JP2005108674A - 固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法および健全性評価装置 - Google Patents

固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法および健全性評価装置 Download PDF

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Abstract

【課題】セルスタックの健全性を容易かつ適切に評価することができ、単セルユニットの何れかに性能不良や不具合がある場合に、その原因を的確に把握することができる固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法および健全性評価装置を提供する。
【解決手段】発電セル13の各々に反応用のガスを供給した状態で、セルスタック20の積層方向における両端間に試験信号を印加して、各セパレータ11間のインピーダンスを測定し、そのインピーダンス特性を相互に比較することによりセルスタック20の健全性を評価する。
【選択図】図1

Description

本発明は、平板積層型の固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)の健全性評価方法および健全性評価装置に関するものである。
周知のように、固体酸化物形燃料電池は第三世代の発電用燃料電池として研究開発が進められている。この固体酸化物形燃料電池の構造には、円筒型、モノリス型および平板積層型の3種類が現在のところ提案されているが、これら構造のうち、低温作動型の固体酸化物形燃料電池には、平板積層型の構造が広く採用されている。
この平板積層型の固体酸化物形燃料電池においては、セパレータ、燃料極集電体、発電セル、空気極集電体が順番に積層されて単セルユニットが構成され、この単セルユニットが複数積層されてセルスタックが構成されている。また、各発電セルは、酸化物イオン伝導体からなる固体電解質を空気極(カソード)と燃料極(アノード)との間に挟んだ積層構造を有する。
上記構成からなるセルスタックにおいて、セパレータおよび空気極集電体を介して発電セルの空気極側に供給された酸素は、空気極層内の気孔を通って固体電解質との界面近傍に到達し、この部分で、空気極から電子を受け取って酸化物イオン(O2-)にイオン化される。この酸化物イオンは、燃料極の方向に向かって固体電解質層内を拡散移動する。燃料極との界面近傍に到達した酸化物イオンは、この部分で、燃料ガスと反応して反応生成物(H2 O等)を生じ、燃料極に電子を放出する。この電子を燃料極集電体により取り出すことによって電流が流れ、所定の起電力が得られる。
因みに、燃料に水素を用いた場合の電極反応は次のようになる。
空気極: 1/2 O2 + 2e- → O2-
燃料極: H2 + O2- → H2 O+2e-
全体 : H2 + 1/2 O2 → H2
ところで、上記平板積層型の固体酸化物形燃料電池のセルスタックにおいては、その健全性の評価項目として、(1)外観および寸法、(2)供給ガス配管のガスリークの有無、(3)電気的短絡の有無、(4)各発電セルに供給される燃料ガスの流量の均一性、(5)各単セルユニットの内部抵抗(セパレータ間の内部抵抗)などがある。このうち(1)〜(3)の評価項目については、セルスタックを組み立てた後に、ノギス、石鹸水、テスター等を用いて、既知の方法でその健全性を確認することができる。他方、(4)と(5)の評価項目については、セルスタックを組み立てた後に直接的に求める方法が確立されていないことから、従来では、実際に発電を行って、各セパレータ間の電圧を測定することにより健全性を確認するようにしていた。
しかしながら、上記従来の方法では、上述した(4)と(5)の少なくとも何れか一方の評価項目について単セルユニットの何れかが要求性能を満たさない場合に、その単セルユニットを電圧値に基づいて特定することができても、その原因が、燃料ガスの供給流量に起因するものなのか、或いは各単セルユニットの内部抵抗のバラツキに起因するものなのかを区別することができなかった。そのため、セルスタックを構成する単セルユニットの何れかに性能不良や不具合がある場合に、それに対して適切な対処ができないという問題点があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、セルスタックの健全性を容易かつ適切に評価することができ、単セルユニットの何れかに性能不良や不具合がある場合に、その原因を的確に把握することができる固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法および健全性評価装置を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、セル内部で大きな濃度分布が存在するような実用規模の単セルユニットに一定電流を負荷した状態で、燃料ガス流量を変動させつつ交流インピーダンスを測定して、そのコールコールプロットをとると、低周波側の円弧の大きさが燃料ガス流量に応じて変化することを見出し、また上記円弧の高周波側での実軸との切片におけるインピーダンス値が単セルユニットの内部抵抗に応じて変化することを見出した。