JP2005101010A - 含浸型陰極の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 量産に適した含浸型陰極の製造方法を提供する。
【解決手段】 多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、金属原料粉末7をプレス成型して多孔質基体を形成するプレス成型工程を含み、金属原料粉末7をすりきり用カートリッジ6に充填した後、すりきり秤量によりダイに充填し、ポンチ8によるプレス成型をし、カートリッジ6のダイ表面9aへの接触面10が円環形状で、かつカートリッジ6の外側側面11は先端部がダイ表面9aと接する傾斜面を含むことを特徴とする。
【選択図】 図3



Description

本発明は、電子管に用いる含浸型陰極とその製造方法に関する。
含浸型陰極は、多孔質金属焼結体(ペレット)の空孔中に電子放射物質を含浸させた基本構造を持つ。含浸型陰極を製造するには、まずタングステン等の高融点金属粉末をプレス成型し、その後焼結することにより適度な空孔を有した還元性を持つ基体を形成する。次に、BaO、CaOおよびAl23を主材とする電子放射物質を、基体の空孔に溶融含浸すれば、陰極ペレットとして完成する。この陰極ペレットには、焼結体の体積と空孔率すなわち空孔体積に応じた電子放射物質量が含浸されている。
以下、陰極ペレットの動作原理について説明する。陰極ペレットは、高温活性化により、BaOがペレットに還元されて自由Baが形成される。この自由Baは空孔中を熱拡散し、表面に到達する。その後、ペレット表面を熱拡散することにより、ペレット表面にBa単原子層を形成する。このとき、ペレットの温度に依存した、単原子層からのBa蒸発量とペレット内部からのBa供給量との差し引きに応じた面積に単原子層が広がる。このBa単原子層は、電子放出に関わる実効仕事関数をペレット形成金属自身の4〜5eVから約2eVにまで低減し、良好な熱電子エミッションを提供する。
動作時にペレット内部からのBa供給が少いと、必要充分な面積のBa単原子層が形成できずにエミッションが不足する。また、活性化に時間がかかる等の弊害が生ずる。
逆に、Ba供給が不必要に多いと表面からの蒸発が増して、ペレット内部の含浸BaOを短時間で消費し、寿命が短くなる。さらに、蒸発Baが対向電極に付着し、不要電子放射の原因となる等の弊害が生ずる。
含浸型陰極の動作の最大のポイントは必要充分なBa単原子層を早く形成し、かつ長時間保たせるということにある。Ba単原子層形成の要因は含浸BaO量、含浸BaOのペレットによる還元の速度、空孔中の自由Baの熱拡散速度、及び電子放射表面でのBaの表面熱拡散速度である。
そして、これらの動作を制御する設計パラメターは、電子放射物質含浸量、ペレットの空孔率とその空間分布、および電子放射面の清浄さすなわち余剰電子放射物質が付着していないことである。これらのパラメターを精密に、かつばらつきを少なく制御することが量産上最も重要な課題となる。
前記のような原理的背景に基づき、特許文献1には、余分な電子放射物質の蒸発を抑制し、電子銃の絶縁部分の電流リークを少なくし、かつ良好なBa単原子層を長時間維持してその寿命を延ばし得る含浸型陰極が提案されている。
これは、ペレットの電子放出面側を低空孔率の第1層として蒸発を抑制し、その下に高空孔率の第2層を配置した2層構造とすることにより、第1層のBa供給能力が尽きた以降(寿命終了後以降)においても第2層から第1層へBa供給を行うことができ、本来の第一層が持つ寿命よりもさらに寿命を延ばしたものである。
さらに、特許文献2には、含浸後に付着した余剰電子放射物質の除去を行い易くするために、基体の表面粗さを5μm以下好ましくは完全平面とするものが提案されている。
また、特許文献3には、電子放射物質含浸量の確保のため、圧縮電子放射物質を個々のペレットの上表面に載せて溶融含浸を行う製造方法が提案されている。
また、特許文献4には、電子放射物質含浸量の安定量産化を、ペレット金属原材料粉末を分級してペレットの空孔率を制御することにより行うものが提案されている。
また、含浸後に付着した余剰電子放射物質を除去するための、はけ、金属張針等を用いる機械的な方法、切削等による研磨、水中での超音波洗浄等が従来より提案されている。
さらに、特許文献5には、ペレットを一つずつ特殊な治具に設置し、清浄な水中で超音波洗浄を行う方法が提案されている。
特公昭44−10810号公報 特開平6−103885号公報 特開昭58−87735号公報 特開平6−103885号公報 特開昭50−103967号公報
しかしながら、前記のような従来の含浸型陰極には、以下のような問題があった。
(1)ペレットを2層構造としたものは、これを製造するためには粒度分布の異なる2種の原材料粉末を使用したり、2度のプレス成型を行う必要があり、生産工程が複雑であった。
(2)ペレットを一つずつ処理したり、原材料粉末を分級したりする方法では、生産性が低く、量産が困難であった。
(3)はけ、金属針等で機械的に余剰電子放射物質を除去する方法は、実施が困難であり、かつペレットごとの処理が必要になるので量産が困難であった。
(4)特殊な治具に焼結後のペレットを一つずつ設置するという工程は繁雑であり、かつ超音波洗浄だけでは余剰電子放射物質を完全に取り除くためには1時間以上の洗浄時間が必要であり、量産化が困難であった。
