JP2005101437A - 磁場中押出し成形装置および磁石の製造方法 - Google Patents

磁場中押出し成形装置および磁石の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 1.0 T以上の強力で均一な平行磁場を与えることを前提に、その磁場強度、磁場均一度及び磁場平行度が安定しており、連続的に均一で高い配向度の成形体を押出し成形することができるとともに、低コスト運転ができ、安全性が高く小型で高精度の磁場中押出し成形装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 成形金型の周囲にハルバッハ磁気回路を用いた磁場発生装置を備えたことを特徴とする磁場中押出し成形装置を用いる。この成形金型はキャビティ断面の厚さと幅の比が1:1.5〜1:100であることが好ましく、また、この薄物の成形体を製造する上で、磁場発生装置の周囲に磁気シールド部を設けたことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、成形金型部のキャビティ内に均一な平行磁場を発生するようにした磁場発生装置をとりつけた安価で安全性の高い磁場中押出し成形装置に関する。また、この成形装置を用いて高配向かつ安価に成形する磁石粉末の押出し成形方法に関する。
磁石粉末と熱可塑性バインダを混練したコンパウンドを磁場中押出し成形機により成形し高い配向を得るには1T以上の強い磁場が必要である。この成形法で使用可能な強い磁場を発生する装置の磁場発生源としては、永久磁石を用いた静磁場、電磁コイルを用いた静磁場、パルス電源を用いたパルス磁場などが知られている。例えば、円筒状樹脂磁石の成形装置として特許文献1では磁粉とバインダの混練物を成形金型で押出し、永久磁石を使用した静磁場で配向する技術が記載されている。しかし、押出し成形中に磁場配向させるためには一方向に均一で強力な磁場が連続的に必要となる。磁場配向に必要な磁場強度はバインダの流動性、押出し温度により多少異なるが高い配向を得るためには1T以上の磁場が必要である。このため、単純に永久磁石を用いた静磁場では必要な磁場強度が得られず押出し成形において高配向の成形体を得ることができない。
特許文献2には電磁コイルを用いた例として円弧形状や円筒状の樹脂結合型磁石が記載され、電磁コイルおよびポールピースを金型を挟むように外側に配置した構成が開示されている。しかし実際の電磁コイルを用いた静磁場では、1.0T以上の磁場を発生させるためにはコイルに500〜800Aという大電流を流す必要がある。よって、大電流を用いるための安全性や設備が必要であるのみならず、押出し中連続的に磁場を発生する必要があるため高額の電気代がかかり、また大電流により発生した熱を除去するために大量の冷却水を使用しなければならない。さらに、漏洩磁束が非常に大きいために人体に与える危険性を考慮すると設備スペース以外に安全確保のための大きな空きスペースを作らねばならない。さらに、漏洩磁束量が大きく、配向度を下げてしまうという問題があり、改善の余地がある。
また、パルス電源を用いたパルス磁場では2−3Tの磁場を発生させることが可能であるが800-1000Aの大電流を充電して流すため安全性の問題があり、設備が大掛かりになる。また間隔を短くすることは可能ではあるがあくまで磁場の発生は非連続であり、押出し成形法には不向きである。適用製品が円筒形状であれば周方向の極数ごとのばらつきだけが問題であり、軸方向に表面磁束密度のばらつきが発生しても、実用上一端部から他端部までの表面磁束密度の総和は各磁極では一定になるため重大な問題にはならない。しかし適用製品が薄物形状であると、上記のパルス磁場による非連続な磁場印加によって、押出し成形体を各々所望寸法に加工した磁石ごとの磁力は顧客の要求する磁力特性の誤差内にとどめるのは難しい。
他、特許文献3のように永久磁石を用いた磁場印加装置が提案されている。しかし、このものは磁場強度分布を調整することに重点がおかれ磁場強度は低く、強力な磁場配向装置に利用できるものではなかった。
特開平11−74142号公報 特開平6−236807号公報 特開平11−25424号公報
以上のことから、押出し成形用の均一磁場発生装置の磁場発生源として電磁石やパルス磁場、また単純な永久磁石を用いた磁気回路では問題があり、高配向の押出し成形品を得るには問題があった。本発明は1.0 T以上の強力で均一な平行磁場を与えることを前提に、その磁場強度、磁場均一度及び磁場平行度が安定しており、連続的に均一で高い配向度の成形体を押出し成形することができるとともに、低コスト生産ができ、安全性が高く小型で高精度の磁場中押出し成形装置を提供することを目的とする。
