JP2005104858A - 化粧用貼付材パッケージ - Google Patents

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Takeyuki Okazaki
健之 岡崎
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【課題】ビタミンCの酸化や加水分解劣化を回避でき、使用時にはビタミンCを有効に放出できる、一定の良好な粘着力を備えた化粧用貼付材パッケージを提供する。
【解決手段】セグメントの大半ないし全てが常温で液状である実質的に水分を含まない粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルにビタミンCが含有されてなる化粧用貼付材3と、化粧用貼付材3を収容する収容凹部1aが形成されたトレイ1と、トレイ1の上に重ねられるカバー体5であって、該収容凹部1aに供給する水6が入った貯水部5aを有し、該貯水部5aに外力を加えると該貯水部の底面5cが開放するようにしたカバー体5と、を具備した構成の化粧用貼付材パッケージPとする。ゲル中にビタミンCを乾燥状態で含有保持させるのでビタミンCの酸化や加水分解劣化を回避でき、使用時に貯水部5cを開放して水6をゲルに吸収させてビタミンCを溶解するため有効に放出できる。しかもセグメント化ポリウレタンは、含水ゲルのように含水量の変化で粘着力が増減しない。
【選択図】図2

Description

本発明は、ビタミンCを含有する化粧用貼付材が収容された化粧用貼付材パッケージに関する。
代表的な水溶性ビタミンであるビタミンCや、代表的な脂溶性ビタミンであるビタミンEは、美白作用、色素沈着抑制、皮膚の老化抑制、肌荒れ防止などの効能を有することが知られている。このようなビタミンをヒドロゲルの基材に含有させた化粧用貼付材として、ポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸塩と水と架橋剤を必須成分とするアクリル系の架橋型含水ゲルよりなる基材に、ビタミンその他の美肌成分を含有させたシート状パック剤が知られている(例えば特許文献1参照)。また、ゼラチンや寒天などの天然性ヒドロゲルに美肌成分を含有させたものもある。
上記のシート状パック剤は、水溶性ビタミンを含水ゲルの基材に相溶させて含有させることができる。けれども、容易に酸化され加水分解される水溶性のビタミンC(アスコルビン酸)を含有させると、ゲル分解により生じた酸性化合物によって侵されて劣化や着色を生じるという問題があった。また、含水ゲルよりなる基材は含水量によって粘着力が大きく変化し、含水量が減少すると粘着力が大幅に低下するという問題もあった。
特開昭58−180408号公報(第1頁)
本発明は、ビタミンCの酸化や加水分解劣化を回避でき、生じる酸性物質によってゲルが劣化することなく安定に保存でき、使用時にはビタミンCを有効に放出できる、一定の良好な粘着力を備えた化粧用貼付材パッケージを提供することを解決課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の化粧用貼付材パッケージは、セグメントの大半ないし全てが常温で液状である実質的に水分を含まない粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルにビタミンCが含有されてなる化粧用貼付材と、上記化粧用貼付材を収容する収容凹部が形成されたトレイと、上記トレイの上に重ねられるカバー体であって、上記収容凹部に供給する水が入った貯水部を有し、該貯水部に外力を加えると該貯水部の底面が開放するようにしたカバー体と、を具備したものである。
また、本発明のもう一つの化粧用貼付材パッケージは、セグメントの大半ないし全てが常温で液状である実質的に水分を含まない粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルにビタミンCが含有されてなる化粧用貼付材と、上記化粧用貼付材を収容する収容凹部が形成されたトレイと、上記化粧用貼付材の上に重ねて上記トレイの収容凹部に収容され、外力を加えると開放するようにした貯水袋と、を具備したものである。
本発明の化粧用貼付材パッケージにおいては、上記セグメント化ポリウレタンゲルが、親水性のエチレンオキサイドのセグメントと疎水性のプロピレンオキサイドのセグメントを有するか、又は、親水性のエチレンオキサイドと疎水性のプロピレンオキサイドとの共重合体よりなるセグメントを有するものであることが望ましい。そして、上記トレイの上に重ねられたカバー体の貯水部が上記収容凹部の上方に位置していることが望ましい。また、上記トレイの収容凹部が2箇所に形成されると共に、双方の収容凹部を連通させる連通溝が上記トレイに形成され、この連通溝の上に上記貯水部が位置するように上記カバー体が上記トレイに重ねられることも望ましい。更に、上記トレイの収容凹部の底面に小さい凹凸が形成されたり、ネットが敷設されることも望ましい。本発明にいう「実質的に水を含まない」とは、水が1重量%以下と極く微量含まれている状態をいい、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下の状態をいう。
本発明の化粧用貼付材パッケージは、化粧用貼付材のセグメント化ポリウレタンゲルが実質的に水分を含まない無水ゲルである。従って、ビタミンCを乾燥状態で安定にゲル中に含有できるので、ビタミンCが加水分解して経時的に変質、劣化することがなく、生じる酸性物質によってポリウレタンゲルが劣化することもない。しかも、このポリウレタンゲルはセグメントの大半ないし全てが常温で液状である無水ゲルであるため良好な粘着力を有し、従来のヒドロゲルのように含水率の変化によって粘着力が大きく変化することがない。
