以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられおり、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図6中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図3乃至図5)、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、紙搬送方向という。)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドが各インク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。吐出検出の詳細については後述する。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダ別に画像を集積するソーターが設けられる。
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3(a)は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図である。また、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3中4−4線に沿う断面図)である。記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3及び図4に示したように、インク滴が吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP)で直線状に配列されているものとして説明する。
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
図6はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。なお、画像メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。
画像メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80において既知の誤差拡散アルゴリズムなどの手法によりインク色ごとのドットのデータに変換される。すなわち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをYCMKの4色のドット画像データに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
ヘッドドライバ84は、画像バッファメモリ82に記憶されたドットデータに基づき、印字ヘッド50の駆動制御信号を生成する。ヘッドドライバ84で生成された駆動制御信号が印字ヘッド50に加えられることによって、印字ヘッド50からインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期して印字ヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
なお、図1に示した例では、印字検出部24が印字面側に設けられており、ラインセンサの近傍に配置された冷陰極管などの光源(不図示)によって印字面を照明し、その反射光をラインセンサで読み取る構成になっているが、本発明の実施に際しては、図7に示すように、記録紙16の搬送路を挟んでラインセンサ90と光源92とを対向して配置し、記録紙16の裏側(インク打滴面の反対側)から光源92の光を照射して、その透過光量をラインセンサ90によって読み取る構成も可能である。図7に示した透過型検出の構成は、反射型検出の構成と比較して、ラインセンサによって取り込む像のボケを少なくできるという利点がある。
ただし、透過型の場合、反射型よりもラインセンサへの入射光量が少なくなる。また、反射型においても入射光量が少ない場合が想定される。何れにしても、ラインセンサへの入射光量が少ないと十分な検出信号が得られなくなるが、ラインセンサによる画像読み取りの際に、紙送り方向の解像度は要求されないため、センサの電荷蓄積時間を長くするか、或いは読み取りデータを紙送り方向に積分することによって対応できる。
また、ラインセンサの読み取り開始タイミングは、センサとノズル間の距離及び記録紙16の搬送速度から決定される。
〔画像形成処理の説明〕
次に、上記の如く構成されたインクジェット記録装置の動作について説明する。図8は、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の要部の機能的構成を示すブロック図である。
同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、印字検出部24からの検出情報に基づいてノズルのローカリティを特定するローカリティ特定部100と、特定されたノズルローカリティの補正に用いるマトリックステーブル(以下、「局所変動マトリックス」という。)を生成する局所変動マトリックス生成部102と、生成された局所変動マトリックスを保存しておく記憶部104とを備えている。