本発明は、成形金型の周囲にハルバッハ磁気回路を用いた磁場発生装置を備えたことを特徴とする。ここでハルバッハ磁気回路とは磁化方向が異なる複数の永久磁石セグメントを組み合わせ、これらの合成磁場に方向性を持たせたものである。すなわち図1に示すように、分割された永久磁石セグメントS1〜S12が発生する磁束の流れにおいて、例えば、永久磁石セグメントS1が外部に発生する漏洩磁束の流れに相当する部分にその流れに沿った方向とある角度を持った磁化方向を有する永久磁石セグメントS2を配置し、以下同様に隣接する永久磁石セグメントの磁化方向を連続的に変化させて配置したものである。これにより、磁気回路の中央の空洞部内に強力でかつ均一な平行磁場を発生させることが出来るものである。これにより連続的に均一かつ高配向な異方性成形体を押出し成形することができる。また磁場発生のためのランニングコストがかからないため低コストで成形体を配向させることができる。
他、特許第2704352号公報や、特許第3115243号公報に記載された構造も採用可能である。今回用いたハルバッハ型磁気回路の構造は実施例中にて詳細を述べる。上記構成とすることで、成形金型のキャビティ内を高磁場強度、磁場均一及び磁場平行度が安定な状態とすることが可能であり、かつ電磁コイルを使用した場合と比較して、低コスト生産ができ、安全性が高く小型で高精度の磁場中押出し成形装置とすることが可能である。
このハルバッハ型磁気回路を用いた構成は特に薄物扁平形状の成形体を配向する際に有効であり、成形金型はキャビティ断面の厚さと幅の比が1:1.5〜1:100であるものに適用することが好ましい。薄肉形状のものを押出し成形する際、パルス磁場であれば場所ごとに配向度が異なり、所望の形状に加工すると製品ごとの磁気特性がばらついてしまう。本発明の構造を用いた磁場中押出し成形装置とすることで高配向でかつ一律均一な配向を持つ薄物形状の成形体を得ることができる。キャビティ断面の厚さに対して幅が1.5倍未満であると、成形体の磁極面積が成形体体積に対して小さくなり実用に乏しい。またキャビティ断面の厚さに対して幅が100倍超であると、後述するように、成形体の表面部が成形金型との摺動によって配向が乱れ、磁気特性を低下させる原因となる。
また、上記磁場中押出し成形装置の好適な構造として、図13に示すように前記成形金型66の成形体排出口端部は前記磁場発生装置10の有効磁場区域から2mm以上の距離にあることが重要である。この成形体排出口端部から磁場発生装置の有効磁場区域までの区間は成形体67の冷却部66bであり、この区間は無磁場区間である(以後、無磁場区間と称する)。成形体は押出しの最中キャビティ内壁面と摺動するため、摺動面での配向が乱れてしまう。磁場配向区間66aではそれが随時修正されるが、磁場がかかっていないこの無磁場区間66bでは表面配向の乱れが修正されないため、配向度が低下していまう。理想的には磁場区間66aで成形体を完全に冷却できれば好ましいが凝固スピードの関係から2mm以上の無磁場区間66bが必要である。また、この区間は厚さが2mm以下、さらには1mm以下の成形体とする際に非常に重要であり、30mm以内さらに好ましくは20mm以内とすればこの成形体の配向度をほぼ低下させずに成形できることがわかった。
また、実験の結果、薄物、特に厚さが1mm以下の形状を押出し成形するとハルバッハ磁気回路からの漏洩磁束により成形体が成形金型から押出された直後に変形してくずれてしまう。よってハルバッハ磁気回路を用いて薄物を押出し成形するにはこの磁気回路の周囲に磁気シールド部10cを設けることで成形可能となることが解った。
本発明では磁気シールドはナノ結晶合金の薄帯を接着層およびポリエチレンテレフタレート箔で挟んだ日立金属社製のファインメット磁気シールドシート"MS−FR"を用いた。
配向度を高めるため、この金型内の磁場は一方向の磁場強度が1T以上あることが好ましく、そのためのハルバック構造における磁石の大きさ、リング全体の外径、内径等は適宜設定されうる。これにより希土類磁石粉末と熱可塑性バインダを混練して作製したコンパウンドを磁場中押出し成形し、脱脂、焼結した焼結体の配向度(Br/4πI)が0.95以上のものが得られる。
本発明によれば、ハルバッハ構造の磁場発生装置を用いたことにより、磁場強度、磁場均一度及び磁場平行度が安定して得られ、特に磁場平行度に優れ磁化曲がり現象を抑制することが可能で、1.0 T以上の強力で均一な平行磁場を得ることができるため、磁化曲がりを抑制した均一な平行磁場を印加でき、磁化配向度の高い高品質の磁石を得ることが出来る。また、磁気回路の周囲に磁気シールドを配置し、かつ無配向区間を適宜設定することで成形金型との摺動による配向の乱れが低下し、磁化配向度の高い高品質の磁石を得ることが出来る。さらにこれらは全て低コストで安全な作業環境下で製造でき、工業生産上好ましい押出し成形装置である。
