以下に本発明の実施の形態を説明するが、本明細書に記載の発明と、発明の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本明細書に記載されている発明をサポートする実施の形態が本明細書に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の実施の形態中には記載されているが、発明に対応するものとして、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その発明に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が発明に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その発明以外の発明には対応しないものであることを意味するものでもない。
さらに、この記載は、本明細書に記載されている発明の全てを意味するものではない。換言すれば、この記載は、本明細書に記載されている発明であって、この出願では請求されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により出現、追加される発明の存在を否定するものではない。
本発明によれば、基板が提供される。この基板(例えば、図1のバイオアッセイ基板11)は、被検体を識別する所定の数のDNAマーカ(例えば、SNPs)を検出する第1の検出物質(例えば、DNAマーカのプローブ)が配置されているとともに、標的物質(例えば、発現遺伝子)を検出する第2の検出物質(例えば、標的物質検出用のプローブ)が配置されている。
第1の検出物質の種類は、被検体を識別するのに必要な数(例えば、32)より多くすることができる。
本発明によれば、検査システムが提供される。この検査システム(例えば、図1の検査システム1)は、被検体を識別する所定の数(例えば、32)のDNAマーカ(例えば、SNPs)を特定する第1の特定情報(例えば、図13のメモリ222に記憶されているゲノム情報303)を記憶する記憶手段(例えば、図9のメモリ222)と、第1の特定情報で特定されるDNAマーカを検出する検出物質であって、基板上に配置された第1の検出物質(例えば、図5のプローブDNA)に結合したDNAマーカを検出する第1の検出手段(例えば、図16のステップS73の処理を実行する図6の励起光検出部73)と、標的物質(例えば、発現遺伝子)を検出する検出物質であって、基板上に配置された第2の検出物質(例えば、標的物質検出用のプローブ)に結合した標的物質を検出する第2の検出手段(例えば、図16のステップS74の処理を実行する図6の励起光検出部73)と、第1の検出手段によって検出されたDNAマーカを特定する第2の特定情報(例えば、図13のバイオアッセイ装置12が検出したゲノム情報303)を生成する第1の情報生成手段(例えば、図16のステップS75の処理を実行する図6の制御部76)と、第2の検出手段によって検出された標的物質を示す検出情報(例えば、図13の生体情報304)を生成する第2の情報生成手段(例えば、図16のステップS76の処理を実行する図6の制御部76)と、第2の特定情報が第1の特定情報に一致するか否かを判定する判定手段(例えば、図9の判別部243)と、第2の特定情報が第1の特定情報に一致すると判定された場合、検出情報を記憶するように記憶を制御する記憶制御手段(例えば、図9の制御部241)とを含む。
本発明によれば、検査装置が提供される。この検査装置(例えば、図1のバイオアッセイ装置12)は、被検体を識別する所定の数のDNAマーカ(例えば、SNPs)を検出する検出物質であって、基板上に配置された検出物質(例えば、図5のプローブDNA)に結合したDNAマーカを検出する検出手段(例えば、図6の励起光検出部73)と、検出手段により検出されたDNAマーカから、所定の数(例えば、32)のDNAマーカを選択する選択手段(例えば、図11のステップS46の処理を実行する図6の制御部76)と、選択されたDNAマーカを特定する特定情報(例えば、図13のゲノム情報303)を生成する情報生成手段(例えば、図11のステップS47の処理を実行する図6の制御部76)とを含む。
この検査装置は、データ記憶媒体(例えば、図1のデータ記憶媒体17)への特定情報の記憶を制御する記憶制御手段(例えば、図11のステップS49の処理を実行する図6の制御部76)をさらに設けることができる。
特定情報に、DNAマーカのゲノム上の位置を示す位置情報(例えば、図12の遺伝子の位置)、およびDNAマーカの塩基の配列を示す配列情報(例えば、図12の配列情報)を含ませることができる。
選択手段は、被検体を識別するのに必要な予め定められている種類のDNAマーカの他、さらに所定の数のDNAマーカをランダムに選択するようにすることができる。
この検査装置は、DNAマーカを含有する溶液(例えば、サンプルDNAを含有する溶液)を、検出物質を保持する基板(例えば、図1のバイオアッセイ基板11)に滴下する滴下手段(例えば、図6の滴下部72)をさらに設けることができる。
本発明によれば、検査方法が提供される。この検査方法は、被検体を識別する所定の数のDNAマーカ(例えば、SNPs)を検出する検出物質であって、基板上に配置された検出物質(例えば、図5のプローブDNA)に結合したDNAマーカを検出する検出ステップ(例えば、図11のステップS45の処理)と、検出ステップの処理において検出されたDNAマーカから、所定の数(例えば、32)のDNAマーカを選択する選択ステップ(例えば、図11のステップS46の処理)と、選択されたDNAマーカを特定する特定情報(例えば、図13のゲノム情報303)を生成する情報生成ステップ(例えば、図11のステップS47の処理)とを含む。
本発明によれば、プログラムが提供される。このプログラムは、被検体を識別する所定の数のDNAマーカ(例えば、SNPs)を検出する検出物質であって、基板上に配置された検出物質(例えば、図5のプローブDNA)に結合したDNAマーカを検出する検出ステップ(例えば、図11のステップS45の処理)と、検出ステップの処理において検出されたDNAマーカから、所定の数(例えば、32)のDNAマーカを選択する選択ステップ(例えば、図11のステップS46の処理)と、選択されたDNAマーカを特定する特定情報(例えば、図13のゲノム情報303)を生成する情報生成ステップ(例えば、図11のステップS47の処理)とをコンピュータに実行させる。
このプログラムは、記録媒体(例えば、図6の磁気ディスク81)に記録することができる。
本発明によれば、検査装置が提供される。この検査装置は、被検体を識別する所定の数(例えば、32)のDNAマーカ(例えば、SNPs)を検出する検出物質であって、基板上に配置された第1の検出物質(例えば、図5のプローブDNA)に結合したDNAマーカを検出する第1の検出手段(例えば、図16のステップS73の処理を実行する図6の励起光検出部73)と、標的物質(例えば、発現遺伝子)を検出する検出物質であって、基板上に配置された第2の検出物質(例えば、標的物質検出用のプローブ)に結合した標的物質を検出する第2の検出手段(例えば、図16のステップS74の処理を実行する図6の励起光検出部73)と、第1の検出手段によって検出されたDNAマーカを特定する特定情報(例えば、図13のゲノム情報303)を生成する第1の情報生成手段(例えば、図16のステップS75の処理を実行する図6の制御部76)と、第2の検出手段によって検出された標的物質を示す検出情報(例えば、図13の生体情報304)を生成する第2の情報生成手段(例えば、図16のステップS76の処理を実行する図6の制御部76)とを含む。
特定情報に、DNAマーカのゲノム上の位置を示す位置情報(例えば、図12の遺伝子の位置)、およびDNAマーカの塩基の配列を示す配列情報(例えば、図12の配列情報)を含ませることができる。
この検査装置は、DNAマーカおよび標的物質を含有する溶液を、第1の検出物質および第2の検出物質を保持する基板(例えば、図1のバイオアッセイ基板11)に滴下する滴下手段(例えば、図6の滴下部72)をさらに設けることができる。
本発明によれば、検査方法が提供される。この検査方法は、被検体を識別する所定の数(例えば、32)のDNAマーカ(例えば、SNPs)を検出する検出物質であって、基板上に配置された第1の検出物質(例えば、図5のプローブDNA)に結合したDNAマーカを検出する第1の検出ステップ(例えば、図16のステップS73の処理)と、標的物質(例えば、発現遺伝子)を検出する検出物質であって、基板上に配置された第2の検出物質(例えば、標的物質検出用のプローブ)に結合した標的物質を検出する第2の検出ステップ(例えば、図16のステップS74の処理)と、第1の検出ステップの処理において検出されたDNAマーカを特定する特定情報(例えば、図13のゲノム情報303)を生成する第1の情報生成ステップ(例えば、図16のステップS75の処理)と、第2の検出ステップの処理において検出された標的物質を示す検出情報(例えば、図13の生体情報304)を生成する第2の情報生成ステップ(例えば、図16のステップS76の処理)とを含む。
本発明によれば、プログラムが提供される。このプログラムは、被検体を識別する所定の数(例えば、32)のDNAマーカ(例えば、SNPs)を検出する検出物質であって、基板上に配置された第1の検出物質(例えば、図5のプローブDNA)に結合したDNAマーカを検出する第1の検出ステップ(例えば、図16のステップS73の処理)と、標的物質(例えば、発現遺伝子)を検出する検出物質であって、基板上に配置された第2の検出物質(例えば、標的物質検出用のプローブ)に結合した標的物質を検出する第2の検出ステップ(例えば、図16のステップS74の処理)と、第1の検出ステップの処理において検出されたDNAマーカを特定する特定情報(例えば、図13のゲノム情報303)を生成する第1の情報生成ステップ(例えば、図16のステップS75の処理)と、第2の検出ステップの処理において検出された標的物質を示す検出情報(例えば、図13の生体情報304)を生成する第2の情報生成ステップ(例えば、図16のステップS76の処理)とをコンピュータに実行させる。
このプログラムは、記録媒体(例えば、図6の磁気ディスク81)に記録することができる。
本発明によれば、データ記憶媒体が提供される。このデータ記憶媒体(例えば、図1のデータ記憶媒体17)は、被検体を識別する所定の数(例えば、32)のDNAマーカ(例えば、SNPs)を特定する第1の特定情報(例えば、図13のメモリ222に記憶されているゲノム情報303)を記憶する記憶手段(例えば、図9のメモリ222)と、第1の特定情報で特定されるDNAマーカであって、基板上に配置された検出物質であって、第1の検出物質(例えば、図5のプローブDNA)に結合したDNAマーカを特定する、検査装置(例えば、図1のバイオアッセイ装置12)から供給された第2の特定情報(例えば、図13のバイオアッセイ装置12が検出したゲノム情報303)が、第1の特定情報に一致するか否かを判定する判定手段(例えば、図9の判別部243)と、第2の特定情報が第1の特定情報に一致すると判定された場合、検査装置から供給された、基板上に配置された検出物質であって、第2の検出物質に結合した標的物質(例えば、発現遺伝子)の検出を示す検出情報(例えば、図13の生体情報304)を記憶するように記憶を制御する記憶制御手段(例えば、図9の制御部241)とを含む。