そして、このような原理を応用すれば、単セルユニットのインピーダンス特性からその性能を推定できること、そして複数の単セルユニットを有するセルスタックにおいては、各セパレータ間のインピーダンス特性を相互に比較することによって、発電セル間におけるガスの供給流量の均一性や、各セパレータ間の内部抵抗の均一性など、セルスタックの健全性を容易かつ適切に評価できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、請求項1に記載の本発明に係る固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法は、発電セルとセパレータとを交互に積層してなるセルスタックを有し、上記発電セルの各々に反応用のガスを供給して発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池において、上記発電セルの各々に上記反応用のガスを供給した状態で、上記セルスタックの積層方向における両端間に試験信号を印加して、各セパレータ間のインピーダンスを測定、解析し、そのインピーダンス特性を相互に比較することにより上記セルスタックの健全性を評価することを特徴とするものである。
ここで、試験信号には、例えば、交流正弦波信号、電流ステップ、ホワイトノイズ、デルタ関数などが含まれ、また、これらの信号は直流に重畳させる場合も含まれる。また、インピーダンスデータを得る方法としては、例えば各周波数における電圧・電流の交流波形を比較し求める方法、周知のインピーダンス解析装置により求める方法、フーリエ解析により求める方法、ラプラス変換により求める方法等が含まれ、さらに、データの解析方法としては例えば複素インピーダンス曲線を用いる方法、ボード線図を用いる方法、あるいはこれら視覚的な図を用いず直接コンピュータにより解析する方法等が含まれる。例えば、交流信号を用いてインピーダンスを測定する場合には、セルスタックの積層方向における両端間に交流信号を印加して、各セパレータ間の応答信号を測定し、印加交流信号と応答信号とから各セパレータ間の交流インピーダンスを演算により導き出すようにすればよい。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法において、各セパレータ間のインピーダンス特性を測定し、各測定データの時定数の大きな成分を解析し、それぞれを比較することによって、上記発電セルの各々に供給される上記反応用ガスの流量の均一性を評価することを特徴とするものである。
ここで、各セパレータ間のインピーダンス特性を解析する際に、例えば複素インピーダンス曲線を用いる場合には、それぞれの複素インピーダンス曲線を得た後、各複素インピーダンス曲線の低周波側に出現する円弧(ガス流量、ガス流路条件等によって変化するが時定数にして0.1秒から数秒程度のもの)の大きさをそれぞれ求めて、それら円弧の大きさを相互に比較することにより、上記発電セルの各々に供給される上記反応用ガスの流量の均一性を評価することが可能である。
なお、複素インピーダンス曲線とは、インピーダンスの実数成分を横軸に、虚数成分を縦軸にとって、この複素平面上に、周波数変化に伴うインピーダンスの軌跡を描いたもので、コールコールプロットとも呼ばれる。
上記複素インピーダンス曲線の低周波側に出現する円弧(半円)の大きさを求める方法には、例えば、インピーダンスの虚数成分がほぼ0になる点を円弧の端点として、円弧の両端点間の距離から直径を求める方法や、虚数成分の絶対値が極大となる円弧の頂点と上記端点との間の距離から半径を求める方法などが含まれる。また、上記頂点における虚数成分の絶対値から円弧の半径を推定することも可能である。こうした方法は、わざわざデータをプロットしたり、図面上に曲線を描かなくでも可能であるが、ここでは、説明を簡素化するために複素インピーダンス曲線による解析を例にとって示した。以下も同様である。
