JP2005085874A - 電磁波シールド用樹脂組成物、及び成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 (A)熱可塑性樹脂50〜94重量部、(B)金属で被覆された炭素繊維6〜50重量部、及び該(A)及び(B)の合計100重量部に対して(C)中空炭素フィブリル0.1〜10重量部を配合してなることを特徴とする電磁波シールド用樹脂組成物、及び該樹脂組成物を成形してなる成形体。
【選択図】 なし
Description
これら携帯端末の筐体には、小型軽量化に伴って、薄肉化の要求が次第に厳しくなってきており、この要求に耐えうる高流動性、高剛性の材料が求められている。合成樹脂のポリカーボネート樹脂は、強度や剛性に優れた樹脂であり、上述の要求を満たす材料として有力なものである。
ところが上述の要求事項に加えて、近年、特に注目されているのが、電磁波シールド性である。電子機器は、内部に電子部品を有するために、電磁波を発生する。ここで発生する電磁波を機器の外部に漏らさないために、従来は筐体にメッキを施したり、金属の蒸着を行ったりして対応しているが、電磁波シールド性を筐体に使われている樹脂材料自体に持たせるという要求である。
しかしながら、炭素繊維や金属コートした炭素繊維は、押し出し中に繊維が破損しやすく、該特許文献1にもあるように、繊維長をコントロールしなければ十分なシールド性が得られないという欠点があり、シールド性のバラツキも大きく、実用上は問題があった。
このシールド性のバラツキを改良し、より安定したシールド性を得ることを目的として、特許文献2には、芳香族ポリカーボネート樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂に、金属コート炭素繊維および特定の導電性カーボンブラックを配合することで、安定した高電気伝導性および優れた電磁波遮蔽効果を有する導電性樹脂組成物が得られることが開示されている。しかし、導電性は安定しているものの、そのレベルは十分なものではなく、またシールド性の安定性は改良されていない。かかる現状の下、機械的強度、剛性に優れ、かつ高い電磁波シールド性を安定して有する樹脂材料が要望されている。
すなわち本発明は、(A)熱可塑性樹脂50〜94重量部、(B)金属で被覆された炭素繊維6〜50重量部、及び該(A)及び(B)の合計100重量部に対して(C)中空炭素フィブリル0.1〜10重量部を配合してなることを特徴とする電磁波シールド用樹脂組成物及びそれを成形してなる成形体を提供するものである。
本発明で用いられる(A)熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、液晶ポリマー、ポリスチレン樹脂、ゴム強化ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ジタジエン/スチレン共重合体(ABS)等があげられ、これらは単独で用いても2種類以上を併用しても良い。
これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましく、衝撃強度が重視される場合には、特にポリカーボネート系樹脂が好ましい。
本発明におけるポリカーボネート系樹脂とは、ポリカーボネート樹脂50〜100重量部と他の熱可塑性樹脂0〜50重量部の混合物であり、ポリカーボネート樹脂と混合して用いられる他の熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。さらに、難燃性をさらに高める目的で上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物及び又はシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーあるいはオリゴマーを使用することができる。
分子量を調節するには、一価芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、mー及p−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール及びp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。
該ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、14,000〜30,000の範囲であり、好ましくは15,000〜28,000、より好ましくは16,000〜26,000である。粘度平均分子量が14,000未満では機械的強度が不足し、30,000を越えると成形性に難を生じやすく好ましくない。
このような芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法については、特に限定されるものでは無く、ホスゲン法(界面重合法)、又は溶融法(エステル交換法)等で製造することができる。さらに、溶融法で製造された、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することもできる。
本発明で用いられるポリフェニレンエーテル樹脂とは、下記一般式
で示される構造を有する単独重合体又は共重合体である。
