの間の道路自動車間や自車C1と自車C1以外の他の車両との間の情報伝達手段によって自車C1の外部から情報を得ることでブラインドとなる事象の有無を検出している。
まず、自車C1と道路インフラとの間の道路自動車間や自車C1と自車C1以外の他の車両との間の情報伝達手段によって発信される外部情報信号を自車C1が受信S59する。受信した信号を演算手段3のコンピュータで解析することで、車両前方の道路形状の情報を示す信号の抽出S510を行なう。
抽出された道路形状情報からブラインドとなる事象を探査処理S511を行ない、ブラインドとなる事象が抽出されなければS512NO、ブラインドとなる事象なしと検出S55され、図50のブラインドとなる事象は存在するかの判断処理S6へ移る。ブラインドとなる事象が抽出されればS512YES、ブラインドとなる事象ありと検出S54され、図50のブラインドとなる事象は存在するかの判断処理S6へ移る。
次に前記見通し距離の測定処理S7を、図57,図58,図59のフローチャートを用いて三通り説明する。
図57は、自車C1に取り付けられている前方の道路状況を撮影するカメラ511から取り込まれた画像を画像処理して見通し距離を測定している。
まず、カメラ100から画像を取り込みS71を行なう。取り込んだ画像を演算手段3のコンピュータで画像処理を行ない、走行車線の白線の抽出S72を行なう。
検出された右側白線がとぎれる画像上の位置の検出処理S73を行なう。続いて、検出された左側白線がとぎれる画像上の位置の検出処理S74を行なう。
図52のように旋回方向側路側に切り通しなどの壁WAが存在した場合は旋回方向側の白線(図52では左側の白線WLl)が画像上の中程の位置でとぎれている。また、図53のように凸勾配の道路では左右の白線WL1,WL2がほぼ同じ高さの位置でとぎれている。よって、検出された左右白線WL1,WL2がとぎれている位置が画像y方向で下方になる位置での画像上の車線幅を検出S75する。2本の白線は、路面上で平行であり、かつ車線幅も一定であると仮定すると実車線幅と画像上の車線幅とカメラ100の画角から検出された位置までの実距離を算出S76することができる。なお、実車線は道路によって異なってくるが、おおむね車線幅は2.5mから3.5mの範囲に存在していることを考えると、3m程度で固定した場合の測定誤差は実処理上は無視できる範囲にあるので、3m程度で固定することにより処理速度を向上することができる。もし、正確な実車線幅が必要であれば、地図データベースと照合するなどして実車線幅を決定することができる。
図58は、車両の位置を特定し、特定した車両位置より地図情報から見通し距離を測定している。
まず、車両の位置を検出する処理S254を行ない、車両位置の緯度経度の情報を地図データベースと照合し、車両前方の道路形状の情報を地図データベースから抽出S77する。抽出された道路形状情報からブラインドとなる事象の探査処理S78を行ない、ブラインドとなる事象の位置の検出処理S79を行なう。
検出された車両の位置とブラインドとなる事象の位置からブラインドとなる事象までの距離を算出S710する。
図59は、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって自車Cの外部から情報を得ることで見通し距離を測定している。
まず、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車C1と自車C1以外の他の車両との間の情報伝達手段によって発信される外部情報信号を自車C1が受信S711する。受信した信号を演算手段3のコンピュータで解析することで、車両前方のブラインドとなる事象までの距離情報を示す信号の抽出S712を行なう。
図60,図61に制御された配光の様子を示している。図60,図61のH0は、本実施形態での制御をしていない場合におけるランプ1の照射エリアを示し、図60のH1ならびに図61のH2は、本実施形態での制御をした場合におけるランプ1の照射エリアを示している。
このように、図60、図61のH0では、視点誘導距離が本来視認させるべき位置からずれてくるが、図60、図61のH1、H2では、運転者に本来視認させるべき位置に誘導することができ、旋回方向の視認性を大幅に向上させることができる。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。
第5実施形態は自車の前方に車両が走行しているような場合についての例である。
照明装置を搭載する車両C等の構成は第1実施形態と同一なので、重複した説明は省略する。
図62はシステム全体の処理の流れを示している。