また、インクジェット記録装置10は、入力された画像データ(RGBデータ)106からCMYKデータを生成する色変換部108、デジタルハーフトーニング部110、局所変動処理部112、ヘッド駆動信号生成部114等を備えており、デジタルハーフトーニングの結果に対してノズルローカリティを考慮した局所変動を与え、その局所変動処理の結果に基づいて印字ヘッドの駆動信号を生成し、その駆動信号をライン型記録ヘッド(印字ヘッド50)に与えることによって、所望のドット打滴116を実施し、記録メディア(記録紙16)に記録を行うようになっている。
印画すべき画像のデータ(RGBデータ)106は、図6で説明したように、通信インターフェース等の所定の画像入力部を通じてインクジェット記録装置10に入力され、図8に示した色変換部108に送られる。色変換部108は、画像内の各画素のRGBデータをこれに対応するCMYKデータに変換する処理を行う。色変換部108で生成されたCMYKデータは、階調補正等の処理が行われた後、デジタルハーフトーニング部110へ送られる。
デジタルハーフトーニング部110は、CMYKデータをドットパターンに変換する処理部である。インクジェット記録装置10では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。デジタルハーフトーニング部110は、ディザ法、誤差拡散法、ブルーノイズマスク法などに代表されるデジタルハーフトーニングの手法を用いて入力画像データからドットパターンを生成する。
デジタルハーフトーニング部110で得られた結果は、局所変動処理部112に送られ、ここで局所変動マトリックスを用いた局所変動処理が実施される。局所変動マトリックスの作成方法については後述するものとして、ここでは先に局所変動処理の方法を説明する。なお、説明を簡単にするため、単インク(1色)の場合について述べる。
図9は、局所変動処理の一例を示す概念図である。局所変動マトリックス120は、デジタルハーフトーニングの結果D(I,J)をD’(I’,J’)に変換する変換則を定めたマトリックステーブルであり、プリント上の各打滴位置(I,J)について1対1に対応したマトリックスとなっている。図9において横方向のセルの並びはワンパス方式の主走査方向の打滴点(画素)の配列に対応しており、主走査方向の全打滴点数(画素数)分の列数を有している。また、同図において縦方向のセルの並びは副走査方向の打滴点の配列に対応している。副走査方向については全打滴点数(副走査画素数)以下の適当な行数で足り、好ましくは、プリント上で1mm以上に相当する打滴点数分の行数とする。ワンパス方式によるスジ状のムラは、副走査方向に現れるので、同方向についてはこの局所変動マトリックス120を繰り返し適用する。
図10は、局所変動マトリックスの一例を示した図である。図示した局所変動マトリックス121の各要素(セル)には、サイズ変動値(ΔS)と位置変動値(ΔI,ΔJ)が格納されている。すなわち、ΔSはドットサイズの変更量を示し、ΔIはX軸方向(主走査方向)の位置の変更量、ΔJはY軸方向(副走査方向)の位置の変更量をそれぞれ示す。
ΔSはドットサイズの増減に応じてプラス又はマイマスの値をとり得る。つまり、ドットサイズを小さくする場合には、ΔSがマイナス(負)の値を示し、ドットサイズを大きく変更する場合にはプラス(正)の値を示す。
デジタルハーフトーニングの結果D(I,J)は、位置(I,J)におけるドットサイズSを表している。このD(I,J)を入力すると、位置(I,J)に対応した局所変動マトリックスからΔS、ΔI、ΔJを参照し、局所変動処理後の信号D’(I’,J’)つまり、位置I’=I+ΔI、J’=J+ΔJ、ドットサイズS+ΔSを得る。
なお、ドットサイズS+ΔSが、ドットサイズの制御可能範囲を超えている場合は、制御可能な最大サイズ又は最小サイズとして扱う。
図11は、他の局所変動マトリックスの例を示した図である。同図に示した局所変動マトリックス122は、各打滴位置に1対1に対応したマトリックスであるが、各要素にはドットのサイズ値ΔSk とドット位置(Ik , Jk )が入力ドットサイズ別に複数( k=1、2、…n)格納されている。
デジタルハーフトーニンングの結果D(I,J)=(位置I,J;ドットサイズS1)を入力すると、位置(I,J)に対応した局所変動マトリックス122から複数の格納値ΔS1 ,I1 ,J1 、ΔS2 ,I2 ,J2 …、ΔSn ,In ,Jn を参照する。
そして、局所変動処理後の信号として、D1(I1 ,J1 )=(位置I1 ,J1 ;ドットサイズは+ΔS1 )、D2 (I2 ,J2 )=(位置I2 ,J2 ;ドットサイズは+ΔS2 )…、Dn (In 、Jn )=(位置In 、Jn ドットサイズは+ΔSn )を得る。なお、対応するドットを打たないような入力の場合は、0+ΔSとして扱う。
図11で示した局所変動処理は、デジタルハーフトーニングの結果である1個のドットD(I,J)に対して複数個のドッドD1 (I1 ,J1 )〜Dn (In ,Jn )を対応させる態様である。最終的な画像としては、位置(I’,J’)に対応する複数のドットのΔSをすべて加算(符号がマイナスのケースはここで減算する)したものになる。このトータルドットサイズが、ドットサイズ制御可能範囲を超えている場合は、制御可能な最大サイズ又は最小サイズとして扱うものとする。
