JP2005075736A - 芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法及びポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法において、以下の(a)、(b)及び(c)よりなる群から選ばれる操作を行い、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率から試料中の塩基性成分又は酸性成分の含有量を求め、これが中和される量の酸性化合物又は塩基性化合物を製造工程のいずれかに添加することを特徴とする製造方法。(a)試料を炭酸ジエステルと混合し加熱した後、芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。(b)試料を炭酸ジエステル及び酸性化合物と混合し加熱した後、芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。(c)試料を炭酸ジエステル及び塩基性化合物と混合し加熱した後、芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
【選択図】 なし
Description
芳香族ジヒドロキシ化合物は、通常、酸性触媒存在下でフェノール化合物とカルボニル化合物とを縮合させることにより製造されている。しかし、得られる芳香族ジヒドロキシ化合物中に酸性触媒等の酸性成分が含まれていると、芳香族ジヒドロキシ化合物の利用上障害となることが多い。例えば、酸性成分を含む芳香族ジヒドロキシ化合物を用いてポリマーを製造すると、芳香族ジヒドロキシ化合物が分解してフェノール化合物等の種々の副生物を生成し、ポリマーが着色してしまうことがある。また、界面法でポリカーボネートを製造する場合は、生成したフェノール化合物が末端停止剤として作用するため、ポリカーボネートの分子量を制御することが困難となる。高品質のポリカーボネートを製造する方法としては、弱塩基性温水溶液で洗浄して加水分解可能な塩素含有量を3ppm以下とした芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを用いる方法(特許文献1参照)、芳香族ジヒドロキシ化合物とフェノール化合物との付加物結晶にアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を添加した後、フェノール化合物を除去して得られる芳香族ジヒドロキシ化合物を用いる方法(特許文献2参照)、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を添加して塩基性度を一定値に調整した芳香族ジヒドロキシ化合物を用いる方法(特許文献3参照)などが知られている。
(2):工程(1)の反応生成液からフェノール化合物よりも低沸点の成分と酸性触媒とを除去する工程
(3):工程(2)の残留液を冷却し、芳香族ジヒドロキシ化合物とフェノール化合物との付加物結晶を析出させ、これを取得する工程
(4):工程(3)の付加物結晶を加熱溶融させる工程
(5):工程(4)の溶融液からフェノール化合物を除去して溶融芳香族ジヒドロキシ化合物とする工程
(6):工程(5)の溶融芳香族ジヒドロキシ化合物を冷却し、固体の芳香族ジヒドロキシ化合物とする工程
の各工程を含む連続方式の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法において、工程(5)又は(6)の芳香族ジヒドロキシ化合物を試料とし、以下の(a)、(b)及び(c)よりなる群から選ばれる操作を行い、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率から試料中の塩基性成分又は酸性成分の含有量を求め、これが中和される量の酸性化合物又は塩基性化合物を工程(1)〜(6)のいずれか、又は工程(1)への供給物に添加することを特徴とする製造方法、に存する。
(a)試料をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステルと混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
(b)試料をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステル及び酸性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
(c)試料をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステル及び塩基性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
本発明の第3の要旨は、下記(a)、(b)及び(c)よりなる群から選ばれる操作で得られた芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率から、操作に供した芳香族ジヒドロキシ化合物中の塩基性成分又は酸性成分の含有量を求めることを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物の品質評価方法、に存する。
(b)芳香族ジヒドロキシ化合物をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステル及び酸性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
