JP2005113481A - 免震柱脚構造 - Google Patents

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【課題】 コンクリート基礎に対する鉄骨柱等の柱脚構造を、従来の積層ゴム式免震装置のような高価な部品を新たに使用することなく、安価で、高強度で、かつ、耐用年数の長い免震機能を持たせる。
【解決手段】 コンクリート基礎1の上側に柱2のベースプレート4を水平方向滑動可能に載置し、ばね鋼製の複数の線材38を棒状に束ねてなるアンカー部材27を、コンクリート基礎1内のアンカーフレーム10に連結すると共に撓み可能にコンクリート基礎から上方に突出させ、アンカー部材27の上端部を、アンカー部材27の弾性力に抗してベースプレート4と一体的に移動可能にベースプレート4に連結する。ばね鋼線材38としては、ピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線等が含まれる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、コンクリート基礎の上に鉄骨柱又は鉄筋コンクリート柱等の柱の底部を結合する柱脚構造に関し、特に免震機構を備えた柱脚構造に関する。
コンクリート基礎の上に柱を設置する柱脚構造において、従来、耐震構造を持たせるために、コンクリート基礎に埋め込まれたアンカー鉄筋を上方に突出させ、該アンカー鉄筋の上端部を柱のベースプレートにボルト等で結合した構造が一般に採用されている(特許文献1等)。
前記のように剛直にコンクリート基礎に柱を結合する構造に対して、昨今では、地震等による倒壊をより効果的に防ぐために免震機構を備えた柱脚構造が多く採用されてきており、コンクリート基礎の上に振動を減衰するための特別の免震装置を設置し、該免震装置の上に柱の底部を設置してある。免震装置としては、たとえば、鉛柱と積層ゴムを組み合せ、ゴムの弾性を利用して振動を吸収する構成(特許文献2等)あるいはシリンダ及びピストン等からなる減衰器を利用した構成(特許文献3等)がある。
特開平9−310353号公報 特開2002−371723号公報 特開2003−176640号公報
柱底部とコンクリート基礎の間に、積層ゴムを利用した免震装置を配置する場合には、耐用年数の長い高価なゴム材料を使用する必要があるが、コスト高の要因になると共に、耐用年数にも限界があり、メンテナンスにも手間がかかる。シリンダ及びピストンからなる減衰器等を利用した免震装置を新たに設置する場合にも、部品コストが高くなると共に、メンテナンスにも手間がかかる。
本発明の目的は、コンクリート基礎に柱底部を結合するためのアンカー部材を工夫することにより、従来の積層ゴム式免震装置のような高価な部品を新たに使用することなく、安価で、高強度で、かつ、耐用年数の長い免震機能を持たせるようにすることである。
上記課題を解決するために本願請求項1記載の免震柱脚構造は、コンクリート基礎の上に柱底部を水平方向滑動可能に載置し、ばね鋼製の複数の線材を束ねてなるアンカー部材を、コンクリート基礎内のアンカーフレームに連結すると共に撓み可能にコンクリート基礎から上方に突出させ、アンカー部材の上端部を、アンカー部材の弾性力に抗して柱と一体的に水平方向移動可能に柱底部に連結してある。ばね鋼線材としては、ピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線又はオイルテンパー線等、ばね性能を高めたものが利用される。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の免震柱脚構造において、相対的に滑動可能に重ねた上下一対の滑り支承部材を、コンクリート基礎の上面と柱底部との間に介在させ、上側滑り支承部材を柱底部に、下側滑り支承部材をコンクリート基礎に固着し、両滑り支承部材には、前記アンカー部材が撓み可能に挿通される空間を形成してある。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の免震柱脚構造において、円錐面を有する締付金具の挿通孔にアンカー部材の上端部を挿通してナットにより締結し、柱底部には円錐受面を有する受け台を設け、締付金具の円錐面を前記受け台の円錐受面に当接し、アンカー部材のナットを締め付けることにより前記円錐面を円錐受面に押し付けてある。
