JP2005103647A - 砥石とその製造方法並びにその混練物 - Google Patents
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Abstract
【課題】研削砥粒が砥石全体にわたって均一に分散し、しかも研削砥粒が複数個凝集して砥粒凝集体を形成しないような砥石の開発。
【解決手段】(a) 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されたグリーン体形成用のバインダ樹脂と、研削砥粒と、基材砥粒、砥粒バインダとを混練する混練工程、(b) 混練物を射出成形して砥石のグリーン体を形成する射出成形工程、(c) 砥石のグリーン体から可溶性樹脂溶出用溶剤にて溶剤可溶性樹脂を溶出して多孔質グリーン体を形成する脱脂工程、(d) 脱脂された前記多孔質グリーン体を加熱して多孔質グリーン体に残留している不溶性樹脂成分を焼失させると共に或いは焼失させた後、砥粒バインダを焼結する焼結工程とで構成されたことを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】(a) 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されたグリーン体形成用のバインダ樹脂と、研削砥粒と、基材砥粒、砥粒バインダとを混練する混練工程、(b) 混練物を射出成形して砥石のグリーン体を形成する射出成形工程、(c) 砥石のグリーン体から可溶性樹脂溶出用溶剤にて溶剤可溶性樹脂を溶出して多孔質グリーン体を形成する脱脂工程、(d) 脱脂された前記多孔質グリーン体を加熱して多孔質グリーン体に残留している不溶性樹脂成分を焼失させると共に或いは焼失させた後、砥粒バインダを焼結する焼結工程とで構成されたことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は射出成形(その他の成形でも可)を使用した、画期的な砥石の製造方法と当該方法にて形成された砥石並びにこれに用いられる混練物に関する。
被加工物を研削する砥石には目的に合わせてきわめて多様な種類のものがある。そのうちで、最も要求の厳しいものが、極めて高い精度の鏡面(平滑度)が要求される半導体サブストレートの表面加工で、現時点では要求される鏡面を達成するために一般的には遊離砥粒が混入されている砥液によるラッピングが主に用いられている。しかしながら、ラッピングは研磨速度が遅く作業能率が悪いだけでなく、まっ黒な砥液が作業現場に飛散して周囲を汚し、作業環境を劣悪な状態にするという問題がある。
そこで、砥石による表面研削の導入が試みられたが、従来の砥石には以下のような問題点があった。従来の製造方法としては、例えば、(a)砥粒バインダとして用いられるガラス質結合材の原料液と砥粒とを所定の割合で混合して流動性の砥石原料を調製し、続いて硬化剤であるアルカリ性水溶液を混合し、この硬化剤入り砥石原料を成形型内に流し込み、成形型内でゲル化させた後、これを取り出して養生させてから焼成するという方法(特開2003−62755)や、(b)微粉の砥粒と砥粒バインダとなるとガラス質結合材(或いは金属バインダ)とを混合し、これを成形型に少量ずつ投入した後、高圧プレスによりつき固めるという操作を繰り返し、所定の大きさの比較的多孔質の圧粉中間体とし、これを焼結して砥石とするという方法などが一般的である。
この方法では、ガラス質結合材と砥粒との比重差あるいは粒度により砥粒が偏在したり、つき固めた各層の表面層・中間層・底面層或いは砥石全体における表面層・中間層・底面層において粗密が生じたり、または、砥粒同士が凝集して一つの大きな砥粒凝集体を構成するという欠点を克服することができなかった。換言すれば、従来の方法ではどのような方法を試しても、このような砥石しか生産することができなかった。
このような砥石によって例えば半導体サブストレートの表面を表面研削した場合、当該砥粒凝集体により半導体サブストレート表面が筋状に大きくかつ深く削られ、その結果、要求されるような高い表面粗さを達成することができず、最終的には前述のラッピングに頼らざるを得ないという問題があった。
特開2003−62755
本発明は、かかる従来例に鑑みてなされたもので、研削砥粒が砥石全体にわたって設計通りに均一に分散し、しかも研削砥粒が複数個凝集した砥粒凝集体の形成がない砥石並びに当該砥石の製造方法及び前記方法に供せられる混練物を開発するにある。
