JP2005112802A - Ptp1b阻害剤 - Google Patents

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JP2005112802A
JP2005112802A JP2003350190A JP2003350190A JP2005112802A JP 2005112802 A JP2005112802 A JP 2005112802A JP 2003350190 A JP2003350190 A JP 2003350190A JP 2003350190 A JP2003350190 A JP 2003350190A JP 2005112802 A JP2005112802 A JP 2005112802A
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Toshiyoshi Umekawa
俊義 梅川
Yuko Ariza
夕子 有座
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Ono Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

【課題】 PTP1B介在性疾患の予防および/または治療剤を提供すること。
【解決手段】 一般式(I)
【化1】
Figure 2005112802

(式中、RはH、アルキル;Qは置換基を有していてもよいアルキレン基、または置換基を有していてもよいベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン環;RはH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、Cyc1、または置換されたアルキル;Gは置換基を有していてもよいアルキレンまたは置換基を有していてもよいアルケニレン;B環は置換基を有していてもよいベンゼン、ナフタレンまたはテトラヒドロナフタレン;Eは主鎖の原子数1−8のスペーサー;Aは環状基;nは0または1;RはHまたは置換基;mは1−7の整数を表わす。)で示される化合物、その塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを有効成分としてなるPTP1B阻害剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、プロテインチロシンホスファターゼ1B阻害剤に関する。より詳しくは、一般式(I)
Figure 2005112802
(式中、全ての記号は後記と同じ意味を表わす。)で示される化合物、その塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを有効成分としてなるプロテインチロシンホスファターゼ1B阻害剤に関する。
近年、生活習慣の欧米化に伴い肥満を始めとする生活習慣病と呼ばれる疾患が、社会的に大きな問題となっている。生活習慣病は、食習慣、運動習慣、喫煙、飲酒等の生活習慣がその発症や進行に関与する疾患群とされており、例えば、肥満症、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、循環器疾患、大腸癌、歯周病、高血圧、肺扁平上皮がん、慢性気管支炎、閉塞性肺疾患、肺気腫、アルコール性肝疾患またはアルコール性膵炎等が挙げられる。その中でも特に注目されている疾患の1つが糖尿病である。糖尿病は、慢性的に血糖値が高い状態となることを特徴とする疾患である。慢性的な高血糖状態は、様々な疾患へとつながり、網膜症、腎症、神経障害等の合併症を引き起こす。糖尿病は、膵β細胞の大部分に破壊がおこりインスリン分泌が欠乏してインスリンの絶対的な不足が生じるI型糖尿病、インスリンの分泌低下や骨格筋、肝臓、脂肪組織でのインスリン抵抗性によってインスリンの相対的な不足が生じるII型糖尿病に大きく分類される。現在、II型糖尿病患者が急増しており、糖尿病患者の90%以上を占めている。しかし、従来用いられている糖尿病治療薬であるスルホニルウレア系糖尿病治療薬、ビグアナイド系糖尿病治療薬、α−グルコシダーゼ阻害薬はその効果が充分でなかったり、低血糖、乳酸アシドーシス、下痢、便秘や嘔吐等の問題がある。また最近、インスリン抵抗性改善薬としてチアゾリジン系薬剤の開発がなされているが、これも作用発現までに数日を要すること、ノンレスポンダーの存在、体重増加等の課題が残されている上に、毒性も問題視されており、未だ充分な糖尿病治療薬はない。
前述したように、糖尿病の発症にはインスリンが深くかかわっている。インスリンは、膵β細胞でつくられる血糖調節に関わるホルモンである。分泌されたインスリンは、細胞膜上に存在するインスリン受容体に結合すると、チロシンキナーゼの作用を受けて、インスリン受容体の細胞内ドメインに存在するチロシン残基がリン酸化される。このチロシンリン酸化はチロシンキナーゼと、逆にこれを脱リン酸化するチロシンホスファターゼにより調節を受けており、この両者のバランスにより多様な細胞機能が発現されると考えられている。よって、このバランスが破綻してチロシンホスファターゼ活性が異常亢進すると、リン酸化されたチロシンの脱リン酸化が亢進し、インスリン作用が低下、つまりインスリン抵抗性へと至る。
現在、種々のチロシンホスファターゼが知られているが、インスリンシグナル伝達に関与するチロシンホスファターゼとして、肝臓、脂肪細胞、骨格筋などに存在するプロテインチロシンホスファターゼ(PTP)1Bがあり、これはインスリンシグナル伝達の減弱因子の1つとして考えられている。また、このPTP1Bは脂肪細胞から分泌されるペプチドホルモンであるレプチンのシグナル伝達にも関与している。レプチンは、強い摂食抑制とエネルギー産生の亢進を引き起こす作用を持ち、過食や肥満抑制に関与するホルモンである。レプチンシグナルはインスリンシグナルと同様、レプチン受容体の細胞内ドメインにおけるリン酸化がチロシンキナーゼとチロシンホスファターゼにより調節を受けている。よって、チロシンホスファターゼ活性が異常亢進することによって、リン酸化されたチロシンの脱リン酸化が亢進し、レプチン抵抗性へと至る。最近、PTP1Bノックアウトマウスは、正常に発育するが、インスリン感受性の増大、エネルギー代謝の亢進、白色脂肪組織重量の減少を呈することが報告された[Molecular and Cellular Biology, 20(15), 5479-5489 (2000)]。
すなわち、PTP1Bを阻害すると、PTP1Bの活性化による脱リン酸化作用が阻害され、インスリンおよびレプチンのシグナル伝達が増強されるので、インスリン抵抗性およびレプチン抵抗性による糖尿病、肥満症および高脂血症等が改善されると考えられる。以上のことから、PTP1B阻害作用を有する薬剤はホスファターゼ阻害によって細胞内シグナル伝達を正常化するという、これまでの糖尿病治療薬にはない新規な作用を有するため、既存の糖尿病治療薬が抱える問題点を回避した生活習慣病、特に糖尿病、肥満症および高脂血症の治療薬となり得る可能性がある。
WO03/048140号明細書には、一般式(A)
Figure 2005112802

(式中、Wは硫黄原子または酸素原子を表わし、Rは(1)−COOR7A、(2)−X1A−A1A−COOR7A、(3)テトラゾリルを表わし、R1A、R2A、R3AおよびR4Aはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換されていてもよい低級シクロアルキルアルキルオキシ、置換されていてもよいアラルキルオキシ等を表わし、Aは−(CHmA−X−(基中、Xは−N(R8A)−、−C(R9A)(R10A)−、−CO−または−CO−N(R8A)−を表わし、mは0または1−3の整数を表わし、Bはアリールまたは芳香族ヘテロ環を表わし、R5Aは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ、シアノ、ニトロ、低級ハロアルキル基等を表わし、R6Aは−(Y)slA−(A2AsA−Zを表わし、slおよびsはそれぞれ独立して0または1を表わし、Yは−O−、−S(O)tA−、−N(R13A)−、−N(R14A)−CO−、−N(R14A)−SO−、−SO−N(R14A)−、−C(R18A)(R19A)−または−CO−を表わし、A2Aは低級シクロアルキルで置換されていてもよい低級アルキレン基、Zは低級シクロアルキル基、アリール、置換されていてもよい芳香族ヘテロ環、インダニルまたはピペラジニルを表わす。)で示される化合物もしくはそのプロドラッグが、PTP1B阻害活性を有する旨の記載がある(特許文献1参照)。
一方、特開平2−218654号明細書には、一般式(B)
Figure 2005112802

(式中、Rは一般式
Figure 2005112802
(式中、R1Bは水素原子、C1−8アルキル基、C1−8アルコキシ基、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表わし、lは1−5の整数を表わし、Aは員数が4−10である炭素環またはヘテロ環を表わし、Yは−O−AlK−O−、−AlK−O−、または−AlK−(各式中、AlKはC1−8アルキレン基を表わす。)で示される基を表わし、Bは員数が4−10である単環の炭素環またはヘテロ環を表わし、R2Bは水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基またはC2−5アルカノイル基を表わし、mは1−4の整数を表わす。)で示される基を表わし、Zは単結合、C1−6アルキレン基またはC2−6アルケニレン基を表わし、R3Bは水素原子、C1−4アルキル基、フェニル基またはフェニル基で置換されるC1−4アルキル基を表わし、R4Bは水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、水酸基またはニトロ基を表わし、nは1−4の整数を表わす。)で示される化合物が逆転写酵素阻害剤(特許文献2参照)として開示されている。
また、WO02/092068号明細書には、一般式(C)
Figure 2005112802
(式中、R1CはC1−8アルキル基、C1−8アルコキシ、ハロゲン原子、ニトロまたはトリフルオロメチルを表わし、A環はC5−7の単環炭素環または1−2個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む5−7員の単環ヘテロ環を表わし、Eは−CH−、−O−、−S−、または−NR6C−を表わし、R2Cは、C1−8アルキル基、C1−8アルコキシ、ハロゲン原子、ニトロまたはトリフルオロメチルを表わし、R3Cは水素原子またはC1−8アルキル基を表わし、R4Cは水素原子またはC1−8アルキル基を表わすか、R2CとR4Cは一緒になって、−CH−CH−または−CH=CH−を表わし、Gは−CONR7C−、−NR7CCO−、−SONR7C−、−NR7CSO−、−CHNR7C−または−NR7CCH−を表わし、QはC1−4アルキレン基または
Figure 2005112802
基を表わし、
