JP2005075770A - ビナフトール誘導体ならびに該誘導体を用いた光学活性ビナフトール金属錯体触媒 - Google Patents

ビナフトール誘導体ならびに該誘導体を用いた光学活性ビナフトール金属錯体触媒 Download PDF

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Abstract

【課題】従来型の光学活性ビナフトール金属錯体触媒では非効率であった直鎖アルデヒドとニトロメタンとの不斉ニトロアルドール反応において満足すべき化学収率ならびに光学収率を達成するための、光学活性ビナフトール金属錯体触媒と該触媒を調製するためのビナフトール誘導体を提供する。
【解決手段】一般式(1r)、一般式(1s)またはその光学活性体、もしくはビナフトール希土類金属錯体。
Figure 2005075770

[式中、R1はC1〜6のアルキル基、C2〜6のアルケニル基、C7〜20のアラルキル基、またはC1〜6のアルキル基の内部に1〜3のヘテロ原子を含む鎖状置換基を示し、R2は水素原子、ハロゲン原子、C1〜6のアルキル基、またはC1〜7のアルコキシ基を示す。]
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なビナフトール誘導体、およびそれらから誘導した光学活性ビナフトール金属錯体触媒に関する。
医薬、農薬の製造中間体や製品への光学活性化合物の需要が高まってきており、工業的に実用実施可能な光学活性化合物の入手方法が強く求められている。このため、光学活性化合物の入手方法として微生物や酵素法、分割法、化学合成法など様々な方法が考案されているが、化学合成法における触媒的不斉合成法は、少量の不斉源から大量の光学活性化合物が得られるため効率が高く、工業的に優れた方法と信じられている。その為、触媒的不斉合成法に関して数多くの研究がなされ、化学・光学収率ともに優れた方法が見出されており(非特許文献1参照)、とりわけ、光学活性ビナフトール金属錯体触媒は多種多様な不斉誘起反応に極めて有効な触媒である(特許文献1〜5参照)。
しかし、従来型の光学活性ビナフトール金属錯体触媒は、直鎖アルデヒドとニトロメタンとの不斉ニトロアルドール反応(Henry反応)おいて満足すべき光学収率が得られずしかも化学収率も中程度となるという、問題点を有していた(非特許文献2参照)。
R. Noyori, "Asymmetric Catalysis in Organic Synthesis",John Wiley & Sons, New York, 1994. 特開平11−240865号公報 特開平10−120668号公報 特開平09−255632号公報 特開平08−325281号公報 特再公表98/024753号公報 Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 36, 1243, 1997.
本発明は、従来型の光学活性ビナフトール金属錯体触媒では非効率であった直鎖アルデヒドとニトロメタンとの不斉ニトロアルドール反応において満足すべき化学収率ならびに光学収率を達成するための、光学活性ビナフトール金属錯体触媒と該触媒を調製するために不可欠なビナフトール誘導体を提供することを課題とする。
本発明者らは、ビナフトール誘導体とこれらによって構成される光学活性ビナフトール金属錯体触媒について鋭意検討を重ねた結果、光学活性を有する置換基によって6−位を修飾した新規なビナフトール誘導体を用いた光学活性ビナフトール金属錯体触媒が、直鎖アルデヒドとニトロメタンとの不斉ニトロアルドール反応を高い光学収率、化学収率で進行させることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、一般式(1r)
Figure 2005075770
[式中、R1はC1〜6のアルキル基、C2〜6のアルケニル基、C7〜20のアラルキル基、または、C1〜6のアルキル基の内部に1〜3のヘテロ原子を含む鎖状置換基を示し、R2は水素原子、ハロゲン原子、C1〜6の直鎖、分岐、環状のアルキル基、C1〜7のアルコキシ基を示す。]
もしくは、一般式(1s)
Figure 2005075770
[式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。]
もしくは、一般式(2r)
Figure 2005075770
[式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。]
もしくは、一般式(2s)
Figure 2005075770
[式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。]
で表わされる光学活性ビナフトール誘導体と三塩化希土類金属化合物とを分散させた溶媒中に、式1r、1s、2rまたは、2sのビナフトール誘導体ジリチウム塩を混合、反応させ、続いてアルカリ金属化合物を加えて反応させて得られる一般式3r、3s、4r、または4s
Figure 2005075770
Figure 2005075770
Figure 2005075770
Figure 2005075770
[式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示し、Lnは希土類金属を、Mはアルカリ金属を示す。]
で表わされる光学活性ビナフトール希土類金属錯体触媒である。
本発明によれば、新規なビナフトール誘導体と該誘導体から調製される光学活性ビナフトール金属錯体触媒が提供される。
本発明の光学活性ビナフトール金属錯体触媒によって、従来懸案であった直鎖アルデヒドとニトロメタンとの不斉ニトロアルドール反応において満足すべき化学・光学収率が得られる。したがって、本発明によって医薬・農薬の製造プロセスに重要なアミノアルコール前駆体の製造が可能となる。
次に、本発明を更に詳細に説明する。まず、Ln、M、R1、R2について説明する。