(c)芳香族ジヒドロキシ化合物をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステル及び塩基性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
本発明は、芳香族ジヒドロキシ化合物を連続的に製造するにあたり、製造された芳香族ジヒドロキシ化合物の品質を評価し、その結果に基づいて、芳香族ジヒドロキシ化合物中の塩基性成分又は酸性成分の含有量を制御しながら、芳香族ジヒドロキシ化合物を製造することを一つの特徴とするものである。なお、本明細書において、「芳香族ジヒドロキシ化合物」は、前後の文脈により明らかであるが、芳香族ジヒドロキシ化合物そのものを意味する場合があり、また、不純物等を含有した芳香族ジヒドロキシ化合物の混合物を意味する場合もある。
本発明で製造される芳香族ジヒドロキシ化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
炭素数5〜15のシクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基及びシクロヘプチリデン基等が挙げられ、中でもシクロヘキシリデン基が好ましい。
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、臭素原子が好ましい。
一般式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。このうち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールAが好ましい。
工程(1):フェノール化合物とカルボニル化合物とを酸性触媒の存在下で縮合させて芳香族ジヒドロキシ化合物を生成させる。フェノール化合物とカルボニル化合物とは、フェノール化合物/カルボニル化合物のモル比が3〜30、特に5〜20で用いるのが好ましい。反応は、常圧〜0.5MPa・G(ゲージ圧)の下で、30〜100℃、特に50〜90℃で行うのが好ましい。酸性触媒としては、塩酸等の均一系触媒又は陽イオン交換樹脂等の固体触媒が好ましい。陽イオン交換樹脂としては、ゲル型で架橋度が1〜8%、特に2〜6%のスルホン酸型陽イオン交換樹脂を用いるのが好ましい。陽イオン交換樹脂を触媒とする場合は、懸濁床方式で反応させることもできるが、固定床流通方式で反応させるのが好ましい。工程(1)で生成する反応混合物中には、芳香族ジヒドロキシ化合物の他に、通常、フェノール化合物、カルボニル化合物、水及び着色物質等の副生物が含まれており、更に反応方式によっては酸性触媒が含まれていることもある。
工程(5):工程(4)の溶融液からフェノール化合物を除去して溶融芳香族ジヒドロキシ化合物とする。フェノール化合物は、溶融液を減圧蒸留することにより除去することができる。減圧蒸留は、圧力10〜400mmHg、150〜190℃で行うのが好ましい。このとき、芳香族ジヒドロキシ化合物とフェノール化合物との付加物結晶の融解温度より1℃以上高い温度で減圧蒸留を行うのが好ましい。また、減圧蒸留の後にスチームストリッピングを行って、残存するフェノール化合物を除去してもよい(特開平2−28126号公報、特開昭63−132850号公報等参照)。
芳香族ジヒドロキシ化合物の品質は、工程(5)又は(6)の芳香族ジヒドロキシ化合物を試料とし、以下の操作(a)〜(c)を行うことにより、評価することができる。
(b)試料を炭酸ジエステル及び酸性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
(c)試料を炭酸ジエステル及び塩基性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
得られた芳香族ジヒドロキシ化合物中の塩基性成分又は酸性成分の含有量に基づき、この塩基性成分又は酸性成分が中和される量の酸性化合物又は塩基性化合物を工程(1)〜(6)のいずれか、又は工程(1)への供給物に添加することにより、高品質ポリカーボネート等の製造に用い得る芳香族ジヒドロキシ化合物を製造することができる。
通常は、評価する芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルの混合物と同体積の1.0×10−3規定硝酸(Li、Na、K、Cs、Mg及びCaの合計含有量が1ppb以下のもの)を測定する容器に仕込み、80℃で1時間加熱したときに、硝酸溶液中に溶出したこれらの金属イオン量が50ppb以下である容器を用いる。溶出量が10ppb以下、特に5ppb以下である容器を用いるのが好ましい。なお、硝酸溶液中のイオン量は高分解能ICP−MS(Induced Coupled Plasma−Mass Spectrometer)、又はフレームレス原子吸光・原子発光を用いて測定する方法が挙げられる。
品質評価に用いる炭酸ジエステルとしては、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
A−O−C(=O)−O−A’ (2)
(式中、A及びA’は、それぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。)
脂肪族基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ドデシル基、ステアリル基等が挙げられ、このうちメチル基が好ましい。脂肪族基が有していてもよい置換基としては、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
