JP2005068374A - 非複屈折性光学樹脂材料、同材料の製造方法並びに同材料を用いた光学素子 - Google Patents

非複屈折性光学樹脂材料、同材料の製造方法並びに同材料を用いた光学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 広範な樹脂の配向複屈折性を減殺して、非複屈折性の光学樹脂及び同樹脂を用いた光学素子を提供すること。
【解決手段】 透明な高分子樹脂マトリックスの配向複屈折性を打ち消す傾向の鎖状複屈折性分子を添加して、重合、混練等を行い非複屈折性光学樹脂材料を得る。鎖状複屈折性分子は、棒状に広がった構造を持つπ電子共役系を有する構造(A構造)と、屈曲可能であって、周囲のマトリックスポリマー分子鎖と絡み合う鎖状構造(B構造)を持ち、分子量は400〜1500である。非複屈折性光学樹脂材料は、シート状、レンズ状等の非複屈折性の光学素子に使用出来る。A構造は例えばナフタレン構造、ビフェニル構造などであり、B構造は例えば直鎖状炭化水素構造、枝分れ直鎖状炭化水素構造、直鎖状炭素弗素構造などである。
【選択図】 図33

Description

本発明は、高分子樹脂からなるマトリックスの配向複屈折性を添加物で減殺した非複屈折性光学樹脂材料、同材料の製造方法並びに同材料を用いた光学素子に関する。
ポリカーボネートやポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、ノルボルネン系樹脂等に代表される光学用高分子樹脂(以後、光学樹脂と略す)は、その高い透明性、加工の容易さ、取り扱い易さ、低コストなどの優れた特性により、光学フィルム、各種レンズ、光ファイバーなどの多くの光学素子の材料として広く用いられている。光学樹脂から光学素子を実際に製造するに際しては、射出成形、押出成形、延伸などの工程が必要になる。これら工程に共通する1つの特徴は、工程中の少なくとも一部で光学樹脂が流動性のある状態(粘性流体の状態)で移動することである。
例えば、射出成形であれば、樹脂が金型内へ流入して行き渡るまでに流動状態を経験する。また、押出成形や延伸でも、樹脂が押し出されて動く時あるいは延伸される最中に一種の流動状態を経験していることになる。周知のように、光学樹脂の高分子結合鎖は、このような流動状態から固化に至るまでの過程で配向作用または応力を受けて、複屈折性を帯びることが非常に多い。この複屈折性は、その光学樹脂内を伝播する光の偏光状態を乱す故、一般に、光学素子に好ましからざる光学特性を与える。
例えば、偏光を用いる光学デバイスにおいては偏光状態に意図せざる乱れをもたらす原因となる。また、複屈折は偏光面の方向によって屈折率が異なる現象であるから、あらゆる偏光が混在する無偏光状態の光を用いるレンズにおいては、その結像特性を低下させる。このような問題に対して、これまでにもいくつかの観点から解決方法が提案されている。
第1の方法は、射出成形や押出成形のように樹脂を溶融させる工程を含む場合については、その溶融時の流動特性を改善することにより、高分子結合鎖の配向を起こりにくくしようというものである。例えば下記特許文献1記載のように、溶融樹脂に可塑剤を添加することにより流動特性を改善する方法、下記特許文献2記載のように、複数の異なる樹脂を適切な組成比率で混合し、流動特性を改善する方法などが提案されている。しかしながら、このような方法では、物性の低下を招いたり、透明性が損なわれたりするなど好ましくない問題が生じる。またこれらの方法によっても、実際には、高分子結合鎖にはかなりの配向が残存する。
第2の方法は、新たな化学構造を案出し、配向しても本質的に複屈折性が生じ難い光学樹脂を得るという方法である。例えば下記特許文献3、4等に記載のように、新たな複屈折性の生じにくい骨格を導入する方法や、下記特許文献5〜8に記載のように、複屈折性の±符号(正/負)が互いに逆の光学樹脂同士をブレンドする方法、または、それらを構成するモノマーと共重合する方法などである。これらの方法は優れた方法であるが、広く普及している光学樹脂とは異なる新たな樹脂を用いることになるため、従来の光学樹脂と同じような物理的・化学的特性が得られないことが多い。また、コストも増大しがちである。
第3の方法は、添加物を加え、その添加物の示す複屈折性により光学樹脂の複屈折性を相殺する方法である。上述のような新たな光学樹脂を用いる方法と異なり、広く普及しているポリマーに適用してその複屈折性を相殺することが可能な方法である。例えば、下記特許文献9記載のように、無機物質微粒子を添加する方法、下記特許文献9記載のように、低分子有機物質を添加する方法がある。これらは優れた方法であるが、実用上、いくつかの問題点がある。
前者の無機物質微粒子を添加する方法では、望ましくは波長程度以下の大きさの棒状結晶を用いるが、そのような小サイズの棒状結晶を合成することはかなり難しい。また、そのような小さな結晶が得られた場合でも、ポリマー中に均一に、凝集させずに分散させることが容易ではない。一方、後者の低分子有機物質を添加する方法では、明細書中に示されているように、主に棒状の分子構造を有する低分子有機物質を用いる。ポリマー鎖の配向とともに棒状の低分子有機物質が配向することによって、双方の複屈折性が相殺しあうという原理である。明細書中に正の複屈折性を示す棒状の低分子有機物質が示されているが、棒状の低分子有機物質でありながら負の複屈折性を示すものは記載されておらず、実際そのような棒状の低分子有機物質を設計し、合成することは困難である。