そして、カバー体がトレイの上に重ねられる化粧用貼付材パッケージは、使用時に該カバー体の貯水部に外力を加えて該カバー体の底面を開放すると、貯水部の水が収容凹部に流入して化粧用貼付材のポリウレタンゲルに浸透、吸収され、この吸収された水にビタミンCが溶解する。従って、この化粧用貼付材パッケージのカバー体を除去して化粧用貼付材を顔面に貼付すると、水に溶解したビタミンCがポリウレタンゲルから皮膚へ移行してすみやかに吸収されるので、美白作用、色素沈着抑制、抗酸化作用などのビタミンCの効能を発揮できる。
また、貯水袋を化粧用貼付材に重ねてトレイの収容凹部に収容した化粧用貼付材パッケージも、使用時に貯水袋に外力を加えて開放すると水が化粧用貼付材のポリウレタンゲルに浸透、吸収されてビタミンCが溶解するので、この化粧用貼付材を顔面に貼着するとビタミンCが皮膚に移行、吸収されて上記の効能を発揮できる。
セグメント化ポリウレタンゲルが、親水性のエチレンオキサイドのセグメントと疎水性のプロピレンオキサイドのセグメントを有するか、又は、親水性のエチレンオキサイドと疎水性のプロピレンオキサイドとの共重合体よりなるセグメントを有するものである場合、ビタミンCは、親水性のエチレンオキサイドのセグメント、又は、共重合体セグメントのエチレンオキサイドの部分に親和して、その一部は溶解に近い挙動を示して含有保持され、皮膚への移行も良好である。しかし、親水性のエチレンオキサイドのセグメントのみのポリウレタンゲルは、ビタミンCの保持力が強すぎて、皮膚への移行が減少するので望ましくない。
また、カバー体の貯水部がトレイの収容凹部の上方に位置している化粧用貼付材パッケージは、貯水部の底面を開放したときに水が外部に漏れることなく確実に収容凹部に流入する利点がある。一方、トレイに形成された双方の収容凹部を連通する連通溝の上に貯水部が位置するようにカバー体を重ねた化粧用貼付材パッケージは、貯水部に外力を加えて底面を開放すると、貯水部の水が連通溝を通って双方の収容凹部に均等に流れ込むので、貯水部を開放する作業が一回で済むという利点がある。更に、トレイの収容凹部の底面に小さい凹凸が形成されたり、ネットが敷設されている化粧用貼付材パッケージは、収容凹部に流入した水が、底面の凹凸やネットに沿って化粧用貼付材の裏面に回り込み、化粧用貼付材のポリウレタンゲルに均等に吸収される利点がある。
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述するが、本発明の化粧用貼付材パッケージはこれらの実施形態に限定されるものではない。
図1は本発明の一実施形態に係る化粧用貼付材パッケージを一部破断して示す平面図、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3は同化粧用貼付材パッケージの分解断面図、図4は同化粧用貼付材パッケージの使用方法の説明図、図5は同化粧用貼付材パッケージの製造方法の一例を示す説明図である。
この化粧用貼付材パッケージPは、図3に示すように合成樹脂製のトレイ1と、合成樹脂製のネット2と、ビタミンC(アスコルビン酸)を含有したセグメント化ポリウレタンゲルよりなる化粧用貼付材3と、引裂き強度が弱い被覆膜4と、貯水部5aを有するカバー体5とで構成されている。
トレイ1は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂からなる成形品であって、図1に示すように長方形の平面形状を有しており、その中央には化粧用貼付材3を収容するための収容凹部1aが形成されている。この実施形態では、顔面の目の下側から目尻に至る部分に貼付する所謂、目元パック用の湾曲した平面形状の化粧用貼付材3を収容できるように、収容凹部1aも化粧用貼付材3に対応する湾曲した平面形状に形成されている。
この収容凹部1aの底面には合成樹脂製のネット2が敷設され、その上に化粧用貼付材3が重ねられて収容されている。このネット2は、使用時にカバー体5の貯水部5aから収容凹部1aに流入した水が化粧用貼付材3の裏面に回り込んで裏面から化粧用貼付材3のセグメント化ポリウレタンゲルに均等に浸透、吸収できるようにすること、及び、後述するように化粧用貼付材3のセグメント化ポリウレタンゲルにビタミンCの水溶液を滴下、吸収させる際に、ポリウレタンゲルの該滴下面全体にビタミンCの水溶液を拡げて均等に吸収できるようにすること、を目的として設けられるものである。従って、水やビタミンCの水溶液との馴染みがよくビタミンCを吸収しない合成樹脂製ネット、例えば、太さ100〜300μm程度のナイロン樹脂のモノフィラメントを交差させて製網した30〜100メッシュ程度の網目を有するネットが好ましく使用される。撚糸で製網したネットは、撚糸の糸間にビタミンCが取り込まれる恐れがあるので、この恐れのないモノフィラメントで製網したネットが好ましい。
化粧用貼付材3は、粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルにビタミンCを含有させたものであって、この実施形態では顔面の目の下側から目尻に至る部分に貼付ける目元パック用とするために、図1に破線で示すような湾曲した平面形状に形成されている。その厚さは特に制限されないが、好ましい厚さは0.5〜2.0mm程度である。0.5mmより薄い場合は、ビタミンCの含有量が少なくなるので美顔効果が不十分になる心配があり、一方、2.0mmより厚くしてもそれに見合った効果が得られず、材料の無駄使いとなる。また、このセグメント化ポリウレタンゲルの表層部に不織布(不図示)を埋入して、腰のある丈夫な化粧用貼付材3を形成することが望ましい。また、このセグメント化ポリウレタンゲルの表層部に、不織布と合成樹脂フィルムとをラミネートしたシートを粘着して、腰があり且つ表面のベタツキをなくした化粧用貼付材3を形成することも好ましい。不織布としては、目付重量10〜60g/m程度のポリオレフィン、ポリアクリル、ポリエステル等の樹脂繊維からなる不織布が好適に使用される。また、合成樹脂フィルムとしては、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ウレタンなどで形成された、厚みが50μm以下のものが好適に使用される。