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、多孔質金属焼結体の空孔率を電子放出面から深さ方向に進むにつれて連続的に増大させることにより、初期電子放射性能、寿命性能、及び電子銃の絶縁性能が優れ、かつ量産に適した含浸型陰極及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の第1番目の含浸型陰極は、多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極であって、前記多孔質金属焼結体の空孔率は電子放出面から深さ方向に進むにつれて連続的に増大していることを特徴とする。
前記のような含浸型陰極によれば、ペレット内部での空孔率の不連続面が形成されないので、自由Baを生み出す化学反応がペレット全体で連続的かつ滑らかに進むことになる。さらに、複数種の粒度分布の原材料粉末を使用する必要がないので、製造工程を簡素化できる。
前記第1番目の含浸型陰極においては、前記多孔質金属焼結体の電子放出面の空孔率が12.5〜25体積%で、前記電子放出面近傍の空孔率とその反対側面近傍の空孔率との差が5〜25体積%の範囲内で、かつ前記電子放出面の反対側面の空孔率が40体積%未満であることが好ましい。前記のような含浸型陰極によれば、良好な寿命特性を得ることができる。
次に、本発明の第2番目の含浸型陰極は、多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極であって、前記陰極ペレットの電子放出面の表面粗さは、最大高さが5〜20μmの範囲内であることを特徴とする。前記のような含浸型陰極によれば、エミッション性能を高めることができる。
次に、本発明の第1番目の含浸型陰極の製造方法は、多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、金属原料粉末をプレス成型して多孔質基体を形成するプレス成型工程を含み、前記金属原料粉末をすりきり用カートリッジに充填した後、すりきり秤量によりダイに充填し、ポンチによるプレス成型をし、前記カートリッジの前記ダイ表面への接触面が円環形状で、かつ前記カートリッジの外側側面は先端部が前記ダイ表面と接する傾斜面を含むことを特徴とする。
前記のような含浸型陰極の製造方法によれば、すりきり秤量を正確に行うことができ、カートリッジ内の原材料粉末の粒度分布をプレスダイ内部に充填される原材料粉末の粒度分布に正確に反映することができるので、ペレットの空孔率や電子放射物質の含浸量の製造ばらつきを低減させることができる。
前記第1番目の含浸型陰極の製造方法においては、前記円環形状の内周の直径がペレット直径の10〜20倍の範囲内で、前記円環形状の外周の直径が前記内周の直径の1.05〜1.3倍の範囲内で、前記傾斜面と前記ダイ表面とのなす角が40〜80°の範囲内であることが好ましい。
また、前記カートリッジに充填する金属原料粉末の量を陰極ペレットの200〜800個分に相当する量とすることが好ましい。
また、すりきり秤量時及びプレス時の前記金属原材料粉末を50〜100℃の範囲内の温度に加熱することが好ましい。
また、ポンチと金属原料粉末とが接する面を陰極ペレットの電子放出面とし、ポンチと金属原料粉末とが接しているときの、ポンチのダイに対する相対速度を0.5〜5cm/sの範囲内とし、かつ加圧時間を1〜7秒の範囲内とすることが好ましい。
次に、本発明の第2番目の含浸型陰極の製造方法は、多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、金属原料粉末をプレス成型して多孔質基体を形成するプレス成型工程と、前記多孔質基体を焼結して多孔質金属焼結体を形成する焼結工程とを含み、プレス成型後の前記多孔質基体の平均空孔率(D体積%)と焼結後の前記多孔質金属焼結体の平均空孔率(d体積%)との間に以下の関係があることを特徴とする。
d+10 ≦ D ≦ d+20
前記のような含浸型陰極の製造方法によれば、機械的強度を保ちながら閉鎖空孔の発生を抑えて一定の含浸量を確保したペレットを製造することができる。
次に、本発明の第3番目の含浸型陰極の製造方法は、多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、前記電子放射物質の溶融時に前記多孔質金属焼結体の全表面に前記電子放射物質が接触するように、前記多孔質金属焼結体と前記電子放射物質とを含浸容器に配置して、前記電子放射物質を前記多孔質金属焼結体の空孔部に含浸させることを特徴とする。
前記のような含浸型陰極の製造方法によれば、含浸量不足の発生を防止することができ、安定した含浸を行うことができる。
前記第3番目の含浸型陰極の製造方法においては、含浸容器に深さを均一にして電子放射物質を充填し、前記電子放射物質の深さ方向のほぼ中央部または前記電子放射物質の最上面の上に前記多孔質金属焼結体を配置することが好ましい。 次に、本発明の第3番目の含浸型陰極の製造方法は、多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、含浸容器に充填する前記電子放射物質の重量が含浸容器内に配置された多孔質金属焼結体に含浸され得る重量の10〜100倍の範囲内であることを特徴とする。前記のような含浸型陰極の製造方法によれば、含浸量のばらつきを低減させることができる。
次に、本発明の第4番目の含浸型陰極の製造方法は、多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、含浸処理後の陰極ペレットをアルミナボールとともに容器に入れ、シェーキングした後、水中で超音波洗浄を行うことにより、余剰電子放射物質を除去することを特徴とする。前記のような含浸型陰極の製造方法によれば、破損率を抑えながら、余剰電子放射物質を除去することができ、含浸量のばらつきも低減させることができる。
