JP2005101140A - 希土類射出成形ボンド磁石とその製造方法 - Google Patents

希土類射出成形ボンド磁石とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面にリン酸塩皮膜を有することで、塩水などに対する防錆性に優れた希土類射出成形ボンド磁石、及びその製造方法の提供。
【解決手段】 磁性粉末(A)と熱可塑性樹脂バインダー(B)とを含む希土類射出成形ボンド磁石であって、その表面上に、ZnCa(PO、Zn(PO、またはMn(POから選ばれる少なくとも1種のリン酸塩を含有するリン酸塩皮膜(C)が形成され、かつリン酸塩皮膜(C)の膜厚が10〜100nmであることを特徴とする希土類射出成形ボンド磁石などによって提供。
【選択図】なし

Description

本発明は、希土類射出成形ボンド磁石とその製造方法に関し、さらに詳しくは、表面にリン酸塩皮膜を有することで塩水などに対する防錆性に優れた希土類射出成形ボンド磁石、及びその製造方法に関するものである。
従来から、希土類磁石等は、モーターをはじめとする種々の用途に用いられている。しかし、これらの磁石は、主に焼結法により作られるために、一般に脆く、薄肉のものや複雑な形状のものが得難いという欠点を有している。それに加えて、焼結時の収縮が15〜20%と大きいため、寸法精度の高いものが得られず、精度を上げるには研磨等の後加工が必要であるという欠点をも有している。
一方、ボンド磁石は、上記欠点を解決すると共に新しい用途をも開拓するために、近年になって開発されたものであるが、通常は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂をバインダーとし、これに磁性粉末を充填して射出成形法や押出成形法にて製造され、またエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂をバインダーとし、これに磁性粉末を充填して圧縮成形法にて製造されている。
この中で熱可塑性樹脂バインダーを使用した射出成形ボンド磁石は、複雑形状やインサート成形等を用いた磁石とモーターコアやシャフトとの一体成形が可能であることなどから高機能化を目的とした用途が拡大している。
しかし、希土類−遷移金属系磁性粉末には、例えば、NdFeB系磁石合金やSmFeN系磁石合金等があるが、遷移金属として主にFeを用いているため錆び易い欠点がある。この欠点を補うために、これまで塗料による電着塗装、静電塗装、吹き付け塗装、浸漬塗装、パリレン塗装、各種メッキ処理など種々の保護膜形成のコーティング方法が開発されてきている。
NdFeB系磁石合金を用いた圧縮成形ボンド磁石では、一般に磁石表面に電着塗装、静電塗装、吹き付け塗装、浸漬塗装等の防錆樹脂塗装を施している。
一方、射出成形タイプのボンド磁石では、成形磁石表面に樹脂皮膜が圧縮成形ボンド磁石に比較すると多く存在するため、防錆塗装をしない場合が多いが、高温高湿下や塩水噴霧試験等では錆びが発生することが問題となっていた。
希土類射出成形ボンド磁石成形体では、磁性粉末に対し樹脂量が約40容量%と多いので、磁石表面に薄いバインダーの樹脂層が存在するため、樹脂量の少ない圧縮成形ボンド磁石より防錆性は良いとされている。ところが、成形体の平面又は曲面上で局部的に樹脂層が無い部分が生じ、特に、成形体のエッジ部や金型内で成形体を形成する空間(キャビティ)と溶融した混練物の流入口を繋げる部分(ゲート)のように樹脂層を形成しにくい又は樹脂層の無い部分が発生しやすいので、この部分で被膜を形成する必要がある。
そのため、射出成形ボンド磁石に防錆樹脂塗装を施すことが行われているが、バインダーとなる熱可塑性樹脂と樹脂塗装用塗料との密着が悪く塗膜が剥がれやすく、また複雑な形状では塗料が入らない部分が発生するという欠点もあった。
SmFeNの磁性粉末と樹脂バインダーとの混合コンパウンドを成形したボンド磁石では、所望の形状に成形してなる成形体の表面に、リン酸塩を含有させたエポキシ樹脂系焼付型塗料を用いて被膜処理を施すことが提案されている(特許文献1参照)。
この方法により、ボンド磁石の表面に存在するFeの成分を耐食性に優れ、かつ密着性の高いFe(HPO(リン酸水素鉄)が生成するとしている。しかしながら、得られる被膜は、リン酸塩を塗料中に含むものであり、20〜80μmもの厚い被膜を得るには、被膜処理回数を複数としたり、被膜処理時間を長くしなければならない。
また、NdFeB系磁石をHF水溶液中で処理し、その表面に水素を反応させ、磁石表面の化学変化により防錆する方法も提案されている(特許文献2参照)。
この方法は、HF水溶液中でNdFeB系磁石の表面に水素を反応させ、HF水溶液中に電離している水素が、清浄な磁石表面に露出している電子的に不安定な希土類元素、遷移元素、半金属とイオン結合により結合して磁石表面の原子を安定化させることにより、該磁石の表面が保護され、防錆効果を発揮するものである。しかしながら、この方法では、HF水溶液を用いる必要があり、処理に危険が伴うという問題があった。
さらに、希土類元素を含む磁石本体の表面に、ニッケルメッキ膜を形成した後、リン酸亜鉛処理を施すことが提案されている(特許文献3参照)。
