JP2005081609A - セラミックハニカム構造体成形用金型およびその製造方法 - Google Patents

セラミックハニカム構造体成形用金型およびその製造方法 Download PDF

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智寿 小方
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Abstract

【課題】 セラミックハニカム構造体を押し出し成形する際に、曲がりの無い健全なセラミックハニカム構造体を得ることのできる、セラミックハニカム構造体成形用金型およびその製造方法を得る。
【解決手段】 セラミックハニカム構造体成形用金型の成形溝の端から供給穴中心までの距離と、その供給穴における供給穴と成形溝との重複長さの関係を、最小二乗法で直線近似した回帰直線の傾きの絶対値が、0.0004(mm/mm)以下とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、セラミックハニカム構造体を押出成形するために使用する金型とその製造方法に関する。
セラミックハニカム構造体はガソリンエンジンやディーゼルエンジンの排気ガス浄化のための触媒担体や、ディーゼルエンジンの排気ガス中の微粒子を捕集するフィルタなどに用いられており、前記セラミックハニカム構造体の製造方法には押出成形が用いられていることは一般に知られている。図1は前記押出し成形のために用いる押出成形用金型を、ハニカム形状を成形するための格子状の成形溝2を有する面から見た状態と、その裏側である前記成形溝に連通するセラミック坏土の供給のための供給穴4を有する面から見た状態を模式的に示しており、その断面は図2に示すような構造で前記成形溝2と前記供給穴4が連通されている。前記成形溝2と前記供給穴4の位置関係は図3に示すように、格子状の成形溝2の交点と前記供給穴4の中心が一致する位置となり、前記格子状の成形溝の全ての交点に前記供給穴を有する構造のもののほか、例えば前記成形溝の交点に対して一つおきに、すなわち千鳥状に供給穴を有する構造のものなどもある。
押出成形時は図4に示すように、セラミック坏土15が供給穴側から供給され押込まれることで格子状の成形溝からセラミックハニカム構造体17が成形される。押出されたセラミックハニカム構造体17は所定の長さに順次切断され、その後乾燥などの工程を経て製品となる。
これらの押出成形に用いる金型の従来の製造方法について説明する。まず図1の金型1の材料となる金型素材10を準備する。この金型素材10は成形溝2を形成すべき成形溝加工面11を突出させた形状を予め設けてある。次いで、金型素材10における成形溝加工面11と反対側の面(供給穴加工面)14から供給穴4をドリル、又は放電加工、又は電解加工等により設けるとともに、金型素材10の成形溝加工面11に成形溝2を設ける。
ここで、前記供給穴4を成形するに当たっては、図5に示すごとく供給穴加工装置5を用いる。供給穴加工装置5は、金型素材10をセットするテーブル52と、供給穴加工ドリルを回転可能に保持する工具支持部53とよりなる。また、テーブル52またはドリル保持部53の何れかは、供給穴加工面と平行に上下左右に移動するよう構成されている。ドリルを1ピッチの加工間隔をあけて図5に示すごとく、順次加工する。すなわち同図において(1)、(2)、(3)・・・の順に加工する。供給穴加工装置5は、ドリル加工装置の他に放電加工装置や電解加工装置等を用いることもある。
また前記成形溝2を形成するに当たっては、図7に示すごとく、円形薄刃砥石等の回転工具7を用い、これを成形溝加工面11に対して相対移動させて成形溝加工面11を研削又は切削することにより行う。そして、その作業を成形溝の数だけ縦横に複数回繰り返すことにより、格子状の成形溝2を得ることができる。このとき、平行な複数の成形溝2は、図6に示すごとく、その一番端の(1)の成形溝2から他端の成形溝まで1ピッチの加工間隔をあけて順次加工する。即ち、同図において、(1)、(2)、(3)・・・の順に加工する。なお、図7の回転工具7は、円形薄刃砥石の他にフライスカッター等を用いることもある。