焼結体炭素濃度、酸素濃度および表面の炭素濃度、酸素濃度を低減し、薄肉の焼結磁石を高い寸法精度で得るため、R2Fe14B系金属間化合物を含む合金粉末(Rは1種又は2種以上のYを含む希土類元素)に熱可塑性バインダを加え、不活性雰囲気中で混練した後、押出成形により薄板状の成形体を作製し、前記成形体の少なくとも一面を平板で圧接させ、脱バインダ処理し、焼結することで肉厚1mm以下かつ無加工の焼結品とするこができる。
成形体が薄物扁平形状であるならば、BN板、Al板又はZrO2板で挟持しながら焼結することが好ましい。例えばMo板などの金属板では熱膨張率の違いから焼結中に焼結割れが起きたり、R2Fe14Bと反応するためである。
また、平板が成形体と接触する面の表面粗度Ra(JISB0601:算術平均粗さ)は20μm以下であることが好ましい。20μm以上であると凹凸による成形体との摩擦係数が実質的に高くなり、焼結中の熱膨張率の差による成形体割れの頻度が顕著になる。ここで表面粗度Raとは粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さLで割った値をマイクロメートル(μm)で表わしたものである。
この場合、成形体の少なくとも一面を5.88Pa(0.06gf/cm2)以上、127.4Pa(1.3gf/cm2)以下の圧力で平板を圧接させることで焼結割れなく、かつ焼結反りを抑制した磁石が得られる。5.88Pa(0.06gf/cm2)未満の圧力であると成形体の焼結反りを抑えることができず、求められる寸法公差内に薄肉形状の両平面を収めることができない。また、127.4Pa(1.3gf/cm2)超であると垂直摩擦抗力が高すぎて成形体と平板との摩擦力があがり、熱膨張率の差による割れが抑制できない。好ましくは9.8Pa(0.1gf/cm2)以上98Pa(1.0gf/cm2)以下である。
脱バインダ処理および焼結の工程において、成形体のそばに酸素吸収剤を置きながら処理し、成形体中へ炭素や酸素が混入することを抑制させることが好ましい。炭素・酸素吸収剤は、例えばNd粉末、CaH2粉末、Zr粉末、Ti粉末、またはY粉末など、炉中の炭素や酸素を吸蔵するものであれば適宜使用可能である。
前記合金粉末がNdFeB系磁石粉末である場合、Rが32.5質量%以上37.5質量%以下であり、かつ前記熱可塑性バインダは熱可塑性樹脂、可塑剤、滑剤のなかからコンパウンド量(合金粉末とバインダとの総和量)に対して含有酸素量が0.50質量%以下になるように任意に選択した数種類を混練したものが好ましい。合金粉末中のR量が32.5質量%未満であるとRと酸素、炭素が反応して有効なRが減少し保磁力が低下する。また、37.5質量%超であると有効な残留磁束密度が得られない。さらに、コンパウンド量(合金粉末とバインダとの総和量)に対して含有酸素量が0.50質量%超であると、上記のように平板で成形体を覆っても酸素量を低減することは困難であり、やはり有用な磁気特性を得ることは難しい。
脱バインダ処理は水素雰囲気中で行うことが好ましい。炭素含有量については脱バインダ時に水素雰囲気で加熱することによって低減される。炭素および水素を主成分とするバインダは水素中で加熱することによってクラッキングにより分子量が低下し、脱バインダがより完全に行える。クラッキングとは水素の存在下で加熱することによりバインダの分子量が低下することを意味する。焼結はAr中または真空中で行うことで成形体中への酸素混入を抑制することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、アクタチックポリプロピレン(APP)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、アモルファスポリオレフィン(APO)、ナフタレン、ポレスチロール (GPPS、HIPS)、ポリカーボネート (PC)、アクリル(PMMA)、ポリアセチル(PC)、アクリル(POM)、ポリアセチル(PC)、塩化ビニル(PVC)、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)など適宜使用可能である。
次に本発明の磁場中押出し成形機用の磁場発生装置の概略図を図1に示す。図1の装置は円筒体状のハルバッハ型磁気回路を構成してなり、互いに異なる磁化方向に配向した永久磁石のセグメントS1〜S12をリング状に組み合わせたものである。本例のセグメントは12分割であり、各永久磁石のセグメントS1〜S12は、さらに複数の永久磁石Mの層から構成され、これらの永久磁石の合成磁界が矢印方向に向くように組立てられている。