この方法によれば、ニッケルの耐食性が優れているため処理溶液中で十分に反応せず、リン酸塩の結晶が表面に析出しないため、リン酸錫等のリン酸塩被膜を極めて薄く形成でき、当該リン酸塩被膜の内部応力による破壊を防止して厚みが均一化され、その結果、ニッケルメッキ膜に対して反応不活性な嫌気性アクリル系などの接着剤の効果が阻害されず、接着作業の効率化を実現できるとしている。
しかしながら、ニッケルメッキは、ボンド磁石表面に現れている樹脂との密着性が悪く、また、ニッケルメッキを施すためには無電解メッキ、電解メッキの2工程を加える必要がありコストアップにつながるなどの問題があるため、ボンド磁石の防錆処理として適した方法とはいえない。
このような状況下、射出成形されたボンド磁石に対して、危険を伴わず効率的に被膜処理でき、優れた防錆性能を付与できる方法の出現が切望されていた。
特開2000−208321号公報 特開平9−326307号公報 特開2002−158105号公報
本発明の目的は、表面にリン酸塩皮膜を有することで塩水などに対する防錆性に優れた希土類射出成形ボンド磁石、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、希土類射出成形ボンド磁石を、特定のリン酸化成処理液に浸漬して、特定条件でリン酸塩皮膜を形成することにより、皮膜厚さが薄くとも防錆効果に優れた希土類射出成形ボンド磁石が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、磁性粉末(A)と熱可塑性樹脂バインダー(B)とを含む希土類射出成形ボンド磁石であって、その表面上に、ZnCa(PO、Zn(PO、またはMn(POから選ばれる少なくとも1種のリン酸塩を含有するリン酸塩皮膜(C)が形成され、かつリン酸塩皮膜(C)の膜厚が10〜100nmであることを特徴とする希土類射出成形ボンド磁石。が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、磁性粉末(A)が、Nd又はSmから選ばれる少なくとも1種の希土類とFe又はFe及びCoの遷移金属を含有する合金粉末であることを特徴とする希土類射出成形ボンド磁石が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、磁性粉末(A)は、その表面が水溶性リン酸化合物のリン酸塩皮膜で被覆されていることを特徴とする希土類射出成形ボンド磁石が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、熱可塑性樹脂バインダー(B)が、ナイロン、変性ナイロン、ナイロン系エラストマー、またはポリフェニレンサルファイドから選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする希土類射出成形ボンド磁石が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、リン酸塩皮膜(C)が、さらに、ZnFe(PO、CaFe(PO、またはMnFe(POから選ばれた少なくとも1種の結晶質リン酸塩を含有することを特徴とする希土類射出成形ボンド磁石が提供される。
一方、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、磁性粉末(A)と熱可塑性樹脂バインダー(B)とを含むコンパウンドから希土類射出成形ボンド磁石を成形した後、該ボンド磁石を70〜90℃に加熱したZnCa(PO、Zn(PO、またはMn(POから選ばれる少なくとも1種のリン酸塩を含有するリン酸化成処理液に浸漬してその表面にリン酸塩皮膜を形成させ、次いで弱アルカリ性溶液で中和処理を行うことを特徴とする希土類射出成形ボンド磁石の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、磁性粉末(A)と熱可塑性樹脂バインダー(B)とを含むコンパウンドから希土類射出成形ボンド磁石を成形した後、該ボンド磁石を70〜90℃に加熱してから、ZnCa(PO、Zn(PO、またはMn(POから選ばれる少なくとも1種のリン酸塩を含有するリン酸化成処理液に浸漬してその表面にリン酸塩皮膜を形成させ、次いで弱アルカリ性溶液で中和処理を行うことを特徴とする希土類射出成形ボンド磁石の製造方法が提供される。
本発明の希土類射出成形ボンド磁石は、表面にZnCa(PO、Zn(PO、またはMn(POから選ばれた少なくとも1種の結晶質リン酸塩を含むリン酸塩皮膜が形成されているので塩水などに対する防錆性に優れている。また、本発明の方法は、希土類射出成形ボンド磁石を安全かつ経済的に製造することができる。
以下に、本発明の希土類射出成形ボンド磁石とその製造方法について、さらに詳しく説明する。
1.希土類射出成形ボンド磁石
本発明の希土類射出成形ボンド磁石は、磁性粉末(A)と熱可塑性樹脂バインダー(B)を含む希土類射出成形ボンド磁石であって、その表面に、特定の結晶質リン酸塩を含有し、膜厚が特定範囲にあるリン酸塩皮膜を有するものである。
(A)磁性粉末
本発明の磁石に用いられる磁性粉末は、通常、ボンド磁石に用いられている磁性粉末で、その構成元素中に希土類元素および遷移金属元素を含む磁性粉末であれば、特に制限はない。
その希土類元素としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が挙げられる。