上記の成形溝の加工について特許文献1には、厚さ150μm以下の回転工具を使用したとき、上記の従来の加工方法では回転工具が一方に反ることにより加工軌跡の蛇行が頻繁に生じ工具が破損するため、成形溝の2ピッチ以上の間隔を開けて加工することで蛇行を防止できるという発明の記載がある。さらに特許文献1では厚さ150μm以下の回転工具を使用したとき、成形溝を金型の一端から他端へ順番に連続して加工したときに回転工具の厚さ方向の摩耗によって、成形溝の幅が徐々に狭く変化する変化の傾向性が生じ、セラミックハニカム構造体を成形した時に前記セラミックハニカム構造体が曲ってしまう不具合を、加工順序をランダムにすることで防止できるという発明の記載がある。
ところで、近年のトラックなど大型エンジンの環境規制に対応するためセラミックハニカム構造体の大口径化の要求があり、そのためハニカム構造体成形用金型も大口径にすることが必要となってきた。このような大口径のセラミックハニカム構造体は、特に口径が220mm以上となる大口径のセラミックハニカム構造体は、強度上の制約により内部の格子状の壁の厚さが比較的厚い0.15mm以上となっており、前記壁を成形する金型の成形溝の加工には0.15mm以上の比較的厚い回転工具を用いることが出来る。
特開平11−70510号公報
成形溝の加工に上記のような0.15mm以上の比較的厚い回転工具を用いた場合は、前記回転工具の反りが発生しないため加工軌跡の蛇行は無く、また回転工具の直径方向の磨耗は発生するが、回転工具に反りが発生せず回転工具の側面と金型素材が圧接しないために回転工具の厚さ方向の磨耗はほとんどなく、よって前記成形溝の幅の変化もほとんどない。したがって成形溝の幅が0.15mm以上となる金型を加工する場合において、前記成形溝を金型の一端から他端へ順番に加工しても、前記特許文献1で開示されたような成形溝の幅が徐々に狭くなる現象は発生しなかった。
しかしながら、本発明者が成形溝の幅が徐々に狭くなる現象を生じていない金型を用いて、セラミックハニカム構造体の押し出し成形を行った場合に、なおセラミックハニカム構造体が曲がってしまうという現象が発生してしまう場合があった。本発明者らが検討した結果、その原因として次に記す、供給穴と成形溝との重複部分の長さに関係があることが判明した。
すなわち、供給穴を金型の一端から他端へ順番に加工したところ、工具の長さ方向の摩耗により供給穴の深さが徐々に浅くなり、図2に示す供給穴と成形溝の重複部分の長さCが徐々に小さくなるという変化の傾向性を生じた。前記供給穴と成形溝の重複部分は、供給穴を通過して成形溝へ供給されるセラミック坏土のうち供給穴と供給穴の間の部分、すなわち図3に示すDの部分へ供給されるセラミック坏土の一部が通過する経路となっており、前記重複長さが小さくなると成形溝へ供給されるセラミック坏土が減少し、セラミックハニカム構造体の成形性に悪影響を及ぼす。そのために、これら供給穴と成形溝の重複部分の変化の傾向性を生じた金型をセラミックハニカム構造体の押出成形に用いたところ、前記重複長さの変化の傾向性に起因すると思われる成形体の曲りが発生した。
また、成形溝についても成形溝を金型の一端から他端へ順番に加工すると、回転工具の直径方向の摩耗によって成形溝の深さが徐々に浅くなり、上記と同様に供給穴と成形溝の重複長さが徐々に変化するという変化の傾向性が生じた。回転工具は加工距離に比例して摩耗を生じるため、セラミックハニカム構造体の口径が220mm以下であるような小口径では隣合う溝の深さの差がセラミックハニカム構造体の押出成形の曲りに影響を及さない程度の差しか生じなかったが、特にセラミックハニカム構造体が大口径になることよって、隣合う溝の深さの差が小口径よりも大きくなったことで、前記重複長さの変化に起因すると思われる成形体の曲りが発生した。
したがって本発明の課題は、曲がりの無い健全なセラミックハニカム構造体を得ることのできるセラミックハニカム構造体成形用金型およびその製造方法を得ることにある。