(1)コンクリート基礎に柱底部を連結するアンカー部材として、複数のばね鋼製線材を束ねた部材を用い、該アンカー部材の弾性を利用して柱に免震機能を付与しているので、従来のように積層ゴム等を内蔵した特別の免震装置が不要となり、免震機能を備えるための部品コストが安くなると共に、柱施工時の工期も短くなる。
(2)複数のばね鋼製線材を束ねてアンカー部材としているので、振動により柱の移動と共にアンカー部材が撓んだ場合、単一の棒材等を利用する場合に比べて、荷重が各線材に分散することにより、アンカー部材全体として無理なく変形し(撓み)、強度を高めることができると共に、大きな振動に対して十分な免震機能を発揮できる。
(3)相対的に滑動可能に重ねた上下一対の滑り支承部材により、コンクリート基礎と柱底部との間を滑り支承していると、簡素な構造で高い耐圧性を維持でき、施工作業も簡単である。また、撓み可能なアンカー部材の撓み空間を簡単に確保することもできる。
(4)アンカー部材の上端部に連結した締付金具の円錐面とベースプレート等の柱底部に設けた受け台の円錐受面とのテーパー嵌合により、アンカー部材と柱底部を連結していると、アンカー部材を締付金具に締結することにより、柱載置位置に多少の誤差があっても、ナット締付時に自動的に位置修正できる。
(5)締付金具に複数の挿通孔を形成して、各挿通孔にそれぞれアンカー部材の線材を挿通すると、アンカー部材と締付金具との間で高い結合強度を得ることができる。
[柱脚の全体構造]
図1は、コンクリート基礎1の上に建築物の鉄骨柱2を設置する柱脚構造に本発明を適用した例であり、鉄骨柱2の下端には裏当て金3等を介してベースプレート4が溶接されている。コンリート基礎1は、捨てコンクリート5上に地中梁(図示せず)と一体にコンクリート成形されており、成形後は地中に埋め戻される。コンクリート基礎1の上面にはモルタル層(後詰めモルタル層)7が形成され、該モルタル層7の上側には上下一対の厚い鉄板製の滑り支承部材10、11を介してベースプレート4が載置されている。
上下の滑り支承部材10、11は相対的に水平方向滑動可能に重ねられており、下側の滑りプレート11はボルト(図1では中心線で表示)13によりコンクリート基礎1の上側にモルタル層7を介して固着され、上側滑り支承部材10は溶接により柱鉄骨2のベースプレート4に固着されている。
各滑り支承部材10、11には、それぞれ上下に対応する位置に複数のアンカー部材挿通空間15、16が形成されており、上側滑り支承部材10のアンカー部材挿通空間15は下方に行くに従いテーパー状に拡張し、下側滑り支承部材11のアンカー部材挿通空間16は上方に行くに従いテーパー状に拡張している。
コンリート基礎1内には、捨てコンクリート5上に固定されたアンカーフレーム20が埋め込まれており、アンカーフレーム20は、4本あるいはそれ以上の脚部材21と、該脚部材21の上端部に井桁状に溶接された複数本の水平部材22等から構成されており、水平部材22には定着金具25を介して複数束のアンカー部材(線材結束体)27が固着されると共に、該アンカー部材27を収納するアンカー部材保護管26が固着されている。
アンカー部材27及び保護管26はコンクリート基礎1内を略垂直上方に延び、保護管26はモルタル層7の上端まで至り、アンカー部材27は保護管26の上端開口からさらに上方に延び、下側滑り支承部材11の挿通空間16、上側滑り支承部材10の挿通空間15、ベースプレート4の挿通孔30及び受け台32の挿通孔を通過してベースプレート4の上方に突出し、締付金具31に連結されている。締付金具31はベースプレート4に溶接された前記受け台32に当接し、ベースプレート4を下方に押え付けている。