低周波側に出現する円弧の大きさは、反応用のガスの供給流量におおよそ反比例し、ガスの供給流量が少ないほど大きくなる傾向があるので、当該円弧の大きさを発電セル間で相互に比較することによって、発電セル間におけるガスの供給流量の均一性を把握することができるとともに、ガスの供給流量が他の発電セルと比べて少ない発電セル(すなわち、反応用ガスの供給系統に何らかの問題がある発電セル)を容易に検出することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法において、各セパレータ間のインピーダンス特性を測定し、上記時定数の大きな成分を除いたインピーダンスを解析し、これを相互に比較することにより、各セパレータ間の内部抵抗の均一性を評価することを特徴とするものである。
なお、この明細書においては、各セパレータ間に存在するセルの材質や製造行程等に由来し、ガス流量に依存しないセルのインピーダンスのことを「内部抵抗」として定義する。
この請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法において、各セパレータ間のインピーダンス特性を解析する際に、例えば複素インピーダンス曲線を用いる場合には、各複素インピーダンス曲線にて低周波側に観測される円弧の高周波端を実軸へ外挿した際の切片のインピーダンス値をそれぞれ求めて、それらインピーダンス値を相互に比較することにより、各セパレータ間の内部抵抗の均一性を評価することが可能である。
すなわち、複素インピーダンス曲線において低周波側のデータを用いて円弧を描いた場合に、その円弧の高周波側での実軸との切片のインピーダンス値は、単セルユニットの内部抵抗が大きいほど高インピーダンス側にシフトする現象が見られるので、上記インピーダンス値を各セパレータ間で相互に比較することによって、各セパレータ間の内部抵抗の均一性を把握することができるとともに、内部抵抗が他の単セルユニットと比べて大きい単セルユニットを容易に検出することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法において、上記固体酸化物形燃料電池は、上記セルスタックの周囲にガスマニホールドを有し、当該ガスマニホールドから各セパレータに導電性のガス配管を介して反応用のガスを供給する固体酸化物形燃料電池であり、各セパレータ間のインピーダンスを測定するにあたり、上記ガスマニホールドと上記ガス配管とを絶縁し、上記ガス配管にプローブを当接させて、当該プローブにより上記試験信号に対する応答信号を測定し、当該応答信号と上記試験信号とからセパレータ間のインピーダンスを求めることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、発電セルとセパレータとを交互に積層してなるセルスタックを有し、上記発電セルの各々に反応用のガスを供給して発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池において、上記セルスタックの健全性を評価する健全性評価装置であって、上記セルスタックの積層方向における両端間に試験信号を印加する試験信号印加手段と、各セパレータ間について、上記試験信号に対する応答信号を検出するプローブと、上記応答信号と上記試験信号とから各セパレータ間のインピーダンスを求め、そのインピーダンス特性を相互に比較することにより上記セルスタックの健全性を評価する評価手段とを備えることを特徴とするものである。
請求項1〜5の何れかに記載の発明によれば、各発電セルに供給される反応用ガスの供給流量の均一性や、各セパレータ間の内部抵抗の均一性など、セルスタックの健全性を容易かつ適切に評価することができ、単セルユニットの何れかに性能不良や不具合がある場合に、その原因を的確に把握することができる。
以下、図面に基づいて、本発明に係る固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法および健全性評価装置の一実施形態について説明する。
図1は、上記健全性評価方法および健全性評価装置の評価対象となる平板積層型の固体酸化物形燃料電池の要部構成を示すもので、この固体酸化物形燃料電池においては、セパレータ11(または端板11a、11b)、燃料極集電体12、発電セル13、空気極集電体14が順番に積層されて単セルユニット10が構成され、この単セルユニット10が複数積層されてセルスタック20が構成されている。
ここで、セパレータ11はステンレス等で構成され、燃料極集電体12はNi基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、空気極集電体14はAg基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成されている。また、発電セル13は、燃料極と空気極との間に固体電解質を挟んだ積層構造を有し、固体電解質はイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)等で構成され、燃料極はNi、Co等の金属あるいはNi−YSZ、Co−YSZ等のサーメットで構成され、空気極はLaMnO3 、LaCoO3 等で構成されている。