曲がりのない健全なセラミックハニカム構造体を得るためには、セラミックハニカム構造体成形用金型の成形溝と供給穴の重複長さの変化の傾向性を一定範囲以下にすることが重要である。
すなわち本発明のセラミックハニカム構造体成形用金型は、セラミック坏土をハニカム形状に成形するための格子状の成形溝と、該成形溝に連通するセラミック坏土供給用の複数の供給穴とを有するセラミックハニカム構造体成形用金型において、前記供給穴と前記成形溝との重複長さの変化が、金型の一端から他端にわたって、セラミックハニカム構造体の成形性に影響を与えるような傾向性を有しないことを特徴とするものである。供給穴と成形溝の重複長さが徐々に小さくなるような変化の傾向性を有していると、供給穴から成形溝へ供給されるセラミック坏土の量に傾向を生じ、セラミックハニカム構造体が曲がって成形されるが、金型が前記変化の傾向性のない状態にすることにより、曲がりない健全なセラミックハニカム構造体を得ることができる。
また、本発明のセラミックハニカム構造体成形用金型は、セラミック坏土をハニカム形状に成形するための格子状の成形溝と、該成形溝に連通するセラミック坏土供給用の複数の供給穴とを有するセラミックハニカム構造体成形用金型において、成形溝の端から該成形溝上に連通した各供給穴中心までの距離(mm)と、各供給穴における供給穴と成形溝との重複長さ(mm)の関係を、並行する複数の成形溝のうち少なくとも1つの成形溝について、並行する複数の成形溝ごとに最小二乗法で直線近似した回帰直線の傾きの絶対値が、それぞれ0.0004(mm/mm)以下となることが望ましい。
上記、最小二乗法で直線近似した回帰直線の傾きについて図6を用いて説明する。図6の並行する複数の成形溝22のうち、あるひとつの成形溝に連通する複数の供給穴について、成形溝の端から各供給穴の中心までの距離をXとし、各供給穴における該供給穴と成形溝との重複長さをYとし、XとYの関係を最小二乗法で直線近似すると回帰直線Y=aX+bが得られる。成形溝22の方向の成形溝と供給穴の重複長さの変化の傾向性を把握するためには、成形溝22のうち少なくとも1つの成形溝において回帰直線の傾きを求める必要がある。また成形溝22のうち複数の成形溝に対して、それぞれの成形溝の端から該成形溝に連通する供給穴の中心までの距離と、各供給穴における該供給穴と成形溝との重複長さとを求め、ひとつの回帰直線の傾きを求めることにより、成形溝22の方向の成形溝と供給穴との重複長さの変化の傾向性をより精度良く把握することができる。次に前記成形溝22と直交する成形溝21についても上記と同様に回帰直線を求めることにより、成形溝21の方向の成形溝と供給穴との重複長さの変化の傾向性を把握することができる。
上記2つの回帰直線の傾きaの絶対値の少なくともひとつが0.0004を超えると供給穴と成形溝との重複長さの変化の傾向性により、この金型を用いてセラミックハニカム構造体を成形した場合に供給穴から成形溝へ供給されるセラミック坏土の量に傾向性を生じ、成形されたセラミックハニカム構造体に曲がりが生じる。
また、本発明のセラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法は、セラミック坏土をハニカム形状に成形するための格子状の成形溝と、該成形溝に連通するセラミック坏土供給用の複数の供給穴とを有するセラミックハニカム構造体成形用金型を製造する方法において、前記供給穴または成形溝の加工は、工具の磨耗による前記供給穴と前記成形溝との重複長さの変化が、金型の一端から他端にわたって、セラミックハニカム構造体の成形性に影響を与えるような傾向性を有しないように加工を行うことを特徴とするものである。
供給穴と成形溝の加工の順序を従来のように一端から他端へ順番に加工すると、供給穴と成形溝の重複部分の長さが徐々に小さくなるという変化の傾向性により、この金型を用いてセラミック坏土の押出成形をした場合は、供給穴から成形溝へ供給されるセラミック坏土の量に傾向を生じ、セラミックハニカム構造体が曲がって成形されるが、金型を前記変化傾向がないように加工することにより、曲がりない健全なセラミックハニカム構造体を得ることができる。