Lnは希土類金属原子であり、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、カドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Y)及びルテチウム(Lu)が挙げられ、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Yが好ましく用いられ、とりわけLaを好適に用いることができる。
Mはアルカリ金属であり、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)等が挙げられ、この中でもLiとNaが好ましい。
1はC1〜6のアルキル基、C2〜6のアルケニル基、C7〜20のアラルキル基、C1〜6のアルキル基の内部に1〜3のヘテロ原子を含む鎖状置換基である。
C1〜6のアルキル基として、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、c−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、c−ブチル、c−プロピルメチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、c−ペンチル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、c−ヘキシル基等の直鎖、分岐、環状のアルキル基を例示することができる。その中でも、メチル、i−プロピル、t−ブチル基が好ましい。
C2〜6のアルケニル基として、エテニル、1−メチルエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル基等の直鎖、分岐、環状のアルケニル基を例示することができる。その中でも、2−プロペニル基が好ましい。
C7〜20のアラルキル基としては、ベンジル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、9−アントリルメチル(9−anthryl−CH2−)基が好ましい。
C1〜6のアルキル基の内部に1〜3のヘテロ原子を含む鎖状置換基としては、例えば、メトキシメチル、エトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、メチルチオメチル、2−テトラヒドロピラニル基等が挙げられ、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル基が好ましい。
2は水素原子、ハロゲン原子、C1〜6のアルキル基、C1〜7のアルコキシ基を示し、この中でも水素原子が好適である。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。
C1〜6のアルキル基として、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、c−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、c−ブチル、c−プロピルメチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、c−ペンチル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、c−ヘキシル基等の直鎖、分岐、環状のアルキル基を挙げることができる。
C1〜7のアルコキシ基としてメトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、アリルオキシ、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
式1r、1s、2r、または2sのビナフトール誘導体は、例えば次のように合成することができる。
Figure 2005075770
第一工程:(R)−6−置換−6’−トリメチルシリルエチニルビナフトール(1rA)の合成
文献(Tetrahedron Lett., 50, 4467 (1975).)記載の方法に準じて合成できる。
(R)−6−置換−6’−ブロモビナフトール、トリメチルシリルアセチレン、および、パラジウム化合物を塩基性条件下で反応させることによって、表題化合物(1rA)が得られる。(R)−6−ブロモビナフトールとトリメチルシリルアセチレンとのモル比は1:0.5〜1:3、好ましくは1:0.8〜1:1.5である。
パラジウム化合物は一般に購入できる0価または2価パラジウム化合物が使用でき、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(1,2−(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(0)、ジクロロ(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)等が適宜使用でき、銅化合物やリン化合物を同時に用いることも可能である。銅化合物としては一価のハロゲン化銅、酢酸銅などが使用でき、リン化合物はトリフェニルホスフィン、1,2−(ジフェニルホスフィノ)エタン等の一般に単座または2座の配位子として使用される3価のリン化合物であれば使用が可能である。
(R)−6−ブロモビナフトールとパラジウム化合物とのモル比は1:0.005〜1:0.3、好ましくは1:0.01〜1:0.1であり、パラジウム化合物と銅化合物とのモル比は1:0.05〜1:2、好ましくは1:0.1〜1:1、パラジウム化合物とリン化合物とのモル比は1:0.5〜1:5、好ましくは1:1〜1:2である。反応は、トリエチルアミンピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザジシクロロウンデセン(DBU)等の有機塩基存在下に行なわれる。塩基は溶媒として用いることも他の溶媒に希釈して用いることも可能である。