一方、遷移金属元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)が挙げられ、これらの群から1種又は2種以上が選択される。遷移金属元素では、これ以外にCr、V又はCuのいずれかを含有してもよい。特に好ましい遷移金属元素は、Fe又はCoのいずれかである。
尚、磁性粉末の上記主成分に加えて、C、Al、Si、P、Ca、Ti、Mn、Ni、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、またはAuから選択される一種以上を7重量%以下添加すると、磁性粉末の耐熱性を高めることができる。
特に好ましい磁性粉末は、希土類としてNd又はSmと、遷移金属としてFe又はFe及びCoを含有する合金粉末である。また、具体的には、例えば、異方性磁場(HA)が4000kA/m以上の磁性粉末である希土類コバルト系、希土類−鉄−ほう素系、希土類−鉄−窒素系粉末の単独もしくは混合粉末などが挙げられる。
本発明者らは、磁性粉末として、還元拡散法によって得られるSmFe合金粗粉を窒化処理、粉砕して得られるSm−Fe−Nの合金微粉末、Nd−Fe−Bの液体急冷法によって得られた合金粉末、又はHDDR(Hydrogenation−Disproportionation−Desorption−Recombination)法によって得られた異方性Nd−Fe−B合金粉末を用いると、防錆効果が顕著な希土類射出成形ボンド磁石が得られることを確認している。
上記したSmFeN磁性粉末を用いた希土類射出成形ボンド磁石において、磁性粉末が92.4〜92.6wt%の樹脂ボンド磁石の磁性粉末の組成は、例えば、おおよそSm(サマリウム)が23wt%、N(窒素)が3.5wt%、残りがFe(鉄)である。この磁石の磁性粉末の容積含有率は55〜61%であり、最大エネルギー積(BHmax)は65〜120kJ/mである。ちなみにSmCo(サマリウムコバルト)磁性粉末が89.0〜92.5wt%の樹脂ボンド磁石の最大エネルギー積(BHmax)は65〜80kJ/mである。
希土類−遷移金属系磁性粉末の物性は、特に限定されるものではないが、得られるボンド磁石コンパウンドの溶融流動性、磁性粉末の配向性、充填率等の観点から、磁性粉末の平均粒径は、1〜100μmとする。平均粒径は、1〜50μmが好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。
また、本発明においては、要求される磁気特性に合わせて、Srフェライト、Baフェライト等のフェライト磁性粉末、アルニコや鉄クロムコバルトなどの金属磁性材料粉末の磁性粉末一種以上を希土類−遷移金属系磁性材料粉末に混合した粉末を用いることができる。
希土類−鉄系磁性粉末に対するフェライト磁性粉末の混合比率は、任意に設定できるが、目標とする磁気特性に対して希土類磁性粉末を多めに設定すると、希土類磁性粉末とフェライト磁性粉末との合計量を低減できるため溶融粘度の低いボンド磁石用コンパウンドが得られ、逆にフェライトを多めに設定すると磁石用コンパウンドのコストパフォーマンスを高めることができる。
なお、これら磁性粉末は、その表面に水溶性リン酸化合物が含有(被覆)されているものが好ましい。
詳細な機構は明確ではないが、高湿度環境下では、含有される水溶性リン酸化合物が磁性粉末表面に形成される水膜中に溶け出し、リン酸イオンを遊離する。このリン酸イオンは、磁性粉末から水膜中に溶出するFeイオン等と直ちに反応し、リン酸塩皮膜が欠如した部分に水に不溶性のリン酸塩として析出するため、磁性粉末表面における腐食の進行が抑制されるものと推測される。
(B)熱可塑性樹脂系バインダー
希土類射出成形ボンド磁石に用いられる熱可塑性樹脂系バインダーは、磁性粉末のバインダーとして働くものであり、特にその種類に限定されることはなく、例えば、6ナイロン、6−6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6−12ナイロン、芳香族系ナイロン、これらの分子を一部変性、または共重合化した変性ナイロン等のポリアミド樹脂、直鎖型ポリフェニレンサルファイド樹脂、架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、セミ架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、メタクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリルエーテルアリルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、前出の各樹脂系エラストマー等が挙げられ、これらの単重合体や他種モノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、他の物質での末端基変性品などが挙げられる。これらの中では、得られる成形体の種々の特性やその製造方法の難易性から12ナイロンおよびその変性ナイロン、ナイロン系エラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂の使用が好ましい。これら熱可塑性樹脂の2種類以上のブレンド等も当然使用可能である。
(C)リン酸塩皮膜
リン酸塩皮膜は、希土類射出成形ボンド磁石成形体の露出している磁石粉末の表面に形成され、ZnCa(PO、Zn(PO、又はMn(POのいずれかのリン酸塩を主成分とするものである。