本発明によれば、量産に適した含浸型陰極の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る含浸型陰極ペレットの断面の概念図を示している。本実施形態のペレットは、金属原材料粉末1の圧縮焼結体であり、内部に空孔を持ち、その空孔は電子放射物質2で満たされている。矢印4は、電子放出方向である。空孔率は、電子放出面3からその反対側(矢印5方向)へ進むにつれて連続的に高くなっている。また、電子放出面3の表面粗さA(最大高さ)は、5〜20μmの範囲内に保たれている。
図2は、実施形態1に係る含浸型陰極の製造方法の製造工程のフローチャートを示している。金属原材料粉末をすりきり秤量した後、プレス成型を行なう。その成型体を水素または真空中で、1500〜2200℃の範囲内の温度で焼結する。その焼結体を、1500〜1800℃範囲内の温度で電子放射物質とともに熱すると電子放射物質が溶融し、ペレット内部の空孔に含浸される。その後、ペレットに付着した余剰電子放射物質を除去し、表面コート工程を経て完成ペレットとなる。
以下、実施形態1に係る含浸型陰極の製造方法の一例について、さらに具体的に説明する。まず、原材料粉末のすりきり秤量を行った。図3は、本実施形態に係る含浸型陰極の製造方法に用いるすりきり用カートリッジ(以下「カートリッジ」)及びプレスダイの断面図を示している。多孔質基体の原材料として、粒径が1〜10μmの範囲内のタングステン粉末を用いた。原材料粉末7をプレスダイの表面部9a上のカートリッジ6に3.5g充填した。この量はペレット約500個分に相当する。
カートリッジ6のすりきり面10は内径20mm、外径22mmの円環形状とし、外側側面11とプレスダイ表面9aとの接触角Bは60°とした。ヒータにより原材料粉末7を約80℃に暖めながら、2〜6回のすりきり秤量を行い、プレスダイの貫通孔部9に7mgの原材料粉末7を充填した。次に、通常のポンチ8によるプレス成型を行った。ポンチ8の降下速度は1cm/sに制御し、加圧時間は4秒間とした。
1850〜2000℃の範囲内の温度での焼結後のペレットの平均空孔率を20%とするために、プレス成型後の平均空孔率が約35%となるようにプレス荷重を制御した。
次の焼結工程では、焼結を還元性雰囲気中で約2時間行った。以上のような工程を経て製造されたペレットの空孔率は、ポンチの接する電子放出面では17体積%、その反対側面は23体積%、これらを平均した平均空孔率は20体積%であった。また、電子放出面3の表面粗さは最大高さが5〜10μmの範囲内であった。
なお、平均空孔率は、プレス荷重と焼結温度を調節することにより制御できる。空孔率の空間分布は、ポンチの降下速度と加圧時間とを調節することにより制御できる。
ここで、空孔率とその評価方法について説明する。空孔率は、ペレットの体積V(cm3)と重量W(g)を測定し、原材料金属のバルク密度ρ(g/cm3)を用いれば、以下の計算式により求めることができる。
ペレット空孔率(体積%)=[(V−W/ρ)/V]×100
また、空孔率分布は、例えばペレットを電子放出面に平行な切り口で、電子放出面に垂直方向に三分割し、それぞれの輪切り部分の平均空孔率(d1,d2,d3)を前式から求めることにより、空孔率のペレット内分布を評価することができる。
電子放出面空孔率=d1−(d2−d1)/2
反対側面空孔率 =d3+(d3−d2)/2
ここで、d1:3分割した電子放出面側の輪切り部分の平均空孔率
d2:3分割した中央部分の輪切り部分の平均空孔率
d3:3分割した電子放出面の反対側の輪切り部分の平均空孔率
なお、分割数は3に限らず、2でも4以上でもかまわない。前記のように計算することにより数学的に空孔率分布を評価することができる。
次に、電子放射物質の含浸を行った。電子放射物質としてモル比4:1:1のBaCO3、CaCO3、Al23混合物を使用した。直径約1.5cm、深さ約1cmの円筒形含浸容器に電子放射物質を多孔質基体に含浸される重量の約30倍の重量だけ充填し、その上に焼結済み多孔質基体を100個設置した。
その含浸容器を還元性雰囲気中で1500℃〜1800℃の範囲内の温度の炉中に通して溶融含浸した。なお、BaCO3、CaCO3は、溶融含浸に先立って炉内の高温雰囲気中で、それぞれBaO、CaOの酸化物に分解されているので、ペレット中にはこれら酸化物が含浸されていることになる。
次に、多孔質基体表面に付着した余剰電子放射物質を除去を行った。この除去は、φ5mmのアルミナボール6個とともに含浸済ペレットを小型容器に混合し、約5分間のシェーキングにより行った。その後、水中で約5分間超音波洗浄し、最後に乾燥してペレットを完成した。
さらに、製作された多孔質基体の電子放出面すなわちプレスポンチの接触面にOs薄膜をスパッタリングにより形成した。以上のような工程を経て、陰極として完成させた。この陰極は、例えば17”ブラウン管電子銃に組み込まれ、1000℃の通常動作温度のとき連続電子放射能力として2〜4A/cm2の電流密度を可能とし、かつ数万時間のエミッション寿命を持つ。
以上のような本発明に係るペレットであれば、ペレット内部での空孔率の不連続面が形成されないので、自由Baを生み出す化学反応がペレット全体で連続的かつ滑らかに進むことになる。さらに、複数種の粒度分布の原材料粉末を使用する必要がないので、製造工程を簡素化でき、量産に適した製造工程とすることができる。
(実施の形態2)
実施形態2は、実施形態1で説明した製造工程により製造したペレットの空孔率、及び空孔率分布を一定の範囲内としたものである。実施形態1で説明した製造工程により、電子放出面空孔率及び電子放出面とその反対側面との空孔率差(以下「空孔率差」)を変化させた各種のペレットを製造した。これらペレットをカソードとして完成し、市販17”モニタ用ブラウン管に組み込み、1カソード当たり400μAの直流電流をエミッションとして取り出しながら、1250℃のカソード動作温度で強制加速寿命試験を行った。
