JP2005099297A - 熱現像感光材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 カブリが低く、Dmax(最高濃度)が高く、かつ、現像時の温湿度依存性が小さい熱現像感光材料を提供すること。
【解決手段】 熱現像感光材料に含まれる感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率を40モル%〜100モル%とし、かつ非感光性有機銀塩上および近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物を含有させる。
【選択図】 なし

Description

本発明は熱現像感光材料に関するものであり、特に写真製版用に適したスキャナー、イメージセッター用熱現像感光材料に関し、さらに詳しくは、カブリが低く、Dmax(最高濃度)が高く、かつ、現像時の温湿度依存性を小さくすることができる熱現像感光材料に関するものである。
支持体上に感光性の画像形成層を有し、画像露光することで画像形成を行う感光材料が、数多く知られている。その中には、環境保全に寄与し画像形成手段を簡易化できるシステムとして、熱現像により画像を形成する技術がある。近年、写真製版分野においては環境保全や省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれるようになっている。そこで、レーザー・スキャナーまたはレーザー・イメージセッターにより効率的に露光させることができ、かつ高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる写真製版用途の熱現像感光材料に関する技術開発が必要とされている。このような熱現像感光材料によれば、溶液系処理化学薬品を必要としない、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することが可能になる。
熱現像により画像を形成する方法は、例えば特許文献1、2および非特許文献1に記載されている。このような熱現像感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、および銀の還元剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有する。感光材料は常温で安定であるが、露光後に高温(例えば、80℃以上)に加熱したときに、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光により形成された潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色になり、非露光領域と対照をなすことから画像の形成がなされる。
従来から知られている熱現像感光材料は、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノールなどの有機溶剤を溶媒とする塗布液を塗布することにより画像形成層を形成しているものが多い。有機溶剤を溶媒として用いることは、製造工程で人体へ悪影響が及ぶだけでなく、溶剤の回収その他の工程が必要になるためコスト上も不利である。そこで、水を溶媒とする塗布液を用いて画像形成層を形成する方法が提案されている。例えば、特許文献3、4などには、ゼラチンをバインダーとする画像形成層が記載されている。また、特許文献5には、ポリビニルアルコールをバインダーとする画像形成層が記載されている。さらに特許文献6には、ゼラチンとポリビニルアルコールを併用した画像形成層が記載されている。これ以外の例として、水溶性ポリビニルアセタールをバインダーとする画像形成層が記載されている(例えば、特許文献7参照。)。このようなバインダーを用いれば、水溶媒の塗布液を用いて画像形成層を形成することができるため、環境面およびコスト面のメリットは大きい。
しかしながら、ポリビニルアルコール、水溶性ポリアセタールなどのポリマーをバインダーとして用いると、現像部の銀色調が本来好ましいとされる黒色からかけ離れた茶色や黄色になるうえ、露光部の黒化濃度が低くて未露光部の濃度が高い等の問題があり、商品価値が著しく損なわれたものしか得られなかった。このため、前述の水溶媒の塗布液で用いるバインダーで、カブリが低くDmax(最高濃度)が高く、高コントラストな画像を得ることができる熱現像感光材料を提供することが望まれていた。
また、一般に新聞印刷や商業印刷分野で写真製版用フィルムを使用する場合、安定な画像がいつでも得られるようなシステムが望まれているが、写真製版用フィルムに必要とされる上記のような高コントラストな写真特性を有する熱現像感光材料の場合には、従来の化学処理フィルムに比べ、現像時の温湿度依存性が大きく、高温高湿で白線幅や網点がつまりやすくなる、あるいは低温低湿で濃度が低下したり白線幅が広がったりするという問題があった。このため、熱現像感光材料において、現像時の温湿度依存性が小さく、写真製版用途に最適な熱現像感光材料を提供することが望まれていた。
米国特許第3,152,904号明細書 米国特許第3,457,075号明細書 特開昭49−52626号公報 特開昭53−116144号公報 特開昭50−151138号公報 特開昭60−61747号公報 特開昭58−28737号公報 D.クロスタボーア(Klosterboer)「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)A」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、J.スタージ(Sturge)、V.ウォールワーズ(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第9章第279頁、1989年)
本発明の解決しようとする第一の課題は、特に写真製版用、中でもスキャナー、イメージセッター用熱現像感光材料において、カブリが低く、Dmax(最高濃度)が高く、かつ、現像時の温湿度依存性が小さい熱現像感光材料を提供することにある。さらに、本発明の解決しようとする第二の課題は環境面、コスト面で有利な水系塗布可能な熱現像感光材料を提供することにある。
上記の課題は、支持体の一方面上に、非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イオンのための還元剤、およびバインダーを含有する熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%〜100モル%であり、かつ非感光性有機銀塩上および近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする熱現像感光材料によって達成された。
また、支持体の一方面上に、非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イオンのための還元剤、およびバインダーを含有する熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%〜100モル%であり、かつ、0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする熱現像感光材料によって、より好ましく達成された。
さらに、支持体の一方面上に、非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イオンのための還元剤、およびバインダーを含有する熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%〜100モル%であり、かつ、0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする熱現像感光材料によって、さらに好ましく達成された。
本発明の熱現像感光材料は、カブリが低く、Dmax(最高濃度)が高く、かつ、現像時の温湿度依存性が小さいという特徴を有する。また、本発明の熱現像感光材料は、環境面、コスト面で有利な水系塗布によって製造することができる。
以下において、本発明の熱現像感光材料の製造方法について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
まず、本発明の熱現像感光材料に用いられる、(i)非感光性有機銀塩上および近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物、(ii)0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物、(iii)0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物について説明する。なお、本明細書では、これら(i)〜(iii)のいずれかに該当する化合物を「本発明の化合物」という。
まず、(i)非感光性有機銀塩上および近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物について説明する。(i)の化合物が感光材料中に存在しない場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上でのみ、物理現像が進行する。(i)の化合物が感光材料中に存在する場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上で起こる物理現像に伴って生成する化学種、例えば現像主薬酸化体との化合物が反応し、非感光性有機銀塩上および近傍に現像開始点を形成可能な化学種が生成する。その化学種が非感光性銀塩、例えばベヘン酸銀上および近傍に現像開始点を形成し、そこから物理現像が起こる。すなわち、(i)の化合物が感光材料中に存在する場合は、露光により潜像が形成したハロゲン化銀上、およびイメージワイズに現像開始点が形成された非感光性有機銀塩上および近傍の両方で物理現像が進行する。
それら状態の例が特開2002−258434号公報の図1に記載されている。当該図1は、(i)の化合物が0.01mol/銀molで感光材料中に存在する場合(A)、および存在しない場合(B)の両方について、現像後の感光材料を厚さ2μmに切削し、その薄片の電子顕微鏡写真を撮影した結果である。撮影対象となった熱現像感光材料は、当該特許明細書の実施例1における実験No.1の熱現像感光材料であり、現像処理は当該実施例1に記載される通りに行った。
次に、(ii)0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物について説明する。現像銀粒子密度の増加量は、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、前記図1に示すような写真を撮影し、単位面積当たりの現像銀粒子の数を数え、その密度を比較することにより得ることができる。本発明の化合物が感光材料中に存在する場合は、該化合物が感光材料中に存在しない場合に比べ、現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する。より好ましい化合物の現像銀粒子密度増加率は500〜3000%である。
次に、(iii)0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物について説明する。本明細書において「カバリングパワー」とは、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、可視濃度を現像銀量(g/m2)で割った値である。本発明の化合物によるカバリングパワーの増加は、前記図1の(A)と(B)の比較からわかるように、より小さな現像銀粒子が数多く形成されることによる。より好ましい化合物のカバリングパワー増加率は150〜500%である。
次に,上記(i)〜(iii)のいずれかに該当する本発明の化合物の具体例として、特開2000−284399号公報に記載の式(H)で表されるヒドラジン誘導体(具体的には同明細書の表1〜表4に記載のヒドラジン誘導体)、特開平10−10672号公報、特開平10−161270号公報、特開平10−62898号公報、特開平9−304870号公報、特開平9−304872号公報、特開平9−304871号公報、特開平10−31282号公報、米国特許第5,496,695号明細書、欧州特許公開EP741,320A号公報に記載のすべてのヒドラジン誘導体、特開2000−284399号公報に記載の式(1)〜(3)で表される置換アルケン誘導体、置換イソオキサゾール誘導体および特定のアセタール化合物、さらには同明細書に記載の式(A)または式(B)で表される環状化合物、具体的には同明細書の化8〜化12に記載の化合物1〜72を挙げることができる。
本発明の化合物としては、特開平11−119372号公報に記載の一般式(1)〜(14)で表される置換アルケン誘導体がより好ましく用いられる。一般式(1)〜(14)で示される置換アルケン誘導体の具体例を以下に示す。
Figure 2005099297
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本発明の熱現像感光材料に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ヨウ化銀含有率が40モル%〜100モル%という高い組成のものであることが重要である。本発明の熱現像感光材料に含まれるヨウ化銀以外の銀塩については特に制限はなく、塩化銀、臭化銀またはチオシアン酸銀や燐酸銀などの有機銀塩から選ぶことができるが、特に臭化銀、塩化銀であることが好ましい。この様なヨウ化銀含有率が高い組成のハロゲン化銀を用いることによって、現像処理後の画像保存性、特に光照射によるカブリの増加が著しく小さい好ましい熱現像感光材料を設計することができる。
現像処理後に光照射下に置いたときの画像保存性の観点からは、ヨウ化銀含有率は80モル%〜100モル%であることがより好ましく、85モル%〜100モル%であることがさらに好ましく、90モル%〜100モル%であることが極めて好ましい。
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。コア部のヨウ化銀含有率が高いコア高ヨウ化銀構造、またはシェル部のヨウ化銀含有率が高いシェル高ヨウ化銀構造も好ましく用いることができる。また、粒子の表面にエピタキシャル部分とした塩化銀や臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
高ヨウ化銀のハロゲン化銀を用いる本発明では、十分な最高光学濃度を達成するために、ハロゲン化銀粒子の粒子サイズを従来の臭化銀や低ヨウド含量のヨウ臭化銀に比べて十分に小さくすることが好ましい。好ましいハロゲン化銀の粒子サイズは5nm〜70nmであり、さらに5nm〜55nmであることが好ましい。特に好ましくは10nm〜45nmである。ここでいう粒子サイズとは、電子顕微鏡により観察した投影面積と同面積の円像に換算したときの直径の平均をいう。
高ヨウ化銀のハロゲン化銀粒子の塗布量は、後述する非感光性有機銀塩の銀1モルに対して好ましくは0.5モル%〜15モル%、より好ましくは0.5モル%〜12モル%、さらに好ましくは0.5モル%〜10モル%である。さらに、1モル%〜9モル%であることがより好ましく、特に好ましくは1モル%〜7モル%である。これらの範囲内であれば、ハロゲン化銀による著しい現像抑制を抑えることができるとともに、低い添加量で十分な現像性を得ることができる。
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号明細書に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物およびハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627号公報、特開2000−347335号公報記載の方法も好ましい。
本発明におけるハロゲン化銀粒子の形状としては、立方体、八面体、十二面体、十四面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に十二面体、十四面体が好ましい。ここでいう十二面体粒子とは、(001)、{1(−1)0}、{101}面を有する粒子で、十四面体粒子とは、(001)、{100}、{101}面を有する粒子である。ここで{100}は、(100)面と等価な面指数を持つ結晶面群を表す。
本発明の沃化銀は任意のβ相およびγ相含有率を取ることができる。上記のβ相とは六方晶系のウルツァイト構造を有する高沃化銀構造を指し、γ相とは立方晶系のジンクブレンド構造を有する高沃化銀構造を指す。
ここでいう平均γ相比率とは、C.R. Berry (ベリー)により提案された手法を用いて決定されるものである。この手法は、粉末X線回折法での沃化銀β相(100)、(101)、(002)とγ相(111)によるピーク比を元にして決定するもので、詳細については例えば、Physical Review, Volume 161, Number 3, Page 848-851, 1967年を参考にすることができる。
沃化銀の平板粒子の形成方法に関しては、特開昭59−119350号公報、特開昭59−119344号公報に記載の方法が好ましく用いられる。12面体、14面体、8面体に関しては、特願2002−081020号明細書、同2002−87955号明細書、同2002−91756号明細書を参考にして調製することができる。
本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は複雑な形態を取り得るが、好ましい形態として例えば、R.L.JENKINS etal. J. Phot. Sci. Vol.28 (1980)のp.164、Fig1に示されているような接合粒子が挙げられる。同Fig.1に示されているような平板状粒子も好ましく用いられる。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J. Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから1×10-3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体およびそれらの添加法については特開平7−225449号公報、特開平11−65021号公報段落番号0018〜0024、特開平11−119374号公報段落番号0227〜0240に記載されている。
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子を用いることが好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)6]4-、[Fe(CN)6]3-、[Ru(CN)6]4-、[Os(CN)6]4-、[Co(CN)6]3-、[Rh(CN)6]3-、[Ir (CN)6]3-、[Cr(CN)6]3-、[Re(CN)6]3-などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n-ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10-5モル〜1×10-2モルが好ましく、より好ましくは1×10-4モル〜1×10-3モルである。
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)64-)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号公報段落番号0046〜0050、特開平11−65021号公報段落番号0025〜0031、特開平11−119374号公報段落番号0242〜0250に記載されている。
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持することが必要であり、分子量は、10,000〜100,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。また、フタル化処理したゼラチンを用いることも好ましい。これらのゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、粒子形成時に使用することが好ましい。
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、未化学増感でもよいが、カルコゲン増感法、金増感法、還元増感法の少なくとも1つの方法で化学増感されるのが好ましい。カルコゲン増感法としては、硫黄増感法、セレン増感法およびテルル増感法が挙げられる。
硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を用い、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いる事ができる。
具体的には、チオ硫酸塩(例えばハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、N−エチル−N´−(4−メチル−2−チアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例えば、チオアセトアミド)、ローダニン類(例えば、ジエチルローダニン、5−ベンジリデン−N−エチルローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例えば、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4−オキソ−オキサゾリジン−2−チオン類、ジスルフィド類またはポリスルフィド類(例えば、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、レンチオニン)、ポリチオン酸塩、元素状硫黄などの公知の硫黄化合物および活性ゼラチンなども用いることができる。特にチオ硫酸塩、チオ尿素類とローダニン類が好ましい。