1C、J2C、J3CおよびJ4Cはそれぞれ独立して、炭素原子または窒素原子を表わし(ただし、窒素原子は2個以下である。)、R5CはC1−8アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フェニル、テトラゾリル、−OR9C、−SR10C、−COOR11C、−NR12C13C等を表わし、pは0または1−5の整数を表わし、qは4−6の整数を表わし、rは0または1−4の整数を表わし、sは0または1−4の整数表わす。)で示される化合物、それらのプロドラック体またはそれらの非毒性塩が、EDG−1アゴニストとして記載されている(特許文献3参照)。
国際公開第03/048140号パンフレット 特開平2−218654号公報 国際公開第02/092068号パンフレット
インスリン抵抗性による高血糖によって引き起こされる糖尿病、肥満症、高脂血症等の生活習慣病に対して、強力でかつ安全性の高い医薬品を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、一般式(I)で示される化合物が目的を達成することを見出した。すなわち、本発明は
(1)一般式(I)
Figure 2005112802
(式中、Rは水素原子またはC1−8アルキル基を表わし、
Qは置換基を有していてもよいC1−4アルキレン基、または置換基を有していてもよいベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジンもしくはピリダジン環を表わし、
は水素原子、C1−8アルキル基、C2−8アルケニル基、C2−8アルキニル基、Cyc1、または置換基であるCyc1、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基および保護されていてもよいメルカプト基から選ばれる基によって置換されたC1−8アルキル基、C2−8アルケニル基もしくはC2−8アルキニル基を表わし、
Cyc1は置換基を有していてもよいC5−7の単環炭素環または5−7員の単環複素環を表わし、
Gは置換基を有していてもよいC1−4アルキレン基または置換基を有していてもよいC2−4アルケニレン基を表わし、
B環は置換基を有していてもよいベンゼン、ナフタレンまたはテトラヒドロナフタレン環を表わし、
Eは主鎖の原子数1−8のスペーサーを表わし、Aは環状基を表わし、nは0または1を表わし、Rは水素原子または置換基を表わし、mは1−7の整数を表わす。ただし、Eが原子数1のスペーサーであり、nが0の時、Rは置換基を表わす。)で示される化合物、その塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを有効成分としてなるプロテインチロシンホスファターゼ1B阻害剤、
(2)Qが置換基を有していてもよいベンゼン環である(1)に記載の剤、
(3)Gが置換基を有していてもよいC1−4アルキレン基である(1)に記載の剤、
(4)プロテインチロシンホスファターゼ1B介在性疾患の予防および/または治療剤である(1)に記載の剤、
(5)プロテインチロシンホスファターゼ1B介在性疾患が生活習慣病である(4)に記載の剤、
(6)生活習慣病が、糖尿病、肥満症または高脂血症である(5)に記載の剤、
(7)(1)に記載のプロテインチロシンホスファターゼ1B阻害剤と、スルホニルウレア系糖尿病治療薬、ビグアナイド系糖尿病治療薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、速効型インスリン分泌促進薬、インスリン抵抗性改善薬、インスリン感受性増強薬、インスリン製剤、βアドレナリン受容体作動薬、DPP4阻害薬、グルカゴン様ペプチド受容体作動薬、末梢循環障害改善薬、アルドース還元酵素阻害薬、HMG−CoA還元酵素阻害薬、フィブラート系高脂血症治療薬、PPAR作動薬、リパーゼ阻害薬、MTP阻害薬、スクアレンシンセターゼ阻害薬、11βHSD阻害薬、コレステロール吸着薬、ACAT阻害薬、5−リポキシゲナーゼ阻害薬、胆汁酸吸収阻害薬、回腸Na/胆汁酸共輸送体阻害薬、LDL受容体活性化薬・発現増強薬、ニコチン酸製剤、EPA製剤、プロブコール製剤、その他の抗高コレステロール血症治療薬、中枢性食欲抑制薬、および選択的セロトニン受容体阻害薬から選ばれる1種または2種以上と組み合わせてなる医薬組成物、
(8)(1)に記載の化合物、その塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを特徴とするプロテインチロシンホスファターゼ1Bを阻害する方法、
(9)(1)に記載の化合物、その塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを特徴とするプロテインチロシンホスファターゼ1B介在性疾患の予防および/または治療する方法、
(10)プロテインチロシンホスファターゼ1B阻害剤を製造するための、(1)に記載の化合物、その塩、それらの溶媒和物、およびそれらのプロドラッグの使用、および
(11)プロテインチロシンホスファターゼ1B介在性疾患の予防および/または治療剤を製造するための、(1)に記載の化合物、その塩、それらの溶媒和物、およびそれらのプロドラッグの使用に関する。
本発明において、C1−8アルキル基とは直鎖状または分枝状のC1−8アルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基が挙げられる。
本発明において、C2−8アルケニル基とは直鎖状または分枝状の1−2個の二重結合を有するC2−8アルケニル基であり、例えば、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、ヘプタジエニル、オクテニル、オクタジエニル基が挙げられる。
本発明において、C2−8アルキニル基とは直鎖状または分枝状の1−2個の三重結合を有するC2−8アルキニル基であり、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘキサジイニル、ヘプチニル、ヘプタジイニル、オクチニル、オクタジイニル基が挙げられる。
本発明において、C1−4アルキレン基とは直鎖状または分枝状のC1−4アルキレン基であり、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、メチルエチレン、テトラメチレン、プロピルメチレン、イソプロピルメチレン、メチルプロピレン、エチルエチレン、ジメチルエチレン基が挙げられる。
本発明において、C2−4アルケニレン基とは直鎖状または分枝状の二重結合を1個有するC2−5アルキレン基であり、例えば、エテニレン、プロペニレン、メチルエテニレン、ブテニレン、ジメチルエテニレン基が挙げられる。
本発明において、C1−8アルコキシ基とは直鎖状または分岐状のC1−8アルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、プロピポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ基が挙げられる。
本発明において、C3−7シクロアルキル基とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基が挙げられる。
本発明において、ハロゲン原子とはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。
本発明において、「保護されていてもよい水酸基」とは、例えば、(1)置換基を有していてもよいC1−8アルキル基、(2)置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基、(3)置換基を有していてもよいC2−8アルキニル基、(4)置換基を有していてもよい環状基、(5)アシル基または(6)脱離能を有する保護基によって保護された水酸基か、もしくは保護されていない水酸基が挙げられる。ここでアシル基とは、(1)置換基を有していてもよいC1−8アルキルカルボニル基、(2)置換基を有していてもよいC2−8アルケニルカルボニル基、(3)置換基を有していてもよいC2−8アルキニルカルボニル基、(4)置換基を有していてもよい環状基で置換されたカルボニル基が挙げられる。また、脱離能を有する保護基としては、例えば、トリチル基、メトキシメチル(MOM)基、1−エトキシエチル(EE)基、メトキシエトキシメチル(MEM)基、2−テトラヒドロピラニル(THP)基、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基、アセチル(Ac)基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ベンジル(Bn)基、p−メトキシベンジル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、または2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基が挙げられる。また置換基を有していてもよいC1−8アルキル基によって保護された水酸基とは、置換基を有していてもよいC1−8アルコキシ基を意味する。
本発明において、「保護されていてもよいアミノ基」とは、下記の保護基1−2個によって保護されたアミノ基か、もしくは保護されていないアミノ基を表わす。アミノ基の保護基としては、(1)置換基を有していてもよいC1−8アルキル基、(2)置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基、(3)置換基を有していてもよいC2−8アルキニル基、(4)置換基を有していてもよい環状基、(5)アシル基、(6)置換基を有していてもよいC1−8アルキルスルホニル基(例えば、メシル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル等)、(7) 置換基を有していてもよい環状基で置換されたスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル等のC5−7炭素環スルホニル基、フリルスルホニル、チエニルスルホニル、ピリジルスルホニル等の5−7員複素環スルホニル等)、および(8)脱離能を有する保護基が挙げられる。ここでアシル基とは前記の「保護されていてもよい水酸基」中のアシル基と同じ基を意味する。また、脱離能を有する保護基としては、例えば、トリチル基、ベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エトキシカルボニル(Bpoc)基、トリフルオロアセチル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、ベンジル(Bn)基、p−メトキシベンジル基、ベンジルオキシメチル(BOM)基、または2−(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEM)基が挙げられる。