前記各種ペレットの初期の飽和エミッション電流(以下「飽和電流」)、初期の単位時間当たり電子放射物質蒸発量(以下「蒸発量」)及びエミッション寿命(以下「寿命」)の測定結果を以下の表1に示す。表1において飽和電流、蒸発量及び寿命の値は、電子放出面空孔率が20体積%で空孔率差が0のときの測定値をそれぞれ1としたときの相対値を示している。
また、図4は表1の測定結果を用いて、電子放出面空孔率と飽和電流及び蒸発量との関係をグラフに表したものである。同様に、図5は空孔率差と寿命との関係を表している。
Figure 2005101010
表1、図4及び図5によれば、以下のことが分かる。
(イ)電子放出面空孔率が一定であれば、飽和電流と蒸発量は、平均空孔率に関係なく一定である。
(ロ)また、電子放射面空孔率を変化させたときは、図4に示すように飽和電流は電子放出面空孔率が増加するにつれて緩やかに増加し、電子放出面空孔率が30体積%程度のところで飽和する。
(ハ)一方、図4、表1より蒸発量は、電子放出面空孔率にほぼ比例して増加するので、電子放出面空孔率を一定値以上に高めると電子銃電極での不要電子放射が増大する可能性がある。このため、実用的には飽和電流と蒸発量とのコンプロマイズが必要になる。具体的には電子放出面空孔率は、12.5〜25体積%の範囲内が好ましい。
(ニ)図5、表1より、5〜25体積%の範囲内の空孔率差を形成すると、空孔率差の無いものと比べ、寿命が約10〜40%の範囲内で延長する。
なお、表1には示していないが、電子放出面の反対側面の空孔率が40体積%以上となると、ペレットの機械的強度が弱くなるので、実用的には電子放出面の反対側面の空孔率は40体積%未満とすることが好ましい。
以上の結果をまとめると、空孔率および空孔率分布の有効な選択範囲は、電子放出面の空孔率が12.5〜25体積%の範囲内で、空孔率差が5〜25体積%の範囲内で、かつ前記電子放出面の反対側面の空孔率が40体積%未満を満足する範囲である。
平均空孔率をρ体積%、空孔率差をΔρ体積%として、前記有効範囲を数式で表現すると、以下のようになる。
(式1) 15≦ρ≦30
(式2) 5≦Δρ ≦25
(式3) Δρ < 2×(40−ρ)
(式4) Δρ ≦ 2×(ρ−12.5)
式1の下限値15体積%は、電子放出面空孔率の好ましい範囲内の下限値が12.5体積%であることと、空孔率差の好ましい範囲内の下限値が5体積%であることより求めた。式1の上限値30体積%は、電子放出面空孔率の好ましい範囲内の上限値が25体積%であることと、電子放出面の反対側面の空孔率が40体積%未満であることの両方の条件を満足する最大の値を表1より求めた。
式3は、電子放出面の反対側面の空孔率を40体積%未満とする条件より求めた。式4は、電子放出面空孔率を12.5体積%以上とする条件より求めた。
図6は、式1〜4の関係を図示したものであり、斜線部が、式1〜4を満足する範囲内である。すなわち、ペレットの平均空孔率ρ及び空孔率差Δρを、図6の斜線部の範囲内で選択すれば、良好な寿命特性を得ることができる。さらにこの範囲内において、必要なエミッションと蒸発量を選択することにより、最良のペレット設計が可能となる。
(実施の形態3)
実施形態3は、ペレットの電子放出面に一定範囲内の表面粗さを形成することにより、エミッシション性能を高めたものである。図7は、電子放出面の表面粗さと飽和電流の相対値との関係を示している。飽和電流は、試作したペレットを通常の陰極に組立てて測定した。図7の縦軸の相対値は、電子放出面の表面粗さが0μmのペレットにおける測定値を1としたものである。
図7の横軸は、ペレットの電子放出面の表面粗さを示し、表面粗さの範囲によって種類を分けた4種類のペレットについて、測定を行った。具体的には、a〜d点における表面粗さの範囲は、a点では0〜5μm、b点では5〜10μm、c点では10〜20μm、d点では20〜30μmとした。表面粗さは、最大高さを示している。
図7より、表面粗さが大きいほど飽和電流の相対値が大きくなって良好であることがわかる。b、c、d点ではいずれの測定値も飽和電流の相対値は1以上である。ただし、d点では対抗アノード電極との間でスパークの発生するもの(図中のe)があった。従って、スパークを抑え、かつエミッションを最大にするためには、図7のb、c、d点すなわち表面粗さが5〜20μmの範囲内が好ましい。
なお、前記の測定には、電子放出面の空孔率は17体積%で、空孔率差は6体積%のものを用いたが、他の数値のものを用いても前記の表面粗さと飽和電流との関係は同様であり、表面粗さは5〜20μmの範囲内が好ましい。
また、実施形態1で説明した基本工程により形成されるペレットは、表面粗さは5〜10μmの範囲内であるので、これら表面を機械的に研磨することにより、0〜5μmの範囲内の表面粗さを持つペレットを製作した。また、表面粗さが10〜30μmの範囲内のものについてはプレス成型後の基体の表面に約10〜20μmのタングステン粉末を付着させて焼結することにより製作した。
(実施の形態4)
陰極ペレットの量産において最も重要なことは、ペレット毎の空孔率のばらつきを低減し、かつ電子放射物質の含浸量を安定させることである。実施形態1で説明した基本工程において、製造ばらつきを低減させるための実施形態を以下実施形態4〜11として説明する。