まず処理が開始されるとシステムの稼働判断S1が行なわれ、配光制御が可能な状況か否かを判断する。次に車両の旋回半径の検出処理S2を行ない、視点誘導距離設定処理S3を行なう。次に車両前方に存在する車両の検出処理SAを行ない、車両前方に車両が検出されればSBYES、前方車両までの距離の算出処理SCを行なう。車両前方に車両が検出されなければSBNO、配光制御処理S4を行なう。視点誘導距離設定処理S3で設定された視点誘導距離Lsと前方車両までの距離の算出処理SCで算出された前方車両までの距離を比較SDして、視点誘導距離Lsより前方車両までの距離の方が小さければSDYES、前方車両までの距離を視点誘導距離Lsとして再設定SEし、配光制御処理S4を行なう。視点誘導距離Lsより前方車両までの距離の方が大きければSDNO、配光制御処理S4を行なう。
システムの稼働判断S1、車両の旋回半径の検出処理S2、視点誘導距離設定処理S3、配光制御処理S4の処理に関しては第1実施形態と同一なので、説明は省略する。
次に前方車両検出処理SAを、図63,図64,図65のフローチャートを用いて三通り説明する。
図63は、自車C1に取り付けられている前方の道路状況を撮影するカメラ100から取り込まれた画像を画像処理して自車の前方に車両を検出している。
まず、カメラ100から画像を取り込みSA1を行なう。取り込んだ画像を演算手段4のコンピュータで画像処理を行ない、前方車両のテールランプやヘッドライトの抽出SA2を行なう。テールランプもしくはヘッドランプが抽出されればSA3YES、自車Cの前方に車両が存在していると検出SA4され、図62の前方車両は存在するかの判断処理SBへ移る。テールランプが抽出されなければSA3NO、自車Cの前方に車両が存在していないと検出SA5され、図62の前方車両は存在するかの判断処理SBへ移る。
図64は、自車Cに取り付けられているレーザーレーダ装置200によって自車の前方に車両を検出している。
まず、レーザーレーダ装置200から前方に向けてレーザー波を発射SA6する。発射されたレーザー波が前方車両C2によって反射し戻ってくる再帰波を検出SA7する。再帰波が検出されればSA8YES、自車Cの前方に車両が存在していると検出SA4され、図62の前方車両は存在するかの判断処理SBへ移る。再帰波が検出されなければSA8NO、自車C1の前方に車両が存在していないと検出SA5され、図62の前方車両C2は存在するかの判断処理SBへ移る。
図65は、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって自車Cの外部から情報を得ることで自車の前方に車両を検出している。
まず、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって発信される外部情報信号を自車Cが受信SA9する。受信した信号を演算手段4のコンピュータで解析することで、前方車両C2の存在を示す信号の検出SA10を行なう。先行車の存在を示す信号が抽出すればSA11YES、自車Cの前方に車両が存在していると検出SA4され、図62の前方車両は存在するかの判断処理SBへ移る。先行車の存在を示す信号が抽出されなければS2BNO、自車Cの前方に車両が存在していないと検出SA5され、図62の前方車両は存在するかの判断処理SBへ移る。
次に前方車両までの距離の検出SCを、図66,図67,図68のフローチャートを用いて三通り説明する。
図66は、自車Cに取り付けられている前方の道路状況を撮影するカメラ100から取り込まれた画像を画像処理して前方車両までの距離を検出している。
まず、カメラ100から画像を取り込みSC1を行なう。取り込んだ画像を演算手段4のコンピュータで画像処理を行ない、前方車両のテールランプもしくはヘッドランプの抽出SC2を行なう。抽出されたテールランプもしくはヘッドランプは車両の略最外部両端に取り付けられているため、画像上でも車幅に対応する二カ所に抽出される。抽出された画像上のテールランプ間の幅を計測SC3する。計測された画像上のテールランプ間の幅とテールランプ間の実幅値とカメラ100の画角によって自車と先行車の距離は算出SC4される。なお、テールランプ間の実幅は先行車の車種によって異なってくるが、乗用車であればほぼ1.7m程度、大型車でも2.5m程度であることを考えると実際の処理上は2m程度で固定してもさほど問題はない。もし、正確な車両の実幅値が必要であれば、テールランプの形状をパターンマッチングをするなどして、演算手段4が備えるデータベースの中から車種の特定を行ない、実幅を決定することができる。
図67は、自車C1に取り付けられているレーザーレーダ装置300によって前方車両までの距離を検出している。