請求項1は本願発明に係る砥石に関するもので、「砥石本体構成用の基材砥粒と、対象物研削用の研削砥粒と、これらを結合すると砥粒バインダで構成された砥石において、研削砥粒が単体で基材砥粒間に均一に分散している」ことを特徴とする。
これによれば対象物研削用の研削砥粒、たとえばダイヤモンド微粉やCBN(キュービックボロンナイトレート)微粉などが単体で基材砥粒間に均一に分散しているので、研削砥粒が研削対象物の表面を均質な状態(粗さ)で削り取って行くことになり、大きな砥粒凝集体が砥石内に形成されていた従来の砥石に比べて極めて微細な表面粗さの研削面(鏡面)を実現することができ、半導体サブストレート表面の研削も可能になった。
請求項2〜6は請求項1の砥石を形成するための砥石用混練物に関し、請求項2は「溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されているグリーン体形成用のバインダ樹脂に、砥石本体構成用の基材砥粒と、対象物研削用の研削砥粒と、前記基材砥粒と研削砥粒とを結合するための砥粒バインダ粒の内、少なくとも基材砥粒と研削砥粒とが均一に分散されて担持されている」ことを特徴とし、請求項3は「バインダ樹脂を構成する溶質樹脂は高温では互いに溶剤可溶性を有し、室温では溶剤不溶性を示す組み合わせである」ことを特徴とし、請求項4は「溶剤不溶性樹脂と溶剤可溶性樹脂の体積比が1:0.5〜4.0である」ことを特徴とし、請求項5は「砥粒バインダが、樹脂或いは金属又はガラス質結合材である」ことを特徴とする。
請求項6は砥粒バインダが金属或いはガラス質結合材(金属基或いはガラス基)の場合の砥石の製造方法に関し、
(a) 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されたグリーン体形成用のバインダ樹脂と、研削砥粒と、基材砥粒、砥粒バインダとを混練する混練工程、
(b) 混練物を成形して砥石のグリーン体を形成する成形工程、
(c) 砥石のグリーン体から可溶性樹脂溶出用溶剤にて溶剤可溶性樹脂を溶出して多孔質グリーン体を形成する脱脂工程、
(d) 脱脂された前記多孔質グリーン体を加熱して多孔質グリーン体に残留している不溶性樹脂成分を焼失させると共に或いは焼失させた後、砥粒バインダを焼結する焼結工程とで構成されたことを特徴とする。
(a) 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されたグリーン体形成用のバインダ樹脂と、研削砥粒と、基材砥粒、砥粒バインダとを混練する混練工程、
(b) 混練物を成形して砥石のグリーン体を形成する成形工程、
(c) 砥石のグリーン体から可溶性樹脂溶出用溶剤にて溶剤可溶性樹脂を溶出して多孔質グリーン体を形成する脱脂工程、
(d) 脱脂された前記多孔質グリーン体を加熱して多孔質グリーン体に残留している不溶性樹脂成分を焼失させると共に或いは焼失させた後、砥粒バインダを焼結する焼結工程とで構成されたことを特徴とする。
請求項7は砥粒バインダが樹脂(レジンボンド)の場合の砥石の製造方法に関し、
(a) 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されたグリーン体形成用のバインダ樹脂と、研削砥粒と、基材砥粒とを混練する混練工程、
(b) 混練物を成形して砥石のグリーン体を形成する成形工程、
(c) 砥石のグリーン体から可溶性樹脂溶出用溶剤にて溶剤可溶性樹脂を溶出して多孔質グリーン体を形成する脱脂工程、
(d) 脱脂された前記多孔質グリーン体を加熱して多孔質グリーン体に残留している不溶性樹脂成分を焼失させると共に或いは焼失させた後、更に加熱して仮焼結して多孔質仮焼結体を形成する仮焼結工程、
(e) 多孔質仮焼結体に樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させる樹脂含浸・硬化工程とで構成されたことを特徴とする。
(a) 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されたグリーン体形成用のバインダ樹脂と、研削砥粒と、基材砥粒とを混練する混練工程、
(b) 混練物を成形して砥石のグリーン体を形成する成形工程、
(c) 砥石のグリーン体から可溶性樹脂溶出用溶剤にて溶剤可溶性樹脂を溶出して多孔質グリーン体を形成する脱脂工程、
