JP2005104946A - エゾウコギ(学名AcanthopanaxsenticosusHarms)由来の炎症抑制物質 - Google Patents
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Abstract
【課題】 イソフラキシジン、またはイソフラキシジンを含有することを特長とするエゾウコギ抽出物が、炎症誘発性の酵素蛋白質遺伝子、および炎症誘発性サイトカインの転写を抑制することを示すことによって、炎症抑制性の機能性物質ならびに薬剤の素材を提供する。
【解決手段】 イソフラキシジン(7−Hydroxy−6,8−dimethoxycoumarin)を有効成分として含有する抗炎症剤あるいは抗炎症性食品素材。
【選択図】なし
【解決手段】 イソフラキシジン(7−Hydroxy−6,8−dimethoxycoumarin)を有効成分として含有する抗炎症剤あるいは抗炎症性食品素材。
【選択図】なし
Description
本発明は、植物性の炎症抑制物質に関する。
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に代表される慢性の炎症性疾患は、代表的な生活習慣病の一つであって、高齢化社会において、その予防、抑制、ならびに治療が望まれる主要な疾患の一群をなすものである。
慢性の炎症性疾患のうち、とくにRAについて付け加えれば、この疾患は関節滑膜を病変の主座とする難治性の炎症性疾患であり、病変が進行すれば、軟骨ならびに骨の破壊を引き起こし、関節の機能低下、機能障害へと至る。これらの身体障害と、これに伴うさまざまな不利益こそが、この疾患の最大の問題点となる。現在のところ、RAの発症には、遺伝的素因、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に絡み合い、その詳細は不明である。慢性期RAでは、マクロファージ、滑膜繊維芽細胞より炎症性サイトカインが過剰に産出されることが知られている。これら炎症性のサイトカインは、インターロイキン−1(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)、腫瘍壊死因子(TNFα)などが主であり、これら過剰に生産されたサイトカインはさらに多くの滑膜繊維芽細胞、マクロファージの活性化、増殖を惹起し、症状の悪化の原因となることが知られている。
これら炎症性疾患の抑制ならびに治療のために、すでに多大な背景技術が蓄積している(例えば非特許文献1参照。)。すなわち、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、ならびに副腎皮質ステロイドで代表される薬剤が医薬品として開発され広範に使用されている。ここで、非ステロイド系抗炎症薬はアラキドン酸カスケードにかかわるシクロオキシゲナーゼ(COX)などの酵素反応の抑制により、炎症惹起物質であるプロスタグランジンの生成を抑制することによって炎症を抑制し、副腎皮質ステロイドは炎症性サイトカインの生産の抑制、細胞増殖の抑制、さらには免疫機能の抑制など広範な作用を示すことによって炎症を抑制することが明らかとなっている。加えて金製剤、メトトレキセートなどの細胞増殖抑制剤、免疫抑制剤が使用されている。またさらに最近は、炎症にともなって生産される酵素蛋白質に対するモノクローナル抗体などが治療薬として開発され、それぞれ限定された疾患に対して使用されつつある。
これらの薬剤によって、症状の緩和、痛みの軽減などの治療効果が得られ、さらに病気の進行を遅らせ、身体の機能障害を防ぐなどの効果も得られている。しかしながら、一方、重大な副作用が発生するなどの問題を無視できず、また対症療法的な治療にとどまっているなど、完成されたものとはいいがたい。
さらにRAについて付け加えれば、RAの治療は生涯に及ぶことが多く、薬剤に対しては薬効にも増して安全性が重視される。比較的頻繁に使用されているNSAIDsに関していえば、これらは安全性に富む薬剤として、治療上欠かすことのできない薬剤であるが、実際には胃腸障害、腎障害など多様な副作用を有することが明らかとなっている(例えば、非特許文献2参照。)。さらに薬剤共通の課題として、効力の強い薬剤は概して副作用が強いことから、安全性を重視した毒性の少ない治療薬が望まれている。