一般式(2)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の炭酸ジアリール化合物などが挙げられる。これらのうち、ジフェニルカーボネート又はジトリルカーボネート、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
炭酸ジエステルは、1.00molの芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01〜100mol用いる。0.10〜10.0mol、更に0.50〜1.50mol、特に0.80〜1.20mol用いるのが好ましい。
Li、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが実質的に溶出しない容器内に、芳香族ジヒドロキシ化合物及びこれに対してほぼ等モルのジフェニルカーボネートを仕込む。
加熱に際しては、攪拌装置からの金属イオンの溶出を避けるため、容器ごと外部から震盪させる方法等、装置が内容物に触れない方法を用いるのが好ましい。
操作(b)は、操作(a)で用いた芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルに、更に酸性化合物を混合する以外は、操作(a)と同様にして行う。
芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率が少ないと、試料中に触媒作用物質である塩基性成分の含有量が多いと評価できる。芳香族ジヒドロキシ化合物1.00mol、炭酸ジエステル1.10mol及び酸性化合物0.4μmolを混合し、加熱した後の芳香族ジヒドロキシ化合物残存率は、通常、95.0mol%以上である。97.0mol%以上、更に98.0mol%以上、特に99.0mol%以上であるのが好ましい。
塩基性化合物としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物及びアミン系化合物等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド及びブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
塩基性化合物は、芳香族ジヒドロキシ化合物1.00molに対して、通常、0.01〜5.0μmol用いる。塩基性化合物がアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物である場合には、0.10〜2.0μmolが好ましい。
芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独でも2種以上を併用しても、また、3価以上の多価フェノールを含有させて分岐状ポリカーボネートを製造しても、更に、得られるポリカーボネートの熱安定性や耐加水分解性を向上させたり、分子量を制御するため、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等の1価のフェノール化合物を含有させてもよい。
B−O−C(=O)−O−B’ (3)
(式中、B及びB’は、それぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。)
脂肪族基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ドデシル基、ステアリル基等が挙げられ、このうちメチル基が好ましい。脂肪族基が有していてもよい置換基としては、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
一般式(3)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の炭酸ジアリール化合物などが挙げられ、このうち、ジフェニルカーボネート及び/又はジトリルカーボネートが好ましい。炭酸ジエステルのハロゲンイオン含有量は、10ppb以下であるのが好ましい。
触媒は、芳香族ジヒドロキシ化合物1.00molに対して、通常1×10−8〜5×10−6mol用いる。1×10−7〜3×10−6mol、特に2×10−7〜2×10−6molを用いるのが好ましい。1×10−8molより少ないと、所定の分子量、末端水酸基量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性を得ることができなくなる。5×10−6molより多いと、ポリマーの色相が悪化したり分岐が多くなり、ポリマーの成形性が損なわれることがある。
添加する酸性物質としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸:前記スルホン酸のメチル、エチル、ブチル、t−ブチル、オクチル、ドデシル、フェニル、ベンジル及びフェネチル等のエステル類:ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、ナフタレンスルフィン酸等のスルフィン酸等が挙げられる。これらの化合物のうち、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びそれらのエステル等が好ましく、これらの化合物を2種以上使用してもよい。
酸性物質は、例えば、溶融又は固体状態にあるポリカーボネートに、そのまま又は希釈剤で希釈して添加した後、分散させる方法などにより、重縮合反応器、反応器からの移送ライン又は押出機等に添加すればよい。また、ミキサー等を用い、ポリカーボネートのペレット、フレーク、粉末等に酸性物質を添加し、混合したものを押出機で混練してもよい。ポリカーボネートのフレークに酸性物質を添加し、ミキサー等で混合したものをマスターバッチとして添加する方法が好ましい。なお、酸性物質を連続的に添加する際は計量装置付の供給機を用いて添加量を制御するのが好ましい。また、押出機で水、熱安定剤、離型剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、有機・無機充填剤等の添加剤を混合する場合は、ポリカーボネートと酸性物質とを添加し、混練した後、これらの添加剤を添加するのが好ましい。