セレン増感においては、不安定セレン化合物を用い、特公昭43−13489号公報、同44−15748号公報、特開平4−25832号公報、同4−109340号公報、同4−271341号公報、同5−40324号公報、同5−11385号公報、特開平6−51415号公報、同6−175258号公報、同6−180478号公報、同6−208186号公報、同6−208184号公報、同6−317867号公報、同7−92599号公報、同7−98483号公報、同7−140579号公報などに記載されているセレン化合物を用いる事ができる。
具体的には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、トリフルオルメチルカルボニル−トリメチルセレノ尿素、アセチル−トリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例えば、セレノアミド,N,N−ジエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニルートリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例えば、トリ−p−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類、ジアシルセレニド類などを用いればよい。またさらに、特公昭46−4553号公報、同52−34492号公報などに記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン酸塩、セレナゾール類、セレニド類なども用いる事ができる。特に、フォスフィンセレニド類、セレノ尿素類とセレノシアン酸塩が好ましい。
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4−224595号公報、同4−271341号公報、同4−333043号公報、同5−303157号公報、同6−27573号公報、同6−175258号公報、同6−180478号公報、同6−208186号公報、同6−208184号公報、同6−317867号公報、同7−140579号公報、同7−301879号公報、同7−301880号公報などに記載されている不安定テルル化合物を用いる事ができる。
具体的には、フォスフィンテルリド類(例えば、ブチルージイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシージフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニル−N−ベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N´ージメチルエチレンテルロ尿素、N,N´−ジフェニルエチレンテルロ尿素)テルロアミド類、テルロエステル類などを用いれば良い。特に、ジアシル(ジ)テルリド類とフォスフィンテルリド類が好ましく、特に特開平11−65021号公報段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号公報中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
特に本発明のカルコゲン増感においてはセレン増感とテルル増感が好ましく、特にテルル増感が好ましい。
金増感においては、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金増感剤を用いることができる。具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレニドなどでありこれらにくわえて、米国特許第2642361号明細書、同5049484号明細書、同5049485号明細書、同5169751号明細書、同5252455号明細書、ベルギー特許第691857号明細書などに記載の金化合物も用いることができる。またP.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金以外の、白金、パラジュウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いる事もできる。
金増感は単独で用いることもできるが、前記のカルコゲン増感と組み合わせて用いることが好ましい。具体的には金硫黄増感、金セレン増感、金テルル増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金セレンテルル増感、金硫黄セレンテルル増感である。
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
本発明で用いられるカルコゲン増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-1モル、好ましくは10-7〜10-2モル程度を用いる。
同様に、本発明で用いられる金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7モル〜10-2モル、より好ましくは10-6モル〜5×10-3モルである。この乳剤を化学増感する環境条件としてはいかなる条件でも選択可能ではあるが、pAgとしては8以下、好ましくは7.0以下より6.5以下、とくに6.0以下、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上の条件であり、pHとしては3〜10、好ましくは4〜9、温度としては20〜95℃、好ましくは25〜80℃程度である。
本発明においてカルコゲン増感や金増感に加えて、さらに還元増感も併用することができる。とくにカルコゲン増感と併用するのが好ましい。
還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボランが好ましく、その他に塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でもよい。また、乳剤のpHを8以上またはpAgを4以下に保持して熟成することにより還元増感することも好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
還元増感剤の添加量としては、同様に種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7モル〜10-1モル、より好ましくは10-6モル〜5×10-2モルである。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、金増感、カルコゲン増感、の少なくとも1つの方法で化学増感されていることが高感度の熱現像感光材料を設計する点から好ましい。
本発明における熱現像感光材料は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有することが好ましい。該化合物は、単独、あるいは前記の種々の化学増感剤と併用して用いられ、ハロゲン化銀の感度増加をもたらすことができる。
本発明のハロゲン化銀写真感光材料に含有される1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物とは以下のタイプ1、タイプ2から選ばれる化合物である。
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号公報(具体例:28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号公報、特開平11−95355号公報(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号公報(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号明細書、米国特許5,747,236号明細書、欧州特許公開EP786692A1号公報(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許公開EP893732A1号公報、米国特許6,054,260号明細書、米国特許5,994,051号明細書などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(1)(特開2003-114487号公報に記載の一般式(1)と同義)、一般式(2)(特開2003-114487号公報に記載の一般式(2)と同義)、一般式(3)(特開2003-114488号公報に記載の一般式(1)と同義)、一般式(4)(特開2003-114488号公報に記載の一般式(2)と同義)、一般式(5)(特開2003-114488号公報に記載の一般式(3)と同義)、一般式(6)(特開2003-75950号公報に記載の一般式(1)と同義)、一般式(7)(特開2003-75950号公報に記載の一般式(2)と同義)、一般式(8)(特願2003-25886号明細書に記載の一般式(1)と同義)、または化学反応式(1)(特願2003-33446号明細書に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物のうち一般式(9)(特願2003-33446号明細書に記載の一般式(3)と同義)で表される化合物が挙げられる。またこれらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
Figure 2005099297
一般式(1)および(2)中、RED1、RED2はそれぞれ独立に還元性基を表す。R1は炭素原子(C)とRED1とともに5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、もしくはヘキサヒドロ体に相当する環状構造を形成しうる非金属原子団を表す。R2、R3、R4はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Lv1、Lv2はそれぞれ独立に脱離基を表す。EDは電子供与性基を表す。
Figure 2005099297
一般式(3)、(4)および(5)中、Z1は窒素原子とベンゼン環の2つの炭素原子とともに6員環を形成しうる原子団を表す。R5、R6、R7、R9、R10、R11、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R20は水素原子または置換基を表すが、R20がアリール基以外の基を表すとき、R16、R17は互いに結合して芳香族環または芳香族ヘテロ環を形成する。R8、R12はそれぞれ独立にベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m1は0〜3の整数を表し、 m2は0〜4の整数を表す。Lv3、Lv4、Lv5はそれぞれ独立に脱離基を表す。
Figure 2005099297
一般式(6)および(7)中、RED3、RED4はそれぞれ独立に還元性基を表す。R21〜R30はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Z2は−CR111112−、−NR113−、または−O−を表す。R111、R112はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R113は水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
Figure 2005099297
一般式(8)中、RED5は還元性基でありアリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基を表す。R31は水素原子または置換基を表す。Xはアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。Lv6は脱離基でありカルボキシ基もしくはその塩または水素原子を表す。
Figure 2005099297
一般式(9)で表される化合物は脱炭酸を伴う2電子酸化が起こった後に、さらに酸化されることで化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、 R33は水素原子または置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員または6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。一般式(9)中、R32、R33、Z3は化学反応式(1)中のものと同義である。Z5はC−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(10)(特開2003−140287号公報に記載の一般式(1)と同義)、化学反応式(1)(特願2003−33446号明細書に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物であって一般式(11)(特願2003−33446号明細書に記載の一般式(2)と同義)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
RED6−Q−Y 一般式(10)
一般式(10)中、RED6は1電子酸化される還元性基をあらわす。YはRED6が1電子酸化されて生成する1電子酸化体と反応して、新たな結合を形成しうる炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環部位を含む反応性基を表す。QはRED6とYを連結する連結基を表す。
Figure 2005099297
一般式(11)で表される化合物は酸化されることで化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、R33はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員または6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Z5はC−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。一般式(11)中、R32、R33、Z3、Z4は化学反応式(1)中のものと同義である。
タイプ1、2の化合物のうち好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、または「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。ハロゲン化銀への吸着性基とは特開2003−156823号公報の16頁右1行目〜17頁右12行目に記載の基が代表的なものである。分光増感色素の部分構造とは同明細書の17頁右34行目〜18頁左6行目に記載の構造である。
タイプ1、2の化合物として、より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を少なくとも1つ有する化合物」である。さらに好ましくは「同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物」である。吸着性基が単一分子内に2個以上存在する場合には、それらの吸着性基は同一であっても異なっても良い。
吸着性基として好ましくは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、およびベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、および5−メルカプトテトラゾール基である。
吸着性基として、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する場合もまた特に好ましい。ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素テロ環基など)の好ましい例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が挙げられる。
また窒素またはリンの4級塩構造も吸着性基として好ましく用いられる。窒素の4級塩構造としては具体的にはアンモニオ基(トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリール(またはヘテロアリール)アンモニオ基、アルキルジアリール(またはヘテロアリール)アンモニオ基など)または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。リンの4級塩構造としては、ホスホニオ基(トリアルキルホスホニオ基、ジアルキルアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基、アルキルジアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基、トリアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基など)が挙げられる。より好ましくは窒素の4級塩構造が用いられ、さらに好ましくは4級化された窒素原子を含む5員環あるいは6員環の含窒素芳香族ヘテロ環基が用いられる。特に好ましくはピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基が用いられる。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよい。
4級塩の対アニオンの例としては、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、BF4 -、PF6 -、Ph4-等が挙げられる。分子内にカルボキシレート基等に負電荷を有する基が存在する場合には、それとともに分子内塩を形成していても良い。分子内にない対アニオンとしては、塩素イオン、ブロモイオンまたはメタンスルホネートイオンが特に好ましい。
吸着性基として窒素またはリンの4級塩構造有するタイプ1、2で表される化合物の好ましい構造は一般式(X)で表される。
(P−Q1−)i−R(−Q2−S)j 一般式(X)
一般式(X)においてP、Rはそれぞれ独立して増感色素の部分構造ではない窒素またはリンの4級塩構造を表す。Q1、Q2はそれぞれ独立して連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NRN−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、またはこれらの基の組み合わせからなる基を表す。ここにRNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。Sはタイプ(1)または(2)で表される化合物から原子を一つ取り除いた残基である。iとjは1以上の整数であり、i+jが2〜6になる範囲から選ばれるものである。好ましくはiが1〜3、jが1〜2の場合であり、より好ましくはiが1または2、jが1の場合であり、特に好ましくはiが1、jが1の場合である。一般式(X)で表される化合物はその総炭素数が10〜100の範囲のものが好ましい。より好ましくは10〜70、さらに好ましくは11〜60であり、特に好ましくは12〜50である。
本発明のタイプ1、タイプ2の化合物は感光性ハロゲン化銀乳剤調製時、熱現像感光材料製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば感光性ハロゲン化銀粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することもできる。添加位置として好ましくは、感光性ハロゲン化銀粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時から非感光性有機銀塩と混合される前までである。
本発明のタイプ1、タイプ2の化合物は水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高くまたは低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高くまたは低くして溶解し、これを添加しても良い。
本発明のタイプ1、タイプ2の化合物は感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する乳剤層中に使用するのが好ましいが、感光性ハロゲン化銀と非感光性有機銀塩を含有する乳剤層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。本発明の化合物の添加時期は増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10-9〜5×10-1モル、さらに好ましくは1×10-8〜5×10-2モルの割合でハロゲン化銀乳剤層に含有する。
本発明においては、分子内にハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物を含有させることが好ましい。本吸着性レドックス化合物は下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
A−(W)n−B 式(I)
[式(I)中、Aはハロゲン化銀に吸着可能な基(以後、吸着基と呼ぶ)を表し、Wは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Bは還元基を表す。]
