JP2005101274A - 圧電セラミックスおよびこれを用いた積層型圧電素子並びに噴射装置 - Google Patents

圧電セラミックスおよびこれを用いた積層型圧電素子並びに噴射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】圧電セラミックスを加工する際や、超音波洗浄を行うと脱粒を起こすため面粗さが低下することや、磁器表面だけでなく、内部の結晶粒にもダメージを与え、耐久性が低下するという問題がある。
【解決手段】PbTiO−PbZrOを主成分とし、Si含有量が5ppm以上100ppm未満とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、圧電セラミックスおよびこれを用いた積層型圧電素子及び噴射装置に関し、例えば、圧電トランスや、自動車用燃料噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止用の駆動素子等に用いられる積層型圧電アクチュエータ等の積層型圧電素子及び噴射装置に関するものである。
従来より、強誘電性セラミックスまたは圧電セラミックスとして、PbTiO−PbZrO(以下PZTと略す)を主成分とする複合ペロブスカイト型化合物がある。これらの材料は、その構成成分がほとんど全部セラミックスであり、原料あるいは仮焼粉末を所定の形状に成形した後、高温で焼成して作製される。これら従来の圧電セラミックスでは、成分の組成比を選ぶことにより用途に応じて種々の特性の圧電セラミックスが作製され、アクチュエータ、セラミックフィルタ、圧電ブザーなどの用途に用いられている。例えば、圧電アクチュエータは、磁性体にコイルを巻いた従来の電磁式アクチュエータと比較して消費電力や発熱量が少なく、応答速度に優れるとともに変位量が大きく、寸法、重量が小さいなどの優れた特徴を有している。しかし、PZT系セラミックスは4点曲げ強度が100MPa程度であることや、加工時に割れや欠けを生じやすいという欠点がある。
そこで、特許文献1には、研削加工時の欠けや割れの抑制を目的として、副成分としてFeを0.01〜0.3重量%、Alを0.01〜0.04重量%、Siを0.01〜0.04重量%含有するPZT系圧電セラミックスが開示されている。
特許文献1に示されたPZT系圧電セラミックスでは、副成分として含有するAl、Siが焼結段階において液相を形成しやすく、焼結終了後において焼結体の結晶粒界にPbO−Al−SiOを主体とするガラス相を形成する。これにより、これらの副成分を含まない圧電セラミックスより低い温度で焼結体を緻密化でき、また結晶を粒成長させることができる。このために研削加工時の割れや欠けを抑制できることと、上記ペロブスカイト型化合物よりガラス相の方が破壊靭性値が高いため、焼結体の破壊靭性値を高めることができる。
また、積層型圧電素子としては、圧電体と内部電極を交互に積層した積層型圧電アクチュエータが知られている。積層型圧電アクチュエータには、同時焼成タイプと、圧電磁器と内部電極板を交互に積層したスタックタイプとの2種類に分類されており、低電圧化、製造コスト低減の面から考慮すると、同時焼成タイプの積層型圧電アクチュエータが薄層化に対して有利であるために、その優位性を示しつつある。
特開平14−220281公報
しかし、特許文献1に示された圧電セラミックスでは、体積固有抵抗の経時変化など信頼性、耐久性の点で劣るという問題があった。例えば、圧電セラミックスを車載用圧電アクチュエータなどとして用いる場合には、信頼性、耐久性は非常に重要な要素となる。
また、圧電セラミックスを加工する際や、超音波洗浄を行うと脱粒を起こすため面粗さが低下することや、磁器表面だけでなく、内部の結晶粒にもダメージを与え、耐久性が低下するという問題がある。
また、本発明は、高電界、高圧力下で長期間連続駆動させた場合でも、絶縁破壊することなく、耐久性に優れた圧電セラミックスおよびこれを用いた積層型圧電素子、噴射装置を提供することを目的とする。