従来リウマチ性の関節炎に対する漢方薬、あるいは民間薬として、20にあまる多数の処方が知られており(例えば、非特許文献3参照。)。芍薬、附子、甘草、五加皮などの生薬がこれらに含まれている。五加皮について付け加えれば、これらの処方に主に使用されている生薬であるが、五加皮には、従来より由来する植物が異なる北五加皮(杠柳、periploca sepium由来)と南五加皮(エゾウコギ、Acanthopanax senticosus Harms由来)の2種類が知られている。北五加皮に関しては、発明者らにより、periploca sepiumの植物体熱水抽出物がリウマチ性関節患者由来の滑膜繊維芽細胞の増殖、IL−6の生産性を抑制することを示し、有効成分を含む分画の製造方法を発明している(例えば、特許文献1参照。)。
一方、南五加皮として種別される本邦産のエゾウコギ(ウコギ科に属し、学名がAcanthopanax senticosus Harmsがさす植物と同じ)ついては、抗ストレス、血圧調整、強壮、精神安定、リウマチ性関節炎等に用いられてきた。エゾウコギにはイソフラキシジン、各種エレウテロサイド類、クロロゲン酸が薬効成分として含有されることが指摘されてきている。これらの成分の内、イソフラキシジンは鎮静作用、エレウテロサイド類は抗ストレス、抗疲労作用、クロロゲン酸は抗酸化を示すと言われているが、その詳細な生化学機構に対する理解は不十分であり、とくにエゾウコギの抗リウマチ効果が、これら含有物質のうちのどの物質によるものであり、またいかなる作用によって起因するものであるか、科学的に裏付けがなされずに、単に経験的な使用にとどまって現在に至ったものである。
高橋明「慢性関節リュウマチの治療の実際 治療総論/治療のストラテジー」.内科78,2,271−276(1996−98) 斎藤輝信「NSAIDsの功罪」医学の歩み182,9,621−625(1997) 水野瑞夫、米田該典、「家庭の民間薬・漢方薬」新日本法規(1997)参照 特開2003−34645
高橋明「慢性関節リュウマチの治療の実際 治療総論/治療のストラテジー」.内科78,2,271−276(1996−98) 斎藤輝信「NSAIDsの功罪」医学の歩み182,9,621−625(1997) 水野瑞夫、米田該典、「家庭の民間薬・漢方薬」新日本法規(1997)参照
慢性炎症疾患とくにRAに対しては、上記背景技術の項に示したように、これを完全に治す治療法がなく、対症療法的に抗炎症剤、免疫抑制剤が使用されているのが現状である。これらは、多くの副作用を引き起こすという問題点があり、長期使用の際にはなお注意が必要となる。
したがって、本発明の目的は、従来より食品素材として使用されていて、安全性が確保されており、長期に渡る服用が可能で副作用が起こりにくいうえに、関節性リウマチに対して効果があると言われてきたエゾウコギの成分のなかから、抗炎症作用を示す物質を特定し、さらにその作用機序を明らかにすることによって、炎症性疾患に対して効果を有する副作用の少ない作用物質を提供することにある。また、ここで特定した作用物質を、有効成分として含有し、炎症性疾患、特にRAを抑制する効果を有する副作用の少ない食品素材ならびに治療薬素材を提供することにある。
すなわち、本発明は、この課題を解決するために、RAにおいては、滑膜組織が増殖、肥厚し、機能過剰になることにより、IL−6を初めとするサイトカインやプロテアーゼ蛋白質、プロスタグランジンなどの炎症惹起物質が産出されることに着目した(例えば、非特許文献4参照。)。
さらに、細胞バンクから容易に入手できるヒト滑膜肉腫細胞株SW982細胞が、IL−1β刺激の有無にかかわらず、IL−1β、IL−6、トランスフォーミング成長因子(TGF−β)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)1、3など、RAの病態に決定的な役割を果たしている種々の炎症性サイトカインやメタロプロテアーゼを産出していること、ならびに、SW982細胞のIL−1β刺激下でのこれらサイトカインやメタロプロテアーゼ産生が、関節リウマチならびに多くの炎症性疾患発生の細胞レベルでのモデルとなること、に着目した(例えば、非特許文献5参照)。
そこで、SW982細胞を培養し、細胞の増殖、IL−1βにより誘導されるIL−6蛋白質の産出、ならびに各種遺伝子の転写発現変化をそれぞれ定量的に測定できる手段を構築した。
このようにして構築した作用物質評価系を用いて、細胞増殖への影響、IL−6蛋白質の産出抑制効果、ならびにIL−1β、IL−6、MMP−1、及びCOX−2蛋白質遺伝子の転写抑制効果を鋭意検討した結果、エゾウコギ有効成分の一つであるイソフラキシジンが、これら炎症性サイトカイン遺伝子ならびに炎症性蛋白質遺伝子の転写の抑制を来すこと、ならびにこれら遺伝子の産物である蛋白質の産生の抑制を来すことを見いだし、本発明に到達したものである。
山村昌弘、槇野博史「慢性間接リウマチ」医学の歩み573−578(1997) Tsuji Fら(1999) Immunol Lett 68,275−279.