本発明によれば、データ構造が提供される。この特定データ(例えば、図13のゲノム情報303)のデータ構造は、被検体を識別する所定の数(例えば、32)のDNAマーカ(例えば、SNPs)のゲノム上の位置を示す位置情報(例えば、図12の遺伝子の位置を示す情報)と、DNAマーカの塩基の配列を示す配列情報(例えば、図12の配列情報)とを含む。
本発明によれば、データ記憶媒体が提供される。このデータ記憶媒体(例えば、図1のデータ記憶媒体17)は、被検体を識別する所定の数(例えば、32)のDNAマーカ(例えば、SNPs)のゲノム上の位置を示す位置情報(例えば、図12の遺伝子の位置を示す情報)と、DNAマーカの塩基の配列を示す配列情報(例えば、図12の配列情報)とを含む被検体の状態に関するデータが記憶されている。
図1は、本発明に係る検査システムの一実施の形態の構成を示すブロック図である。検査システム1は、バイオアッセイ基板11およびバイオアッセイ装置12を含む。検査システム1のバイオアッセイ装置12は、ネットワーク13およびインターネット14を介して、サーバ15に接続される。
ここで、バイオアッセイとは、ハイブリダイゼーションその他の物質間の相互反応に基づく生化学的分析を広く意味する。検査の対象となる被検体は、人間に限らず、動物、または植物を広く含む。
さらに、検査システム1は、リーダライタ16およびデータ記憶媒体17を含む。検査システム1のバイオアッセイ装置12は、ネットワーク13を介して、リーダライタ16およびデータ記憶媒体17に接続される。
バイオアッセイ基板11は、光学的にアクセス可能とされた円盤状基板上に、少なくとも、検出物質(例えば、ヌクレオチド鎖、ペプチド、タンパク質、脂質、低分子化合物、リボソームその他生体物質等)と標的物質との間のハイブリダイゼーション反応の場となる領域を備える。
ここで、検出物質や標的物質を構成するヌクレオチド鎖は、プリンまたはピリミジン塩基と糖がグリコシド結合したヌクレオチドのリン酸エステルの重合体を意味し、DNAプローブを含むオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチドが重合したDNA(全長あるいはその断片)、逆転写により得られるcDNA(cDNAプローブ)、RNA等を広く含む。
すなわち、バイオアッセイ基板11は、標的物質を検出するための検出物質が固定される。バイオアッセイ基板11には、電磁気的な情報を記録するための領域が設けられている。
バイオアッセイ装置12は、反応(結合)した標的物質および検出物質を検出する。例えば、バイオアッセイ装置12は、バイオアッセイ基板11に固定されている、標的物質に反応した検出物質を検出する。バイオアッセイ装置12は、検出された、反応(結合)した標的物質および検出物質に基づいて、情報を生成する。バイオアッセイ装置12は、所定の情報をバイオアッセイ基板11の電磁気的な情報を記録するための領域に記録させる。また、バイオアッセイ装置12は、バイオアッセイ基板11の電磁気的な情報を記録するための領域に記録されている情報を読み出す。
バイオアッセイ装置12は、ネットワーク13およびインターネット14を介して、サーバ15にアクセスして、所定の情報を取得する。
バイオアッセイ装置12は、検出された、反応(結合)した標的物質および検出物質に基づいて、生成された情報を、ネットワーク13を介して、リーダライタ16に供給する。リーダライタ16は、ネットワーク13を介して、バイオアッセイ装置12から供給された情報を取得する。リーダライタ16は、取得した情報をデータ記憶媒体17に書き込む。また、リーダライタ16は、データ記憶媒体17に記憶されている情報を読み出す。
データ記憶媒体17は、例えば、ICメモリカードであり、リーダライタ16から供給された情報を記憶し、記憶している情報をリーダライタ16に供給する。
次に、バイオアッセイ基板11について説明する。
図2は、バイオアッセイ基板11の上面(図2A)及び断面(図2B)を模式的に示したものである。
バイオアッセイ基板11はCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、MD(Mini-Disc)(商標)等の光情報記録媒体に用いられる円盤基板(ディスク)に採用される基材から形成されている。
バイオアッセイ基板11は、石英ガラスやシリコン、ポリカーボネート、ポリスチレンその他の円盤状に成形可能な合成樹脂、好ましくは射出成形可能な合成樹脂によって円盤状に形成される。なお、安価な合成樹脂基板を用いることで、従来のガラスチップに比して低ランニングコストを実現できる。
例えば、バイオアッセイ基板11は、CD、DVD等の光ディスクと同様の主面が円形の平板状の形状を呈している。また、バイオアッセイ基板11の中心には、中心孔31が形成されている。中心孔31には、バイオアッセイ基板11がバイオアッセイ装置12に装着されたときに、バイオアッセイ基板11を保持及び回転させるためのチャッキング機構が挿入される。
バイオアッセイ基板11の円形の主面は、図2Aに示すように、半径方向に同心円状に形成された記録領域32及び反応領域33の2つの領域に分けられている。図2で示される例では、記録領域32が内周側に位置し、反応領域33が外周側に位置している。記録領域32が外周側に位置し、反応領域33が内周側に位置するようにしてもよい。
記録領域32は、情報記録媒体である光ディスクと同様に、レーザが照射され光学的に情報の記録がされる領域である。記録領域32に記録された情報は、バイオアッセイ装置12によって読み出される。反応領域33は、プローブDNA(検出物質、検出用ヌクレオチド鎖)とサンプルDNA(標的物質、標的ヌクレオチド鎖)との相互反応の場、具体的にはハイブリダイゼーション反応の場となる領域である。
バイオアッセイ基板11の層構造は、図2Bで示されるように、情報層34と反応層35とから形成されている。ここでは、情報層34が下層、反応層35が上層に位置するものとする。また、バイオアッセイ基板11の反応層35側の表面を上面11a、情報層34側の表面を下面11bというものとする。
情報層34には、記録領域32に対応する平面領域に、例えばピットや相変化材料等のレーザが照射されることによりデータの再生又は記録再生がされる信号記録膜36が形成されている。信号記録膜36は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクと同様のディスク作成方法により形成することができる。
信号記録膜36は、バイオアッセイ基板11の下面11b側からレーザが照射されることにより、バイオアッセイ装置12において、信号(情報)が再生されるか、または信号(情報)が記録される。また、情報層34は、DNA解析時に照射される励起光及び制御光、並びに、DNA解析時に蛍光標識剤から発光される蛍光の波長を透過する材料により形成されている。例えば、情報層34は、石英ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリスチレン等の材料で形成されている。なお、励起光、制御光、および蛍光の詳細は後述する。
反応層35は、図3で示されるように、下層側から(すなわち情報層34側から)、基板層41と、透明電極層42と、固相化層43と、ウェル形成層44とから形成された層構造となっている。
基板層41は、詳細を後述する励起光及び制御光並びに蛍光の波長の光を透過する材料である。例えば、基板層41は、石英ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリスチレン等の材料で形成されている。
透明電極層42は、基板層41上に形成された層である。透明電極層42は、例えばITO(インジウム-スズ-オキサイド)等の光透過性があり且つ導電性を有する材料から形成されている。透明電極層42は、基板層41上に例えばスパッタリングや電子ビーム蒸着等により250nm程度の厚さに成膜され形成される。
固相化層43は、透明電極層42上に形成された層である。固相化層43は、プローブDNAの一端を固相化させるための材料から形成されている。本実施の形態では、固相化層43は、シランにより表面修飾可能なSiO2が、例えばスパッタリングや電子ビーム蒸着により50nm程度の厚さに成膜された層となっている。
ウェル形成層44は、固相化層43上に形成された層である。ウェル形成層44は、プローブDNAとサンプルDNAとの間のハイブリダイゼーション反応を起させる複数のウェル37を形成する層である。ウェル37は、バイオアッセイ基板11の上面11aが開口したくぼみ状となっており、サンプルDNAが含まれた溶液等が滴下されたときにその溶液を保留することができる程度の深さ及び大きさとなっている。例えば、ウェル37は、開口部が100μm四方の大きさに形成され、深さが5μm程度とされて、底面14に固相化層43が露出している。このようなウェル形成層44は、例えば、固相化層43上に感光性ポリミイドをスピンコート等で5μm程度の厚さに塗布し、塗布した感光性ポリミイドを所定のパターンでフォトマスクを用いて露光及び現像することで形成される。
さらに、ウェル37は、一端が官能基により修飾されたプローブDNAが底面45(固相化層43が露出した部分)に結合するように、底面45が官能基により表面修飾されている。例えば、ウェル37は、図4に示すように、OH基51を有するシラン分子52により、底面45(SiO2から形成されている固相化層43)が表面修飾されている。このため、ウェル37の底面45には、例えばNCO基で一端が修飾されたプローブDNAを結合させることができる。このようにバイオアッセイ基板11では、ウェル37の底面45に、プローブDNAの一端を結合させることができるので、図5に示すように、底面45から垂直方向に鎖が伸びるように、プローブDNA(P)を結合させることができる。
また、バイオアッセイ基板11では、図2で示されるように、複数のウェル37が、主面の中心から外周方向に放射状に向かう複数の列上に、例えば400μm程度の間隔で等間隔に並んで配置されている。ただし、ここでは、ウェル37が形成される平面領域は、反応領域33の範囲である。
また、バイオアッセイ基板11には、バイオアッセイ基板11の下面11b側からレーザを照射することにより読み取り可能なアドレスピット38が形成されている。アドレスピット38は、バイオアッセイ基板11の平面上における各ウェル37の位置を特定するためのピットであり、アドレスピット38から情報を光学的に読み取ることによって、バイオアッセイ装置12は、対応するウェル37を特定する情報を取得する。すなわち、アドレスピット38から情報を光学的に読み取ることによって、複数存在するウェル37のうち、現在レーザを照射している位置の1つのウェル37がどれであるかを特定することが可能となる。このようなアドレスピット38が設けてあることによって、後述する滴下装置による溶液の滴下位置の制御や、対物レンズによる蛍光検出位置の特定を行うことができる。
以上のようなバイオアッセイ基板11では、円板状に形成されているため、光ディスクシステムと同様の再生システムを利用することにより、レーザのフォーカシング位置を制御するためのフォーカシングサーボ制御、半径方向に対するレーザの照射位置や滴下装置による滴下位置の制御のための位置決めサーボ制御、並びに、アドレスピット38の情報検出処理をすることができる。つまり、アドレスピット38に記録してある情報内容と、そのアドレスピット38の近傍にあるウェル37とを対応させておくことにより、アドレスピット38の情報を読み出すことで、特定の1つのウェル37に対してのみレーザを照射して蛍光が発光しているウェル37の位置を特定したり、特定の1つのウェル37の位置と滴下装置との相対位置を制御して、その特定の1つのウェル37に対して溶液を滴下したりすることができる。