また、本発明のセラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法は、供給穴の加工は工具の磨耗による供給穴の深さの変化のために生じる前記供給穴と前記成形溝との重複長さの変化が、セラミックハニカム構造体の成形性に影響を与えないようなランダムな順序で行うことが望ましい。供給穴の加工の順序を従来のように一端から他端へ順番に加工するのではなく、ランダムな順序で加工することにより、供給穴の深さに変化の傾向性が小さくなり、曲がりない健全なセラミックハニカム構造体を得ることができる。
供給穴のランダムな加工順序の設定方法としては、Nヶの供給穴を加工する場合に、例えばNヶの供給穴の加工位置にそれぞれに1からNの番号を割り当て、次に1つの供給穴を加工するたびに1からNまでの乱数を発生させ、発生した乱数を次に加工する供給穴の加工位置とする方法がある。当然ながら予めNヶの乱数を発生させておいてもよい。以上のようにランダムな加工順序の設定方法は乱数を利用するのが有用である。
供給穴のランダムな加工順序の設定方法としては、上記の乱数を利用するもののほかに、図9に示す供給穴を加工しようとしたときに、まずこの供給穴をGA、GB、GC、GDのグループに分け、そして加工順序をGAの(1)の供給穴、次にGBの(1)の供給穴、次にGC(1)の供給穴、次にGDの(1)の供給穴、次にGAの(2)の供給穴、次にGBの(2)の供給穴・・・という順序で加工を行う方法を採ることもできる。各グループ内ではグループ内の一端から他端へ(1)(2)(3)・・・(7)(8)・・と順番に加工することにより、各グループの内では前記供給穴の深さに変化の傾向性を生じるが、これらのグループが複数あるため金型全体としては穴の深さに変化の傾向性が小さくなり、これによりセラミック坏土の押出成形時に供給穴の深さの変化による供給穴と成形溝との重複長さの変化の傾向性のために生じる曲り不具合の発生がなくなる。この例のように供給穴の加工位置を2つ以上のグループに分け、各グループ毎に1ヶの供給穴を加工し、すべてのグループに1ヶの供給穴を加工した後に、次の1ヶの供給穴を各グループに対して加工していくことを繰り返す方法が有用であるが、上記の例の他に、工具の磨耗による供給穴の深さの変化の傾向性を金型の供給穴加工面に散らす順序であれば、上記の例に限らず多様な順序を取ることができる。
また本発明のセラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法は、成形溝の加工は0.15mm以上の厚みを有する回転工具を用いて金型素材を研削又は切削することにより行い、かつ、同一方向に平行に設けられた複数の成形溝の加工は、前記回転工具の磨耗による前記成形溝の深さの変化のために生じる前記供給穴と前記成形溝との重複長さの変化が、セラミックハニカム構造体の成形性に影響を与えないようなランダムな順序で行うことが望ましい。
本発明においては、成形溝を加工するための回転工具の直径方向の摩耗に起因する前記の成形溝と供給穴の重複長さに変化の傾向性が生じないよう、成形溝加工の順序をランダムな順序としているため、成形溝の深さにばらつきは生じるものの、金型の一端から他端にかけて徐々に小さくまたは大きくなるという変化の傾向性が小さくなる。これによりセラミック坏土の押出成形時に成形溝の深さの変化による成形溝と供給穴との重複長さの変化の傾向性小さくなり、曲がりない健全なセラミックハニカム構造体を得ることができる。
成形溝のランダムな加工順序の設定方法としては、Nヶの成形溝を加工する場合に、例えばNヶの成形溝の加工位置にそれぞれに1からNの番号を割り当て、次に1つの成形溝を加工するたびに1からNまでの乱数を発生させ、発生した乱数を次に加工する成形溝の加工位置とする方法がある。当然ながら予めNヶの乱数を発生させておいてもよい。以上のようにランダムな加工順序の設定方法は乱数を利用するのが有用である。