山村昌弘、槇野博史「慢性間接リウマチ」医学の歩み573−578(1997) Tsuji Fら(1999) Immunol Lett 68,275−279.
1.イソフラキシジンが、MMP−1、COX−2といった炎症誘発性の酵素蛋白質遺伝子の転写を間接、又は直接に抑制することを示すことによって、従来知られている炎症抑制物質に加え、新たな炎症抑制性の機能性物質あるいは薬剤の素材を提供した。
2.イソフラキシジンを有効成分として含有することを特長とするエゾウコギ抽出物が、その含有するイソフラキシジンの作用により、MMP−1、COX−2といった炎症誘発性酵素蛋白質遺伝子の転写を間接的又は直接的に抑制することを示すことによって、抗炎症作用機序の明らかな新たな機能性食品の素材を提供した。
3.イソフラキシジンが、炎症誘発性サイトカインIL−1βならびにIL−6について、IL−6蛋白質産生の抑制、ならびにIL−1β遺伝子及びIL−6遺伝子転写を、間接的又は直接的に抑制することを示すことによって、抗リウマチ作用を含む炎症抑制性の新たな機能性食品、あるいは薬剤、の素材を提供した。
4.イソフラキシジンを含有することを特長とするエゾウコギ抽出物が、その含有するイソフラキシジンの作用によって、炎症を誘発するサイトカインであるIL−1βならびにIL−6について、IL−6蛋白質の産生、ならびにIL−1β遺伝子及びIL−6遺伝子の転写を、間接的又は直接的に抑制することを示すことによって、抗リウマチ作用を含む炎症抑制性の新たな機能性食品、あるいは薬剤、の素材を提供した。
本発明で用いられているイソフラキシジンは化学式7−Hydroxy−6,8−dimethoxycoumarinであり、その配糖体Isofraxidin 7−O−β−D−glucopyranoside(エレウテロサイドB1)についても、容易に加水分解されイソフラキシジンに変換されることから、この配糖体及び、他の糖で修飾されたイソフラキシジンについても、本発明に含まれる。
また、イソフラキシジンは、単体でも本発明の効果を発揮するが、エゾウコギの茎、根茎、根、葉より熱水、エタノール等により抽出したエキスについても十分な含量を有していることが明らかであり、これらのエキスを使用しても本発明の効果を有する。
以下に実験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実験例のみに限定されるものではない。以下の本実施例においては、イソフラキシジンは、和光純薬より販売されているIsofraxidin standardを使用している。しかし、同様の標品、その水和物、等級品は他のルートからも入手可能であり、化学式7−Hydroxy−6,8−dimethoxycoumarinであればその品位によらない。また以下実施例におけるデキサメサゾンは、すでに作用の知られた対照物質として用いたものである。
実験例1:細胞増殖に対する影響
試験方法:凍結保存してある、ヒト滑膜肉腫細胞株SW982細胞を解凍し、終濃度が10%v/vとなるように牛胎児血清(FBS)を添加したRPMI1640培地−(以下増殖培地)中に浮遊させ、1ウエルにつき3000個になるように、0.5mLずつ、96穴ウエルプレートに播種した。同時にIL−1βを終濃度2ng/mLになるように添加した。さらに、デキサメサゾンについては、終濃度0.08、0.5、3μMになるように添加し、イソフラキシジンについては、終濃度4.5、13.5、45、135、450μMになるように添加し、クロロゲン酸については、最終濃度2.7、8.1、27、81、270μMになるように添加した。このようにして播種した細胞培養を、5%CO2ガスを含む加湿した気相中、37℃に保温して2日間培養を行った。培養後、細胞の増殖をMTT法(例えば、非特許文献6参照。)にて測定し無添加群の増殖に対する比をとって、増殖抑制効果を判定した。
試験方法:凍結保存してある、ヒト滑膜肉腫細胞株SW982細胞を解凍し、終濃度が10%v/vとなるように牛胎児血清(FBS)を添加したRPMI1640培地−(以下増殖培地)中に浮遊させ、1ウエルにつき3000個になるように、0.5mLずつ、96穴ウエルプレートに播種した。同時にIL−1βを終濃度2ng/mLになるように添加した。さらに、デキサメサゾンについては、終濃度0.08、0.5、3μMになるように添加し、イソフラキシジンについては、終濃度4.5、13.5、45、135、450μMになるように添加し、クロロゲン酸については、最終濃度2.7、8.1、27、81、270μMになるように添加した。このようにして播種した細胞培養を、5%CO2ガスを含む加湿した気相中、37℃に保温して2日間培養を行った。培養後、細胞の増殖をMTT法(例えば、非特許文献6参照。)にて測定し無添加群の増殖に対する比をとって、増殖抑制効果を判定した。