次に、局所変動マトリックスの作成方法について説明する。
図12は、図10で説明した局所変動マトリックス121の作成手順を示したフローチャートである。
図12に示したように、局所変動マトリックスの作成処理がスタートすると(ステップS200)、まず、ドット位置オフセットを特定する処理が行われる(ステップS210)。これはノズルのローカリティを特定する処理であり、印字検出部24から得られる画像読取情報に基づいてドット位置、ドットサイズ、ドット形状、ドット濃度分布等に関する理想状態からの変位が検出される。なお、ノズルのローカリティを特定する場合、好ましくは、ノズルのローカリティのうち毎回変動する要因と常に一定の要因に分離し、常に一定の要因に関して局所変動処理の対象とすることが好ましい。
次いで、ドット位置オフセットをドット配置可能な位置に反映させる処理が行われる(ステップS212)。不良ノズルが存在しない理想的な状態で実現される打滴の格子(理想格子)は、ノズルピッチと副走査方向の打滴ピッチによって定まる一定間隔の離散的な座標値になる。これに対し、ノズルのローカリティがあるときは、理想格子の間にドットが打たれてしまう。ステップS212の処理は、実際にドット配置が可能な位置を制御すべく、理想格子よりも細密な格子網(メッシュ)を考えることに相当している。
その後、演算パラメータの1つであるドット密度を初期値に設定する処理が行われる(ステップS214)。ドット密度とは、ある面積を想定し、その面積を打滴可能な最高密度で完全にドットで埋め尽くした場合を100%と考え、ある面積でのドット数をパーセントとして表現した値である。ここで設定される初期値は制御上の最も小さい値とする。
次に、局所変動マトリックスを初期化する処理が行われる(ステップS216)。初期化された局所変動マトリックスは、デジタルハーフトーニングの結果に対して、何も変化を与えないようなテーブルとなっている。
次いで、ステップS218の判断処理が行われる。この判断部は、マトリックス作成演算の過程で徐々にドット密度を上げて演算を繰り返していくときに、ある最大ドット密度に達したら処理を終了するというループの判断を行うものである。
最大ドット密度は、ドット密度を最大で何パーセントまで使用するかという利用可能範囲(レンジ)を表すものであり、例えば、最大濃度値、或いは、実際に何%までドットを打ち込めるかというシステム条件によって決定される。
ステップS218の判断において、ドット密度のカレント値が最大ドット密度を超えていなければ、ステップS220に進み、そのドット密度からドット配置を求める。すなわち、ステップS220では、ある種のデジタルハーフトーニングを用いてドット配置を求める。ここでは、閾値マトリックスを利用する公知のデジタルハーフトーニング手法を適用し、その結果をドット配置可能な位置に当てはめていく。閾値マトリックスによるデジタルハーフトーニングは、ドット密度を変更しても、既にドットが配置されたところについては変更されず、ドット密度上昇分について未配置の位置にドットが追加される。したがって、ドット密度の初期値から徐々にドット密度を上げて順次ドットの配置を計算していくことができる。
次いで、ステップS220で求めたドット配置からドット配置可能位置と現在計算途中の局所変動マトリックスに基づいて印字媒体(メディア)上の配置が計算される(ステップS222)。既述のようにステップS210〜S212において、ノズルのローカリティが特定され、理想的にはある格子(理想格子)上に打滴されるはずであるが、実際には理想格子から変位した位置に打滴されることがわかっている。つまり、このステップS222では、ステップS220のデジタルハーフトーニングによって計算された追加されるべきドットの位置が実際にはノズルのローカリティ作用により、ある変位したドット配置可能位置に打滴されるという計算が行われる。
次に、メディア上の配置とドット濃度モデルに基づいてメディア上の濃度分布が計算される(ステップS224)。これは、ステップS222で計算されたドットの配置が実際のメディア上でどのような濃度分布になるかをシミュレーション計算するものである。
次に、そのシミュレーション結果を評価する処理が行われる。すなわち、計算されたメディア上の濃度分布から人間が知覚する刺激(CIE−LAB)の二次元分布が計算される(ステップS226)。このとき、視覚特性(VTF)が考慮される。
図13は、人間の視覚特性を示すグラフである。横軸は空間周波数(cycles/degree) を示し、縦軸は応答値を示す。同図に示したように、ある低い周波数領域は応答が高く、高周波数領域で応答が低下する。一般に明視距離 (286mm) における視覚の解像限界は50(cycles/degree )、階調弁別能力は約200階調といわれる。
ドーリィ(Dooley)によれば、視覚特性は、次式〔数1〕で近似できる。
ここで、fは空間周波数(cycles/degree) である。
つまり、高い周波数のドットのムラは実質的に低減されることを意味している。