まず、レーザーレーダ装置300から前方に向けてレーザー波を発射SC5する。発射されたレーザー波が先行車によって反射し戻ってくる再帰波を検出SC7する。レーザ波を発射してから再帰波が戻ってくるまでの時間を計測SC7する。レーザ波が空気中を伝播する速度は一定値であるので、計測された再帰波が戻ってくるまでの時間によって自車と先行車の距離は算出SC8される。
図68は、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって自車Cの外部から情報を得ることで自車の前方の車両までの距離を検出している。
まず、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって発信される外部情報信号を自車Cが受信SC9する。受信した信号を演算手段4のコンピュータで解析することで、先行車の位置情報を示す信号の抽出SC10を行なう。次に自車の位置検出SC11を行なう。検出された自車と先行車の位置によって自車と先行車の距離は算出SC12される。
図69に制御された配光の様子を示している。図69のH0は、本実施形態での制御をしない場合におけるランプ1の照射エリアを示し、図69のH3は、本実施形態での制御をした場合におけるランプ1の照射エリアを示している。
このように、、図69のH0では、視点誘導距離が本来視認させるべき位置からずれてくるが、図69のH3では、運転者に本来視認させるべき先行車位置に誘導することができ、視認性を大幅に向上させることができる。
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態について説明する。
第6実施形態は自車の前方に移動障害物が存在しているような場合についての例である
照明装置を搭載する車両C等の構成は第1実施形態と同一なので、重複した説明は省略する。
図70はシステム全体の処理の流れを示している。
まず処理が開始されるとシステムの稼働判断S1が行なわれ、配光制御が可能な状況か否かを判断する。次に車両の旋回半径の検出処理S2を行ない、視点誘導距離設定処理S3を行なう。次に車両前方に存在する移動障害物の検出処理SFを行ない、車両前方に移動障害物が検出されればSGYES、移動障害物までの距離の算出処理SHを行なう。車両前方に移動障害物が検出されなければSGNO、配光制御処理S4を行なう。視点誘導距離設定処理S3で設定された視点誘導距離Lsと移動障害物までの距離の算出処理SHで算出された移動障害物までの距離を比較S1して、視点誘導距離Lsより移動障害物までの距離の方が小さければSIYES、移動障害物までの距離を視点誘導距離Lsとして再設定SJし、配光制御処理S4を行なう。視点誘導距離Lsより移動障害物までの距離の方が大きければSINO、配光制御処理S4を行なう。
システムの稼働判断S1、車両の旋回半径の検出処理S2、視点誘導距離設定処理S3、配光制御処理S4の処理に関しては第1実施形態と同一なので、説明は省略する。
次に移動障害物検出処理SFを、図71,図72,図73のフローチャートを用いて三通り説明する。
本実施形態では移動障害物の例として歩行者の検出について説明する。
図71は、自車C1に取り付けられている前方の道路状況を撮影するカメラ100から取り込まれた画像を画像処理して自車の前方に歩行者を検出している。
まず、カメラ100から画像を取り込みSF1を行なう。このときのカメラは歩行者の体温に反応しやすく赤外線カメラを用いてもよい。取り込んだ画像を演算手段4のコンピュータで画像処理を行ない、画像内部に人影の抽出SF2を行なう。人影が抽出されればSF3YES、自車Cの前方に歩行者が存在していると検出SF4され、図70の歩行者は存在するかの判断処理SGへ移る。人影が抽出されなければSF3NO、自車Cの前方に歩行者は存在していないと検出SF5され、図70の歩行者は存在するかの判断処理SGへ移る。
図72は、自車Cに取り付けられているレーザーレーダ装置200によって自車の前方に歩行者を検出する方法である。
まず、レーザーレーダ装置200から前方に向けてレーザー波を発射SF6する。発射されたレーザー波が歩行者によって反射し戻ってくる再帰波を検出SF7する。再帰波が検出されればSF8YES、図70の歩行者は存在するかの判断処理SGへ移る。再帰波が検出されなければSF8NO、自車C1の前方に歩行者が存在していないと検出SF5され、図70の歩行者は存在するかの判断処理SGへ移る。
図73は、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって自車Cの外部から情報を得ることで自車の前方に歩行者を検出している。