(R)−6−ブロモビナフトールと有機塩基の量比(g/ml)は1:0.1から1:100、好ましくは1:5〜1:50である。希釈する場合、溶媒はこの反応を阻害しなければ特に制限は無い。かかる溶媒としてはペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン等の塩素系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、メタノール、エタノール等のアルコール系、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)等の極性溶媒が挙げられる。
第二工程:(R)−6−置換−6’−エチニルビナフトール(1rB)の合成
1rAを塩基で処理することにより1rBに誘導出来る。塩基としてはアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物が使用でき、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。塩基の使用モル数は1rAの等倍〜20倍、好ましくは3倍〜10倍である。
使用する溶媒はエチルエーテル、イソプロピルエーテル、THF等のエーテル系、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒が挙げられ、1rAと溶媒の量比(g/ml)は1〜100、好ましくは3〜30である。反応温度は−10℃〜溶媒の沸点の間で、好ましくはは0℃〜50℃ある。
第三工程:(R,R)−6−置換−6’−(2,2’−ビス置換オキシ[1,1’]ビナフタレンイル−6−イルエチニル)[1,1’]ビナフタレンイル−2,2’−ジオール(1r)の合成
(R)−6−置換−6’−ブロモ−2,2’−ジ置換オキシ−1,1’−ビナフタレン、1rB、および、パラジウム化合物を塩基性条件下で反応させることによって1rが得られる。(R)−6−置換−6’−ブロモ−2,2’−ジ置換オキシ−1,1’−ビナフタレンと1rBとのモル比は1:0.5〜1:3、好ましくは1:0.8〜1:1.5である。反応は第一工程と同様に行なうことが出来る。
式2rで表わされるビナフトール誘導体の合成例を以下に示す。
Figure 2005075770
第四工程:(R)−6−置換−2,2’−ビス置換オキシ−1,1’−ビナフチル−6’−ボラン酸(2rA)の合成
(R)−6−置換−6’−ブロモ−2,2’−ジ置換オキシ−1,1’−ビナフタレンに塩基を加えた後、トリアルキルボレートを加える。その後、一般に行われる酸処理により2rAが得られる。
塩基にはメチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム類が好適に使用できる。トリアルキルボレートは特に制限無く使用できるが、入手し易さからトリメチルボレート、トリエチルボレート等が好ましい。モル比((R)−6−置換−6’−ブロモ−2,2’−ジ置換オキシ−1,1’−ビナフタレン):(塩基):(トリアルキルボレート)は、(1):(1〜3):(1〜20)の範囲で行なわれ、好ましくは、(1):(1.05〜2.0):(1.5〜5.0)である。
使用される溶媒はこの反応を阻害しなければ特に制限は無いが、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、THF等のエーテル系、DMF、NMP等の極性溶媒、これらの混合溶媒が挙げられる。
反応温度は−100℃〜溶媒の沸点である。
第五工程:2rの合成
文献(J. Org. Chem., 49, 5237 (1984).)記載の方法に準じて合成できる。
2rA、(R)−6−置換−6’−ブロモ−1,1’−ビナフトール、および、パラジウム化合物を塩基で処理して2rを得る。パラジウム化合物としては一般に入手できる0価パラジウムが用いられ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム等が好適に用いられる。モル比(2rA):((R)−6−置換−6’−ブロモ−1,1’−ビナフトール):(パラジウム化合物)は、(1):(0.5〜2.0):(0.001〜1.0)の範囲で行なわれ、好ましくは、(1):(0.75〜1.25):(0.01〜0.5)である。
溶媒はこの反応を阻害しなければ特に制限は無いが、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、THF等のエーテル系、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン等の塩素系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、メタノール、エタノール等のアルコール系、DMF、NMP等の極性溶媒、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。溶媒(ml)は2rA(g)の等倍〜100倍(ml/g)の範囲で適宜使用することができる。
塩基としては無機塩基、有機塩基のいずれでもよいが、無機塩基の水溶液で行なう方法が適当である。無機塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩であり、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好適である。モル比(2rA):(塩基)は、(1):(1〜100)の範囲で行なわれ、好ましくは、(1):(2〜30)である。塩基水溶液の濃度は0.1〜10Mである。
式1s、2sで表わされるビナフトール誘導体も出発原料にS−体を用いることで同様に合成される。
本発明の光学活性ビナフトール希土類金属錯体触媒の調製は、例えば、特開平6−154618,特開平6−256270,特開平6−306026,WO95/01323、J. Am. Chem. Soc., 114, 4418-4420, 1992., Tetrahedron Lett., 34(5), 851-854, 1993., Tetrahedron Lett., 34(5), 855-858, 1993., Tetrahedron Lett., 34(16), 2657-2660, 1993., J. Am. Chem. Soc., 115, 10372, 1993., J. Org. Chem., 60, 7388-7389, 1995.等に記載された方法に基づいて行なわれるが、以下に2工程に分けて簡単に記す。