また、さらに、バイオアッセイ基板11では、バイオアッセイ用の物質間の相互反応を起させる領域(ウェル37)とともに、光ディスクと同様に各種の情報の記録再生を行う信号記録膜36が形成されており、円板状に形成した基板をより有用且つ多様的に利用することが可能となる。
例えば、バイオアッセイ基板11に、「バイオアッセイ基板11の動作制御に関する情報」、「ウェル37に固相化されているプローブDNAに関する情報」、「検査結果に関する情報」、「読み出し画像に関する情報」、「検出される遺伝子に関するネットワーク図」「検出される遺伝子関連URL」等を記録することができる。
バイオアッセイ基板11の動作制御に関する情報の具体例として、例えば、バイオアッセイ基板11を用いてDNAの解析を行う際の検査プログラム、その検査に必要な各種のデータ、検査プログラムのアップデート情報、バイオアッセイ基板11や解析装置の取り扱い説明書、検査処理の手順等が記録される。
このようなバイオアッセイ基板11の動作制御に関する情報を、物質間の相互反応を起させる領域とともに同一基板に記録することとによって、動作制御に関連する情報を別の記録媒体に記録して頒布する必要がなくなる。
また、ウェル37に固相化されているプローブDNAに関する情報の具体例として、各ウェル37に配置されているプローブDNAの種別やその配置位置、各ウェル37内のプローブDNAの説明、プローブDNAと疾病との関係、バイオアッセイ基板11の製造者や製造日時等が記録される。
このようなウェル37に固相化されているプローブDNAに関する情報を、そのプローブDNAが固相化されている同一基板に記録することによって、バイオアッセイ基板11の管理を確実且つ容易に行うことが可能となる。
また、検査結果に関する情報の具体例として、被検査者に関する情報(名前、年齢、性別等)、検査日時、検査場所、検査者、検査結果データ(反応領域から読み取った生データ)、検査結果に基づくDNA解析結果(ビジュアル的な検査結果データや疾病との関連付けを示すデータ等)、その被検査者の過去の検査結果(検査履歴)、その被検査者の他の検査結果等が記録される。
また、読み出し画像に関する情報の具体例としては、ハイブリダイゼーション反応による蛍光強度をCCDカメラ等で撮像し、その画像イメージを所定のフォーマット(例えば、JPEG(Joint Photographic Experts Group)方式)で記録する。これにより、一度検出に使用したバイオアッセイ基板11から再度蛍光強度を読み取る必要がなくなるだけでなく、時間と共に蛍光強度が劣化することによる測定誤差を減少させることができる。
また、検出される遺伝子に関するネットワーク図に関しては、例えばKEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)におけるPathway図などがあげられる。更にまた、検出される遺伝子に関するURL(Uniform Resource Locator)方式のアドレスデータを登録しておき、バイオアッセイ装置12に備えられたネットワークインターフェースを用いて情報検索することができる。
このような検査結果に関する情報を、検査結果のソースとなるサンプルDNAがハイブリダイゼーションされた同一のバイオアッセイ基板11に記録することによって、検査結果の取り扱いが確実且つ容易になる。
バイオアッセイ基板11では、以上のような情報に限らず、他のデータも記録することももちろん可能である。
なお、バイオアッセイ基板11では、主面を記録領域32と反応領域33との2つの領域に分けているが、記録領域32と反応領域33とが平面領域上で重なっていてもよい。この場合には、信号記録膜36の位置が反応領域33から厚み方向に、蛍光を励起するために照射するレーザ(詳細を後述する励起光)や制御用のレーザ(詳細を後述する制御光)の焦点深度より離間した位置に形成されていればよい。つまり、光ディスクの2層記録と同様に焦点の手前に信号記録膜36が位置すれば、反応領域33に充分到達するためである。
また、底面45は、検出表面の一例であり、検出表面は、ヌクレオチド鎖の末端を、カップリング反応その他の化学結合によって固定化できる好適な表面処理が施された表面部位を意味し、狭く解釈されない。一例を挙げれば、ストレプトアビジンによって表面処理された検出表面の場合には、ビオチン化されたヌクレオチド鎖の固定化に適する。あるいは、ヌクレオチド鎖の末端に磁気ビーズを取り付け、裏面から磁石等でヌクレオチド鎖を一時的に固定するようにすれば、表面処理を特段施す必要もない。
なお、ウェル37は、反応領域の一例であり、反応領域は、液相中でのハイブリダイゼーション反応の場を提供できる区画された領域又は空間である。
また、この反応領域では、本発明の目的、効果に合致する範囲において、タンパク質−タンパク質間、ヌクレオチド鎖−ヌクレオチド鎖間(DNA−DNA、DNA−RNA、RNA−RNAの双方を含む。)、タンパク質−ヌクレオチド鎖(二本鎖を含む。)間その他の高分子間の相互反応、高分子と低分子の相互反応、低分子間の相互反応などの反応をさせることができる。
例えば、二本鎖ヌクレオチドを用いる場合は、転写因子であるホルモンレセプター等のレセプター分子と応答配列DNA部分の結合等を分析することができる。
本発明に係るバイオアッセイ基板11では、上記した「反応領域」を、一壁面に検出表面が形成されたウェル構造を備えるウェル反応部とし、このウェル反応部を円盤状基板上に複数配設させた形態を採用することができる。なお、「ウェル反応部」とは、周辺の基板領域とは区画された小室状の反応領域を備える部位と定義する。
この「ウェル反応部」は、基板上の適宜な位置に配設することが可能であるが、上方視放射状を呈するように並べて配設すれば、基板上のスペースを有効に利用できるので、情報の集積密度を高めることができる。即ち、記録情報の集積量が多い(円盤状の)DNAチップを提供できる。
また、ウェル反応部は、互いにコンタミネーションしないように区画されているので、ウェル検出部単位またはグルーピングされた複数のウェル検出部単位で異なる検出用ヌクレオチド鎖を固定し、検出用ヌクレオチド鎖毎に別個独立の条件を設定してハイブリダイゼーション反応を進行させることができる。
例えば、疾病発症のマーカ遺伝子を基板上にグルーピングして固定できる。これにより、一つの基板を用いて、同時に複数の疾病の発現状況を確認することができる。
また、融解温度Tm(Melting Temperature)又はGC(Guanine-Cytosine)含有率の違いに基づいて、固定化する検出用ヌクレオチド鎖をグルーピングしておくことが可能となる。これにより、アクティブなハイブリダイゼーション反応が得られるバッファ組成、濃度等の反応条件、洗浄条件、滴下するサンプル溶液濃度等を、検出用ヌクレオチド鎖の性質に応じてきめ細かく選択することが可能となるので、解析作業において偽陽性又は偽陰性が示される危険性を格段に減少させることができる。
つぎに、上述したバイオアッセイ基板11を用いてDNA解析を行うバイオアッセイ装置12について、図6を参照して説明をする。
バイオアッセイ装置12は、図6で示されるように、バイオアッセイ基板11を保持して回転をさせるディスク装填部71と、ハイブリダイゼーションのための各種溶液を貯留するとともにバイオアッセイ基板11のウェル37にその溶液を滴下する滴下部72と、バイオアッセイ基板11のウェル37から励起光を検出するための励起光検出部73と、各部の管理及び制御を行う制御/サーボ部74と、バイオアッセイ基板11の信号記録膜36に対して信号の記録再生を行う記録再生部75とを備える。
さらに、バイオアッセイ装置12は、ネットワーク13を介してインターネット14に接続するためのネットワークインターフェース77と、記録再生部75やネットワークインターフェース77を制御し、所定のデータを加工、生成してバイオアッセイ基板11に情報を記録したり、情報を読み出したりする制御部76とを備えている。
さらにまた、バイオアッセイ装置12は、制御部76の制御に基づいて、所定の文字または画像を表示させる表示部78を備える。表示部78は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどからなる。
入力部79は、キーボード、マウス、ボタン、またはスイッチなどからなり、使用者の操作に応じた信号を制御部76に供給する。
制御部76には、必要に応じて、ドライブ80が接続される。ドライブ80は、装着された磁気ディスク81、光ディスク82、光磁気ディスク83、または半導体メモリ84に記録されているプログラムを読み出して、読み出したプログラムを制御部76に供給する。これにより、制御部76は、記録媒体の一例である磁気ディスク81、光ディスク82、光磁気ディスク83、または半導体メモリ84に記録されているプログラムを実行することができる。
更に、制御部76には、判別部85および測定動作制御部86が設けられている。判別部85は、各種の情報を比較し、情報の一致するか否かの判別の処理などを実行する。測定動作制御部86は、記録再生部75などを制御して、バイオアッセイ装置12の測定動作を制御する。
ディスク装填部71は、バイオアッセイ基板11の中心孔31内に挿入して、装着されているバイオアッセイ基板11を保持するチャッキング機構91と、チャッキング機構91を駆動することによりバイオアッセイ基板11を回転させるスピンドルモータ92と有している。ディスク装填部71は、上面11a側が上方向となるようにバイオアッセイ基板11を水平に保持した状態で、バイオアッセイ基板11を回転駆動する。
滴下部72は、試料溶液Sを貯留する貯留部93と、貯留部93内の試料溶液Sをバイオアッセイ基板11に滴下する滴下ヘッド94とを有している。滴下ヘッド94は、水平に装填されたバイオアッセイ基板11の上面11aの上方に配置されている。さらに、滴下ヘッド94は、図2で示される、バイオアッセイ基板11のアドレスピット38から読み出される位置情報及び回転同期情報に基づいてバイオアッセイ基板11との相対位置を半径方向に制御し、プローブDNA、サンプルDNA又は蛍光標識剤を含有する試料溶液Sを所定のウェル37に正確に追従して滴下する構成とされている。
励起光検出部73は、光学ヘッド101を有している。光学ヘッド101は、水平に装填されたバイオアッセイ基板11の下方側、すなわち、下面11b側に配置されている。光学ヘッド101は、例えば、図示していないスレッド機構等により、バイオアッセイ基板11の半径方向に移動自在とされている。
光学ヘッド101は、対物レンズ102と、対物レンズ102を移動可能に支持する2軸アクチュエータ103と、導光ミラー104とを有している。対物レンズ102は、その中心軸がバイオアッセイ基板11の表面に対して略垂直となるように2軸アクチュエータ103に支持されている。従って、対物レンズ102は、バイオアッセイ基板11の下方側から入射された光束を、装着されているバイオアッセイ基板11に対して集光することができる。2軸アクチュエータ103は、バイオアッセイ基板11の表面に対して垂直な方向、及び、バイオアッセイ基板11の半径方向の2方向に対物レンズ102を移動可能に支持している。2軸アクチュエータ103を駆動することにより、対物レンズ102により集光された光の焦点を、バイオアッセイ基板11の表面に対して垂直な方向及び半径方向に移動させることができる。従って、この光学ヘッド101では、光ディスクシステムにおけるフォーカス制御並びに位置決め制御と同様の制御を行うことができる。
