JP2005093751A - パターニング用基板の製造方法およびパターニング用基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】流動性の塗工液を基板表面にパターン状に形成する際に、精度良くパターンを形成することを可能とするパターニング用基板の製造方法およびパターニング用基板を提供する。
【解決手段】基板よりも液体との接触角が高い撥液性層とを有するパターニング用基板の製造方法であって、基板上に、上記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層を形成する撥液性層形成用塗工液を塗布し、パターン状に撥液性層を形成する撥液性層形成工程と、上記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して、その全面に除去処理を施す除去工程と、液体との接触角を高める接触角回復処理を、上記除去工程後の上記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して施すことにより、上記撥液性層の液体との接触角を、上記除去工程後よりも高くする接触角回復処理工程とを有することにより上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

濡れ性の違いを利用して、パターンを形成することが可能なパターニング用基板の製造方法に関するものである。
一般的に、パターニング用基板の製造方法は、親液性隔壁形成後、隔壁表面を撥液化処理する方法と、撥液性隔壁形成後、パターン形成部の親液化処理を行なう方法の2つに大別することができる。前者の方法としては、特許文献1に記載されているようにフッ素原子を含有するガスを導入してプラズマ照射を行なう方法や、後者の方法としては、特許文献2に記載されているように撥液性隔壁に保護膜を設けて、UV照射や酸素プラズマ処理等の親液化処理を行なう方法、または、特許文献3に記載されているように、全面にUV照射を行ない、凸部を撥液性、凹部を親液性にする方法がある。
しかしながら、上述した特許文献1に開示された方法では、フッ素ガスによる撥液化処理は、有機物すべてに付着するため、絶縁層を形成する材料の選択の幅が狭くなるといった問題があり、特許文献2に記載された発明では、保護膜を形成する工程が追加される為、生産性が悪いといった問題があった。また特許文献3では、凹部を親液化する際に、凸部も親液化され凸部の撥液性が低下するおそれがあった。
特開2000−353594 特開2002−22933 特開平9−230129
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、流動性の塗工液を基板表面にパターン状に形成する際に、所定の領域外に塗工液が濡れ広がることなく精度良くパターンを形成することを可能とするパターニング用基板の製造方法およびパターニング用基板を提供することを主目的とするものである。
本発明は、上記目的を達成するために、基板と、上記基板上にパターン状に形成され、上記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層とを有するパターニング用基板の製造方法であって、基板上に、上記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層を形成する撥液性層形成用塗工液を塗布し、パターン状に撥液性層を形成する撥液性層形成工程と、上記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して、その全面に除去処理を施す除去工程と、液体との接触角を高める接触角回復処理を、上記除去工程後の上記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して施すことにより、上記撥液性層の液体との接触角を、上記除去工程後よりも高くする接触角回復処理工程とを有することを特徴とするパターニング用基板の製造方法を提供する。
除去処理を施すと、異物等の残渣を除去することができるため、除去処理が施された領域においては、液体との接触角が低下する方向に変化し、親液化される。したがって、上記除去工程後は、撥液性層が形成されていない領域は親液性が高まり、また、撥液性層においては、その撥液性が低下する。しかしながら、除去工程後に接触角回復処理工程を行うことにより、撥液性層において、除去処理により一度低下した撥液性を、所望の程度まで再び高めることができる。よって、予め形成された撥液性層のパターンに応じて、基板上に明確な濡れ性の違いによるパターンが精度良く形成されたパターニング用基板を簡便な工程で容易に製造することができる。
さらに本発明においては、上記接触角回復処理は、加熱処理であることが好ましい。特に煩雑な手間を要せず、簡便な方法で、十分に撥液性を回復させることができるからである。
本発明はまた、上記除去工程における除去処理は、プラズマ照射処理またはUV−オゾン洗浄処理であることが好ましい。基板上に存在する異物等の除去を容易に行うことができ、さらに、処理を施すことにより親液化を図ることができるからである。
さらにまた本発明においては、基板と、上記基板上にパターン状に形成され、上記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層とを有するパターニング用基板の製造方法であって、基板上に、上記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層を形成する撥液性層形成用塗工液を塗布し、パターン状に撥液性層を形成する撥液性層形成工程と、上記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して、その全面にプラズマ照射処理を施すプラズマ照射処理工程とを有することを特徴とするパターニング用基板の製造方法を提供する。