実施形態4は、プレス成型工程で用いるカートリッジ形状に関するものである。図3を用いて、実施形態4に係るカートリッジの最適形状について説明する。カートリッジ6は、すりきり秤量の正確さに加え、カートリッジ6内の原材料粉末7の粒度分布をプレスダイ内部に充填される原材料粉末の粒度分布に正確に反映することが重要である。
このためには、カートリッジ6とプレスダイの表面9aとの接触面10の形状と大きさが重要になる。具体的には、接触面10の形状は円環形状が好ましい。円環形状であれば、すりきりの往復運動においてカートリッジ6内での原材料粉末の攪拌を行うことができる。
四角形等の接触面では、往復運動を行ってもプレスダイ平面方向の2次元的粉末攪拌が期待できない。ただし、四角形等の対角線がプレスダイの貫通孔9を通過するようにカートリッジ6を設定すれば2次元的攪拌は期待できるが、この場合はカートリッジ6の角部がプレスダイの貫通孔9の端部に接触するので、カートリッジ6及びプレスダイを損傷してしまう。
接触面10を円環形状とした場合は、円環の内径はプレスダイの貫通孔9の内径(ペレット直径)の10〜20倍の範囲内が好ましい。10倍未満の内径であれば粉末の攪拌効果が弱まり、この結果プレスを行うにつれて、粒度分布の粗いペレットが製造されてしまう。また、20倍より大きい内径であれば攪拌効果はさらに高まるが、すりきり往復運動のストロークが長くなるので、逆に量産性は低下してしまう。
円環の外径は、内径の1.05〜1.3倍の範囲内が好ましい。1.05倍未満の外径であれば、プレスダイとの接触による片べりが激しく長時間の使用に耐えられない。また、1.3倍より大きい外径であれば、円環部とプレスダイの表面9aとの密着性が悪くなり、すりきり秤量が不正確となったり、接触面10のすきまに微小粉末が入り込み、すりきりができなくなる。
円環形状の外径と接するカートリッジの外側側面11は傾斜面が好ましく、接触面とのなす角度Bは40〜80°の範囲内が好ましい。40°未満であると、すりきり動作時に原材料粉末を巻き込んで秤量が不正確になることがある。また、80°より大きいとプレスダイの貫通孔9の端部とカートリッジ6の接触時に原材料粉末がはさみこまれ、スムースなすりきり動作ができなくなる。
(実施の形態5)
実施形態5は、カートリッジへの金属原料粉末充填量を一定範囲量とした製造方法である。図8に、金属原料粉末充填量とペレット重量ばらつきとの関係を示している。図8の測定結果を得るために、タングステン粉末の充填量をペレット重量の100個分(約0.7g)から2000個分(約14g)まで変化させて、ペレットを製造した。100個製造する毎に減少分の粉末を補い、一水準で各10000個のペレットを製造した。
図8の横軸の金属原料粉末充填重量は、カートリッジへの金属原料粉末充填量が、ペレット重量の何個分であるかを示している。製造したペレットについては、プレス成型後の重量のばらつきを測定した。
図8より、充填重量が200個分から800個分までのときは、ペレット重量は安定しているが、この範囲を越えると次第にばらつきが大きくなることがわかる。これは充填重量が適量であれば、すりきり動作によりカートリッジ内部の粉末が適度に攪拌され、粉末本体の粒度分布を保ったままプレスダイの貫通孔に充填されるからである。
(実施の形態6)
実施形態6は、プレス成型時の原材料粉末の加熱温度を一定範囲温度とした製造方法である。カートリッジ内の原材料粉末の攪拌効果を高め、ペレット空孔率および重量のばらつきを低減するためには良好な粒子流れ性を確保する必要がある。微粉末は大気中の湿気を吸着し、粒子流れが悪くなるので、プレスダイへ充填する前に50〜100℃の範囲内の温度で加熱しておくことが好ましい。
加熱温度が100℃を超えるとタングステン等の白金族/貴金属では大気による酸化の影響を受けるようになるのでペレット製造においては好ましくない。また、加熱温度が50℃未満であると加熱による除湿効果が低い。
図9に、原材料粉末の加熱温度とペレット重量ばらつきとの関係を示している。すりきりカートリッジへの原材料粉末の充填量はペレット500個分とし、ランプにより加熱した。図9より、加熱温度が50〜100℃の範囲内のときは、ペレット重量は安定していることがわかる。
(実施の形態7)
実施形態7は、プレス成型におけるポンチの降下速度と加圧時間とを一定範囲内とした製造方法である。プレス成型においては、ポンチの降下速度と加圧時間とが空孔率分布の制御には重要な要素である。
プレス成型時のプレスダイ内部の原材料粉末の動きを見ると、ポンチに接触する部分の粉末の動きが最も多く、その反対側面の粉末はほとんど動かない。この結果、ポンチとの接触面に近いほうの部分の粉末については、その部分の粉末とプレスダイ内側面の摩擦、または粉末同志の摩擦により、ポンチに加えられた圧力が消費され、接触面の反対側面近傍まで圧力が伝わりにくくなる。このため、ポンチと粉末との接触面近傍の空孔率は低くなり、その反対側面の空孔率は高くなる。
以上のことから、ポンチの降下速度が速くなるほど、プレス圧力の印加方向にペレット内部の空孔率分布の傾斜ができる。すなわち、電子放出面とその反対側面との空孔率差が大きくなる。逆に、ポンチの降下速度を低くすると、プレスダイの中で原材料粉末の摩擦を抑えながら滑らかにプレスができるので、より均一な空孔率分布となる。
また、加圧時間を長くするほど、圧力が原材料粉末全体に均等に加わる傾向があり、逆に短時間でプレス成型を行うと不均一に圧力が加わり、電子放出面とその反対側面との空孔率差が大きくなる。
ポンチの降下速度と加圧時間とをそれぞれ変化させた組合せにおける空孔率差(体積%)の測定結果を以下の表2に示す。
Figure 2005101010
表2より、降下速度を0.5〜5cm/sの範囲内で、加圧時間を1〜7秒間の範囲内で選択すれば空孔率分布を自在に制御できることがわかる。加圧時間は7秒間を越えても良好であるが量産には適していない。