本発明において、「保護されていてもよいメルカプト基」とは、(1)置換基を有していてもよいC1−8アルキル基、(2)置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基、(3) 置換基を有していてもよいC2−8アルキニル基、(4)置換基を有していてもよい環状基、(5)アシル基または(6)脱離能を有する保護基によって保護されたメルカプト基か、もしくは保護されていないメルカプト基を表わす。ここでアシル基とは前記の「保護されていてもよい水酸基」中のアシルと同じ基を意味する。また、脱離能を有する保護基としては、例えば、トリチル基、ベンジル基、メトキシベンジル基、メトキシメチル(MOM)基、2−テトラヒドロピラニル(THP)基、ジフェニルメチル基、アセチル(Ac)基、またはアセトアミドメチル(Acm)基が挙げられる。
本発明において、環状基とは炭素環または複素環を表わす。
本発明において、炭素環とはC5−15の炭素環を表わす。C5−15の炭素環とはC5−15の不飽和単環、二環もしくは三環式炭素環、その一部または全部が飽和されている単環、二環もしくは三環式炭素環、またはスピロ結合した二環式炭素環および架橋した二環式炭素環を表わす。例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、ベンゼン、ペンタレン、パーヒドロペンタレン、アズレン、パーヒドロアズレン、インデン、パーヒドロインデン、インダン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、パーヒドロナフタレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、スピロ[4.4]ノナン、スピロ[4.5]デカン、スピロ[5.5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エン、アダマンタン、ノルアダマンタン環が挙げられる。
本発明において、複素環とは5−15員の複素環を表わす。5−15員の複素環とは、1−4個の窒素原子、1−2個の酸素原子および/または1−2個の硫黄原子を含有する5−15員の不飽和単環、二環もしくは三環式複素環、またはその一部または全部が飽和されている単環、二環もしくは三環式複素環を表わす。例えば、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アゼピン、ジアゼピン、フラン、ピラン、オキセピン、チオフェン、チオピラン、チエピン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、オキサジン、オキサジアジン、オキサゼピン、オキサジアゼピン、チアジアゾール、チアジン、チアジアジン、チアゼピン、チアジアゼピン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジチアナフタレン、インダゾール、キノリン、イソキノリン、キノリジン、プリン、フタラジン、プテリジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、クロメン、ベンゾオキセピン、ベンゾオキサゼピン、ベンゾオキサジアゼピン、ベンゾチエピン、ベンゾチアゼピン、ベンゾチアジアゼピン、ベンゾアゼピン、ベンゾジアゼピン、ベンゾフラザン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、カルバゾール、β−カルボリン、アクリジン、フェナジン、ジベンゾフラン、キサンテン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン、フェノキサジン、フェノキサチイン、チアンスレン、フェナントリジン、フェナントロリン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾリン、テトラゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、パーヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、パーヒドロジアゼピン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロオキセピン、テトラヒドロオキセピン、パーヒドロオキセピン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロチエピン、テトラヒドロチエピン、パーヒドロチエピン、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、ジヒドロイソオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、ジヒドロイソチアゾール、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、ジヒドロフラザン、テトラヒドロフラザン、ジヒドロオキサジアゾール、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジアジン、テトラヒドロオキサジアジン、ジヒドロオキサゼピン、テトラヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサゼピン、ジヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロオキサジアゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、ジヒドロチアジアゾール、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、ジヒドロチアジン、テトラヒドロチアジン、ジヒドロチアジアジン、テトラヒドロチアジアジン、ジヒドロチアゼピン、テトラヒドロチアゼピン、パーヒドロチアゼピン、ジヒドロチアジアゼピン、テトラヒドロチアジアゼピン、パーヒドロチアジアゼピン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、インドリン、イソインドリン、ジヒドロベンゾフラン、パーヒドロベンゾフラン、ジヒドロイソベンゾフラン、パーヒドロイソベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェン、パーヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロイソベンゾチオフェン、パーヒドロイソベンゾチオフェン、ジヒドロインダゾール、パーヒドロインダゾール、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、パーヒドロキノリン、ジヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、パーヒドロイソキノリン、ジヒドロフタラジン、テトラヒドロフタラジン、パーヒドロフタラジン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、パーヒドロナフチリジン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノキサリン、ジヒドロキナゾリン、テトラヒドロキナゾリン、パーヒドロキナゾリン、ジヒドロシンノリン、テトラヒドロシンノリン、パーヒドロシンノリン、ベンゾオキサチアン、ジヒドロベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾチアジン、ピラジノモルホリン、ジヒドロベンゾオキサゾール、パーヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、パーヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、パーヒドロベンゾイミダゾール、ジヒドロベンゾアゼピン、テトラヒドロベンゾアゼピン、ジヒドロベンゾジアゼピン、テトラヒドロベンゾジアゼピン、ベンゾジオキセパン、ジヒドロベンゾオキサゼピン、テトラヒドロベンゾオキサゼピン、ジヒドロカルバゾール、テトラヒドロカルバゾール、パーヒドロカルバゾール、ジヒドロアクリジン、テトラヒドロアクリジン、パーヒドロアクリジン、ジヒドロジベンゾフラン、ジヒドロジベンゾチオフェン、テトラヒドロジベンゾフラン、テトラヒドロジベンゾチオフェン、パーヒドロジベンゾフラン、パーヒドロジベンゾチオフェン、ジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、ジチアン、ジオキサインダン、ベンゾジオキサン、クロマン、ベンゾジチオラン、ベンゾジチアン環が挙げられる。
上記の保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいメルカプト基中の「置換基を有していてもよいC1−8アルキル基」における「置換基」としては、(1)水酸基、(2)アミノ基、(3)カルボキシル基、(4)ニトロ基、(5)アジド基、(6)モノ−またはジ−C1−6アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等)、(7)N−芳香環アミノ基(例えば、N−フェニルアミノ基等)、(8)N−芳香環−N−(C1−6)アルキルアミノ基(例えば、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N−フェニル−N−エチルアミノ基、N−フェニル−N−プロピルアミノ基、N−フェニル−N−ブチルアミノ基、N−フェニル−N−ペンチルアミノ基、N−フェニル−N−ヘキシルアミノ基等)、(9)アシルアミノ基、(10)N−アシル−N−(C1−6)アルキルアミノ基、(11)C1−6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基等)、(12)C3−7シクロアルキル−C1−6アルコキシ基(例えば、シクロペンチルメチルオキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、シクロペンチルエチルオキシ、シクロヘキシルエチルオキシ基等)、(13)C3−7シクロアルキルオキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ基等)、(14)C7−15アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、フェニルプロピルオキシ、ナフチルメチルオキシ、ナフチルエチルオキシ等)、(15)フェノキシ基、(16)C1−6アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル等)、(17)C1−6アルキルカルボニルオキシ基(例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、ピバロイルオキシ等)、(18)メルカプト基、(19)C1−6アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等)、(20)ハロゲン原子、(21)C1−6アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル等)、(22)芳香環スルホニル基(例えば、フェニルスルホニル等のC6−10芳香環スルホニル基等)、(23)アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ピバロイル等のC1−6アルカノイル基、またはベンゾイル等のC6−10芳香環カルボニル基等)、(24)環状基が挙げられる。これらの任意の置換基は置換可能な位置に1−4個置換していてもよい。