リン酸塩皮膜の成分は、X線回折測定すると、希土類射出成形ボンド磁石の成形体を浸漬させるリン酸化成処理液として、リン酸亜鉛カルシウムを用いた場合では、(Zn、Ca)(POの結晶質リン酸塩を主成分として含み、リン酸亜鉛を用いた場合では、Zn(PO,リン酸マンガンを用いた場合では、Mn(PO等の結晶質の膜を主成分とするとともに、ZnFe(PO、CaFe(PO、ZnFe(PO、又はMnFe(POから選ばれた少なくとも1種の結晶質リン酸塩を含んでいる。
これまでの希土類射出成形ボンド磁石は、磁石表面に薄いバインダーの樹脂層があるため、樹脂量の少ない圧縮成形ボンド磁石より防錆性は良いとされているが、該成形体の一部には成形の際、その表面に樹脂層の存在しない部分が生じていた。また、磁性粉末量が多くなると表面樹脂層に磁性粉末が露出する部分が発生し、また、防錆処理被膜を設けた磁性粉末を用いた希土類射出成形ボンド磁石においても、ボンド磁石用コンパウンドの混練処理時に磁性粉末が露出する場合があった。
本発明は、上記の希土類射出成形ボンド磁石の表面に露出した希土類磁性粉末を、その表面にZnCa(PO、Zn(PO、またはMn(POから選ばれた少なくとも1種類の結晶質リン酸塩を含むリン酸塩皮膜を形成することにより不活性化させることに特徴がある。
形成されたリン酸塩皮膜の膜厚は、電子顕微鏡により断面観察した場合、10〜100nmとしなければならない。本発明の皮膜が有する防錆効果の発現方法は明らかではないが、磁石表面にある活性なFe表面にリン酸塩化合物皮膜を形成することにより、該微小結晶皮膜による効果によって、加水分解やイオン結合に対し安定な状態が得られるとも考えられる。リン酸塩皮膜が10nmよりも薄いと本発明の防錆効果が得られなくなり、100nmを超えると防錆効果は得られるが、磁気特性、特に角型性が低下してしまう。
一般に、FeやFe系合金は、酸素、ハロゲンに活性であり、これをリン酸化成塗料で処理することにより耐候性を良くする方法は知られている。また、射出成形ボンド磁石のような樹脂と金属粉末の混合成形体に対しても、前記特許文献1のように、リン酸塩を含むエポキシ樹脂系塗料を用いて被膜形成処理を施すことが知られているが、塗膜はかなり厚いものであった。
本発明では、リン酸化成処理液に浸漬してリン酸化成処理して、成形体表面に露出した磁性粉末に薄い皮膜を形成することで、耐塩水噴霧試験等で確認される優れた希土類射出成形ボンド磁石とするものであり、従来のリン酸化成塗料などによる被覆(数十μm程度の膜厚)による防錆効果の発現方法とは全く異なるものである。
本発明によれば、従来の樹脂塗装よりも経済的であり、且つ成形体の形状も問わないという利点を有する希土類射出成形ボンド磁石を得ることができる。
2.希土類射出成形ボンド磁石の製造方法
本発明は、(1)原料となる磁性粉末を、必要により水溶性リン酸化合物で表面処理し、(2)これに熱可塑性樹脂バインダー及び必要な添加剤を混合して、ボンド磁石用樹脂コンパウンドとし、(3)このコンパウンドを射出成形し、(4)得られた成形体をリン酸塩処理することを含む希土類射出成形ボンド磁石の製造方法である。
(1)磁性粉末の表面処理
本発明では、原料となる磁性粉末は、必要により水溶性リン酸化合物で表面処理することができる。
(リン酸化合物)
リン酸化合物としては、それ自身が反応後または未反応なうちにリン酸塩を形成し、かつ希土類−遷移金属系磁性粉末の表面に被覆できるものでなければならない。
これらの条件を満足させることが可能なリン酸化合物としては、一般に市販されている水溶性リン酸化合物、リン酸溶液を使用できる。リン酸化合物には、リン酸をはじめ、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、直鎖状のポリリン酸、環状のメタリン酸が含まれる。特に好ましいのは、リン酸である。これらのリン酸化合物は、単独もしくは二種類以上で用いることができ、通常、キレート剤、中和剤等と混合して処理剤とされる。
水溶性リン酸化合物としては、上記のほかに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムのリン酸塩等が挙げられる。これらは1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。尚、水溶性リン酸化合物としてオルトリン酸のみを添加する場合には、オルトリン酸が磁性粉末と反応して水に不溶性のリン酸塩皮膜が形成され、残存させるべき水溶性リン酸化合物が不足する可能性があるため、添加量、添加時期を慎重に検討する必要がある。また、水溶性リン酸塩として、磁性粉末を構成する主金属である鉄のリン酸塩を添加することも可能であるが、pHの変化等により、水溶性の第一塩から水に不溶性の第二塩、第三塩に容易に変化するため、これを使用する場合はpHの変化等に注意を要する。
また、上記磁性粉末への水溶性リン酸化合物の含有量は、磁性粉末の凝集状態、あるいは耐酸化性皮膜による磁性粉末表面の被覆状態等によりコンパウンド中に残存させるべき水溶性リン酸化合物量が変化するため一概にはいえないが、水溶性リン酸化合物は、磁性粉末に対して、好ましくはリン酸基として0.002〜0.2重量%の割合で含有させる。含有量が0.002重量%未満では十分な耐候性が得られず、一方、含有量が0.2重量%を越えると、耐候性の観点からは十分であるが、磁気特性が低下するので好ましくない。