(d) 脱脂された前記多孔質グリーン体を加熱して多孔質グリーン体に残留している不溶性樹脂成分を焼失させると共に或いは焼失させた後、更に加熱して仮焼結して多孔質仮焼結体を形成する仮焼結工程、
(e) 多孔質仮焼結体に樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させる樹脂含浸・硬化工程とで構成されたことを特徴とする。
(作用)
以上のように、溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されて形成されているバインダ樹脂を用い、これに研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダ或いは研削砥粒、基材砥粒を混合して十分に混練すると、金属基或いはガラス基砥石の場合、研削砥粒と基材砥粒と砥粒バインダが、レジンボンド砥石の場合は、研削砥粒と基材砥粒がグリーン体形成用のバインダ樹脂に均一分散され、換言すれば研削砥粒が複数個固まって形成される砥粒凝集体のようなものが形成されることなく担持され、全体に均一な混練物となる。
以上のように、溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されて形成されているバインダ樹脂を用い、これに研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダ或いは研削砥粒、基材砥粒を混合して十分に混練すると、金属基或いはガラス基砥石の場合、研削砥粒と基材砥粒と砥粒バインダが、レジンボンド砥石の場合は、研削砥粒と基材砥粒がグリーン体形成用のバインダ樹脂に均一分散され、換言すれば研削砥粒が複数個固まって形成される砥粒凝集体のようなものが形成されることなく担持され、全体に均一な混練物となる。
この全体に均一な混練物を原料として射出成形(或いは押出成形、真空成形又はブロー成形等)した砥石原型のグリーン体から溶剤可溶性樹脂成分のみを脱脂する。脱脂された多孔質グリーン体には他方の溶剤不溶性樹脂成分が残留しており、これが研削砥粒、基材砥粒と砥粒バインダ或は研削砥粒と基材砥粒を互いに接着させてポーラスでありながら十分な保形性を発揮する。その結果、脱脂後、焼結工程に至る間の多孔質グリーン体の型崩れを防止することができ、取り扱いが非常に容易になる。
しかも、脱脂においては、前記一方の溶剤可溶性樹脂成分は、他の溶剤不溶性樹脂成分と均一に混じり合っているので、当該可溶性樹脂成分を溶出する溶剤により溶出すると可溶性樹脂成分のみが溶出されてポーラスになり、その際、表面から中心部に向かって次第に溶出されて行き、その表面のみならずその中心部分までグリーン体全体においてほぼ当該溶剤可溶性樹脂成分を溶出させることができ、全体に均一なポーラス状態とする事が出来る。他方の溶剤不溶性樹脂成分は、多孔質グリーン体の全体にわたって均一に残留することになるので、焼結時に歪みを発生させるようなことがない。
また、溶剤不溶性樹脂を繊維状或いは羽毛状となる樹脂とする事で溶剤可溶性樹脂を繊維状或いは羽毛状となる樹脂の網目の中に均一に分散させる事が出来、樹脂成分間で粗密を発生させるようなことがなく、且つ一方の溶剤可溶性樹脂成分を脱脂した場合にもグリーン体全体の均一性が損なわれない。加えてこのような均質性に優れたバインダ樹脂において、研削砥粒、基材砥粒と砥粒バインダ或は研削砥粒と基材砥粒を溶剤不溶性繊維状或いは羽毛状となる樹脂内に分散させることで、混練物全体にわたって更にはこの混練物を使用したグリーン体では研削砥粒、基材砥粒と砥粒バインダ或は研削砥粒と基材砥粒の粗密が全体において発生せず、従って焼結時、極めて高い精度で焼結されることになり、焼結時に歪みを発生させるようなことがない。
前記バインダ樹脂を構成する樹脂成分は高温では互いに溶剤可溶性を有し、室温では溶剤不溶性を示すものが好ましく、このようなものは高温且つ溶剤の存在下で混練すれば均一に混ざり合い、これを冷却すると溶剤可溶性樹脂成分中に溶剤不溶性樹脂成分が均一に析出して組成物或いはそのグリーン体全体が極めて高い均質度で混ざり合う事になる。両者の混合比は、溶剤不溶性樹脂と溶剤可溶性樹脂の体積比で1:0.5〜4.0であるが、溶剤不溶性樹脂1に対して溶剤可溶性樹脂が0.5以下の場合、溶剤不溶性樹脂が過剰になり、脱脂に時間がかかるという問題点があり、4.0以上であれば、溶剤不溶性樹脂が過小となり保持力が低下して成形品が脱脂中に割れるという問題点がある。また、バインダ樹脂と焼結用粉末との混合比は、バインダ樹脂と焼結用粉末の体積比が40:60〜65:35であるが、40:60よりも焼結用粉末の方が多い場合、バインダ樹脂が過小になり、射出時の流動性が悪く薄ものの成形が出来ないという問題点があり、35より焼結用粉末の方が少ない場合には、焼結用粉末が過小になり焼結中にクラックが発生するという問題点がある。なお、樹脂が体積比で全体の25%以下の場合、脱脂時に樹脂が流動せず型くずれを生じさせない。