まず、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって発信される外部情報信号を自車Cが受信SF9する。受信した信号を演算手段4のコンピュータで解析することで、歩行者の存在を示す信号の検出SF10を行なう。先行車の存在を示す信号が抽出すればSF11YES、自車C1の前方に歩行者が存在していると検出SF4され、図70の歩行者は存在するかの判断処理SGへ移る。先行車の存在を示す信号が抽出されなければSF11NO、自車C1の前方に歩行者が存在していないと検出SF5され、図70の歩行者は存在するかの判断処理SGへ移る。
次に前方車両までの距離の検出SHを、図74,図75,図76のフローチャートを用いて三通り説明する。
本実施形態では、移動障害物の例として歩行者までの距離の検出について説明する。
図74は、自車Cに取り付けられている前方の道路状況を撮影するカメラ100から取り込まれた画像を画像処理して自車の前方の歩行者までの距離を検出している。
まず、カメラ100から画像を取り込みSH1を行なう。このときのカメラは歩行者の体温に反応しやすく赤外線カメラを用いてもよい。取り込んだ画像を演算手段4のコンピュータで画像処理を行ない、画像内部に人影の抽出SH2を行なう。抽出された人影の画像上の幅を計測SH3する。計測された画像上の人影の幅と人物の実幅とカメラ100の画角によって自車と歩行者との距離は算出SH4される。なお、人物の実幅は個々人によって異なってくるが、実際の処理上は道路設計時に用いる人物の幅、0.75m程度で固定してもさほど問題はない。
図75は、自車Cに取り付けられているレーザーレーダ装置200によって自車の前方の歩行者までの距離を検出している。
まず、レーザーレーダ装置200から前方に向けてレーザー波を発射SH5する。発射されたレーザー波が歩行者によって反射し戻ってくる再帰波を検出SH6する。レーザ波を発射してから再帰波が戻ってくるまでの時間を計測SH7する。レーザ波が空気中を伝播する速度は一定値であるので、計測された再帰波が戻ってくるまでの時間によって自車と歩行者との距離は算出SH8される。
図76は、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって自車Cの外部から情報を得ることで自車の前方の歩行者までの距離を検出している。
まず、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって発信される外部情報信号を自車Cが受信SH9する。受信した信号を演算手段4のコンピュータで解析することで、歩行者の位置情報を示す信号の抽出SH10を行なう。次に自車の位置検出SH11を行なう。検出された自車と歩行者の位置によって自車と先行車との距離は算出SH12される。
図77に制御された配光の様子を示している。図77のH0は、本実施形態での制御をしない場合におけるランプ1の照射エリアを示し、図77のH4は、本実施形態での制御をした場合におけるランプ1の照射エリアを示している。
このように、図77のH0では、視点誘導距離が本来視認させるべき位置からずれてくるが、図77のH4では、運転者に本来視認させるべき歩行者位置に誘導することができ、視認性を大幅に向上させることができる。
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態について説明する。
第7実施形態は自車の前方に横断歩道が存在するような場合についての例である。
照明装置を搭載する車両C等の構成は第1実施形態と同一なので、重複した説明は省略する。
図78はシステム全体の処理の流れを示している。
まず処理が開始されるとシステムの稼働判断S1が行なわれ、配光制御が可能な状況か否かを判断する。次に車両の旋回半径の検出処理S2を行ない、視点誘導距離設定処理S3を行なう。次に車両前方に存在する横断歩道の検出処理SFを行ない、車両前方に横断歩道が検出されればSGYES、横断歩道までの距離の算出処理SHを行なう。車両前方に横断歩道が検出されなければSGNO、配光制御処理S4を行なう。視点誘導距離設定処理S3で設定された視点誘導距離Lsと横断歩道までの距離の算出処理SHで算出された横断歩道までの距離を比較SIして、視点誘導距離Lsより横断歩道までの距離の方が小さければSIYES、横断歩道までの距離を視点誘導距離Lsとして再設定SJし、配光制御処理S4を行なう。視点誘導距離Lsより横断歩道までの距離の方が大きければSINO、配光制御処理S4を行なう。
システムの稼働判断S1、車両の旋回半径の検出処理S2、視点誘導距離設定処理S3、配光制御処理S4の処理に関しては第1実施形態と同一なので、説明は省略する。
