JP5247765B2 - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを用いた成形品 - Google Patents
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Description
(1)マトリックス樹脂(芳香族ポリカーボネート)に対する多層構造重合体の外殻層の混和性により、ポリカーボネート樹脂中におけるジエン含有多層構造重合体の分散性が向上し、(2)燃焼時に、樹脂組成物からのラジカルが多層構造重合体の内層のジエン成分により補足され、そして(3)多層構造重合体の内層のジエン成分により炭化層が形成する。
(1)ポリカーボネート樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート、商品名:ユーピロン(登録商標)H−3000、粘度平均分子量18,900、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品。(以下、「PC樹脂」とも称する。)
(2)有機スルホン酸金属塩−1:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、商品名:F−114、大日本インキ化学工業(株)製品。
(3)有機スルホン酸金属塩−2:ジフェニルスルホンスルホン酸カリウム塩、商品名:KSS、ユーシービージャパン製品。
(4)リン系難燃剤−1:燐酸エステル、TPP、大八化学(株)製品。
(5)ポリテトラフルオロエチレン:商品名:ポリフロンF−201L、ダイキン(株)製品。(以下、「PTFE」とも称する。)
(7)多層構造重合体−2:ブタジエン・スチレン共重合体で形成された内層とポリ(メチルメタクリレート)で形成された外殻層からなる多層構造重合体、商品名:メタブレンE−901、三菱レイヨン(株)製品。
(8)多層構造重合体−3:ポリ(アルキルアクリレート)で形成された内層とポリ(メチルメタクリレート)で形成された外殻層からなる多層構造重合体、商品名:パラロイドEXL−2315、呉羽化学(株)製。
(9)多層構造重合体−4:シロキサン含有ポリ(アルキルアクリレート)で形成された内層とポリ(メチルメタクリレート)で形成された外殻層からなる多層構造重合体、商品名:メタブレンSX−005 三菱レイヨン(株)製品(10)多層構造重合体−5:シロキサン含有ポリ(アルキルアクリレート)で形成された内層とスチレン・アクリロニトリル系共重合体で形成された外殻層からなる多層構造重合体、商品名:メタブレンSRX−200、三菱レイヨン(株)製品
(11)燃焼性:0.8mm厚みのUL規格の試験片により垂直燃焼試験を行い、評価した。総燃焼時間は5本10回燃焼時の燃焼時間の合計、最大燃焼時間は10回の燃焼で最大の燃焼時間、綿着火は(着火回数)/(滴下回数)の比である。滴下回数は、試験で滴下した試料の数に等しい。評価結果はアンダーライターズ・ラボラトリーズが定める燃焼性試験に関する安全規格(UL−94)に基づき判定し,「NG」は試料がV−2に合格しないことを示す。
(12)衝撃強度:3.2mmのアイゾット衝撃試験片を成形し、その後0.25Rのノッチを切削し評価を行った。
(13)荷重撓み温度:6.4mmの曲げ試験片を使用し、1.82Mpa(18.5kgf/cm2)荷重の下での荷重撓み温度を測定した。
(15)外観評価:滞留試験後の成形品表面におけるシルバーストリークの有無を調べた。シルバーストリークが観察されない場合を○、シルバーストリークが少し観察される場合を△、シルバーストリークが多く観察される場合を×とした。
(16)調湿試験:燃焼試験用試験片を、温度23℃、湿度50%の環境中に1ヶ月管保存後、燃焼性を測定した。
(17)加湿試験:アイゾット衝撃試験片(3.2mm)及び引張り試験片を温度60℃、湿度90%の条件下で500時間保存後、アイゾット衝撃強度及び引張り伸びを測定した。該引張り伸びについては,下記の式に従い、伸びの保持率を算出した。
引張り伸びの保持率(%)=加湿試験後の伸び(%)/加湿試験前の伸び(%)×100
芳香族ポリカーボネート樹脂を100重量部、有機スルホン酸金属塩−1を0.1重量部、ポリテトラフルオロエチレンを0.4重量部、多層構造重合体−1を2重量部配合し、混合物をタンブラーにて15分間混合後、30mm二軸押出機にてシリンダー温度280℃でペレット化し、射出成形機にて0.8mm厚みの燃焼試験片を成形し、燃焼性を評価した。さらに、シリンダー温度270℃にて、アイゾット衝撃試験片及び曲げ試験片を成形し、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1において、多層構造重合体−1を多層構造重合体−2に変更する以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
実施例1において、有機スルホン酸金属塩−1を有機スルホン酸金属塩−2に変更する以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
実施例1において、有機スルホン酸金属塩−1の量を0.05重量部に変更する以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例5〕
実施例1において、多層構造重合体−1の量を5重量部に変更する以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、多層構造重合体−1を使用しない以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例2〕
実施例1において、多層構造重合体−1を多層構造重合体−3に変更する以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例3〕
実施例1において、多層構造重合体−1を多層構造重合体−4に変更する以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1において、多層構造重合体−1を多層構造重合体−5に変更する以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例5〕
実施例1において、リン系難燃剤−1を0.5重量部配合する以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例6〕
実施例1において、リン系難燃剤−1を5重量部配合する以外は実施例1と同様の方法でペレット化し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1において得られたペレットを用いて,滞留試験及び調湿後の難燃性の評価を行った。その結果を表3に示す。また、(17)加湿試験後のアイゾット衝撃強度及び引張り伸びを測定した結果を表4に示す。