Q1及びQ2の第一級アルキル基の好適な例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−アミル、イソアミル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2−、3−若しくは4−メチルペンチル又はヘプチルである。第二級アルキル基の好適な例は、イソプロピル、sec−ブチル又は1−エチルプロピルである。多くの場合、Q1はアルキル基又はフェニル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、Q2は水素原子である。
ここで使用するポリフェニレンエーテルは、クロロホルム中で測定した、30℃の固有粘度が0.2〜0.8dl/gであるものが好ましい。より好ましくは固有粘度が0.2〜0.7dl/gのものであり、とりわけ好ましくは0.25〜0.6dl/gのものである。固有粘度が0.2dl/g未満では組成物の耐衝撃性が不足し、0.8dl/gを越えると成形性が不満足となる。
本発明に用いられる中空炭素フィブリルは、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが該フィブリルの円柱軸の周囲に実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルであるのが好ましい。更に、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nmであることが好ましい。
また、本発明では中空炭素フィブリルの熱可塑性樹脂への分散性を向上させる為に、中空炭素フィブリルを予め熱可塑性樹脂と溶融混練せしめた、いわゆるマスターペレットを用いることも好ましい。この場合、通常、マスターペレット中の中空炭素フィブリル濃度は10〜50重量%のものを用いる。
本発明で用いられる中空炭素フィブリルとしては、例えばハイペリオン・カタリシス社より「グラファイト・フィブリル」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
本発明では、難燃性を付与するために難燃剤を用いることができる。難燃剤としては、組成物の難燃性を向上させるものであれば特に限定されないが、リン酸エステル化合物、アルカリ金属有機スルホン酸金属塩、シリコーン化合物が好適である。本発明で用いるリン酸エステル化合物としては、たとえば、次式
一般式(2)においてR1〜R4で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。またXで示される2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基や、例えばビスフェノールから誘導される基等が挙げられる。これらの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。nが0の場合はリン酸エステルであり、nが0より大きい場合は縮合リン酸エステル(混合物であっても良い)である。
具体的には、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシノールビスホスフェート、あるいはこれらの置換体、縮合体などを例示できる。
かかる成分として好適に用いることができる市販の縮合リン酸エステル化合物としては、たとえば、大八化学工業(株)より、「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、旭電化工業(株)より「FP500」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))といった商品名で販売されており、容易に入手可能である。
芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸アルカリ土類金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられ、なお芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。
有機スルホン酸金属塩の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜3重量部、とりわけ好ましくは0.03〜2重量部である。有機スルホン酸金属塩の配合量が0.01重量部未満であると充分な難燃性が得られにくく、5重量部を越えると熱安定性が低下しやすい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を得るための方法としては、各種混練機、例えば、一軸および多軸混練機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等で、上記成分を混練した後、冷却固化する方法や、適当な溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素およびその誘導体に上記成分を添加し、溶解する成分同志あるいは、溶解する成分と不溶解成分を懸濁状態で混ぜる溶液混合法等が用いられる。工業的コストからは溶融混練法が好ましいが、これに限定されるものではない。溶融混練においては、単軸や二軸の押出機を用いることが好ましく、中でも二軸押出機を用いて、金属で被覆された炭素繊維を押出機の途中からフィードする方法が好ましい。かかる方法を採ることにより、繊維長を長く残しつつ、安定した生産が可能となる。また、中空炭素フィブリルは、該押出機の最初から入れてもよいが、途中からフィードする方法でもよい。
本発明の成形体は、電磁波遮蔽性が求められるOA機器部品や電気電子部品に幅広く用いられるが、特にOA機器の筐体や電気電子機器の筐体等に好適であり、例えば、ノート型パソコン、電子手帳、携帯電話、PDA、プロジェクター等が挙げられる。