この化粧用貼付材3のセグメント化ポリウレタンゲルは、セグメントの大半ないし全てが常温で液状である実質的に水分を含まない粘着性のゲルであって、具体的には、親水性のエチレンオキサイド(EO)のセグメントと疎水性のプロピレンオキサイド(PO)のセグメントを有するか、又は、親水性のエチレンオキサイド(EO)と疎水性のプロピレンオキサイド(PO)との共重合体よりなるセグメントを有するものである。
ビタミンCは、その水溶液を上記のセグメント化ポリウレタンゲルに吸収させた後、減圧乾燥することによって、実質的に水を含まないセグメント化ポリウレタンゲルの親水性のEOのセグメント部分、又は、共重合体セグメントのEO部分に親和して含有保持されている。そのため、ビタミンCは酸化、加水分解して経時的に変質することなく長期間安定してゲル中に含有保持され、また、酸性物質も生じないのでポリウレタンゲルが劣化することもない。尚、ビタミンCは、水とエタノール等のアルコールとの混合溶媒に溶解してポリウレタンゲルに吸収させてもよい。このように混合溶媒にビタミンCを溶解してポリウレタンゲルに吸収させると、表面張力が低下して溌じかれにくくなるので、吸収性が良くなる。
セグメント化ポリウレタンゲルのEOセグメントとPOセグメントのモル比率は50〜90:50〜10であることが望ましく、EOセグメントのモル比率が上記範囲よりも低くなると、ポリウレタンゲルの疎水性が強くなって、使用時に水に溶解させたビタミンCが皮膚側に移行、放出する効率が低くなる。また、EOセグメントのモル比率が上記範囲よりも高くなると、ポリウレタンゲルの総合的な粘着力が低下したり、水との親和性が高くなりすぎて、ビタミンCの全放出率がかえって低下する。同様に、共重合体セグメントのEOとPOのモル比率も50〜90:50〜10とすることが望ましい。
尚、セグメント化ポリウレタンゲルについては、後で詳しく説明する。
トレイ1の収容凹部1aを覆う被覆膜4は、収容凹部1aに収容された化粧用貼付材3のセグメント化ポリウレタンゲルが吸湿しないように収容凹部1aを密封するもので、トレイ1の上面にラミネートされている。かかる被覆膜4としては、通気性がなく使用時に簡単に開放する引裂き強度の弱いアルミニウム箔(厚さ5〜50μm程度のもの)等の金属箔や、アルミニウム蒸着フィルム(厚さ10〜50μm程度のもの)等の金属蒸着フィルムが好ましく使用される。アルミニウム箔の場合は、押すなどの外力を加えると、簡単に裂けて開放されるし、金属蒸着フィルムの場合は、後述するV字形の突起5bにより穴があいて開放される。
トレイ1の上に重ねられるカバー体5は、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性の合成樹脂で成形されたものであって、その中央付近には長円形の平面形状を有する凸曲した貯水部5aが形成されており、この貯水部5aの上面には下端の尖ったV字形の突起5bが下向きに突設されている。そして、この貯水部5aにはトレイ1の収容凹部1aへ供給する水6が注入され、カバー体5の裏面にラミネートされた被覆膜5cによって水6がこぼれないように密封されている。この被覆膜5cは前述したトレイ1の被覆膜4と同じもので、使用時に簡単に開放する引裂き強度の弱いアルミニウム箔やアルミニウム蒸着フィルムなどが使用される。
上記カバー体5は、トレイ1の上に予め重ねて取付けておいてもよいし、使用時にトレイ1の上に重ねるようにしてもよい。その場合は、図1に示すように、直角三角形の袋状クリップ7にトレイ1とカバー体5のコーナー部を挟んで仮止めすることが望ましい。このようにカバー体5をトレイ1の上に重ねて仮止めすると、カバー体5の貯水部5aがトレイ1の収容凹部1aの中央部の上方に位置する。
以上のような構成の化粧用貼付材パッケージPを用いて顔面の目元パックを行うときは、図4に示すように指先8でカバー体5の貯水部5aを上から押して外力を加える。すると、貯水部5aの突起5bが貯水部底面の被覆膜5cとトレイ上面の被覆膜4を突き破り、その裂け目から水6がトレイ1の収容凹部1a流入する。流入した水6は化粧用貼付材3の上面からそのセグメント化ポリウレタンゲル中に浸透すると共に、化粧用貼付材3の裏面側に回り込み、ネット2に沿って均一に全面に拡がり、裏面からも均等にポリウレタンゲル中に浸透して吸収される。このため、ポリウレタンゲル中に含有されているビタミンCは、吸収された水に溶解する。従って、カバー体5と被覆膜4を除去してトレイ1の収容凹部1aから取り出した化粧用貼付材3をポリウレタンゲルの粘着力で顔面の目元に貼付すると、水に溶解したビタミンCがポリウレタンゲルから皮膚へ移行してすみやかに吸収され、美白作用、色素沈着抑制、抗酸化作用などのビタミンCの効能が発揮される。
図14(a)はビタミンCを乾燥したセグメント化ポリウレタンゲルに含有させた状態を示す模式図、図14(b)はセグメント化ポリウレタンゲルに水を吸収させて膨潤させた状態を示す模式図である。尚、図中、AOセグメントとは、EOセグメント、POセグメント、EOとPOとの共重合体セグメントのいずれかである。
図14(a)に示すように、水を殆ど含まない乾燥状態では、ポリウレタンゲルのAOセグメントの間にビタミンCが分散していて、ビタミンCが移行したりせず、また、分解などを生じることなく長期間その状態を保つ。そして、これに水を加えると、図14(b)に示すように、水分子がAOセグメントの間に入り込んでゲルが膨潤すると共に、この入り込んだ水にビタミンCが溶解する。従って、この状態のポリウレタンゲルよりなる化粧用貼付材を顔面に貼付すると、水と共にビタミンCが顔面の皮膚に移行、浸透する。