〔実施例7〕
実施例1の組成にさらに燐酸エステル0.3重量部を添加してペレットを作成し、実施例6と同様の評価を行った。この結果を表3及び表4に示す。
〔比較例7〕
比較例5において得られたペレットを用いて、実施例6と同様の滞留試験および調湿後の難燃性の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
〔比較例8〕
比較例6において得られたペレットを用いて、実施例6と同様の滞留試験および調湿後の難燃性の評価を行った。結果を表3および表4に示す。
(1)実施例1および実施例2が示すように、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に、有機スルホン酸金属塩−1を0.1重量部、ポリテトラフルオロエチレンを0.4重量部、ジエン含有多層構造重合体を2重量部配合すると、0.8mm厚みでのUL−94燃焼試験においてV−0を達成でき、しかもアイゾット衝撃強度は588j/m(60kgfcm/cm)以上の値を示し、荷重撓み温度は130℃以上であり、難燃性、耐衝撃性および耐熱性に優れている。
(2)実施例3が示すように、有機スルホン酸金属塩の種類を変更しても、難燃性のV−0を達成でき、耐衝撃性および耐熱性に優れている。
(3)実施例4および実施例5に示すように、有機スルホン酸金属塩あるいはジエン含有多層構造重合体の配合量を変更しても、難燃性のV−0を達成でき、耐衝撃性および耐熱性に優れている。
(5)比較例2〜4が示すように、ジエンを含まない多層構造重合体を配合すると、いずれも0.8mm厚みでのUL−94燃焼試験においては滴下綿着火が有り、燃焼時間も長くV−2もしくはNGとなる。
(6)比較例5〜6が示すように、リン系難燃剤を配合すると、耐衝撃性および耐熱性が低下する。
(7)実施例6が示すように、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、滞留試験後も、シルバーストリークの発生がなく、耐衝撃性にも優れており、吸湿テスト後も難燃性のV−0を達成できる。
(8)比較例7〜8が示すように、リン系難燃剤を配合すると、滞留後はシルバーストリークが発生し、耐衝撃性も低下し、吸湿テスト後は難燃性も低下する。
Claims (13)
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(B)有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部、(C)フッ化ポリオレフィン0.01〜5重量部、(D)ジエン含有多層構造重合体0.2〜20重量部を含み、(B)有機スルホン酸金属塩が、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩であり、リン系難燃剤の配合量が0.5重量部未満であり、(D)ジエン含有多層構造重合体が、ブタジエンを含む単量体を重合して得られるゴム状重合体から主としてなる内層と、メタクリル酸エステル系単量体および/またはアクリル酸エステル系単量体のみを重合して得られる重合体からなる外殻層を有する、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂である、請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が、15,000〜30,000である、請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- (B)有機スルホン酸金属塩の金属がアルカリ金属またはアルカリ土類金属である、請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- (C)フッ化ポリオレフィンが、ポリテトラフルオロエチレンである、請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリテトラフルオロエチレンが、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンである、請求項5に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂であり、(B)有機スルホン酸金属塩が、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であり、(C)フッ化ポリオレフィンが、ポリテトラフルオロエチレンである、請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- リン系難燃剤の配合量が芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.3重量部以下である、請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- リン系難燃剤の配合量が芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.1重量部以下である、請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- リン系難燃剤を実質的に含まない、請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(B)有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部、(C)フッ化ポリオレフィン0.01〜5重量部、(D)ジエン含有多層構造重合体0.2〜20重量部を含み、(B)有機スルホン酸金属塩が、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩であり、リン系難燃剤の配合量が0.5重量部未満であり、(D)ジエン含有多層構造重合体が、ブタジエンを含む単量体を重合して得られるゴム状重合体から主としてなる内層と、メタクリル酸エステル系単量体および/またはアクリル酸エステル系単量体のみを重合して得られる重合体からなる外殻層を有する、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物から成る成形品。
- アイゾット衝撃強度が392j/m(40kgfcm/cm)以上である、請求項11に記載の成形品。
- 荷重撓み温度が129℃以上である、請求項11に記載の成形品。
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