何故ならば、これらの棒状の低分子有機物質は、分子全体に広がるπ電子雲により分子のねじれが抑制され、棒状の形状を維持しており、またπ電子雲が主に棒状分子の長軸方向に沿って動くことが正の複屈折性を示す源となっているからである。従って、負の複屈折性を示す低分子有機物質を得ようとすると、棒状でありながら棒の短軸方向に電子雲が動き易くなるような(即ち、分極率が高くなるような)構造にしなければならない。
しかし、棒状分子の短軸方向にπ電子系を伸ばしたとすると、π電子系の化学結合は回転が抑制されるので、それに沿った方向に棒状の構造を形成したことになる。その結果、分子全体として棒状の構造ではなくなり、本来のポリマー鎖の配向にともなって棒状分子が配向するという動きが困難になってしまう。
更に、下記特許文献10中に記載の複屈折性相殺効果の大きな棒状低分子有機物質のほとんどは、分子量の小さな棒状分子、いわば短い棒状の分子であるため、溶融樹脂中での拡散速度が一般に大きく、いわゆるブリーディング現象が起こり易くなる。即ち、射出成形などにより溶融樹脂を型に注入し、冷却固化させた後に、成形品表面に低分子有機物質が析出(ブリードアウト)し易くなる。このようなブリーディング現象が起こると、析出した低分子有機物質が金型に付着・蓄積し、更にそのまま成形を続けた場合には炭化し、成形品に混入するなどし、成形品の品質を下げるため、非常に深刻な問題となる。
以上述べたように、下記特許文献10に記載の低分子有機物質を添加する方法では、正の複屈折性を示す光学樹脂の複屈折性を相殺することが困難であり、また、負の複屈折性を示す光学樹脂の複屈折性を相殺する場合においても、射出成形などの成形時に上記したブリーディング現象の問題を起こす。
特開昭54−16564号公報 特開2000−109669公報 特開昭60−166322号公報 特開昭60−166321号公報 特開昭61−19630号公報 特開昭61−19656号公報 特開昭62−18466号公報 特開昭62−20524号公報 国際公開公報WO01/25364号公報(PCT/JP00/06880号) 国際出願PCT/JP95/01635号に添付された明細書及び図面
本発明は、上記のような事情を背景になされたものであり、その課題は、すでに広く普及している光学樹脂を含む広範な樹脂に適用して、その複屈折性を効率良く減殺することが出来る技術を提供することにある。また、そのことを通して、高い非複屈折性を示し、また、複屈折性減殺のために添加した材料のブリーディング現象の弊害のない光学樹脂材料及び同樹脂を用いた光学素子を提供しようとするものである。
上記課題を解決するために、本発明では、先ず、透明な高分子樹脂からなるマトリックスに、前記高分子樹脂材料が有する配向複屈折性を打ち消す傾向の鎖状複屈折性分子が添加された組成を有する非複屈折性光学樹脂材料が提案される。そして、マトリックスに添加される鎖状複屈折性分子には、本発明の基本的な特徴に従い、第1の構造(後述するA構造)と第2の構造(後述するB構造)を組み合わせた構造を有するものが採用される。ここで、第1の構造(後述するA構造)とは、棒状に広がったπ構造を持つ電子共役系を有するものであり、第2の構造(後述するB構造)とは、屈曲可能で、周囲の前記マトリックスを構成するポリマー分子鎖と絡み合う鎖状構造のことである。鎖状複屈折性分子の分子量の1つの実際的な範囲は、400以上且つ1500以下である。
上記光学樹脂材料の製造方法としては、(a)前記マトリックスを構成する透明な高分子樹脂に、前記鎖状複屈折性分子を添加する段階と、(b)前記マトリックスを合成する重合反応の段階とを含む製造方法が提案される。ここで、前記段階(a)における鎖状複屈折性分子の添加は、前記段階(b)における重合反応の開始前、または、重合反応開始後であって且つ終了前に実行される。また、上記光学樹脂材料の別の製造方法として、前記マトリックスを構成する高分子樹脂材料に鎖状複屈折性分子を混練する段階を含む方法が提案される。
次に、本発明は、上記光学樹脂材料を用いた光学素子を提案する。ここで、光学素子の形状は、通常の成形技術、機械加工(例えば所望サイズへの裁断)などを適用して、シート状の他、一般に任意の所望形状とすることができる。サイズ、厚さ等についても同様である。
レンズ形状に成形すればレンズ素子を構成することも出来る。シート状の光学素子の用途としては、例えば液晶素子用の基板や液晶素子用の保護フィルムがある。これらの用途で用いた場合、特にその非屈折性の利点が発揮され、液晶素子の表示性能の向上に資することができる。なお、本発明に係る高分子樹脂材料の他の用途としては、例えば配向複屈折性を示すポリマーを基材に用いる接着剤の特性改善が考えられる。例えば、同ポリマーの重合前あるい重合中に上記した鎖状複屈折性分子を添加することで、接着剤の複屈折性を減殺することが出来る。
このように、本発明は、高分子樹脂からなるマトリックスに添加する有機物質として、上記第1の構造(以下、A構造という)と第2の構造(以下、B構造という)を組み合わせた構造を有するものを採用することで、上記課題を解決したものである。以後、本願が配向複屈折率性減殺のために添加することを提案するこのような有機物質を「鎖状複屈折性分子」と呼ぶことにする。