プラズマ照射処理を施すと、異物等の残渣を除去することができるため、上記プラズマ照射処理工程後は、撥液性層が形成されていない領域の親液性を高めることができる。したがって、簡便な工程でパターンを精度良く形成することができる。
また本発明においては、基板と、上記基板上にパターン状に形成され、上記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層とを有するパターニング用基板であって、上記撥液性層の表面粗さが、2nm以上であることを特徴とするパターニング用基板を提供する。
本発明においては、基板よりも撥液性が高い撥液性層において、その表面における表面粗さを上記範囲とすることにより、材料面に加えて形状面においても、撥液性を高めることができるため、明確な濡れ性の違いを得ることができる。したがって、このようなパターニング用基板を用いることにより、所定の位置に、均一にムラ無く、所望の部材を精度良く形成することができる。
除去処理を施すと、異物等の残渣を除去することができるため、除去処理が施された領域においては、液体との接触角が低下する方向に変化し、親液化される。したがって、上記除去工程後は、撥液性層が形成されていない領域は親液性が高まり、また、撥液性層においては、その撥液性が低下する。しかしながら、除去工程後に接触角回復処理工程を行うことにより、撥液性層において、除去処理により一度低下した撥液性を、所望の程度まで再び高めることができる。よって、予め形成された撥液性層のパターンに応じて、基板上に明確な濡れ性の違いによるパターンが精度良く形成されたパターニング用基板を簡便な工程で容易に製造することができる。
以下、本発明のパターニング用基板の製造方法およびパターニング用基板について説明する。
A.パターニング用基板の製造方法
まず、本発明のパターニング用基板の製造方法について説明する。本発明のパターニング用基板の製造方法は、撥液性層をパターン状に形成した後の工程の違いにより2つの態様に分けることができる。以下、第1実施態様および第2実施態様に分けて本発明のパターニング用基板の製造方法について説明する。
1.第1実施態様
第1実施態様におけるパターニング用基板の製造方法は、基板と、前記基板上にパターン状に形成され、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層とを有するパターニング用基板の製造方法であって、
基板上に、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層を形成する撥液性層形成用塗工液を塗布し、パターン状に撥液性層を形成する撥液性層形成工程と、
前記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して、その全面に除去処理を施す除去工程と、
液体との接触角を高める接触角回復処理を、前記除去工程後の、前記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して施すことにより、前記撥液性層の液体との接触角を、前記除去工程後よりも高くする接触角回復処理工程とを有することを特徴とするものである。
このような本実施態様のパターニング用基板の製造方法について図面を用いて説明する。図1は、本実施態様のパターニング用基板の製造方法の一例を示した概略断面図である。まず、図1(a)に示すように、電極層2が形成された基板1上に、当該電極層2が有する液体との接触角よりも高い接触角を有する撥液性の撥液性層形成用塗工液を塗布し、撥液性膜3を形成する。なお、上記撥液成膜3は、撥液性物質αを含むものである。その後、図1(b)に示すように、撥液性膜3に対してマスク4を介して紫外線5を照射し、現像、洗浄等を行うことにより、図1(c)に示すように、パターン状に形成された撥液性層3´を得る。
さらに、撥液性層3´をパターン状に形成した後、図1(d)に示すように、基板1全面に対して除去処理6を施す。これにより、例えば、撥液性層3´のパターニングを行った際に、撥液性膜3が除去された領域aに残存する撥液性膜3の残渣(撥液性物質α)を除去することができる。よって、除去処理6後は、撥液性膜3が除去された領域aの親液性を高めることができる。しかしながら、本実施態様においては、撥液性層3´に対しても除去処理6が施されることから、撥液性層3´も親液化され、その撥液性は低下してしまう。
次に、図1(e)に示すように、加熱処理7を施す。本実施態様においては、加熱処理を施すことにより、上記除去処理6により一度低下した撥液性層3´の撥液性を、所定の程度まで再び高めることができる(図1(f)参照)。すなわち、除去処理6後の撥液性層3´と比較して、加熱処理7後の撥液性層3´の方が、液体との接触角を高くすることができる。これにより、精度良く形成された撥液性層のパターンに応じて、充分な濡れ性の差を有するパターニング用基板を簡便な方法で、容易に製造することができる。
このような本実施態様のパターニング用基板の製造方法について各工程に分けて、以下、詳細に説明する。
(1)撥液性層形成工程