次に、メディア上の刺激の二次元分布をフーリエ変換し、極座標パワースペクトラムの平均指標(Radially Averaged Power Spectrum; R.A.P.S)と分散指標(anisotropy)を計算する(図12のステップS228)。この平均指標( R.A.P.S)と分散指標(anisotropy)を用いる評価方法は、Robert Ulichney 著による『Digital Halftoning』( The MIT Press出版)において詳述されている。
デジタルハーフトーニングの結果としてドットパターンが得られ、このドットパターン(ドット配置)のスジムラ発生評価に上記平均指標(R.A.P.S)と分散指標(anisotropy)が利用される。
すなわち、ドット配置の二次元パワースペクトラムを極座標に変換して、図14のように、極座標の半径に相当する空間周波数fr について全角度のスペクトラムの平均と分散に相当する指標を求める。
極座標パワースペクトラムの平均指標(R.A.P.S)は、次式〔数2〕で表される。
また、分散指標(anisotropy) は次式〔数3〕で表される。
極座標パワースペクトラムの平均指標(R.A.P.S)は、ドット配置の視認性に関する指標であり、分散指標(anisotropy)は、ドット配置の異方性に関する指標である。
図15には、ある好ましい条件で計算されたR.A.P.S の例が示されている。このグラフでは視覚特性は考慮されていない。図13で説明した視覚特性(VTF)を考慮すると、全体にエネルギーが低く抑えられたものになる。なお、図15においてσg は、次式〔数4〕で表される。
ただし、gは規格化された入力値を示し、0≦g≦1である。
また、図16には、ある好ましい条件で計算された極座標パワースペクトラムの分散指標(anisotropy)の一例が示されている。
Robert Ulichney によると、極座標パワースペクトラムの分散指標(anisotropy)が−10デシベル以下であれば、ドットの異方性は目立たないとされている。
上述の評価方法を利用して、図12のステップS230において平均指標(R.A.P.S)と分散指標(anisotropy)がそれぞれある所定条件を満たしているか否かの判断を行う。
ステップS230で判定基準となる所定条件を満たしている場合には,現在のドット密度に対して局所変動マトリックスはムラを発生させない状態となっているので、YES判定となり、選択位置の局所変動マトリックスは計算を終了する(ステップS231)。その後、ドット密度を上げて(ステップS232)、ステップS218に戻り、上記同様の処理を繰り返す。
その一方、ステップS230においてNO判定となった場合は、ドット密度の変更によって追加配置されたドットによってムラが発生したと考えられる。新たに追加されたドットの周辺でムラになっているということは、その追加ドットの周辺で目標のL値と、実現されるL値との誤差が大きいことを意味している。目標L値との誤差が最も大きいところがムラの発生に寄与しているドットと考え、そのムラに効いているドット位置を選び出す処理を行う(ステップS234)。
具体的には、追加されるドット位置のうち、近傍のL値が目標L値と比較して最も誤差が大きいドット位置を特定する。図17に示したように、追加されるドット位置D1 、D2、D3 の各近傍領域A1 、A2 、A3 で目標L値との誤差を算出し、最も誤差の大きいドット位置を選択する。
こうして、選択されたドット位置の近傍L値が目標値より高い場合は、選択位置の局所変動マトリックスのドットサイズを大きく変更し(図21参照)、逆に、近傍L値が目標値よりも低い場合は、ドットサイズを小さく変更する(図22参照,図12のステップS236)。図21には、選択されたドット位置の近傍L値が目標値より高い場合に、選択位置のドットサイズを図中点線で示すように大きくする様子が示されている。図21の中央に示した実線円D0 は、選択された位置を示し、この実線円D0 と同心円状に描かれた実線円A0 の内側が近傍領域を示すものとする(図22において同様)。図22には、選択されたドット位置の近傍L値が目標値より低い場合に、選択位置のドットサイズを図中点線で示したように、小さくする様子が示されている。
ただし、ドットサイズはある有限の値の範囲でしか変更できないため、ドットサイズの変更が不可能な場合は、ドット位置を変更する(図12のステップS236)。
図18にドット位置の変更方法の一例を示す。図18の中央に示したドット位置D4 がステップS232において選び出された追加に係るドット位置を示すものとし、該ドット位置D4 を中心とする実線円の内側が近傍領域A4 を示すものとする。
ドット位置D4 についてドットサイズの制御が不可能な場合、近傍領域A4 内において未だ局所変動マトリックスに使われていない位置の中から別のドット位置を決定する。具体的には、近傍領域A4 内で近傍のL値を与える位置D5 と、当該選択に係る追加ドット位置D4 とを直線(図18において点線で示した直線)で結び、線分D4 −D5 の内分点D6 (例えば、内分比1:1)又は外分点D7 (例えば、外分比1:2 ) 若しくはその近傍にドット位置を変更する。