図示を省略したが、各永久磁石のセグメントの外周側は軸方向に分割された複数の外枠部材(外リング)により磁気回路の保持を行うようになっている。かつ各永久磁石のセグメントが発生する吸引反発力を外リングで受けられるように各永久磁石のセグメントと外リングはねじなどの支持補助部材により機械的に結合して組立てられている。最終的に接着剤を用いてこのセグメントをリング状に一体化して磁場発生装置1を構成する。
この磁場発生装置1において、隣り合う永久磁石セグメントの磁化方向が交差してなす磁化方向位相角θはθ=720/N(度)で求められる。従って分割数Nが8,10,12,16,20のとき磁化方向位相角θは、それぞれ90,72,60,45,36度となる。これを磁化方向基本位相角とし、組立て誤差は多少あるもののこの角度になるように組むことによって磁化方向が連続的に変化し、図示するように左右から流れ込む磁束が効率的に一端に結集し、中央空洞部C10内に誘導されて直径方向に平行で均一な磁場Hを形成する。しかしながら、実際には少なからず磁化曲がり現象が生じることが確認されている。これは分割されたセグメント磁石間において、急激に磁化方向が変化するために中央の空洞部側にその磁化方向の変動の影響がでる為と考えられる。これを緩衝する一つの手段としてはセグメント分割数を増やすことである。これにより磁気回路空洞部内への磁気変動を小さくすることができ、より広い均一磁場領域が確保できる。逆に言えばより広い均一磁場領域をつくるにはセグメント分割数をより多くすることが好ましいと言える。しかし下記で述べる特性面及び製作面や経済面等を勘案すれば、10分割程度は必要であるが、20分割までが現実的な分割数であると言える。
他方、より広い均一磁場領域を得ると言うことは、磁気回路の軸(長さ)方向の磁化曲がりを小さくする必要がある。これは磁場平行度、いわゆるずれ角あるいはスキュー角と呼ばれるもので、この値を小さくすることが磁化曲がりの抑制につながる。本願発明では永久磁石のセグメントの磁化方向位相角θを上記基本位相角から変化させることによりこれを解決することができる。具体的には12分割のリング状磁気回路をモデルに第1象限にあたる1/4リングを基本構成ユニットとして検討を行った。すなわち空洞部内における磁場分布を計算して求めたところ図2に示すようになることが確認された。この図は等高線Clで磁場平行度を示しており、線間隔が狭くなるに従い磁場平行度が悪くなることを示している。この解析結果から基本構成ユニットにおける45度付近の領域の磁場平行度(ずれ角またはスキュー角)が最も大きくなり、45度付近の磁石の磁化方向が磁場均一度に影響を与えていることが分かった。
次に磁場平行度についての検討結果を説明する。まず、図1において磁気回路のY軸正方向からの角度として15度、165度、195度、345度に相当する位置に配置された永久磁石セグメントS1、S6、S7、S12について磁化方向基本位相角を基本角度から変動させる角度(変動角)ψを±5度としたときの空洞部内の軸(長さ)方向の磁場平行度の変化を図3に示す。図3の縦軸は磁場平行度を、横軸は磁気回路の長さを示し、磁気回路の中央から上下300mmにわたる磁場平行度の変化を示している。
次に、磁気回路のY軸正方向からの角度として75度、105度、165度、195度に相当する位置に配置された永久磁石セグメントS3、S4、S9、S10について磁化方向基本位相角を基本角度から変動させる角度(変動角)ψを±5度としたときの空洞部内の軸(長さ)方向の磁場平行度の変化を図4に示す。
また、同様に磁気回路のY軸正方向からの角度として45度、135度、225度、315度に相当する位置に配置された永久磁石セグメントS2、S5、S8、S11について磁化方向基本位相角を基本角度に対し、変動角ψを−5〜+15度としたときの空洞部内の軸(長さ)方向の磁場平行度を図5に示す。
図3〜5より、永久磁石セグメントの基準位相角に対しψを5度程度傾けることにより、磁気回路軸方向全域において、磁場平行度を1度以内にすることができている。しかし、各象限の磁気回路において45度付近に位置される永久磁石セグメントを傾けた図5によればψ=5度で平行度を±0.5度以内に抑えられており、より磁場平行度を低減できる効果が高いことがわかる。これらのことから永久磁石セグメントの磁化方向基準位相角を変化させることにより磁場平行度、ひいては磁化曲がりを抑制できること、また各象限の磁気回路において45度付近に配置されるセグメントの位相角を変化させることがより効果的であることが確認された。