まず、本実施態様における撥液性層形成工程について説明する。本実施態様における撥液性層形成工程は、基板上に、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層を形成する撥液性層形成用塗工液を塗布し、パターン状に撥液性層を形成する工程である。
本工程により撥液性層のパターニングを行う。このような本工程において、撥液性層のパターニングの方法は、所望の形状に精度良く撥液性層をパターン状に形成することが可能な方法であれば特に限定はされない。具体的には、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、熱転写法、レーザ転写法等を挙げることができる。
また、本工程において、基板上に塗布する撥液性層形成用塗工液としては、後述する基板が有する液体との接触角よりも、高い液体との接触角を有する撥液性層を形成することが可能な塗工液であれば特に限定はされない。具体的には、適切な溶媒に、撥液性を有する材料が溶解したものを挙げることができる。例えば、撥液性を有する材料としては、樹脂材料自体が撥液性を有するものである場合と、樹脂材料に添加剤を付与して撥液性を付与する場合とがある。
まず、樹脂材料自体が撥液性を有する場合に、撥液性層を形成する材料としては、ポリテトラフルオロエチレンや、フルオロ脂肪族基を含むアクリレートまたはメタクリレートおよびフッ素を含まないアクリレートまたはメタクリレートの共重合体等の含フッ素高分子化合物を挙げることができる。上記フルオロ脂肪族基を含むメタクリレートモノマーとしては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ハイドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルブチル)−2−ハイドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ハイドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−8−メチルデシル)−2−ハイドロキシプロピルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロベチルメタクリレート、1H,1H,11H−イコサフルオロノニルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロヘチルエチルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート等を挙げることができる。さらに、フルオロ脂肪族基を含むアクリレートモノマーとしては、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ハイドロキシプロピルアクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルオクチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルアクリレート、2,2,3,3,3−テトラフルオロアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロベンチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、1H,1H,11H−イコサフルオロデシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチルアクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルアクリレート等を挙げることができる。このように上述したフルオロ脂肪族基を含むメタクリレートモノマーまたはアクリレートモノマーから1種類および2種類以上を選択し、これらとフッ素を含有しないアクリレートモノマーまたはメタクリレートモノマーとを共重合させることにより、上述したような含フッ素高分子化合物を得ることができる。なお、上述したフルオロ脂肪族基を含むメタクリレートモノマーまたはアクリレートモノマーから1種類以上を選択し、これらのみから構成される共重合体とする場合であってもよい。
なお、上述した含フッ素高分子化合物とフッ素を含有しない一般の高分子材料とを共重合させた共重合体を用いて撥液性層を形成することも可能である。
一方、樹脂材料に添加剤を付与して撥液性を付与する場合における撥液性層を形成する材料としては、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、他、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、フッ素化合物含有樹脂、ケイ素含有樹脂等の樹脂に撥液性を有する添加剤を添加したもの等を挙げることができる。
例えば、撥液性を有する添加剤としては、パターニング用基板を種々の用途に用いた場合に、基板上に形成する部材に対して悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、界面活性剤、または、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、パーフルオロアルキル基含有アクリレートまたはメタクリレートを主成分とする共重合オリゴマー、フッ素化合物を有するケイ素含有化合物等を挙げることができる。