近傍L値が目標値よりも高い場合は、近傍L値を与える位置D5 に近づくようにドット位置を変更し、逆に近傍L値が目標値よりも低い場合は、位置D5 から遠ざかるようにドット位置を変更する。
こうして修正されたドット配置に基づいて、ステップS222に戻って新たに評価をやり直す。ステップS222〜ステップS236の処理を繰り返すことによって、順次、局所変動マトリックスのパラメータが決定してゆく。
最大ドット密度まで計算が完了すると、最終的に単一の局所変動マトリックスが完成する。そして、図12のステップS218でYES判定となり、マトリックスの作成処理を終了する(ステップS240)。
このように、ドット密度を順次上げながらを計算していくため、中間のドット密度でも好ましいスジムラ低減効果が期待できる。
なお、図12で述べた方法に代えて、より簡便な方法としては、ドット密度の初期値を最大ドット密度に設定して計算する方法も考えられる。すなわち、最大ドット密度によるベタ印字を重視してムラを低減する場合には、このように最大ドット密度にだけ注目して局所変動マトリックスを決定することも可能である。
次に、他の局所変動マトリックスの作成方法を説明する。
図19は、図11で説明した局所変動マトリックス122の作成手順を示したフローチャートである。図19中図12と共通する工程には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。
図12で説明したフローチャートと図19に示したフローチャートの主な相違点は、図19においてループカウンタの初期化処理(ステップS221)と、ループカウンタの判断処理(ステップS235)、並びにドット位置の追加処理(ステップS238)等が追加されている点にある。
すなわち、ステップS220でドット密度からドット配置を求めた後、ループカウンタを初期化し(ステップS221)、ステップS222に進む。そして、ステップS222〜S230によってドット配置の評価を行い、ステップS234において、近傍のL値が目標値と比較して最も誤差の大きいドット位置を選出した後に、ループカウンタが所定値を超えたか否かの判断を行う(ステップS235)。
ループカウンタが所定値を超えていない場合(NO判定時)はステップS236に進み、ドットサイズの変更或いはドット位置の変更処理を行う。ステップS236の後、ループカウンタをカウントアップしてから(ステップS237)、ステップS222に戻る。つまり、ドットサイズの変更やドット位置の変更処理による対応(ステップS236)が所定の回数を上限として試みられる。
ステップS235において、ループカウンタが所定値を超えたと判断された場合には、ステップS238に進む。ステップS238では、選択した位置の近傍L値が目標値よりも高い場合には、当該選択されたドット位置に対応する局所変動マトリックスの内容を固定(FIX)するとともに、新たに近傍L値を与える位置に近づく位置を追加されたドット位置として取り扱う。また、選択した位置の近傍L値が目標値よりも低い場合は、選択されたドット位置に対応する局所変動マトリックスの内容を固定するとともに、新たに近傍L値を与える位置から遠ざかる位置を追加されたドット位置として扱う(ステップS238)。
こうして、複数のドットを制御することとし、ループカウンタを初期化して(ステップS239)、ステップS222に戻る。
図19で示したフローチャートに従って演算を行うことにより、図11で説明した局所変動マトリックス122が得られる。
上記説明では、説明の便宜上、単インクの場合を説明したが、複数インクについても同様に適用できる。ただし、複数インクの場合、好ましくは視覚的に最も影響の強いインクから順に(例えば、K→M→C→Yの順に)局所変動処理のパラメータを決定する。視覚的に影響の強いインクを計算する際の自由度を最も大きくすることで、高品位なパラメータを作成することが可能である。
また、1つのインクについて局所変動処理パラメータ計算が終了している場合には、これ以降のインクのドット配置計算時には、メディア上において人間が知覚する明度分布を計算する際に、既に決定しているインクの影響を考慮することが望ましい。
異なる色に対する局所変動量発生処理のパラメータの副走査方向についてのサイズを異ならせ、副走査方向の繰り返し周期を一致させないようにすることで視覚的に副走査方向のムラを排除することが好ましい。
図23に本実施形態に係る画像形成方法の工程を示すフローチャートを示す。同図に示したように、まず、ノズルのローカリティ特定工程(ステップS310)において、ノズル不良に起因する打滴ドットの理想状態からの変位を示すノズルのローカリティ情報を取得する。
この取得したローカリティ情報を基に、局所変動処理パラメータ算出工程(ステップS312)において、ローカリティを補正するための局所変動処理パラメータを算出する。
算出された局所変動処理パラメータは、記憶工程(ステップS314)においてメモリ(例えば、画像メモリ74、或いは不図示のEEPROM等)に記憶される。
その一方、図6で説明した通信インターフェース70を介して画像データ(RGBデータ)が入力されると(図23のステップS316)、その画像データは、デジタルハーフトーニング処理工程(ステップS318)においてCMYKのドットデータに変換される。