導光ミラー104は、光路X上に対して45°の角度で配置されている。光路Xは、励起光P、蛍光F、制御光V及び反射光Rが、光学ヘッド101に対して入射及び出射する光路である。導光ミラー104には、励起光P及び制御光Vが光路X上から入射される。導光ミラー104は、励起光P及び制御光Vを反射して90°屈折させて、対物レンズ102に入射する。対物レンズ102に入射された励起光P及び制御光Vは、対物レンズ102により集光されてバイオアッセイ基板11に照射される。また、導光ミラー104には、蛍光F及び制御光Vの反射光Rが、バイオアッセイ基板11から対物レンズ102を介して入射される。導光ミラー104は、蛍光F及び反射光Rを反射して90°屈折させて、光路X上に出射する。なお、光学ヘッド101をスレッド移動させる駆動信号及び2軸アクチュエータ103を駆動する駆動信号は、制御/サーボ部74から与えられる。
また、励起光検出部73は、励起光Pを出射する励起光源105と、励起光源105から出射された励起光Pを平行光束とするコリメータレンズ106と、コリメータレンズ106により平行光束とされた励起光Pを光路X上で屈折させて導光ミラー104に照射する第1のダイクロックミラー107とを有している。
励起光源105は、蛍光標識剤を励起可能な波長のレーザを発する光源である。励起光源105から出射される励起光Pは、例えば、波長が405nmのレーザである。なお、励起光Pの波長は、蛍光標識剤を励起できる波長であればどのような波長であってもよい。コリメータレンズ106は、励起光源105から出射された励起光Pを平行光束にする。第1のダイクロックミラー107は、波長選択性を有する反射鏡であり、励起光Pの波長の光のみを反射して、蛍光F及び制御光V(その反射光R)の波長の光を透過する。第1のダイクロックミラー107は、光路X上に45°の角度を持って挿入されており、コリメータレンズ106から出射された励起光Pを反射して90°屈折させ、導光ミラー104に励起光Pを照射する。
また、励起光検出部73は、蛍光Fを検出するアバランジェフォトダイオード108と、蛍光Fを集光する集光レンズ109と、光学ヘッド101から光路X上に出射された蛍光Fを屈折させてアバランジェフォトダイオード108に照射する第2のダイクロックミラー110とを有している。
アバランジェフォトダイオード108は、非常に感度の高い光検出器であり、微弱な光量の蛍光Fを検出することが可能である。なお、アバランジェフォトダイオード108により検出する蛍光Fの波長は、ここでは470nm程度である。また、この蛍光Fの波長は、蛍光標識剤の種類により異なるものである。集光レンズ109は、アバランジェフォトダイオード108上に蛍光Fを集光するためのレンズである。第2のダイクロックミラー110は、光路X上に45°の角度を挿入されているとともに、導光ミラー104側から見て第1のダイクロックミラー107の後段に配置されている。従って、第2のダイクロックミラー110には、蛍光F、制御光V及び反射光Rが入射し、励起光Pは入射しない。第2のダイクロックミラー110は、波長選択性を有する反射鏡であり、蛍光Fの波長の光のみを反射して、制御光(反射光R)の波長の光を透過する。第2のダイクロックミラー110は、光学ヘッド101の導光ミラー104から出射された蛍光Fを反射して90°屈折させ、集光レンズ109を介してアバランジェフォトダイオード108に蛍光Fを照射する。
アバランジェフォトダイオード108は、このように検出した蛍光Fの光量に応じた信号を生成し、生成した信号を制御/サーボ部74に供給する。
また、励起光検出部73は、制御光Vを出射する制御光源111と、制御光源111から出射された制御光Vを平行光束とするコリメータレンズ112と、制御光Vの反射光Rを検出するフォトディテクト回路113と、非点収差を生じさせてフォトディテクト回路113に対して反射光Rを集光するシリンドリカルレンズ114と、制御光Vと反射光Rとを分離する光セパレータ115とを有している。
制御光源111は、例えば780nmの波長のレーザを出射するレーザ源を有する発光手段である。なお、制御光Vの波長は、アドレスピット38が検出でき、且つ、信号記録膜36に対して情報の記録及び再生ができる波長に設定されている。さらに、制御光Vの波長は、励起光P及び蛍光Fの波長と異なった波長に設定されている。このような波長であれば、制御光Vの波長は、780nmに限らずどのような波長であってもよい。コリメータレンズ112は、制御光源111から出射された制御光Vを平行光束にする。平行光束とされた制御光Vは光セパレータ115に入射される。
フォトディテクト回路113は、反射光Rを検出するディテクタと、検出した反射光Rからフォーカスエラー信号、位置決めエラー信号、及び、アドレスピット38の再生信号、並びに、信号記録膜36の再生信号を生成する信号生成回路とを有している。反射光Rは、制御光Vがバイオアッセイ基板11で反射して生成された光であるので、その波長は、制御光と同一の780nmである。
なお、光学ヘッド101によりバイオアッセイ基板11の反応領域33(外周側の領域)にレーザを照射している場合、フォーカスエラー信号は、対物レンズ102により集光された光の合焦位置とバイオアッセイ基板11の反応層35との位置ずれ量を示すエラー信号となり、位置決めエラー信号は、所定のウェル37の位置と焦点位置とのディスク半径方向に対する位置ずれ量を示す信号となる。光学ヘッド101によりバイオアッセイ基板11の記録領域32(内周側の領域)にレーザを照射している場合、フォーカスエラー信号は、対物レンズ102により集光された光の合焦位置と信号記録膜36との位置ずれ量を示すエラー信号となり、位置決めエラー信号は、信号記録膜36のトラック位置と焦点位置とのディスク半径方向に対する位置ずれ量を示す信号となる。
アドレスピット38の再生信号は、反応領域33(外周側の領域)にレーザを照射している場合のみに検出され、バイオアッセイ基板11に記録されているアドレスピット38に記述されている情報内容を示す信号である。この情報内容を読み出すことにより、現在、制御光Vを照射しているウェル37を特定することができる。
信号記録膜36の再生信号は、記録領域32(内周側の領域)にレーザを照射している場合のみに検出され、信号記録膜36のトラックに記録されている情報内容を示す信号である。
フォトディテクト回路113は、反射光Rに基づき生成されたフォーカスエラー信号、位置決めエラー信号及びアドレスピット38の再生信号を制御/サーボ部74に供給する。
シリンドリカルレンズ114は、フォトディテクト回路113上に反射光Rを集光するとともに非点収差を生じさせるためのレンズである。このように非点収差を生じさせることによりフォトディテクト回路113によりフォーカスエラー信号を生成させることができる。
光セパレータ115は、偏向ビームスプリッタからなる光分離面115aと1/4波長板115bにより構成されている。光セパレータ115では、1/4波長板115bの逆側から入射された光を光分離面115aが透過し、その透過光の反射光が1/4波長板115b側から入射された場合には光分離面115aが反射する。光セパレータ115は、光分離面115aが光路X上に45°の角度を挿入されているとともに、導光ミラー104側から見て第2のダイクロックミラー110の後段に配置されている。従って、光セパレータ115では、コリメータレンズ112から出射された制御光Vを透過して光学ヘッド101内の導光ミラー104に対してその制御光Vを入射させているとともに、光学ヘッド101の導光ミラー104から出射された反射光Rを反射することにより90°屈折させ、シリンドリカルレンズ114介してフォトディテクト回路113に反射光Rを照射する。
制御/サーボ部74は、励起光検出部73により検出されたフォーカスエラー信号、位置決めエラー信号及びアドレスピット38の再生信号に基づき、各種のサーボ制御を行う。
反応領域33(外周側の領域)にレーザを照射している場合には、制御/サーボ部74は、フォーカスエラー信号に基づき光学ヘッド101内の2軸アクチュエータ103を駆動して対物レンズ102とウェル37との間の間隔を制御し、位置決めエラー信号に基づき光学ヘッド101内の2軸アクチュエータ103を駆動して対物レンズ102とウェル37との半径方向の位置関係を制御し、アドレスピット38の再生信号に基づき光学ヘッド101のスレッド移動制御を行って光学ヘッド101を所定の半径位置に移動する。
記録領域32(内周側の領域)にレーザを照射している場合には、制御/サーボ部74は、フォーカスエラー信号に基づき光学ヘッド101内の2軸アクチュエータ103を駆動して対物レンズ102と信号記録膜36との間の間隔を制御し、位置決めエラー信号に基づき光学ヘッド101内の2軸アクチュエータ103を駆動して対物レンズ102と信号記録膜36の記録トラックとの半径方向の位置関係を制御する。
記録再生部75は、信号記録膜36に記録されているデータの再生信号の復調及び復号処理を行ってデータを出力するとともに、信号記録膜36に記録する記録データの符号化及び変調を行う。記録再生部75は、再生時には、励起光検出部73から出力された再生信号が入力され、外部に復調及び復号したデータを出力する。また、記録再生部75は、記録時には、外部から記録データが入力され、符号化及び変調がされたデータを励起光検出部73に供給して、制御光Vを出射する制御光源111を駆動する。
ネットワークインターフェース77は、予めバイオアッセイ基板11の記録領域32に記録されているURL(Uniform Resource Locator)方式のアドレスデータや、入力部79により指示されたアドレスなどを用いて、ネットワーク13およびインターネット14を介して、サーバ15にアクセスする。
制御部76は、記録再生部75で読み出されたハイブリダイゼーション結果に基づく画像イメージを所定のフォーマット(例えば、JPEG)の画像データに圧縮し、記録再生部75を介してバイオアッセイ基板11に記録させる。また、制御部76は、ネットワークインターフェース77を制御して、サーバ15から関連情報を収集し、収集した関連情報も同様に記録させる。更にまた、バイオアッセイ基板11がバイオアッセイ装置12に装着された際に、バイオアッセイ基板11が既に検査に使用されたか否かを、バイオアッセイ基板11に記録されている情報から判定し、バイオアッセイ基板11が既に検査に使用されたと判定された場合、書き込まれている画像イメージや収集データを表示したり、再度バイオアッセイ基板11を検査に使用しようとする際には、既に検査済みである旨の警告を表示部78に表示させ、測定動作を制限する。
以上のような構成のバイオアッセイ装置12では、バイオアッセイを行う場合には、次のような動作を行う。
バイオアッセイ装置12は、バイオアッセイ基板11を回転させながら、図7で示されるようにウェル37上にサンプルDNA(S)が含有された溶液を滴下し、プローブDNA(P)とサンプルDNA(S)とを相互反応(ハイブリダイゼーション)させる。また、ハイブリダイゼーション処理の済んだバイオアッセイ基板11上に蛍光標識剤Mを含んだバッファ溶液を滴下することにより、図8で示されるようにプローブDNA(P)とサンプルDNA(S)との二重らせん内に蛍光標識剤Mを挿入する。
また、バイオアッセイ装置12は、蛍光標識剤が滴下された後のバイオアッセイ基板11を回転させ、励起光Pをバイオアッセイ基板11の下面11b側から入射させてウェル37内の蛍光標識剤に照射し、その励起光Pに応じてその蛍光標識剤から発生した蛍光Fをバイオアッセイ基板11の下方から検出する。