成形溝のランダムな加工順序の設定方法としては、上記の乱数を利用するもののほかに、図8に示す成形溝を加工するときに、先ずこれらの成形溝をGX、GY、GZのグループ分け、加工順序をGXの(1)の成形溝、次にGYの(1)の成形溝、次にGZの(1)の成形溝、次にGXの(2)の成形溝、次にGXの(2)の成形溝・・・という順序で加工を行う方法を採ることもできる。各グループ内ではグループ内の一端から他端へ(1)(2)(3)・・・と順番に加工することにより、各グループの内では成形溝の深さに変化の傾向性を生じるが、これらのグループが複数あるため金型全体としては成形溝の深さに変化の傾向性が小さくなり、これによりセラミック坏土の押出成形時に成形溝の深さの変化による成形溝と供給穴との重複長さの変化の傾向性のために生じる曲り不具合の発生がなくなる。この例のように、成形溝の加工位置を2つ以上のグループに分け、各グループ毎に1ヶの成形溝を加工し、すべてのグループに1ヶの成形溝を加工した後に、次の1ヶの成形溝を各グループに対して加工していくことを繰り返す方法も有用であるが、上記の例の他に、工具の磨耗による成形溝の深さの変化の傾向性を金型の成形溝加工面に散らす順序であれば、上記の例に限らず多様な順序を取ることができる。
また本発明のセラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法は、前記成形溝の加工時に回転工具の直径方向の摩耗量を測定し、摩耗量に対応した切込み量の補正を行う方法を取ることもできる。任意の加工距離ごとに回転工具の直径方向の摩耗量を測定し、その摩耗量に応じた切込み量の補正を行うことで、前記成形溝の深さの変化が補正され、成形溝の深さの変化の傾向性を小さくすることができ、これによりセラミック坏土の押出成形時に成形溝の深さの変化による成形溝と供給穴との重複長さの変化の傾向性小さくなり、曲がりない健全なセラミックハニカム構造体を得ることができる。
また本発明のセラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法は、前記供給穴の加工時に回転工具の長さの摩耗量を測定し、摩耗量に対応した切込み量の補正を行う方法を取ることも出来る。任意の加工数ごとに回転工具の長さ方向の摩耗量を測定し、その摩耗量に応じた切込み量の補正を行うことで、前記成形溝の深さの変化が補正され、供給穴の深さの変化の影響を小さくすることができ、これによりセラミック坏土の押出成形時に供給穴の深さの変化による成形溝と供給穴との重複長さの変化の傾向性が小さくなり、曲がりない健全なセラミックハニカム構造体を得ることができる。
また、本発明のセラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法は、前記供給穴と成形溝の加工は、成形溝の端から該成形溝上に連通した各供給穴中心までの距離(mm)と、各供給穴における供給穴と成形溝との重複長さ(mm)の関係を、並行する複数の成形溝のうち少なくとも1つの成形溝について、並行する複数の成形溝ごとに最小二乗法で直線近似した回帰直線の傾きの絶対値が、それぞれ0.0004(mm/mm)以下となるような加工を行うことが望ましい。
供給穴と成形溝の加工の順序を従来のように一端から他端へ順番に加工すると、供給穴と成形溝の重複部分の長さが徐々に小さくなるという変化の傾向性により、供給穴から成形溝へ供給されるセラミック坏土の量に傾向を生じ、セラミックハニカム構造体が曲がって成形されるが、前記変化傾向がない、すなわち成形溝の端からの供給穴中心までの距離と、その供給穴における供給穴と成形溝との重複長さの関係を、最小二乗法で直線近似した回帰直線の傾きが、0.0004以下となるように加工することにより、曲がりない健全なセラミックハニカム構造体を得ることができる。
本発明によれば、曲がりのない健全なセラミックハニカム構造体を得ることができるセラミックハニカム構造体成形用金型およびその製造方法を得ることができる。
以下、本発明を具体化したセラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法の例について説明する。