上記界面活性剤としては、種々のものがあるが、例えば一般の界面活性剤の親油基の水素をフッ素に置換してパーフルオロアルキル基としたものが挙げられる。具体的には、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロエチレンオキシド、パーフルオロアルキルオリゴマー、パーフルオロアルキルスルホン酸のアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸のカリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸のカリウム塩等のアニオンタイプ、パーフルオロアルキル第4級アンモニウムヨウ化物等のカチオンタイプ、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル等のノニオンタイプが挙げられる。
また、共重合オリゴマーとしては、中でもパーフルオロアルキル基含有アクリレートまたはメタクリレートを主成分とするものを用いることが好ましい。例えば、市販品としては、サーフロン(ランダム型オリゴマー;セイミケミカル社製)、アロンG(グラフト型オリゴマー;東亜合成化学社製)、モディパーF(ブロック型オリゴマー;日本油脂社製)等を挙げることができる。
さらに、フッ素化合物を有するケイ素含有化合物としては、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンであることが好ましい。具体的には、フルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物を挙げることができる。また、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られているものを使用してもよい。
本実施態様においては、上記樹脂材料自体が撥液性を有する材料で形成した場合であっても、必要がある場合はさらに上述した撥液性を付与する添加剤を加えるようにしてもよい。
このような撥液性層形成用塗工液を用いて形成された撥液性層において、その撥液性の程度としては、後述する基板よりも、液体との接触角が高いのであれば特に限定はされない。具体的には、純水の撥液性層に対する接触角が、30°〜150°の範囲内、中でも、50°〜120°の範囲内であることが好ましい。
なお、ここでいう、接触角は、純水を用いその接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果に基づいて規定したものである。
(基板)
次に、基板について説明する。本実施態様において基板とは、その表面に上述した撥液性層が形成されるものであり、パターニング用基板を一定の形状に保持する支持体として機能するものである。また、このような基板は、支持体として機能する部材の他に、本実施態様のパターニング用基板の用途に応じて、他の部材が形成されている場合も含むものとする。例えば、電極層、または、水分、酸素等のガスを遮断するガスバリアー層等が形成されている基板であってもよい。このような場合には、上述した撥液性層は、基板表面に形成された他の部材よりも、液体との接触角が高いものとする。具体的には、図1に示すように、基板1上に電極層2が形成されている場合は、撥液性層3は、この電極層2と比較して、液体との接触角が高いものとする。
このような基板において、支持体として機能する部材としては、一般的にそのような機能を有するものとして使用されているものであれば特に限定はされない。例えば、透明材料からなるものでも、不透明材料からなるものでもよく、ガラス等の無機材料、樹脂等の有機材料を挙げることができる。具体的に使用可能な樹脂としては、フィルム状に成形が可能なものであれば特に限定はされない。中でも、耐溶媒性、耐熱性の比較的高い高分子材料からなるものであることが好ましい。例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル-スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。本実施態様においては、この他でも条件を満たす高分子材料であれば使用可能であり、さらに、これら2種類以上の共重合体であっても良い。
(2)除去工程
次に、本実施態様における除去工程について説明する。本実施態様における除去工程は、上記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して、その全面に除去処理を施す工程である。
本工程において、除去処理を施すと、上記撥液性層形成工程の際に撥液性層を除去した箇所に残存する異物等の残渣を除去することができる。これに伴い、除去処理が施された箇所の濡れ性を向上させることができる。また、除去処理の方法によっては、表面が改質されることによって濡れ性が向上する場合がある。
なお、ここでいう濡れ性が向上するとは、液体との接触角が低下する方向に濡れ性が変化することを意味する。
本実施態様においては、このような除去処理を基板全面に施していることから、上記撥液性層形成工程において撥液性層が除去された部分に関しては、そのような部分に残存する撥液性層等の残渣を除去することができるので、より親液化を図ることができると同時に、撥液性層においては、その撥液性が低下することとなる。しかしながら、後述する撥液性回復処理工程を行うことにより、最終的に得られるパターニング用基板においては、充分な濡れ性の違いを有するパターンが形成されたものを製造することができる。
本工程における除去処理としては、不要な箇所に残存する異物等を除去できる方法であれば特に限定はされないが、例えば、ドライエッチング処理を挙げることができる。具体的に、ドライエッチング処理としては、プラズマ照射処理、UV−オゾン洗浄処理等を挙げることができる。