ここで、バイオアッセイ装置12では、励起光Pと制御光Vとを同一の対物レンズ102を介してバイオアッセイ基板11に照射する。そのため、バイオアッセイ装置12では、制御光Vを用いたフォーカス制御、位置決め制御並びにアドレス制御を行うことによって、励起光Pの照射位置、すなわち、蛍光Fの発光位置を特定することが可能となり、その蛍光の発光位置からサンプルDNAと結合したプローブDNAを特定することができる。
また、以上のような構成のバイオアッセイ装置12では、データの記録及び再生時には、次のような動作を行う。
バイオアッセイ装置12は、励起光Pの出射を停止して、制御光Vのみを出射する。そして、バイオアッセイ基板11を回転させながらサーボ制御を行い、信号記録膜36上のトラックに対して、データの記録又は再生を行う。
このように、本発明に係るバイオアッセイ装置12は、バイオアッセイ基板11の検出表面に保持された状態の検出物質に蛍光標識された標的物質含有液を滴下して、検出物質と標的物質とを反応領域において相互反応させて反応生成物を作成させ、反応生成物に1つ以上の波長の励起光を照射することによって蛍光標的物質から発せられた蛍光を、反応部の反応領域から集光して蛍光強度を検出する。そして、バイオアッセイ装置12は、検出によって得られた蛍光強度に基づくデータを解析し、個人を特定できるSNPs等のDNAマーカと発現遺伝子を検出し、必要に応じてデータ記憶媒体17内に記憶されたDNAマーカと検出したDNAマーカの同一性を判定する。
なお、標的物質は予め蛍光標識されている場合の他に、滴下時に混合させて反応領域に滴下させる場合や、標的物質と蛍光物質をほぼ同時又は時系列的に前後して、かつ別々に滴下するようにしても良い。ここで、標的物質は蛍光色素で標識する手段か、インターカレータを用いる手段のいずれも採用できる。「インターカレータ」は、検出用ヌクレオチド物質と標的ヌクレオチド物質との塩基間の水素結合中に挿入されるようにして、ハイブリダイゼーションした二本鎖ヌクレオチド鎖に取り込まれる。これにより、インターカレータを含まない二本鎖ヌクレオチド鎖からの蛍光波長に比べ、長波長側に蛍光波長がシフトし、かつ、蛍光強度と二本鎖ヌクレオチド鎖に取り込まれたインターカレータの量との間には相関関係があるので、この相関関係に基づいて、定量的な検出が可能となる。これらにより検出された発現遺伝子情報は、リーダライタ16によってデータ記憶媒体17に書き込まれる。
次に、図9を参照してリーダライタ16およびデータ記憶媒体17について説明をする。
図9で示されるように、リーダライタ16は、制御部201、伝送部202、判別部203、メモリ204、入手部205を備える。
制御部201は、例えば、エンベデットコンピュータなどであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を含む。制御部201は、内蔵されているRAMまたはROMに記憶されているプログラムを実行して、リーダライタ16の全体を制御する。例えば、制御部201は、入力部205に、バイオアッセイ装置12から供給される所定のデータ(例えば、前述のゲノム情報、または生体情報など)を受信させるか、または、伝送部202に、データ記憶媒体17宛てに所定のデータまたはコマンドを送信させたり、データ記憶媒体17から送られてくるデータまたはコマンドを受信させたりする。
伝送部202は、制御部201の制御の基に、データ記憶媒体17と有線または無線を介して通信し、データ記憶媒体17にデータ若しくはコマンドを送信するか、またはデータ記憶媒体17から送信されたきたデータ若しくはコマンドを受信する。
判別部203は、バイオアッセイ装置12から供給された、一時的にメモリ204に記憶されているDNAマーカに関するゲノム情報と、データ記憶媒体17から読み出したゲノム情報とを比較し、バイオアッセイ装置12から供給されたゲノム情報とデータ記憶媒体17から読み出したゲノム情報とが同一であるか否かを判定する。制御部201は、バイオアッセイ装置12から供給されたゲノム情報とデータ記憶媒体17から読み出したゲノム情報とが同一であると判定された場合、バイオアッセイ装置12から供給された生体情報(具体的には発現遺伝子情報など)などのデータ記憶媒体17への書き込みを許可する。
メモリ204は、制御部201によって使用される、制御部201の状態や制御部201が使用するデータなどを一時的に記憶する。例えば、メモリ204は、入手部205で受信されたデータ(例えば、ゲノム情報または生体情報など)や、伝送部202で受信したデータなどを記憶する。
入手部205は、バイオアッセイ装置12とのインターフェースであり、制御部201の制御の基に、バイオアッセイ装置12と通信し、バイオアッセイ装置12から供給されたゲノム情報または生体情報を取得する。
データ記憶媒体17は、シングルチップコントローラ221およびメモリ222を含む。シングルチップコントローラ221は、いわゆるワンチッププロセッサなどからなり、データ記憶媒体17を制御する。メモリ222は、例えば、フラッシュメモリなどからなり、各種のデータを記憶する。
シングルチップコントローラ221は、さらに、制御部241、伝送部242、判別部243、メモリ244、およびメモリコントローラ245を備える。
制御部241は、CPUなどで構成され、実行しているプログラムに従って伝送部242、判別部243、メモリ244、およびメモリコントローラ245を制御する。例えば、制御部241は、伝送部242に、リーダライタ16から送信されてきたデータまたはコマンドを受信させるか、またはリーダライタ16宛てに各種のデータまたはコマンドを送信させる。さらに、制御部241は、判別部243を制御して、ゲノム情報が同一であるか否かを判定させたり、メモリコントローラ245を制御して、ゲノム情報または生体情報をメモリ222に記憶させたり、メモリ222からゲノム情報または生体情報を読み出させる。
伝送部242は、リーダライタ16に各種のデータまたはコマンドを送信したり、リーダライタ16から送信されてきた、各種のデータまたはコマンドを受信する。
判別部243は、リーダライタ16を介してバイオアッセイ装置12から送信されてきたゲノム情報と、メモリ222から読み出されたゲノム情報とが一致するか否かを判定する。
メモリ244は、制御部241の制御の実行に必要な各種のデータを一時的に記憶する。
メモリコントローラ245は、制御部241の制御の基に、メモリ222へのデータの読み書きを制御する。
メモリ222は、各種の情報を記憶する。例えば、メモリ222は、個人を特定するためのゲノム情報(DNAマーカを含む遺伝子配列を示す情報または遺伝子の存在位置を示す情報など)、臨床や診察時に採取した遺伝子情報である生体情報(変異遺伝子配列情報、SNPs情報、発現遺伝子情報(mRNAの存在の有無や発現量、局在情報)など)、住所、氏名、年齢、データ記憶媒体発行人、発行日、発行者、ゲノム情報収集者、収集日、生体情報収集者、収集日など、個人に関わる諸々の個人情報を記憶する。
例えば、メモリ222のゲノム情報格納領域251には、個人を特定するためのゲノム情報が格納される。メモリ222の生体情報格納領域252には、臨床や診察時に採取した遺伝子情報である生体情報が格納される。メモリ222の個人情報格納領域253には、個人に関わる各種の個人情報が格納される。
このように、本発明に係るデータ記憶媒体17は、リーダライタ16とのデータの送受信をする伝送部242と、個人を特定することができるゲノム情報であるデータを保存するメモリ222と、リーダライタ16から送られてきたゲノム情報とメモリ222に保存されているゲノム情報との同一性を判別する判別部243を備える。
なお、データ記憶媒体17は、IC(Integrated Circui)カードやメモリカード等、所定のデータ処理が可能で、データが記録/記憶できるものであればいずれでも良い。従って、データ記憶媒体17には、HDDにデータ処理可能なプロセッサを搭載したり、光ディスクメディアパッケージやテープメディアパッケージにプロセッサを搭載したりしたものも含まれる。
伝送部242は、有線・無線を問わず、リーダライタ16とデータ記憶媒体17とでデータ送受信ができる全てのものを包含し、具体的にはPC−Cardの規格に準拠するインターフェースやBlueToothの規格に準拠するインターフェース、またはPCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)の規格に準拠するインターフェースなどいずれでも良い。
メモリ222はデータの読み書きができ、データが保持できるものであればいずれでもよく、電池バックアップ付き半導体メモリ(DRAM(Dynamic RAM)、SRAM(Static RAM)等)、不揮発性半導体メモリ(EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、FRAM(Ferroelectronic RAM)、MRAM(Magnetoresistive RAM)等)、光磁気ディスク(CD、DVD、MD)、テープメディアなどいずれでも良い。
判別部243は、データ記憶媒体17に記憶されているゲノム情報とバイオアッセイ基板11から読み出したDNAマーカ配列とを比較し、同一性が確認された場合にのみ発現遺伝子などの生体情報をデータ記憶媒体17に記憶することを許諾する。
なお、データ記憶媒体17は、必要に応じてパスワード、指紋照合などの個人認証技術を応用し、内部に記録されたデータのアクセスを制限するようにしても良い。
リーダライタ16は、データ記憶媒体17とのデータの送受信ができる伝送部202と、バイオアッセイ装置12から発現遺伝子情報含む生体情報を入手するための入手部205と、必要に応じてデータ記憶媒体17に保存されているゲノム情報とバイオアッセイ基板11から読み出したゲノム情報の同一性を判別する判別203とを備える。
リーダライタ16に備えられた入手部205は、バイオアッセイ装置12と接続できるものであればいずれでもよく、例えばRS232C(Recommended Standard 232-C)、USB(Universal Serial Bus)、iLink(商標)、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.3(Ethernet(登録商標))などの規格に基づくインターフェースである。
入手部205は、伝送部202を用いてバイオアッセイ装置12からSNPs等のDNAマーカ情報や発現遺伝子情報などである生体情報を入手するプログラムとすることもできる。
判別部203は、データ記憶媒体17の判別部243と同様に、データ記憶媒体17に記憶されているゲノム情報とバイオアッセイ基板11から読み出したDNAマーカ配列とを比較し、同一性が確認された場合にのみ発現遺伝子などの生体情報をデータ記憶媒体17に記憶することを許諾する。
以上のように、データ記憶媒体17は、バイオアッセイ基板11およびバイオアッセイ装置12を用いて読み取った遺伝子の変異解析、遺伝子発現頻度解析結果などの情報を記録しておく際に、他人のデータ記憶媒体(ICカード)に誤って書き込むことを防止し、不正利用者に個人情報を漏らすことがない。創薬、臨床診断、薬理ジェノミクス、法医学その他の関連産業界において利用することができる。
次に、図10のフローチャートを参照して、検査処理プログラムを実行するバイオアッセイ装置12による検査の処理を説明する。
ステップS11において、使用者が、バイオアッセイ装置12に、バイオアッセイ基板11を挿入すると、ステップS12において、検査処理プログラムは、バイオアッセイ基板11の記録領域32から、このバイオアッセイ基板11が既に使用されて検査がされたか否かを示す情報など、検査の処理に必要なデータを読み出す。