本実施例の製造方法は図1に示すごとく、セラミック坏土供給用の供給穴4と、前記供給穴4に連通して格子状に設けられたセラミック坏土をハニカム形状に成形するための成形溝2とを有し、かつ前記成形溝2の幅が0.15mm以上であるセラミックハニカム構造体の成形用金型1を製造する方法である。また、本実施例において製造する金型1の成形溝加工面11は縦240mm、横240mmの四角形であり、また、供給穴の直径は1.2mm、供給穴の深さは20mm、成形溝の幅は0.26mm、成形溝の深さは6.5mm、成形溝のピッチは1.56mmである。
まず、金型1を製造するに当たっては、図1に示すごとく、成形溝2を形成する成形溝加工面11とセラミック坏土供給用の供給穴4を設ける供給穴加工面14とを表裏に有する金型素材を準備する。本実施例においては金型素材に合金工具鋼(JIS G4404)を使用した。そして、金型の供給穴加工面14から供給穴4を形成する。供給穴の加工は図5に示すように供給穴加工装置5を用いて行う。供給穴加工装置5は、金型素材10をセットするテーブル52と、供給穴加工工具を回転可能に保持する工具支持部53とよりなる。また、テーブル52または工具保持部53の何れかは、供給穴加工面と平行に上下左右に移動するよう構成されている。また、供給穴加工工具は、直径1.1mmの超硬ドリルを用いた。そして供給穴加工は、加工順序による供給穴の深さに変化の傾向性が生じないようなランダムな順序で行った。本実施例では供給穴の数は21025となるが、ランダムな順序の決定方法は、全ての供給穴の加工位置のひとつひとつについて1〜21025の間で発生させた乱数を振り当て、これを各供給穴の加工位置を加工する順序とする方法を採った。
次いで、金型素材10の成形溝加工面11に成形溝2を格子状に加工する。このとき成形溝2は、図7における矢印方向に沿って平行に複数の成形溝を設けた後、材料を90度回転させて加工して既に加工した成形溝に直角に平行に複数の成形溝2を設ける。成形溝2の加工は、図7に示すごとき成形溝加工装置6を用いて行う。成形溝加工装置6は、金型素材10をセットするテーブル62と、回転工具7を回転可能に保持する工具支持部63とよりなる。工具支持部63は回転シャフト64を介して回転工具7を保持している。また、テーブル62または工具支持部63の何れかは、成形溝加工面と平行に上下左右に移動するよう構成されている。また回転工具7としては、厚み0.25mmの円形薄刃砥石を用いた。
上記構成の成形溝加工装置6を用い、まず矢印方向に複数の成形溝2を平行に加工する。本実施例では平行に加工される成形溝は145本となる。このとき成形溝2の加工順序は、加工順序による回転工具の直径方向の摩耗による成形溝の深さに変化の傾向性が生じないようなランダムな順序で行った。ランダムな加工順序の決定方法は、全ての成形溝の加工位置ひとつひとつについて1〜145の間で発生させた乱数を振り当て、これを各成形溝の加工位置を加工順序とする方法を採った。
次に上記成形溝の加工を終えたセラミックハニカム構造体成形用金型の、供給穴と成形溝の重複長さを測定する。平行に加工された成形溝145本より10本を選び、前記10本の各成形溝に連通する供給穴について、各成形溝の端から供給穴の中心までの距離を求め、次に該供給穴における供給穴と成形溝の重複長さを、金型の厚さと成形溝の深さと供給溝の深さより求めた。上記のようにして求めた成形溝の端からの各供穴の中心までの距離と、成形溝と供給穴の重複長さの関係を最小2乗法により直線近似し、この直線の傾きを求めた。その結果を表1に記すように、成形溝と供給穴の重複長さに変化の傾向性が小さいセラミックハニカム構造体成形用金型を得ることができた。
次に上記成形溝の加工を終えたセラミックハニカム構造体成形用金型を用いて、セラミックハニカム構造体の押出成形を行った結果、成形されたセラミックハニカム構造体は曲がり不具合が発生することなく押出され、優れた成形性を確認した。
