JP2005106636A - 超音波探傷方法および装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 より正確に介在物の存在有無を判定できるようにした超音波探傷方法および装置を提供すること。
【解決手段】 検査対象物16を挟んで超音波送信子18aと超音波受信子18bとを対向させて配置し、超音波送信子18aから超音波正弦バースト波を送出し、検査対象物16を透過した超音波正弦バースト波を超音波受信子18bにより受信し、超音波受信子18bから送出される処理して入射波振幅に対する二次高調波の振幅の比を得るようにした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、鋼材中に超音波を送信して該鋼材中の介在物を検出する超音波探傷方法および装置に関する。
特開2002-323481号公報には、非金属介在物と、略球形など平坦でない形状のボイド、および平坦な形状の未圧着のボイドとを識別するようにした超音波探傷方法および装置が開示されている。該公報に開示された超音波探傷装置では、超音波集束ビームを被検材に送信し、受信した反射波に基づいて、被検材中の異物からの反射波を抽出し、その反射波の振幅を測定して異物を検査する超音波探傷方法において、異物が存在する深さ方向の位置でビーム径が異なる複数の超音波集束ビームによって被検材中の異物からの反射波の振幅を測定し、その差をとることにより異物の種類を判別するようになっている。
特開2002-323481号公報
然しながら、上記公報に開示された装置および方法では、決勝粒界での散乱ノイズに有意な信号が紛れて介在物の検出ができない問題がある。
そこで本発明は、より正確に介在物の存在有無を判定できるようにした超音波探傷方法および装置を提供することを目的としている。
請求項1に記載の本発明は、検査対象物を挟んで超音波送信子と超音波受信子とを対向させて配置する段階と、前記超音波送信子から超音波正弦バースト波を送出する段階と、前記検査対象物を透過した超音波正弦バースト波を前記超音波受信子により受信する段階と、前記超音波受信子から送出される信号を処理して、前記透過した超音波正弦バースト波の入射波振幅に対する二次高調波の振幅の比を得る段階とを具備し、検査対象物に含まれる介在物を検出する超音波探傷方法を要旨とする。
請求項2に記載の本発明は、検査対象物を挟んで超音波送信子と超音波受信子とを対向させて配置する段階と、前記超音波送信子から極性の異なる2種の超音波正弦バースト波を送出する段階と、前記検査対象物を透過した超音波正弦バースト波を前記超音波受信子により受信する段階と、前記超音波送信子から極性の異なる2種の超音波正弦バースト波を送出し、透過した2種の超音波正弦バースト波の波形を重ね合わせ偶数次の高調波の振幅を算出する段階とを具備し、検査対象物に含まれる介在物を検出する超音波探傷方法を要旨とする。
また、請求項3、4は上記方法を実施するための装置である。
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1を参照すると、探傷装置10は、走査装置20により水槽12内において直交三軸方向に移動自在に配設された超音波素子18a、18bを具備している。該超音波素子は、水槽12内に配設されたテーブル14上に固定された検査対象材料として例えば厚さ250mmの鋼製スラブ16を挟んで対向配置された超音波送信子18aと超音波受信子18bから成る。超音波素子18a、18bは制御装置24に接続されており、超音波送信子18aから送信された超音波は、スラブ16を透過して超音波受信子18bにより受信され、超音波受信子18bが受信した超音波に対応した信号が制御装置24に送信される。また、走査装置20の駆動装置22もまた制御装置24に接続されており、制御装置24において超音波素子18a、18bの位置決めが制御される。制御装置24には、更に、制御装置24に送信された信号を、超音波素子18a、18bの位置情報と共に処理するための信号処理手段としてのパーソナルコンピュータ26や、制御装置24が受信した信号をモニターするためのオシロスコープ28が接続されている。