ステップS13において、検査処理プログラムは、ステップS12の処理で読み出した情報を基に、装着されているバイオアッセイ基板11で検査済みであるか否かを判定し、検査済みでない、すなわち、装着されているバイオアッセイ基板11で検査が行われていないので、ステップS14に進み、バイオアッセイ基板11に試料や標識物質を滴下する。
ステップS15において、バイオアッセイ基板11において、ハイブリタイゼーションが行われるので、ステップS16において、検査処理プログラムは、バイオアッセイ基板11から、反応結果を読み出して、反応結果を解析する。
ステップS17において、検査処理プログラムは、ステップS16の処理で得られた、画像データまたは解析結果などをバイオアッセイ基板11に書き込む。
ステップS18において、検査処理プログラムは、ネットワークインターフェース77に、ネットワーク13を介して、インターネット14に接続させる。すなわち、検査処理プログラムは、ネットワーク13およびインターネット14を介して、サーバ15に接続する。
ステップS19において、検査処理プログラムは、サーバ15から、関連情報を選択して、関連情報を取得する。ステップS20において、検査処理プログラムは、取得した関連情報をバイオアッセイ基板11に記録させることにより、関連情報を保存する。
ステップS21において、検査処理プログラムは、取得した関連情報を表示部78に表示させて処理は終了する。
一方、ステップS13において、検査済みである、すなわち、装着されているバイオアッセイ基板11で既に検査が行われたので、ステップS22に進み、検査処理プログラムは、測定動作禁止の処理を実行する。例えば、ステップS22において、検査処理プログラムは、測定動作の禁止を示すフラグを設定するなどして、測定動作禁止モードにして、装着されているバイオアッセイ基板11を使用して測定動作が行われないようにする。
ステップS23において、検査処理プログラムは、バイオアッセイ基板11の記録領域32から、保存データを読み出す。ステップS24において、検査処理プログラムは、読み出した保存データを、表示部78に表示させて、ステップS18に進み、インターネット14に接続して、関連情報を取得する処理を実行する。
次に、データ記憶媒体17またはバイオアッセイ基板11に記憶(記録)するゲノム情報の記憶の処理を図11のフローチャートを参照して説明する。ステップS41において、バイオアッセイ基板11の提供者は、対象となるDNAマーカを決める(選定する)。例えば、DNAマーカとして、SNPsを使う。この時、どの遺伝子座のSNPを使うかの選定基準は、できるだけ人によって均等にばらついているものであり、他のSNPと相関(又は関連)がないものがよい。
DNAマーカとは、SNPs(Single Nucleotide Polymorphism)、マイクロサテライト、ミニサテライト、RFLPs(Restriction Fragment Length Polymorphism:制限酵素断片長多型)等であり、これらを複数集めることで個人を特定することができる。SNPsは単一塩基多型で、ヒトゲノムの中に10の6乗個以上あると言われ、例えば血液型を決める遺伝子配列中に存在している。ミニサテライト、マイクロサテライトは繰り返し配列の集まりのことで、ミニサテライトは30塩基数程度の繰り返し、マイクロサテライトは数塩基の繰り返しをなすものであり、それぞれヒトゲノムに10の4乗個、10の5乗個あると言われている。その他、DNAマーカとして、RFLPsなどが知られている。
人間のmRNAの平均の長さは、ほぼ2600塩基である。人間の遺伝子の数は約40000である。SNPは、ヒトゲノムの中に約10の6乗個以上あり、ヒトゲノムは、約40億塩基なので、(2600×40000)÷(40億)×100=2.6%から、意味のあるSNP、すなわち、遺伝子に含まれるSNPは、約2.6万個ある。
ステップS42において、バイオアッセイ基板11の提供者は、ゲノム情報収集用のバイオアッセイ基板11を製造する。すなわち、バイオアッセイ基板11の提供者は、ステップS41の処理で決定したSNPs配列を検出できるプローブを製造し、バイオアッセイ基板11に搭載する。プローブは、例えば、以下のような配列である。
プローブ1:―――ATCG(A)CTA―――
プローブ2:―――ATCG(C)CTA―――
プローブ3:―――ATCG(G)CTA―――
プローブ4:―――ATCG(T)CTA―――
カッコ内の配列がSNPである。このようにして選ばれたプローブの組を例えば1000組以上バイオアッセイ基板11に搭載する。以下、バイオアッセイ基板11に搭載されたプローブをマーカープローブと称する。
なお、バイオアッセイ基板11を製造すると説明したが、バイオアッセイ基板11に限らず、既存のDNAチップを用いるようにしても良い。
また、ステップS42において製造されるゲノム情報収集用のバイオアッセイ基板11は、1つとは限らず、それぞれ異なる、マーカープローブを搭載した複数のバイオアッセイ基板11とするようにしてもよい。
ステップS43において、検査を行う者は、検査の対象となる人からDNAを採取する。ステップS44において、バイオアッセイ装置12の検査処理プログラムは、バイオアッセイ基板11と採取したDNAを反応させる。ステップS45において、検査処理プログラムは、反応の結果を検出する。
すなわち、例えば、ステップS43およびステップS44において、対象人から採取されたDNAがステップS42の処理で製造されたバイオアッセイ基板11に反応させられ、ステップS45において、検査の対象となる人が持っているSNPsが読み取られる。
ステップS46において、検査処理プログラムは、反応したDNAマーカから、ランダムに32以上の配列を選択する。ステップS47において、検査処理プログラムは、選択したDNAマーカの32以上の配列から、ゲノム情報を生成する。
ステップS48において、検査を行う者は、バイオアッセイ装置12に、初期化済みのデータ記憶媒体17をセットする(装着する)。ステップS49において、検査処理プログラムは、選択された配列からなるゲノム情報をデータ記憶媒体に記憶させる。
例えば、ステップS46において、人によって異なるDNAマーカである、見つけられたSNPsからランダムに32個以上が選定され、その配列を示す情報から生成された情報が、ゲノム情報として、未書き込みのデータ記憶媒体17に書き込まれる。
ここで、32個のSNPを選択するとしたのは、1つのSNPは、4種類の塩基のうちの1つの塩基で特定されるので、32個のSNPは、432のパターンを持ち得る。432は、264であり、地球の全人口より大きい。
従って、選択した32個のSNPの配列で、人間である被検体を識別することができる。
なお、DNAマーカを所定の数に選択しないで、全てのDNAマーカを記憶すると、データ量が多くなり、膨大な記憶容量が必要となる。これを記憶する媒体、例えば、データ記憶媒体17に膨大な記憶容量が要求されることになるので、全ての全てのDNAマーカを記憶することは実用的ではない。
図12は、ゲノム情報の例を示す図である。ゲノム情報は、遺伝子の位置およびその配列情報である。配列情報とは、特に個人毎に異なる配列となるDNAマーカのことである。
例えば、ゲノム情報が、DNAマーカとしてのSNPs配列を示す場合、SNPにおいて、1つの塩基が異なるので、1つの塩基に対応させて配列情報を決定することができる。塩基は、A,C,G,Tの4種類があるので、例えば、配列情報とし、Aに対して”0”、Cに対して”1”、Gに対して”2”、Tに対して”3”を割り当てることができる。
図12で示されるゲノム情報の例は、SNPs配列であるDNAマーカのゲノム上の位置を示す遺伝子の位置と、DNAマーカ塩基配列を示す配列情報とからなる。例えば、図12で示されるゲノム情報の例において、ゲノム上の位置が”aaaa”であるDNAマーカであるSNPは、”0”すなわちAであることが示されている。また、図12で示されるゲノム情報の例において、ゲノム上の位置が”bbbb”であるDNAマーカであるSNPは、”1”すなわちCであることが示されている。
同様に、図12で示されるゲノム情報の例において、ゲノム上の位置が”cccc”であるSNPは、”2”すなわちGであることが示され、ゲノム上の位置が”dddd”であるSNPは、”3”すなわちTであることが示され、ゲノム上の位置が”eeee”であるSNPは、”2”すなわちGであることが示され、ゲノム上の位置が”ffff”であるSNPは、”0”すなわちAであることが示されている。
なお、データ記憶媒体17の初期化の手法や、データ記憶媒体17の制御方法は、本発明を限定するものではなく、その説明は省略する。
ここで、マーカープローブの数は1000個に限定されず、それ以上でもそれ以下でも良い。また、選ばれたSNPsは、32個以上が望ましいが、母集団が少なければ偶然の一致も少ないと考えられるため、32個未満でもかまわない。
なお、SNPsをランダムに選定する理由は、第3者にどのSNPsを個人特定に利用しているかわかりにくくするためであり、所定のルールで選定するようにしても良い。
これとは別に、マーカープローブをバイオアッセイ基板11に搭載し、合わせて検出物質(標的物質となるmRNAに相補的なcDNAを検出できるプローブ)を搭載して臨床、診療に用いる。
すなわち、ステップS50において、バイオアッセイ基板11の提供者は、選択された配列に対するDNAマーカのプローブを含むプローブを結合させた、生体情報収集用のバイオアッセイ基板11を製造する。換言すれば、ステップS50において、バイオアッセイ基板11の提供者は、臨床用のDNAチップの一例である、生体情報収集用のバイオアッセイ基板11に、選択配列対象のプローブを搭載する。
ステップS51において、バイオアッセイ基板11の提供者は、生体情報収集用のバイオアッセイ基板11に、標的物質検出用のプローブを結合させて、処理は終了する。例えば、ステップS51において、バイオアッセイ基板11の提供者は、臨床用のDNAチップの一例である、生体情報収集用のバイオアッセイ基板11に、検出予定のcDNAに相補的なプローブを搭載する。
このように、バイオアッセイ装置12は、検査の対象となる人のゲノム情報をデータ記憶媒体17に記憶させることができる。
さらに、バイオアッセイ基板11の提供者は、検査の対象となる人のゲノム情報を検出し、標的物質を検出するための、生体情報収集用のバイオアッセイ基板11を製造することができる。
なお、全ての被検体に共通の32個のDNAマーカのみを使用してゲノム情報を生成して、このゲノム情報を用いて被検体を識別することは可能である。
しかしながら、このようなゲノム情報を用いて被検体を識別することは、理論上は可能であっても、現実にはこのようなゲノム情報では被検体を識別できない場合がある。
すなわち、第1に、遺伝子は国や地域によっては均一な分布となっておらず、偏りがあるからである。例えば、日本においてはA型の血液型が一番多いが、他の国ではO型の血液型が一番多い場合がある。極端な場合、ある限られた地域では全員が同じ血液型の場合も有り得る。また、例えば、日本人には、アルコール分解酵素を司る遺伝子を、持っている人と持っていない人がいるが、欧米人はほぼ全員がこの遺伝子を持っている。
このため、もし仮に32個のDNAマーカの一つとして血液型を決定する遺伝子を選んだ場合、ある地域では全員が同一血液型であるために、この遺伝子のSNPを基に被検体を識別することができない場合が生じ得る。
第2に、生体反応を用いたバイオアッセイ基板11の場合、反応が必ずしも十分に出ないことが予想されるので、32個以上のDNAマーカを用いる方が識別の確度が上がると考えられる。このため、実際には、例えば、48個のSNPを選定し、よい反応が得られたもの(例えば、蛍光強度が強いもの)から32個使うなどの工夫が必要である。