ところで、水溶性リン酸化合物は、磁性粉末又はボンド磁石が高湿度環境下に置かれた際に、上述の如く、磁性粉末表面の腐食を動的に安定化する機能を有するものであり、ボンド磁石の表面に形成された耐酸化性皮膜、例えば水に不溶性のリン酸塩皮膜とは果たす機能が全く異なる。実際には、水溶性リン酸化合物で表面処理された粉末の場合、混練、成形時に機械的ダメージを受け皮膜の一部に欠陥が生じる場合があり、また、水溶性リン酸皮膜は、ハロゲンイオンに対する耐食性に劣るという性質を有しており、水溶性リン酸化合物で表面処理された粉末を使用するだけでは耐食性が十分でない場合も見受けられる。水に不溶性のリン酸皮膜は、ボンド磁石表面に一部露出する水溶性リン酸皮膜を有する磁性粉末の表面に高耐食性皮膜を形成するものであり、水に不溶性のリン酸皮膜は、水溶性リン酸皮膜では不十分な部分の耐食性を改善し、補うものであり、両方を用いることで従来にない高い耐食性を得ることができる。
上記磁性粉末の表面処理方法としては、特に制限されず、例えば、粉砕中または粉砕後の磁性粉末に、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム化合物のリン酸塩や、リン酸マグネシウム等の水溶性のリン酸化合物を所定量添加し、混合すれば良い。このようにして表面処理された磁性粉末には、不活性ガス中又は真空中、100〜400℃未満の温度範囲で加熱処理を施すことが好ましい。100℃未満で加熱処理を施すと、磁性粉末の乾燥が十分進まず、一方、400℃以上で加熱処理を施すと、磁性粉末が熱的なダメージを受けるためか、保磁力が低くなるという問題がある。
得られた磁性粉末は、高い耐候性を示すと共に、これから得られるボンド磁石用コンパウンド、及びボンド磁石も、磁性粉末と共に添加された水溶性リン酸化合物が残存するため、極めて高い耐候性を示す。
尚、上記磁性粉末への耐酸化性皮膜の形成は、上記リン酸化合物の他、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を用いた公知の方法によっても行うことができる。
本発明においては、必要により事前にリン酸化合物による表面処理工程を設けて磁性粉末に被覆処理を施した後、磁性粉末とカップリング剤で処理し、その後、樹脂バインダーとを混合することが好ましいが、磁性粉末と樹脂バインダーとカップリング剤とを一緒に混合しても良い。しかしながら、より確実な表面処理被膜を得るためには、磁性粉末に事前にリン酸化合物やカップリング剤で処理した後、樹脂バインダーと混合することが望ましい。
(2)熱可塑性樹脂バインダーの混合
次に、上記希土類磁石粉に熱可塑性樹脂バインダーを混合、混練し、射出成形することで希土類射出成形ボンド磁石成形体が得られる。
熱可塑性樹脂バインダー(B)の配合量は、特に制限されるものではないが、ボンド磁石用コンパウンド100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは3〜50重量部とする。さらには、5〜30重量部、特に、7〜20重量部がより好ましい。樹脂バインダー(B)が1重量部よりも少ないと著しい混練トルクの上昇、流動性の低下を招いて成形困難になるだけでなく、磁気特性が不十分であり、50重量部よりも多いと、所望の磁気特性が得られないので好ましくない。
希土類磁石粉89.0〜92.5wt%に対しバインダーとして上記熱可塑性樹脂を7.5〜11wt%加えて、200〜220℃で2軸混練装置などで混練する。得られた混練物を、射出成形機をもちいて射出成形して希土類射出成形ボンド磁石成形体が得られる。
ボンド磁石用コンパウンドには、必要により下記のような添加剤、充填材を配合した後、このボンド磁石用コンパウンドを溶融混練すれば良く、混練には例えばバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機などが使用される。
(添加剤)
ボンド磁石用コンパウンドには、本発明の目的を損なわない範囲で、反応性希釈剤、未反応性希釈剤、増粘剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤や種々の安定剤など、他の添加剤を配合することができる。
反応性希釈剤としては、スチレン、脂肪酸ジグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
未反応性希釈剤としては、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールが挙げられる。
増粘剤としては、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛などが挙げられる。
滑剤としては、例えばパラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等脂肪酸アミド類、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類、ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類、弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。