上記プラズマ照射処理としては、異物等の残渣を除去することができ、親液化を図ることができるのであれば特に限定はされない。
また、プラズマ照射処理を施す際に用いる反応性ガスとしては、一般的に用いられている反応性ガスを使用することが可能である。中でも、異物を効率的に除去することが可能な反応性ガスであることが好ましい。このような反応性ガスの組成としては、フッ素またはフッ素化合物を含んだガス、塩素または塩素化合物を含んだガス、酸素、アルゴン等の組合せを挙げることができる。
次に、UV−オゾン洗浄としては、同様に異物等の除去が可能であり、親液化を図ることができるのであれば特に限定はされない。
具体的に本実施態様に使用されるオゾンとしては、オゾンを含有する酸素または空気が好適である。
また、本工程により、例えば、除去処理としてドライエッチング処理を施した後の、撥液性層表面の表面粗さは、2nm以上であることが好ましい。中でも5nm以上であることが好ましく、さらには、10nm以上、特に、20nm以上であることが最も好ましい。
本実施態様においては、例えば、除去処理としてドライエッチング処理を行った後の撥液性層表面の表面粗さの程度が上記範囲内となるように調節してそれらの処理を行うことにより、材料面のみならず、形状面においても、後述する接触角回復処理工程を施した後の撥液性層において、充分な撥液性を達成することができるからである。
なお、上記表面粗さは、AFM(原子間力走査型顕微鏡)を用いて測定した結果に基づいて規定したものである。
また本工程においては、上記除去処理を、上記撥液性層形成工程により形成された撥液性層を有する基板の全面に施す。したがって、撥液性層も除去処理が施されることとなり、上述したようにその撥液性の程度が低下することとなるが、本実施態様においては、後述する接触角回復処理を施すことにより、一度低下した撥液性を、所望の程度まで再び高めることができるため、最終的に得られるパターニング用基板においては、充分な濡れ性の差を有するパターンが形成されたものとすることができる。
(3)接触角回復処理工程
次に接触角回復処理工程について説明する。本実施態様における接触角回復処理工程は、液体との接触角を高める接触角回復処理を、除去工程後のパターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して施すことにより、撥液性層の液体との接触角を、除去工程後よりも高くする工程である。
本実施態様においては、このような本工程を行うことにより、上記除去工程により親液化され、一度撥液性が低下した場合であっても、再び所望の程度まで撥液性を回復させることができるので、上記撥液性層形成工程により形成した撥液性のパターンに応じた濡れ性の違いによるパターンを精度良く容易に形成することができる。
接触角回復処理としては、上記除去処理後の撥液性層が有する液体との接触角と比較して、接触角回復処理を施した後の撥液性層が有する液体との接触角の方が、高くなるような処理方法であれば特に限定はされない。具体的には、加熱処理または光照射等を挙げることができる。中でも、加熱処理であることが好ましい。特に煩雑な手間を要することなく簡易な方法であり、また、十分に液体との接触角を高めることができるからである。
具体的に加熱処理としては、撥液性を有する基板全体の温度を容易に上昇させ、ムラなく加温することが可能であるものならば特に限定されない。例えば、一般的に用いられている加熱装置等を使用することができる。具体的には、オーブン、遠赤外線ヒーター、ホットプレート、光の照射等が挙げられる。その中でも、ホットプレートによる加熱方法が好ましい。ホットプレートは、基材の下側から直接熱を伝導させて加温するため、熱効率に優れ、かつ加熱ムラの少ない装置であるからである。
また、加熱処理における温度としては、基材等に熱劣化を生じさせない温度であれば特に限定はされない。
このような本工程において、接触角回復処理を施すことにより、一度低下した撥液性層の撥液性を、再び所望の程度まで高めることができるが、具体的にその程度としては、純水の撥液性層に対する接触角が30°〜150°の範囲内、中でも、50°〜120°の範囲内であることが好ましい。上記範囲の撥液性を有するのであれば、撥液性層の境界において、容易に塗工液の進行を防止することが可能であるからである。
なお、上記接触角は上述した方法と同様の方法により測定した結果に基づいて規定した。
(4)その他
このように上述したパターニング用基板の製造方法により製造されたパターニング用基板の用途としては、パターニング用基板表面に形成された濡れ性の違いによるパターンを利用して、所望の部材を形成することができるのであれば特に限定はされない。具体的には、EL素子、カラーフィルタ、または、色変換フィルター等を形成する際に使用することができる。これらの用途に本実施態様のパターニング用基板の製造方法により製造されたパターニング用基板を用いることにより、濡れ性の違いを利用して、精度良くパターン状に所望の部材、例えば、EL素子であれば、発光層等の有機EL層を形成することができる。以下、具体的にEL素子の製造方法について説明する。
(EL素子の製造方法)