本発明の圧電セラミックスは、PbTiO−PbZrOを主成分とし、Si含有量が5ppm以上100ppm未満であることを特徴とする。
また、本発明の圧電セラミックスは、前記Siが結晶粒界に偏析し、且つ前記セラミックスの粒界層の厚さが1nm以下であることを特徴とする。
本発明の積層型圧電素子は、前記圧電セラミックスからなる圧電体層と内部電極層を交互に積層したことを特徴とする。
さらに、本発明の積層型圧電素子は、前記内部電極層の金属組成物が周期律表第8族金属と第1b族金属とからなることを特徴とする。
さらに、本発明の積層型圧電素子は、前記内部電極の金属組成物が第8族金属の含有量をM1(重量%)、第1b族金属の含有量をM2(重量%)としたとき、0<M1<15、85<M2<100であることを特徴とする。
また、本発明の積層型圧電素子は、前記第8族金属がPt、Pdのうち少なくとも一種であり、第1b族金属がAu、Agのうち少なくとも一種からなることを特徴とする。
また、本発明の噴射装置は、噴射孔を有する収納容器と、該集の容器内に収容された前記の積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする。
本発明の圧電セラミックスによれば、Siを5ppm以上100ppm未満含有したことにより、粒界にガラス相を形成せず、体積固有抵抗の経時変化を小さくすることができる。そのため、前記圧電セラミックスを用いた積層型圧電素子および噴射装置を、高電界、高圧力下で長期間連続駆動させた場合でも、外部電極と内部電極とが断線することがなく、耐久性に優れた積層型圧電素子、噴射装置を提供することが可能となる。
図1は本発明の積層型圧電素子の一実施形態である積層型圧電アクチュエータを示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A’線に沿った縦断面図である。
積層型圧電アクチュエータは、図1に示すように、複数の圧電体1と複数の内部電極2とを交互に積層してなる四角柱状の柱状積層体1aの側面において、内部電極2の端部を一層おきに絶縁体3で被覆し、絶縁体3で被覆していない内部電極2の端部に、銀を主成分とする導電材とガラスからなり、且つ3次元網目構造をなす多孔質導電体からなる外部電極4を接合し、各外部電極4にリード線5を接続固定して構成されている。尚、符号6は不活性層である。
圧電体1は、詳細を後述するPZT系圧電セラミックス材料で形成されている。この圧電セラミックスは、その圧電特性を示す圧電歪み定数d33が高いものが望ましい。
また、圧電体1の厚み、つまり内部電極2間の距離は50〜250μmが望ましい。これにより、積層型圧電アクチュエータは電圧を印加して、より大きな変位量を得るために積層数を増加させたとしても、アクチュエータの小型化、低背化ができるとともに、圧電体1の絶縁破壊を防止できる。
圧電体1の間には内部電極2が配されているが、この内部電極2の金属組成物が周期律表第8族金属と第1b族金属とから構成されている。前記第8族金属はPt、Pdのうち少なくとも一種であり、第1b族金属はAu、Agのうち少なくとも一種からなることが好ましい。例としては、Ag−Pd合金が挙げられる。
第8族金属の含有量をM1(重量%)、第1b族金属の含有量をM2(重量%)としたとき、0<M1<15、85<M2<100であると、高価な材料である第1b族金属の含有量を減らすことができるため、安価な積層型圧電素子を提供することができる。しかし、第1b族金属の含有量を減らすと合金金属の融点が低下するため、1000℃以下の低温でも焼結する磁器でなければ用いることができない。磁器組成中にSiを5ppm以上100ppm未満含有していると磁器の結晶が成長しやすくなり、より低温で焼結しやすくなる。また、前記範囲のSi含有量であれば圧電特性に悪影響を及ぼさない。
また、柱状積層体1aの側面に一層おきに深さ30〜500μm、積層方向の幅30〜200μmの溝が形成されており、この溝内には、圧電体1よりもヤング率の低いガラス、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーンゴム等が充填されて絶縁体3が形成されている。この絶縁体3は、柱状積層体1aとの接合を強固とするために、柱状積層体1aの変位に対して追従する弾性率が低い材料、特にはシリコーンゴム等からなることが好適である。