なお、本原料組成物は後述するように射出成形用材料としての用途を中心に説明するが、勿論、射出成形用材料としての用途、即ち、ペレット状として使用することもできれば、棒状或いは板状若しくはブロック状とし、このようなグリーン体を用いて機械加工によって所定の形状に切り出すことも可能であるし、本原料組成物を加熱軟化させ、金型に圧入して所定の形状のグリーン体を形成することも可能である。その際、対象形状に対して収縮量を見込んだ大きさに形成する必要がある。このようなグリーン体にあっては、一方の溶剤可溶性樹脂成分を溶剤で溶出したとしても、他の溶剤不溶性樹脂成分がグリーン体に残留しているのでこれが接着剤の働きをなし、グリーン体から前記一方の溶質樹脂が溶出されて多孔質になったとしても多孔質グリーン体の保形性が損なわれないことになる。
また、焼結時(特に、バインダ樹脂の加熱分解時)に水素を使用することも可能であり、このようにすることで研削砥粒にダイヤモンド粒を使用した場合、ダイヤモンド粒の焼損を防ぐことができる。
これにより、従来の砥石への応用は勿論、従来不可能とされていた半導体サブストレートの表面研削に用いることができるような極めて高い表面粗さの研削面を実現することができる超精密砥石の大量生産が可能となった。
なお、焼結に際しては、不活性雰囲気(Ar又は窒素中)にて行えば酸化や焼損を防ぐ事が出来、酸化や焼損を嫌うようなものであっても高品質な砥石が得られる。なお、前記発明方法で焼結された砥石は、今までの砥石にない極めて優れた性状(形状の複雑さや組織の緻密さ)を示すだけでなく、コストの面でも画期的なものとなった。
以上から明らかなように、本発明にあっては、
(1) 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されて形成されているバインダ樹脂を用いるので、研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダ或いは研削砥粒、基材砥粒が全体に均一分散した混練物とすることができる。
(1) 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されて形成されているバインダ樹脂を用いるので、研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダ或いは研削砥粒、基材砥粒が全体に均一分散した混練物とすることができる。
(2) 前記混練物にて形成された砥石原型のグリーン体から溶剤可溶性樹脂成分のみを脱脂すると、ポーラスでありながら十分な保形性を有する多孔質グリーン体を得ることができる。
(3) また、前記多孔質グリーン体は全体にわたって全ての組成(気孔も含む)が均一に分散していること、バインダ樹脂が特殊な組み合わせであるため、焼結時に歪みを発生させるようなことがない。
上記方法で形成された砥石は、従来不可能とされていた半導体サブストレートの表面研削に用いることができるような極めて高い表面粗さの研削面を実現することができる超精密砥石であり、加えてその大量生産が可能となった。
以下、本発明を図示実施例に従って詳述する。本発明の砥石には金属基、ガラス基或いは樹脂基のものがあるが、まず、金属基及びガラス基砥石の説明を行い、その後、樹脂基砥石について説明を行う。説明の煩雑さを避けるため両者で共通する部分は前者の説明を援用して後者の説明に変える。
本発明にかかる金属基及びガラス基砥石用の混練物は、研削砥粒、基材砥粒と砥粒バインダ及びバインダ樹脂で構成されている。研削砥粒は研削対象物の表面を直接研削するためのもので、その粒度は研削対象により適宜選定される。研削対象物が半導体サブストレートのようにきわめて高い表面粗さが要求されるような場合には、平均粒度がサブミクロン(例えば、1〜0.5μm或いは更に小さいものとして0.5〜0.2μm)というようなものが使用される。研削砥粒の種類も用途により適時選定されるが、ダイヤモンド粉やCBN粉などが超精密砥石用に用いられる。