第6工程:一般式1r、1s、2r、または、2sで表わされるビナフトール誘導体のジリチウム塩の合成
十分に乾燥させた一般式1r、1s、2r、または2sのビナフトール誘導体を有機溶媒に溶解し、リチウム化合物を加え、一般式1r、1s、2r、または、2sのビナフトール誘導体ジリチウム塩溶液(溶液A)を調製する。
リチウム化合物としては、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の炭化水素系リチウム試薬、水酸化リチウムが挙げられる。これらのリチウム化合物は一般式1r、1s、2r、または2sのビナフトール誘導体に対して2〜3倍モル使用する。
有機溶媒としては、ジリチウム塩生成を阻害しない溶媒であれば制限無く使用でき、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン及びモノクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン及びn−ヘプタン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等の脂肪酸エステル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、DMF等の極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独もしくは2種類以上混合して使用してもかまわない。一般的にはTHFを使用することが好ましい。溶媒の使用量(ml)はビナフトール誘導体(g)に対して等倍〜100倍(ml/g)が好ましい。
リチウム化合物に前記の炭化水素系リチウム試薬を用いた場合、調製温度は−76℃〜溶媒の沸点まで、好ましくは−30℃〜室温である。
調製時間は0.5時間〜24時間、好ましくは1時間〜6時間である。
また、リチウム化合物に水酸化リチウムを使用する場合には、炭化水素系溶媒を用い共沸脱水条件に付すことによって一般式1r、1s、2r、または、2sのビナフトール誘導体のジリチウム塩溶液の有機溶媒溶液を調製することもできる。
第七工程:第六工程で合成したビナフトール誘導体のジリチウム塩の光学活性ビナフトール希土類金属錯体触媒への誘導工程
希土類金属化合物を第六工程で使用した溶媒に分散させる。この分散溶液に溶液Aとアルカリ金属化合物を添加して反応させることにより、一般式3r、3s、4r、または4sで表わされる光学活性ビナフトール希土類金属錯体触媒溶液が調製できる。
希土類金属化合物としては、希土類金属の塩化物、過塩素酸化物が使用できる。ランタン(La)の場合には、塩化ランタン(III)の無水物〜七水和物や過塩素酸ランタン(III)の無水物や水和物が好ましい。
一般式1r、1s、2r、または、2sのビナフトール誘導体:希土類金属化合物のモル比は1.0:1.0〜5.0、好ましくは1.0:2.1〜3.0である。
アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウムのそれぞれ水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、水素化物、メチリド、n−ブチリド、t−ブチリド、フェニリド、メトキシド、エトキシド、t−ブトキシド等が使用でき、ナトリウムt−ブトキシドが好ましい。
一般式1r、1s、2r、または、2sのビナフトール誘導体:アルカリ金属化合物のモル比は1.0:0.05〜2.0、好ましくは0.1:0.1〜1.0である。
反応溶媒には前記の溶媒が適宜使用できる。反応温度は−30℃〜150℃、好ましくは−5℃〜溶媒の沸点である。
反応時間は5時間〜100時間、好ましくは24時間〜80時間である。
以下に実施例と参考例を示し、本発明をより詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
(R)−6−トリメチルシリルエチニル−1,1’−ビナフト−2−オール(1rA1)の合成
Figure 2005075770
(R)−6−ブロモ−1,1’−ビナフト−2−オール(2.61g,7.14mmol)のトリエチルアミン(63mL)懸濁溶液にトリメチルシリルアセチレン(1.21mL,8.57mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(335mg,0.29mmol)、及び、よう化銅(I)(27mg,0.14mmol)を加
えた。これを70℃、4時間撹拌した後、減圧下、溶媒を留去した。残渣に酢酸エチルを加え、不溶物をセライト濾過にて除去した。ろ液に1N HClを加え、酢酸エチルで3回抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水で洗いNa2SO4で乾燥した。濾過後、有機溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより表題化合物(1rA1)を収率81%で得た。
1H-NMR (CDCl3): δ0.26 (s, 9H), 5.03 (br-s, 1H), 5.12 (br-s, 1H), 7.04-7.12 (m, 2H), 7.26-7.41 (m, 5H), 7.88-7.93 (m, 2H), 7.98 (d, J=9.18 Hz, 1H), 8.04 (s, 1H). 13C-NMR (CDCl3): δ0.14(x 3), 94.36, 105.12, 110.29, 111.09, 117.71, 118.39, 118.61, 124.00, 124.05, 124.16, 127.49, 128.35, 128.82, 129.36, 130.12, 131.18, 131.51, 132.34, 132.94, 133.20, 152.60, 153.37. MS (FAB): 382 (M+).