次に実施例1と同じ供給穴21025ヶの加工の順序を、本実施例では乱数を利用しない方法で加工を行った。前記加工の順序は、図10に示すように供給穴加工位置をGa、GbGc、Gd、・・・Giの9つのグループに分け、Gaに一つ供給穴を加工した次はGbに一つ供給穴を加工し、同様にGcからGiまでの各グループに各一つの供給穴を加工した後、続いてGaに二つ目の供給穴を加工して、Gbに二つ目の供給穴を加工し、以下同様に各グループに一つずつ加工を行う規則性を持って加工を行い、かつ、各グループの中での加工の順序は図10に示すように外周の一端から渦巻き状中心に向かって規則性を持って加工を行った。
次いで、金型素材10の成形溝加工面11に成形溝2を格子状に加工するが、本実施例では加工順序を乱数を利用しない方法で行った。前記加工の順序は図11に示すように、平行する成形溝加工位置をGv、Gw、Gx、Gy、Gzの5つのグループに分け、Gvに一つ成形溝を加工した次はGwに一つ成形溝を加工し、同様にGxからGzまでの各グループに各一つの成形溝を加工した後、続いてGvに二つ目の成形溝を加工して、次にGwに二つ目の成形溝を加工し、以下同様に各グループに一つずつ加工を行い、かつ、各グループの中での加工の順序はグループ範囲の一端から他端へ順番に加工を行った。
次に実施例1と同様に、成形溝の端から各供穴の中心までの距離と、成形溝と供給穴の重複長さの関係を最小2乗法により直線近似し、この直線の傾きを求めた。結果を表1に記すように、成形溝と供給穴の重複長さに変化の傾向性が小さいセラミックハニカム構造体成形用金型を得ることができた。
次に、上記溝の加工を終えたセラミックハニカム構造体成形用金型を用いて、セラミックハニカム構造体の押出成形を行った。その結果、成形されたセラミックハニカム構造体は曲がり不具合が発生することなく押出され、優れた成形性を確認した。
実施例1と同じ供給穴21025ヶを加工する際に、本実施例では加工の順序は供給穴加工面の端から順番に加工し、50本の供給穴の加工が終了した都度、回転工具の長さを計測することで回転工具の長さ方向の摩耗量を求め、その摩耗量に対応した穴加工の深さの補正を行い供給穴の加工を行った。次に実施例1と同じ平行な145本の成形溝を加工する際に、加工の順序は成形溝加工面の端から順番に加工し、20本の成形溝の加工が終了した都度、回転工具の直径を計測することで回転工具の直径方向の磨耗量を求め、その磨耗量に対応した溝切込み深さの補正を行い、成形溝の加工を行った。結果を表1に記すように、成形溝と供給穴の重複長さに変化の傾向性が小さいセラミックハニカム構造体成形用金型を得ることができた。
次に、上記溝の加工を終えたセラミックハニカム構造体成形用金型を用いて、セラミックハニカム構造体の押出成形を行った。その結果、成形されたセラミックハニカム構造体は曲がり不具合が発生することなく押出され、優れた成形性を確認した。
比較例として、供給穴と成形溝とをそれぞれ上記実施例と同じ工具を用いて加工を行い、加工の順番は供給穴と成形溝ともそれぞれ金型の一端から他端へ順番に加工して、得られた金型の成形溝と供給穴の重複長さの変化の傾向性を表す直線近似式の傾きの値と、この金型を用いて、セラミックハニカム構造体の押出成形を行った結果を表1に示す。
Figure 2005081609
セラミックハニカム構造体成形用金型を示す図である。 セラミックハニカム構造体成形用金型の断面構造を示した図である。 成形溝と供給穴の位置関係を示した図である。 セラミックハニカム構造体成形用金型が使用される押出成形を示す図である。 供給穴の加工状態を示す図である。 成形溝の加工順序の例を示す図である。 成形溝の加工状態を示す図である。 本発明の成形溝の加工順序の一例を示す図である。 本発明の供給穴の加工順序の一例を示す図である。 実施例2での供給穴の加工順序を示す図である。 実施例2での成形溝の加工順序を示す図である。
符号の説明
1 金型
2 成形溝
4 供給穴
5 供給穴加工装置
6 成形溝加工装置
10 金型素材
11 成形溝加工面
14 供給穴加工面
15 セラミック坏土
17 セラミックハニカム構造体
52 テーブル
53 工具支持部
62 テーブル
63 工具支持部