以上のように、ペレット全体の平均空孔率はプレス圧力を調整することにより、独立に制御可能である。このため、粒度分布の異なる原材料粉末を用いることなく、かつ多層に成型する必要もなく、通常の工程で容易に本発明のペレットを製造することができる。
(実施の形態8)
実施形態8は、プレス成型後の多孔質基体の平均空孔率と焼結後のペレットの平均空孔率とを一定の関係とする製造方法である。
ペレット内部への電子放射物質の含浸を安定させるためには、ペレットの空孔率以外に、空孔の連続性が重要な要素となる。すなわち、ペレット表面の開口部に繋がらない空孔であって、ペレット外部から電子放射物質が含浸されない閉鎖された空孔を少なくすることが重要である。
さらに、ペレットの量産取り扱い性を確保するためには、十分な機械的強度が必要である。
図10に、プレス成型後の多孔質基体の平均空孔率と、電子放射物質の含浸量及びペレット破損率との関係を示している。線12〜14は、焼結後のペレットの平均空孔率d(体積%)を10〜30体積%に変化させた場合の、プレス成型後の多孔質基体の平均空孔率D(体積%)と電子放射物質の含浸量との関係を示している。縦軸(左側)に、ペレット毎の含浸量の相対値を示している。焼結後の平均空孔率dが20体積%で、プレス成型後の平均空孔率Dが30体積%における含浸量の値を1とした。
線12〜14に示した結果より、平均空孔率Dが一定値を越えると含浸量は低下し始めることが分かる。例えば焼結後のペレットの平均空孔率dが10体積%である線10では、平均空孔率Dが30体積%までは含浸量は安定しているが、30体積%を越えると、含浸量は低下し始める。
線15〜17は、焼結後のペレットの平均空孔率dを10〜30体積%に変化させた場合の、プレス成型後の多孔質基体の平均空孔率Dとペレット破損率の相対値との関係を示している。縦軸(右側)に、ペレット破損率を示している。
線15〜17に示した結果より、平均空孔率Dが一定値を越えると、破損率は0になることが分かる。例えば、焼結後の平均空孔率dが10体積%である線15では、平均空孔率Dが20体積%で破損率は0になっている。
以上のような測定結果より、機械的強度を保ちながら閉鎖空孔の発生を抑えて一定の含浸量を確保したペレットを製造するためには、プレス成型後の平均空孔率D(体積%)と焼結後の平均空孔率d(体積%)との間に以下の関係が必要であるといえる。
d+10 ≦ D ≦ d+20
本関係式を図示したのが、図11である。線18はD=d+10の関係を満足する線である。線19はD=d+20の関係を満足する線である。したがって、斜線で示した線18と線19との間の領域が前記関係式を満足する範囲である。線18より上側の領域では、機械的強度が不足し、線19より下側の領域では、含浸量が過少である。例えば、焼結後の平均空孔率dが20体積%のペレットを得ようとすれば、プレス成型後の平均空孔率Dは30〜40体積%の範囲内とすることが好ましい。
この場合、平均空孔率Dが30体積%より小さいと、ほとんど焼結されていないことになるので、機械的強度が非常に低くなり、取扱い時に破損する場合がある。逆に、平均空孔率Dが40体積%より大きいと、焼結が進みすぎているので閉鎖空孔が多数発生し、適量の電子放射物質の含浸が行われないということになる。
(実施の形態9)
実施形態9は、含浸容器への電子放射物質充填量を一定範囲量とする製造方法である。本実施形態では、含浸容器には上側が開口した例えばMo、W製の耐熱金属容器を用い、寸法は縦1.5cm×横1.5cm×深さ1cmとした。1ペレット当たりの最適含浸量の200〜20000倍の範囲内で変化させた重量の電子放射物質を含浸容器に充填し、その上に、平均空孔率が20±1体積%、直径1.2mm、高さ0.42mmで、かつ±5μgの精度で重量分級済のペレットを100個設置し含浸した。含浸後、余剰電子放射物質を除去し、重量を測定することにより増加重量すなわち含浸量を、ペレット1個毎に求めた。
図12に、含浸容器への電子放射物質充填量とペレット含浸量のばらつきとの関係を示している。横軸は、充填量のペレット1個当たりに必要な電子放射物質の最適含浸量に対する倍数(以下、単に「充填量」という)を示している。
図12より、充填量が1000倍未満となると十分に含浸されないペレットが発生していることが分かる。これは、電子放射物質が溶融したときに多孔質基体表面の全面がぬれない基体があるからである。充填量が1000倍から10000倍の間では、1ペレット当たり含浸量はほぼ飽和し、最適含浸量を示す。
充填量が10000倍を超えると、平均含浸量は減少した。これは電子放射物質の溶融時に多量のガスが発生し、電子放射物質が基体空孔内に浸透することを妨げているからである。また、含浸容器の底面積を広くした場合には、その割合に比例してペレットを増加させて設置するとほぼ同様の結果が得られる。以上のような結果より、充填量は1000〜10000倍の範囲内が好ましい。
(実施の形態10)
実施形態10は、含浸容器へのペレット設置方法に係るものであり、ペレットの全表面が含浸時に電子放射物質に接触するように配置する製造方法である。本実施形態を導くために、以下のような実験を行った。電子放射物質の充填量は前記実施形態9の好ましい範囲内である3000倍とし、以下のa〜dの4種類のペレット配置で含浸を行った。図13(B)に、以下の各配置a〜dにおける含浸容器20、ペレット21及び電子放射物質22との位置関係を図示している。(a)含浸容器底面にペレットを1段で平面状に100個設置し、その上から電子放射物質を充填したもの。本配置では、ペレットの円柱底面が含浸容器に接触している。