ここでアシル基とは、C2−8アルカノイル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基)、C5−7炭素環カルボニル基(例えば、ベンゾイル基)、5−7員複素環カルボニル基(例えば、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基)、C5−7炭素環(C1−6)アルカノイル基(例えば、ベンジルカルボニル基)、5−7員複素環(C1−6)アルカノイル基(例えば、ピリジルメチルカルボニル基)が挙げられる。また、アシルアミノ基とは、C2−8アルカノイルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ピバロイルアミノ基)、C5−7炭素環カルボニルアミノ基(例えば、ベンゾイルアミノ基)、5−7員複素環カルボニルアミノ基(例えば、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基)、C5−7炭素環(C1−6)アルカノイルアミノ基(例えば、ベンジルカルボニルアミノ基)、5−7員複素環(C1−6)アルカノイルアミノ基(例えば、ピリジルメチルカルボニルアミノ基)が挙げられる。また、アシルアミノ基中のアミノ基は、C1−8アルキル基、C5−7炭素環、5−7員複素環、またはC5−7炭素環もしくは5−7員複素環で置換されたC1−8アルキル基によって置換されていても構わない。
また、「置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルキニル基」、「置換基を有していてもよいC1−8アルキルカルボニル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルケニルカルボニル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルキニルカルボニル基」、および「置換基を有していてもよいC1−8アルキルスルホニル基」における「置換基」としては、前記の「置換基を有していてもよいC1−8アルキル基」における「置換基」と同じ意味を表わす。
上記の保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいメルカプト基中の「置換基を有していてもよい環状基」、「置換基を有していてもよい環状基で置換されたカルボニル基」、および「置換基を有していてもよい環状基で置換されたスルホニル基」における「置換基」としては、(1)C1−8アルキル基、(2)水酸基、(3)アミノ基、(4)カルボキシル基、(5)ニトロ基、(6)モノ−またはジ−C1−6アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ基)、(7)C1−6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ヘキシルオキシ基)、(8)C1−6アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル基)、(9)C1−6アルキルカルボニルオキシ基(例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ基)、(10)C1−4アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ基)、(11)ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、(12)トリハロメチル基(例えば、トリフルオロメチル基)が挙げられる。これらの任意の置換基は置換可能な位置に1−4個置換していてもよい。
本発明において、置換基であるCyc1、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基および保護されていてもよいメルカプト基から選ばれる基によって置換されたC1−8アルキル基とは、Cyc1、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基および保護されていてもよいメルカプト基から選ばれる基1個によって置換されたC1−8アルキル基である。保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいメルカプト基およびC1−8アルキル基は前記と同じ意味を表わす。
本発明において、C5−7の単環炭素環とは、C5−7の不飽和単環炭素環、またはその一部または全部が飽和されている単環炭素環を表わす。例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、ベンゼン環が挙げられる。
本発明において、5−7員の単環複素環とは、1−2個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含有する5−7員の不飽和単環複素環、またはその一部または全部が飽和されている単環複素環を表わす。例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アゼピン、ジアゼピン、フラン、ピラン、オキセピン、チオフェン、チオピラン、チエピン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジン、チアジン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、パーヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、パーヒドロジアゼピン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロオキセピン、テトラヒドロオキセピン、パーヒドロオキセピン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロチエピン、テトラヒドロチエピン、パーヒドロチエピン、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、ジヒドロイソオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、ジヒドロイソチアゾール、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロチアジン、テトラヒドロチアジン、モルホリン、チオモルホリン環が挙げられる。
本発明において、「置換基を有していてもよいC5−7の単環炭素環」、「置換基を有していてもよい5−7員の単環複素環」、および「置換基を有していてもよいベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジンまたはピリダジン環」における「置換基」としては、(1)置換基を有していてもよいC1−8アルキル基、(2)置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基、(3)置換基を有していてもよいC2−8アルキニル基、(4)ハロゲン原子、(5)ニトロ基、(6)シアノ基、(7)C5−7炭素環、(8)5−7員の複素環、(9)保護されていてもよい水酸基、(10)保護されていてもよいメルカプト基、(11)カルボキシル基、(12)C1−8アルコキシカルボニル基、(13)保護されていてもよいアミノ基、(14)置換基を有していてもよいカルバモイル基、(15)置換基を有していてもよいスルファモイル基、(16)スルホ(−SOH)基、(17)スルフィノ(−SOH)基、(18)C1−8アルキルスルホニル基(例えば、メシル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル基)、(19)C5−7炭素環スルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、トシル基)、(20)5−7員複素環スルホニル基(例えば、フリルスルホニル、チエニルスルホニル、ピリジルスルホニル基)、(21)C5−7炭素環(C1−6)アルキルスルホニル基(例えば、シクロヘキシルメチルスルホニル、ベンジルスルホニル基)、(22)5−7員複素環(C1−6)アルキルスルホニル基(例えば、フリルメチルスルホニル、チエニルメチルスルホニル、ピリジルメチルスルホニル基)、(23)置換基を有していてもよいホスホノ基が挙げられる。これらの置換基は置換可能な位置に1−4個置換していてもよい。
ここで「置換基を有していてもよいカルバモイル基」としては、例えば、無置換のカルバモイル基、N−モノ−C1−4アルキルカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−イソプロピルカルバモイル、N−ブチルカルバモイル基)、N,N−ジC1−4アルキルカルバモイル基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N,N−ジプロピルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル基)、1−ピペリジルカルボニル基が挙げられる。また、「置換基を有していてもよいスルファモイル基」としては、例えば、無置換のスルファモイル基、N−モノ−C1−4アルキルスルファモイル基(例えば、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N−プロピルスルファモイル、N−イソプロピルスルファモイル、N−ブチルスルファモイル基)、N,N−ジC1−4アルキルスルファモイル基(例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N,N−ジブチルスルファモイル基)が挙げられる。また、「置換基を有していてもよいホスホノ基」としては、例えば無置換のホスホノ基、モノ−C1−4アルキルホスホノ基(例えば、メチルホスホノ、エチルホスホノ基)、ジ−C1−4アルキルホスホノ基(例えば、ジメチルホスホリル基、ジエチルホスホリル基)が挙げられる。
ここで「置換基を有していてもよいC1−8アルキル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基」、および「置換基を有していてもよいC2−8アルキニル基」における「置換基」としては、前記の「置換基を有していてもよいC1−8アルキル基」における「置換基」と同じ意味を表わす。
また、C1−8アルキルスルホニルアミノ基、C5−7炭素環スルホニルアミノ基、5−7員複素環スルホニルアミノ基、C5−7炭素環(C1−6)アルキルスルホニルアミノ基、5−7員複素環(C1−6)アルキルスルホニルアミノ基中のアミノ基は、C1−8アルキル基、C5−7炭素環、5−7員複素環、またはC5−7炭素環もしくは5−7員複素環で置換されたC1−8アルキル基によって置換されていても構わない。