一般にビタミンCをゲルに含有させる場合には、以下に述べるような二律背反性が存在する。即ち、ビタミンC(純粋なL−アスコルビン酸)は容易に酸化してデヒドロアスコルビン酸となり、その後、加水分解する化学構造をもつ物質であるので、室温状態の環境下でも極めて不安定である。特に、水に溶解した状態では極めて不安定であり、8時間後に約10%以上がデヒドロアスコルビン酸を経過して、ジケトグロン酸、L−リキソン酸、L−キシロン酸、シュウ酸、L−スレオン酸に加水分解されることにより、失活することが確認されている。ビタミンCは水のみが良溶媒であり、アルコール等の極性溶剤にあまり溶解しない。従って、化粧用貼付材としてビタミンCをゲル中に水と共存させると、ビタミンCは在庫中に経時的に容易に分解して黄変し、茶褐色に変質する。しかし、溶解性から鑑みると、ビタミンCの良溶剤は水であり(アルコールでは可溶化に多量を要する)、皮膚に貼付後にビタミンCを溶解した水と共に皮膚側に移行、放出させるためには、水が不可欠である。このようにビタミンCは酸化を経て水により加水分解されるにもかかわらず、その効果的な放出には水が必要であるという二律背反性が存在する。
従来より、化粧用貼付材の開発のために、ビタミンCを含有させる各種のヒドロゲルが検討されてきたが、上記の理由により、ビタミンCは容易に分解し、自らは変色、変質することが避けられず、また、ヒドロゲルはビタミンCの分解物である酸性物質により、経時的に変質して、その形状を留めないまでの劣化に至るのが常であった。
これに対し、本発明の化粧用貼付材パッケージPは、化粧用貼付材3が実質的に水を含まないセグメント化ポリウレタンゲルにビタミンCを乾燥状態で含有させたものであるから、既述したようにビタミンCが酸化、加水分解して変色、変質することなく、安定に含有、保持することができ、酸性物質も生じないのでポリウレタンゲルが変質、劣化することもない。そして、使用時にカバー体5の貯水部5aから水6をポリウレタンゲルに吸収させてビタミンCを溶解させるため、化粧用貼付材3を皮膚に貼付すると、ビタミンCが水と共にすみやかに皮膚へ移行、放出される。このように本発明の化粧用貼付材パッケージPは、上記の二律背反性を解決できる画期的なものである。
化粧用貼付材3のセグメント化ポリウレタンゲルについてもう少し詳しく説明すると、このゲルは、下記構造式A〜Dで示されるポリオール成分と、下記構造式E〜Iで示されるポリイソシアネート成分をそれぞれ単独又は混合して使用し、双方の成分の−OH基と−NCO基をウレタン結合させることによって得られる、所謂、三次元貫入型(Interpenetrated Network)のセグメント化ポリウレタンである。
Figure 2005104858
式中、R,Rはアルキル化合物、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
Figure 2005104858
式中、AOはアルキレンオキサイドのセグメントであり、lは1または4の整数である。
Figure 2005104858
AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
Figure 2005104858
AOはアルキレンオキサイドのセグメントであり、Rは水素原子もしくはアルキル化合物、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかである。
Figure 2005104858
Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
Figure 2005104858
Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
Figure 2005104858
Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントであり、lは1または4の整数である。
Figure 2005104858
Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
Figure 2005104858
Rはアルキル基、脂環式化合物、芳香族化合物のいずれかであり、AOはアルキレンオキサイドのセグメントである。
構造式Aはポリエーテルポリオールとジイソシアネートの反応物であるポリウレタンポリオールプレポリマーであって、両末端成分がポリエーテルポリオールからなり、末端は−OH基である。ここで使用されるジイソシアネート化合物は、後に記載するポリウレタンポリイソシアネートのプレポリマーの中のそれと同じものであり、例えばフェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添加TDI、水素化MDI、ジシクロヘキシルジメチルメタン−p,p′−ジイソシアネート、ジエチルフマレートジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが任意に使用できる。
構造式Bはグリセロール(l=1)またはソルビトール(l=4)にポリエーテルポリオールを付加したものであり、また、構造式Cはトリメチロールプロパンにポリエーテルを付加したものである。同様に下記の構造式Jの1,2,6−ヘキサントリオール、構造式Kのトリメチロールエタン、構造式Lのペンタエリスリット、構造式Mのポリグリセリン(n=2〜30の整数)やその部分エステルなどの多価アルコールとポリエーテルポリオールの付加物も使用できる。
Figure 2005104858
Figure 2005104858
Figure 2005104858
Figure 2005104858
構造式Dはアルキレンオキサイドのセグメントを有するポリエーテルポリオールであり、両末端が−OH基の場合と、片末端がアルキル基、芳香族基などで封鎖されている場合があり、市販品として容易に入手できる。