以下、本実施形態の作用を説明する。
図2を参照すると、検査対象物16の典型例として板厚250mm以下の鋼材スラブが示されている。鋼材スラブは、溶融した鋼材を連続鋳造法等により鋳造し、冷却、凝固させた金属部材であり、精錬の段階で溶融鋼材中に取り込まれたスラグ、特に粒径0.5〜1mm程度の酸化アルミニウム(Al2O3)が介在物として混入している。鋼材スラブ中には気泡が取り込まれていることもあるが、気泡は多くの場合、鋳造工程の後の圧延工程において圧潰されて問題となることは少ない。然しながら、鋼材スラブ中に介在物が存在する場合には、圧延工程で鋼帯の割れを生じたり、鋼材の出荷先である例えば自動車製造者において塑性加工を行う際に製品の割れを生じたりする。
こうした介在物は、鋼材と比較して比重が非常に小さいために、冷却過程において浮力により鋼材内で浮上し、鋼材の表面から50mm程度の深さに存在することが多い。そこで、超音波送信子18aは、鋼材スラブの冷却過程において上側に配置された側面を臨むように配置し、かつ、鋼材の表面から50mm程度の深さの位置に焦点を結ぶように形成することが好ましい。
鋼材と非金属介在物との間の結合剛性は、図3に示すように、圧縮相と引張(希薄)相で異なり、引張側が圧縮側よりも低くなっている。超音波の伝播速度はヤング率の平方根に比例するので、伝播速度は圧縮相において引張相よりも高くなる。そのため、正弦バースト波が検査対象物16に入射したとき、伝播後の波形に歪みを生じ、この歪みは高調波(入射波周波数の整数倍の周波数を持つ波)の振幅で定量化することが可能である(図4参照)。従って、入射波振幅に対する高調波、特に二次高調波の振幅の比を得ることにより、非金属介在物の存在の有無が判定可能となる。本発明は、これを原理として検査対象物16中の非金属介在物を検出するようにしている。
非線形量力歪みの関係は以下の式にて与えられる。
σ=E1ε+E2ε2 (E2:負)…(1)
式(1)に従う弾性体の一次元波動方程式の解は以下の式にて与えられる。
Figure 2005106636
ここで、
u:変位
1:入射波振幅
1:鋼材ヤング率
2:非金属介在物ヤング率
i:虚数単位
k:波数(2π/λ(波長))
x:距離
ω:2πf(周波数)
である。
二次高調波成分の振幅をA2とすると、
Figure 2005106636
で表される。
従って、入射波振幅に対する二次高調波振幅の比は以下の式にて得られる。
Figure 2005106636
式(4)から、入射波振幅に対する二次高調波振幅の比は、入射振幅および伝播距離に比例し、波数の二乗に比例する。なお、鋼結晶粒間では、結晶方位の差による弾性係数の異方性が存在するが、鋼粒と介在物との界面では、引張相と圧縮相による剛性の差が無いので、測定装置で検出できる高調波は励起されない。
図1に示した実験装置で、酸化アルミニウム(直径1.2mm)および気泡(直径1.2mm)を夫々含む鋼材スラブを検査対象物16として用いて行った実験結果を図5に示す。なお、実験は入射波周波数を2MHzとし、4MHzの二次高調波の振幅を測定して行った。
図5を参照すると、送信子18aに印加する送信正弦バースト波励起電圧を高めて入射波振幅を高くすると、それに比例してA2/A1が高くなり、式(4)の正当性が検証されることが理解されよう。
更に、検査対象物16が欠陥が無い場合の同様の実験結果を図6に示す。図6のグラフを参照すると、送信子18aに印加する送信正弦バースト波励起電圧を高めて入射波振幅を高くすると、それに比例してA2/A1が低くなっていることが理解されよう。これは、検査対象物16に欠陥が無いために、A2成分としては超音波受信子18bの非線形成分のみが残り、この超音波受信子18bの非線形成分が入射波振幅に対して概ね一定であるためであると考えられる。
なお、他の実施形態として、超音波受信子から極性の異なる2種の超音波正弦バースト波を送出し、透過した2種の超音波正弦バースト波の波形を重ね合わせ偶数次の高調波の振幅を算出することにより、検査対象物に含まれる介在物を検出することも可能である。すなわち、極性の異なる2種の超音波正弦バースト波を送出した場合の各変位は、式(2)より以下の式のようになる。