上記した通り、A構造は棒状に広がった構造を持つπ電子共役系を有している。このA構造は、単独(即ち、B構造なし)でも、マトリックスを構成する高分子樹脂の複屈折性をある程度打ち消す能力を有しており、このような能力は従来技術でも既に利用されているものである。しかし、従来技術は、A構造からなる低分子化合物を用いる方法であり、本発明のようにマトリックスの鎖状構造に絡み付くに十分な屈曲性があるB構造との組み合わせという発想が採用されておらず、主として屈曲性が無いに等しい棒状の分子形状であったため、マトリックスのポリマー鎖の配向に伴って配向する効率が十分高くなかった。また、溶融ポリマー中でも動き易いために、前述した通り、ブリーディング現象が起こりやすかった。
配向効率が低いと添加濃度を高くする必要があり、母材ポリマーの耐熱性を大きく損なうなどの不都合が生じる。また、ブリーディング現象の発生は、成形品の品質を著しく損なうこと、また射出成形などにおいては、金型中に炭化した異物として蓄積することを意味するため、産業上の観点から見て致命的な問題であったものである。本発明は、A構造とB構造を組み合わせた構造とすることにより、この問題を巧妙に解決したものである。
即ち、A構造に組み合わされるB構造は、共存する材料(マトリックスとなる高分子樹脂あるいはその重合形成過程の材料)に流動性がある条件では屈曲性があり、周囲のポリマー分子鎖と相互作用して絡み合い、硬い棒状の分子よりも高い効率でポリマー鎖の配向に伴って配向し易い。また、ポリマー分子鎖との絡み合いにより、溶融ポリマー中での動きが制限されるため、ブリーディング現象が抑制される。なお、A構造と組み合わせられたB構造は、ポリマー鎖を形成する重合過程で共存したとしても、その重合過程には実質的に関与しない。
本発明により、すでに広く普及している光学樹脂を含む広範な樹脂について、複屈折性減殺のために添加した材料のブリーディング現象を起こさずに、光学樹脂材その複屈折性を効率良く減殺することが出来る。また、そのことを通して、ブリーディングの弊害のない良質で高い非複屈折性を示す光学樹脂材料及び同樹脂を用いた光学素子が提供される。
以下、図1以下を参照して、本発明について更に詳述する。先ず、上述した鎖状複屈折性分子が持つA構造について具体例を挙げて説明する。
1.A構造について
A構造は、複屈折性の源となる分極率の異方性が比較的大きい化学構造であり、且つ、分子の立体的形状がある一定の形状に保持され易い性質を持っている構造である。具体的には、棒状の構造的な拡がりをもってπ電子共役系を有していることを特徴とする構造である。ここで言う「棒状」とは、π電子共役系を含む面内において、π電子共役系が等方性ではなく、一方がそれとほぼ直交するもう一方に比べて長い状態を言う。
例えば図1(a)に示すベンゼンの化学構造は、その面内に含まれるπ電子共役系の方向性をx方向とy方向で比較した場合、おおよそ等方性であり、前述の「棒状」の構造ではない。しかし、図1(b)に示すナフタレンの場合、π電子共役系の長さがx方向はy方向の2倍程度であり、「棒状」の構造と言える。このナフタレンを含むいくつかのA構造の例を図2〜図10に示す。なお、これらの図において、慣用されている構造表記(左側または上段)と、3次元的な原子配列の斜視描示(右側または下段)を並記した。原子配列は、小さな●がH原子を表わし、大きな●がC原子、N原子など他の原子を表わしている。
[例1]:ナフタレン構造(図2参照)
ナフタレン構造全体にπ電子共役系が広がっているため、炭素結合からなる骨格部分は安定な平面構造となる。この平面構造が棒状であるため、長軸方向の分極率が短軸方向の分極率より大きくなり、屈折率に異方性が生じる。
[例2]:ビフェニル構造=(図3参照)
ビフェニル構造全体にπ電子共役系が広がっているため、炭素結合からなる骨格部分は安定な平面構造となる。この平面構造が棒状であるため、長軸方向の分極率が短軸方向の分極率より大きくなり、異方性が生じる。
[例3]:trans-stilbene構造(図4参照)
trans-stilbene構造全体にπ電子共役系が広がっているため、炭素結合からなる骨格部分は安定な平面構造となる。この平面構造が棒状であるため、長軸方向の分極率が短軸方向の分極率より大きくなり、異方性が生じる。
[例4]:diphenyl acetylene構造(図5参照)
diphenyl acetylene構造全体にπ電子共役系が広がっているため、炭素結合からなる骨格部分は安定な構造となる。この構造が棒状であるため、長軸方向の分極率が短軸方向の分極率より大きくなり、異方性が生じる。
[例5]:benzylidene-phenyl-amine構造(図6参照)
benzylidene-phenyl-amine構造全体にπ電子共役系が広がっているため、炭素結合からなる骨格部分は安定な平面構造となる。この平面構造が棒状であるため、長軸方向の分極率が短軸方向の分極率より大きくなり、異方性が生じる。
[例6]:N,N'-dibenzylidene-hydrazine構造(図7参照)
N,N'-dibenzylidene-hydrazine構造全体にπ電子共役系が広がっているため、炭素結合からなる骨格部分は安定な平面構造となる。この平面構造が棒状であるため、長軸方向の分極率が短軸方向の分極率より大きくなり、異方性が生じる。
[例7]:フルオレン構造(図8参照)
フルオレン構造全体にπ電子共役系が広がっているため、炭素結合からなる骨格部分は安定な平面構造となる。この平面構造が棒状であるため、長軸方向の分極率が短軸方向の分極率より大きくなり、異方性が生じる。
[例8]:2,3-dihydro-1H-phenalene構造(図9参照)