本発明におけるEL素子の製造方法は、少なくとも電極層を有する基板上に、前記電極層よりも液体との接触角が高い撥液性層を形成する撥液性層形成用塗工液を塗布し、パターン状に撥液性層を形成する撥液性層形成工程と、前記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して、その全面に除去処理を施す除去工程と、液体との接触角を高める接触角回復処理を、前記除去工程後の前記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して施すことにより、前記撥液性層の液体との接触角を、前記除去工程後よりも高くする接触角回復処理工程と、前記電極層上に、ノズル吐出法により有機EL層形成用塗工液を吐出して塗布することにより、有機EL層をパターン状に形成する工程とを有することを特徴とするものである。
本発明におけるEL素子の製造方法の一例については、上述した図1に示す。EL素子の製造方法においても、上述したパターニング用基板の製造方法と同様に、図1(a)に示すように、電極層2が形成された基板1上に撥液性層を形成する撥液性層形成用塗工液を塗布し撥液成膜3を成膜した後、図1(b)に示すように、マスク4を用いて紫外線5をパターン状に照射し、現像、洗浄等を行うことにより、撥液性層3´をパターン状に形成する(図1(c)参照)。撥液性層3´をパターン状に形成した後、図1(d)に示すように、基板1全面に対して除去処理6を施す。次に、図1(e)に示すように、加熱処理7を施す。本発明においては、加熱処理7を施すことにより、上記除去処理6により一度低下した撥液性層3´の撥液性を、所定の程度まで再び高めることができる(図1(f)参照)。これにより、電極層2と撥液性層3´との濡れ性の違いによるパターンが精度良く形成されたパターニング用基板を得る。EL素子の製造方法においては、次いで、撥液性膜3が除去され、親液性を有する電極層2上の領域aに、発光層を形成するための発光層形成用塗工液を、インクジェット装置により、吐出することにより塗布する。この発光層形成用塗工液を固化させることにより、所定の位置に発光層を形成し、さらに、対向電極層等を形成することによりEL素子を作製することができる。
本発明においては、上述したパターニング用基板の製造方法により製造されたパターニング用基板を用いてEL素子を製造していることから、発光層等の有機EL層を形成する際に、所定の領域以外に塗工液が濡れ広がることが防止され、均一にムラ無く、発光層等を精度良く形成することができる。
2.第2実施態様
次に、第2実施態様のパターニング用基板の製造方法について説明する。
本実施態様のパターニング用基板の製造方法は、基板と、前記基板上にパターン状に形成され、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層とを有するパターニング用基板の製造方法であって、
基板上に、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層を形成する撥液性層形成用塗工液を塗布し、パターン状に撥液性層を形成する撥液性層形成工程と、
前記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して、その全面にプラズマ照射処理を施すプラズマ照射処理工程とを有することを特徴とするものである。
本実施態様においては、撥液性層形成工程を行った後、プラズマ照射処理を施すことにより、不要な箇所に存在する異物等の残渣を除去することができるため、上記プラズマ照射処理工程後は、撥液性層が形成されていない領域の親液性を高めることができる。したがって、簡便な工程でパターンを精度良く形成することができる。
このような利点を有する本実施態様のパターニング用基板の製造方法について、撥液性層形成工程およびプラズマ照射処理工程の各工程に分けて説明する。なお、この内、撥液性層形成工程は、上述した第1実施態様と同様なのでここでの説明は省略する。
(プラズマ照射処理工程)
本実施態様において、プラズマ照射処理工程は、パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して、その全面にプラズマ照射処理を施す工程である。
プラズマ照射処理を施すことにより、不要な箇所に存在する異物等の残渣を除去することができる。すなわち、撥液性層形成工程において撥液性層が除去された領域に残存する撥液性層の残渣を除去することができるため、そのような領域の親液化を図ることができる。
このような本工程におけるプラズマ照射処理については、上記第1実施態様の中に記載したものと同様なのでここでの説明は省略する。
B.パターニング用基板
次に、本発明のパターニング用基板について説明する。本発明のパターニング用基板は、基板と、前記基板上にパターン状に形成され、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層とを有するパターニング用基板であって、前記撥液性層の表面粗さが、2nm以上であることを特徴とするものである。
本発明においては、基板よりも撥液性が高い撥液性層において、その表面における表面粗さを上記範囲とすることにより、材料面に加えて形状面においても、撥液性を高めることができるため、明確な濡れ性の違いを得ることができる。したがって、このようなパターニング用基板を用いることにより、所定の位置に、均一にムラ無く、所望の部材を精度良く形成することができる。
このような本発明のパターニング用基板において、その表面粗さは、2nm以上であり、中でも5nm以上であることが好ましく、さらには、10nm以上、特に、20nm以上であることが最も好ましい。上記範囲内の表面粗さを有する撥液性層であればより高い撥液性を得ることができるからである。なお、上記表面粗さは、上述した方法と同様の方法により測定した結果に基づいて規定した。