滑剤の配合量は、磁性粉末100重量部に対して、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
離型剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸金属塩とステアリン酸亜鉛との混合系などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−第3ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、3−2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系;蓚酸アニリド誘導体などが挙げられる。
難燃剤としては、三酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、有機臭素化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。
また、安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル]イミノ]]、2−(3,5−ジ・第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等のヒンダード・アミン系安定剤のほか、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系等の抗酸化剤等が挙げられ、これらの一種または二種以上を使うことが出来る。
安定剤の配合量は、磁性粉末全量に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部である。
これらの添加剤は、熱可塑性樹脂バインダーの種類や磁性粉末の種類などに応じて適宜選定され、その添加量は特に制限されるものではないが、通常はボンド磁石用コンパウンド100重量部に対して、合計で0.1〜20重量部、特に0.1〜3重量部とすることが好ましい。
(充填剤)
本発明において、ボンド磁石用コンパウンドには、さらに、マイカやウィスカあるいはタルク、炭素繊維、ガラス繊維など補強効果の大きな充填剤を、本発明の目的を妨げない範囲で適宜添加することができる。すなわち、ボンド磁石に要求される磁気特性が比較的低く、上記磁性粉末の充填量が比較的少ない場合には、ボンド磁石の機械強度が低くなりやすく、このような場合には機械強度を補うためにマイカやウィスカなどの充填剤を添加することができる。
これらの充填剤の種類や配合量は、特に制限されるものではなく、要求されるボンド磁石の特性に応じて適宜選択すればよい。
(3)射出成形
上記のボンド磁石用コンパウンドは、最高履歴温度が265℃以下、好ましくは260℃以下、より好ましくは250℃以下となる条件で射出成形する。最高履歴温度が265℃を超えると、磁気特性が低下するという問題が生じるので好ましくない。
ボンド磁石用コンパウンドが異方性の磁性粉末を含有する場合には、成形機の金型に磁気回路を組み込み、コンパウンドの成形空間(金型キャビティー)に配向磁界がかかるようにすると、異方性のボンド磁石が製造できる。このとき配向磁界は、400kA/m以上、好ましくは800kA/m以上とすることによって高い磁気特性のボンド磁石が得られる。ボンド磁石用コンパウンドが等方性の磁性粉末を含有する場合には、コンパウンドの成形空間(金型キャビティー)に配向磁界をかけないで行う。
(4)リン酸化成皮膜処理
最後に、射出成形されたボンド磁石を、リン酸化成処理液に浸漬して、特定条件でボンド磁石の表面に皮膜処理を施す。
リン酸化成皮膜処理に用いる処理液としては、リン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸マンガンから選ばれた少なくとも一種のリン酸塩化合物を含有するものでなければならない。
本発明者らは、リン酸化成処理液の主要成分として、リン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸マンガン、リン酸鉄、リン酸アルミニウムを検討したが、リン酸鉄、リン酸アルミニウムで処理した場合は形成した皮膜が不安定な化合物なため、ハロゲンイオンと反応し防錆性が低いのに対し、リン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸マンガンから選ばれた少なくとも一種のリン酸塩化合物を含むリン酸塩処理液を用いると、安定な皮膜が得られ、膜厚が薄くとも、ハロゲンイオンに対する防錆性が高いことを確認している。これらの中でも、特に、リン酸亜鉛カルシウムを用いた場合に優れた防錆性能が発揮される。
皮膜処理用のリン酸塩化合物は、単独で用いても良いし、混合物を含む処理液を用いることもできる。混合物を含む処理液としては、例えば、リン酸亜鉛カルシウムの場合であれば、リン酸亜鉛と、カルシウム塩化合物の混合物、亜鉛塩化合物とリン酸カルシウムの混合物を挙げることができる。いずれの場合でも、溶媒としてリン酸を含むことが望ましく、必要に応じてEDTAなどの錯化剤などを配合しても良い。