次に、構造式E〜Iに掲げたポリイソシアネートプレポリマーについて説明すると、構造式Eはトリメチロールプロパンにジイソシアネートを反応して得られるトリイソシアネートの2分子をAOの1分子で2量化したもので、4官能であるテトライソシアネートである。そして、トリメチロールプロパンの代わりにグリセロールを用いたものが構造式Fである。この種のテトライソシアネートは、AOの2分子または3分子でトリイソシアネートが2量化され易いので反応を微妙に調節する必要がある。そのため未反応のトリイソシアネートが混在するが、ポリオールと反応した場合にセグメントポリウレタン分子の大きさのバラツキが生じ粘着性をコントロールするのに都合の良い方に作用することもある。
構造式Gは構造式Bのポリオールにジイソシアネートを反応させたものである。また、構造式Hは同様に構造式Cのポリオールにジイソシアネートを反応させたものであり、3官能である。構造式Iはポリエーテルポリオールとジイソシアネートの反応物で2官能である。
上記の構造式A〜I中のAOで表記されるアルキレンオキサイドのセグメントは、具体的には親水性のエチレンオキサイド(EO)のセグメント、疎水性のプロピレンオキサイド(PO)のセグメント、または、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)との共重合体のセグメント、のいずれかである。共重合体のセグメントは、例えば、下記の構造式Nで表されるブロック共重合体や、−(PO−EO−EO−PO)−,−(PO−PO−EO)−,−(EO−EO−PO)−,−(EO−PO−EO−PO)−等の交互共重合体(mは1以上の正数)や、EOとPOとのランダムな共重合体などのいずれであってもよい。
Figure 2005104858
これらのEOセグメント、POセグメント、EO−PO共重合体セグメントのいずれかであるAOセグメントは、常温で優れた粘着特性を有し且つビタミンCとの良好な親和性をもつポリウレタンゲルを得るためには、その大半ないし全てが常温で液状であることが必要であり、そのためには分子量が規制される。EOセグメントのMWは150〜1000が適当であり、好ましくは300〜800である。POセグメントは分子量が数万でも液体であり、使用できる分子量の範囲は広い。しかし、末端基の比率が小さいほど反応確率が低くなり、また、あまりに長いセグメントの場合は、ポリウレタンゲルが流動性に富み、保形性に乏しくなるので、大略200〜数千の範囲が好ましい。
一方、EO−PO共重合体セグメントは、EOとPOの比率や配列によりその流動性(柔らかさ)、粘着性、およびビタミンCとの親和性が左右される。すなわち、ブロック共重合体においてPOのモル分率が高い場合には分子量が高くても液状であるが、POのモル分率が低い場合でも、EOの分子量が低ければ液状となる。しかし、既述したようにPOセグメントの分子量が高ければ保形性などの問題が生じるため、60〜8000、好ましくは800〜6000の分子量を有する常温で液状のEO−PO共重合体が使用される。
次に、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の官能数と反応比について説明する。良好な粘着性と充分なビタミンCとの親和性を発現するポリウレタンゲルは、三次元網目鎖構造の比較的嵩高い分子構造を有し、かつ、自由に運動可能なセグメント長や、直鎖(linear)の自由な末端分子を多く有していることが重要である。ポリオールとポリイソシアネートは各々が単一化合物であれば一方が2官能で、他方が3官能以上の組合わせとするか、互いに3官能以上の組合わせとするのが良い。但し、官能数が3以上のもの同士を反応させる場合は、網目鎖濃度が高すぎるので、よほど長いセグメントが存在しないと、弾性が粘性を上回って好ましい粘着性は得られ難く、ビタミンCとの親和性や保有性(放出性)をコントロールし難い。それゆえ、双方の成分の好ましい官能数は大略2〜4の組合わせであり、この場合であれば、粘着性やビタミンCとの親和性を微調整することができる。
ポリオールとポリイソシアネートの各々のプレポリマーの反応比は、末端の官能基の比率、即ちOH/NCOの価によって規制できる。未反応の−NCOが残ると後反応が生じるので、OH/NCOは1以上でなければならないが、1≦OH/NCO≦5で良好な粘着性を有するポリウレタンゲルが得られる。OH/NCOが1以上5以下の状態では嵩高い分子の集まりにおいて末端にOH基を有する直鎖セグメントが尾(tail)を出して自由に運動している状態であると想像でき、5に近いほどフリーの尾が長くて多い状態である。そして、このものは粘着性を発現するに適した大きさとなって集合している。
ポリウレタンゲルを構成するポリオールとポリイソシアネートの分子量の範囲は、AOやイソシアネートの種類、分子形状およびAOがホモポリマーであるかコポリマーであるか等によって広い範囲で変わるが、ポリウレタンポリオールプレポリマーで大略1400〜10000、ポリオールで大略150〜6000、ポリウレタンポリイソシアネートプレポリマーは大略500〜10000である。好ましくは各々大略1000〜6000、大略300〜3000、大略1000〜6000の範囲で選択できる。
化粧用貼付材3のセグメント化ポリウレタンゲルは、上記のポリオール成分とポリイソシアネート成分を上記の反応比で反応させたものであって、前述の分子量の規制された親水性のEOセグメントと疎水性のPOセグメントを有するか、又は、EO−PO共重合体のセグメントを有しており、既述したように、EOとPOのモル比率を50〜90:50〜10にしてビタミンCとの親和性や放出効率を高めたものである。
次に、図5を参照して上記の化粧用貼付材パッケージPの製造方法を説明する。