(R)−6−エチニル−1,1’−ビナフト−2−オール(1rB1)の合成
Figure 2005075770
1rA1(1.22g,3.19mmol)のメタノール溶液(11mL)に1.43N KOH水溶液(11mL)を加え、室温で4時間撹拌した。その後、溶媒を減圧下留去した。残渣に1N HClを加え、酢酸エチルで3回抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水で洗いNa2SO4で乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより表題化合物(1rB1)を収率85%で得た。
1H-NMR (CDCl3): δ3.11 (s, 1H), 5.02 (br-s, 1H), 5.15 (br-s, 1H), 7.08-7
.13 (m, 2H), 7.30 (dd, J=1.35, 6.75 Hz, 1H), 7.34 (dd, J=1.62, 2.97 Hz, 1H), 7.39 (dd, J=1.35, 8.10 Hz, 1H), 7.40 (dd, J=6.48, 8.91 Hz, 2H), 7.89-7.91 (m, 1H), 7.94 (d, J=9.18 Hz, 1H), 7.99 (d, J=8.64 Hz, 1H), 8.04 (d, J=1.35 Hz 1H). 13C-NMR (CDCl3): δ77.25, 83.78, 110.38, 11.32, 117.37, 117.69, 118.48, 123.93 (x 2), 124.30, 1
27.39, 128.26, 128.65, 129.22, 123.00, 130.96, 131.32, 132.50, 133.15, 133.20, 152.51, 153.41. MS (FAB): 310 (M+).
(R,R)−6−(2,2’−ビス−メトキシメトキシ−[1,1’]ビナフタレンイル−6−イルエチニル)[1,1’]ビナフタレンイル−2,2’−ジオール(1r)の合成
Figure 2005075770
(R)−6−ブロモ−1,1’−ビナフト−2−オール(1.99g,4.0mmol)のベンゼン(55mL)溶液に1rB1(1.24g,4.0mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(370mg,0.32mmol)、トリエチルアミン(1.39mL,10mmol)、及び、よう化銅(I)(191mg,1.0mmol)を加えた。これを60℃、24時間撹拌した後、減圧下、溶媒を留去した。残渣に酢酸エチルを加え、不溶物をセライト濾過にて除去した。ろ液に1N HClを加え、酢酸エチルで3回抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水で洗いNa2SO4で乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより表題化合物(1r)を収率39%で得た。
1H-NMR (CDCl3): δ3.14(s, 6H), 4.97 (dd, J=2.70, 6.75 Hz, 2H), 5.08 (d, J=3.51 Hz, 1H), 5.10 (d, J=3.24 Hz, 1H), 5.09 (br-s, 1H), 5.19 (br-s, 1H), 7.09-7.16 (m, 4H), 7.22 (dd, J=1.08, 6.75 Hz, 1H), 7.26-7.42 (m, 7H), 7.56 (d, J=5.4 Hz, 1H), 7.59 (d, J=5.13 Hz, 1H), 7.86-7.98 (m, 6H), 8.10 (s, 2H). 13C-NMR (CDCl3): δ55.88 (x 2), 89.52, 90.05, 94.90, 95.02, 110.48, 111.32, 116.99, 117.59, 117.75, 118.42, 11.57, 118.77, 120.60, 121.21, 123.96, 124.00, 124.31, 124.34、125.26, 125.59, 126.28, 127.40, 127.80, 128.30, 128.71, 128.95, 129.18, 129.30 (x 2), 129.44, 129.71, 129.89, 131.05, 131.38 (x 2), 131.66, 132.83, 133.25, 133.36, 133.76, 152.44, 152.62, 153.22, 153.29. MS (FAB) m/z 682 (M+). [α]D 26 ‐61.6 (c 1.36, CHCl3).