図5をさらに詳細に説明する。図5は第1象限に位置する基本構成ユニットについて時計回り方向を正として磁化方向基本位相角θから変動角ψ=−5〜+15度まで変化させた場合の面内磁束密度分布図(図2相当)の変化を基に好ましい変化量について検討したものである。空洞部内の均一磁場領域の外側で、かつ45度位置に相当する場所の磁場平行度(deg)を磁気回路の長さ方向(軸方向)全域±300mmにわたって求めている。図5より磁気回路の中央から上下300mmにおいて変動角ψ=−5度では磁場平行度は1度超の領域が多く現われ、2度超ずれる領域も発生している。変動角ψ=0度では一部の領域(両端の±300mm付近)で磁場平行度が1度を超えている。対して、変動角ψが5〜10度では長さ方向全域において、磁場平行度は±1度以内になっている。しかし、変動角ψ=15度となると−1度を超えて−2度に近くなり磁場平行度が大きくなってしまうことが分かった。以上のことより、変動角ψは0<ψ≦15度近傍の範囲で磁場平行度を±1度以内に抑える効果があり、特に変動角が5度近傍で磁場平行度が空洞内全域で最も小さくなる。
尚、位相角を変化させる永久磁石セグメントは、図1の基本構成ユニットにおいては45度付近に位置するセグメントS2であり、磁気回路全体をみれば135度付近のセグメントS5、225度付近のセグメントS8及び315度付近にあるセグメントS11となり、セグメントS2、S8は時計回り方向に、セグメントS5、S11は反時計回り方向へ変動角ψ=15度以下で変化させることになる。また磁気回路の配置として図6に示すようにX−Y軸に対しセグメント配置をずらした、例えばAタイプとBタイプの構成が考えられるが、タイプBの場合は45度付近に配置されたセグメントS2、S3の2個について位相角を変化させることが望ましい。
また、磁場平行度は磁気回路の軸方向の長さにも依存することが分かっており、図7に示すように長くなればなるほど平行度は向上する。およそ300mm以上の長さが望ましいと言えるが、長くなればなるほど重量の増加が著しい。よって、平行度を維持したまま低背化することが望まれる。この点で磁化方向位相角θを変化させることにより磁化曲がりが補正されると共に磁場平行度の精度が上がるので、従来と同等の平行度を維持したまま低背化が可能である。また、これまでの例では磁気回路の上下端部で磁場平行度が悪化するため、磁気回路の一部の領域しか配向処理として使用できなかったが、前記工夫により磁気回路全体が使用できるようになった。
永久磁石のセグメントに使用する永久磁石は、1.1 T以上の残留磁束密度及び1114 kA/m (14 kOe)以上の保磁力を有するものであって、Baフェライト系磁石、Srフェライト系磁石、Laおよび/またはCo添加のフェライト系磁石等のフェライト磁石の他に、Nd-Fe-B系磁石、Sm-Co系磁石、またはSm-Fe-N系磁石等の希土類系磁石等が挙げられる。特に高い残留磁束密度を有するNd-Fe-B系磁石が好ましい。永久磁石は焼結磁石に限らずボンド磁石でも良い。
次に、磁場強度、磁場均一度及び磁場平行度が安定する望ましいセグメント分割数について説明する。
(a)磁場均一度
磁場均一度は、中央空洞部の中心から直径120mmの領域で、かつ軸方向の中央から150mmの領域内における最大磁束密度Tmaxと最小磁束密度Tminの比(Tmax - Tmin) / Tmaxをとった。縦軸に磁場均一度を、横軸に分割数をとった結果を図8に示す。尚、図中Aタイプ、Bタイプそれぞれを図6に示す。Aタイプはセグメントの端部がY軸、X軸上に配置されるものである。Bタイプはセグメントの中央がY軸、X軸上に配置されるものである。図8より磁気回路のセグメント分割形態の違い、即ちA、Bタイプによる磁場均一度の影響はないこと、そして12分割以上では均一度の向上は見込めないことが分かった。
(b)中心磁場強度
中心磁場強度は、中央空洞部の軸方向中央で、かつ中心位置における主磁場発生方向の磁束密度をとった。主磁場発生方向は、図1に示すような磁気回路の中央空洞内に発生する磁場Hの方向であり、縦軸にその中心磁場強度(T)を、横軸に分割数をとった結果を図9に示す。尚、20分割に対する中心磁場強度の比率を右縦軸に記し点線で示している。図9より中心磁場強度は分割数の増加に伴って漸増するが、12分割以上ではほぼ一定となる。また、点線で示すように20分割した場合との中心磁場の対比は12分割で約3%以内の差に落ち着くことが分かった。
(c)磁場平行度
磁場平行度(ずれ角またはスキュー角)は、縦軸に磁場平行度の最大値を、横軸に分割数をとった結果を図10に示す。図10より磁場平行度の最大値は分割数の増加により減少するが、12分割以上ではそれ以上の減少は見込めずほぼ一定となることが分かった。