柱状積層体1aの対向する側面には外部電極4が接合されており、該外部電極4には、積層されている内部電極2が一層おきに電気的に接続されている。この外部電極4は、接続されている各内部電極2に圧電体1を逆圧電効果により変位させるに必要な電圧を共通に供給する作用をなす。
さらに、外部電極4にはリード線5が半田により接続固定されている。このリード線5は外部電極4を外部の電圧供給部に接続する作用をなす。
そして、本発明では、圧電セラミックスは、前記圧電体1を構成する圧電セラミックスがPbTiO−PbZrOを主成分とし、Si含有量が5ppm以上100ppm未満であることを特徴とする。Siは磁器の強度を向上させる効果があり、前記範囲のSi含有量であれば、粒界にSiが偏析して、結晶粒間の結合が強くなるため、加工時や超音波洗浄時等に脱粒しにくくなる。また、体積固有抵抗の劣化機構で、直流電界によって誘発される結晶粒界の劣化が磁器の劣化に対応していることが知られている。圧電セラミックスでは結晶粒界は結晶粒の内部よりも高い抵抗率を有していることが知られ、直流電界が印加された場合、Maxwell-Wagnerタイプの分極が結晶粒界に強い電界を発生させる。この電界が局所的な絶縁破壊をもたらすことにより、磁器の体積固有抵抗が劣化すると考えられている。以上のような点からSi含有量が100ppm以上では、粒界にガラス相を形成するため、粒界での抵抗率が高まり、粒界に強い電界が発生し、局所的な絶縁破壊を起こすため、体積固有抵抗の劣化が起こりやすい。100ppm未満では粒界に明確なガラス相は形成せず、単分子程度のSiOとして存在している。そのため、粒界での抵抗率が低くなり、局所的な絶縁破壊を起こりにくくすることができる。一方、Si含有量が5ppm未満では、結晶粒間の結合力を向上させる効果が小さいため、加工時や超音波洗浄時に脱粒しやすくなる。
また、本発明の圧電セラミックスは、Siから成る成分以外の残部は実質的にペロブスカイト型化合物からなる焼結体であるが、ここで残部が実質的にペロブスカイト型化合物からなるとは、他に積極的に含有させるものはなく、不純物以外はペロブスカイト型化合物であることを指し、不純物として含まれる成分(Siは除く)は100ppm未満の範囲であれば含んでいても構わない。
また、本発明では、Siが結晶粒界に偏析し、且つ磁器の結晶粒界層の厚さが1nm以下であることが好ましい。Si含有量が100ppm未満であれば、Siは結晶粒界に偏析し、粒界層の厚さは1nm以下となる。これにより、磁器の強度を高めつつ、さらに圧電歪定数などの特性には、ほとんど影響を与えず、体積固有抵抗の経時変化を小さくすることができる。これは、結晶粒内にSiが固溶すると圧電特性が著しく低下するが、結晶粒界に偏析すれば圧電歪み特性に対する影響を小さくできるからである。結晶粒界層の厚さが1nmを超えると、結晶粒界に明確なガラス相を形成する。粒界にガラス相があると、粒界の抵抗率が高くなるため結晶粒界で微少な絶縁破壊を起こしやすくなる。そのため、Siは結晶粒界にガラス相として存在するよりも単分子レベルで存在している方がよい。
好ましくは機械的強度を向上させるために圧電セラミックスの平均結晶粒径Aが0.5〜5μmであり、その標準偏差をBとした時にB/Aが0.5以下であり、平均ボイド径Cが0.5〜5μmであり、その標準偏差をDとした時にD/Cが0.25以下、且つボイド率が5%以下であるとき、外部からの衝撃や繰返疲労に対して強くなる。また、急激に漏れ電流が増加し破壊に到る破壊モードは、なだれモードとして周知であるが、この原因はクラック、ボイドなどの構造欠陥に起因するため、磁器の微構造が均一であれば、例えばアクチュエータとして用いた場合、連続駆動時の体積固有抵抗の経時変化が小さくなるため、高い信頼性が得られる。