試験結果:このようにして培養したSW982細胞の増殖に及ぼすデキサメサゾン、イソフラキシジン、クロロゲン酸の効果をそれぞれ図1、2、3に示す。デキサメサゾン添加群では、各濃度においても、無処理と比べて細胞増殖に差は見られなかった。またイソフラキシジン添加群では、4.5から135μMまでの濃度では、増殖への影響は見られないが、450μMの濃度では、60%近くの抑制が見られた。さらにまたクロロゲン酸添加群では、各濃度においても、増殖の差は見られなかった。したがって、どの物質においても、特にイソフラキシジンについては、450μMといった高濃度に達しないかぎり、細胞増殖に対する影響はないと判断された。
実験例2:IL−6産出に対する影響
試験方法:SW982細胞を、増殖培地に浮遊させ、1ウエルにつき3000個になるように、0.5mLずつ96穴ウエルプレートに播種した。同時にIL−1βを終濃度2ng/mLになるように添加した。それぞれの培養皿に、デキサメサゾンについては終濃度0.08、0.5、3μMになるように添加し、イソフラキシジンについては、4.5、13.5、45、135、450μMになるように添加し、クロロゲン酸については、2.7、8.1、27、81、270μMになるように添加し、このようにして播種した細胞培養を、5%CO2ガスを含む加湿した気相中、37℃に保温して2日間培養を行った。この培養上清中のIL−6の濃度をELISA kit(Endogen,Woburn,MA,USA)によって測定した。
試験方法:SW982細胞を、増殖培地に浮遊させ、1ウエルにつき3000個になるように、0.5mLずつ96穴ウエルプレートに播種した。同時にIL−1βを終濃度2ng/mLになるように添加した。それぞれの培養皿に、デキサメサゾンについては終濃度0.08、0.5、3μMになるように添加し、イソフラキシジンについては、4.5、13.5、45、135、450μMになるように添加し、クロロゲン酸については、2.7、8.1、27、81、270μMになるように添加し、このようにして播種した細胞培養を、5%CO2ガスを含む加湿した気相中、37℃に保温して2日間培養を行った。この培養上清中のIL−6の濃度をELISA kit(Endogen,Woburn,MA,USA)によって測定した。
試験結果:このようにして培養したSW982細胞のIL−6産生に及ぼすデキサメサゾンの効果を図4、イソフラキシジンの効果を図5、クロロゲン酸の効果を図6に示す。デキサメサゾンは濃度依存的にIL−6産出量を抑制し、3μMでは、6割近くIL−6産出量が減少した。イソフラキシジンは、4.5から45μMまでの濃度では、0μMと変わらず、135、450μMにおいて産生の減少が見られた。クロロゲン酸は、2.7から27μMまでの低濃度では0μMに比べ、IL−6の産生を増加させる結果となった。81から270μMの高濃度になると、コントロールと同程度となった。したがって、デキサメサゾン、イソフラキシジンは、IL−1βが誘導するIL−6産出を抑制し、クロロゲン酸は、低濃度ではIL−6産出を促進する。すなわち、イソフラキシジンは、IL−6の産生抑制することにより、RAの進行を抑制する作用を有していることを示している。
実験例3遺伝子発現に対する影響:
試験方法:SW982細胞を、増殖培地に浮遊させ、1ウエルにつき3000個になるように、0.5mLずつ、96穴ウエルプレートに播種した。同時にIL−1βを終濃度2ng/mLになるように添加した。それぞれの培養皿に、デキサメサゾンについては終濃度0.3、3μMになるように添加し、イソフラキシジンについては、135、450μMになるように添加し、クロロゲン酸については、81、270μMになるように添加し、このようにして播種した細胞培養を、5%CO2ガスを含む加湿した気相中、37℃に保温して2日間培養を行った。培養後、トリプシン−EDTAにて細胞を剥離し、グアニジウムチオシアネート法(例えば、非特許文献7参照。)を用いることで、RNAを抽出した。