なお、各測定は、以下の方法により行った。
(1)溶出金属
電子工業用高純度硝酸(三菱化学社製)を超純水で希釈して1.0×10−3規定硝酸を調製した。この硝酸20mLを超純水で洗浄した内容積約80mLのテトラフルオロエチレン製試験管に入れ、上部の開口部を超純水で洗浄したテトラフルオロエチレン製の栓で軽く蓋をし、試験管の硝酸が入っていない部分を加熱しないようにオイルバス中80℃で1時間加熱した。次いで、この硝酸溶液を白金皿に取り出し、窒素雰囲気下石英管中赤外線加熱炉で徐々に昇温して乾固させた。白金皿上の残留物に、電子工業用高純度塩酸1.0mLを加え、溶解させ、超純水で希釈した後、高分解能ICP−MS(サーモクエスト社製)を用いて、Li、Na、K、Cs、Mg及びCaの各元素の含有量を測定した。
炭酸ジエステル約5gを取り、これを精秤した後、トルエン10mLに60℃で溶解させた。これに超純水10mLを添加し、23℃の恒温室でマグネチックスターラーを用い1000rpmで10分間攪拌した。水相を分離し、水相中のハロゲンイオンをイオンクロマトグラフ(イオンクロマトグラフDX−AQ、日本ダイオネクス社製)を用いて定量した。
ビスフェノールA約2gを白金皿に取り、これを精秤した後、窒素雰囲気下、石英管中赤外線加熱炉でビスフェノールAが飛散しないように徐々に昇温し、炭化させた。これに電子工業用高純度濃硫酸1.0mLを添加し、空気雰囲気下、650℃で完全に灰化させた。灰分を電子工業用濃塩酸1.0mLに溶解させ、加温しながら塩酸を乾固した。この白金皿上の残留物を電子工業用濃硝酸1.0mLに溶解させ、超純水で希釈した後、水溶液中のNaイオンを高分解能ICP−MS(サーモクエスト社製)を用いて定量した。
ビスフェノールA約1gを取り、これを精秤した後、常温でアセトニトリル25mLに溶解させ、アセトニトリル/H2Oを溶離液として液体クロマトグラフィー[液体クロマトグラフ:LC−VP series(送液ユニットLC−10AT、UV−VIS検出器 SPD−10AV)島津製作所社製;カラム:μーBondasphere、Waters社製]により定量した。
ビスフェノールA約1gを取り、これを精秤した後、常温でアセトニトリル25mLに溶解させ、アセトニトリル/H2Oを溶離液として液体クロマトグラフィーにより定量した。
操作(a):ビスフェノールA9.69g(42.45mmol)と、ハロゲンイオン含有量10ppb以下のジフェニルカーボネート10.00g(46.68mmol)とを混合した。これを超純水で洗浄し乾燥させた検定用試験管に入れ、窒素雰囲気中大気圧下、174℃で70分間加熱した。得られた反応生成物が固化する前に約100mgを取り出し、重アセトンに溶解し、30℃で400MHzの1H−NMR(α−400、日本電子社製)を測定した。生成物中の未反応のビスフェノールA及びジフェニルカーボネートと反応したビスフェノールAユニットのメチル基の各シグナル強度を求め、下式によりビスフェノールAの残存率を求めた。
(式中、AはビスフェノールAのメチル基のシグナル強度、BはビスフェノールAユニットのメチル基のシグナル強度を示す。)
重合反応を2段に分けて行い、前段の重合槽1での反応が終了し、オリゴマーを次の重合槽2へ移送した時点から、重合槽2で、Mv=約21000に対応する攪拌動力に達するまでの時間を記録した。時間が短い方が、触媒活性が高いことを示す。
濃度0.6g/dLのポリカーボネートの塩化メチレン溶液を用いて、温度20℃で測定した比粘度(ηsp)から、下記の両式を用いて算出した。
[η]=1.23×10−4Mv0.83
四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem.,88,215(1965)参照)による比色定量を行い、求めた。
得られたポリカーボネートを用いて60×60×3.2mmの平板をバレル温度360℃、金型温度80℃で、10ショット連続射出成形し、恒温、恒湿下で24時間保持した。次いで、平板の色調を分光測色計(CM−3700d、ミノルタ社製)で測定し、それぞれイエローインデックス(YI)を算出し、その平均値を求めた。値が小さい方が、色調が良好なことを示す。
算出したイエローインデックス(YI)について、1ショット目のYIと残り9ショット中の最大YI値との差(ΔYI)を求めた。値が小さい方が、熱滞留時の色調が良好なことを示す。
(ビスフェノールAの製造)
工程(1)〜(6)に従って、ビスフェノールA(BPA)を連続的に製造した。フェノールの供給量を47kg/h、アセトンの供給量を2.9kg/hとし、触媒として陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンSK104H、三菱化学社製)100L(水膨潤基準)を固定床流通方式で用いた。反応器入口温度は55℃、出口温度は75℃、入口圧力は0.3MPa、出口圧力は大気圧であった。反応で生成した水、未反応の原料等を順次取り除き、最終的にBPAを4.3kg/hで連続的に得た。
BPA−1〜BPA−5について、Na含有量、フェノール含有量、イソプロペニルフェノール含有量を測定すると共に、ビスフェノール残存率をポリテトラフルオロエチレン製検定用試験管(フロンケミカル社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