(R)−2,2’−ビス(メトキシメチルオキシ)−1,1’−ビナフチル−6−ブロミックアシッド(2rA1)の合成
Figure 2005075770
(R)−2,2’−ビス(メトキシメチルオキシ)−1,1’−ビナフチル−6−ブロミド(3.3g,7.3mmol)のTHF溶液(37mL)に−78℃下、ゆっくりとBuLi(3.2mL,2.6M in hexane,8.3mmol)を加えた。−78℃で30分攪拌後、茶色に呈した反応溶液にB(OMe)3(2.3mL,21mmol)をシリンジで加えた。反応液を室温まで昇温し、12時間攪拌した。その後、0℃で1N HClを加え反応を停止した。酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗いNa2SO4で乾燥した。濾過後溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより表題化合物(2rA1)を収率60%で得た。
IR (neat) 3422, 1232, 1144, 1007 cm-1. 1H-NMR (CDCl3):δ 3.13 (s, 3H), 3.18 (s, 3H), 4.98-5.16 (m, 4H), 7.15-7.28 (m, 4H), 7.32-7.38 (m, 1H), 7.59 (d, J=9.2 Hz, 1H), 7.64 (d, J=9.2 Hz, 1H), 7.89 (d, J=8.1 Hz, 1H), 7.97(d, J=9.2 Hz, 1H), 8.00 (d, J=8.9 Hz, 1H), 8.13 (d, J=8.9 Hz, 1H), 8.82 (s, -B(OH)2). 13C-NMR (CDCl3): δ 55.9, 94.9, 95.2, 116.9, 117.2, 121.0, 124.0, 124.8, 125.3, 125.4, 126.3, 127.8, 129.1, 129.4, 129.8, 130.6, 131.0, 133.9, 136.5, 137.8, 152.5, 154.0. MS (ESI-HRMS) calcd for C26H27BO6 [M+Na]+ : 469.1798, Found: 469.1798 [M (as the boronic acid dimethylester)+Na+]; The dimethylester was formed when MeOH was used as eluent. [a]25 D +66.1 (c 0.29, CHCl3).
化合物2rの合成
Figure 2005075770
2rA1(300mg,0.72mmol)と(R)−6−ブロモ−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフタレン(262mg,0.72mmol)、Pd(PPh34(82.9mg,0.072mmol)のTHF(14mL)−1Maq K2CO3(7.2mL)混合溶液を12時間加熱還流した。その後、0℃で1N HClを加え反応を停止した。酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で洗いNa2SO4で乾燥した。濾過後、有機溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより表題化合物2rを定量的に得た。
IR (neat) 3389, 1240, 1148, 1015 cm-1. 1H-NMR (CDCl3): d 3.13 (s, 3H), 3.15 (s, 3H), 4.97 (dd, J=6.8, 3.8Hz, 2H), 5.07 (d, J=6.8Hz, 2H), 5.19 (br-s, 1H), 5.21 (br-s, 1H), 7.16-7.38 (m, 10H), 7.53-7.65 (m, 4H), 7.87 (d, J=8.1 Hz, 2H), 7.95 (d, J=9.2 Hz, 2H), 7.99 (d, J=9.2 Hz, 2H), 8.13 (s, 2H). 13C-NMR (CDCl3): d 55.8, 55.9, 95.1, 95.2, 110.8, 110.9, 117.2, 117.6, 117.7, 118.1, 121.1, 123.9, 124.0, 124.1, 124.8, 125.4, 125.7, 125.9, 126.1, 126.2, 127.0, 127.4, 127.8, 128.3, 129.3, 129.4, 129.6, 129.6, 129.8, 130.0, 131.3, 131.5, 132.4, 133.1, 133.3, 133.9, 136.1, 136.5, 152.5, 152.6. MS (FAB-HRMS) calcd for C44H34O6 [M+] : 658.2355, Found: 658.2355. [a]25 D -31.3 (c 0.670, CHCl3).