コンクリート基礎1の外周面には、複数の付着鉄筋35を突設した補強鉄板36が貼り付けられており、これによりコンクリート基礎1の強度を高めると共に、コンクリート基礎1のコンパクト化を図っている。
[免震に関する詳細構造]
図2はアンカー部材27の上部付近の拡大縦断面図であり、地震等によりコンクリート基礎1に対して鉄骨柱2が一定水平距離L1だけ相対的に滑った時の状態を示している。
この図2において、前記下側滑り支承部材11を固定するボルト13は、コンクリート基礎1の上端部にラッパ状のボス17を介して上方突出状に植設されており、上端部に螺着したナット14により下側滑り支承部材11を固定している。上側滑り支承部材10の下端面と、下側滑り支承部材11の上端面には、たとえばオイルレスメタルプレート又はテフロン(登録商標)加工プレート等の摩擦係数の小さい滑りプレート40、41がそれぞれ貼り付けられており、上側の滑りプレート40は上側滑り支承部材10の下端面よりも少し下方に張り出し、下側の滑りプレート41は下側滑り支承部材11の上端面よりも少し上方に張り出し、両滑りプレート40、41同志が滑り可能に接触している。また、上側の滑りプレート40はアンカー延び吸収用のゴム板42を介して上側滑り支承部材10に貼り付けられており、上記ゴム板42の圧縮により、ベースプレート4の急激な移動時におけるアンカー部材27への衝撃を吸収するようになっている。
アンカー部材27は、複数(たとえば数本〜数十本)のばね鋼製の線材38を複数の拘束金物39あるいは帯鋼により束ね、棒状に構成したものであり、自然状態ではばね鋼の復元力により図1のように垂直な直線状に維持されており、所定以上の横荷重(水平荷重)に対しては線材38自体の弾性変形範囲内で図2のように撓み、横荷重を除くことにより元の直線状態に復元するようになっている。拘束金物39はアンカー部材27の長さ方向に間隔をおいて複数個配設されている。
アンカー部材27のばね鋼製線材38としては、たとえばピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線、オイルテンパー線等が含まれ、好ましくは冷間加工及び熱処理によってばね性能を高めたもの等が用いられ、線材38の弾性力はその弾性変形能によるもので、負荷が除去された時に一切の永久変形または塑性変形を示すことなしに、たとえば図2のL1より大きな一定の範囲内で負荷を与えることができるものである。
締付金具31は上端面が部分球面状に形成されると共に、下面部分には円錐面31aが形成されており、該円錐面31aは前記受け台32に形成された円錐受面32aに当接し、テーパー嵌合している。締付金具31内には図3に示すように線材38の数に対応した数の線材挿通孔33が形成されており、各線材挿通孔33に、図2に示すように各線材38が挿通されている。各線材挿通孔33は上方に行くにしたがい互いに離れるように分散しており、各線材38の上端部は線材挿通孔33から上方に突出すると共にそれぞれナット34が螺着されている。各ナット34を締め付けることにより、円錐面31aを円錐受面32aに圧接し、それによりベースプレート4を滑り支承部材10、11を介してコンクリート基礎1の上面に押付固定するようになっている。
保護管26とアンカー部材27の間にはグリース43が充填されている。
図1に戻り、アンカー部材27の下端も、前記上端の締付金具31と同様に、定着金具25に形成された線材挿通孔に各線材38を挿通し、それぞれナットにより固定してあり、定着金具25自体は溶接によりアンカーフレーム20の水平部材22に固着されている。
[柱脚工法の例]
図1〜図3に示す柱脚を構築するための工法の一例を説明する。
(1)図1において、コンクリート基礎1のコンクリート成形前に、アンカーフレーム20を設置しておき、該アンカーフレーム20にアンカー部材保護管26を固着し、該保護管26内に挿通されたアンカー部材27の下端部を、アンカーフレーム20の定着金具25に締結しておく。
(2)付着鉄筋35を有する補強鉄板36を型枠代わりに組み立て、補強鉄板36内にコンクリートを流し込むことにより、地中梁(図示せず)と一体にコンクリート基礎1を成形する。