磁器の粒径が大きくなると抗折強度は低下する傾向にあり、磁器の平均結晶粒径Aが5μmを越えると、外部からの衝撃や繰返疲労によって破壊されやすくなることや体積固有抵抗が劣化しやすくなり、信頼性が低くなる。逆に磁器の平均結晶粒径を0.5μm未満とすることは、原料の微粒化や焼成温度の問題から製法上困難である。このことから磁器の平均結晶粒径は1〜3μmであることが好ましい。
また、磁器の平均結晶粒径Aと標準偏差Bの比B/Aが0.5を超えると、磁器の微構造が均一でなくなり、大きな欠陥や結晶粒が存在するようになる。そのため、外部からの衝撃や繰返疲労によって破壊されやすくなることや、体積固有抵抗が劣化しやすくなり、信頼性が低くなる。
磁器の平均結晶粒径が0.5〜5μmであるので、磁器中のボイドの平均径Cも同程度の0.5〜5μmとなる。欠陥は小さい方が外部からの衝撃や繰返疲労に対して強くなることと、体積固有抵抗が劣化しにくくなるため、信頼性が向上する。ボイドの平均径が5μmを超えると、外部からの衝撃や繰返疲労によって破壊されやすくなることや、体積固有抵抗が劣化しやすくなるため、信頼性が低下する。一方、ボイドの平均径を0.5μm未満にすることは、原料の微粒化や焼成温度の問題から安価にて製法することが困難である。
また、磁器中のボイドの平均径Cとその標準偏差Dとの比D/Cが0.25を超えると磁器中に大きな欠陥が存在し、外部からの衝撃や、繰返疲労によって破壊されやすくなる。さらにボイド率が5%を超えると欠陥が多すぎるため、外部からの衝撃や繰返疲労によって破壊されやすくなることや、体積固有抵抗が劣化しやすくなるため、信頼性が低下する。また、ボイドは存在しない方が特性や信頼性の面から好ましいが、製法上困難である。
本発明の積層型圧電素子の製法について説明する。まず、柱状積層体1aを作製する。先ず、PZTの原料粉末として高純度のPbO、ZrO、TiO、ZnO、Nb、WO,BaCO,SrCO、YbおよびSiOなどの各原料粉末を所定量秤量し、ボールミル等で10〜24時間湿式混合し、次いで、この混合物を脱水、乾燥した後、800〜900℃で1〜3時間仮焼した後、当該仮焼物を再びボールミル等で粒度分布がD50で0.5±0.2μm、D90で0.8μm未満となるように湿式粉砕する。粉砕したPZT等の圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系、ブチラール系等の有機高分子から成るバインダーと、DBP(フタル酸ジオチル)、DOP(フタル酸ジブチル)等の可塑剤とを混合してスラリーを作製し、該スラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法により圧電体1となるセラミックグリーンシートを作製する。
次に、Ag−PdあるいはPt粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを前記各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって1〜40μmの厚みに印刷する。
そして、上面に導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを積層し、この積層体について所定の温度で脱バインダーを行った後、900〜1200℃で焼成することによって柱状積層体1aが作製される。
尚、柱状積層体1aは、上記製法によって作製されるものに限定されるものではなく、複数の圧電体と複数の内部電極とを交互に積層してなる柱状積層体1aを作製できれば、どのような製法によって形成されても良い。
その後、ダイシング装置等により柱状積層体1aの側面に一層おきに溝を形成する。
その後、銀ガラス導電性ペースト等を550〜700℃で焼き付け、外部電極4を形成することができる。
次に、外部電極4を形成した柱状積層体1aをシリコーンゴム溶液に浸漬するとともに、シリコーンゴム溶液を真空脱気することにより、柱状積層体1aの溝内部にシリコーンゴムを充填し、その後シリコーンゴム溶液から柱状積層体1aを引き上げ、柱状積層体1aの側面にシリコーンゴムをコーティングする。その後、溝内部に充填、及び柱状積層体1aの側面にコーティングした前記シリコーンゴムを硬化させる。