2,3-dihydro-1H-phenalene構造では、ナフタレンに相当する部分の構造全体にπ電子共役系が広がっており、この部分は安定な平面構造となる。この平面構造が棒状であるため、長軸方向の分極率が短軸方向の分極率より大きくなり、異方性が生じる。ナフタレンに相当する部分が本構造においてかなりの比率を占めているため、全体の骨格の安定性を高めている。
2.B構造について
既述の通り、B構造は、自身の周囲に存在するポリマーマトリックスを構成するポリマー分子と絡み合う構造である。B構造をA構造に結合させると、B構造の部分が、一種の“マトリックスポリマー配向センサ”として機能する。即ち、絡み合いを通して、周囲のポリマー分子の配向挙動を鋭敏に感知出来るため、ポリマー分子の配向に恭順の意向を示すが如く配向し、結合されているA構造をも望ましい配向状態へ導く。この作用は、本発明独特の作用である。また、B構造はポリマー分子と絡み合うため、ポリマーの溶融時にも、溶融ポリマー中での動きが制限され、ブリーディング現象が抑制される。B構造は、具体的には屈曲性のある鎖状構造などである。
一般に、屈曲性があり、ポリマー分子と絡み合う鎖状構造となるためには、骨格を形成する原子間の化学結合が比較的回転し易く、多様なコンフォメーションをとり得なければならない。そのためには、主に一重結合により骨格が形成されている構造が望ましい。反対に、図10に例示したように、二重結合や三重結合が短い間隔で導入されると、π電子による結合により、その部位の化学結合の回転が抑制されるため、屈曲性が損なわれ、本発明で求めるB構造としての機能を発現することが困難になる。即ち、この構造では、各二重結合が共鳴状態にあるため、π電子雲が全体的に広がっており、平面構造となる。つまり棒状ではあるが、屈曲性の無い構造となってしまう。但し、二重結合や三重結合を含んでいても、図11に例示したように、二重結合や三重結合の間隔が共鳴しない程度離れていれば、鎖状構造の屈曲性をそれほど損なわず、周囲のポリマーに絡み付くのに必要な屈曲性は確保される。即ち、図11に示した構造では、各二重結合が共鳴しておらず、鎖長に対して二重結合の割合が少ないため、屈曲性も十分にある。
ここで、「それほど損なわない程度」とは、鎖状構造のコンフォメーションの多様性を考慮すると、「主骨格部分に4つ以上の二重結合または三重結合からなる共鳴構造を持たないこと」、且つ、「主骨格部分を形成する化学結合の内、二重結合または三重結合の占める割合が30%以下であること」と言い換えることも出来る。
また、一重結合のみからなる構造であっても、例外的に図12に例示したように、側鎖に大きな立体構造を持つ場合は、立体障害によって実質的に主骨格を形成する化学結合の回転が抑制されてしまう。従って、「立体障害のために実質的に主骨格の屈曲性が抑制されることがないこと」という条件も加わる。
更に、上記の要件を満たし、屈曲性のある構造であっても、ポリマー分子と絡みあうためには、ある程度の鎖長が必要となる。鎖状構造を直鎖の炭素結合鎖で考えた場合、少なくとも炭素数が3個以上、望ましくは炭素数が4個以上、更に望ましくは10個以上である。また、2本以上の鎖状構造が付加されている場合は、1本の鎖状構造中の炭素数が少なくとも炭素数が3個以上、望ましくは4個以上、更に望ましくは6個以上であり、2本以上の鎖状構造中の全炭素数が少なくとも炭素数が6個以上、望ましくは8個以上、更に望ましくは10個以上である。
但し、鎖状構造が長くなりすぎると高分子性が発現され、高分子樹脂との相溶性が低下するため、実際上の上限がある。鎖状部分の分子量で換算して、3000を越えないようにするのが実際的であり、望ましくば2000以下、更に望ましくは1500以下とするのが良い。
鎖状構造は必ずしも炭素と水素から成る必要はなく、酸素、塩素、フッ素、臭素、珪素などの他の元素が入っても良いし、炭素、水素を含まなくても良い。鎖状構造の長さのみでなく、構成元素の種類によっても、高分子樹脂鎖との相互作用の大きさを調整出来る。以下、B構造の例を示す。なお、これらの図では、慣用表記による原子組成式と、略記形式の鎖構造描示を並記した。
[例1]:直鎖状炭化水素構造(図13参照)
[例2]:枝分かれ鎖状炭化水素構造(図14参照)
[例3]:直鎖状炭素弗素構造(図15参照)
[例4]:直鎖状炭素ケイ素構造(図16参照)
以上がA構造及びB構造の概略であり、これらA構造とB構造の組み合わせの典型例(即ち、本発明で用いる鎖状複屈折性分子の典型例を[分子1]〜[分子17]として、図17〜図33に示した。これらについて簡単に説明すれば次の通りである。
先ず、分子1と分子2は直鎖状構造を有しており、この直鎖状構造が高分子樹脂鎖と相互作用するため、高分子樹脂鎖の配向にともなって分子が同様な方向に配向する。その時、ナフタレン環構造も、直鎖構造に引きずられるようにして配向する。分子1と分子2は、直鎖構造を持たないナフタレンを同様に添加した場合と比較して、高分子樹脂鎖との相互作用が非常に大きいので、配向し易い。
また、射出成形や押出成形などのような溶融高分子樹脂中では、熱運動により分子がランダムに動き、ナフタレンのような小さな分子ではブリーディングし易くなるとともに、高分子樹脂鎖と同様な配向を起こしにくくなる。ところが、分子1や分子2のように直鎖状構造を付加することにより、高分子樹脂鎖との相互作用が大きくなるので、熱運動によるランダムな動きが抑制され、ブリーディングの抑制につながるとともに、配向し易くなる。分子3〜4のように、2つの直鎖が付加されている場合にも同様な効果が得られる。