本発明において、「置換基を有していてもよいC1−4アルキレン基」、または「置換基を有していてもよいC2−4アルケニレン基」における「置換基」としては、保護されていてもよい水酸基、置換基を有していてもよいC1−8アルキル基、置換基を有していてもよい環状基が挙げられる。ここで各基は前記と同じ意味を表わす。
本発明において、主鎖の原子数1−8のスペーサーとは、主鎖の原子が1−8個連なっている間隔を意味する。ここで、「主鎖の原子数」は、主鎖の原子が最小となるように数えるものとする。主鎖の原子数1−8のスペーサーとしては、例えば、1または2個の置換基を有していてもよいメチレン基(−CH−)、置換基を有していてもよい窒素原子(−NH−)、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−から選ばれる1−8個の組み合わせからなる、主鎖の原子数1−8の二価基が挙げられる。具体的には、C1−8アルキレン基、C2−8アルケニレン基、C2−8アルキニレン基、−(C1−7アルキレン)−Z−基、−(C2−7アルケニレン)−Z−基、−(C2−7アルキニレン)−Z−基、−Z−(C1−6アルキレン)−Z−基、または(C1−4アルキレン)−Z−(C1−3アルキレン)−基(基中、Zは置換基を有していてもよい窒素原子(−NH−)、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−を表わす。)等が挙げられる。
ここで、C1−8アルキレン基、C2−8アルケニレン基、C2−8アルキニレン基、C1−7アルキレン基、C2−7アルケニレン基、C2−7アルキニレン基、C1−6アルキレン基、C1−4アルキレン基、C1−3アルキレン基中の置換可能な炭素原子は置換基を有していてもよい。その「置換基」としては、C1−8アルキル基、C2−8アルケニル基、C2−8アルキニル基、環状基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいメルカプト基、カルバモイル基、スルファモイル基、カルボキシル基およびC1−8アルコキシカルボニル基から選ばれる。また、置換基を有していてもよい窒素原子(−NH−)の「置換基」は、C1−8アルキル基、C2−8アルケニル基、C2−8アルキニル基、環状基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいメルカプト基、カルバモイル基、スルファモイル基、カルボキシル基およびC1−8アルコキシカルボニル基から選ばれる。
が表わす置換基としては、(1)置換基を有していてもよいC1−8アルキル基、(2)置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基、(3)置換基を有していてもよいC2−8アルキニル基、(4)置換基を有していてもよい環状基、(5)オキソ基、(6)チオキソ基、(7)水酸基、(8)メルカプト基、(9)ハロゲン原子、(10)シアノ基、(11)アミジノ基、(12)ニトロ基、(13)イミノ基、(14)置換基を有していてもよいC1−8アルキルオキシ基、(15)置換基を有していてもよいC2−8アルケニルオキシ基、(16)置換基を有していてもよいC2−8アルキニルオキシ基、(17)置換基を有していてもよい環状基で保護された水酸基、(18)脱離能を有する保護基で保護された水酸基、(19)置換基を有していてもよいC1−8アシルオキシ基、(20)置換基を有していてもよいC1−8アルキルチオ基、(21)置換基を有していてもよいC2−8アルケニルチオ基、(22)置換基を有していてもよいC2−8アルキニルチオ、(23)置換基を有していてもよい環状基で保護されたメルカプト基、(24)置換基を有していてもよいC1−8アルキルスルフィニル基、(25)置換基を有していてもよいC2−8アルケニルスルフィニル基、(26)置換基を有していてもよいC2−8アルキニルスルフィニル基、(27)置換基を有していてもよい環状基で置換されたスルフィニル基、(28)置換基を有していてもよいC1−8アルキルスルホニル基、(29)置換基を有していてもよいC2−8アルケニルスルホニル基、(30)置換基を有していてもよいC2−8アルキニルスルホニル基、(31)置換基を有していてもよい環状基で置換されたスルホニル基、(32)スルフィノ基、(33)スルホ基、(34)置換基を有していてもよいスルファモイル基、(35)カルボキシル基、(36)C1−8アルコキシカルボニル基、(37)置換基を有していてもよい環状基で置換されたカルボニル基(38)C1−8アシル基、(39)置換基を有していてもよいカルバモイル基、または(40)保護されていてもよいアミノ基が挙げられる。
ここで「置換基を有していてもよいC1−8アルキル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルキニル基」、「置換基を有していてもよいC1−8アルキルオキシ基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基オキシ基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルキニルオキシ基」、「置換基を有していてもよいC1−8アシルオキシ基」、「置換基を有していてもよいC1−8アルキルチオ基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルケニルチオ基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルキニルチオ基」、「置換基を有していてもよいC1−8アルキルスルフィニル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルケニルスルフィニル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルキニルスルフィニル基」、「置換基を有していてもよいC1−8アルキルスルホニル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基スルホニル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルキニルスルホニル基」および「置換基を有していてもよいスルファモイル基」における「置換基」は、前記の「置換基を有していてもよいC1−8アルキル」における「置換基」と同じ置換基を表わす。
また「置換基を有していてもよい環状基」、「置換基を有していてもよい環状基で保護された水酸基」、「置換基を有していてもよい環状基で保護されたメルカプト基」、「置換基を有していてもよい環状基で置換されたスルフィニル基」、「置換基を有していてもよい環状基で置換されたスルホニル基」および「置換基を有していてもよい環状基で置換されたカルボニル基」における「置換基」としては、(1)置換基を有していてもよいC1−8アルキル基、(2)置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基、(3)置換基を有していてもよいC2−8アルキニル基、(4)C5−10炭素環、(5)5−10員の複素環、(6)保護されていてもよい水酸基、(7)保護されていてもよいメルカプト基、(8)保護されていてもよいアミノ基、(9)置換基を有していてもよいカルバモイル基、(10)置換基を有していてもよいスルファモイル基、(11)カルボキシル基、(12)C1−8アルコキシカルボニル基、(13)スルホ基(−SOH)、(14)スルフィノ基、(15)ニトロ基、(16)シアノ基、(17)アミジノ基、(18)イミノ基、(19)−B(OH)基、(20)ハロゲン原子、(21)C1−8アルキルスルホニル基、(22)C5−10の単環式もしくは二環式炭素環スルホニル基、(23)5−10員の単環式もしくは二環式複素環スルホニル基、(24)C5−10の単環式もしくは二環式炭素環で置換されたC1−6アルキルスルホニル基、(25)5−10員の単環式もしくは二環式複素環で置換されたC1−6アルキルスルホニル基、(26)アシル基、(27)オキソ基、(28)チオキソ基、(29)(C1−8アルコキシイミノ)メチル基(例えば、(メトキシイミノ)メチル)等が挙げられる。これらの置換基は置換可能な位置に1−5個置換していてもよい。
ここで「置換基を有していてもよいC1−8アルキル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルケニル基」、「置換基を有していてもよいC2−8アルキニル基」、「保護されていてもよい水酸基」、「保護されていてもよいメルカプト基」、「保護されていてもよいアミノ基」、「置換基を有していてもよいカルバモイル基」、「置換基を有していてもよいスルファモイル基」は前記と同じ意味を表わす。
本発明において、Qが表わす置換基を有していてもよいC1−4アルキレン基としては、(1)置換基を有さないC1−4アルキレン基、または(2)(a)水酸基、(b)C1−8アルコキシ基、(c)C1−8アルキル基、もしくは(d)水酸基、C1−6アルコキシ基、アミノ基、モノ−もしくはジ−C1−6アルキルアミノ、メルカプト、C1−6アルキルチオ、フェニル基およびヒドロキシフェニル基から選ばれる1個の置換基によって置換されているC1−8アルキル基から選ばれる基を置換基として有しているC1−4アルキレン基が好ましい。具体的には、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−CH(CH(CH)−、−CH(CHCH(CH)−、−CH(CH(CH)(CHCH))−、−CH(CHCHCHCH)−、−CH(CHOH)−、−CH(CH(OH)CH)−、−CH(CHSH)−、−CH(CHCHSCH)−、―CH(CH)−、−CH((CHNH)−、−CH((CHNH)−が好ましく、特に−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、または−CH(CH(CH)−が好ましい。
本発明において、Qが表わす環としては置換基を有していてもよいベンゼンまたはピリジン環が好ましく、置換基を有していてもよいベンゼン環が特に好ましい。
本発明において、Qが表わす置換基を有していてもよいベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジンもしくはピリダジン環における「置換基」としては、置換基を有していてもよいC1−8アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C5−7炭素環、5−7員の複素環、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいメルカプト基、カルボキシル基、C1−8アルコキシカルボニル基、保護されていてもよいアミノ基が好ましく、よりC1−8アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいメルカプト基、保護されていてもよいアミノ基が好ましい。具体的には、C1−8アルキル基、ハロゲン原子、C1−8アルコキシ基、水酸基、保護されていてもよいアミノ基が好ましく、特にメチル基、エチル基、ハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、水酸基、アミノ基が好ましい。