化合物3rの合成
Figure 2005075770
1r(0.30mmol)を50℃で5時間減圧乾燥した。乾燥した1rのTHF溶液(0.79mL)を調製し、0.1NのLa(O−i−Pr)3THF溶液(1.0mL,0.10mmol)を0℃で加えた。30分室温で撹拌した後、2.64Nのn−BuLi hexane溶液(114μL,0.3mmol)を0℃で滴加した。12時間室温で撹拌した後、1M H2O−THF溶液(790μL,0.10mmol)を加えることで0.05Nの表題化合物3r THF溶液を得た。
13C-NMR (CDCl3): δ 55.00, 88.11, 91.22, 94.83, 113.99, 116.80, 117.39, 119
.55, 120.53, 121.06, 123.67, 125.29, 125.46, 126.00, 127.49, 127.77, 128.16, 128.50, 128.85, 129.14, 129.64, 129.98, 130.74, 131.33, 133.26, 134.10, 135.06, 135.42, 152.98, 153.56.
[α]D 26 -6150 (c 1.22 x 10-3, THF).
化合物4rの合成
Figure 2005075770
2r(0.30mmol)を50℃で5時間減圧乾燥した。乾燥した2rのTHF溶液(0.79mL)に0.1NのLa(O−i−Pr)3THF溶液(1.0mL,0.10mmol)を0℃で加えた。30分室温で撹拌した後、2.64Nのn−BuLi hexane溶液(114μL,0.3mmol)を0℃で滴加した。12時間室温で撹拌した後、1M H2O−THF溶液(790μL,0.10mmol)を加えることで0.05Nの表題化合物4r THF溶液を得た。
13C-NMR (CDCl3): δ 55.06, 55.14, 94.88, 94.97, 116.92, 117.14, 118.88, 119
.19, 120.87, 121.12, 123.16, 123.59, 123.89, 124.46, 125.06, 125.25, 125.45, 125.56, 125.65, 125.84, 126.15, 126.74, 126.90, 127.27, 127.68, 128.11, 128.94, 129.17, 129.97, 130.50, 131.27, 132.74, 134.18, 135.01, 135.71, 137.37, 152.59, 152.93, 162.51, 163.26.
[α]D 26 -88.1 (c 1.07, THF).

Claims (7)

  1. 一般式(1r)
    Figure 2005075770
    [式中、R1はC1〜6のアルキル基、C2〜6のアルケニル基、C7〜20のアラルキル基、またはC1〜6のアルキル基の内部に1〜3のヘテロ原子を含む鎖状置換基を示し、R2は水素原子、ハロゲン原子、C1〜6のアルキル基、またはC1〜7のアルコキシ基を示す。]
    もしくは、一般式(1s)
    Figure 2005075770
    [式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。]
    で表わされる光学活性ビナフトール誘導体。
  2. 一般式(2r)
    Figure 2005075770
    [式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。]
    もしくは、一般式(2s)
    Figure 2005075770
    [式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。]
    で表わされる光学活性ビナフトール誘導体。
  3. 三塩化希土類金属化合物を分散させた溶媒中に、式1r、式1s、式2r、または式2sのビナフトール誘導体ジリチウム塩を混合反応させ、続いてアルカリ金属化合物を加えて反応させて得られる光学活性ビナフトール希土類金属錯体触媒。
  4. 請求項3記載の不斉合成用触媒の調製法において使用する式1r、式1s、式2r、または式2sのビナフトール誘導体ジリチウム塩、三塩化希土類金属化合物、及びアルカリ金属化合物のモル比がビナフトール誘導体ジリチウム塩:三塩化希土類金属化合物:アルカリ金属化合物=2.1〜3.0:1.0:0.1〜1.0の範囲である光学活性ビナフトール希土類金属錯体触媒の調製法。
  5. 請求項4記載の方法にしたがって調製した触媒溶液に、反応終了後さらにアルカリ金属化合物を再度添加することを特徴とする光学活性ビナフトール希土類金属錯体系不斉誘起触媒の調製法。
  6. 一般式(3r)
    Figure 2005075770
    [式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示し、Lnは希土類金属を、Mはアルカリ金属を示す。]
    もしくは一般式(3s)
    Figure 2005075770
    [式中、R1、R2、Ln及びMは前記と同じ意味を示す。]
    で表わされる、請求項3記載の光学活性ビナフトール希土類金属錯体触媒。
  7. 一般式(4r)
    Figure 2005075770
    [式中、R1、R2、Ln及びMは前記と同じ意味を示す。]
    もしくは一般式(4s)
    Figure 2005075770
    [式中、R1、R2、Ln及びMは前記と同じ意味を示す。]
    で表わされる、請求項3記載の光学活性ビナフトール希土類金属錯体触媒。
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