例えば、リン酸亜鉛処理液ならば、約1Lのイオン交換水に、リン酸亜鉛:180〜240g、リン酸:30〜100g、硝酸亜鉛:0.5〜5g、EDTA:0.3〜6gを溶かした溶液を原液とし、使用前にイオン交換水で10倍に希釈する。また、リン酸亜鉛カルシウム処理液ならば、約1Lのイオン交換水に、硝酸カルシウム:140〜210g、リン酸:30〜100g、硝酸亜鉛:0.5〜5g、EDTA:0.3〜6gを溶かした溶液を原液とし、使用前にイオン交換水で8〜15倍に希釈する。
リン酸化成皮膜処理に際して、希土類射出成形ボンド磁石又はリン酸化成処理液は70〜90℃に加熱しなければならない。
すなわち、リン酸塩処理液を70〜90℃に加熱し、攪拌しながら、あるいは循環ポンプで循環させながら、該処理液に希土類射出成形ボンド磁石成形体を浸漬し、リン酸化成皮膜処理を行なう。リン酸塩処理液が70℃よりも低いと皮膜形成の反応が遅くなり、皮膜形成に時間がかかり過ぎてしまう。また、90℃よりも高いと緻密な膜が形成できず防錆効果が低下してしまうため好ましくない。
また、希土類射出成形ボンド磁石を70〜90℃に加熱し、常温のリン酸化成処理液に浸漬し、リン酸化成皮膜処理を行なうこともできる。この方法であれば、リン酸処理液を加熱及び保温させる手間が不要という点で優れている。希土類射出成形ボンド磁石を70〜90℃に加熱する場合も、加熱温度範囲をはずれると前記と同様の傾向が現れるので好ましくない。
次に、処理後の希土類射出成形ボンド磁石を、弱アルカリ性溶液で中和処理を行い、イオン交換水で洗浄し、50℃以上、例えば80℃程度で磁石表面の水分を乾燥させるか、アルコール系又はケトン系溶剤で表面の水を置換し、溶剤を揮散させて水分を除去しても良い。
弱アルカリ性溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、0.5%希釈水酸化ナトリウムなどを使用できるが、特に、3〜10重量%炭酸水素ナトリウムの溶液が取り扱い易く好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。尚、実施例、比較例に用いた各成分の詳細及び試験方法、評価を例示するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、これらに限定されるものではない。
下記の材料を用いてボンド磁石用コンパウンド及びボンド磁石を製造し、評価した。
1)材料
A 磁性粉末
・磁粉1:SmFeN磁性粉末
(商品名:SmFeN合金粉末、住友金属鉱山(株)製)
磁粉2:SmFeNリン酸処理磁性粉末(商品名:SmFeN合金粉末、住友金属鉱山(株)製)
リン酸処理は、SmFeN合金粗粉末1kgを、1.5kgのイソプロパノールに混合し、アトライターで2時間粉砕した。粉砕途中に磁性粉末1kgあたり0.2モルの85%オルトリン酸を添加し、磁性粉末表面にリン酸塩皮膜を形成した。粉砕後、イソプロパノールを濾過し、真空中150℃で4時間乾燥した(リン酸基として0.02重量%)。
・磁粉3:NdFeB等方性磁性粉末
(商品名:MQpowder マグネクエンチインターナショナル製)
B 熱可塑性樹脂バインダー
・ナイロン12(PA12と略)
(商品名:ダイアミド A−1709P、ダイセル・ヒュルス(株)製)
C リン酸化成処理液
・リン酸亜鉛(商品名:ホスニン153 理工協産(株)製)
・リン酸亜鉛カルシウム
(商品名:フェリコート7 日本パーカーライジング株製)
・リン酸マンガン
(商品名:パルホスM5004 日本パーカーライジング株製)
・リン酸鉄
(商品名:パルホス2557 日本パーカーライジング株製)
2)評価方法
・耐候性:ボンド磁石用コンパウンドを射出成形して得られた成形体を、塩水噴霧装置(スガ試験機械社製)中で、35℃にて5重量%の塩化ナトリウム溶液を噴霧する条件で、24時間処理した。乾燥後、成形体表面、エッジ部、ゲート部(金型内成形体形成時の溶融コンパウンド流入部)それぞれの部分の発錆状態を目視で評価した。
・磁気特性:得られた成形体をパルス着磁装置(電子磁気工業製)で着磁し、直流自記磁束計(東英工業製)にて測定し評価した。角型性は、磁化が残留磁束密度Brの90%になったときの減磁界Hkを指標とした。Hkが大きいほど(保磁力に近いほど)角型性が良好であることを示している。
(実施例1〜21)
本発明の希土類射出成形ボンド磁石を、次に示す要領で製造した。
1)希土類磁石と熱可塑性樹脂バインダーの混合、及びコンパウンド作製
磁性粉に対し、表1に示す比率で熱可塑性樹脂バインダーを添加し(各重量部)、プラネタリーミキサー(ダルトン社製)中で十分混合撹拌し混合物を得た。
得られた混合物を2軸混練押し出し機(ナカタニ機械社製)(回転数=30rpm、5mmφストランドダイ、シリンダー温度200〜250℃)にて押し出し、ホットカットペレタイザー(住友金属鉱山製)にてφ5mm×5mmの希土類射出成形ボンド磁石用ペレットコンパウンド(混練物)を作製した。
2)射出成形
得られた混練物を射出成形機(日本製鋼所社製、J85ELIII型)を使用して、表2の条件にて、10mm×15mm×5mmの角柱形状の試験用磁石を射出成形した。
3)リン酸化成皮膜処理
各々のリン酸化成処理液の処理条件を表3に示す。表2で得られた磁石成形体をこの処理条件で処理した。処理後の成形体は、それぞれ5重量%炭酸水素ナトリウムの溶液中で中和後、イオン交換水で洗浄し80℃、1時間乾燥し試料とした。