Figure 2005106636
Figure 2005106636
従って、極性の異なる2種の超音波正弦バースト波を送出した場合の変位に対応する各検出波形を重ね合わせた場合、以下の式のようになり、偶数次の高調波成分のみを抽出することが可能となり、その結果、高調波成分の生成に寄与している非金属介在物の有無を評価可能となる。
Figure 2005106636
本発明による超音波探傷装置の一例を示すブロック図である。 検査対象物としての鋼材スラブの構造を示す模式図である。 鋼材と非金属介在物との間の結合剛性を示すグラフである。 超音波受信子からの信号に含まれる入射波振幅と、高調波を示すグラフである。 検査対象物として酸化アルミニウムおよび気泡を夫々含む鋼材スラブを用いて行った実験結果を示すグラフである。 検査対象物として欠陥が無い鋼材スラブを用いて行った実験結果を示すグラフである。
符号の説明
10…探傷装置
12…水槽
14…テーブル
16…検査対象物
18a…超音波送信子
18b…超音波受信子
20…走査装置
22…駆動装置
24…制御装置
26…パーソナルコンピュータ
28…オシロスコープ

Claims (7)

  1. 検査対象物を挟んで超音波送信子と超音波受信子とを対向させて配置する段階と、
    前記超音波送信子から超音波正弦バースト波を送出する段階と、
    前記検査対象物を透過した超音波正弦バースト波を前記超音波受信子により受信する段階と、
    前記超音波受信子から送出される信号を処理して、前記透過した超音波正弦バースト波の入射波振幅に対する二次高調波の振幅の比を得る段階とを具備し、検査対象物に含まれる介在物を検出する超音波探傷方法。
  2. 検査対象物を挟んで超音波送信子と超音波受信子とを対向させて配置する段階と、
    前記超音波送信子から極性の異なる2種の超音波正弦バースト波を送出する段階と、
    前記検査対象物を透過した超音波正弦バースト波を前記超音波受信子により受信する段階と、
    前記超音波送信子から極性の異なる2種の超音波正弦バースト波を送出し、透過した2種の超音波正弦バースト波の波形を重ね合わせ偶数次の高調波の振幅を算出する段階とを具備し、検査対象物に含まれる介在物を検出する超音波探傷方法。
  3. 検査対象物を固定する手段と、
    前記検査対象物を挟んで配置された超音波送信子と超音波受信子とから成る超音波素子と、
    前記超音波送信子に接続され該超音波送信子から超音波正弦バースト波を送出せしめる発信子と、
    前記超音波受信子から送出される処理して、前記透過した超音波正弦バースト波の入射波振幅に対する二次高調波の振幅の比を得るための信号処理手段とを具備する超音波探傷装置。
  4. 検査対象物を固定する手段と、
    前記検査対象物を挟んで配置された超音波送信子と超音波受信子とから成る超音波素子と、
    前記超音波送信子に接続され該超音波送信子から極性の異なる2種の超音波正弦バースト波を送出せしめる発信子と、
    前記超音波送信子から極性の異なる2種の超音波正弦バースト波を送出し、透過した2種の超音波正弦バースト波の波形を重ね合わせ偶数次の高調波の振幅を算出するたの信号処理手段とを具備し、検査対象物に含まれる介在物を検出する超音波探傷装置。
  5. 更に水を貯留するための貯水手段を具備し、前記検査対象物および超音波素子を前記貯水手段により貯留された水中に浸漬するようにした請求項3または4に記載の超音波探傷装置。
  6. 前記超音波素子は、少なくとも向かい合う前記検査対象物の平面に沿って該検査対象物に対して相対的に移動可能に設けられている請求項3から5の何れか1項に記載の超音波探傷装置。
  7. 前記検査対象物は溶融鋼材を鋳造した鋼材であり、前記超音波送信子は、前記鋼材を検査対象物として配置されている請求項3から6の何れか1項に記載の超音波探傷装置。
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