また、セルスタック20の側方には、各セパレータ11の燃料通路(図示省略)に導電性のガス配管17を通して燃料ガスを供給する燃料ガスマニホールド15と、各セパレータ11の酸化剤通路(図示省略)に導電性のガス配管18を通して酸化剤ガスとしての空気を供給する酸化剤ガスマニホールド16とが、セルスタック20の積層方向に延在して設けられている。上記ガス配管17、18は、ガスマニホールド15、16と絶縁されており、ガス配管17、18の各々にプローブ31(後述)を当接させることによってセパレータ11間の電圧を容易に測定できるように構成されている。
上記構成からなる固体酸化物形燃料電池においては、燃料ガスマニホールド15からガス配管17を介してセパレータ11に導入された燃料ガスが燃料極集電体12に向けて吐出されるとともに、酸化剤ガスマニホールド16からガス配管18を介してセパレータ11に導入された空気が空気極集電体14に向けて吐出され、それらガスが発電セル13の中心部から外周方向に拡散しながら燃料極及び空気極の全面に良好な分布で行き渡ることにより、既述した発電反応が生じることとなる。また、本実施形態では、発電セル13の外周部にガス漏れ防止シールを敢えて設けないシールレス構造としているため、上記発電反応によって生成されたガスや上記発電反応に使用されなかった残余のガスが、発電セル13の外周部から外に放出されることとなる。
次に、上記構成からなる固体酸化物形燃料電池のセルスタック20の健全性を評価する健全性評価装置の一実施形態について説明する。この健全性評価装置は、図2に示すように、プローブ31とインピーダンス解析装置32とにより概略構成されている。
プローブ31は、櫛状に配列された複数の接触子33を有し、これら接触子33を測定対象部位(セパレータ11、ガス配管17、18など)に当接させることにより、測定信号を採取してインピーダンス解析装置32に出力することが可能となっている。なお、接触子33どうしの間隔は、セルスタック20内の各セパレータ11または各ガス配管17、18に同時に接触し得る間隔に予め設定されている。
一方、インピーダンス解析装置32は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、入力装置、表示装置およびインターフェース等を有する制御部(評価手段)と、セルスタック20の積層方向における両端間に試験信号(例えば、交流電流)を印加する信号印加部(試験信号印加手段)とを備えて構成されている。また、上記制御部の記憶装置には、上記CPUにより実行される各種処理プログラムや制御データ等を記憶する記憶領域の他に、インピーダンスの測定データ等を記憶する記憶領域などが設けられている。
そして、上記CPUは、上記記憶装置に格納された各種処理プログラムを読み込んで実行することにより、信号印加部を制御してセルスタック20に所定の試験信号を印加させる処理、上記試験信号に対する応答信号をプローブ31から受信して記憶装置に記憶する処理、上記応答信号と上記試験信号とから各セパレータ11間のインピーダンスを求め記憶装置に記憶する処理、各セパレータ11間のインピーダンス特性を相互に比較することによりセルスタック20の健全性を評価する処理などを行うようになっている。
次に、上記構成からなる健全性評価装置を用いたセルスタック20の健全性評価方法の一実施形態について説明する。
先ず、図3に示すように、評価対象となるセルスタック20に上記健全性評価装置をセットする(ステップS1)。すなわち、プローブ31の各接触子33を上記セルスタック20の各セパレータ11または各ガス配管17、18にそれぞれ当接させるとともに、試験信号印加用のケーブル34a、34bを上記セルスタック20の端板11a、11bにそれぞれ接続する。
次いで、反応用のガス(燃料ガス、酸化剤ガス)を各ガスマニホールド15、16に供給する供給配管のバルブ(図示省略)を開放して、各発電セル13の燃料極側に燃料ガスを、空気極側に酸化剤ガスとしての空気を供給する(ステップS2)。
そして、反応用のガスを供給した状態で、セルスタック20の積層方向における両端間に試験信号(交流電流)を印加する。ここでは、インピーダンス解析装置32のCPUが、入力装置からの指示入力等に基づき信号印加部を制御して、セルスタック20に試験信号を印加させる処理を行う。なお、この処理は開回路状態で行うようにしても発電状態で行うようにしてもよい。
次いで、上記試験信号に対する応答信号(応答電圧)をプローブ31により採取し、当該応答信号と上記試験信号とからセパレータ11間のインピーダンスを求める(ステップS3)。ここでは、インピーダンス解析装置32のCPUが、上記応答信号をプローブ31から受信して、上記応答信号と上記試験信号とから各セパレータ11間のインピーダンスを演算により求め、当該演算結果を記憶装置に格納する処理を行う。