その後、外部電極4にリード線6を接続することにより本発明の積層型圧電素子が完成する。
そして、リード線5を介して一対の外部電極4に0.1〜3kV/mmの直流電圧を印加し、柱状積層体1aを分極処理することによって、製品としての積層型圧電アクチュエータが完成し、リード線5を外部の電圧供給部に接続し、リード線5及び外部電極4を介して内部電極2に電圧を印加させれば、各圧電体1は逆圧電効果によって大きく変位し、これによって例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能する。
図2は、本発明の噴射装置を示すもので、図において符号31は収納容器を示している。この収納容器31の一端には噴射孔33が設けられ、また収納容器31内には、噴射孔33を開閉することができるニードルバルブ35が収容されている。
噴射孔33には燃料通路37が連通可能に設けられ、この燃料通路37は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路37に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブ35が噴射孔33を開放すると、燃料通路37に供給されていた燃料が一定の高圧で内燃機関の図示しない燃料室内に噴出されるように形成されている。
また、ニードルバルブ35の上端部は直径が大きくなっており、収納容器31に形成されたシリンダ39と摺動可能なピストン41となっている。そして、収納容器31内には、上記した圧電アクチュエータ43が収納されている。
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ43が電圧を印加されて伸長すると、ピストン41が押圧され、ニードルバルブ35が噴射孔33を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ43が収縮し、皿バネ45がピストン41を押し返し、噴射孔33が燃料通路37と連通して燃料の噴射が行われるようになっている。
実施例1
焼結体が
Pb1−xBa(Zn1/3Nb2/3(Yb1/2Nb1/2(Co1/3Nb2/3(Fe2/31/3Nb[Zr0.48Ti0.521−a−b−c−d−e
(ここで、x,a,b,c,d,eは1より小さい値)
の組成になるように所定量秤量し、さらにSiOを所定量秤量する。素原料中には不純物としてSiOを含むが、できるだけ含有量の少ない原料を用いる。ボールミルで18時間湿式混合した後、次いで、この混合物を900℃で2時間仮焼し、当該仮焼物を再びボールミル等で湿式粉砕する。
その後、この粉砕物に有機バインダーと可塑剤とを混合し、スラリーを作製し、スリップキャスティング法により、厚み150μmのグリーンシートを作製した。このグリーンシート上にAgが90重量%、Pdが10重量%の比率からなる導電性ペーストを4μmの厚みにスクリーン印刷し、乾燥させた後、電極膜が形成されたグリーンシートを20枚(圧電歪定数d33を測定する際は200層)積層し、この積層体の積層方向の両端部に導電性ペーストが塗布されていないグリーンシートを10枚積層した。
次にこの積層体を100℃で加熱を行いながら加圧を行い、積層体を一体化し、縦10mm×横10mmに切断した後、800℃で10時間の脱バインダーを行い、1000℃にて焼成を行い、1aに示す柱状積層体を作製した。その後、積層型圧電素子の2つの側面において、電極端部を含む圧電磁器の端部に該2側面において互い違いになるように、1層おきに深さ100μm、積層方向の幅50μmの溝を形成し、該溝部に絶縁体としてシリコーンゴムを充填した。