分子5〜9のようにナフタレン環構造以外の複屈折性に大きな影響を与える構造(A構造)も効果的である。また、分子10のように鎖状構造が複数のA構造の間にあっても良い。分子11のようにA構造の中に三重結合を含むものであっても良い。また、分子12〜14のようにA構造の中に窒素原子などのようなヘテロ原子を含むものであっても良い。
次に、分子15〜17に示されている分子も、本発明の特徴を示す好ましい例である。フルオレン環構造やアントラセン環構造を高分子樹脂鎖の配向方向と直交するように配向させることができれば、正の複屈折性を示す光学樹脂の複屈折を相殺する効果を発揮する。しかし、前出の特許文献10に開示されている方法のようにフルオレンやアントラセンを添加しただけでは、その長軸方向が高分子樹脂鎖に同様な方向に配向するため、直交させることは困難である。本発明で好ましい代表的な分子である分子15と分子16では、高分子樹脂鎖と相互作用が大きい鎖状構造にほぼ直交するようにフルオレンまたはアントラセン環構造が配置されている。そのため、高分子樹脂鎖とともに配向し易く、正の複屈折性を示す高分子樹脂鎖の複屈折を相殺する効果を発揮する。また、高分子樹脂鎖と相互作用の大きな構造のためにブリーディングが抑制される利点も十分に発揮される。
さて、ここで、高分子樹脂の複屈折性について若干の補足説明を行ない、それに関連して、光学素子の作成方法に言及しておく。
一般に、高分子樹脂の複屈折に関しては、配向複屈折と光弾性複屈折に分けて説明されることが多い。確かに、塑性変形時に高分子樹脂鎖が配向することによって発現する複屈折と、弾性変形時に歪により発現する光弾性複屈折というように現象的に分類した方が、解析し易いことが多く、多くの文献に示されている測定値もそのような前提の下で測定されたものである。
しかし、高分子樹脂は厳密には粘弾性体であり、塑性変形と弾性変形を厳密に分けて分析することは困難である。このことは、これらの変形時の動きを分子レベルに観察した場合にも言えることである。塑性変形と弾性変形のどちらにおいても、外部応力が加わると、分子を構成する化学結合の結合角は大きく変化せずに、主にそれぞれの化学結合の軸を中心にした回転が起こることにより、分子が形を変える。
つまり、基本的にはコンフォメーションの変化によって、分子が形を変える訳である。その結果、分子が配向する。更に変形量が増えるとずりが生じる。これらの分子レベルで見たミクロな変化は、塑性変形時に高分子樹脂鎖が配向することによって発現する複屈折と、弾性変形時に歪により発現する光弾性複屈折のどちらにおいても共通することである。実際には、応力に対する変化が塑性変形とみなせるか、弾性変形とみなせるかで、おおよそどちらかに分類している訳である。従って、所謂、配向複屈折に限らず、光弾性複屈折においても、本発明で提供される方法は有効である。
ある種の鎖状複屈折性分子については、通常測定される配向複屈折の正負と光弾性複屈折の正負が逆転するものも存在する。これらの鎖状複屈折性分子については、配向複屈折および光弾性複屈折発現時に、各化学結合の回転がどのように起こり、どのように分子構造が変化しているかについては、学術の世界においても未だ議論がなされている状況であり、全てが解明されたわけではない。しかし、明確になっていることは、応力の方向に応じて、各化学結合が回転し、分子が変形している、つまり配向しているということである。そこで、本発明が提供する方法を利用するためには、どの分子が配向複屈折発現時と光弾性複屈折発現時に正負どちらの複屈折性を示すかという点を確認できれば問題無い。
鎖状複屈折性分子を、重合反応の開始前あるいは重合反応開始後で且つ終了前にモノマーへ加えることにより、本願の提供する非複屈折性光学樹脂を作製しても良いし、重合後の光学樹脂に混練などにより加えることにより作製しても良い。また、光学樹脂を溶剤に溶かした溶液に加え、その後、溶媒を揮発させることにより添加しても良い。
本願の提供する非複屈折性光学樹脂材料を用いて種々の光学素子を作製する方法としては、様々な方法が利用出来る。例えば、本発明で得られる非複屈折光学樹脂材料を射出成形法により成形し、種々の光学レンズを作製することが出来る。また、押出成形法により種々のシート状(フィルム状、板状を含む)の光学素子(基板)を作製することが出来る。このようにして得られた光学素子は、例えば液晶素子の基板や保護フィルムに用いてその非複屈折性を生かすことができる。更に溶液状態から溶媒を揮発させながら成形する溶液流延法により、光学フィルムを作製することも可能であり、注型重合により様々な形状のものを作製することも可能である。
最後に、いくかの実施例と、液晶素子用の基板及び保護フィルムの適用例について述べる。
ガラス製のサンプル管に酢酸エチル(純正化学(株))と2-Octadecyl-naphthalene (図17の〔分子1〕参照)を入れ、超音波を約10分間照射することにより均一に分散させた。更に、マトリックス用のポリマーとして、ペレット状のポリメチルメタクリレート(PMMA)(和光純薬工業(株))を加え、約24時間振とうし、溶解させた。より均一に分散させるため、更に超音波を約10分間照射した後、攪拌器HYBRID MIXER HM-500(キーエンス(株))により攪拌および脱泡を行った。