このデジタルハーフトーニング処理工程(ステップS318)で得られたCMYKのドットデータとステップS314の記憶工程で記憶した局所変動処理パラメータに基づき、局所変動処理工程(ステップS320)においてノズルのローカリティを補正する変動を与える処理を行い、ドットデータを補正する。
こうして、局所変動処理工程(ステップS320)による局所変動処理を実施して生成された補正後のCMYKドットデータに基づき、インク吐出制御工程(ステップS322において)、記録ヘッド(印字ヘッド50)の各ノズルのインク吐出動作を制御して印字(画像形成)を行う。
上記実施形態では、フルライン型の印字ヘッドを用いたインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。例えば、図24(a),(b)に示したように、記録メディア(記録紙16その他の印字媒体)136の幅Wm に足りない長さのラインヘッド(以下、印字ヘッド150という。)を用いて、複数回走査して画像形成する場合にも本発明は適用可能である。
なお、図24(a),(b)の印字ヘッド150内に描いた両向き矢印150Aはノズル並び方向とノズル列の長さを模式的に表しており、白抜き矢印152は印字ヘッド走査方向を表している。図24(a)は、1回目の走査の様子を示し、同(b)は走査位置を変えて実施されるN回目(Nは2以上の整数)の走査の様子を示している。
図示のとおり、印字ヘッド150は、その長手方向(ノズル並び方向)が記録メディア136の幅方向に沿って配置され、不図示のヘッド走査手段(キャリッジ、走行ガイドなどの支持機構及びこれを駆動するためのモータ等の駆動手段を含む。)によって印字ヘッド走査方向(白抜き矢印152方向)及び記録メディア136の幅方向(図24において横方向)に移動可能に支持されている。
記録メディア136の幅方向に対する印字ヘッド150の位置(走査位置)を変えながら、印字ヘッド走査方向に複数回の走査を実施することによって、記録メディア136上に画像が形成される。
なお、ここでは、印字ヘッド150を移動させる例を説明するが、記録メディア136に対して印字ヘッド150を相対的に移動させて走査を行えばよく、記録メディア136側を移動させる態様、或いは印字ヘッド150と記録メディア136の両方の移動を組み合わせて走査を行う態様も可能である。
図24(a),(b)に示したとおり、各走査において、印字ヘッド150はそれぞれ異なる位置を走査するが、これら各走査によって相対的に記録メディア136上を移動したノズルを、図25に示すように、仮想的な記録メディア幅(Wm)のラインヘッド155上の対応する位置のノズルとみなすことによって、印字ヘッド150を記録メディア136の幅Wm に対応する長さのノズル列155Aを有する仮想的なラインヘッド155の一部とみなすことができる。すなわち、この仮想的なラインヘッド(フルライン型ヘッド)155について、既述のフルライン型の印字ヘッド50の実施形態と同様に、本発明のアルゴリズムを適用可能である。
また、図26(a),(b)に示すように、印字ヘッド150をシャトルスキャンして画像を形成する場合も同様に、仮想的なラインヘッドに変換可能であり、本発明のアルゴリズムを適用可能である。
図26(a),(b)中、図24(a),(b)と同一又は類似する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図26(a),(b)において、印字ヘッド150は、その長手方向(ノズル並び方向)が記録メディア136の送り方向(白抜き矢印154で示したメディア送り方向)に沿って配置され、メディア送り方向と略直交する方向に印字ヘッド150が走査される。
印字ヘッド150による走査と、記録メディア136の移動との組み合わせによって、記録メディア136と印字ヘッド150との相対位置を変えながら、複数回の走査を行うことにより、記録メディア136上に画像が形成される。
上記実施の形態では画像記録装置の一例としてインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、ラインヘッドを有する熱転写記録装置、LED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど各種方式の画像記録装置(画像形成装置)についても本発明を適用することが可能である。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12K,12C,12M,12Y…印字ヘッド、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、24…印字検出部、50…印字ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、53…インク室ユニット、58…アクチュエータ、72…システムコントローラ、76…モータドライバ、80…プリント制御部、84…ヘッドドライバ、100…ローカリティ特定部、102…局所変動マトリックス生成部、104…記憶部、110…デジタルハーフトーニング部、112…局所変動処理部、114…ヘッド駆動信号生成部、136…記録メディア、150…印字ヘッド