基材砥粒としては、研削砥粒と同様、その用途によって用いられる平均粒度が適時選定される。種類としてはSiCが一般的である。
砥粒バインダは、金属基の場合、Cu、Ni、Co、Feなどが一般的であり、ガラス基砥石の場合、ガラス粉(ガラスフリット)が使用される。その平均粒度は前記研削砥粒と同様の用途により適時選定される。また、これら研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダの混合割合は用途により適宜選定される。
研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダを担持するバインダ樹脂は、1の溶剤に溶ける溶剤可溶性樹脂と該溶剤に溶けない溶剤不溶性樹脂を主材とし、可塑剤及び離型材など必要添加物とで構成されている。前記溶剤可溶性樹脂と溶剤不溶性樹脂とは使用温度では完全に混ざり合って並存していることがより好ましく、本実施例では溶融温度(高温)では両者共1の溶剤に溶け、使用温度では均一に混ざり合って状態で分離しているような樹脂が使用される。
更には、単に溶剤可溶性樹脂と溶剤不溶性樹脂とが混ざり合っているだけの場合より脱脂後の保形性や焼結用粉末の均一分散性を高めるために溶剤不溶性樹脂に繊維状或いは羽毛状となる樹脂を使用する事が望ましい。即ち、溶剤不溶性樹脂が繊維状或いは羽毛状となる樹脂の場合、高温(=両者の溶融温度)では溶剤可溶性樹脂中に完全に均一に溶け合っている。前記研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダを配合して均一に混ぜ合わせ、バインダ樹脂内に均一に分散させた後、これを冷却すると次第に溶剤不溶性樹脂が繊維状にて析出し、その繊維間に溶剤可溶性樹脂と焼結用粉末が絡まった状態で存在するようになり、極めて微細且つ均一に溶剤可溶性樹脂と前記研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダが繊維状溶剤不溶性樹脂間に分散した状態となる。
このような溶剤可溶性樹脂の例として、ポリスチレン、アクリル樹脂、塩化ビニル、環状ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート、繊維素プラスチックがある。また、溶剤不溶性樹脂の例として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアセタールなどがあり、これらを高温で溶かす(但し、室温では溶剤不溶性樹脂は析出する)溶剤としては例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族溶剤や、ジクロルメタンやジクロルエタンなどの塩素化溶剤などがある。その他、可塑剤としてはジオクチルフタレートやジブチルフタレートなどが、離型材としてはステアリン酸亜鉛やステアリン酸アマイドが挙げられる。これら溶剤不溶性樹脂と溶剤可溶性樹脂の混合比は、体積比で1:0.5〜4.0である。また、バインダ樹脂と前記研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダの体積比が40:60〜65:35である。
前記研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダは前述のようにバインダ樹脂(可塑剤及び離型材を含む)に均一に分子分散されていることが重要で、溶融温度に保たれた大量の高温のバインダ樹脂液に少量の焼結用粉末を攪拌しながら投入し均一に分散させる。所定量の焼結用粉末の投入が終了すれば液温を保ちながら攪拌・混練を続け、溶剤を揮発させる。溶剤の揮発と共に溶剤不溶性樹脂成分が次第に繊維状或いは羽毛状(=ミクロファイバー状)に析出して溶剤可溶性樹脂成分と前記研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダを個々に(換言すれば、分散状態で)繊維間に取り込み超微細分散させる。これにより研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダ各粒子は、繊維間に取り込まれ且つ溶剤可溶性樹脂がその表面を包む状態となってバインダ樹脂内に均一に分散・担持され、互いに凝集しない。