式(I)中、Aで表される吸着基とはハロゲン化銀に直接吸着する基、またはハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(またはその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、ジスルフィド基、カチオン性基、またはエチニル基等が挙げられる。
吸着基としてメルカプト基(またはその塩)とは、メルカプト基(またはその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(またはその塩)の置換したヘテロ環基またはアリール基またはアルキル基を表す。ここにヘテロ環基とは、少なくとも5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていても良い。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
吸着基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていても良い。
吸着基としてチオン基とは、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
吸着基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、または配位結合で銀イオンに配位し得る、"−S−"基または"−Se−"基または"−Te−"基または"=N−"基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルルアゾール基、ベンゾテルルアゾール基などが挙げられる。
吸着基としてスルフィド基またはジスルフィド基とは、"−S−"または"−S−S−"の部分構造を有する基すべてが挙げられる。
吸着基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。
吸着基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、該水素原子は置換されていてもよい。
上記の吸着基は任意の置換基を有していてもよい。
さらに吸着基の具体例としては、さらに特開平11−95355号公報の明細書p4〜p7に記載されているものが挙げられる。
式(I)中、Aで表される吸着基として好ましいものは、メルカプト置換ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、2−メルカプト−5−アミノチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズイミダゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えばベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)であり、さらに好ましい吸着基は2−メルカプトベンズイミダゾール基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基である。
式(I)中、Wは2価の連結基を表す。該連結基は写真性に悪影響を与えないものであればどのようなものでも構わない。例えば炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から構成される2価の連結基が利用できる。具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等)、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン基、ナフチレン基等)、−CO−、−SO−、−O−、−S−、−NR1−、これらの連結基の組み合わせ等があげられる。ここでR1は水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、アリール基を表わす。
Wで表される連結基は任意の置換基を有していてもよい。
式(I)中、Bで表される還元基とは銀イオンを還元可能な基を表し、例えばホルミル基、アミノ基、アセチレン基やプロパルギル基などの3重結合基、メルカプト基、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類(レダクトン誘導体を含む)、アニリン類、フェノール類(クロマン-6-オール類、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−オール類、アミノフェノール類、スルホンアミドフェノール類、およびハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ベンゼントリオール類、ビスフェノール類のようなポリフェノール類を含む)、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類等から水素原子を1つ除去した残基が挙げられる。もちろん、これらは任意の置換基を有していても良い。
式(I)中、Bで表される還元基はその酸化電位を、藤嶋昭著「電気化学測定法」(150-208頁、技報堂出版)や日本化学会編著「実験化学講座」第4版(9巻282−344頁、丸善)に記載の測定法を用いて測定することができる。例えば回転ディスクボルタンメトリーの技法で、具体的には試料をメタノール:pH6.5 ブリトン−ロビンソン緩衝液(Britton-Robinson buffer)=10%:90%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、グラッシーカーボン製の回転ディスク電極(RDE)を作用電極に用い、白金線を対極に用い、飽和カロメル電極を参照電極に用いて、25℃、1000回転/分、20mV/秒のスイープ速度で測定できる。得られたボルタモグラムから半波電位(E1/2)を求めることができる。
本発明のBで表される還元基は上記測定法で測定した場合、その酸化電位が約−0.3V〜約1.0Vの範囲にあることが好ましい。より好ましくは約−0.1V〜約0.8Vの範囲であり、特に好ましくは約0〜約0.7Vの範囲である。
式(I)中、Bで表される還元基は好ましくはヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類、フェノール類、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類から水素原子を1つ除去した残基である。
本発明の式(I)の化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマー鎖が組み込まれているものでもよい。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号公報に記載のものが挙げられる。
本発明の式(I)の化合物はビス体、トリス体であっても良い。本発明の式(I)の化合物の分子量は好ましくは100〜10000の間であり、より好ましくは120〜1000の間であり、特に好ましくは150〜500の間である。
以下に式(I)の化合物の具体例を例示するが、本発明で用いることができる式(I)の化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005099297
さらに欧州特許公開EP1308776A2号公報P73〜P87に記載の具体的化合物1〜30、1"−1〜1"−77も本発明の吸着基と還元性基を有する化合物の好ましい例として挙げられる。
本発明の化合物は公知の方法にならって容易に合成することができる。本発明の式(I)の化合物は、1種類の化合物を単独で用いてもよいが、同時に2種以上の化合物を用いることも好ましい。2種類以上の化合物を用いる場合、それらは同一層に添加しても、別層に添加してもよく、またそれぞれ添加方法が異なっていてもよい。
本発明の式(I)の化合物は、ハロゲン化銀乳剤層に添加されることが好ましく、乳剤調製時に添加することがより好ましい。乳剤調製時に添加する場合、その工程中のいかなる場合に添加することも可能であり、その例を挙げると、ハロゲン化銀の粒子形成工程、脱塩工程の開始前、脱塩工程、化学熟成の開始前、化学熟成の工程、完成乳剤調製前の工程などを挙げることができる。またこれらの工程中の複数回にわけて添加することもできる。また乳剤層に使用するのが好ましいが、乳剤層とともに隣接する保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。
好ましい添加量は、上述した添加法や添加する化合物種に大きく依存するが、一般には感光性ハロゲン化銀1モル当たり、1×10-6〜1モル、好ましくは1×10-5〜5×10-1モルさらに好ましくは1×10-4〜1×10-1モルである。
本発明の式(I)の化合物は、水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することができる。この際、酸または塩基によってpHを適当に調整してもよく、また界面活性剤を共存させてもよい。さらに乳化分散物として高沸点有機溶媒に溶解させて添加することもできる。また、固体分散物として添加することもできる。
本発明の熱現像感光材料には増感色素を用いることができる。本発明に用いることができる増感色素としては、ハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。本発明の熱現像感光材料は特に600nm〜900nm、または300nm〜500nmに分光感度ピークを持つように分光増感されていることが好ましい。例えば、特開平10−186572号公報の一般式(II)で表される色素が挙げられ、具体的にはII−6、II−7、II−14、II−15、II−18、II−23、II−25の色素を好ましい色素として例示することができる。また、750〜1400nmの波長領域を分光増感する色素としては、特開平11−119374号公報の一般式(I)で表される色素が挙げられ、具体的には(25)、(26)、(30)、(32)、(36)、(37)、(41)、(49)、(54)の色素を好ましい色素として例示することができる。さらに、J−bandを形成する色素として、米国特許第5,510,236号明細書、同第3,871,887号明細書の実施例5に記載の色素、特開平2−96131号公報、特開昭59−48753号公報に開示されている色素を好ましい色素として例示することができる。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよいが、本発明では単独で用いることが好ましい。
これら増感色素の添加方法は、特開平11−119374号公報の段落番号0106に記載されている方法が挙げられるが、エタノール、メタノールに溶解して添加することが好ましい。
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光層のハロゲン化銀1mol当たり10-6〜1molが好ましく、さらに好ましくは10-4〜10-1molである。
本発明では分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることが好ましい。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開EP587338A号公報、米国特許第3,877,943号明細書、同第4,873,184号明細書に開示されている化合物、複素芳香族あるいは脂肪族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、スチルベン、ヒドラジン、トリアジンから選択される化合物などが挙げられる。
好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報に開示されている複素芳香族メルカプト化合物、複素芳香族ジスルフィド化合物、特開平4−182639号公報の一般式(I)あるいは(II)で表される化合物、特開平10−111543号公報の一般式(I)で表されるスチルベン化合物、特開平11−109547号公報の一般式(I)で表わされる化合物である。特に好ましい強色増感剤は、特開平5−341432号公報のM−1〜M−24の化合物、特開平4−182639号公報のd−1)〜d−14)の化合物、特開平10−111543号公報のSS−01〜SS−07の化合物、特開平11−109547号公報の31、32、37、38、41〜45、51〜53の化合物である。
これらの強色増感剤の添加量は、乳剤層中にハロゲン化銀1mol当たり10-4〜1molの範囲が好ましく、ハロゲン化銀1mol当たり0.001〜0.3molの範囲がより好ましい。
本発明の熱現像感光材料には有機銀塩を用いることができる。本発明で用いる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は、還元可能な銀イオン源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。配位子が4.0〜10.0の範囲の錯体安定度定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5〜70質量%を構成することができる。好ましい有機銀塩として、カルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を挙げることができる。具体的には、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを挙げることができる。
本発明においては、上記の有機酸銀ないしは有機酸銀の混合物の中でも、ベヘン酸銀含有率75mol%以上の有機酸銀を用いることが好ましく、ベヘン酸銀含有率85mol%以上の有機酸銀を用いることがさらに好ましい。ここでベヘン酸銀含有率とは、使用する有機酸銀に対するベヘン酸銀のモル分率を示す。本発明に用いる有機酸銀中に含まれるベヘン酸銀以外の有機酸銀としては、上記の例示有機酸銀を好ましく用いることができる。
本発明に好ましく用いられる有機酸銀は、上記の有機酸のアルカリ金属塩(Na塩、K塩、Li塩等が挙げられる)溶液または懸濁液と硝酸銀を反応させることにより調製される。これらの調製方法については、特開2000−292882号公報の段落番号0019〜0021に記載の方法を用いることができる。
本発明においては、液体を混合するための密閉手段の中に硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液を添加することにより有機酸銀を調製する方法を好ましく用いることができる。具体的には、特開2001−33907号公報に記載されている方法を用いることができる。
本発明においては有機酸銀の調製時に、硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液、あるいは反応液には水に可溶な分散剤を添加することができる。ここで用いる分散剤の種類および使用量については、特開2000−305214号公報の段落番号0052に具体例が記載されている。
本発明に用いる有機酸銀は第3アルコールの存在下で調製することが好ましい。第3アルコールとしては、好ましくは総炭素数15以下の化合物が好ましく、10以下の化合物が特に好ましい。好ましい第3アルコールの例としては、tert−ブタノール等が挙げられるが、本発明で使用することができる第3アルコールはこれに限定されない。
本発明に用いる第3アルコールの添加時期は有機酸銀調製時のいずれのタイミングでもよいが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、本発明で用いる第3アルコールは、有機酸銀調製時の溶媒としての水に対して質量比で0.01〜10の範囲で使用することができるが、0.03〜1の範囲で使用することが好ましい。
本発明に用いることができる有機銀塩の形状やサイズは特に制限されないが、特開2000−292882号公報の段落番号0024に記載のものを用いることが好ましい。有機銀塩の形状は、有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像から求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)は好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。測定方法としては、例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。この測定法での平均粒子サイズとしては0.05μm〜10.0μmの固体微粒子分散物が好ましい。より好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜5.0μm、さらに好ましい平均粒子サイズは0.1μm〜2.0μmである。
本発明に用いる有機銀塩は、脱塩したものであることが好ましい。脱塩法は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、遠心濾過、吸引濾過、限外濾過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知の濾過方法を好ましく用いることができる。限外濾過の方法については、特開2000−305214号公報に記載の方法を用いることができる。
本発明では、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない有機銀塩固体分散物を得る目的で、画像形成媒体である有機銀塩を含み、かつ感光性銀塩を実質的に含まない水分散液を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法を用いることが好ましい。これらの分散方法については特開2000−292882号公報の段落番号0027〜0038に記載の方法を用いることができる。
本発明で用いる有機銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。具体的には、体積荷重平均直径の標準偏差を体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。
本発明に用いる有機銀塩固体微粒子分散物は、少なくとも有機銀塩と水からなるものである。有機銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、有機銀塩の全体に占める割合は5〜50質量%であることが好ましく、特に10〜30質量%の範囲が好ましい。前述の分散助剤を用いることは好ましいが、粒子サイズを最小にするのに適した範囲で最少量使用するのが好ましく、有機銀塩に対して0.5〜30質量%、特に1〜15質量%の範囲が好ましい。
本発明で用いる有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは0.5〜3g/m2であり、最も好ましくは1〜2g/m2である。
本発明にはCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンを非感光性有機銀塩へ添加することが好ましい。Ca、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの非感光性有機銀塩への添加については、ハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましく、具体的には硝酸塩や硫酸塩などの形で添加することが好ましい。ハロゲン化物での添加は処理後の感光材料の光(室内光や太陽光など)による画像保存性、いわゆるプリントアウト性を悪化させるので好ましくない。このため、本発明ではハロゲン化物でない、水溶性の金属塩の形で添加することが好ましい。
本発明に好ましく用いるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加時期としては、該非感光性有機銀塩の粒子形成後であって、粒子形成直後、分散前、分散後および塗布液調製前後など塗布直前までであればいずれの時期でもよく、好ましくは分散後、塗布液調製前後である。
本発明におけるCa、Mg、ZnおよびAgから選ばれる金属イオンの添加量としては、非感光性有機銀1molあたり10-3〜10-1molが好ましく、特に5×10-3〜5×10-2molが好ましい。