こうして得られた希土類射出成形ボンド磁石成形体は、その露出している磁石粉末の表面に形成された皮膜をX線回折測定により観察すると、リン酸亜鉛カルシウムでは(Zn、Ca)(PO、リン酸亜鉛ではZn(PO,リン酸マンガンではMn(PO等の結晶質リン酸塩を含有し、ZnFe(PO、CaFe(PO、ZnFe(PO、MnFe(POのいずれかの結晶質リン酸塩を含む皮膜であることが確認された。ただし、Fe(HPOの結晶質リン酸塩は、皮膜中に確認されなかった。
得られた磁石成形体を前述の方法でそれぞれ評価し、結果を表4に示した。
Figure 2005101140
Figure 2005101140
Figure 2005101140
Figure 2005101140
(比較例1〜15)
実施例と同じ条件で、磁性粉末のコンパウンドに対し、表1に示す比率で熱可塑性樹脂を添加し(各重量部)、プラネタリーミキサー(ダルトン社製)中で十分混合撹拌し、混合物を得た。この混合物(希土類射出成形ボンド磁石用ペレットコンパウンド)を用いて、射出成形を行った。次に、この成形体にリン酸化成処理を行わないか、リン酸鉄を用いてリン酸化成処理することで比較用の希土類射出成形ボンド磁石を得た。これを実施例と同じ条件で評価し、結果を表5に示した。
Figure 2005101140
(比較例16)
リン酸化成処理には、コンパウンド3を使用したボンド磁石に対して、リン酸亜鉛を用いて、処理温度70℃、処理時間20分の条件で、105nmの厚さのリン酸塩皮膜を形成した。処理時間が短い以外は同様にリン酸亜鉛皮膜を形成した実施例1〜3とともに磁気特性を測定し、比較した。結果を表6に示す。
Figure 2005101140
「評価」
実施例1〜9のリン酸亜鉛でリン酸化成処理を行うと、得られた磁石成形体は、塩水噴霧試験で成形体表面、エッジ部、ゲート部には発錆が無いことから、表面にリン酸亜鉛皮膜を形成した効果が現れている。
実施例10〜18のリン酸亜鉛カルシウム皮膜を形成した場合や、実施例19〜21のリン酸マンガン皮膜を形成した場合でも、成形体表面、エッジ部、ゲート部には発錆が無く、皮膜形成の効果が現れていることがわかる。
一方、比較例1〜9では、リン酸化成処理が行われておらず、リン酸塩皮膜が形成されていないために、塩水噴霧試験を行うと、磁性粉末表面が露出し易い成形体エッジ部を始めとした部分で発錆していることがわかる。
さらには、比較例10〜15では、リン酸鉄皮膜が形成されているが、該皮膜が不安定な化合物なためハロゲンイオンと反応してしまい防錆性が低く、塩水噴霧試験により、成形体エッジ部を始めとした部分で発錆していることがわかる。
比較例16では、リン酸亜鉛皮膜が厚く形成され、塩水噴霧試験では、実施例1〜3のボンド磁石と同様に発錆もなく、耐食性は良好であったが、磁石表面でリン酸亜鉛との反応が進み、処理時間が短い以外は同条件で薄く皮膜を形成した実施例3に比べ、磁気特性、特に角型性の低下が見られた。

Claims (7)

  1. 磁性粉末(A)と熱可塑性樹脂バインダー(B)とを含む希土類射出成形ボンド磁石であって、
    その表面上に、ZnCa(PO、Zn(PO、またはMn(POから選ばれる少なくとも1種のリン酸塩を含有するリン酸塩皮膜(C)が形成され、かつリン酸塩皮膜(C)の膜厚が10〜100nmであることを特徴とする希土類射出成形ボンド磁石。
  2. 磁性粉末(A)が、Nd又はSmから選ばれる少なくとも1種の希土類とFe又はFe及びCoの遷移金属を含有する合金粉末であることを特徴とする請求項1記載の希土類射出成形ボンド磁石。
  3. 磁性粉末(A)は、その表面が水溶性リン酸化合物のリン酸塩皮膜で被覆されていることを特徴とする請求項1記載の希土類射出成形ボンド磁石。
  4. 熱可塑性樹脂バインダー(B)が、ナイロン、変性ナイロン、ナイロン系エラストマー、またはポリフェニレンサルファイドから選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項1記載の希土類射出成形ボンド磁石。
  5. リン酸塩皮膜(C)が、さらに、ZnFe(PO、CaFe(PO、またはMnFe(POから選ばれる少なくとも1種の結晶質リン酸塩を含有することを特徴とする請求項1記載の希土類射出成形ボンド磁石。
  6. 磁性粉末(A)と熱可塑性樹脂バインダー(B)とを含むコンパウンドから希土類射出成形ボンド磁石を成形した後、該ボンド磁石を70〜90℃に加熱したZnCa(PO、Zn(PO、またはMn(POから選ばれる少なくとも1種のリン酸塩を含有するリン酸化成処理液に浸漬してその表面にリン酸塩皮膜を形成させ、次いで弱アルカリ性溶液で中和処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の希土類射出成形ボンド磁石の製造方法。
  7. 磁性粉末(A)と熱可塑性樹脂バインダー(B)とを含むコンパウンドから希土類射出成形ボンド磁石を成形した後、該ボンド磁石を70〜90℃に加熱してから、ZnCa(PO、Zn(PO、またはMn(POから選ばれる少なくとも1種のリン酸塩を含有するリン酸化成処理液に浸漬してその表面にリン酸塩皮膜を形成させ、次いで弱アルカリ性溶液で中和処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の希土類射出成形ボンド磁石の製造方法。
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