本発明において、Qが表わす置換基を有していてもよいベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジンもしくはピリダジン環は二価基であり、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,4−ジイル、ピリジン−3,5−ジイル、ピリジン−2,6−ジイル、ピリミジン−2,4−ジイル、ピリミジン−4,6−ジイル、ピラジン3,5−ジイル、ピリダジン−3,5−ジイルが挙げられる。特に1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,4−ジイル、ピリジン−3,5−ジイル、またはピリジン−2,6−ジイルが好ましい。
本発明において、Rとしては水素原子、C1−8アルキル基、保護されていてもよい水酸基によって置換されたC1−8アルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシメチル基、またはヒドロキシエチル基がより好ましい。
本発明において、Gとしては置換基を有していてもよいC1−8アルキル基によって置換されていてもよいC1−4アルキレン基またはC2−4アルケニレン基、つまり無置換の1−4アルキレン基もしくはC2−4アルケニレン基、または置換基を有していてもよいC1−8アルキル基によって置換されているC1−4アルキレン基もしくはC2−4アルケニレン基が好ましい。具体的には、置換基を有していてもよいC1−8アルキル基によって置換されているかもしくは無置換のエチレン基、トリメチレン基、エテニレン基もしくはプロペニレン基が挙げられ、置換基を有していてもよいC1−8アルキル基としてはメチル基、エチル基、あるいは保護されていてもよい水酸基によって置換されたメチル基もしくはエチル基が挙げられる。
より好ましいGは、置換基を有していてもよいC1−8アルキル基によって置換されていてもよいC1−4アルキレン基であり、無置換のエチレン基もしくはトリメチレン基、またはメチル基、エチル基、あるいは保護されていてもよい水酸基によって置換されたメチル基もしくはエチル基によって置換されたエチレン基もしくはトリメチレン基が特に好ましい。
本発明において、B環が表わす環としては置換基を有していてもよいベンゼンが特に好ましい。
本発明において、B環が表わすベンゼン、ナフタレンまたはテトラヒドロナフタレン環は二価基であり、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,7−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,7−ジイル、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1,3−ジイル、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1,4−ジイルが挙げられ、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、または1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルが好ましい。特に、1,4−フェニレンが好ましい。
本発明において、EとしてはC1−8アルキレン基、−O−(C1−6アルキレン)−O−、または−(C1−7アルキレン)−O−(基中、酸素原子がB環と結合する。)が好ましい。特にC4−8アルキレン基、−O−(C2−6アルキレン)−O−、または−(C3−7アルキレン)−O−(酸素原子がB環と結合する。)が好ましい。
C4−8アルキレン基とはテトラメチレン基、ペンタメチレン基、メチルブチレン基、ヘキサメチレン基、ジメチルブチレン基、エチルブチレン基、メチルペンチレン基、ヘプタメチレン基、メチルエチルブチレン基、ジメチルペンチレン基、メチルヘキシレン基、オクタメチレン基、ジメチルヘキシレン基、エチルヘキシレン基、メチルへプチレン基が挙げられ、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、またはヘプタメチレン基が好ましい。
C2−6アルキレン基とは、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、メチルブチレン基、ヘキサメチレン基、ジメチルブチレン基、エチルブチレン基、メチルペンチレン基が挙げられ、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基またはヘキサメチレン基が好ましい。
C3−7アルキレンとは、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、メチルブチレン基、ヘキサメチレン基、ジメチルブチレン基、エチルブチレン基、メチルペンチレン基、ヘプタメチレン基、メチルエチルブチレン基、ジメチルペンチレン基、メチルヘキシレン基が挙げられ、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、またはヘプタメチレン基が好ましい。
本発明において、Aとしては置換基を有していてもよいC5−10の単環または二環式炭素環、5−10員の単環または二環式複素環が好ましい。具体的には、シクロヘキサン、ベンゼン、インデン、インダン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、フラン、ピラン、チオフェン、チオピラン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピロリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、インドール、イソインドール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール環が挙げられ、シクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、またはピラジン環がより好ましい。特に置換基を有していてもよいC5−7の単環炭素環または5−7員の単環複素環が好ましく、具体的にはシクロヘキサン、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、またはピラジン環が好ましい。
本発明において、Rとしては水素原子、置換基を有していてもよいC1−8アルキル基、水酸基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいC1−8アルキルオキシ基が好ましく、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基、トリフルオロメトキシ基が好ましい。
一般式(I)で示される本発明化合物のうち、好ましい化合物としては一般式(I−1)
Figure 2005112802
(式中、Qは置換基を有していてもよいメチレン基を表わし、Gは置換基を有していてもよいC1−8アルキル基によって置換されていてもよいC1−4アルキレン基またはC2−4アルケニレン基を表わし、その他の記号は前記と同じ意味を表わす。)、または一般式(I−2)
Figure 2005112802
(式中、Qは置換基を有していてもよいベンゼン環を表わし、−COORはQが表わす置換基を有していてもよいベンゼン環の3位または4位に置換し、その他の記号は前記と同じ意味を表わす。)で示される化合物が挙げられる。
本発明において、具体的な化合物としては、特開平2−218654号明細書、およびWO02/092068号明細書に記載された化合物が挙げられる。特に好ましくは、
(1)4−クロロ−3−[(3−{4−[(5−フェニルペンチル)オキシ]フェニル}プロパノイル)アミノ]安息香酸、
(2)4−メトキシ−3−[(3−{4−[(5−フェニルペンチル)オキシ]フェニル}プロパノイル)アミノ]安息香酸、および
(3)2−アミノ−5−[(3−{4−[(5−フェニルペンチル)オキシ]フェニル}プロパノイル)アミノ]安息香酸が挙げられる。
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における異性体(E、Z、シス、トランス体)、不斉炭素の存在等による異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。
本発明においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように記号
Figure 2005112802
は紙面の向こう側(すなわちα配置)に結合していることを表し、
Figure 2005112802
は紙面の手前側(すなわちβ配置)に結合していることを表し、
Figure 2005112802
はα配置、β配置またはそれらの混合物であることを表し、
Figure 2005112802
は、α配置とβ配置の混合物であることを表す。
[塩および溶媒和物]
一般式(I)で示される化合物は、公知の方法で塩に変換される。塩としては薬学的に許容される塩が好ましい。
適当な塩としては、例えば、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、リチウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等)、有機アミン(トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩、酸付加物塩(無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等)等)が挙げられる。
一般式(I)で示される化合物およびその塩は、溶媒和物に変換することもできる。溶媒和物は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば水、アルコール系溶媒(エタノール等)等の溶媒和物が挙げられる。
本発明の一般式(I)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物のプロドラッグとしては、生物学的利用率および生体膜透過性の改善されるものが好ましい。本発明の一般式(I)で示される化合物は、カルボキシル基を有するため、プロドラッグとしては、生体内で切断され、カルボキシル基に変換されるものまたは生体内で酸化され、カルボキシル基に変換されるものが挙げられる。
生体内で切断され、カルボキシル基に変換されるものとしては、カルボン酸エステル誘導体、カルボン酸アミド誘導体が挙げられる。生体内で酸化され、カルボキシル基に変換されるものとしては、アルコール誘導体が挙げられる。