ハロゲンイオン含有量が10ppb以下のジフェニルカーボネートフレーク(三菱化学社製)23.25molに、炭酸セシウム水溶液を1.00molのBPA−1に対して炭酸セシウムが0.5μmolとなるようにマイクロシリンジにより添加し、十分混合した後、この混合物を100℃に保持された還流冷却器を有する40Lの重合槽1に仕込み、更に22.0molのBPA−1を仕込んだ。
得られたオリゴマーを100℃に保持された還流冷却器を有する40L重合槽2に送り、38rpmで攪拌しながら、外部ジャケットに300℃の熱媒を通じ、図1に示すラインに沿って系内の圧力を制御した。このとき、重合速度が遅く、攪拌機の所要動力が所定の動力に達しなかったので、重縮合時間400分で重合を停止し、窒素で復圧し、得られたポリマーをストランド状に抜き出して回転式カッターでペレット化した。
BPA−1と同様にして、BPA−2〜BPA−5を重縮合させ、ポリカーボネートを製造した。得られたポリカーボネートの評価結果を表1に示す。重縮合時間、末端水酸基濃度、色調、熱滞留時の色調は、用いたBPA毎に異なり、安定した品質のポリカーボネートは得られなかった。
比較例1おいて、工程(5)の前に操作(a)及び(c)のビスフェノールA残存率から求めた酸性成分含有量に対応する量の水酸化ナトリウム水溶液を添加した以外は、比較例1と同様にしてBPA−6〜BPA−10を得た。操作(a)でのビスフェノールA残存率はいずれも95.0mol%以上であり、操作(c)でのビスフェノールA残存率はいずれも80.0mol%以下であった。得られたビスフェノールAのNa含有量、ビスフェノールA残存率、フェノール含有量及びイソプロペニルフェノール含有量の測定結果を表2に示す。
比較例1において、工程(4)と(5)の間に新しいフィルター[GSワインドフィルターエレメント(WG4−06340−003)、富士フィルター工業社製]を設置した以外は比較例1と同様にして、12、24、48、72及び120時間経過時のBPAを取得し、それぞれBPA−11〜BPA−15とした。
BPA−11〜BPA−15を用いて、比較例1と同様にしてポリカーボネートを製造した。得られたポリカーボネートの評価結果を表3に示す。
比較例2おいて、工程(5)の前に操作(a)及び(b)のビスフェノールA残存率から求めた塩基性成分含有量に対応する量のトルエンスルホン酸水溶液を添加した以外は、比較例1と同様にしてBPA−16〜BPA−20を得た。操作(a)でのビスフェノールA残存率はいずれも95.0mol%以上であり、操作(b)でのビスフェノールA残存率はいずれも80.0mol%以下であった。得られたビスフェノールAのNa含有量、ビスフェノールA残存率、フェノール含有量及びイソプロペニルフェノール含有量の測定結果を表4に示す。
実施例1のBPA−10について、Li、Na、K、Cs、Mg及びCaの合計溶出量が5ppb以下のポリテトラフルオロエチレン製検定用試験管(フロンケミカル社製)を用いて操作(a)〜(c)を行い、ビスフェノールA残存率を測定した。結果を表5に示す。
実施例3において、テトラフルオロエチレン製検定用試験管を理化学ガラス材質検定用試験管とした以外は実施例3と同様にしてビスフェノールA残存率を測定した。結果を表5に示す。
実施例3において、テトラフルオロエチレン製検定用試験管をSUS310S(電解研磨実施済)材質検定用試験管とした以外は実施例3と同様にして、ビスフェノールA残存率を測定した。結果を表5に示す。
Claims (12)
- (1):フェノール化合物とカルボニル化合物とを酸性触媒の存在下で縮合させて芳香族ジヒドロキシ化合物を生成させる工程
(2):工程(1)の反応生成液からフェノール化合物よりも低沸点の成分と酸性触媒とを除去する工程
(3):工程(2)の残留液を冷却し、芳香族ジヒドロキシ化合物とフェノール化合物との付加物結晶を析出させ、これを取得する工程
(4):工程(3)の付加物結晶を加熱溶融させる工程
(5):工程(4)の溶融液からフェノール化合物を除去して溶融芳香族ジヒドロキシ化合物とする工程
(6):工程(5)の溶融芳香族ジヒドロキシ化合物を冷却し、固体の芳香族ジヒドロキシ化合物とする工程
の各工程を含む連続方式の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法において、工程(5)又は(6)の芳香族ジヒドロキシ化合物を試料とし、以下の(a)、(b)及び(c)よりなる群から選ばれる操作を行い、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率から試料中の塩基性成分又は酸性成分の含有量を求め、これが中和される量の酸性化合物又は塩基性化合物を工程(1)〜(6)のいずれか、又は工程(1)への供給物に添加することを特徴とする製造方法。
(a)試料をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステルと混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
(b)試料をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステル及び酸性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