まず、図5(a)に示すように、離型フィルム10の上に型枠11を載せ、その内側に前述のポリオール成分とポリイソシアネート成分との混合物12を流延する。そして、加熱により混合物12を反応させてセグメント化ポリウレタンを得、図5(b)に示すように、得られたセグメント化ポリウレタン13の上にネット2を重ねて、図5(c)に示すように上方からビタミンCの水溶液14を滴下する。このようにネット2の上からビタミンCの水溶液を滴下すると、ネット2に沿ってビタミンCの水溶液がポリウレタンゲル13の上面全体に拡がり、均等に吸収される。吸収が終わると、図5(d)に示すように型枠を除去して、減圧乾燥により水分を除去して化粧用貼付材3を得る。
次いで、図5(e)に示すようにトレイ1を化粧用貼付材3とネット2の上から被せ、図5(f)に示すようにトレイ1を反転させて化粧用貼付材3とネット2を収容凹部1aに収容する。そして、図5(g)に示すように、アルミニウム箔などの被覆膜4をトレイ1にラミネートして化粧用貼付材3とネット2を収容凹部1aに密封し、図5(h)に示すように、貯水部5aに水6を入れて被覆膜5cで密封したカバー体5をトレイ1の上に重ねると、化粧用貼付材パッケージPが製造される。
なお、化粧用貼付材3のポリウレタンゲルの表層部に不織布を積層して化粧用貼付材3の腰の強さを高める場合は、図5(a)においてポリオール成分とポリイソシアネート成分との混合物12を流延する前に、離型フィルム10の上に不織布を敷設し、その上に混合物12を流延すればよい。このように不織布がポリウレタンゲルの表層部に積層されていると、カバー体の貯水部を押し破って水をポリウレタンゲルに浸透、吸収させるときに、表層部の不織布によって水をゲル層1全体に満遍なく拡げて吸収させることができる利点もある。また、上記不織布に代えて、合成樹脂フィルムラミネート不織布を用いてもよい。その場合には、化粧用貼付材3の表面のベタツキもなくすことができる。
図6は本発明の他の実施形態に係る化粧用貼付材パッケージを一部破断して示す平面図、図7は図6のB−B線に沿った断面図、図8は図6のC−C線に沿った断面図である。
この化粧用貼付材パッケージPは、トレイ1の2箇所に収容凹部1a,1aが形成されており、それぞれの収容凹部1a,1aには、ビタミンCをセグメント化ポリウレタンゲルに乾燥状態で含有させた前述の化粧用貼付材3,3と、前述のネット2,2が上下に重なって収容されている。そして、このトレイ1には、双方の収容凹部1a,1aを連通させる連通溝1bが形成されており、この連通溝1bの上にカバー体5の貯水部5aが位置するように該カバー体5がトレイ1に重ねられている。この化粧用貼付材パッケージPの他の構成は、前述した化粧用貼付材パッケージPと同様であるので、図6〜図8において同一部材に同一符号を付し、説明を省略する。
このような構成の化粧用貼付材パッケージPも、ビタミンCを酸化、加水分解させないで安定に化粧用貼付材3のポリウレタンゲルに含有、保持させることができる。そして、使用時にカバー体5の貯水部5aを上方から指で押して外力を加えると、トレイ1の貯水部5aの突起5bが貯水部底面の被覆膜5cとトレイ上面の被覆膜4を突き破り、その裂け目から水6がトレイ1の連通溝1bを通って双方の収容凹部1a,1aに流入し、双方の化粧用貼付材3のセグメント化ポリウレタンゲル中に吸収される。従って、カバー体5と被覆膜4を除去して双方の化粧用貼付材3,3をポリウレタンゲルの粘着力で顔面の両方の目元に貼付すると、水に溶解したビタミンCがポリウレタンゲルから皮膚へ移行してすみやかに吸収され、美白作用、色素沈着抑制、抗酸化作用などのビタミンCの効能が発揮される。この化粧用貼付材パッケージPは、上記のように一つの貯水部5aを裂くだけで同時に双方の化粧用貼付材3,3に水6を吸収させることができるので便利である。
図9は本発明の更に他の実施形態に係る化粧用貼付材パッケージを一部破断して示す平面図である。
この化粧用貼付材パッケージPも、前述の化粧用貼付材パッケージPと同様にトレイ1の2箇所に収容凹部1a,1aが形成されており、それぞれの収容凹部1a,1aには、ビタミンCをセグメント化ポリウレタンゲルに乾燥状態で含有させた前述の化粧用貼付材3,3と、前述のネット2が上下に重なって収容されている。けれども、このトレイ1には、双方の収容凹部1a,1aを連通する連通溝が形成されてなく、二つの貯水部5a,5aを有するカバー体5がトレイ1に重ねられ、双方の貯水部5a,5aが双方の収容凹部1a,1aの中心付近の上方に位置している。その他の構成は前述した化粧用貼付材パッケージと同様であるので、図9において同一部材に同一符号を付し、説明を省略する。
このような化粧用貼付材パッケージPも、ビタミンCを酸化、加水分解させないで安定に化粧用貼付材3のポリウレタンゲルに含有保持させることができ、双方の貯水部5a,5aを指で押し破って水6,6を双方の化粧用貼付材3,3のポリウレタンゲルに吸収させてから、顔面の両目元に化粧用貼付材3,3を貼付すると、ビタミンCが水と共に皮膚へ移行して美白作用、色素沈着抑制、抗酸化作用などのビタミンCの効能が発揮される。この化粧用貼付材パッケージPは、二つの貯水部5a,5aを押し破る必要があるものの、双方の収容凹部1a,1aに対して一定量の水を漏らすことなく確実に供給できる利点がある。
図10は本発明の更に他の実施形態に係る化粧用貼付材パッケージの断面図である。
この化粧用貼付材パッケージPは、トレイ1の収容凹部1aの底面に小さな凹凸1cが形成されており、この収容凹部1aに、ビタミンCをセグメント化ポリウレタンゲルに乾燥状態で含有させた前述の化粧用貼付材3のみが収容されている。その他の構成は前述した化粧用貼付材パッケージPと同様であるので、図10において同一部材に同一符号を付し、説明を省略する。
この化粧用貼付材パッケージPは前述の化粧用貼付材パッケージPと同様の作用効果を奏するものであるが、トレイ1の収容凹部1aにネットが敷設されてなくても、カバー体5の貯水部5aを押し破ることによってトレイ1の収容凹部1aに流入した水6は、底面の凹凸1cの隙間(谷間)を通って化粧用貼付材3の裏面に回り込み、化粧用貼付材3の裏面からも均等に水を吸収することができる。従って、ネットを省略する分だけ部品点数を減らすことができる。