特に、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグとしては以下の化合物が好ましい。
一般式(Ia)
Figure 2005112802
(式中、Rは1−2個の保護されていてもよい水酸基または保護されていてもよいアミノ基によって置換されたC1−8アルキルを表わし、その他の記号は前記と同じ意味を表わす。)で示される化合物、その塩もしくはそれらの溶媒和物、一般式(Ib)
Figure 2005112802
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、(1)水素原子、(2)C1−8アルキル基または(3)1−2個の保護されていてもよい水酸基または保護されていてもよいアミノ基によって置換されたC1−8アルキル基を表わし、その他の記号は前記と同じ意味を表わす。)で示される化合物、その塩もしくはそれらの溶媒和物、および一般式(Ic)
Figure 2005112802
(式中、全ての記号は前記と同じ意味を表わす。)で示される化合物、その塩もしくはそれらの溶媒和物。
本発明の一般式(I)で示される化合物の製造方法は、特開平2−218654号明細書、WO02/092068号明細書に記載されているか、もしくはそれらに記載された製造方法と同様の方法で製造することができる。
[毒性]
一般式(I)で示される化合物の毒性は十分に低いものであり、医薬品として使用するために十分安全であることが確認された。
[医薬品への適用]
一般式(I)で示される化合物は、PTP1B阻害活性を有するため、PTP1B阻害剤として、またはPTP1B介在性疾患、特にPTP1Bの活性亢進に伴う疾患、例えば、生活習慣病とされる疾患の予防および/または治療剤として有用であると考えられる。生活習慣病としては、例えば、糖尿病(耐糖能異常、インスリン抵抗性、高インスリン血症、I型糖尿病、II型糖尿病等を含む)、糖尿病合併症(網膜症、腎症、神経傷害、大血管障害(例えば、足の病変、心筋梗塞、脳梗塞))、高脂血症(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDL−コレステロ−ル血症、脂質代謝異常症、動脈硬化症、冠動脈硬化性心疾患等を含む)、肥満症(上半身肥満症、内臓脂肪型肥満症等を含む)、高血圧症が挙げられる。
一般式(I)で示される本発明化合物は、
1)その化合物の予防および/または治療効果の補完および/または増強、
2)その化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、および/または
3)その化合物の副作用の軽減のために他の薬剤と組み合わせて、併用剤として投与してもよい。
一般式(I)で示される本発明化合物と他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、一般式(I)で示される本発明化合物を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、一般式(I)で示される本発明化合物を後に投与してもよい。それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
上記併用剤により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、一般式(I)で示される本発明化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
一般式(I)で示される本発明化合物の糖尿病に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、スルホニルウレア系糖尿病治療薬、ビグアナイド系糖尿病治療薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、速効型インスリン分泌促進薬、インスリン抵抗性改善薬(PPAR作動薬等)、インスリン感受性増強薬、インスリン製剤、βアドレナリン受容体作動薬、11βHSD阻害薬、DPP4阻害薬およびグルカゴン様ペプチド受容体作動薬が挙げられる。
一般式(I)で示される本発明化合物の糖尿病合併症に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、アルドース還元酵素阻害薬、βアドレナリン受容体作動薬、末梢循環障害改善剤およびが挙げられる。
一般式(I)で示される本発明化合物の高脂血症に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、HMG−CoA還元酵素阻害薬、フィブラート系高脂血症薬、PPAR作動薬、リパーゼ阻害薬、MTP阻害薬、スクアレンシンセターゼ阻害薬、コレステロール吸着薬、ACAT阻害薬、5−リポキシゲナーゼ阻害薬、胆汁酸吸収阻害薬、回腸Na/胆汁酸共輸送体阻害薬、LDL受容体活性化薬・発現増強薬、ニコチン酸製剤、EPA製剤、プロブコール製剤、その他の抗高コレステロール血症治療薬が挙げられる。
一般式(I)で示される本発明化合物の肥満症に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、中枢性食欲抑制薬、選択的セロトニン受容体阻害薬、βアドレナリン受容体作動薬が挙げられる。
スルホニルウレア系糖尿病薬としては、例えば、トルブタミド、クロルプロパミド、アセトヘキサミド、トラザミド、グリクロピラミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリドが挙げられる。
ビグアナイド系糖尿病薬としては、例えば、塩酸ブホルミン、塩酸メトホルミンが挙げられる。
α−グルコシダーゼ阻害剤としては、例えば、アカルボース、ボグリボースが挙げられる。
速効型インスリン分泌促進薬としては、ナテグリニド、レパグリニド等が挙げられる。
PPAR作動薬としては、ピオグリタゾン、トログリタゾン、ロシグリタゾン等が挙げられる。
末梢循環障害改善薬としては、例えば、イコサペント酸エチル、塩酸サルポグレラート、塩酸チクピロン、酢酸トコフェロール、シロスタゾール、ニコチン酸トコフェロール、ベラプロストナトリウム、リマプロストが挙げられる。
アルドース還元酵素阻害薬としては、エパルレスタット、フィダレスタット、ゼナレスタット、トルレスット、ソポルレスタット等が挙げられる。
HMG−CoA還元酵素阻害薬としては、例えば、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトロバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンが挙げられる。
フィブラート系高脂血症薬としては、例えば、フェノフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート、クロフィブラートアルミニウム、シンフィブラート、ベザフィブラートが挙げられる。
胆汁酸吸収阻害薬としては、コレスチラミン、コレセベラム等が挙げられる。
一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の重量比は特に限定されない。
他の薬剤は、同種および/または異種から選択される任意の1種または2種以上を組み合わせて投与してよい。
また、一般式(I)で示される化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
本発明で用いる一般式(I)で示される化合物またはそれらの非毒性塩、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人あたり、1回につき、1mgから1000mgの範囲で、1日1回から数回経口投与されるか、または成人一人あたり、1回につき、0.1mgから100mgの範囲で、1日1回から数回非経口投与(好ましくは、点鼻剤、点眼剤または軟膏剤)されるか、または1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
もちろん前記したように、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
一般式(I)で示される本発明化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤を投与する際には、経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤および、非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤、吸入剤等として用いられる。
経口投与のための内服用固形剤には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。また錠剤には舌下錠、バッカル錠、トローチ、口腔内貼付剤、口腔内崩壊錠などが含まれる。
このような内服用固形剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシルプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
経口投与のための内服用液剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤・乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、点眼剤、および点鼻剤等が含まれる。これらはひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、公知の方法または通常使用されている処方により製造、調製される。
噴霧剤、吸入剤およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第 2,868,691号および同第3,095,355号に詳しく記載されている。また、エアゾル剤としても構わない。
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造、調製される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
非経口投与のためその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤および腟内投与のためのペッサリー等が含まれる。
本発明の一般式(I)で示される化合物は、強力なPTP1B阻害作用を有し、細胞内糖取り込みおよびインスリン受容体のリン酸化を亢進し、かつ細胞傷害性がないことを示した。
以下、実験例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実験例中では、以下の化合物を被験薬として用いた。
(1)4−クロロ−3−[(3−{4−[(5−フェニルペンチル)オキシ]フェニル}プロパノイル)アミノ]安息香酸、
(2)4−メトキシ−3−[(3−{4−[(5−フェニルペンチル)オキシ]フェニル}プロパノイル)アミノ]安息香酸、および
(3)2−アミノ−5−[(3−{4−[(5−フェニルペンチル)オキシ]フェニル}プロパノイル)アミノ]安息香酸。