(c)試料をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステル及び塩基性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。 - 工程(1)と工程(2)との間、工程(2)と工程(3)との間及び工程(4)と工程(5)との間の少なくとも1箇所に、グラスファイバー製フィルターを設置することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- (1):フェノール化合物とカルボニル化合物とを酸性触媒の存在下で縮合させて芳香族ジヒドロキシ化合物を生成させる工程
(2):工程(1)の反応生成液を冷却し、芳香族ジヒドロキシ化合物とフェノール化合物との付加物結晶を析出させ、これを取得する工程
(3):工程(2)の付加物結晶を加熱溶融させる工程
(4):工程(3)の溶融液からフェノール化合物を除去して溶融芳香族ジヒドロキシ化合物とする工程
(5):工程(4)の溶融芳香族ジヒドロキシ化合物を冷却し、固体の芳香族ジヒドロキシ化合物とする工程
の各工程を含む連続方式の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法において、工程(4)又は(5)の芳香族ジヒドロキシ化合物を試料とし、以下の(a)、(b)及び(c)よりなる群から選ばれる操作を行い、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率から試料中の塩基性成分又は酸性成分の含有量を求め、これが中和される量の酸性化合物又は塩基性化合物を工程(1)〜(5)のいずれか、又は工程(1)への供給物に添加することを特徴とする製造方法。
(a)試料をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステルと混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
(b)試料をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステル及び酸性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
(c)試料をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステル及び塩基性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。 - 工程(1)と工程(2)との間、及び工程(3)と工程(4)との間の少なくとも1箇所に、グラスファイバー製フィルターを設置することを特徴とする請求項3記載の製造方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物1.00mol中の塩基性成分又は酸性成分の含有量を、0.15μmol以下に制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
- 実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器が、白金又は白金系合金、石英ガラス、炭化ケイ素又はフッ素樹脂を素材とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の方法により製造された芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを触媒存在下に重縮合させることを特徴とするポリカーボネートの製造方法。
- 炭酸ジエステルが、ハロゲンイオン含有量10ppb以下のものであることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
- 炭酸ジエステルが、ジフェニルカーボネート及び/又は置換ジフェニルカーボネートであることを特徴とする請求項7又は8記載の製造方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物が、ビスフェノールAであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の製造方法。
- 下記(a)、(b)及び(c)よりなる群から選ばれる操作で得られた芳香族ヒドロキシ化合物の残存率から、操作に供した芳香族ジヒドロキシ化合物中の塩基性成分又は酸性成分の含有量を求めることを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物の品質評価方法。
(a)芳香族ジヒドロキシ化合物をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステルと混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
(b)芳香族ジヒドロキシ化合物をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステル及び酸性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。
(c)芳香族ジヒドロキシ化合物をハロゲンイオン含有量10ppb以下の炭酸ジエステル及び塩基性化合物と混合し、実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器内で加熱した後、反応生成物中の芳香族ジヒドロキシ化合物の残存率を測定する。 - 実質的にLi、Na、K、Cs、Mg及びCaの各金属イオンが溶出しない容器が、白金又は白金系合金、石英ガラス、炭化ケイ素又はフッ素樹脂を素材とすることを特徴とする請求項11記載の品質評価方法。
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