図11は本発明の更に他の実施形態に係る化粧用貼付材パッケージの分解断面図である。
この化粧用貼付材パッケージPは、カバー体5の構成が異なる。即ち、このカバー体5は、突起5bを有する貯水部5aが前述した合成樹脂で成形されており、この貯水部5aには水6が注入されて、前述した引裂き強度の弱いアルミニウム箔やアルミニウム蒸着フィルムなどの被覆膜5cで貯水部5aの下面のみが被覆されて密封されている。そして、貯水部5aの外鍔部分の上面に強度のある被覆膜5dがラミネートされて、カバー体5が形成されている。被覆膜5dとしては、被覆膜5cよりも引裂き強度がかなり大きい厚さ30〜120μm程度のアルミニウム蒸着フィルムなどが好ましく使用される。
この化粧用貼付材パッケージPは、ネット2と化粧用貼付材3を収容凹部1aに収容したトレイ1の上に上記のカバー体5を重ねてラミネートしたものであって、トレイ1、ネット2、化粧用貼付材3は既述したものと同じものであるので説明を省略する。
このような化粧用貼付材パッケージPは、前述した化粧用貼付材パッケージPと同様の作用効果を奏することに加えて、使用時にカバー体5の突起5bで突き破る被覆膜5cが一枚であるため、二枚の被覆膜5c,4を突き破る化粧用貼付材パッケージPよりも小さな力で貯水部5を押し破ることができ、また、カバー体5の被覆膜5dの引裂き強度が大きいので、カバー体5を引き剥がして化粧用貼付材3を収容凹部1aから取り出すときに被覆膜5dが破れる心配もない、といった効果を合わせて奏する。
図12は本発明の更に他の実施形態に係る化粧用貼付材パッケージの断面図、図13は同化粧用貼付材パッケージに用いる貯水袋を一部拡大して示す断面図である。
この化粧用貼付材パッケージPは、トレイ1の収容凹部1aの底面に前述のネット2が敷設されており、このネット2の上に、前述のビタミンCを乾燥状態でポリウレタンに含有させた化粧用貼付材3と、貯水袋9が重ねられて、収容凹部1aに収容されている。そして、トレイ1の上面にラミネートされた前述の被覆膜4によって収容凹部1aが密封されている。
貯水袋9は、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂フィルムからなる袋に水6を封入したもので、その一部にはノッチ部9aが形成されており、指で押すと簡単に破れるようになっている。
上記のような化粧用貼付材パッケージPは、ビタミンCを酸化、加水分解させないで安定に化粧用貼付材3のポリウレタンゲルに含有保持させることができ、使用時に被覆膜4の上から指で貯水袋9を押して外力を加えると簡単に貯水袋9が破れて水が化粧用貼付材3のポリウレタンゲルに吸収されるため、この化粧用貼付材3を顔面の目元に貼付すると、ビタミンCが水と共に皮膚へ移行してビタミンCの効能が発揮される。
次に、本発明の化粧用貼付材パッケージについて、保存安定性とビタミンC放出特性を測定した実験について説明する。
[実験1]
(化粧用貼付材パッケージの作製)
離型フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その上に型枠を載置して、目付重量が37g/mのポリエステル不織布を該型枠と略同一の形状に切抜いた不織布片を該型枠の内側に敷設した。下記の表1に示す構造式番号に対応する構造と分子量とアルキレンオキサイドのセグメントを有するポリオール、ポリイソシアネートおよび触媒を表1に示す割合で混合した混合液を、型枠内の不織布片の上に流延し、加熱温度65℃で一昼夜反応させることによって、下面表層部に不織布片が積層された厚さ1.2mm、体積1.2cmのセグメント化ポリウレタンゲルを形成した。そして、このセグメント化ポリウレタンゲルの上にナイロンネット(モノフィラメントの直径:0.2mm、網目の大きさ:50メッシュ)を重ね、その上から、ビタミンCの14%水/エタノール溶液(ビタミンC:水:エタノールは重量比で1:3:3)を滴下し、ポリウレタンゲルにビタミンCを含有させた後、型枠を除去し、減圧乾燥して水及びエタノールを除去することにより、ポリウレタンゲルにビタミンCを5重量%含有する化粧用貼付材を得た。
ポリエチレンテレフタレートで成形した収容凹部を有するトレイを化粧用貼付材とナイロンネットの上に被せてトレイを反転させることにより、化粧用貼付材とナイロンネットをトレイの収容凹部に収容した後、アルミニウム箔をトレイにラミネートして収容凹部を密封した。そして、貯水部に1.0mlの水を入れてアルミニウム箔で密封したカバー体をトレイの上に重ねることにより、本発明の化粧用貼付材パッケージを作製した。
Figure 2005104858
(保存安定性)
上記化粧用貼付材パッケージを40℃にて1ヶ月間保存した後、トレイから化粧用貼付材を取り出し、ポリウレタンゲルを目視することによって色相の変化を観察すると共に、ポリウレタンゲルを指先で触ることによって粘着性の変化を調べた。そして、日本薬局方解説書に記載されたインドフェノール・キシレン比色法(アスコルビン酸のメタリン酸溶液に過量のインドフェノール試液を加え、還元脱色された残りの色素をキシレンに転溶させて500nmで比色する方法)に基づいてビタミンC含量の変化を測定した。
その結果、色相は試験開始時と変化なく、粘着性も変化なかった。また、ビタミンCの残存含量は、これもまたL−アルスコルビン酸と同様に生体活性を示すところのデヒドロアスコルビン酸を含めると試験開始時の96.5%であった。
更に、化粧用貼付材を乾燥剤および脱酸素剤と共にトレイの収容凹部に入れて密封したものについて、上記と同様に色相の変化、粘着性の変化、ビタミンC含量の変化を調べたところ、色相及び粘着性は変化なく、ビタミンC含量は試験開始時の約98%以上という良い結果に改善された。
[ビタミンC放出特性]