試験方法:SW982細胞を、増殖培地に浮遊させ、1ウエルにつき3000個になるように、0.5mLずつ、96穴ウエルプレートに播種した。同時にIL−1βを終濃度2ng/mLになるように添加した。それぞれの培養皿に、デキサメサゾンについては終濃度0.3、3μMになるように添加し、イソフラキシジンについては、135、450μMになるように添加し、クロロゲン酸については、81、270μMになるように添加し、このようにして播種した細胞培養を、5%CO2ガスを含む加湿した気相中、37℃に保温して2日間培養を行った。培養後、トリプシン−EDTAにて細胞を剥離し、グアニジウムチオシアネート法(例えば、非特許文献7参照。)を用いることで、RNAを抽出した。
逆転写酵素反応(RT反応)は、100UのMMLV逆転写酵素を用いて42℃、20分行った。得られたcDNA溶液に対し、IL−1β遺伝子に特異的なプライマー(センスプライマーとアンチセンスプライマー)を加え、1.25U TaqDNAポリメラーゼを用いて20サイクルのPCR(熱変性94℃で1分、アニーリング55℃で1分、伸長反応72℃で2分)を行った。PCR増幅によって、391bpのIL−1βcDNAを得た。用いたプライマーは、配列番号1と配列番号2である。
また、RT反応によって得られたcDNA溶液に対し、IL−6遺伝子に特異的なプライマーを加え、1.25U TaqDNAポリメラーゼを用いて20サイクルのPCR(熱変性94℃で1分、アニーリング55℃で1分、伸長反応72℃で2分)を行った。PCR増幅によって、629bpのIL−6cDNAを得た。用いたプライマーは、配列番号3と配列番号4である。
さらにまた、RT反応によって得られたcDNA溶液に対し、COX−2遺伝子に特異的なプライマーを加え、1.25U TaqDNAポリメラーゼを用いて20サイクルのPCR(熱変性94℃で1分、アニーリング55℃で1分、伸長反応72℃で2分)を行った。PCR増幅によって、305bpのCOX−1cDNAを得た。用いたプライマーは、配列番号5と配列番号6である。
さらにまた、RT反応によって得られたcDNA溶液に対し、MMP−1遺伝子に特異的なプライマーを加え、1.25U TaqDNAポリメラーゼを用いて20サイクルのPCR(熱変性94℃で1分、アニーリング55℃で1分、伸長反応72℃で2分)を行った。PCR増幅によって、550bpのMMP−1cDNAを得た。用いたプライマーは、配列番号7と配列番号8である。
さらにまた、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(G3PDH)を内標準物質として採用した。RT反応によって得られたcDNA溶液に対し、G3PDH遺伝子に特異的なプライマーを加え、1.25U TaqDNAポリメラーゼを用いて20サイクルのPCR(熱変性94℃で1分、アニーリング55℃で1分、伸長反応72℃で2分)を行った。PCR増幅によって、550bpのG3PDHcDNAを得た。用いたプライマーは、配列番号9と配列番号10である。
以上のようにして各々増幅させたPCR産物は、1.5%アガロースゲル内で電気泳動を行い、エチジウムブロマイドにより染色を施した。このようにして染色したゲル上で、トランスイルミネーターを使用したUV照射によってバンドを検出した。このバンドが分子量標準DNAのサイズとの比較によって、PCR増幅によって得られる目的のバンドであることを確認した後、写真撮影を行った。目的とするDNAバンドの発色強度をデンシトメーターにて数値化し、G3PDHの発色強度を対照とし、その相対値(OD/G3PDH)を算出した。
試験結果(1):このようにして培養したSW982細胞のIL−1β、IL−6、COX−2、MMP−1各遺伝子発現の変化におけるデキサメサゾンの効果を図7に示す。
IL−1β未添加では、IL−1β、IL−6、MMP−1が恒常的に発現しており、一方でCOX−1の発現はほとんど見られなかった。IL−1βのみを添加したものについては、高発現している3種について、ほとんど変化が確認されなかったが、COX−2は、約10倍に増加していた。デキサメサゾンを添加したものについては、測定を行ったすべてについて減少が見られ、特にIL−1β、IL−6、MMP−1については、0.3μMの添加で、1/3〜1/6倍に減少していた。