なお、以下の実施例において、各成分として次に示すものを用いた。
(A)熱可塑性樹脂
(A−1)ポリカーボネート樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000、粘度平均分子量21,000(以下、「PC」と略記する)
(A−2)ポリフェニレンエーテル樹脂:ポリ(2,6-ジメチル-1,4−フェニレンエーテル)(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、30℃クロロホルム中で測定した固有粘度が0.40dl/gのもの)(以下、「PPE」と略記する)
(A−3)ポリスチレン樹脂:A&Mスチレン(株)製、商品名:ダイヤレックスHF77)(以下、「PS」と略記する)
(A−4)ABS樹脂:日本A&L(株)製、商品名:サンタックUT61(以下、「ABS」と略記する)
(A−5)ポリブチレンテレフタレート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ノバデュラン(登録商標)5010(以下、「PBT」と略記する)
(B)金属被覆した炭素繊維:ニッケルで被覆された炭素繊維、東邦レイヨン(株)製、商品名:ベスファイトMC−HTA−C6−US、直径7.5μm、長さ6mm
(C−2)中空炭素フィブリル:ハイペリオン・カタリシス社製で、グラファイト・フィブリルBNを20重量%、ポリスチレンを80重量%含有するマスターペレット(商品名:PS/20BN)。グラファイト・フィブリルBNは、外径10nm、長さ5,000nmの中空炭素フィブリル
導電性カーボンブラック:ケッチェンブラック・インターナショナル社製、ケッチェンブラックEC−600JD
その他の繊維:炭素繊維 三菱レイヨン(株)製、商品名:パイロフィルTR06U、直径7μm、長さ6mm(以下、「CF」と略記する)
難燃剤:リン酸エステル化合物:レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、旭電化工業(株)製、商品名:FP500
フッ素樹脂:ポリテトラフルオロエテレン、ダイキン工業(株)製、商品名:ポリフロンF−201L
エラストマー:ブタジエン−スチレン・コア/アクリル・シェルの多層構造重合体、三菱レイヨン(株)製、商品名:メタブレンE−901
表1に示す割合にて調製した樹脂組成物をタンブラーミキサーにて均一に混合したのち、二ヶ所のフィード口を有する二軸押出機(30mmφ)を用いて、シリンダー温度280℃で、金属被覆炭素繊維を除く成分をメインホッパーより、また金属被覆炭素繊維を下流のホッパーよりフィードし、ペレット化した。
次にこの樹脂組成物を、射出成形機(住友重機械工業製、サイキャップM−2、型締め力75T)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件でISO多目的試験片を射出成形して成形品を作成し、下記のような方法で評価を行った。
結果を表1に示す。
(1)曲げ弾性率
ISO178による曲げ試験法に従い、三点曲げ試験を行った。
(2)電磁波シールド性
100mm×100mm×2mmtのシートを射出成形機(住友重機械工業製、サイキャップM−2、型締め力75T)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件にて作成し、(株)アドバンテスト製、TR−17301AとR3361Aを用いて、周波数500MHzにおける電界波と磁界波のシールド性を測定した。
また、電磁波シールド性の安定性として、該成形と測定をn=100で行い、最大値と最小値の差を求め、これを安定性の指標とした。
(3)DTUL
ISO75により1.80MPaにて測定を行った。
(4)シャルピー衝撃
ISO179により、非ノッチにて試験を行った。
(5)難燃性
UL94垂直燃焼性試験に基づき、1.5mm厚みでの燃焼性を試験した。
Claims (6)
- (A)熱可塑性樹脂50〜94重量部、(B)金属で被覆された炭素繊維6〜50重量部、及び該(A)及び(B)の合計100重量部に対して(C)中空炭素フィブリル0.1〜10重量部を配合してなることを特徴とする電磁波シールド用樹脂組成物。
- (B)成分が、ニッケルで被覆された炭素繊維であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド用樹脂組成物。
- 中空炭素フィブリルが、外径3.5〜70nm、アスペクト比5以上の中空炭素フィブリルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波シールド用樹脂組成物。
- (A)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート系樹脂又はポリフェニレンエーテル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波シールド用樹脂組成物。
- (A)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート系樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁波シールド用樹脂組成物。
- 請求項1に記載の樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
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