上記トレイの上に重ねたカバー体の貯水部を指で押し破り、トレイの収容凹部に流入した水が化粧用貼付材のポリウレタンゲルに浸透、吸収されるまで放置した。この化粧用貼付材を10人の顔面に1時間貼り付け、回収した化粧用貼付材のポリウレタンゲルに残存するビタミンC含量を測定し、未使用の化粧用貼付材のビタミンC含量との差からビタミンCの放出率を求めて、化粧用貼付材のビタミンC放出特性を調べた。ポリウレタンゲル中のビタミンC含量の定量は、貼付材のポリウレタンゲルを細かく切断し、分析にかけてビタミンCが壊れにくい組成の溶液でポリウレタンゲルを膨潤させてビタミンCを抽出して行った。その結果、10人の顔面に1時間貼り付けた後のビタミンCの放出率は、平均で21.6%であった。
[実験2]
(化粧用貼付材パッケージの作製)
下記の表2に示す構造式番号に対応する構造と分子量とアルキレンオキサイドのセグメントを有するポリオール、ポリイソシアネートおよび触媒を表2に示す割合で混合した混合液を使用し、その加熱温度を60℃に変更した以外は、実験1と同様にして化粧用貼付材パッケージを作製した。
Figure 2005104858
(保存安定性)
上記化粧用貼付材パッケージについて実験1と同様にして保存安定性を調べた。その結果、ポリウレタンゲルの色相は試験開始時と変化なく、粘着性も変化なかった。また、ビタミンCの残存含量は、同様の生体活性を示すところのデヒドロアスコルビン酸を含めると、試験開始時の96%であった。
[ビタミンC放出特性]
上記トレイの上に重ねたカバー体の貯水部を指で押し破り、水を吸収させた化粧用貼付材を10人の顔面に1時間貼り付けて、実験1と同様の方法でビタミンCの放出率を求めた。その結果、ビタミンCの放出率は、平均で11%であった。
[比較実験]
比較のために、市販のポリアクリル酸ゲルの原料を用いてポリアクリル酸ゲルを造り、このゲルに、実験1で用いたビタミンCの14%水/エタノール溶液を滴下、吸収させたところ、数日間内に経時的にポリアクリル酸ゲルは黄色く着色し、化粧用貼付材に適したものは得られなかった。
本発明の一実施形態に係る化粧用貼付材パッケージを一部破断して示す平面図である。 図1のA−A線に沿った断面図である。 同化粧用貼付材パッケージの分解断面図である。 同化粧用貼付材パッケージの使用方法の説明図である。 同化粧用貼付材パッケージの製造方法の一例を示す説明図である。 本発明の他の実施形態に係る化粧用貼付材パッケージを一部破断して示す平面図である。 図6のB−B線に沿った断面図である。 図6のC−C線に沿った断面図である。 本発明の更に他の実施形態に係る化粧用貼付材パッケージを一部破断して示す平面図である。 本発明の更に他の実施形態に係る化粧用貼付材パッケージを示す断面図である。 本発明の更に他の実施形態に係る化粧用貼付材パッケージを示す分解断面図である。 本発明の更に他の実施形態に係る化粧用貼付材パッケージを示す断面図である。 同化粧用貼付材パッケージの貯水袋を一部拡大して示す断面図である。 (A)はビタミンCを乾燥したポリウレタンゲルに含有させた状態を示す模式図、(B)はこのポリウレタンゲルに水を含ませて膨潤させた状態を示す模式図である。
符号の説明
,P,P,P,P,P 化粧用貼付材パッケージ
1 トレイ
1a 収容凹部
1b 連通溝
1c 小さな凹凸
2 ネット
3 ビタミンCがセグメント化ポリウレタンゲルに含有された化粧用貼付材
4 被覆膜
5 カバー体
5a 貯水部
5b 突起
5c 被覆膜
6 水
9 貯水袋
9a ノッチ部

Claims (7)

  1. セグメントの大半ないし全てが常温で液状である実質的に水分を含まない粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルにビタミンCが含有されてなる化粧用貼付材と、
    上記化粧用貼付材を収容する収容凹部が形成されたトレイと、
    上記トレイの上に重ねられるカバー体であって、上記収容凹部に供給する水が入った貯水部を有し、該貯水部に外力を加えると該貯水部の底面が開放するようにしたカバー体と、
    を具備した化粧用貼付材パッケージ。
  2. セグメントの大半ないし全てが常温で液状である実質的に水分を含まない粘着性のセグメント化ポリウレタンゲルにビタミンCが含有されてなる化粧用貼付材と、
    上記化粧用貼付材を収容する収容凹部が形成されたトレイと、
    上記化粧用貼付材の上に重ねて上記トレイの収容凹部に収容され、外力を加えると開放するようにした貯水袋と、
    を具備した化粧用貼付材パッケージ。
  3. 上記セグメント化ポリウレタンゲルが、親水性のエチレンオキサイドのセグメントと疎水性のプロピレンオキサイドのセグメントを有するか、又は、親水性のエチレンオキサイドと疎水性のプロピレンオキサイドとの共重合体よりなるセグメントを有するものである、請求項1又は請求項2に記載の化粧用貼付材パッケージ。
  4. 上記トレイの上に重ねられたカバー体の貯水部が上記収容凹部の上方に位置している請求項1に記載の化粧用貼付材パッケージ。
  5. 上記トレイの収容凹部が2箇所に形成されると共に、双方の収容凹部を連通させる連通溝が上記トレイに形成され、この連通溝の上に上記貯水部が位置するように上記カバー体が上記トレイに重ねられた、請求項1に記載の化粧用貼付材パッケージ。
  6. 上記トレイの収容凹部の底面に小さい凹凸が形成されている、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の化粧用貼付材パッケージ。
  7. 上記トレイの収容凹部の底面にネットが敷設されている、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の化粧用貼付材パッケージ。
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