この後、絶縁されていない電極の他方の端面に外部電極として熱硬化性導電体を帯状に形成し、200℃の熱処理を行った。この後、正極用外部電極、負極用外部電極にリード線を接続し、積層型圧電素子の外周面にディッピングにより、シリコーンゴムを被覆した後、1kVの分極電圧を印加し、積層型圧電素子全体を分極処理して、図1に示すような本発明の積層型圧電素子を得た。得られた積層圧電素子について0〜200Vの電圧を印加した時の変位量を測定するとともに、圧電歪定数d33を測定した。変位量の測定は上面にアルミニウム箔を張り付けた試料を防振台上に固定し、0〜200Vの電圧を試料に印加し、レーザー変位計により素子の中心部および周囲部3箇所で測定した値の平均値で評価した。圧電歪定数d33は、積層数n=200と変位量ΔLおよび印加電圧V=200Vを用い、d33=ΔL/n・Vの式より算出した。
また、Si含有量については、ppmオーダーでの定量が行えるICP質量分析法にて定量を行った。また、粒界層の厚さについては、TEM像より算出した。
また脱粒のしやすさについては、純水中で超音波洗浄を10分行い、その後の表面を金属顕微鏡にて観察した。
絶縁抵抗の経時変化の測定については、HALT(Highly Accelerated Life Testing)試験を行った。漏れ電流が増加し、絶縁破壊するまでの時間を測定した。条件は雰囲気温度300℃、電界2kV/mmにて試験を行った。
結果を表1に示した。
Figure 2005101274
表1から判るように、Si含有量が100ppm以上の試料1、10、11については粒界層厚さが1nmを超え、絶縁破壊に至るまでの時間も早いことがわかる。一方、Si含有量が5ppm未満の試料8、9、15では、耐脱粒性が低く、加工後や超音波洗浄後に脱粒が見られた。本発明のSi含有量が5ppm以上100ppm未満の範囲においては、粒界層が1nm以下となり、電圧を印加しても体積固有抵抗が長時間変化せず、絶縁破壊が起こりにくいことがわかる。
また、上述した製造方法では組成の制御を行いやすいことからSiOを所定量添加したが焼成後の圧電セラミックスのSi含有量が5ppm以上100ppm未満の範囲にすることができれば、積極的にSiOを添加せず、不純物としてSiOを多めに含む出発原料を用いてもかまわない。
本発明の積層型圧電素子を示しており、(a)は斜視図、(b)はそのA−A’線断面図である。 本発明の噴射装置を示す概略断面図である。
符号の説明
1・・・圧電体
1a・・・柱状積層体
2・・・内部電極
3・・・絶縁体
4・・・外部電極
5・・・リード線
6・・・不活性部
7・・・導電性補助部材
31・・・収納容器
33・・・噴射孔
35・・・ニードルバルブ
37・・・燃料通路
39・・・シリンダ
41・・・ピストン
43・・・圧電アクチュエータ
45・・・皿バネ

Claims (7)

  1. PbTiO−PbZrOを主成分とし、Si含有量が5ppm以上100ppm未満であることを特徴とする圧電セラミックス。
  2. 前記Siが結晶粒界に偏析し、且つこの結晶粒界の厚さが1nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧電セラミックス。
  3. 請求項1または2記載の圧電セラミックスからなる圧電体層と内部電極層を交互に積層したことを特徴とする積層型圧電素子。
  4. 前記内部電極層の金属組成物が周期律表第8族金属と第1b族金属とからなることを特徴とする請求項3記載の積層型圧電素子。
  5. 前記内部電極の第8族金属の含有量をM1(重量%)第1b族金属の含有量をM2(重量%)としたとき、0<M1<15、85<M2<100であることを特徴とする請求項4に記載の積層型圧電素子。
  6. 前記第8族金属がPt、Pdのうち少なくとも一種であり、第1b族金属がAu、Agのうち少なくとも一種からなることを特徴とする請求項4または5に記載の積層型圧電素子。
  7. 噴射孔を有する収納容器と、該収納容器内に収容された請求項3〜6のいずれかに記載の積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする噴射装置。
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