車両前方の横断歩道の有無の検出処理SKを、図79,図80,図81のフローチャートを用いて三通り説明する。
図79は、自車Cに取り付けられている前方の道路状況を撮影するカメラ100から取り込まれた画像を画像処理して横断歩道の有無を検出している。
まず、カメラ100から画像を取り込みSK1を行なう。取り込んだ画像を演算手段3のコンピュータで画像処理を行ない、横断歩道の抽出SK2を行なう。
横断歩道が抽出されればSK3YES、横断歩道ありと検出SK4され、図78の横断歩道は存在するかの判断処理SLへ移る。横断歩道が抽出されなければSK3NO、横断歩道なしと検出S5され、図78の横断歩道は存在するかの判断処理SLへ移る。
図80は、車両の位置を特定し、特定した車両位置より地図情報から横断歩道の有無を検出している。
まず、車両の位置を検出する処理S254を行ない、車両位置の緯度経度を情報を地図データベースと照合し車両前方の横断歩道の有無情報を地図データベースから抽出SK6する。
抽出された横断歩道の有無情報から横断歩道が抽出されればSK7YES、横断歩道ありと検出SK4され、図78の横断歩道は存在するかの判断処理SLへ移る。抽出された横断歩道の有無情報から横断歩道が抽出されなければSK7NO、横断歩道なしと検出SK5され、図78の横断歩道は存在するかの判断処理SLへ移る。
図81は、自車Cと道路インフラとの大の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって自車Cの外部から情報を得ることで横断歩道の有無を検出している。
まず、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって発信される外部情報信号を自車Cが受信SK8する。受信した信号を演算手段4のコンピュータで解析することで、車両前方の横断歩道の有無情報を示す信号の抽出SK9を行なう。
抽出された横断歩道の有無情報から横断歩道が抽出されればSK10YES、横断歩道ありと検出SK4され、図78の横断歩道は存在するかの判断処理SLへ移る。抽出された横断歩道の有無情報から横断歩道が抽出されなければSK10NO、横断歩道なしと検出SK5され、図78の横断歩道は存在するかの判断処理SLへ移る。
次に、車両前方の横断歩道の有無の検出処理SMを、図82,図83,図84のフローチャートを用いて三通り説明する。
図82は、自車Cに取り付けられている前方の道路状況を撮影するカメラ100から取り込まれた画像を画像処理して横断歩道までの距離を測定している。
まず、カメラ100から画像を取り込みSM1を行なう。取り込んだ画像を演算手段4のコンピュータで画像処理を行ない、横断歩道の抽出SM2を行なう。
抽出された横断歩道位置での画像上の車線幅を検出SM2する。2本の白線は、路面上で平行であり、かつ車線幅も一定であると仮定すると実車線幅と画像上の車線幅とカメラ100の画角から検出された位置までの実距離を算出SM4することができる。なお、実車線は道路によって異なってくるが、おおむね車線幅は2.5mから3.5mの範囲に存在していることを考えると実際の処理上は3m程度で固定してもさほど問題はない。もし、正確な実車線幅が必要であれば、地図データベースと照合するなどして実車線幅を決定することができる。
図83は、車両の位置を特定し、特定した車両位置より地図情報から横断歩道までの距離を測定している。
まず、車両の位置を検出する処理S254を行ない、車両位置の緯度経度を情報を地図データベースと照合し車両前方の横断歩道の距離情報を地図データベースから抽出SM5する。
図84は、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって自車Cの外部から情報を得ることで横断歩道までの距離を測定している。
まず、自車Cと道路インフラとの間の道路自動車間や自車Cと自車C以外の他の車両との間の情報伝達手段によって発信される外部情報信号を自車Cが受信SM6する。受信した信号を演算手段4のコンピュータで解析することで、車両前方の横断歩道までの距離情報を示す信号の抽出SM7を行なう。
図85に制御された配光の様子を示している。図85のH0は、本実施形態での制御をした場合におけるランプ1の照射エリアを示し、図85のH5は、本実施形態での制御をした場合におけるランプ1の照射エリアを示している。
このように、図85のH0では、視点誘導距離が本来視認させるべき位置からずれてくるが、図85のH5では、運転者に本来視認させるべき車両前方の横断歩道位置に誘導することができ、視認性を大幅に向上させることができる。