第3に、プライバシーの関係で予め決めてしまった32個を使うのは難しい場合が想定される。この場合、必要な32個を含む、例えば100個(68個はダミー(選択されないDNAマーカ))のSNPを使うなどの工夫が必要となる。検査において、毎回同じものが選ばれないようにするために、例えば1000個のSNPを準備しておくことが必要である。
以上のように、32個のDNAマーカのみを用いて、被検体を識別ことは理論上可能である。しかしながら、上述した諸般の事情を考慮すれば、実際には、ダミーを含めて1000個程度のDNAマーカのプローブを用意し、その反応の結果から32個以上のDNAマーカを適宜選んで利用する方が好ましい。
また、現在実現されている技術では、1平方cm当たり、1万個から2万個のプローブを配置することができる。従って、CDと同等の大きさのバイオアッセイ基板11であれば、全ての遺伝子を検査するプローブを搭載することは可能である。従って、1000個のDNAマーカ(SNPを使うのであれば、1マーカあたり4種類のプローブが必要なので、最大4千個のプローブが必要となる)、および発現遺伝子用の4万個のプローブを全て配置し、使用することは可能である。このため、必ずしも被検体毎にバイオアッセイ基板11を作り直す必要はなく、すべて同一のバイオアッセイ基板11を用いて検査することができる。
次に、生体情報収集用のバイオアッセイ基板11を用いた検査について説明する。
図13は、生体情報収集用のバイオアッセイ基板11、リーダライタ16、およびデータ記憶媒体17を説明する図である。生体情報収集用のバイオアッセイ基板11には、DNAマーカ検出領域301、および標的物質検出領域302が設けられ、DNAマーカ検出領域301に前述のマーカープローブ(DNAマーカのプローブ)が搭載され、発現遺伝子を調べるための検出物質(標的物質検出用のプローブ)も標的物質検出領域302に合わせて搭載される。
例えば、図14で示されるように、DNAマーカ検出領域301には、32組以上のDNAマーカのプローブが搭載される。DNAマーカ検出領域301に搭載される個々のDNAマーカのプローブは、20塩基長以上であることが望ましい。
例えば、図15で示されるように、標的物質検出領域302には、発現遺伝子を調べるための検出物質の例である、検出予定のcDNAに相補的なオリゴヌクレオチド鎖が搭載される。オリゴヌクレオチド鎖などの検出物質は、20塩基長以上であることが望ましい。
ここで、DNAマーカのプローブまたは発現遺伝子を調べるための検出物質が、20塩基長以上であることが望ましいとしたのは、塩基長をあまりにも大きくすると、本来、結合しない塩基と結合してしまう確率が高くなり、誤検出のおそれが大きくなり、逆に、塩基長を小さくすると、誤検出のおそれは少ないが、結合する塩基の数が多くなり、判別の機能を発揮させるには、マーカの数を多くする必要があるからである。
バイオアッセイ基板11上のDNAマーカ検出領域301および標的物質検出領域302の配置は、いずれであってもよく、DNAマーカ検出領域301および標的物質検出領域302の配置によって、本発明は限定されるものではない。
ここで、被検査人(検査の対象となる人)Aと被検査人Bがいるとする。被検査人Aおよび被検査人BからDNAを採取し、バイオアッセイ装置12は、バイオアッセイ基板11でDNAマーカの解析、および発現遺伝子の解析を行う。そして、検出されたDNAマーカ(具体的にはSNPs)の配列を示すゲノム情報303はリーダライタ16へ読み込まれ、データ記憶媒体17へ供給される。さらに、バイオアッセイ装置12は、検出された発現遺伝子の配列を示す生体情報304をリーダライタ16に供給し、リーダライタ16は、生体情報304をデータ記憶媒体17に送信する。
これを受信したデータ記憶媒体17は、判別部243で、メモリ222内のゲノム情報と同一性を判別する。すなわち、データ記憶媒体17は、リーダライタ16から供給されたゲノム情報303と、メモリ222に記憶されているゲノム情報303とが一致するか否かを判定する。
例えば、被検査人Aが保持するデータ記憶媒体17−Aに保持されるゲノム情報配列をS(A)、被検査人Bが保持するデータ記憶媒体17−Bに保持されるゲノム情報配列をS(B)とすると、バイオアッセイ基板11で検出されたSNPs配列は、被検査人AのものであればS(A)を包含しているはずであり、被検査人BのものであればS(B)を包含しているはずである。従って、読み出されたSNPs配列とメモリ内のゲノム情報配列を比較することで、本人を識別できる。
なお、測定誤差等が考えられるため、100%包含していない場合でもOKとする場合がある(この時、メモリ内のゲノム情報配列数は32以上とするのが好ましい)。
同一性が判別された後に、制御部241は、リーダライタ16受信した生体情報304をメモリ222の所定領域に書き込んだり、追加、訂正を行う。
本例では判別部243がデータ記憶媒体17にある場合について述べたが、リーダライタ16内に判別部203を設けるようにし、予めリーダライタ16がデータ記憶媒体17からゲノム情報303を読み出して上述と同様な同一性判別を行い、判別に成功した場合のみ生体情報304をデータ記憶媒体17に送って書き込むようにしても良い。ただし、この場合個人情報であるゲノム情報がデータ記憶媒体17から読み出されることになり、あまり好ましくない。
また、図6で示されるバイオアッセイ装置12の判別部85が、リーダライタ16を介して、データ記憶媒体17からゲノム情報303を読み出して、読み出したゲノム情報303とバイオアッセイ基板11から検出されたゲノム情報303とが一致するか否かを判定し、一致すると判定された場合、生体情報304をデータ記憶媒体17に記憶させるようにしてもよい。
更にまた、書き込んだ生体情報をリーダライタ16を使って読み出す際には、不正な読み出しは個人情報保護に反することとなるため、以下のような手段を設けることが好ましい。
・ メモリ222に、パスワード情報を予め記憶しておく。
・ データ記憶媒体17にパスワード照合部を設ける。
・ 利用者がリーダライタ16の図示せぬ入力部から入力したパスワードを取得する。
・ リーダライタ16から送られたパスワードが、パスワード照合部による照合に成功した場合(一致した場合)のみ、データ記憶媒体17は、メモリ222の生体情報の読み出しを許可する。
なお、更なるセキュリティ強化のために、指紋情報をメモリ222に保存しておき、リーダライタ16又はデータ記憶媒体17で指紋情報を採取・比較することで個人認証するようにしても良い。
次に、生体情報の記憶の処理を図16のフローチャートを参照して説明する。ステップS71において、検査を行う者は、検査の対象となる人からDNAを採取する。採取したDNAであるサンプルDNAは、PCRなどの手法により複製される。
ステップS72において、バイオアッセイ装置12は、プローブと、採取した(複製された)サンプルDNAとを反応させる。
ステップS72の処理を詳細に説明すれば、例えば、検査を行う者は、バイオアッセイ基板11をバイオアッセイ装置12のディスク装填部71に水平に装填する。
続いて、バイオアッセイ装置12は、アドレスピット38に基づく位置制御を行いながらバイオアッセイ基板11を回転させ、滴下ヘッド94から、一端がNCO基等で修飾されたプローブDNAが含有された溶液を所定のウェル37に滴下する。このとき、1つのバイオアッセイ基板11に対して、複数種類のプローブDNAが滴下される。だたし、1つのウェル37内には1種類のプローブDNAが入るようにプローブDNAが滴下される。
なお、各ウェル37にいずれの種類のプローブDNAを滴下するかは、予めウェル37とプローブDNAとの対応関係を示す配置マップ等を信号記録膜36から読み出しておくか、ネットワークインターフェース77を介してサーバ15から配置マップ等を収集しておき、バイオアッセイ装置12は、その配置マップに基づき滴下制御する。また、バイオアッセイ装置12は、データ記憶媒体17から、記憶されているゲノム情報303に対応するプローブDNAの配置を示す配置マップを読み出して、その配置マップに基づき滴下制御するようにしてもよい。
続いて、バイオアッセイ装置12は、バイオアッセイ基板11の上面11a側から、電極をウェル37内の溶液に挿入して、1MV/m、1MHz程度の交流電界を各ウェル37に印加する。このように交流電界を印加すると、プローブDNAがバイオアッセイ基板11に対して垂直方向に伸張するとともに、プローブDNAがバイオアッセイ基板11に垂直方向に移動して、予め表面修飾処理がされた底面45に対して、プローブDNAの修飾端が結合し、ウェル37内にプローブDNAを固相化(固定化)することができる。プローブDNAの固相化の詳細は、Masao Washizu and Osamu Kurosawa: “ Electrostatic Manipulation of DNA in Microfabricated Structures ”, IEEE Transaction on Industrial Application Vol.26,No26,P.1165-1172(1900)に記載されている。
なお、プローブDNAを固相化する処理に代えて、図11の処理で説明した、生態情報収集用のバイオアッセイ基板11を使用するようにしてもよい。この場合、生態情報収集用のバイオアッセイ基板11には、所定のプローブが配置されているので、各ウェル37にプローブDNAを滴下して、ウェル37内にプローブDNAを固相化する処理は不要である。
次に、バイオアッセイ装置12は、滴下ヘッド94から、バッファ塩を含む溶液とともに、サンプルDNAが含有された溶液を、バイオアッセイ基板11上の各ウェル37に滴下する。
そして、バイオアッセイ装置12は、サンプルDNAの滴下後、バイオアッセイ基板11を恒温層等に移し、ウェル37内を数十度に加熱し、加熱した状態のまま1MV/m、1MHz程度の交流電界を印加する。このような処理をすると、サンプルDNAとプローブDNAとが垂直方向に伸張して立体障害の少ない状態となるとともに、サンプルDNAがバイオアッセイ基板11に対して垂直方向に移動する。この結果、同一のウェル37内にある、互いの塩基配列が対応したサンプルDNAとプローブDNAとがハイブリダイゼーションを起す。
ハイブリダイゼーションを起させた後に、バイオアッセイ装置12は、インターカレータ等の蛍光標識剤を、バイオアッセイ基板11のウェル37内に滴下する。このような蛍光標識剤は、ハイブリダイゼーションを起したプローブDNAとサンプルDNAとの二重らせんの間に入り込んで結合する。
そして、バイオアッセイ装置12は、バイオアッセイ基板11の表面1aを純水等で洗浄し、ハイブリダイゼーションを起していないウェル37内のサンプルDNA及び蛍光標識剤を除去する。この結果、ハイブリダイゼーションを起したウェル37内にのみ、蛍光標識剤が残存することとなる。
ステップS73において、バイオアッセイ装置12は、DNAマーカのプローブと、サンプルDNAの反応の結果を検出する。
ステップS74において、バイオアッセイ装置12は、標的物質検出用のプローブと、サンプルDNAの反応の結果を検出する。
すなわち、バイオアッセイ装置12は、制御光Vを基に、フォーカスサーボ制御、位置決めサーボ制御、並びにアドレス制御を行いながら、バイオアッセイ基板11を回動(回転)させ、励起光Pを所定のウェル37に照射する。この励起光Pの照射とともに、アドレスピット38によるアドレス情報を検出しながら蛍光Fが発生しているか否かを検出する。