(3)コンクリート基礎1の上端面(天端面)の略中央に、鏡餅形状の中央モルタル層7aを形成する。そして、中央モルタル層7aの上側に滑り支承部材10、11を載せると共に、各アンカー部材27の上端部を各空間16、15に挿通して上方に突出させる。
(4)次に、鉄骨柱2をたとえばクレーン等で吊り下げ、ベースプレート4の各挿通孔30にアンカー部材27を挿通させると共に、図2のように各線材38を締付金具31の線材挿通孔33に挿通し、それぞれナット34を螺着する。
(5)各鉄骨柱2に地上梁を組み付け、鉄骨柱2の垂直度及び梁鉄骨の水平度を調節し、ナット34をきつく固定する。この時、締付金具31の円錐面31aを受け台32の円錐受面32aに圧接するので、鉄骨柱2の載置位置に多少の誤差があっても、テーパー嵌合によるガイド作用により、鉄骨柱2を所定の位置に正確に固定できる。
(6)上記調節後、コンクリート基礎1と下側滑り支承部材11の隙間に無収縮モルタルを充填し、モルタル層7を完成させる。
[作用]
通常、図1のようにアンカー部材27は自らの弾性復元力により直線状態(直立状態)となっており、アンカー鉄筋と同様の役割を果たしている。地震等により相対的にコンクリート基礎1に対して鉄骨柱2に荷重がかかると、鉄骨柱2及び上側滑り支承部材10は、アンカー部材27の弾性力に抗し、コンクリート基礎1及び下側滑り支承部材11に対して相対的に水平方向に移動する。アンカー部材27は複数のばね鋼製線材38を互いに並行状態に結束してあるので、前記横荷重による線材38の撓みは、図2に示すように緩やかなS字形となり、全線材38の撓み量は略同程度となり、各線材38に生じる張力は略同じ大きなとなる。
アンカー部材27は、ベースプレート4がいずれの方角に移動知る場合でも、それに応じて前記のように撓み可能であり、コンクリート基礎1に対する鉄骨柱2の連結状態を維持しつつ、鉄骨柱2の倒壊を防ぐ。
横荷重が除かれると、アンカー部材27の弾性復元力により、図1のように鉄骨柱2はコンクリート基礎1に対して正常な位置に復帰する。
[その他の実施の形態]
前記実施の形態は、鉄骨柱の柱脚構造を説明したが、鉄筋コンクリート柱あるいは鉄骨鉄筋コンクリート柱等の柱脚構造に適用することも可能である。
本発明を適用した鉄骨柱の柱脚部分の縦断面図である。 図1の矢印II部分の拡大図である。 締付金具の平面図である。
符号の説明
1 コンクリート基礎
2 柱鉄骨
4 ベースプレート
10、11 滑り支承部材
15、16 アンカー部材挿通用空間
20 アンカーフレーム
27 アンカー部材
31 締付金具
38 ばね鋼線材
39 拘束金具

Claims (4)

  1. コンクリート基礎の上に柱を水平方向滑動可能に載置し、ばね鋼製の複数の線材を束ねてなるアンカー部材を、コンクリート基礎内のアンカーフレームに連結すると共に撓み可能にコンクリート基礎から上方に突出させ、アンカー部材の上端部を、アンカー部材の弾性力に抗して柱と一体的に水平方向移動可能に柱底部に連結してあることを特徴とする免震柱脚構造。
  2. 相対的に滑り可能に重ねた上下一対の滑り支承部材を、コンクリート基礎の上面と柱底部との間に介在させ、上側滑り支承部材を柱底部に、下側滑り支承部材をコンクリート基礎に固着し、両滑り支承部材には、前記アンカー部材が撓み可能に挿通される空間を形成してあることを特徴とする請求項1記載の免震柱脚構造。
  3. 円錐面を有する締付金具の挿通孔にアンカー部材の上端部を挿通し、柱底部には円錐受面を有する受け台を設け、締付金具の円錐面を受け台の円錐受面に当接し、アンカー部材の上端部に螺着したナットを締め付けることにより、前記円錐面を円錐受面に押し付けていることを特徴とする請求項1又は2記載の免震柱脚構造。
  4. 前記締付金具の挿通孔は、アンカー部材の各線材に対応して複数形成され、各挿通孔にそれぞれアンカー部材の線材を挿通してあることを特徴とする請求項3記載の免震柱脚構造。
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