試薬の混合比は、酢酸エチルはポリメチルメタクリレートに対し重量比で4倍、2-Octadecyl-naphthalene はポリメチルメタクリレートに対し6.5wt%とした。また、参照用として、2-Octadecyl-naphthalene を添加しないものも調製した。このようにして得られたポリマー溶液をガラス板上にナイフコーターを用いて展開し、気密性の低い容器中で放置することで、穏やかに溶媒を蒸発させた。ガラス板よりフィルム状の試料(厚さ約40μm )をはがし、更に乾燥させるためにデシケーター中で約50時間減圧乾燥を行った。
乾燥後の試料をテンシロン万能試験機(ORIENTEC(株)製)を用い、一軸延伸を行った。延伸温度は120 ℃、延伸速度は14mm/mim、延伸倍率は1.1 〜1.7 倍とした。延伸後の試料の複屈折を、傾斜型自動複屈折計KOBRA-21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて測定した。測定結果を図34にグラフで示した。
同グラフにおいて、横軸は延伸倍率を表わし、縦軸は複屈折値を表わしている。ポリメチルメタクリレート(PMMA)のみの場合は、およそ-1.7×10-4の負の複屈折を示した。これに対して、ポリメチルメタクリレートに2-Octadecyl-naphthalene を6.5wt%添加したものでは、ポリメチルメタクリレートの負の配向複屈折をほぼ完全に消去することができた。
2-Octadecyl-naphthalene (図17の〔分子1〕参照)を、二軸エクストルーダーを用いて、ポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製、アクリペット(VH);登録商標)へ混練し、ペレットとした。この時の2-Octadecyl-naphthalene の添加濃度は、重量比でポリメチルメタクリレートに対し6.5wt%の割合とした。このペレットを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、HM-7型)を用いて、図35(a)に示したように、円柱状(18mmφ×10mm)に射出成形した。このときの射出成形条件は、ノズル温度255 ℃、シリンダ温度255 ℃、金型温度80℃とした。得られた円柱状試料の中央部分の応力印加時の複屈折値を、図35(b)に示したような応力印加方向とレーザ光入出力方向の条件で、複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR-10A-EX)を用いて測定した。更に、応力と複屈折値の関係から光弾性定数を求めた。その結果、ポリメチルメタクリレートのみの場合の光弾性定数は-4.36 ×10-12 (Pa-1)であったが、2-Octadecyl-naphthaleneを6.5wt% 添加した場合は0.04×10-12 (Pa-1)となり、ほぼ複屈折が相殺されていた。
2-Octadecyl-naphthalene(図17の〔分子1〕参照)を、二軸エクストルーダーを用いて、ポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製、アクリペット(VH);登録商標)へ混練し、ペレットとした。この時の2-Octadecyl-naphthalene の添加濃度は、重量比でポリメチルメタクリレートに対し6.5wt%の割合とした。このペレットを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、HM-7型)を用いて、平板状(35mm×35mm×2mm)に射出成形した。このときの射出成形条件は、ノズル温度255 ℃、シリンダ温度255 ℃、金型温度80℃とした。得られた平板状試料の中央部分の複屈折値を、複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR-10A-EX)を用いて測定した。その結果、ポリメチルメタクリレートのみの場合の複屈折値は-1.5×10-5であった。ここで、射出成形においては複屈折の正負を判断することは困難であるが、ポリメチルメタクリレートの場合、配向複屈折も光弾性複屈折も負であることが知られているので、負の符号を付けた。また、2-Octadecyl-naphthalene を6.5wt%添加した場合は0.1 ×10-5 となり、ほぼ複屈折が相殺された。
ガラス製のサンプル管にジクロロメタン(東京化成工業(株))と9,9-didodecylfluorene(図31の〔分子15〕参照)を入れ、超音波を約10分間照射することにより均一に分散させた。更にポリマーとしてペレット状のポリカーボネート(分子量22,000)を加え、約24時間振とうし、溶解させた。より均一に分散させるため、更に超音波を約10分間照射した後、攪拌器HYBRID MIXER HM-500(キーエンス(株)製)により攪拌および脱泡を行った。試薬の混合比は、ジクロロメタンはポリカーボネートに対し重量比で6倍、9,9-didodecylfluoreneはポリカーボネートに対し 8wt%とした。また、参照用として、9,9-didodecylfluoreneを添加しないものも調製した。
このようにして得られたポリマー溶液をガラス板上にナイフコーターを用いて展開し、気密性の低い容器中で放置することで、穏やかに溶媒を蒸発させた。ガラス板よりフィルム状の試料(厚さ約55μm)をはがし、更に乾燥させるためにデシケーター中で約50時間減圧乾燥を行った。乾燥後の試料をテンシロン万能試験機(ORIENTEC(株)製)を用い、一軸延伸を行った。延伸温度は190 ℃、延伸速度は2.5mm/mim 、延伸倍率は 1.5倍とした。