このような本発明のパターニング用基板に用いられる基板および撥液性層の材料およびその製造方法については、上述した「A.パターニング用基板の製造方法」の各項目において説明したものと同様なのでここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
(実施例1)
(パターニング用基板の作製)
撥液性を有する材料として、モディパーF110(日本油脂社製)を20wt%混合したポジ型感光性樹脂TFR−H(東京応化社製)を基板全面にスピン塗布により成膜し、フォトマスクを用いて露光を行い、アルカリ現像液(NMD−3 東京応化社製)により現像を行った。これにより、パターン状に形成された撥液性層を得た。
次に、表面に撥液性層を有する基板全面に、ドライエッチング処理時間を30秒とし酸素プラズマ処理を行い、さらに、ホットプレートで、加熱温度を150℃とし加熱処理を行い、パターニング用基板を作製した。
(実施例2)
ドライエッチング処理時間を30分とした以外は、上記実施例1と同様にしてパターニング用基板を作製した。
(比較例)
酸素プラズマ処理および加熱処理を施さなかった以外は、上記実施例1と同様にしてパターニング用基板を作製した。
(評価)
上記実施例1、実施例2および比較例におけるパターニング用基板において、測定溶媒として純水を用いた場合の撥液性層における接触角、さらに、撥液性層の表面粗さを測定した結果を下記表1に示す。
Figure 2005093751
パターニング用基板の撥液性層が形成されていない領域の基板上にインクをインクジェット法により塗布したところ、実施例1および実施例2においては、基板上に良好に濡れ広がったが、比較例においては、濡れ広がりが悪かった。
(実施例3)
酸素プラズマ処理を行った後に、ホットプレートで加熱処理を行わなかった以外は、上記実施例1と同様にしてパターニング用基板を作製した。
(実施例4)
ドライエッチング処理時間を30分とした以外は、上記実施例3と同様にしてパターニング用基板を作製した。
(評価)
上記実施例3および実施例4におけるパターニング用基板において、測定溶媒として純水を用いた場合の撥液性層における接触角、さらに、撥液性層の表面粗さを測定した結果を下記表2に示す。
Figure 2005093751
上記実施例3および実施例4におけるパターニング用基板の撥液性層が形成されていない領域の基板上にインクをインクジェット法により塗布したところ、インクは基板上に良好に濡れ広がった。また、撥液性層によるインクのパターニングも良好であった。
本発明のパターニング用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 … 基板
2 … 電極層
3 … 撥液性膜
3´ … 撥液性層
4 … マスク
5 … 紫外線
6 … 除去処理
7 … 加熱処理
a … 撥液性膜を除去した領域

Claims (6)

  1. 基板と、前記基板上にパターン状に形成され、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層とを有するパターニング用基板の製造方法であって、
    基板上に、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層を形成する撥液性層形成用塗工液を塗布し、パターン状に撥液性層を形成する撥液性層形成工程と、
    前記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して、その全面に除去処理を施す除去工程と、
    液体との接触角を高める接触角回復処理を、前記除去工程後の前記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して施すことにより、前記撥液性層の液体との接触角を、前記除去工程後よりも高くする接触角回復処理工程と
    を有することを特徴とするパターニング用基板の製造方法。
  2. 前記接触角回復処理は、加熱処理であることを特徴とする請求項1に記載のパターニング用基板の製造方法。
  3. 前記除去工程における除去処理は、プラズマ照射処理であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターニング用基板の製造方法。
  4. 前記除去工程における除去処理は、UV−オゾン洗浄処理であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターニング用基板の製造方法。
  5. 基板と、前記基板上にパターン状に形成され、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層とを有するパターニング用基板の製造方法であって、
    基板上に、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層を形成する撥液性層形成用塗工液を塗布し、パターン状に撥液性層を形成する撥液性層形成工程と、
    前記パターン状に形成された撥液性層を有する基板に対して、その全面にプラズマ照射処理を施すプラズマ照射処理工程と
    を有することを特徴とするパターニング用基板の製造方法。
  6. 基板と、前記基板上にパターン状に形成され、前記基板よりも液体との接触角が高い撥液性層とを有するパターニング用基板であって、
    前記撥液性層の表面粗さが、2nm以上であることを特徴とするパターニング用基板。
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