本発明の熱現像感光材料は、好ましくは有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質である。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層を有する面の銀1molに対して0.05〜5mol含まれることが好ましく、0.1〜2molで含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は支持体に対して画像形成層側のいかなる層でもよい。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1molに対して0.1〜10molと多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の還元剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6074号公報、同47−1238号公報、同47−33621号公報、同49−46427号公報、同49−115540号公報、同50−14334号公報、同50−36110号公報、同50−147711号公報、同51−32632号公報、同51−1023721号公報、同51−32324号公報、同51−51933号公報、同52−84727号公報、同55−108654号公報、同56−146133号公報、同57−82828号公報、同57−82829号公報、特開平6−3793号公報、米国特許第3,679,426号明細書、同第3,751,252号明細書、同第3,751,255号明細書、同第3,761,270号明細書、同第3,782,949号明細書、同第3,839,048号明細書、同第3,928,686号明細書、同第5,464,738号明細書、独国特許第2,321,328号明細書、欧州特許公開EP692732A号公報などに開示されている還元剤を用いることができる。例えば、フェニルアミドオキシム、2−チエニルアミドオキシムおよびp−フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2'−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル−β−フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル−4−メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p−ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ−アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル−α−シアノ−2−メチルフェニルアセテート、エチル−α−シアノフェニルアセテートなどのα−シアノフェニル酢酸誘導体;2,2'−ジヒドロキシ−1,1'−ビナフチル、6,6'−ジブロモ−2,2'−ジヒドロキシ−1,1'−ビナフチルおよびビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタンに例示されるようなビス−β−ナフトール;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2',4'−ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロンなどの5−ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp−ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオンなど;2,2−ジメチル−7−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジンなどの1,4−ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−tert−ブチル−6−メチルフェノール)、1,1,−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1−アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3−ピラゾリドンおよびある種のインダン−1,3−ジオン;クロマノール(トコフェロールなど)などがある。特に好ましい還元剤は、ビスフェノール、クロマノールである。
本発明で還元剤を用いる場合、それは、水溶液、有機溶媒溶液、粉末、固体微粒子分散物、乳化分散物などいかなる方法で添加してもよいが、この中でも固体微粒子分散物として添加することが好ましい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際には当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657号公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含ませると光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させるうえでも有利になることがある。色調剤は支持体に対して画像形成層側の層に銀1molあたりの0.01〜1molの量含ませることが好ましく、0.02〜0.5mol含ませることがさらに好ましい。また、色調剤は現像時のみ有効に機能するように誘導化されたいわゆるプレカーサーであるとさらに好ましい。
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の色調剤を使用することができる。例えば、特開昭46−6077号公報、同47−10282号公報、同49−5019号公報、同49−5020号公報、同49−91215号公報、同49−91215号公報、同50−2524号公報、同50−32927号公報、同50−67132号公報、同50−67641号公報、同50−114217号公報、同51−3223号公報、同51−27923号公報、同52−14788号公報、同52−99813号公報、同53−1020号公報、同53−76020号公報、同54−156524号公報、同54−156525号公報、同61−183642号公報、特開平4−56848号公報、特公昭49−10727号公報、同54−20333号公報、米国特許第3,080,254号明細書、同第3,446,648号明細書、同第3,782,941号明細書、同第4,123,282号明細書、同第4,510,236号明細書、英国特許第1,380,795号明細書、ベルギー特許第841,910号明細書などに開示される色調剤を用いることができる。色調剤の具体例としては、フタルイミドおよびN−ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン−5−オン、ならびにキナゾリノン、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4−チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,4−ジメルカプトピリミジン、3−メルカプト−4,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールおよび2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N−ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N−(ジメチルアミノメチル)−ナフタレン−2,3−ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N'−ヘキサメチレンビス(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2−(トリブロモメチルスルホニル)−ベンゾチアゾール;ならびに3−エチル−5−[(3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1−メチルエチリデン]−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体(たとえば、4−(1−ナフチル)フタラジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジン、6−イソブチルフタラジン、6−tert−ブチルフタラジン、5,7−ジメチルフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体)もしくは金属塩;フタラジンおよびその誘導体とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン、8−メチル−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンおよび6−ニトロ−1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオンなどのベンズオキサジン−2,4−ジオン;ピリミジンおよび不斉−トリアジン(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシ−4−アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン、および1,4−ジ(o−クロロフェニル)−3,6−ジメルカプト−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)などが好ましく用いられる。特にフタラジン誘導体、フタル酸誘導体が好ましく用いられる。本発明では色調剤として、特開2000−35631号公報に記載の一般式(F)で表されるフタラジン誘導体が最も好ましく用いられる。具体的には同公報に記載のA−1〜A−10が好ましく用いられる。
色調剤は、水あるいは適当な有機溶媒に溶解して用いることが好ましい。当技術分野で周知の可溶化剤を用いて水溶液化して添加することが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。また、適当な有機溶媒に溶解して用いる場合は、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることが好ましい。また、酸性基が結合した化合物の場合は当量のアルカリで中和し、塩として用いることが好ましい。
水への溶解度が低い場合は、乳化分散法、固体分散法で分散して用いることが好ましい。乳化分散を行う場合は、当技術分野で周知の乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して、熱現像感光材料中に用いることが好ましい。固体分散を行う場合は、当技術分野で周知の固体分散法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し、熱現像感光材料中に用いることが好ましい。また、乳化分散、固体分散を行うには当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
本発明の熱現像感光材料にはリンを含む化合物として、五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが特に好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
本発明において好ましく用いることができる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩は、少量で所望の効果を発現するという点から画像形成層あるいはそれに隣接するバインダー層に添加する。
リンを含む化合物および五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(熱現像感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
本発明の熱現像感光材料において、ハロゲン化銀乳剤および/または有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なカブリの生成に対してさらに保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することが好ましい。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038号明細書および同第2,694,716号明細書に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437号明細書および同第2,444,605号明細書に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663号明細書に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135号明細書に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652号明細書に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448号明細書に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405号明細書に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839号明細書に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263号明細書および同第2,597,915号明細書に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665号明細書および同第4,442,202号明細書に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557号明細書および同第4,137,079号明細書、同第4,138,365号明細書および同第4,459,350号明細書に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985号明細書に記載のリン化合物などがある。
本発明の熱現像感光材料は、高感度化やカブリ防止を目的として安息香酸類を含有することが好ましい。本発明で用いる安息香酸類はいかなる安息香酸誘導体でもよいが、好ましい例としては、米国特許第4,784,939号明細書、同第4,152,160号明細書、特開平9−329863号公報、同9−329864号公報、同9−281637号公報などに記載の化合物が挙げられる。安息香酸類は熱現像感光材料のいかなる層に添加してもよいが、支持体に対して画像形成層側の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。安息香酸類の添加は塗布液調製のいかなる工程で行ってもよく、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でもよいが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。安息香酸類の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行ってもよい。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加してもよい。安息香酸類の添加量としてはいかなる量でもよいが、銀1mol当たり1×10-6mol〜2molが好ましく、1×10-3mol〜0.5molがさらに好ましい。
本発明を実施するために必須ではないが、画像形成層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的のために好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。本発明に使用する水銀の添加量としては、塗布された銀1mol当たり好ましくは1×10-9mol〜1×10-3mol、さらに好ましくは1×10-8mol〜1×10-4molの範囲である。
また、特開2000−284399号公報に記載の式(Z)で表されるサリチル酸誘導体がカブリ防止剤として好ましく用いられる。具体的には、同公報に記載の(A−1)〜(A−60)が好ましく用いられる。式(Z)で表されるサリチル酸誘導体の添加量は、Ag1molに対するmol量(mol/molAg)で示して、好ましくは1×10-5〜5×10-1mol/molAg、より好ましくは5×10-5〜1×10-1mol/molAg、さらに好ましくは1×10-4〜5×10-2mol/molAgである。これらは1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤として、ホルマリンスカベンジャーが有効であり、例えば、特開2000−221634号公報に記載の式(S)で表される化合物およびその例示化合物(S−1)〜(S−24)が挙げられる。
本発明に用いるカブリ防止剤は、水あるいは適当な有機溶媒に溶解して用いることができる。水溶液として添加する場合は、当技術分野で周知の可溶化剤を用いることができ、具体的には特開2001−83657号公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。有機溶媒に溶解して用いる場合は、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることが好ましい。また、酸性基が結合した化合物の場合は当量のアルカリで中和し、塩として用いることが好ましい。
水への溶解度が低い場合は、乳化分散法、固体分散法で分散して用いることが好ましい。乳化分散を行う場合は、当技術分野で周知の乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して、熱現像感光材料中に用いることが好ましい。固体分散を行う場合は、当技術分野で周知の固体分散法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し、熱現像感光材料中に用いることが好ましい。また、乳化分散、固体分散を行うには当技術分野で周知の分散助剤を用いることが好ましく、具体的には特開2001−83657号公報の段落番号91〜101に記載の水溶性ポリマー、界面活性剤が好ましく用いられる。
本発明に用いるカブリ防止剤は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。画像形成層は還元可能な銀塩(有機銀塩)を含有する層であり、好ましくはさらに感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層であることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御することや、現像前後の保存性を向上させることなどを目的としてメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることが好ましい。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでもよいが、Ar−SM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、アルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアリール(置換基を有していてもよい)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2'−ジチオビス−(ベンゾチアゾール)、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−2−イミダゾールチオール、2−メルカプトイミダゾール、1−エチル−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリノン、7−トリフルオロメチル−4−キノリンチオール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジンモノヒドレート、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−ヒドキロシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−メチルピリミジンヒドロクロリド、3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、3−(5−メルカプトテトラゾール)−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−メチル−N'−{3−(5−メルカプトテトラゾリル)フェニル}ウレア、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが好ましく用いられる。
これらのメルカプト化合物の添加量としては画像形成層中に銀1mol当たり0.001〜1.0molの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1mol当たり0.001〜0.3molの量である。
本発明の熱現像感光材料では、アンモニアなどの揮発性の塩基は揮発しやすく、塗布する工程や熱現像時だけでなく、保存中にも揮発するため、膜内に存在することは好ましくなく、NH4 +含有量は支持体1m2当たりの塗布量で、0.06mmol以下であることが好ましい。より好ましくは、0.03mmol以下である。膜中のNH4 +量の定量は、東ソー社製8000タイプイオンクロマト測定装置(電気導電度法)および分離カラムとして、東ソー社製TSKgel IC−Cation、ガードカラムとして、TSK guard column IC−Cを用いて測定した。溶離液には、2mM硝酸水溶液を用い、1.2ml/minの流量で行った。また、カラム恒温槽温度は40℃で行った。
熱現像感光材料からのNH4 +の抽出は、抽出液として、酢酸:イオン交換水=1:148混合溶液を用い、上記抽出液5mlに熱現像感光材料1x3.5cm2の大きさの熱現像感光材料を2時間浸して行い、抽出後、0.45μmのフィルターで濾過した溶液を測定した。
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸や、不揮発性の塩基を用いることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理前の膜面pHは6.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。
なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284339号公報の段落番号0123に記載されている。
本発明の熱現像感光材料は、支持体上に、有機銀塩、還元剤および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層を有し、画像形成層上には少なくとも1層の保護層が設けられていることが好ましい。また、本発明の熱現像感光材料は支持体に対して画像形成層と反対側(バック面)に少なくとも1層のバック層を有することが好ましい。
本発明で用いるバインダーとしては、天然ポリマー合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。
親水性でも疎水性でもよいが、本発明においては、熱現像後のカブリを低減させるために、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。好ましいバインダーとしては、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタンなどがあげられる。その中でもポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートは特に好ましく用いられる。
熱現像感光材料の表面を保護したり擦り傷を防止するために、画像形成層の外側に保護層を有することが好ましい。これらの保護層に用いられるバインダーは画像形成層に用いられるバインダーと同じ種類でも異なった種類でもよい。好ましくは擦り傷や相の変形等を防止するために画像形成層を構成するバインダーポリマーよりも軟化点の高いポリマーが用いられ、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等がこの目的にかなっている。
本発明で用いるバインダーとして、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた塗布をおこなう場合には、以下に述べるポリマーラテックスを用いることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料の感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層のうち少なくとも1層は以下に述べるポリマーラテックスを全バインダーの50質量%以上用いた画像形成層であることが好ましい。また、ポリマーラテックスは画像形成層だけではなく、保護層やバック層に用いてもよく、特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。ただしここで言う「ポリマーラテックス」とは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散されたものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散されたものなどいずれでもよい。なお本発明で用いるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。分散粒子の平均粒子サイズは1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒子サイズ分布に関しては特に制限は無く、広い粒子サイズ分布を持つものでも単分散の粒子サイズ分布を持つものでもよい。
本発明で用いるポリマーラテックスとしては、通常の均一構造のポリマーラテックス以外の、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
本発明で用いるバインダーに好ましく用いるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は保護層、バック層と画像形成層とでは好ましい範囲が異なる。画像形成層にあっては熱現像時に写真有用素材の拡散を促すため、−30〜40℃であることが好ましい。保護層やバック層に用いる場合には種々の機器と接触するために25〜70℃のガラス転移温度が好ましい。
本発明で用いるポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は−30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加することが好ましい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
本発明で用いるポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体などが挙げられる。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでもよい。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよい。好ましいポリマーは直鎖のランダムコポリマーである。ポリマーの分子量は数平均分子量で5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜100,000程度が好ましい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く、好ましくない。
本発明の熱現像感光材料の画像形成層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに具体的には、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸=33.5/50/16.5(質量%)のコポリマーラテックス、メチルメタクリレート/ブタジエン/イタコン酸=47.5/47.5/5(質量%)のコポリマーラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸=95/5(質量%)のコポリマーラテックスなどが挙げられる。また、このようなポリマーは市販もされていて、例えばアクリル樹脂の例として、セビアンA−4635,46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol LX811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)、VONCORT−R3340、R3360、R3370、4280(以上大日本インキ化学(株)製)など、ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂としてはHYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂としてはLACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol LX410、430,435、438C(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂としてはG351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂としてはL502、L513(以上旭化成工業(株)製)、アロンD7020、D504、D5071(以上三井東圧(株)製)など、オレフィン樹脂としてはケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いてもよいが、単独で用いることが好ましい。
画像形成層には全バインダーの50質量%以上として上記ポリマーラテックスが好ましく用いられるが、70質量%以上として上記ポリマーラテックスが用いられることがさらに好ましい。
画像形成層には必要に応じて全バインダーの50質量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下、さらには15質量%以下が好ましい。
画像形成層は水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。具体的な溶媒組成の例としては以下のようなものがある。水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/エタノール=90/10、水/イソプロパノール=90/10、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=90/5/5。(ただし数字は質量%を表す。)
画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加することが好ましい。
さらに、保護層用のバインダーとして、特開2000−267226号公報の段落番号0025〜0029に記載の有機概念図に基づく無機性値を有機性値で割ったI/O値の異なるポリマーラテックスの組み合わせを好ましく用いることができる。
本発明においては必要に応じて、特開2000−267226号公報の段落番号0021〜0025に記載の可塑剤(例、ベンジルアルコール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレートなど)を添加して、造膜温度をコントロールすることができる。また、特開2000−267226号公報の段落番号0027〜0028に記載の如くポリマーバインダー中に親水性ポリマーを、塗布液中に水混和性の有機溶媒を添加することができる。
それぞれの層には、特開2000−196783号公報の段落番号0023〜0041に記載の官能基を導入した第一のポリマーラテックスとこの第一のポリマーラテックスと反応しうる官能基を有する架橋剤および/または第二のポリマーラテックスを用いることもできる。
上記の官能基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、N−メチロール基、オキサゾリニル基など、架橋剤としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メチロ−ル化合物、ヒドロキシ化合物、カルボキシル化合物、アミノ化合物、エチレンイミン化合物、アルデヒド化合物、ハロゲン化合物などから選ばれる。架橋剤の具体例として、イソシアネート化合物としてヘキサメチレンイソシアネート、デュラネートWB40−80D、WX−1741(旭化成工業(株)製)、バイヒジュール3100(住友バイエルウレタン(株)製)、タケネートWD725(武田薬品工業(株)製)、アクアネート100、200(日本ポリウレタン(株)製)、特開平9−160172号公報記載の水分散型ポリイソシアネート;アミノ化合物としてスミテックスレジンM−3(住友化学工業(株)製);エポキシ化合物としてデナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製);ハロゲン化合物として2,4ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウムなどが挙げられる。
画像形成層用の全バインダー量は0.2〜30g/m2が好ましく、1.0〜15g/m2がより好ましい。
保護層用の全バインダー量は、本発明に好ましく用いられる膜厚3μm以上を達成する上で必要な量として、1〜10.0g/m2が好ましく、2〜6.0g/m2がより好ましい。
本発明の熱現像感光材料の保護層の膜厚は、3μm以上が好ましく、4μm以上がさらに好ましい。保護層膜厚の上限としては特に制限はないが、塗布乾燥のことを考慮し、10μm以下、さらには8μm以下が好ましい。
これらの各層は、2層以上設けられる場合がある。画像形成層が2層以上である場合は、すべての層のバインダーとしてポリマーラテックスを用いることが好ましい。また、保護層は画像形成層上に設けられる層であり2層以上存在する場合もあるが、少なくとも1層、特に最外層の保護層にポリマーラテックスが用いられることが好ましい。
本発明の画像形成層を有する面のベック平滑度は、4000秒以下であり、より好ましくは500秒〜2000秒である。
ベック平滑度は、保護層にマット剤を用い、マット剤の粒子サイズ&含有量を適宜変化させることによってコントロールすることができる。
保護層に用いられるマット剤は、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載のものを用いることができる。好ましいマット剤のサイズは、平均粒子サイズが3〜10μm、さらに5〜8μmが好ましい。分散度(標準偏差÷平均粒子サイズ×100)は、30%以下が好ましく、さらに、15%以下が好ましい。
本発明の熱現像感光材料は、支持体に対し画像形成層を有する側と反対側に少なくとも1層のバック層を有し、その最外層に、水性ポリエステル樹脂とマット剤を含有することが好ましい。最外層に使用される水性ポリエステル樹脂は、水性基を有するポリエステルであって、水溶性あるいは水分散性を有するものをいう。
本発明で用いられる水性ポリエステル樹脂は、水分散されたラテックスであっても、有機溶媒に均一溶解された樹脂でも良い。本発明で用いられる水性ポリエステル樹脂は、平均分子量が4,000〜150,000であるものが好ましい。
水性ポリエステル樹脂は公知の製造技術によりジカルボン酸とジオールとをエステル化(エステル交換)させながら重縮合させることによって製造されるが、その具体的な方法についてはなんら限定されるものではない。
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸またはそのエステルを主体とすることが好ましい。これは、芳香族ジカルボン酸の芳香核が、疎水性のプラスチックと親和性が大きいために密着性が向上する利点があるからである。特にテレフタル酸を用いた水性ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルの成型物に対して密着性が大きいため、好ましい水性ポリエステル樹脂である。
本発明に使用される水性ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、上記のような芳香族ジカルボン酸、またはそのエステルを使用することが好ましいが、これら以外にアジピン酸、コハク酸、セバチン酸、ドデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシルジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸またはこれらのエステルを、ジカルボン酸成分としてもしくはその一部として使用することもできる。
エステルを使用する場合には、メチルエステル、エチルエステル等の低級アルキルエステルを使用することが好ましい。これらのエステルはモノエステルでもジエステルでも差支えない。
一方、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール類が使用される。
本発明で用いられる水性ポリエステルは、水溶性あるいは水分散性を付与するために分子中に親水基としてスルホン酸塩基あるいはカルボン酸塩基を含有するように重合して調製したものであることが好ましい。スルホン酸塩を含有させるためには、例えば5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分をジカルボン酸成分の一部として用いる方法が挙げられる。その使用量はジカルボン酸成分中に2〜15モル%が好ましい。
カルボン酸塩を含有させるための具体例としては、ポリエステル樹脂の製造時に縮合酸成分として3官能以上の多価カルボン酸を用いる方法、ポリエステル樹脂に重合性の不飽和カルボン酸をグラフトする方法などによりカルボン酸含有のポリエステルを作製し、アルカリ金属、各種アミン類、アンモニウム系化合物等とともに水溶性塩を形成する物質との塩類とする方法が挙げられる。
水性ポリエステル樹脂中のカルボン酸塩の量は、生成したポリエステル樹脂の酸価が15〜250KOHmg/gの間となる量であることが好ましい。
本発明で用いる水性ポリエステル樹脂は、分子量が4,000〜150,000であることが好ましい。分子量を4,000以上にすることによって、耐水性、耐ブロッキング性、密着性等の樹脂物性を高めることができる傾向がある。また、150,000以下にすることによって、水への均一な溶解もしくは分散を行い易くし、時間の経過とともにゲル化しないようにできる傾向がある。水性ポリエステル樹脂の分子量は5,000〜50,000であることが特に好ましい。
本発明で用いる水性ポリエステル樹脂は、通常は、水溶液あるいは水分散液にして用いる。水分散液にする手段としては、スルホン酸塩含有ポリエステル樹脂の場合は、攪拌下に好ましくは50〜90℃の温水に溶解若しくは分散させる方法を採用することが好ましい。このとき、樹脂の溶解もしくは分散を容易にするために水溶性有機溶剤を併用してもよい。水溶性有機溶剤としては、低級アルコール類、多価アルコール類およびそのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類などが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等を使用することができる。
また、カルボン酸塩含有ポリエステル樹脂の場合は、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、各種アミン類等のアルカリ性化合物を添加した好ましくは50〜90℃の温水に、攪拌下に溶解もしくは分散させることができる。この場合も上記水溶性有機溶剤を併用してもよい。
具体的には、ペスレジンA515G、A615G、A615GW(以上高松油脂(株)製)、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上イーストマンケミカル製)などが挙げられる。また、乳化分散に適したポリエステル重合体としては、バイロン200、103、300、500、600(以上東洋紡(株)製)などが挙げられる。なかでも、スルホン酸基を導入した水性ポリエステル-アクリル複合樹脂が特に好ましい。
バック層用の全バインダー量は0.01〜10.0g/m2が好ましく、0.05〜5.0g/m2がより好ましい。
最外層のバインダー量は、特に0.5〜2.0g/m2が好ましい。
本発明におけるバック層の最外層に含有させるマット剤は、特開平11−84573号公報の段落番号0052〜0059に記載のものを用いることができる。好ましいマット剤の平均粒子サイズは4〜8μmであり、分散係数は30%以下が好ましく、さらに好ましくは20%以下である。
ここで分散係数とは、粒子サイズの標準偏差を平均粒子サイズで割った値の百分率(%)(変動係数)として定義されるものである。
本発明の熱現像感光材料のバック層を有する面のベック平滑度は、2000秒以下であることが好ましく、200秒〜1000秒であることがより好ましく、300秒〜800秒であることがさらに好ましい。
本発明におけるベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
本発明では、バック層の塗布方式として、エクストルージョン塗布、スライドビード塗布、カーテン塗布、ロッド塗布などがあるが、ロッドの周りにピアノ線またはステンレス線を密に巻いた薄層塗布に適したロッドコーターを用いることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料にはフッ素系界面活性剤を好ましく含有させることができる。
本発明に有用なフッ素系界面活性剤は、全部または一部がフッ素原子で置換されている炭素原子数が2〜20の炭化水素鎖と、親水性基、例えば金属塩のアニオン性基、第4級オニウム塩のアニオン基、ポリアルキレンオキシド基、ベタイン、第4級アンモニウムカチオン基等を有する化合物で、例えば英国特許第1,330,356号明細書、同第1,542,631号明細書、米国特許第3,666,478号、同第3,888,678号明細書、特公昭52−26687号公報、特開昭48−43130号公報、同49−46733号公報、同51−32322号公報、特開平2−12145号公報、同3−24657号公報、特公平3−27099号公報に記載されているフッ素系界面活性剤を挙げることができる。以下に本発明に有用なフッ素系界面活性剤の具体例を示すが、本発明で用いることができるフッ素系界面活性剤はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005099297
Figure 2005099297
フッ素系界面活性剤の添加量は、熱現像感光材料の片面1m2当たり0.1〜100mgであり、好ましくは0.5〜50mgである。
本発明の熱現像感光材料の最外層には、滑り剤を含有させることができる。
有用な滑り剤としては、例えば英国特許第955,061号明細書、同第1,143,118号明細書、米国特許第3,042,522号明細書、同第3,080,317号明細書、同第4,004,927号明細書、同第4,047,958号明細書、同第3,489,576号明細書、特開昭60−140341号公報に記載のシリコン系滑り剤、米国特許第2,454,043号明細書、同第2,732,305号明細書、同第2,976,148号明細書、同第3,206,311号明細書、独国特許第1,284,295号明細書、同第1,284,294号明細書に記載の高級脂肪酸系、高級脂肪アルコール系、高級脂肪酸アミド系滑り剤、英国特許第1,263,722号明細書、米国特許第3,933,516号明細書に記載の金属石鹸、米国特許第2,588,765号明細書、同第3,121,060号明細書、英国特許第1,198,387号明細書に記載の高級脂肪酸エステル系、高級脂肪アルコールのエーテル系滑り剤、米国特許第3,502,437号明細書、同第3,042,222号明細書に記載のタウリン系滑り剤等を挙げることができる。以下に具体例を示すが、本発明で用いることができる滑り剤はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005099297