延伸後の試料の複屈折を、傾斜型自動複屈折計KOBRA-21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて測定した。その結果、ポリカーボネートのみの場合15.0×10-4の正の複屈折を示したが、9,9-didodecylfluorene を8.0wt%添加することにより複屈折がほぼ半減した。
9,9-didodecylfluorene(図31の〔分子15〕参照)を、二軸エクストルーダーを用いて、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、ユーピロン((登録商標)H-4000))へ混練し、ペレットとした。この時の9,9-didodecylfluorene の添加濃度はポリカーボネートに対し8.0wt%とした。このペレットを、押出成形機によりシリンダー温度290 ℃、Tダイス温度280 ℃で幅650mm のTダイスリップより鉛直下に吐出し、引取速度5.0m/min. で巻取り、シート厚さ150 μm のポリカーボネート樹脂シートを得た。
複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR-10A-EX)を用いて、シートの周辺から50mmより内側を、シートの幅方向(横断する方向)に50mm間隔で12点測定し、その平均リタデーションを求めた。その結果、リタデーションは約6.7nm であったことから、光路長(シート厚)150 μm で割ることにより、平均複屈折値4.5 ×10-5が求められた。
これに対して、9,9-didodecylfluorene を添加しなかった場合は、同様な製法で得られたシートの平均複屈折値が4.4 ×10-4であったことから、9,9-didodecylfluorene の添加により大きく複屈折が低減されたことがわかった。
メチルメタクリレート、2-Octadecyl-naphthalene (図17の〔分子1〕参照)、連鎖移動剤n-Butyl mercaptan と重合開始剤t-Butyl peroxy-2-ethylhexanoate を重合容器に入れ、70℃で24時間、続いて90℃で24時間加熱することにより、重合を行い、平板状試料(100mm ×100mm × 1.5mm)を作製した。また、比較のために、2-Octadecyl-naphthalene を添加していない平板状試料も作製した。これら試料の複屈折を、傾斜型自動複屈折計KOBRA-21ADH王子計測機器(株)製)を用いて平板の中央部分の複屈折を測定した。
その結果、ポリメチルメタクリレートのみの場合 -1.1×10-5の負の複屈折を示した。ここで、注形重合においては複屈折の正負を判断することは困難であるが、ポリメチルメタクリレートの場合、配向複屈折も光弾性複屈折も負であることが知られているので、負の符号を付けた。また、2-Octadecyl-naphthalene を6.5wt%添加することにより複屈折が-0.12 ×10-5まで低減していた。
さて、前述したように、本発明により得られる非屈折性光学樹脂材料の利点が発揮される光学素子の例として、液晶素子用の基板あるいは液晶素子用の保護フィルムがある。図36はその例を断面図で示したものである。
図36において、符号10は液晶層で、基板11a、11bの間に封入されている。従来技術では、多くの場合この基板はガラス製であるが、本発明の適用により、これら基板11a、11bの両方あるいは一方に、例えば上記実施例5で作成したポリカーボネート樹脂シート(ポリカーボネートをマトリックスとする樹脂シートの意)を使用することができる。
基板11a、11bの両側には、1対の偏光板ユニット12a、12bが設けられる。偏光板ユニット12a、12bは、それぞれ偏光板13を保護フィルム14ではさんで貼りあわせたラミネート構造を有している。この保護フィルム14に、例えば上記実施例5で得られたシートが使用可能である。その場合、保護フィルム14は、偏光板13を保護するとともに、その優れた非屈折性を発揮し、複屈折による光線分離を伴わない光透過を可能にする。
なお、液晶層側の保護フィルムを省いた構造が採用されることもある。その場合の断面構造を図37に示した。同図において、符号10は液晶層で、基板15a、15bの間に封入されている。これら基板15a、15bの両方あるいは一方に、例えば上記実施例5で作成したポリカーボネート樹脂シートを使用することができる。
基板15a、15bの両側には、1対の偏光板ユニット16a、16bが設けられる。偏光板ユニット16a、16bは、それぞれ偏光板13をその外側から保護フィルム14を貼り合わせたラミネート構造を有している。この保護フィルム14に、例えば上記実施例5で得られたシートが使用可能である。この場合も、保護フィルム14は、偏光板13を保護するとともに、その優れた非屈折性を発揮し、複屈折による光線分離を伴わない光透過を可能にする。