64 回転シャフト
A 供給穴深さ
B 成形溝深さ
C 重複長さ
D 成形溝の供給穴と供給穴の間の部分
GA、GB・・・ 供給穴加工位置のグループ
Ga、Gb・・・ 供給穴加工位置のグループ
GX、GY、GZ 成形溝加工位置のグループ
Gv、Gw・・・ 成形溝加工位置のグループ

Claims (8)

  1. セラミック坏土をハニカム形状に成形するための格子状の成形溝と、該成形溝に連通するセラミック坏土供給用の複数の供給穴とを有するセラミックハニカム構造体成形用金型において、前記供給穴と前記成形溝との重複長さの変化が、金型の一端から他端にわたって、セラミックハニカム構造体の成形性に影響を与えるような傾向性を有しないことを特徴とする、セラミックハニカム構造体成形用金型。
  2. 請求項1において、成形溝の端から該成形溝上に連通した各供給穴中心までの距離(mm)と、各供給穴における供給穴と成形溝との重複長さ(mm)の関係を、並行する複数の成形溝のうち少なくとも1つの成形溝について、並行する複数の成形溝ごとに最小二乗法で直線近似した回帰直線の傾きの絶対値が、それぞれ0.0004(mm/mm)以下となることを特徴とする、セラミックハニカム構造体成形用金型。
  3. セラミック坏土をハニカム形状に成形するための格子状の成形溝と、該成形溝に連通するセラミック坏土供給用の複数の供給穴とを有するセラミックハニカム構造体成形用金型を製造する方法において、前記供給穴または成形溝の加工は、工具の磨耗による前記供給穴と前記成形溝との重複長さの変化が、金型の一端から他端にわたって、セラミックハニカム構造体の成形性に影響を与えるような傾向性を有しないように加工を行うことを特徴とする、セラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法。
  4. 請求項3において、前記供給穴の加工は工具の磨耗による供給穴の深さの変化のために生じる前記供給穴と前記成形溝との重複長さの変化が、セラミックハニカム構造体の成形性に影響を与えないようなランダムな順序で行うことを特徴とする、セラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法。
  5. 請求項4において、前記成形溝の加工は0.15mm以上の厚みを有する回転工具を用いて金型素材を研削又は切削することにより行い、かつ、同一方向に平行に設けられた複数の成形溝の加工は、前記回転工具の磨耗による前記成形溝の深さの変化のために生じる前記供給穴と前記成形溝との重複長さの変化が、セラミックハニカム構造体の成形性に影響を与えないようなランダムな順序で行うことを特徴とする、セラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法。
  6. 請求項3乃至請求項5のいずれかにおいて,前記成形溝の加工時に回転工具の直径方向の摩耗量を測定し、摩耗量に対応した切込み量の補正を行うことを特徴とする、セラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法。
  7. 請求項3乃至請求項6のいずれかにおいて,前記供給穴の加工時に回転工具の長さの摩耗量を測定し、摩耗量に対応した切込み量の補正を行うことを特徴とする、セラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法。
  8. 請求項3乃至請求項7のいずれかにおいて、前記供給穴と成形溝の加工は、成形溝の端から該成形溝上に連通した各供給穴中心までの距離(mm)と、各供給穴における供給穴と成形溝との重複長さ(mm)の関係を、並行する複数の成形溝のうち少なくとも1つの成形溝について、並行する複数の成形溝ごとに最小二乗法で直線近似した回帰直線の傾きの絶対値が、それぞれ0.0004(mm/mm)以下となるような加工を行うことを特徴とする、セラミックハニカム構造体成形用金型の製造方法。
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