(b)含浸容器底面にペレットを1段当たり50個として2段重ねで設置し、その上から電子放射物質を充填したもの。本配置では、1段目のペレットの円柱上面と2段目のペレットの円柱底面とが接触し、1段目のペレットの円柱底面が容器に接触している。
(c)含浸容器に電子放射物質を深さを均一にして半分量設置し、その上にペレットを1段で平面状に100個設置し、その上に残りの電子放射物質を深さを均一にして設置したもの。本配置では、ペレットの全面が電子放射物質に接触している。
(d)含浸容器に電子放射物質を深さを均一にして全量設置し、その上にペレットを1段で平面状に100個設置したもの。本配置では、ペレットの円柱上面が空間に接触している。
図13(A)に、前記各配置とペレット含浸量との関係を示している。横軸のa〜dは、前記各配置a〜dに対応している。
aとbとのペレット配置では若干の含浸量不足が発生した。cとdとでは良好な含浸量を示した。このことは、ペレットの全表面が電子放射物質に覆われていないと含浸量が不足することを示している。なお、dは図13(B)に図示した状態では、ペレットの全表面が電子放射物質に覆われていないが、電子放射物質が溶融すると、ペレットは自重により沈み込み、自然に全面が電子放射物質で覆われることになる。すなわち、電子放射物質の溶融時にペレット全面が電子放射物質で覆われることが安定した含浸を行うためには重要な条件となる。
(実施の形態11)
実施形態11は、含浸時にペレットに付着した余剰電子放射物質の除去方法に係るものであり、含浸後のペレットに付着した余剰電子放射物質を、粉砕用ボールにより物理的に除去するものである。
本実施形態では、前記実施形態10の方法により、最適含浸条件で含浸させたペレットを用いた。これらペレットを、例えば直径φ=5mmのアルミナボール10個と共に内容積100cm3のガラス容器に入れ、5分から1時間のシェー キングを行う。その後イオン交換水中で5分間超音波洗浄を行い、真空乾燥させる。このときのシェーキング時間とペレットの破損率との関係を、以下の表3に示す。
Figure 2005101010
表3より、60分以上のシェーキングを行ったもの(比較例3、4)ではペレット破損率が急激に大きくなっていることが分かる。
また、図14に表3の比較例1〜4、実施例1〜3おけるペレットの含浸量を示している。図14より、実施例2(シェーキング時間15分)においてペレットの含浸量のばらつきが最小であることがわかる。このばらつきは余剰電子放射物質の付着程度が反映されるものであるから、ばらつきの小さいほど良好である。シェーキング時間を60分以上としたもの(比較例3、4)では、ばらつきは小さいが、前記のように破損率が大きい。
図14の比較例1、2(シェーキング無し)の結果より、超音波洗浄だけのときは洗浄時間を長くしてもペレット毎のばらつきの減少は少ない。これは余剰分以外の空孔中の有効な電子放射物質も時間とともに除去されていることを示している。また、絶対的に長時間の処理が必要なことがわかり、量産には適していない。
なお、シェーキングまたはローリング等の条件はボールの個数、サイズ、容器内容積、ペレット処理量、時間、シェーキング振動数および振幅、ローリング回転速度を選択することにより自在に変化させることができる。
以上、前記各実施形態においては、ペレットの構成材料をタングステン(W)を一例として説明したが、これに限らずオスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属、これらを含む合金、またはこれらをベースとして少量の添加剤を含んだものとしてもよい。
また、電子放射物質としては炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化アルミニウム(Al23)のモル比を4:1:1として混合したものを例として説明したが、これに限らずモル比を変更したものでもよく、これらの混合物に少量の添加材を分散したものを用いてもよい。また、炭酸バリウムに代えて、酸化バリウム(BaO)、炭酸カルシウムに代えて酸化カルシウム(CaO)を用いてもよい。
以上のように、本発明の含浸型陰極によれば、基体の空孔率が連続的に増大しているので、ペレット内の化学反応がペレット全体で連続的かつ滑らかに進む。さらに、複数種の原材料粉末を使用する必要がないので、製造工程を簡素化できる。また、陰極ペレットの電子放出面の表面粗さを5〜20μmの範囲内とすることにより、エミッション性能を高めることができる。
本発明の含浸型陰極の製造方法によれば、カートリッジを一定形状とすることにより、空孔率や含浸量の製造ばらつきを低減させることができる。
また、焼結前後の基体の平均空孔率を一定の関係とすることにより、機械的強度を保ちながら一定の含浸量を確保したペレットを製造することができる。
また、含浸容器に充填する電子放射物質の重量を一定範囲量とすることにより、含浸量不足を防止することができ、安定した含浸を行うことができる。
また、含浸時にペレット全表面に電子放射物質が接触するように、ペレットを配置することにより、含浸量不足を防止することができる。
また、含浸容器に充填する電子放射物質の重量を一定範囲量とすることにより、含浸量のばらつきを低減させることができる。
また、含浸処理後の陰極ペレットをアルミナボールとともにシェーキングすることにより、破損率を抑えながら、余剰電子放射物質を除去することができ、含浸量のばらつきも低減させることができる。