以上の評価の他に製造面また経済面からの評価が必要となるが、永久磁石セグメントの分割数が多ければ組立ては煩雑となる。また必要とする永久磁石の種類も多くなりコストも嵩むと言える。
以上のことより、本発明の磁場発生装置において永久磁石セグメントの分割数Nは8〜20分割が妥当であり、望ましくは10〜16分割、最も望ましくは12分割であると言える。
次に、永久磁石セグメント間に距離を置いた例について図11を用いて説明する。この例は主に永久磁石セグメントの製造のし易さ、組立てのし易さ、またコスト等を考慮したものである。特に永久磁石セグメントを矩形形状とした場合は、永久磁石も矩形とすることができることから磁場発生装置全体が作り易くより安価にできる。図11(a)は、同一形状の矩形状永久磁石セグメントを所定の距離をあけて設けており、隣り合う永久磁石セグメントの磁化方向が交差してなす磁化方向基本位相角θを上記したように変化させている。変化させる永久磁石セグメントはSR2、SR4、SR6及びSR8を変動角ψ=5度としている。尚、ここでの分割数は8としているが、無論それ以上の分割数をとっても良い。ただ永久磁石セグメント形状が台形や扇形ではないため、円形に配置し中央空洞内に均一平行磁場を発生するためには、図11に示すように永久磁石セグメント間に隙間が必要となる。この隙間を無くすことも可能であるが、その場合は図11(b)に示すように空洞内径が小さくなり、均一平行磁場領域もこれに比例して小さくなる。
(磁場中押出し成形装置)
本発明の磁場中押出し成形装置の一例を図12に示す。磁場発生装置10は、上記した図1と同様の12分割の磁気回路からなり、各セグメントの永久磁石はいずれも1.45Tの残留磁束密度及び1192 kA/mの保磁力を有するNd-Fe-B系焼結磁石により構成した。リング状の磁場発生装置10は、3種類の磁気異方性方向を持つ3種類の扇状の永久磁石のセグメントS1〜S12を周方向に全部で12個配列することにより形成されている。この扇状永久磁石セグメントS1〜S12は同一形状を有するので、扇形の中心角は30°、また磁極の磁化方向基本位相角θは60°である。セグメントの種類は3種類なので磁場配向を変えた永久磁石の種類も少なくて済む。尚、各永久磁石セグメントは扇形とする代わりに台形や矩形等にしても良い。
上述したように磁場発生装置10における複数の永久磁石セグメントは、磁化方向が連続的に変化して中央空洞部内の直径方向に磁束が流れるようにリング状に組み合わされている。このとき、リング状磁気回路の中心から45度、135度、225度、315度に相当する位置にある永久磁石セグメントS2、S5、S8、S11(図1参照)の磁化方向位相角θが白抜きの矢印で示すように60度であったのをS2、S8は時計回り方向である黒の矢印方向に+5度、またS5、S11では反時計回り方向である黒の矢印方向に+5度だけ変化させている。こうして本例では変動角ψを5度に設定し、スキュー角は1度以内になるようにしている。また、磁気回路の内径D0は220mm、外径Dは850mm、軸方向長さ(高さ)Hは600mmである。
成形体は、磁石合金粉末(例えばNd-Fe-B系希土類磁石粉末)と熱可塑性樹脂(例えばポリアミド樹脂)を主成分とする原料混合物を加熱混練し、次いで磁場中で押出し成形して得られる。この成形体の異方性付与方向に沿って着磁することにより異方性の押出し成形体が得られる。図12の押出成形装置において、61は二軸混練タイプの押出成形機であり、一端側にホッパー62を有する、複数個に分割されたバレル63と、その内部に配設された2本のスクリュー64(図では1本のみ示す)と、バレル63の先端に設置されたアダプタ65とを有している。アダプタ65の吐出口に、成形金型66が接続され、この金型66の外側に磁場発生装置10を配置する。
図13に押出し成形機の配向部の詳細な断面図を示す。図13中、白抜きの矢印は磁場方向を表す。成形金型66のダイ66aで所望の成形体の形状になり冷却部66bで冷却され成形体67が作製される。磁場発生装置による配向領域は冷却部66b出口付近まで必要である。配向は温度の高いダイ部66aで行なわれるが冷却部を流れる際成形体表面と金型の摩擦により成形体67表面の配向が乱れる。そのため表面の配向乱れを修正するため成形体67が冷却され配向が乱れなくなる冷却部66a出口付近まで配向を行うことが重要である。磁場発生装置の中心部10aをダイの中心位置に併せた。また、成形金型の冷却部の排出口端部から磁場発生装置の有効磁場区域10bまでの距離tは15mmとした。図14は図13のA−A断面である。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