実験例1:PTP1B阻害活性
被験薬の調製:10mmol/Lの被験薬のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を用いて、蒸留水および10%DMSOで各濃度に希釈した。
基質の調製:p−ニトロフェニルホスフェートを蒸留水で30mmol/L濃度とした。
酵素の調製:組み換え型ヒトPTP1B(CALBIOCHEM 539735)を、使用直前に蒸留水で希釈した。
アッセイバッファーの調製:2倍濃度のアッセイバッファー(50mmol/LのHEPES(pH7.2)、5mmol/Lエチレンジアミン四酢酸、10mmol/L ジチオスレイトール、および100mmol/L塩化ナトリウム含有)を調製した。
[吸光度の測定]
96穴プレートに各濃度の被験薬溶液(10μL)、調製したp−ニトロフェニルホスフェート(10μL)および調製した2倍濃度のアッセイバッファー(50μL)を添加し、蒸留水で全量を90μLとした。これに対して、コントロールおよびブランクには被験薬の代わりに10%DMSOを添加した。37℃で10分間、プレインキュベーションした後、調製した酵素(10μL)を加えて反応を開始し、37℃で5分間、405nmにおける吸光度を測定した。なお、ブランクには酵素の代わりに蒸留水を添加した。
阻害率(%)は、以下の計算式にて算出した。
阻害率(%)={1−[(被験薬の吸光度)−(ブランクの吸光度)]/[(コントロールの吸光度)−(ブランクの吸光度)]}×100
その結果、本発明化合物は優れたPTP1B阻害活性を示した。具体的には、本発明化合物は10μmol/Lの濃度で50%以上の阻害率を示した。
実験例2:細胞内への糖取り込み
[細胞の分化]
マウス白色脂肪前駆細胞由来3T3−L1細胞は、培養プレートに播種し、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用い、37℃、5%二酸化炭素の条件下で培養した。コンフルエントに達するまで培養した後、5μg/mLインスリン、0.25μmol/Lデキサメタゾン、0.5mmol/Lの3−イソブチル−1−メチルキサンチンを含むDMEM−10%FBS培地に交換し、3日間培養した。次に5μg/mLインスリンを含むDMEM−10%FBS培地で4日間培養後、DMEM−10%FBS培地にて5−7日間培養し、十分に分化した細胞を実験に使用した。
[糖取り込み実験]
3T3−L1細胞を無血清培地で洗浄して同培地で培養後、培地を900μLのHEPES緩衝生理食塩水(HBS)(20mmol/LのHEPES(pH7.4)、140mmol/L塩化ナトリウム、5mmol/L塩化カリウム、2.5mmol/L塩化マグネシウム、1mmol/L塩化カルシウム)に交換した。被験薬(10μL)を添加して1時間後、各種濃度のインスリン(100μL)で30分間刺激した。反応液を吸引除去した後、0.6μCi/mLの[3H]−2−デオキシグルコースを加え、室温で10分間静置して糖を取り込ませた。反応を10μmol/LサイトカラシンBによって停止し、HBSで細胞を3回洗浄した。0.5N水酸化ナトリウムで細胞を溶解し、細胞内に取りこまれた放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定した。
その結果、本発明化合物は、インスリン刺激による糖取り込みを亢進した。例えば、2−アミノ−5−[(3−{4−[(5−フェニルペンチル)オキシ]フェニル}プロパノイル)アミノ]安息香酸は10μmol/Lの濃度で、0.1nmol/Lのインスリンによる糖取り込みを2.1倍に亢進した。
実験例3:インスリン受容体のリン酸化
3T3−L1細胞を洗浄して無血清培地中で培養後、培地をHBS(20mmol/LのHEPES(pH7.4)、140mmol/L塩化ナトリウム、5mmol/L塩化カリウム、2.5mmol/L塩化マグネシウム、1mmol/L塩化カルシウム)に交換した。被験薬を添加してから1時間後、各種濃度のインスリンで各種時間刺激した。氷冷したHBS−1mmol/Lのo−バナジン酸ナトリウムで細胞を洗浄した後、可溶化バッファー(20mmol/Lトリス塩酸(pH7.5)、150mmol/L塩化ナトリウム、1mmol/Lエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、1mmol/Lエチレングリコールビス四酢酸、1%トリトン、2.5mmol/Lピロりん酸ナトリウム、1mmol/Lのβ−グリセロりん酸、1mmol/Lのo−バナジン酸ナトリウム、1μg/mLロイペプチン、1mmol/Lフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF))を加えて、4℃で30分間溶解した。細胞破砕液は、遠心して不溶性画分を除去した後、タンパク量を定量した。
細胞破砕液中のタンパクは、抗インスリン受容体抗体およびプロテインGセファロース で免疫沈降し、5%β−メルカプト基エタノールを含むLaemmliサンプル緩衝液中で5分間熱した。これをドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ポリビリニデンジフルオライド(PVDF)膜に転写した。PVDF膜は5%スキムミルクを含むTween20含有トリス緩衝生理食塩水(100mmol/Lトリス塩酸(pH7.5)、0.9%塩化ナトリウム、0.1%Tween20)でブロッキングし、ペルオキシダーゼ標識された抗リン酸化チロシン抗体と反応させた後、高感度ケミルミネッセンス法で検出した。
その結果、本発明化合物は30μmol/L以下の濃度で、インスリン受容体のチロシンリン酸化を亢進した。
実験例4:細胞傷害性試験(XTT試験)
3T3−L1細胞を96穴プレートに播種し、コンフルエントに達した後、培地を除去し、990μLのHBSに交換した。被験薬(10μL)を添加し、1.5時間後に1mg/mLのXTT−25μmol/LのPMS溶液(25μL)を加えて、37℃で反応開始後、30分および60分後に450nmと690nmにおける吸光度を測定した。
その結果、本発明化合物は100μmol/Lの濃度で細胞傷害性が認められなかった。
[製剤例]
製剤例1
以下の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠中に10mgの活性成分を含有する錠剤1万錠を得た。
・4−クロロ−3−[(3−{4−[(5−フェニルペンチル)オキシ]フェニル}プロパノイル)アミノ]安息香酸 …… 100g
・カルボキシメチルセルロースカルシウム(崩壊剤) …… 20g
・ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) …… 10g
・微結晶セルロース …… 870g
本発明の化合物はPTP1B阻害剤として、またはPTP1B介在性の疾患、例えば、生活習慣病の予防および/または治療に有効である。

Claims (11)

  1. 一般式(I)
    Figure 2005112802
    (式中、Rは水素原子またはC1−8アルキル基を表わし、
    Qは置換基を有していてもよいC1−4アルキレン基、または置換基を有していてもよいベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジンもしくはピリダジン環を表わし、
    は水素原子、C1−8アルキル基、C2−8アルケニル基、C2−8アルキニル基、Cyc1、または置換基であるCyc1、保護されていてもよい水酸基、保護されていてもよいアミノ基および保護されていてもよいメルカプト基から選ばれる基によって置換されたC1−8アルキル基、C2−8アルケニル基もしくはC2−8アルキニル基を表わし、
    Cyc1は置換基を有していてもよいC5−7の単環炭素環または5−7員の単環複素環を表わし、
    Gは置換基を有していてもよいC1−4アルキレン基または置換基を有していてもよいC2−4アルケニレン基を表わし、
    B環は置換基を有していてもよいベンゼン、ナフタレンまたはテトラヒドロナフタレン環を表わし、
    Eは主鎖の原子数1−8のスペーサーを表わし、Aは環状基を表わし、nは0または1を表わし、Rは水素原子または置換基を表わし、mは1−7の整数を表わす。ただし、Eが原子数1のスペーサーであり、nが0の時、Rは置換基を表わす。)で示される化合物、その塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグを有効成分としてなるプロテインチロシンホスファターゼ1B阻害剤。
  2. Qが置換基を有していてもよいベンゼン環である請求項1記載の剤。
  3. Gが置換基を有していてもよいC1−4アルキレン基である請求項1記載の剤。
  4. プロテインチロシンホスファターゼ1B介在性疾患の予防および/または治療剤である請求項1記載の剤。
  5. プロテインチロシンホスファターゼ1B介在性疾患が生活習慣病である請求項4記載の剤。
  6. 生活習慣病が、糖尿病、肥満症または高脂血症である請求項5記載の剤。
  7. 請求項1記載のプロテインチロシンホスファターゼ1B阻害剤と、スルホニルウレア系糖尿病治療薬、ビグアナイド系糖尿病治療薬、α−グルコシダーゼ阻害薬、速効型インスリン分泌促進薬、インスリン抵抗性改善薬、インスリン感受性増強薬、インスリン製剤、βアドレナリン受容体作動薬、DPP4阻害薬、グルカゴン様ペプチド受容体作動薬、末梢循環障害改善薬、アルドース還元酵素阻害薬、HMG−CoA還元酵素阻害薬、フィブラート系高脂血症治療薬、PPAR作動薬、リパーゼ阻害薬、MTP阻害薬、スクアレンシンセターゼ阻害薬、11βHSD阻害薬、コレステロール吸着薬、ACAT阻害薬、5−リポキシゲナーゼ阻害薬、胆汁酸吸収阻害薬、回腸Na/胆汁酸共輸送体阻害薬、LDL受容体活性化薬・発現増強薬、ニコチン酸製剤、EPA製剤、プロブコール製剤、その他の抗高コレステロール血症治療薬、中枢性食欲抑制薬、および選択的セロトニン受容体阻害薬から選ばれる1種または2種以上と組み合わせてなる医薬組成物。
  8. 請求項1に記載の化合物、その塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを特徴とするプロテインチロシンホスファターゼ1Bを阻害する方法。
  9. 請求項1に記載の化合物、その塩、それらの溶媒和物、またはそれらのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを特徴とするプロテインチロシンホスファターゼ1B介在性疾患の予防および/または治療する方法。
  10. プロテインチロシンホスファターゼ1B阻害剤を製造するための、請求項1に記載の化合物、その塩、それらの溶媒和物、およびそれらのプロドラッグの使用。
  11. プロテインチロシンホスファターゼ1B介在性疾患の予防および/または治療剤を製造するための、請求項1に記載の化合物、その塩、それらの溶媒和物、およびそれらのプロドラッグの使用。
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