Figure 2005099297
Figure 2005099297
滑り剤の使用量は、最外層のバインダー塗布量、マット剤の種類等により最適量は異なるが、通常、熱現像感光材料の片面1m2当たり5〜200mgであり、好ましくは15〜150mgである。
本発明において、特開2000−171935号公報、特開2000−47083号公報に記載のように予備加熱部を対向ローラーで搬送し、熱現像処理部は画像形成層を有する側をローラーの駆動により、その反対側のバック面を平滑面に滑らせて搬送する熱現像処理装置を用いることができる。このとき、良好な搬送性を付与するためには、現像処理温度における熱現像機の平滑面部材とバック面との動摩擦係数(μb)は小さいことが望ましい。
本発明において熱現像処理温度での熱現像処理機部材と画像形成層を有する面および/またはその反対面の最外層の滑り性は、最外層に滑り剤を含有させて調整することができる。
本発明の熱現像感光材料には、種々の支持体を用いることができる。典型的な支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、硝酸セルロース、セルロースエステル、ポリビニルアセタール、シンジオタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、両面がポリエチレンで被覆された紙支持体などが挙げられる。このうち二軸延伸したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)が強度、寸法安定性、耐薬品性などの点から好ましい。支持体の厚みは下塗り層を除いたベース厚みで90〜180μmであることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料に用いる支持体としては、特開平10−48772号公報、特開平10−10676号公報、特開平10−10677号公報、特開平11−65025号公報、特開平11−138648号公報に記載の二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
このような熱処理後における支持体の120℃、30秒加熱による寸法変化率は縦方向(MD)が−0.03%〜+0.01%、横方向(TD)が0〜0.04%であることが好ましい。
また、目的に応じて、透明な支持体を特に選択して用いることができる。
本発明の熱現像感光材料は、塩化ビニリデン共重合体を含有する層で両面が被覆されたポリエステル支持体を用いることが好ましい。
本発明に用いられる塩化ビニリデン共重合体は、特開昭64−20544号公報、特開平1−180537号公報、特開平1−209443号公報、特開平1−285939号公報、特開平1−296243号公報、特開平2−24649号公報、特開平2−24648号公報、特開平2−184844号公報、特開平3−109545号公報、特開平3−137637号公報、特開平3−141346号公報、特開平3−141347号公報、特開平4−96055号公報、米国特許第4,645,731号明細書、特開平4−68344号公報、特許第2,557,641号公報の2頁右欄20行目〜3頁右欄30行目、特開2000−39684号公報の段落番号0020〜0037、特開2000−47083号公報の段落番号0063〜0080に記載の塩化ビニリデン単量体の繰り返し単位を70質量%以上含有する塩化ビニリデン共重合体を挙げることができる。
塩化ビニリデン単量体の繰り返し単位が70質量%以上であれば、十分な防湿性が得られ、熱現像後の時間経過における寸法変化を十分に抑えることができる。塩化ビニリデン単量体の繰り返し単位は70〜99.9質量%であることがより好ましい。また、塩化ビニリデン共重合体は、塩化ビニリデン単量体のほかの構成繰り返し単位としてカルボキシル基含有ビニル単量体の繰り返し単位を含むことが好ましい。塩化ビニル単量体のみでは、重合体(ポリマー)が結晶化してしまい、防湿層を塗設する際に均一な膜を作り難くなることがあるためであり、また重合体(ポリマー)の安定化のためにはカルボキシル基含有ビニル単量体が有効だからである。カルボキシル基含有ビニル単量体の繰り返し単位は、0.1〜5質量%であることが好ましい。
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の分子量は、質量平均分子量で45,000以下であることが好ましく、さらには10,000〜45,000であることが好ましい。分子量が大きくなると塩化ビニリデン共重合体層とポリエステル等の支持体層との接着性が悪化してしまう傾向がある。
本発明で用いる塩化ビニリデン共重合体の含有量は、塩化ビニリデン共重合体を含有する層の片面当たりの合計膜厚として0.3μm以上であることが好ましく、0.3μm〜4μmであることがより好ましい。
なお、塩化ビニリデン共重合体含有層は、支持体に直接塗設してもよいし、支持体と最外層の間の中間層として塗設してもよい。通常は片面ごとに1層ずつ設けられるが、場合によっては2層以上設けてもよい。2層以上設けるときは、塩化ビニリデン共重合体量が合計で上記の範囲となるようにすればよい。
このような層には塩化ビニリデン共重合体のほか、架橋剤やマット剤などを含有させることが好ましい。
支持体には、必要に応じて、ポリエステル、ゼラチンをバインダーとする下塗り層を塗布することが好ましい。これらの下塗り層は2層以上設けることが好ましく、また支持体に対して両面に設けることが好ましい。下塗り層の厚み(1層当たり)は一般に0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜1μmである。
本発明の製造方法において塩化ビニリデン共重合体を用いる場合は、塩化ビニリデン共重合体を有機溶媒に溶かした形態にしても、ラテックスの水分散物にした形態にしてもよいが、ラテックスの水分散物の形態にすることが好ましい。この場合、均一構造のポリマー粒子のラテックスであっても、コア部とシェル部で組成が異なるいわゆるコア−シェル構造のポリマー粒子のラテックスであってもよい。
ラテックス中のポリマー粒子の粒子サイズ等については、前述の画像形成層や保護層のバインダーに用いられるものと同様である。
塩化ビニリデン共重合体の単量体単位の配列については限定されず、周期、ランダム、ブロック等のいずれであってもよい。
本発明の製造方法で用いることができる塩化ビニリデン共重合体の具体例として以下のものを挙げることができる。ここで( )内の数字は質量比を表す。また平均分子量は重量平均分子量を表す。
V−1 塩化ビニリデン:メチルアクリレート:アクリル酸(90:9:1)のラテックス(平均分子量42000)
V−2 塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:メタクリル酸(87:4:4:4:1)のラテックス(平均分子量40000)
V−3 塩化ビニリデン:メチルメタクリレート:グリシジルメタクリレート:メタクリル酸(90:6:2:2)のラテックス(平均分子量38000)
V−4 塩化ビニリデン:エチルメタクリレート:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:アクリル酸(90:8:1.5:0.5)のラテックス(平均分子量44000)
V−5 コアシェルタイプのラテックス(コア部90質量%、シェル部10質量%)
コア部 塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:アクリル酸(93:3:3:0.9:0.1)
シェル部 塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:アクリル酸(88:3:3:3:3)(平均分子量38000)
V−6 コアシェルタイプのラテックス(コア部70質量%、シェル部30質量%)
コア部 塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:メタクリル酸(92.5:3:3:1:0.5)
シェル部 塩化ビニリデン:メチルアクリレート:メチルメタクリレート:アクリロニトリル:メタクリル酸(90:3:3:1:3)(平均分子量20000)
本発明の製造方法では、塩化ビニリデン共重合体を単独で用いても2種以上併用してもよい。
本発明の熱現像感光材料には、ゴミ付着の減少、スタチックマーク発生防止、自動搬送工程での搬送不良防止などの目的で、特開平11−84573号公報の段落番号0040〜0051に記載の導電性金属酸化物および/またはフッ素系界面活性剤を用いて帯電防止することが好ましい。導電性金属酸化物としては、米国特許第5,575,957号明細書、特開平11−223901号公報の段落番号0012〜0020に記載のアンチモンでドーピングされた針状導電性酸化錫、特開平4−29134号公報に記載のアンチモンでドーピングされた繊維状酸化錫が好ましく用いられる。
金属酸化物含有層の表面比抵抗(表面抵抗率)は25℃、相対湿度20%の雰囲気下で1012以下、好ましくは1011Ω以下がよい。これにより良好な帯電防止性が得られる。このときの表面抵抗率の下限は特に制限されないが、通常107Ω程度である。
本発明では水溶性ポリマーが塗布性付与のための増粘剤として好ましく利用され、天然物でも合成ポリマーでもよく、その種類は特に限定されない。具体的には、天然物としてはデンプン類(コーンスターチ、デンプンなど)、海藻(寒天、アルギン酸ナトリウムなど)、植物性粘着物(アラビアゴムなど)、動物性タンパク(にかわ、カゼイン、ゼラチン、卵白など)、発酵粘着物(プルラン、デキストリンなど)などであり、半合成ポリマーであるデンプン質(可溶性デンプン、カルボキシルデンプン、デキストランなど)、セルロース類(ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)も挙げられ、さらに合成ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレンイミン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリビニルスルフィン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、アクリル酸またはその共重合体等、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体など)などである。
これらの中でも好ましく用いられる水溶性ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デキストラン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸またはその共重合体などであり、特に増粘剤として好ましく利用される。
これらでも特に好ましい増粘剤としては、ゼラチン、デキストラン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸またはその共重合体、ポリアクリル酸またはその共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体などである。これらの化合物は、「新・水溶性ポリマーの応用と市場」(株式会社シーエムシー発行、長友新治編集、1988年11月4日発行)に詳細に記載されている。
増粘剤としての水溶性ポリマーの使用量は、塗布液に添加した時に粘度が上昇すれば特に限定されない。一般に液中の濃度は0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。これらによって得られる粘度は、初期の粘度からの上昇分として1〜200mPa・sが好ましく、より好ましくは5〜100mPa・sである。なお、粘度はB型回転粘度計で25℃で測定した値を示す。塗布液などへの添加に当たっては、一般に増粘剤はできるだけ希薄溶液で添加することが望ましい。また添加時は十分な攪拌を行うことが好ましい。
本発明で用いる界面活性剤について以下に述べる。本発明で用いる界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤、写真性コントロール剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を適宜選択して使用することによってそれらの目的は達成することができる。本発明で用いる界面活性剤は、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)のいずれも使用できる。
好ましいノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリグリシジルやソルビタンをノニオン性親水性基とする界面活性剤を挙げることができ、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステルを挙げることができる。
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩を挙げることができ、代表的なものとしては脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニールエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物などを挙げることができる。
カチオン系界面活性剤としてはアミン塩、4級アンモニウム塩、ピリジウム塩などを挙げることができ、第1〜第3脂肪アミン塩、第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジウム塩、アルキルイミダゾリウム塩など)を挙げることができる。
ベタイン系界面活性剤としてはカルボキシベタイン、スルホベタインなどを挙げることができ、N−トリアルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタインなどを挙げることができる。
これらの界面活性剤は、「界面活性剤の応用」(幸書房、刈米孝夫著、昭和55年9月1日発行)に記載されている。本発明においては、好ましい界面活性剤はその使用量において特に限定されず、目的とする界面活性特性が得られる量であればよい。
以下に界面活性剤の具体例を記すが、これに限定されるものではない(ここで、−C64−はフェニレン基を表わす)。
WA−1: C16H33(OCH2CH2)10OH
WA−2: C9H19-C6H4-(OCH2CH2)12OH
WA−3: ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
WA−4: トリ(イソプロピル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−5: トリ(イソブチル)ナフタレンスルホン酸ナトリウム
WA−6: ドデシル硫酸ナトリウム
WA−7: α−スルファコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル ナトリウム塩
WA−8: C8H17-C6H4-(CH2CH2O)3(CH2)2SO3K
WA−10: セチルトリメチルアンモニウム クロライド
WA−11: C11H23CONHCH2CH2N(+)(CH3)2-CH2COO(-)
本発明の好ましい態様においては、画像形成層および保護層に加えて、必要に応じて中間層を設けてもよい。生産性の向上などを目的として、これらの複数の層は水系において同時重層塗布することが好ましい。塗布方式はエクストルージョン塗布、スライドビード塗布、カーテン塗布などがあるが、特開2000−2964号公報の図1に示されるスライドビード塗布方式が特に好ましい。
ゼラチンを主バインダーとして用いる熱現像感光材料の場合は、コーティングダイの下流に設けられている第一乾燥ゾーンで急冷され、その結果、ゼラチンのゲル化が起こり、塗布膜は冷却固化される。冷却固化されて流動の止まった塗布膜は続く第二乾燥ゾーンに導かれ、これ以降の乾燥ゾーンで塗布液中の溶媒が揮発され、成膜される。第二乾燥ゾーン以降の乾燥方式としては、U字型のダクトからローラー支持された支持体に噴流を吹き付けるエアーループ方式や円筒状のダクトに支持体をつるまき状に巻き付けて搬送乾燥する、つるまき方式(エアーフローティング方式)などが挙げられる。
バインダーの主成分がポリマーラテックスである塗布液を用いて層形成を行うときには、急冷では塗布液の流動を停止させることができないため、第一乾燥ゾーンのみでは予備乾燥が不十分である場合もある。この場合は、ハロゲン化銀写真感光材料で用いられている様な乾燥方式では流れムラや乾燥ムラが生じ、塗布面状に重大な欠陥を生じやすい。
本発明における好ましい乾燥方式は、特開2000−002964号公報に記載されているような第一乾燥ゾーン、第二乾燥ゾーンを問わず、少なくとも恒率乾燥が終了するまでの間は水平乾燥ゾーンで乾燥させる方式である。塗布直後から水平乾燥ゾーンに導かれるまでの支持体の搬送は、水平搬送であってもなくてもどちらでもよく、塗布機の水平方向に対する立ち上がり角度は0〜70°の間にあればよい。また、本発明における水平乾燥ゾーンとは、支持体が塗布機の水平方向に対して上下に±15°以内に搬送されればよく、水平搬送を意味するものではない。
本発明における恒率乾燥とは、液膜温度が一定で流入する熱量全てが溶媒の蒸発に使用される乾燥過程を意味する。減率乾燥とは、乾燥末期になると種々の要因(水分移動の材料内部拡散が律速になる、蒸発表面の後退など)により乾燥速度が低下し、与えられた熱が液膜温度上昇にも使用される乾燥過程を意味する。恒率過程から減率過程に移行する限界含水率は200〜300%である。恒率乾燥が終了する時には、流動が停止するまで十分乾燥が進むため、ハロゲン化銀写真感光材料の様な乾燥方式も採用することができるが、本発明においては恒率乾燥後も最終的な乾燥点まで水平乾燥ゾーンで乾燥させることが好ましい。
画像形成層および/または保護層を形成する時の乾燥条件は、恒率乾燥時の液膜表面温度がポリマーラテックスの最低造膜温度(MTF;通常ポリマーのガラス転移温度Tgより3〜5℃高い)以上にすることが好ましい。通常は製造設備の制限より25℃〜40℃にすることが多い。また、減率乾燥時の乾球温度は支持体のTg未満の温度(PETの場合通常80℃以下)が好ましい。本明細書における液膜表面温度とは、支持体に塗布された塗布液膜の溶媒液膜表面温度を言い、乾球温度とは乾燥ゾーンの乾燥風の温度を意味する。
恒率乾燥時の液膜表面温度が低くなる条件で乾燥した場合、乾燥が不十分になりやすい。このため特に保護層の造膜性が著しく低下し、膜表面に亀裂が生じやすくなる。また、膜強度も弱くなり、露光機や熱現像機での搬送中に傷がつきやすくなるなどの重大な問題が生じやすくなる。
一方、液膜表面温度が高くなる条件で乾燥した場合は、主としてポリマーラテックスから構成される保護層は速やかに皮膜を形成するが、その一方で画像形成層などの下層は流動性が停止していないので、表面に凹凸が発生しやすくなる。また、支持体(ベース)にTgよりも高い過剰の熱がかかると、熱現像画像記録材料の寸度安定性、耐巻き癖性も悪くなる傾向にある。
下層を塗布乾燥してから上層を塗布する逐次塗布においても同様であるが、特に、下層の乾燥前に上層を塗布して、両層を同時に乾燥する同時重層塗布を行うための塗布液物性としては、画像形成層の塗布液と保護層の塗布液とのpH差が2.5以下であることが好ましく、このpH差は小さい程好ましい。塗布液のpH差が大きくなると塗布液界面でミクロな凝集が生じやすくなり、長尺連続塗布時に塗布筋などの重大な面状故障が発生しやすくなる。
画像形成層の塗布液粘度は25℃で15〜100mPa・sが好ましく、さらに好ましくは30〜70mPa・sである。一方、保護層の塗布液粘度は25℃で5〜75mPa・sが好ましく、さらに好ましくは20〜50mPa・sである。これらの粘度はB型粘度計によって測定される。
乾燥後の巻取りは温度20〜30℃、相対湿度45±20%の条件下で行うことが好ましく、巻き姿はその後の加工形態に合わせ画像形成層側の面を外側にしてもよいし、内側にしてもよい。また、加工形態がロール品の場合は巻き姿で発生したカールを除去するために加工時に巻き姿とは反対側に巻いたロール形態にすることも好ましい。好ましい一態様として、幅550〜650mmおよび長さ1〜65mのシート状であって、その一部または全部が円筒形状のコア部材に画像形成層を外側にして巻き取られている熱現像感光材料を挙げることができる。なお、熱現像感光材料の相対湿度は20〜55%(25℃測定)の範囲で制御されることが好ましい。
ハロゲン化銀を含みゼラチンを基体とする粘性液である従来の写真乳剤塗布液は、通常加圧送液するだけで気泡が液中に溶解、消滅してしまい、塗布時に大気圧下に戻されても気泡が析出するようなことはほとんどない。ところが、本発明で好ましく用いられる有機銀塩分散物とポリマーラテックスなどを含む画像形成層塗布液の場合は、加圧送液だけでは脱泡が不十分になりやすいため、気液界面が生じないようにして送液しながら超音波振動を与え脱泡することが好ましい。