図12,13の成形装置によれば次のようにして薄物扁平状(厚さ方向に配向)の異方性ボンド磁石が得られる。まず、重量百分率でNd32.5質量%、Dy3.0質量%、B1.05質量%、残部実質的にFeからなる合金を高周波溶解によって溶解し、ストリップキャスト法により粗粉砕粉を作製した。この粗粉砕粉を水素吸蔵・脱水素処理を行った後、ランデムミルにて500μm以下の粗粉とした。この粗粉に対してパラフィンワックスを0.05〜0.10質量%添加・混合後、ジェットミルにより微粉砕した。ジェットミルの粉砕媒体は窒素ガスで、ガス圧は0.69MPa(7kgf/cm2)とした。得られた合金粉末の平均粒径は4.2μmである。合金粉末93質量%と熱可塑性バインダとしてエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)2.0質量%、ポリエチレン(PE)1.5質量%、パラフィンワックス(PW)3.5質量%を混練して原料とした。ホッパー62を介してバレル63内に投入された原料70は、一対のスクリュー64の回転によりせん断力が加えられると共に、150〜230℃の温度で加熱溶融されながら成形金型66に搬送され、そこで所定の断面積に磁場中で絞り込まれて成形空間内を通過した。押出された成形体は金型から押出され、かつ本発明の磁場発生装置10により金型の出口付近で異方性化されて外部に排出された。押出し速度は1−2cm/s、無配向区間を15mmとして成形した。
押出成形による予備成形体は厚さ1.0mm、幅10.0mmの薄板状である。この予備成形体を7mm角の大きさに打抜き加工を施し、薄肉形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉形状の成形体を表面粗度Raが10μm、厚さが2.0mmのBN板で挟み、炉中に設置した。BN板が成形体にかける圧力はBN板の自重によるものであり圧力は51.0Pa(0.52gf/cm2)である。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd-Fe-B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
焼結した薄肉形状のR-Fe-B系焼結磁石の残留磁束密度、保磁力、配向度、最大エネルギー積をVSMにより測定した。表1にその結果を示す。
Figure 2005101437
(比較例1)
実施例1と同様の方法で磁場配向装置としてパルス磁場を用いて作製した試料の磁気特性を表1に示す。パルスの間隔は5秒、パルス磁場強度は測定値で約2T、押出し速度を0.5-1.5cm/sとして成形した。パルス磁場が非連続であるために比較試料1-1,1-2の最大エネルギー積は30kJ・m−3以上の差が有り、磁気特性が不均一であることがわかる。
(比較例2)
最大磁場強度が0.6Tである永久磁石式回路を磁場発生装置として使用し実施例1のように作製した試料の磁気特性を表1に示す。磁場強度が弱いため配向度が低く、有効な磁気特性を得ることができない。
(参考例1)
実施例1と同様な方法で押出し成形を行った。但し押出し成形機の成形金型の無配向区間を全く設けずに、成形金型から押出された成形体を直接ベルトコンベア上に流したが、漏洩磁束密度の影響により成形された形を保てずに崩れてしまった。
逆に、成形金型の無配向区間を50mmと長くして作製した試料の磁気特性を表1に示す。無配向区間の金型との摩擦により成形体表面の配向が曲がり有効な磁気特性を得ることができないことが解る。但し、厚さが1mm超のものでは配向の乱れる体積が薄物と比較して少ないため、無配向区間を20mmとしたものと50mm超のものを比較しても殆ど磁気特性に変化がないことが解っている。
(実施例2)
図15に示すようにアーク形状の成形体を本発明の押出し成形装置を用いて成形した。成形金型を図15に対応する形状とし、それ以外は実施例1で用いた磁場発生装置10を用いた。成形体の製造においても実施例1と同様である。異方性磁粉は、重量百分率でNd19.0質量%、Dy9.0質量%、Pr4.7質量%、B1.02質量%、Ga0.11質量%、残部実質的にFeからなる合金を高周波溶解によって溶解し、ストリップキャスト法により粗粉砕粉を作製した。以後は実施例1と同様にして合金粉末を作成し、樹脂と混連して原料とした。ホッパー62を介してバレル63内に投入された原料70は、一対のスクリュー64の回転によりせん断力が加えられると共に、150〜230℃の温度で加熱溶融されながら成形金型66に搬送され、そこで所定の断面積に磁場中で絞り込まれて成形空間内を通過する。押出された成形体は金型から押出され、かつ本発明の磁場発生装置10により金型の出口付近で異方性化されて外部に排出される。押出し速度は1−2cm/s、無配向区間を15mmとして成形した。押出成形による予備成形体は厚さW2.2mm、幅H10.0mm、押出し方向の長さ25.5mmの薄肉アーク形状である。