次いで、各セパレータ11間のインピーダンス特性を相互に比較することによりセルスタック20の健全性を評価する(ステップS4)。
すなわち、インピーダンス解析装置32のCPUが、記憶装置に格納されたインピーダンスの測定データを読み込んで、単セルユニット10毎のインピーダンス特性を解析し、それらの特性を相互に比較することにより、単セルユニット10の性能の均一性を評価してセルスタック20の健全性を診断する処理を行う。
例えば、発電セル13間における燃料ガスの供給流量の均一性を評価する場合には、得られたインピーダンス特性のうち時定数の大きな成分の抵抗成分(コールコールプロットの円弧Cの実軸との低周波側の切片の値から高周波側の切片の値を差し引いた値のインピーダンスLに相当)をそれぞれ求めて、それらの大きさを相互に比較する。
すなわち、各セパレータ11間のインピーダンス特性を例えば複素インピーダンス曲線で表すと、低周波側に大きな円弧Cが出現し、その円弧Cの直径が、図4に示すように、燃料ガスの供給流量におおよそ反比例し、燃料ガスの供給流量が少ないほど大きくなる傾向がある。このため、上記円弧Cの直径を相互に比較することにより、発電セル13間における燃料ガスの供給流量の均一性を把握することができるとともに、燃料ガスの供給流量が他の発電セル13と比べて少ない発電セル(すなわち、ガスの供給系統に何らかの問題がある発電セル)を容易に検出することができる。
例えば、750℃で燃料利用率50%に相当する水素/水蒸気分圧とした際に、各発電セル13に対する燃料ガスの供給流量を1cc/min/cm2 とすると、複素インピーダンス曲線の低周波側のデータから描ける円弧Cの実軸との両切片の差のインピーダンスLが、図4に示すように、約1Ωcm2 となり、燃料ガスの供給流量を3cc/min/cm2 とすると、約0.4Ωcm2 となり、燃料ガスの供給流量を5cc/min/cm2 とすると、約0.3Ωcm2 となることが、本発明者等による実験によって確認されている。しがたって、上記条件下では、燃料ガスの供給流量が1cc/min/cm2 に設定されている場合に、各円弧Cの実軸との両切片の差のインピーダンスLがほぼ同じ値(1Ωcm2 )でそれぞれのバラツキが統計的に許容誤差の範囲内となった際には、各発電セル13に対する燃料ガスの供給流量がほぼ均一で、正常であると診断することができ、一部の円弧Cの直径が他の円弧Cの直径と著しく異なり上記許容誤差の範囲を超えている際には、発電セル13間で燃料ガスの供給流量に偏りがあり、上記一部の円弧Cに対応する発電セル13の燃料ガス供給系統に異常があると診断することができる。
また、例えば、単セルユニット10の内部抵抗の均一性を評価する場合には、複素インピーダンス曲線による解析を例にとると、複素インピーダンス曲線の低周波円弧Cの高周波側での実軸との切片Pのインピーダンス値をそれぞれ求めて、それらインピーダンス値を相互に比較する。
すなわち、複素インピーダンス曲線における低周波円弧Cの高周波端での実軸との切片Pのインピーダンス値は、単セルユニット10の内部抵抗が大きいほど高インピーダンス側にシフトする傾向がある。このため、低周波側の円弧Cの高周波端の切片Pのインピーダンス値を各セパレータ11間で相互に比較することによって、各セパレータ11間の内部抵抗の均一性を把握することができるとともに、内部抵抗が他の単セルユニット10と比べて大きい単セルユニット10を容易に検出することができる。
なお、単セルユニット10の内部抵抗や燃料ガスの供給流量以外についても、一部の単セルユニット10に性能上の問題がある場合には、複素インピーダンス曲線の各部に特徴的な違いが現れることとなるので、複素インピーダンス曲線の低周波側の円弧Cが実軸と交わす両切片の差のインピーダンスLやその高周波端の切片Pの位置以外の部分についても上記と同様な比較を行うことによって、単セルユニット10の各種性能の均一性を把握することができるとともに、性能面で何らかの問題を内包する単セルユニット10が存在する場合には、その単セルユニット10を容易に特定することができる。
以上のように、本実施形態によれば、発電セル13の各々に反応用のガス(燃料ガス、酸化剤ガス)を供給した状態で、セルスタック20の積層方向における両端間に試験信号を印加して、各セパレータ11間のインピーダンスを測定し、そのインピーダンス特性を相互に比較することによりセルスタック20の健全性を評価するようにしたので、単セルユニット10間における燃料ガスの供給流量や内部抵抗のバラツキ等に起因する、従来の電圧測定では原因究明が困難であった性能不良や不具合が存在するような場合においても、その原因を的確に把握することができ、原因に応じた対処を適切に行うことができる。