ベンゼンの化学構造(a)及びナフタレンの化学構造(b)を示したものである。 A構造の例1を示した図である。 A構造の例2を示した図である。 A構造の例3を示した図である。 A構造の例4を示した図である。 A構造の例5を示した図である。 A構造の例6を示した図である。 A構造の例7を示した図である。 A構造の例8を示した図である。 二重結合を含んだ鎖状構造の例を示した図である。 二重結合を含んではいるが屈曲可能である鎖状構造の例を示した図である。 一重結合のみからなる構造であるが、側鎖に大きな立体構造を持つ故、立体障害によって実質的に主骨格の屈曲性が抑制される例を示した図である。 B構造の例1を示した図である。 B構造の例2を示した図である。 B構造の例3を示した図である。 B構造の例4を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例1を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例2を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例3を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例4を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例5を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例6を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例7を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例8を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例9を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例10を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例11を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例12を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例13を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例14を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例15を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例16を示した図である。 A構造とB構造を組み合わせた分子例17を示した図である。 鎖状複屈折性分子の添加によるポリメチルメタクリレートの配向複屈折の低減効果について説明するグラフである。 (a)は実施例で射出成形により作成された円柱状のサンプルを示し、(b)は同サンプルについて行なった光弾性定数の測定について説明する図である。 本発明により得られる非屈折性光学樹脂材料で構成された基板及び保護シートを用いた液晶素子の例について説明する断面図である。 本発明により得られる非屈折性光学樹脂材料で構成された基板及び保護シートを用いた液晶素子の別の例について説明する断面図である。
符号の説明
10 液晶層
11a、11b、15a、15b 基板
12a、12b、16a、16b 偏光板ユニット
13 偏光板
14 保護フィルム

Claims (9)

  1. 透明な高分子樹脂からなるマトリックスに、前記高分子樹脂材料が有する配向複屈折性を打ち消す傾向の鎖状複屈折性分子が添加された組成を有する非複屈折性光学樹脂材料であって、
    前記鎖状複屈折性分子は、第1の構造と第2の構造を組み合わせた構造を有しており、
    前記第1の構造は、棒状に広がった構造を持つπ電子共役系を有しており、
    前記第2の構造は、屈曲可能であって、該第2の構造の周囲の前記マトリックスを構成するポリマー分子鎖と絡み合う鎖状構造であることを特徴とする、非複屈折性光学樹脂材料。
  2. 前記鎖状複屈折性分子の分子量が、400以上且つ1500以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光学樹脂材料。
  3. 請求項1または請求項2に記載された光学樹脂材料の製造方法であって、
    (a)前記マトリックスを構成する透明な高分子樹脂に、前記鎖状複屈折性分子を添加する段階と、
    (b)前記マトリックスを合成する重合反応の段階とを含み、
    前記段階(a)における鎖状複屈折性分子の添加は、前記段階(b)における重合反応の開始前、または、重合反応開始後であって且つ終了前に実行されることを特徴とする前記製造方法。
  4. 請求項1または請求項2に記載の光学樹脂材料の製造方法であって、
    前記マトリックスを構成する高分子樹脂材料に鎖状複屈折性分子を混練する段階を含むことを特徴とする前記製造方法。
  5. 請求項1または請求項2に記載の光学樹脂材料を用いたことを特徴とする光学素子。
  6. シート状であることを特徴とする、請求項5に記載された光学素子。
  7. 液晶素子用の基板として用いられることを特徴とする、請求項6に記載された光学素子。
  8. 液晶素子用の保護フィルムとして用いられることを特徴とする、請求項6に記載された光学素子。
  9. 請求項1または請求項2に記載の光学樹脂材料を用いたことを特徴とする光学レンズ素子。
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