本発明において塗布液の脱泡は、塗布液を塗布される前に減圧脱気し、さらに1.5kg/cm2以上の加圧状態に保ち、かつ気液界面が生じないようにして連続的に送液しながら超音波振動を与える方式が好ましい。具体的には、特公昭55−6405号公報(4頁20行〜7頁11行)に記載されている方式が好ましい。このような脱泡を行う装置として、特開2000−98534号公報の実施例と図3に示される装置を好ましく用いることができる。
加圧条件としては、1.5kg/cm2以上が好ましく、1.8kg/cm2以上がより好ましい。その上限に特に制限はないが、通常5kg/cm2程度である。与えられる超音波の音圧は0.2V以上、好ましくは0.5V〜3.0Vであり、一般的に音圧は高い方が好ましいが、音圧が高すぎるとキャピテーションにより部分的に高温状態になりカブリの発生原因となる。周波数は特に制約はないが、通常10kHz以上、好ましくは20kHz〜200kHzである。なお、減圧脱気は、タンク内(通常、調液タンクもしくは貯蔵タンク)を密閉減圧し、塗布液中の気泡径を増大させ、浮力をかせぎ脱気させることを指し、減圧脱気の際の減圧条件は−200mmHgないしそれより低い圧力条件、好ましくは−250mmHgないしそれより低い圧力条件とし、その最も低い圧力条件は特に制限はないが通常−800mmHg程度である。減圧時間は30分以上、好ましくは45分以上であり、その上限は特に制限されない。
本発明において、画像形成層、画像形成層の保護層、下塗層およびバック層には特開平11−84573号公報の段落番号0204〜0208、特開2000−47083号公報の段落番号0240〜0241に記載の如くハレーション防止などの目的で、染料を含有させることが好ましい。
画像形成層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることが好ましい。画像形成層に用いる染料および顔料はいかなるものでもよいが、例えば特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることが好ましい。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などが挙げられ、ゼラチン水溶液添加することが好ましい。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に1m2当たり1×10-6g〜1gの範囲で用いることが好ましい。
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、750〜850nmに吸収極大を持つ染料を用いることが好ましい。該染料は所望の範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記バック層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でもよい。例えば特開平11−119374号公報の段落番号0300に記載されている化合物を用いることができる。また、ベルギー特許第733,706号明細書に記載されるように染料による濃度を加熱による消色で低下させる方法、特開昭54−17833号公報に記載されるように光照射による消色で濃度を低下させる方法等を用いることもできる。本発明では、特開平11−119374号公報の段落番号0297に記載されている化合物を用いることが好ましい。
なお、本発明の熱現像感光材料は、特開2000−206653号公報の段落番号0014〜0026に記載される包装材料によって、あるいは特開2001−13632号公報の段落番号0020〜0045に記載される包装方法によって包装されることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料は、PS版へ画像を複製する目的のほかに、画像情報を記録するバーコードが記録されていることが好ましい。自動化された工程においては、材料の確認も自動で行われる必要がある。バーコードは、一般的に使用されているフォーマットであるので、利便性もある。通常、バーコードリーダーは、780nm付近で読み取る機種と670nm付近で読み取る機種があるが、780nm付近では、濃淡差の読み取りがうまくいかない場合も多く、本発明の熱現像感光材料の場合、700nm以下で読み取ることが好ましく、600〜700nmで読み取ることがより好ましい。
また、本発明の熱現像感光材料が、テープによって搬送されたり、テープでガイドベースに固定されて搬送された後に、トンボと呼ばれる画像で位置あわせが行われるが、その検出波長は、600nm〜800nmと多岐にわたる。700nm〜800nmの検出波長の場合、位置合わせに時間がかかる。位置合わせに時間がかかるとその分だけ搬送トラブルが発生する機会が多くなり、本発明の熱現像感光材料の場合、600nm〜700nmで読み取ることが好ましい。
本発明の熱現像感光材料が熱現像後において、PS版により刷版を作製する際にマスクとして用いられる場合、熱現像後の熱現像感光材料は、製版機においてPS版に対する露光条件を設定するための情報や、マスク原稿およびPS版の搬送条件等の製版条件を設定するための情報を画像情報として担持している。従って、前記のイラジエーション染料、ハレーション染料、フィルター染料の濃度(使用量)は、これらを読み取るために制限される。これら情報はLEDあるいはレーザーによって読み取られるため、センサーの波長域のDmin(最低濃度)が低い必要があり吸光度が0.3以下である必要がある。例えば、富士写真フイルム株式会社製、製版機S−FNRIIIはトンボ検出のための検出器およびバーコードリーダーとして670nmの波長の光源を使用している。また、清水製作社製、製版機APMLシリーズのバーコードリーダーとして670nmの光源を使用している。すなわち670nm付近のDmin(最低濃度)が高い場合にはフィルム上の情報が正確に検出できず搬送不良、露光不良など製版機で作業エラーが発生する。従って、670nmの光源で情報を読み取るためには670nm付近のDminが低い必要があり、熱現像後の660〜680nmの吸光度が0.3以下である必要がある。より好ましくは0.25以下である。その下限に特に制限はないが、通常は0.10程度である。
本発明において、像様露光に用いられる露光装置は露光時間が10-6秒以下の露光が可能な装置であればいずれでもよいが、750〜850nmの波長を持つレーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)を光源に使用した露光装置が好ましく用いられる。特に、LDは高出力、高解像度の点でより好ましい。これらの光源は目的波長範囲の電磁波スペクトルの光を発生することができるものであればいずれでもよい。例えばLDであれば、色素レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザーなどを用いることができる。
本発明における露光は光源の光ビームをオーバーラップさせて露光する。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.2以上であることが好ましい。
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、高出力が得られ、書き込み時間が短くなるという点でレーザーヘッドを2機以上搭載するマルチチャンネルが好ましい。特に、円筒外面方式の場合にはレーザーヘッドを数機〜数十機以上搭載するマルチチャンネルが好ましく用いられる。
本発明の熱現像感光材料は露光時のヘイズが低く、干渉縞が発生しやすい傾向にある。この干渉縞の発生防止技術としては、特開平5−113548号公報などに開示されているレーザー光を熱現像感光材料に対して斜めに入光させる技術や、国際公開WO95/31754号公報などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることが好ましい。
本発明に用いる画像形成方法の加熱現像工程はいかなる方法であってもよいが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。用いられる熱現像機の好ましい態様としては、熱現像感光材料をヒートローラーやヒートドラムなどの熱源に接触させるタイプとして特公平5−56499号公報、特開平9−292695号公報、特開平9−297385号公報および国際公開WO95/30934号公報に記載の熱現像機、非接触型のタイプとして特開平7−13294号公報、国際公開WO97/28489号公報、同97/28488号公報および同97/28487号公報に記載の熱現像機がある。特に好ましい態様としては非接触型の熱現像機である。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、5〜90秒がさらに好ましい。ラインスピードは、20mm/秒〜200mm/秒が好ましく、23mm/秒〜25mm/秒が特に好ましい。
熱現像時における熱現像感光材料の寸法変化による処理ムラを防止する方法として、80℃以上115℃未満の温度で画像が出ないようにして、5秒以上加熱した後、110℃〜140℃で熱現像して画像形成させる方法(いわゆる多段階加熱方法)が好ましい。
本発明の熱現像感光材料を熱現像処理するとき、110℃以上の高温にさらされるため、該材料中に含まれている成分の一部、あるいは熱現像による分解成分の一部が揮発してくる。これらの揮発成分は現像ムラの原因になったり、熱現像機の構成部材を腐食させたり、温度の低い場所で析出し異物として画面の変形を引起こしたり、画面に付着して汚れとなる種々の悪い影響があることが知られている。これらの影響を除くための方法として、熱現像機にフィルターを設置し、また熱現像機内の空気の流れを最適に調整することが好ましい。これらの方法は有効に組み合わせて利用することができる。
国際公開WO95/30933号公報、同97/21150号公報、特表平10−500496号公報には、結合吸収粒子を有し揮発分を導入する第一の開口部と排出する第二の開口部とを有するフィルターカートリッジを、フィルムと接触して加熱する加熱装置に用いることが記載されている。また、国際公開WO96/12213号公報、特表平10−507403号公報には、熱伝導性の凝縮捕集器とガス吸収性微粒子フィルターを組み合わせたフィルターを用いることが記載されている。本発明ではこれらを好ましく用いることができる。
また、米国特許第4,518,845号明細書、特公平3−54331号公報には、フィルムからの蒸気を除去する装置とフィルムを伝熱部材へ押圧する加圧装置と伝熱部材を加熱する装置とを有する構成が記載されている。また、国際公開WO98/27458号公報には、フィルムから揮発するカブリを増加させる成分をフィルム表面から取り除くことが記載されている。これらについても本発明では好ましく用いることができる。
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機は、特開2000−292884号公報、特開2001−83679号公報記載の熱現像機が好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
《バック/下塗り層のついたポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の作製》
(1)PET支持体の作製
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、固有粘度IV=0.66(フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラムで急冷し未延伸フィルムを作製した。これを、周速の異なるロールを用いて3.3倍に縦延伸し、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。このときの温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロール状のPET支持体を得た。
(2)下塗り層およびバック層の作製
(i)下塗り第一層
以下に示す組成の塗布液を9.7ml/m2となる様に支持体上に塗布し、125℃で30秒、150℃で30秒、175℃で30秒乾燥した。
ラテックス−A 280g
KOH 0.5g
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm、平均粒子サイズの変動係数7%)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 1.8g
化合物−Bc−E 0.06g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
ラテックス−A:
コア部90質量%、シェル部10質量%のコアシェルタイプのラテックス
コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)
シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/
アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)
質量平均分子量38,000
(ii)下塗り第二層
以下に示す組成の塗布液を8.3ml/m2となる様に下塗り第一層の上に塗布し、125℃で7秒、150℃で7秒、170℃で7秒乾燥した。
脱イオン処理ゼラチン
(Ca2+含量0.6ppm、ゼリー強度230g) 10g
酢酸(20%水溶液) 10g
化合物A 0.04g
メチルセルロース(2%水溶液) 25g
エマレックス710(日本エマルジョン(株)製) 0.3g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
(iii)バック第一層
前記下塗り層塗布面とは反対側の面に0.375kV・A・分/m2のコロナ放電処理を施し、その面に以下に示す組成の塗布液を13.8ml/m2となる様に塗布し、125℃で7秒、150℃で7秒、175℃で7秒乾燥した。
ジュリマーET410(30%水分散物、日本純薬(株)製) 23g
アルカリ処理ゼラチン 4.44g
(分子量約10,000、Ca2+含量30ppm)
脱イオン処理ゼラチン(Ca2+含量0.6ppm) 0.84g
化合物A 0.02g
染料−Bc−A 目安として 0.88g
(783nmの光学濃度として1.3〜1.4になるように調整)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物 15g
(住友化学工業(株)製、スミテックスレジンM−3(8%水溶液))
Sbド−プSnO2 の針状粒子の水分散物 24g
(石原産業(株)製、FS−10D)
ポリスチレン微粒子 0.03g
(平均粒子サイズ2μm,平均粒子サイズの変動係数7%)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
(iv)バック第二層
以下に示す組成の塗布液を5.5ml/m2となる様にバック第一層上に塗布し、125℃で7秒、150℃で7秒、170℃で7秒乾燥した。
ジュリマーET410 57.5g
(30%水分散物、日本純薬(株)製)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 1.7g
水溶性メラミン化合物 15g
(住友化学工業(株)製、スミテックスレジンM−3(8%水溶液))
セロゾール524(15%水溶液、中京油脂(株)製) 3.3g
蒸留水 合計量が1000gとなる量
(v)バック第三層
下塗り第一層と同じ塗布液を9.7ml/m2となる様にバック第二層上に塗布し、125℃で7秒、150℃で7秒、175℃で7秒乾燥した。
(vi)バック第四層
以下に示す組成の塗布液(塗布液の温度25℃)を13.8ml/m2となる様にバック第三層上に塗布し、125℃で7秒、150℃で7秒、155℃で7秒乾燥した。また、バック第四層のバインダー塗布量は1.1g/m2であった。
ペスレジンA515GW(25%水分散物、高松油脂(株)製) 130g
ジュリマーET410(30%水分散物、日本純薬(株)製) 160g
化合物−Bc−B 1.5g
化合物−Bc−C 0.5g
化合物−Bc−D 0.3g
化合物−Bc−E 0.2g
ポリメチルメタクリレート 7.7g
(10%水分散物、平均粒子サイズ:5.5μm、分散係数:10%)
水溶性エポキシ化合物 3.4g
(ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX521)
蒸留水 合計量が1000gとなる量
Figure 2005099297
このようにして作製した支持体それぞれに、以下の方法で画像形成層塗布液、保護層塗布液、下層オーバーコート層塗布液、および上層オーバーコート層塗布液を塗布し、熱現像感光材料を作製した。
《ハロゲン化銀乳剤A(比較乳剤:AgBr)の調製》
水700mLにアルカリ処理ゼラチン(カルシウム含有量として2700ppm以下)11gおよび臭化カリウム30mg、4−メチルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3gを溶解して温度45℃にてpHを6.5に合わせた後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mLと臭化カリウムを1モル/Lの(NH42RhCl5(H2O)を5×10-6モル/LおよびK3IrCl6を2×10-5モル/Lで含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.5gを含む水溶液476mLと臭化カリウムを1モル/LおよびK3IrCl6を2×10-5モル/Lで含むハロゲン塩水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させて脱塩処理をし、平均分子量15,000の低分子量ゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)51.1g加え、pH5.9、pAg8.0に調整した。得られた粒子は平均粒子サイズ0.11μm、投影面積変動係数9%、(100)面比率90%の立方体粒子であった。こうして得たハロゲン化銀粒子に、銀1モル当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム76×10-6モル、トリエチルチオ尿素71×10-6モルを添加した後に熟成し、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを5×10-4モル、化合物Aを0.17g加えた後、ハロゲン化銀1モルに対して4.7×10-2モルの臭化カリウム(水溶液として添加)、12.8×10-4モルの下記増感色素−A(エタノール溶液として添加)、6.4×10-3モルの化合物B(メタノール溶液として添加)を攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Aの調製を終了した。得られたハロゲン化銀乳剤Aは、後述する塗布液の調製に用いた。
Figure 2005099297
《ハロゲン化銀混合乳剤Bの調製》
下記の方法で製造したハロゲン化銀乳剤B−1、B−2、B−3を、銀モル比が5:2:3となる量で混合し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10-3モル添加した。さらに1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物1,2,3をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10-3モルになる量、吸着基と還元基を有する化合物1,2をそれぞれハロゲン化銀1モルあたり8×10-3モルになる量、上記増感色素−A(エタノール溶液として添加)をハロゲン化銀1モルあたり12.8×10-4モルになる量、上記化合物B(メタノール溶液として添加)をハロゲン化銀1モルあたり6.4×10-3モル攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀混合乳剤Bを調製した。
ハロゲン化銀乳剤B−1の調製
蒸留水1420mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、42℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量218mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。
さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程を行なった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1、2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Aをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10-4モル加えて91分間熟成した。
N、N'−ジヒドロキシ−N"−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10-3モルおよび1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1、3、4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10-3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤B−1を作製した。