本発明の含浸型陰極の一実施形態の断面の概念図 本発明の含浸型陰極の製造工程の一実施形態を示すフローチャート 本発明の含浸型陰極の製造方法に用いるすりきり用カートリッジ及びプレスダイの一実施形態を示す断面図 本発明の含浸型陰極の一実施形態の電子放出面空孔率と飽和電流及び蒸発量との関係を示す図 本発明の含浸型陰極の一実施形態の空孔率差と寿命との関係を示す図 本発明の含浸型陰極の一実施形態の平均空孔率と空孔率差との関係を示す図 本発明の含浸型陰極の一実施形態の電子放出面の表面粗さと飽和電流の相対値との関係を示す図 本発明の含浸型陰極の一実施形態の金属原料粉末充填量とペレット重量ばらつきとの関係を示す図 本発明の含浸型陰極の一実施形態の原材料粉末の加熱温度とペレット重量ばらつきとの関係を示す図 本発明の含浸型陰極の一実施形態のプレス成型後の多孔質基体の平均空孔率と電子放射物質の含浸量及びペレット破損率との関係を示す図 本発明の含浸型陰極の一実施形態のプレス成型後の平均空孔率と焼結後の平均空孔率との関係を示す図 本発明の含浸型陰極の一実施形態の含浸容器への電子放射物質充填量とペレット含浸量のばらつきとの関係を示す図 本発明の含浸型陰極の一実施形態の含浸時のペレット配置とペレット含浸量との関係を示す図 本発明の含浸型陰極の一実施形態及び比較例のシェーキング時間とペレット含浸量との関係を示す図
符号の説明
1 金属原材料粉末
2,22 電子放射物質
3 電子放出面
4 電子放出方向
6 すりきり用カートリッジ
7 原材料粉末
8 ポンチ
9 プレスダイの貫通孔部
9a プレスダイ表面
10 接触面
11 外側側面
12 焼結後平均空孔率d=10体積%におけるプレス成型後平均空孔率と含浸量との関係を示す線
13 焼結後平均空孔率d=20体積%におけるプレス成型後平均空孔率と含浸量との関係を示す線
14 焼結後平均空孔率d=30体積%におけるプレス成型後平均空孔率と含浸量との関係を示す線
15 焼結後平均空孔率d=10体積%におけるプレス成型後平均空孔率と破損率との関係を示す線
16 焼結後平均空孔率d=20体積%におけるプレス成型後平均空孔率と破損率との関係を示す線
17 焼結後平均空孔率d=30体積%におけるプレス成型後平均空孔率と破損率との関係を示す線
18 焼結後平均空孔率dとプレス成型後平均空孔率DとがD=d+10の関係を満足する線
19 焼結後平均空孔率dとプレス成型後平均空孔率DとがD=d+20の関係を満足する線
20 含浸容器
21 ペレット

Claims (10)

  1. 多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、金属原料粉末をプレス成型して多孔質基体を形成するプレス成型工程を含み、前記金属原料粉末をすりきり用カートリッジに充填した後、すりきり秤量によりダイに充填し、ポンチによるプレス成型をし、前記カートリッジの前記ダイ表面への接触面が円環形状で、かつ前記カートリッジの外側側面は先端部が前記ダイ表面と接する傾斜面を含むことを特徴とする含浸型陰極の製造方法。
  2. 前記円環形状の内周の直径がペレット直径の10〜20倍の範囲内で、前記円環形状の外周の直径が前記内周の直径の1.05〜1.3倍の範囲内で、前記傾斜面と前記ダイ表面とのなす角が40〜80°の範囲内である請求項1に記載の含浸型陰極の製造方法。
  3. 前記カートリッジに充填する金属原料粉末の量を陰極ペレットの200〜800個分に相当する量とする請求項1または2に記載の含浸型陰極の製造方法。
  4. すりきり秤量時及びプレス時の前記金属原材料粉末を50〜100℃の範囲内の温度に加熱する請求項1から3のいずれかに記載の含浸型陰極の製造方法。
  5. ポンチと金属原料粉末とが接する面を陰極ペレットの電子放出面とし、ポンチと金属原料粉末とが接しているときのポンチのダイに対する相対速度を0.5〜5cm/sの範囲内とし、かつ加圧時間を1〜7秒の範囲内とする請求項1から4のいずれかに記載の含浸型陰極の製造方法。
  6. 多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、金属原料粉末をプレス成型して多孔質基体を形成するプレス成型工程と、前記多孔質基体を焼結して多孔質金属焼結体を形成する焼結工程とを含み、プレス成型後の前記多孔質基体の平均空孔率(D体積%)と焼結後の前記多孔質金属焼結体の平均空孔率(d体積%)との間に以下の関係があることを特徴とする含浸型陰極の製造方法。
    d+10 ≦ D ≦ d+20
  7. 多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、前記電子放射物質の溶融時に前記多孔質金属焼結体の全表面に前記電子放射物質が接触するように、前記多孔質金属焼結体と前記電子放射物質とを含浸容器に配置して、前記電子放射物質を前記多孔質金属焼結体の空孔部に含浸させることを特徴とする含浸型陰極の製造方法。
  8. 前記含浸容器に深さを均一にして電子放射物質を充填し、前記電子放射物質の深さ方向のほぼ中央部、または前記電子放射物質の最上面の上に前記多孔質金属焼結体を配置する請求項7に記載の含浸型陰極の製造方法。
  9. 多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、含浸容器に充填する前記電子放射物質の重量が含浸容器内に配置された多孔質金属焼結体に含浸され得る重量の10〜100倍の範囲内であることを特徴とする含浸型陰極の製造方法。
  10. 多孔質金属焼結体の空孔部に電子放射物質を含浸させた陰極ペレットを備えた含浸型陰極の製造方法であって、含浸処理後の陰極ペレットをアルミナボールとともに容器に入れ、シェーキングした後、水中で超音波洗浄を行うことにより、余剰電子放射物質を除去することを特徴とする含浸型陰極の製造方法。
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