なお、本実施形態においては、単セルユニット10毎にインピーダンス特性を測定するようにしたが、所定数の単セルユニット10を発電ブロックとして、当該発電ブロック毎にインピーダンス特性を測定するようにしてもよい。この場合にも、各インピーダンス特性を相互に比較することによりセルスタック20の健全性を適切に評価することが可能である。
また、本実施形態においては、セルスタック20の組立後にその健全性を評価する場合について例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、本実施形態の健全性評価装置を装着したまま固体酸化物形燃料電池の運転を行って、運転中にセルスタック20の健全性を定期的に評価することにより、発電セル13の割れや燃料極の剥離など、セルスタック20における異常発生を監視することも可能である。
平板積層型の固体酸化物形燃料電池の要部構成を示す図である。 本発明に係る固体酸化物形燃料電池の健全性評価装置の一実施形態を示す概略構成図である。 本発明に係る固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。 複素インピーダンス曲線の一例を示す図である。
符号の説明
10 単セルユニット
11 セパレータ
13 発電セル
15、16 ガスマニホールド
17、18 ガス配管
20 セルスタック
31 プローブ
32 インピーダンス解析装置(試験信号印加手段、解析手段)

Claims (5)

  1. 発電セルとセパレータとを交互に積層してなるセルスタックを有し、上記発電セルの各々に反応用のガスを供給して発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池において、
    上記発電セルの各々に上記反応用のガスを供給した状態で、上記セルスタックの積層方向における両端間に試験信号を印加して、各セパレータ間のインピーダンスを測定し、そのインピーダンス特性を相互に比較することにより上記セルスタックの健全性を評価することを特徴とする固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法。
  2. 各セパレータ間のインピーダンス特性を測定し、各測定データの時定数の大きな成分を解析し、それぞれを比較することによって、上記発電セルの各々に供給される上記反応用ガスの流量の均一性を評価することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法。
  3. 各セパレータ間のインピーダンス特性を測定し、上記時定数の大きな成分を除いたインピーダンスを解析し、これを相互に比較することにより、各セパレータ間の内部抵抗の均一性を評価することを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法。
  4. 上記固体酸化物形燃料電池は、上記セルスタックの周囲にガスマニホールドを有し、当該ガスマニホールドから各セパレータに導電性のガス配管を介して反応用のガスを供給する固体酸化物形燃料電池であり、
    各セパレータ間のインピーダンスを測定するにあたり、上記ガスマニホールドと上記ガス配管とを絶縁し、上記ガス配管にプローブを当接させて、当該プローブにより上記試験信号に対する応答信号を測定し、当該応答信号と上記試験信号とからセパレータ間のインピーダンスを求めることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法。
  5. 発電セルとセパレータとを交互に積層してなるセルスタックを有し、上記発電セルの各々に反応用のガスを供給して発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池において、上記セルスタックの健全性を評価する健全性評価装置であって、
    上記セルスタックの積層方向における両端間に試験信号を印加する試験信号印加手段と、
    各セパレータ間について、上記試験信号に対する応答信号を検出するプローブと、
    上記応答信号と上記試験信号とから各セパレータ間のインピーダンスを求め、そのインピーダンス特性を相互に比較することにより上記セルスタックの健全性を評価する評価手段とを備えることを特徴とする固体酸化物形燃料電池の健全性評価装置。
JP2003341484A 2003-09-30 2003-09-30 固体酸化物形燃料電池の健全性評価方法および健全性評価装置 Expired - Lifetime JP4488284B2 (ja)

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