IL−1β未添加では、IL−1β、IL−6、MMP−1が恒常的に発現しており、一方でCOX−1の発現はほとんど見られなかった。IL−1βのみを添加したものについては、高発現している3種について、ほとんど変化が確認されなかったが、COX−2は、約10倍に増加していた。デキサメサゾンを添加したものについては、測定を行ったすべてについて減少が見られ、特にIL−1β、IL−6、MMP−1については、0.3μMの添加で、1/3〜1/6倍に減少していた。
IL−1β未添加の結果から、SW982細胞では、IL−1β、IL−6、MMP−1が高発現しており、これらが恒常的に遺伝子発現をしていることを示している。さらにIL−1βの添加によって、IL−6、IL−8、ケモカイン受容体CXCR2のリガンドであるGROα、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、TNF−aのサイトカインが誘導されることが知られている(例えば非特許文献5参照。)。これらの炎症性物質に加え、COX−2についても発現量が10倍近く増加し、IL−1βによるCOX−2の誘導が引き起こされることが示された。デキサメサゾンを加えることにより、これら炎症性物質の転写が抑制され、恒常的に発現しているIL−1β、IL−6、MMP−1、及びIL−1βにより誘導されたCOX−2を強く抑制した。
試験結果(2):IL−1β刺激下で培養したSW982細胞のIL−1β、IL−6、COX−2、MMP−1各遺伝子発現の変化におけるイソフラキシジンの効果を図8に示す。イソフラキシジン未添加では、試験結果(1)と同実験系であるので、IL−1β、IL−6、MMP−1が恒常的に発現し、COX−2が誘導されて発現していることを示している。イソフラキシジンを添加することにより、これらの転写は、135μMの濃度で抑制効果が見られた。その傾向は、測定している炎症性物質によらず、約1/2の同程度な抑制を示した。すなわち、イソフラキシジンは、測定したすべての炎症性物質に効果があり、IL−6に関していえば、遺伝子発現を抑制することで、蛋白合成を抑制し、IL−6産出量の減少を引き起こしていると考えられる。
試験結果(3):IL−1β刺激下で培養したSW982細胞のIL−1β、IL−6、COX−2、MMP−1各遺伝子発現の変化におけるクロロゲン酸の効果を図9に示す。IL−1β未添加では、試験結果(1)と同実験系であるので、IL−1β、IL−6、MMP−1が恒常的に発現し、COX−2が誘導されて発現していることを示している。クロロゲン酸は、IL−1β、COX−2の遺伝子発現の濃度依存的な抑制を示した。これに対し、IL−6、MMP−1の遺伝子発現量には変化は見られなかった。この結果から、クロロゲン酸の抗炎症作用は一部に限られるものと推察された。
N.NomuraらBiotechnology Techniques. 883−888. 10(11). 1996. Chomczynskiら.Anal.Biochem.162,156−159,1987.
N.NomuraらBiotechnology Techniques. 883−888. 10(11). 1996. Chomczynskiら.Anal.Biochem.162,156−159,1987.
Claims (4)
- イソフラキシジン(7−Hydroxy−6,8−dimethoxycoumarin)を有効成分として含有する抗炎症剤ならびに抗炎症性食品素材。
- エゾウコギ(学名Acanthopanax senticosus Harms)の抽出物であって、イソフラキシジンを有効成分として含有することを特長とする抗炎症剤ならびに抗炎症性食品素材。
- イソフラキシジンを有効成分として含有する抗リウマチ剤ならびに抗リウマチ性食品素材。
- エゾウコギの抽出物であって、イソフラキシジンを有効成分として含有することを特長とする抗リウマチ剤ならびに抗リウマチ性食品素材。
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-
2003
- 2003-09-30 JP JP2003374954A patent/JP2005104946A/ja active Pending
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---|---|---|---|---|
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