その後、この薄肉アーク形状の成形体を、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd-Fe-B磁石粉末を70g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
焼結した薄肉形状のR-Fe-B系焼結磁石の残留磁束密度、保磁力、配向度、最大エネルギー積をVSMにより測定した。表1にその結果を示す。
本発明は、家電製品や自動車用等に用いられるモータやアクチュエータ、センサなどに使用される押出し成形による磁石の製造方法やそのための押出し成形装置に関し、特に薄物形状の磁石の製造方法およびその成形装置に利用出来る。
本発明の磁場発生装置の一例の概略構造を示す斜視図である。 本発明の磁場発生装置の空洞部内の磁場分布を示す図である。 本発明の磁場発生装置において一部の永久磁石セグメントの位相角を変動したときの磁場平行度の変化を示す特性線図である。 本発明の磁場発生装置において一部の永久磁石セグメントの位相角を変動したときの磁場平行度の変化を示す特性線図である。 本発明の磁場発生装置において磁化方向位相角θから変化させる変動角ψの範囲を示す特性線図である。 本発明の磁場発生装置における永久磁石セグメントの配置例を説明する図である。 本発明の磁場発生装置において磁場平行度と軸方向長さの依存性を示す特性線図である。 本発明の磁場発生装置における磁場均一度とセグメント分割数の関係を示す特性線図である。 本発明の磁場発生装置における中心磁場強度とセグメント分割数の関係を示す特性線図である。 本発明の磁場発生装置における磁場平行度の最大値とセグメント分割数の関係を示す特性線図である。 本発明の磁場発生装置において永久磁石セグメント間に間隔が有る場合の実施例を示す概要図である。 本発明の磁場中押出し成形装置の一例を示す断面図である。 成形金型周辺の主要断面図である。 図13のA−A断面図である。 本発明の押出し成形機を用いた成形体の断面の一例である。
符号の説明
1、10:磁場発生装置
S1〜S12、SR1〜SR12、SB1〜SB12:永久磁石セグメント
C10:中央空洞部
Cl:磁場平行度を示す等高線
MF:磁束の流れ
3:熱処理炉壁
4:水冷管
5:加熱手段(ヒータ)
6:熱処理容器(真空容器)
7:シール部
8:シール雄ネジ部
9:シール雌ネジ部
12:熱処理用保持具
61:押出し成型機
62:ホッパー
63:バレル
64:スクリュー
65:アダプタ
66:成形金型
67:成形体
70:原料

Claims (6)

  1. 成形金型の周囲にハルバッハ磁気回路を用いた磁場発生装置を備えたことを特徴とする磁場中押出し成形装置。
  2. 前記成形金型はキャビティ断面の厚さと幅の比が1:1.5〜1:100であることを特徴とする請求項1に記載の磁場中押出し成形装置。
  3. 前記磁場発生装置の周囲に磁気シールド部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の磁場中押出し成形装置。
  4. 前記成形金型の冷却部の排出口端部は前記磁場発生装置の有効磁場区域から2mm以上の距離にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁場中押出し成形装置。
  5. 磁石粉末と樹脂を混練してコンパウンドを作製し、前記コンパウンドを押出し成形装置内に装填し、前記押出し成形装置に備えられた成形金型から前記コンパウンドを押出すと共に、前記成形金型の周囲に備えたハルバッハ磁気回路を用いた磁場発生装置により磁場を印加してコンパウンドを配向して成形体とすることを特徴とする磁石の製造方法。
  6. 前記成形体を成形後、熱処理により成形体中の樹脂を脱脂し、その後焼結することを特徴とする請求項5に記載の高配向かつ均一な配向を持つ磁石の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103077799A (zh) * 2012-12-05 2013-05-01 东南大学 一种被动型氢钟超均匀c场磁筒及其制作方法
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