前記攪拌を続けると溶剤の揮発と共に原料組成物の粘性は次第に上昇し最終的にはペースト状或いは餅状となる。この状態では攪拌というよりは混練されることになる。続いてこのペースト状或いは餅状粘性混合物をペレット成形機にかけてペレット状にする。勿論、ペレット状にする代わりにその用途によっては棒状、板状或いはブロック状にしてもよい。
前記ペレット状混練物は、通常の射出成形(射出成形機への原料供給→加熱混練溶融→計量→金型の射出→保圧・冷却→型開・グリーン体取り出し)によって所定の砥石形状に成形され、グリーン体として金型から取り出される。このグリーン体は、溶剤可溶性樹脂成分と溶剤不溶性樹脂成分を主とするバインダ樹脂内に研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダが分子分散された状態で、見かけ上は通常の熱可塑性樹脂成形部材と同様のものであり、保形性に優れており取り扱いが簡単である。前記グリーン体は、後述する焼結工程において発生する収縮量を見込んで最終形状より大きい形(これには限られないが一般的には略相似形)に形成されることになる。
このグリーン体を一方の溶剤可溶性樹脂成分を溶解する溶剤中に浸漬すると、前記繊維状或いは羽毛状の溶剤不溶性樹脂成分間を通って当該溶剤可溶性樹脂成分が次第に溶媒中に溶け出し、グリーン体は芯まで完全に多孔質状態になって行く。薄肉の部分は短時間で当該一方の溶質樹脂の脱脂が完了するが、これに対して厚肉部分は脱脂に時間がかかるが、十分に時間をかけることで中心部分までほぼ完璧に溶剤可溶性樹脂成分の脱脂が行われる。溶媒温度を上げる事で脱脂速度が速まる。なお、溶剤脱脂であるから、従来の脱脂方法に比べて格段に脱脂速度が速くなるだけでなく単にグリーン体を溶剤に浸漬するだけでよいので設備費用も殆ど不要であり、得られた脱脂品は溶剤不溶性樹脂成分の存在により保形性に優れているので取り扱いも容易である。
そして前述のように溶媒に溶けずに残留している溶剤不溶性樹脂成分はその繊維が羽毛状に絡まり合っているため、多孔質となった状態でもグリーン体の保形性は全く損なわれない。そして焼結用粉末はこの繊維状溶剤不溶性樹脂成分中に極めて均一な分散状態を保っている。
続いて、この多孔質グリーン体を焼結炉に入れ、室温から700℃の温度に昇温して多孔質脱脂品を加熱し、まず残留していた溶剤不溶性樹脂(離型材及び可塑剤を含む)を熱分解・消失させ、これを更に温度を上げ、粉末材料の焼結温度で加熱して砥粒バインダを焼結あるいは融着し、研削砥粒と基材砥粒を砥粒バインダにて一体化させ、焼結を完了する。焼結温度は、例えば、ガラスは約750℃、Cuは約800℃、Ni、鉄は1300〜1400℃、Coは約800℃、である。砥石の場合、完全稠密状態にするのではなく、砥石内にチップポケットと呼ばれる微細空隙が全体に均一に分散して形成されるようにすることが重要である。
好ましくは、アルゴン雰囲気或いは窒素雰囲気中で焼結すれば研削砥粒と基材砥粒を砥粒バインダなどの焼結用粉末の酸化や焼損を防止出来る。これにより、特に従来、超精密砥石の実現を妨げていた全ての問題を一挙に解消することができた。
前述の場合は射出成形を中心に説明したが、この原料を使用して造形する方法としては射出成形に限られず、(a)前記混練物を用いて押出成形法にて棒状または板状或いはブロック状グリーン体を形成し、この棒状または板状或いはブロック状グリーン体から対象形状に対して収縮量を見込んだ大きさのグリーン体を形成し、これを前述同様、脱脂した後、焼結したり、(b)或いは前記混練物を金型に圧入して、対象形状に対して収縮量を見込んだ大きさのグリーン体を成形し、これを脱脂した後、焼結したりする通常の金型プレス成形により造形する方法、(c)前記板状グリーン体を使用して真空成形を行ったり、筒状グリーン体を使用してブロー成形を行うなど各種の方法があり、砥石の形状に合わせて最適の製造方法が用いられる。
以上は、金属基やガラス基砥石について説明したが、樹脂基砥石(レジンボンド砥石)の場合もほぼ同様であるが、樹脂基砥石の場合は、金属基やガラス基砥石と異なり、バインダ樹脂に投入される粉末が研削砥粒と基材砥粒で、砥粒バインダが投入されないこと及び焼結された多孔質焼結体に溶融樹脂が含浸される点が相違するだけで、他の基本原理は金属基やガラス基砥石の場合と同じである。用いられる樹脂は例えばフェノール樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂である。