ステップS75において、バイオアッセイ装置12は、DNAマーカのプローブの反応の結果からゲノム情報を生成する。ステップS76において、バイオアッセイ装置12は、標的物質検出用のプローブの反応の結果から生体情報を生成する。
バイオアッセイ基板11から読み出されたゲノム情報は、バイオアッセイ基板11上に保持された検出物質と結合した標的物質の配列情報のことで、DNAマーカや発現遺伝子情報(生体情報)を含む。
発現遺伝子情報とは、生体内で発現しているタンパク質を指し示すmRNAや、逆転写したcDNA及びその発現量、局在情報(一般に、遺伝子の発現量は臓器の部位によって異なっている)、変異を起している遺伝子とその配列・遺伝子座、多型情報などである。発現遺伝子情報は、生体情報ともいう。
また、ステップS75またはステップS76において、バイオアッセイ装置12は、バイオアッセイ基板11上の各ウェル37の位置と蛍光Fの発光の強度に応じた測定値を計算し、その結果及び撮像イメージをバイオアッセイ基板11の信号記録膜36に記録して保存する。続いて、バイオアッセイ装置12は、その測定値から標的物質の有無を判別し、ディスクイメージ上の判別マップ作成する。バイオアッセイ装置12は、その作成したマップ、並びに、各ウェル37にどのような塩基配列のプローブDNAが滴下されていたかを示す配置マップに基づき、サンプルDNAの塩基配列の解析を行う。
バイオアッセイ装置12は、この解析の結果を参照して、信号記録膜36に記録されているプローブDNAと疾病との関係の情報に基づき、例えば疾病との関係等を解析してもよい。
更にまた、バイオアッセイ装置12は、バイオアッセイ基板11に記録された遺伝子ネットワークに発現遺伝子を対応させ、その機能を図示するようにしても良い。
そして、バイオアッセイ装置12は、その解析結果や、検出した配置マップ等をバイオアッセイ基板11の信号記録膜36に記録して保存する。
バイオアッセイ装置12が、ゲノム情報および生体情報を、リーダライタ16を介して、データ記憶媒体17に供給すると、ステップS77において、データ記憶媒体17の判別部243は、データ記憶媒体17に記憶されているゲノム情報303と、ステップS75の処理で得られた、DNAマーカの反応の結果得られたゲノム情報303とを比較する。
すなわち、ステップS77において、データ記憶媒体17のメモリコントローラ245は、メモリ222のゲノム情報格納領域251に格納されている、ゲノム情報303を読み出させ、読み出したゲノム情報303をメモリ244の所定の領域に一時的に記憶させる。伝送部242は、リーダライタ16を介して、バイオアッセイ装置12から送信されてきた、DNAマーカの反応の結果得られたゲノム情報303を、メモリ244の他の領域に一時的に記憶させる。そして、判別部243は、メモリ244に記憶されている、メモリ222のゲノム情報格納領域251から読み出したゲノム情報303と、バイオアッセイ装置12から送信されてきたゲノム情報303とを比較する。
ステップS78において、データ記憶媒体17の判別部243は、メモリ222のゲノム情報格納領域251から読み出したゲノム情報303と、バイオアッセイ装置12から送信されてきたゲノム情報303とが一致するか否かを判定する。
ステップS78において、メモリ222のゲノム情報格納領域251から読み出したゲノム情報303と、バイオアッセイ装置12から送信されてきたゲノム情報303とが一致すると判定された場合、メモリ222のゲノム情報格納領域251に記憶されているゲノム情報303に対応する検査の対象者と、サンプルDNAを取得した対象者が一致するので、ステップS79に進み、データ記憶媒体17の制御部241は、標的物質検出用のプローブの反応の結果から得られた生体情報304をデータ記憶媒体17に記憶させて、処理は終了する。
例えば、ステップS79において、データ記憶媒体17の制御部241は、伝送部242が受信した、リーダライタ16を介して、バイオアッセイ装置12から送信されてきた、標的物質検出用のプローブの反応の結果から得られた生体情報304の記憶を、メモリコントローラ245に指示する。メモリコントローラ245は、生体情報304をメモリ222の生体情報格納領域252に記憶させる。
一方、ステップS78において、メモリ222のゲノム情報格納領域251から読み出したゲノム情報303と、バイオアッセイ装置12から送信されてきたゲノム情報303とが一致しないと判定された場合、メモリ222のゲノム情報格納領域251に記憶されているゲノム情報303に対応する検査の対象者と、サンプルDNAを取得した対象者が一致しないので、生体情報304をデータ記憶媒体17に記憶させるべきではないので、ステップS80に進み、データ記憶媒体17の制御部241は、伝送部242に、リーダライタ16を介して、バイオアッセイ装置12宛てにエラーメッセージを送信させる。この場合、データ記憶媒体17は、生体情報304を記憶しない。
バイオアッセイ装置12は、データ記憶媒体17から送信されてきたエラーメッセージを受信すると、表示部78にエラーメッセージを表示させて、処理は終了する。
このように、本発明においては、データ記憶媒体17に記憶されている、所定の数のDNAマーカを特定する特定情報であるゲノム情報303と、サンプルDNAを取得した対象者のゲノム情報303とが一致するか否かを基に、対象者を識別するようにしたので、対象者を確実に識別することができる。
なお、本発明では光磁気ディスクを用いた円盤状のバイオアッセイ基板11を使用すると説明してきたが、バイオアッセイ基板11の形状を、適宜適した形(例えば、正方形、長方形、楕円形など)にするようにしても良い。また、記録領域32として光磁気ディスクを用いた例を示していたが、記録領域32は、光磁気ディスクに限らず、所定の記録機能を有する光ディスク、磁気ディスク、磁気記録テープ、半導体メモリ(EEPROMやFRAM、MRAMなど)、印刷を利用した記録など他の技術を利用してデータを記録するようにすることができる。
この場合、データ検出に使用したバイオアッセイ基板11には、データ読み出し時にも専用の装置(例えば、バイオアッセイ装置12)が必要となり、コストがかかる。このため、この場合、情報等は、データ記憶媒体17に保存する方が望ましい。
このように、本発明によれば、選択した所定の数のDNAマーカを基に、検査の対象者を確実に識別することができる。その結果、誤って他人の検査結果を記憶したりすることを防止することができる。
このように、標的物質を検出する検出物質に標的物質を結合させるようにした場合には、標的物質を検出することができる。
被検体を識別する所定の数のDNAマーカを検出する第1の検出物質を配置するとともに、標的物質を検出する第2の検出物質を配置するようにした場合には、生成された特定情報を基に、被検体を確実に識別して、誤った検出情報の記憶を防止することができる。
被検体を識別する所定の数のDNAマーカを特定する第1の特定情報を記憶し、第1の特定情報で特定されるDNAマーカを検出する検出物質であって、基板上に配置された第1の検出物質に結合したDNAマーカを検出し、標的物質を検出する検出物質であって、基板上に配置された第2の検出物質に結合した標的物質を検出し、検出されたDNAマーカを特定する第2の特定情報を生成し、検出された標的物質を示す検出情報を生成し、第2の特定情報が第1の特定情報に一致するか否かを判定し、第2の特定情報が第1の特定情報に一致すると判定された場合、検出情報を記憶するようにした場合には、生成された特定情報を基に、被検体を確実に識別することができる。
被検体を識別する所定の数のDNAマーカを検出する検出物質であって、基板上に配置された検出物質に結合したDNAマーカを検出し、検出されたDNAマーカから、所定の数のDNAマーカを選択し、選択されたDNAマーカを特定する特定情報を生成するようにした場合には、生成された特定情報を基に、被検体を確実に識別することができる。
被検体を識別する所定の数のDNAマーカを検出する検出物質であって、基板上に配置された第1の検出物質に結合したDNAマーカを検出し、標的物質を検出する検出物質であって、基板上に配置された第2の検出物質に結合した標的物質を検出し、検出されたDNAマーカを特定する特定情報を生成し、検出された標的物質を示す検出情報を生成するようにした場合には、特定情報を基に、被検体を確実に識別して、誤った検出情報の記憶を防止することができる。
被検体を識別する所定の数のDNAマーカを特定する第1の特定情報を記憶し、第1の特定情報で特定されるDNAマーカであって、基板上に配置された検出物質であって、第1の検出物質に結合したDNAマーカを特定する、検査装置から供給された第2の特定情報が、第1の特定情報に一致するか否かを判定し、第2の特定情報が第1の特定情報に一致すると判定された場合、検査装置から供給された、基板上に配置された検出物質であって、第2の検出物質に結合した標的物質の検出を示す検出情報を記憶するようにした場合には、被検体を確実に識別して、誤検査を防止することができる。
特定データが、被検体を識別する所定の数のDNAマーカのゲノム上の位置を示す位置情報と、DNAマーカの塩基の配列を示す配列情報とを含むようにした場合には、特定データを基に、被検体を確実に識別することができる。
データ記憶媒体が、被検体を識別する所定の数のDNAマーカのゲノム上の位置を示す位置情報と、DNAマーカの塩基の配列を示す配列情報とを含む被検体の状態に関するデータが記憶するようにした場合には、データ記憶媒体を基に、被検体を確実に識別することができる。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
この記録媒体は、図6に示すように、コンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク81(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク82(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク83(MD(Mini-Disc)(商標)を含む)、若しくは半導体メモリ84などよりなるパッケージメディアにより構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM(図示せず)や、ハードディスク(図示せず)などで構成される。
なお、上述した一連の処理を実行させるプログラムは、必要に応じてルータ、モデムなどのインターフェースを介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を介してコンピュータにインストールされるようにしてもよい。
また、本明細書において、記録媒体に格納されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
なお、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
1 検査システム, 11 バイオアッセイ基板, 12 バイオアッセイ装置, 13 ネットワーク, 14 インターネット, 15 サーバ, 16 リーダライタ, 17 データ記憶媒体, 72 滴下部, 73 励起光検出部, 74 制御/サーボ部, 75 記録再生部, 76 制御部, 77 ネットワークインターフェース, 81 磁気ディスク, 82 光ディスク, 83 光磁気ディスク, 84 半導体メモリ, 85 判別部, 201 制御部, 203 判別部, 222 メモリ, 241 制御部, 243 判別部, 245 メモリコントローラ, 251 ゲノム情報格納領域, 252 生体情報格納領域