調製されたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数18%の純ヨウ化銀粒子であった。また(001)、{100}、{101}面を有する14面体粒子であり、X線粉末回折分析を用いて測定したところそのγ相の比率は30%であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
ハロゲン化銀乳剤B−2の調製
反応溶液の温度を65℃に変更し、2,2'−(エチレンジチオ)ジエタノールの5%メタノール溶液5mlを溶液AとBの添加後に添加したこと、pAgを10.5に維持しながら溶液Dをコントロールドダブルジェット法で添加したこと、および化学増感時にテルル増感剤の添加3分後に臭化金酸を銀1モル当たり5×10-4モルとチオシアン酸カリウムを銀1モルあたり2×10-3モルを添加したこと以外は乳剤1と同様にしてハロゲン化銀乳剤B−2を作成した。
調製されたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、投影面積の平均円相当径0.164μm、粒子厚み0.032μm、平均アスペクト比5、平均球相当径0.11μm、球相当径の変動係数23%の純ヨウ化銀平板状粒子であった。X線粉末回折分析を用いて測定したところそのγ相の比率は80%であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
ハロゲン化銀乳剤B−3の調製
反応溶液の温度を27℃に変更したこと、pAgを10.2に維持しながら溶液Dをコントロールドダブルジェット法で添加したこと以外はハロゲン化銀乳剤1と全く同様にしてハロゲン化銀乳剤B−3を作成した。
調製されたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.022μm、球相当径の変動係数17%の純ヨウ化銀粒子であった。また(001)、{1(−1)0}、{101}面を有する12面体粒子であり、X線粉末回折分析を用いて測定したところほぼβ相からなる沃化銀であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
《ハロゲン化銀混合乳剤C〜Eの調製》
前記乳剤B−1、B−2、B−3それぞれの溶液Bと溶液Dのヨウ化カリウムの一部を臭化カリウムに置き換え、その他は乳剤B−1、B−2、B−3と同様にしてC−1、C−2、C−3〜E−1、E−2、E−3を調製し、混合乳剤Bと同様に混合乳剤C〜Eを調製した。混合乳剤C〜Eに含まれるハロゲン化銀の組成は表1に示すとおりである。
Figure 2005099297
《ベヘン酸銀分散物Aの調製》
ベヘン酸(ヘンケル社製、製品名EdenorC22−85R)87.6gを、5mol/LのNaOH水溶液49.2mLおよびtert−ブチルアルコール120mLと混合し、75℃にて反応させベヘン酸ナトリウム溶液を得た。このベヘン酸ナトリウム溶液と硝酸銀の水溶液とを、635mLの蒸留水および30mLのtert−ブチルアルコールを入れた反応容器を攪拌しながら、添加した。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が上がらないようにコントロールした。添加終了後、吸引濾過で固形分を濾別し、水洗した。つぎに、得られたベヘン酸銀の固形分100g相当のウエットケーキに、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217,平均重合度:約1700)7.4gおよび水を添加し、ホモミキサーにて予備分散した後、分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、G10Zインタラクションチャンバー使用)で分散し、ベヘン酸分散物Aを得て、後述する塗布液の調製に用いた。
《還元剤の固体微粒子分散物の調製》
還元剤である1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640g、水16kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散した後、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩4gと水を加えて還元剤の固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。こうして得た分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.44μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数19%であった。
《有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物の調製》
ポリハロゲン化合物Aを10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液639gと、サーフィノール104E(日信化学(株)製)400gと、メタノール640gと、水16kgとをよく混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散した後、水を加えてポリハロゲン化合物Aの濃度が25質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Aの固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数18%であった。
《有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物の調製》
ポリハロゲン化合物Bを5kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213gと、水10kgとをよく混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩2.5gと水とを加えてポリハロゲン化合物Bの濃度が23.5質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物Bの固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。こうして得た分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.38μm、最大粒子サイズ2.0μm以下、平均粒子サイズの変動係数20%であった。
《有機ポリハロゲン化合物C水溶液の調製》
室温で攪拌しながら、水75.0ml、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(20%水溶液)8.6ml、オルトリン酸二水素ナトリウム・2水和物(5%水溶液)6.8ml、および水酸化カリウムの1mol/L水溶液9.5mlを順次攪拌混合した。さらに、攪拌しながらポリハロゲン化合物Cの4.0gの粉末を添加し、有機ポリハロゲン化合物C水溶液100mlを得て、後述する塗布液の調製に用いた。
《化合物−Zの乳化分散物の調製》
化合物−Zを85質量%含有する三光(株)製R−054を10kgと、MIBK11.66kgを混合した後、窒素置換して80℃1時間溶解した。この液に水25.52kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液12.76kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.44kgとを添加して、20〜40℃、3600rpmで60分間乳化分散した。さらに、この液にサーフィノール104E(日信化学(株)製)0.08kgと、水47.94kgとを添加して減圧蒸留しMIBKを除去したのち、化合物−Zの濃度が10質量%になるように調製して、後述する塗布液の調製に用いた。
《6−イソプロピルフタラジン化合物の分散液の調製》
室温で水62.35gを攪拌しながら、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)2.0gを添加し10分間攪拌混合した後、加熱し、内温50〜60℃の範囲で均一に溶解させた。内温を40℃以下に降温し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217、10質量%水溶液)25.5g、トリプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(20質量%水溶液)3.0g、および6−イソプロピルフタラジン(70質量%水溶液)7.15gを添加し、攪拌混合して、透明分散液100gを得て、後述する塗布液の調製に用いた。
《現像促進剤Wの固体微粒子分散物の調製》
現像促進剤Wの10kgと、変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液の10kgと、水20kgとを、よく混合してスラリーとした。このスラリーを、横型ビーズミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて分散した後、水を加えて現像促進剤Wの濃度が20質量%になるように調製し、現像促進剤Wの固体微粒子分散物を得て、後述する塗布液の調製に用いた。
《画像形成層塗布液の調製》
上記で作製したベヘン酸銀分散物Aの銀1モルに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤を添加して、水を加えて、画像形成層塗布液とした。この塗布液は、有機溶媒としてメタノールおよびエタノールを10質量%含有する塗布液であった。完成後、減圧脱気を圧力0.54atmで45分間行った。塗布液のpHは7.7、粘度は25℃で50mPa・sであった。
バインダー;SBRラテックス 固形分として 397g
(St/Bu/AA=68/29/3(質量%)、
重合開始剤としてNa228を使用)
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−
3,5,5−トリメチルヘキサン 固形分として 149.5g
ポリハロゲン化合物B 固形分として 36.3g
ポリハロゲン化合物C 固形分として 2.34g
エチルチオスルホン酸ナトリウム 0.47g
ベンゾトリアゾール 1.02g
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製PVA−235) 10.8g
6−イソプロピルフタラジン 15.0g
化合物−Z 固形分として 9.7g
本発明の化合物 16.7g
現像促進剤W 固形分として 5.7g
染料−A 783nmの光学濃度が0.3になる塗布量
(目安として固形分0.40g)
(平均分子量1,000〜50,000の低分子量ゼラチンとの混合液として添加)
表1に示す種類のハロゲン化銀乳剤 Ag量として0.06モル
防腐剤として化合物A 塗布液中に40ppm
(塗布量として2.5mg/m2
pH調整剤として、NaOHを用いて調整した。
(なお、塗布膜のガラス転移温度は17℃であった。)
Figure 2005099297
《保護層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、ラテックスのガラス転移温度を24℃とした。平均粒子サイズ116nm)943gに水を加え、ポリハロゲン化合物Cの水溶液114.8g、ポリハロゲン化合物Aを固形分として17.0g、オルトリン酸二水素ナトリウム・二水和物を固形分として0.69g、現像促進剤Wを固形分として11.55g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)1.58g、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)29.3gおよび化合物Eを0.62g、化合物Iを1.0g加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.8質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.5、粘度は25℃で45mPa・sであった。
《下層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、ラテックスのガラス転移温度を24℃とした、平均粒子サイズ74nm)625gに水を加え、化合物Cを0.23g、化合物Iを0.13g、化合物Fを11.7g、化合物Hを2.7gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)11.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を0.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは2.6、粘度は25℃で30mPa・sであった。
《上層オーバーコート層塗布液の調製》
メチルメタクリレート/スチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=58.9/8.6/25.4/5.1/2(質量%)のポリマーラテックス溶液(共重合体でガラス転移温度46℃(計算値)、固形分濃度として21.5質量%、化合物Aを100ppm含有させ、さらに造膜助剤として化合物Dをラテックスの固形分に対して15質量%含有させ、ラテックスのガラス転移温度を24℃とした。平均粒子サイズ116nm)649gに水を加え、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524:シリコーン含有量として5ppm未満)30質量%溶液18.4g、化合物Cを0.23g、化合物Eを1.0g、化合物Gを1.0g、化合物Iを0.87g、マット剤(ポリスチレン粒子、平均粒子サイズ7μm、平均粒子サイズの変動係数8%)3.45gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製,PVA−235)26.5gを加え、さらに水を加えて塗布液(メタノール溶媒を1.1質量%含有)を調製した。完成後、減圧脱気を圧力0.47atmで60分間行った。塗布液のpHは5.3、粘度は25℃で25mPa・sであった。
Figure 2005099297
《熱現像感光材料の作製》
上で作製した各支持体の下塗り第二層上に、画像形成層塗布液、保護層塗布液、下層オーバーコート層塗布液、上層オーバーコート層塗布液を以下の手順にしたがって塗布した。
支持体の下塗り第二層の上に、特願平10−292849号公報中の図1で開示されているスライドビート塗布方式を用いて、前記の画像形成層塗布液を塗布銀量1.5g/m2になるように塗布した。さらにその上に、前記保護層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.29g/m2になるように画像形成層塗布液と共に同時重層塗布した。その後、保護層の上に前記下層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.97g/m2および前記上層オーバーコート層塗布液をポリマーラテックスの固形分塗布量が1.07g/m2になるように下層オーバーコート塗布液と共に同時重層塗布し、熱現像感光材料を作製した。
塗布時の乾燥は、恒率過程、減率過程とも、乾球温度70〜75℃、露点14〜25℃、液膜表面温度35〜40℃の範囲で、塗布液の流動がほぼなくなる乾燥点近傍までは水平乾燥ゾーン(塗布機の水平方向に対し支持体が1.5°〜3°の角度)で行った。乾燥後の巻取りは温度23±5℃、相対湿度45±5%の条件下で行われ、巻き姿はその後の加工形態(画像形成層面側外巻)に合わせ、画像形成層面側を外にした。なお、感光材料の包袋内の相対湿度は20〜40%(25℃測定)で、得られた熱現像感光材料の画像形成側の膜面pHは5.3、ベック平滑度は900秒であった。
《写真性能の評価》
(露光処理)
得られた熱現像感光材料を、ビーム径(ビーム強度の1/2のFWHM)12.56μm、レーザー出力50mW、出力波長783nmの半導体レーザーを搭載した単チャンネル円筒内面方式のレーザー露光装置を使用し、ミラー回転数60000rpm、露光時間1.2×10-8秒の露光を実施した。この時のオーバーラップ係数は0.449にし、熱現像感光材料面上のレーザーエネルギー密度は75μJ/cm2とした。
現像湿度依存性については、28℃、相対湿度80%の環境で16時間放置した熱現像感光材料にその環境下で上記露光で60μmの線幅露光を行って熱現像処理した場合、および、22℃、相対湿度10%環境下で16時間放置した熱現像感光材料にその環境下で上記と同一露光条件で露光、熱現像処理した場合の線幅の差で評価した。
(熱現像処理)
露光済みの熱現像感光材料に対して、図1に示した熱現像機を用いて熱現像処理を行った。熱現像処理部のローラー表面材質はシリコンゴム、平滑面はテフロン(登録商標)不織布とし、搬送のラインスピードは150cm/minに設定した。熱現像処理は、予備加熱部で12.2秒(予備加熱部と熱現像処理部の駆動系は独立しており、熱現像部との速度差は−0.5%〜−1%に設定、各予熱部の金属ローラーの温度設定、時間は第1ローラー温度67℃、2.0秒、第2ローラー温度82℃、2.0秒、第3ローラー温度98℃、2.0秒、第4ローラー温度温度107℃、2.0秒、第5ローラー温度115℃、2.0秒、第6ローラー温度120℃、2.0秒にした)、熱現像処理部(熱現像感光材料面温度120℃)で17.2秒、徐冷部で13.6秒行った。なお、幅方向の温度精度は±0.5℃であった。各ローラー温度の設定は熱現像感光材料の幅(例えば幅61cm)よりも両側それぞれ5cm長くして、その部分にも温度をかけて、温度精度が出るようにした。なお、各ローラーの両端部分は温度低下が激しいので、熱現像感光材料の幅よりも5cm長くした部分はローラー中央部よりも1〜3℃温度が高くなるように設定し、熱現像感光材料(例えば幅61cmの中で)の画像濃度が均質な仕上がりになるように留意した。
(評価方法)
画像のDmin(カブリ)、Dmax(最高濃度)を、マクベスTD904濃度計(可視濃度)により測定した。処理後の感光材料を保管した際のカブリの変化については、処理後の感光材料を50℃相対湿度50%の条件下で10日間放置した後でカブリ濃度を測定することにより行った。現像湿度依存性については、前述の方法で線幅測定を行った。現像銀粒子密度は、発明の実施の形態中に記載した方法と同様に、写真を撮影し、単位面積当たりの現像銀粒子の数を数え、その密度を比較した。カバリングパワーについても、発明の実施の形態中に記載した方法と同様に、感光材料中の全ての銀イオンが還元されたサンプルについて、可視濃度を現像銀量(g/m2)で割った値で比較した。
Figure 2005099297
上記評価を実施した結果を表1に示す。表1より明らかなように、本発明の条件を満たす試料が、現像銀粒子密度、カバーリングパワーが高く、カブリ、Dmaxの点で優れており、さらに、処理後保管によるカブリの上昇が少なく、現像湿度変化での線幅変化が小さく、良好な性能を示していることがわかる。
実施例1の試料番号4〜6のハロゲン化銀混合乳剤Bの増感色素−Aを除いた乳剤を調製し、さらに画像形成層塗布液の染料−Aを除いた塗布液を調製し、実施例1と同様に試料を作成した。ついで、実施例1と同様の評価を行った。但し、露光は、発振波長が405nmのレーザー光で露光した。
その結果、実施例1と同様に本発明の条件を満たす試料が良好な性能を示した。
本発明の熱現像感光材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
符号の説明
10 熱現像感光材料
11 搬入ローラー対
12 搬出ローラー対
13 ローラー
14 平滑面
15 加熱ヒーター
16 ガイド板
A 予備加熱部
B 熱現像処理部
C 徐冷部

Claims (3)

  1. 支持体の一方面上に、非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イオンのための還元剤、およびバインダーを含有する熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%〜100モル%であり、かつ非感光性有機銀塩上および近傍に現像開始点を形成可能な化学種をイメージワイズに生成する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
  2. 支持体の一方面上に、非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イオンのための還元剤、およびバインダーを含有する熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%〜100モル%であり、かつ、0.01mol/銀molで添加することにより現像銀粒子密度が200〜5000%に増加する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
  3. 支持体の一方面上に、非感光性有機銀塩、感光性ハロゲン化銀、銀イオンのための還元剤、およびバインダーを含有する熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%〜100モル%であり、かつ、0.01mol/銀molで添加することによりカバリングパワーが120〜1000%に増加する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする熱現像感光材料。


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