砥粒バインダが樹脂であるレジンボンド砥石の製造方法について簡単に説明すると、溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されたグリーン体形成用の前述のバインダ樹脂と、研削砥粒と、基材砥粒とを混練し、この混練物をぺレット化し、ぺレット化された混練物を射出成形して砥石のグリーン体 (あるいは前述の適宜な方法で砥石のグリーン体)を形成し、続いて当該グリーン体から可溶性樹脂溶出用溶剤にて溶剤可溶性樹脂を溶出して多孔質グリーン体を形成し、脱脂された前記多孔質グリーン体を加熱して多孔質グリーン体に残留している不溶性樹脂成分を焼失させると共に或いは焼失させた後、更に加熱して仮焼結して多孔質仮焼結体を形成し、最後に多孔質仮焼結体に樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させることになる。
Claims (7)
- 砥石本体構成用の基材砥粒と、対象物研削用の研削砥粒と、これらを結合するための砥粒バインダで構成された砥石において、
研削砥粒が、単体で基材砥粒間に均一に分散していることを特徴とする砥石。 - 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されているグリーン体形成用のバインダ樹脂に、砥石本体構成用の基材砥粒と、対象物研削用の研削砥粒と、前記基材砥粒と研削砥粒とを結合するための砥粒バインダ粒の内、少なくとも基材砥粒と研削砥粒とが均一に分散されて担持されていることを特徴とする砥石用混練物。
- バインダ樹脂を構成する溶質樹脂は高温では互いに溶剤可溶性を有し、室温では溶剤不溶性を示す組み合わせであることを特徴とする請求項2に記載の砥石用混練物。
- 溶剤不溶性樹脂と溶剤可溶性樹脂の体積比が1:0.5〜4.0であることを特徴とする請求項1〜3の砥石用混練物。
- 砥粒バインダが、樹脂或いは金属又はガラス質結合材であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の砥石又は砥石用混練物。
- (a) 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されたグリーン体形成用のバインダ樹脂、研削砥粒、基材砥粒、砥粒バインダとを混練する混練工程、
(b) 混練物を成形して砥石のグリーン体を形成する成形工程、
(c) 砥石のグリーン体から可溶性樹脂溶出用溶剤にて溶剤可溶性樹脂を溶出して多孔質グリーン体を形成する脱脂工程、
(d) 脱脂された前記多孔質グリーン体を加熱して多孔質グリーン体に残留している不溶性樹脂成分を焼失させると共に或いは焼失させた後、砥粒バインダを焼結する焼結工程とで構成されたことを特徴とする砥石の製造方法。 - (a) 溶剤不溶性樹脂が溶剤可溶性樹脂に配合されたグリーン体形成用のバインダ樹脂と、研削砥粒と、基材砥粒とを混練する混練工程、
(b) 混練物を成形して砥石のグリーン体を形成する成形工程、
(c) 砥石のグリーン体から可溶性樹脂溶出用溶剤にて溶剤可溶性樹脂を溶出して多孔質グリーン体を形成する脱脂工程、
(d) 脱脂された前記多孔質グリーン体を加熱して多孔質グリーン体に残留している不溶性樹脂成分を焼失させると共に或いは焼失させた後、更に加熱して仮焼結して多孔質仮焼結体を形成する仮焼結工程、
(e) 多孔質仮焼結体に樹脂を含浸させた後、含浸樹脂を硬化させる樹脂含浸・硬化工程とで構成されたことを特徴とする砥石の製造方法。
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JP2010516487A (ja) * | 2007-01-23 | 2010-05-20 | サンーゴバン アブレイシブズ,インコーポレイティド | 凝結体を含む被覆研磨製品 |
JP7258385B1 (ja) | 2022-07-19 | 2023-04-17 | 株式会社東京ダイヤモンド工具製作所 | 合成砥石、合成砥石アセンブリ、及び、合成砥石の製造方法 |
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- 2003-09-24 JP JP2003331906A patent/JP2005103647A/ja active Pending
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