JP2005068253A - 鋼製部材防蝕用塗料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 厳しい腐蝕環境下においても鋼製部材に塗布することで、鋼製部材に優れた耐蝕性を付与して長期に亘って防錆性能を発揮することができる鋼製部材防蝕用塗料を提供する。
【解決手段】 鋼製部材の表面に塗膜層を形成して鋼製部材を防蝕する鋼製部材防蝕用塗料であり、塗膜形成成分と、アルミニウムからなり表面に酸化皮膜層を有するアルミニウム粉末とを含み、上記アルミニウム粉末の酸化皮膜層の厚みが酸素量換算で0.01wt%以上0.1wt%以下の範囲である、鋼製部材防蝕用塗料である。
【選択図】 なし
【解決手段】 鋼製部材の表面に塗膜層を形成して鋼製部材を防蝕する鋼製部材防蝕用塗料であり、塗膜形成成分と、アルミニウムからなり表面に酸化皮膜層を有するアルミニウム粉末とを含み、上記アルミニウム粉末の酸化皮膜層の厚みが酸素量換算で0.01wt%以上0.1wt%以下の範囲である、鋼製部材防蝕用塗料である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、鋼製部材に塗布することで当該鋼製部材を長期に亘って防蝕することができる鋼製部材防蝕用塗料に関する。
ボルトナット、リベット等の締結部材やH鋼、アングル、鋼管柱等の土木、建築用部材をはじめとして、プラント、橋梁、船舶、鉄塔、煙突、タンク等の各種構造物に用いられる鋼製部材の防蝕方法として、無機又は有機ジンクリッチペイントを鋼製部材に塗布する方法や、亜鉛粉末を用いて化成処理する方法等が多用されてきている。これらは亜鉛末の犠牲陽極効果を利用した防蝕手段である。
ところが、亜鉛末はその基本的な化学的挙動から、中性から酸性領域での消耗が著しく、上記のような亜鉛末を用いた防蝕手段は一般的な海浜地帯よりも重工業地帯や都市環境下での耐久性に問題がある。加えて、近時は酸性雨の問題も浮上しており、酸性雨は亜鉛めっきや亜鉛末を主に利用した防蝕手段としての塗料の寿命を大幅に低下させてしまう。一方において、土木や建築等の関係における鋼製部材を用いた構造物の長寿命化が要求されている。
亜鉛末の犠牲陽極効果を利用した防蝕手段の耐久性の問題や鋼製部材の長寿命化の要請を受けて、亜鉛めっきや亜鉛末を利用した防蝕用の被覆層を厚く鋼製部材に設け、さらにこの上に厚膜塗料を塗布するといった二重の防蝕手段を講じることも考えられる。しかしながら、土木、建築等の施工現場において鋼製部材に厚膜の塗料を施すことは困難であったり、厚膜の塗料を施すことでボルトナットの溝や鋼製部材の隙間を必要以上に埋めてしまうために施工できなかったりする等の問題が生じる。更には、このような厚膜処理はコスト上昇の問題も生じる。
ところで、アルミニウム粉末を使用した塗料を用いての防蝕手段についても報告されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、アルミニウム粉末を製造する際に一般的に採用されるアトマイズ法では、製造後のアルミニウム粉末の表面に強固な熱酸化皮膜が形成されるため、アルミニウム粉末は犠牲陽極として作用し難く、アルミニウム由来の防蝕効果は小さい。そのため、このような防蝕手段においては、塗料に別途亜鉛粉末を混合するか、あるいはアルミニウム粉末を形成するアルミニウム合金中の亜鉛含有量を増加させる等の調製が必要となる。したがって、鋼製部材の防蝕手段としては亜鉛に由来する耐久性の問題や寿命低下の問題を生じる虞がある。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、鋼製部材の防蝕に必要な程度に十分に自然電位の低いアルミニウムからなるアルミニウム粉末に着目し、亜鉛粉末に代わる鋼製部材の防蝕手段を得ることにあり、本発明者らは、アルミニウム粉末の表面に形成される酸化皮膜層を酸素量換算で所定量に調製することで、鋼製部材に対し犠牲陽極効果を発揮することができるアルミニウム粉末を得ることができることを見出した。そして、このようなアルミニウム粉末を塗料化して鋼製部材に塗布することで、重工業地帯や都市環境下をはじめとして飛来塩分量の多い環境や海水等の影響を受ける環境、酸性雨の影響や亜硫酸ガスを含んで亜鉛めっき鋼の耐蝕性を著しく低下させるような環境においても、鋼製部材に対して優れた耐蝕性及び犠牲陽極効果を付与して長期に亘って鋼製部材に防錆効果を発揮せしめることができる鋼製部材防蝕用塗料を完成させた。
従って、本発明の目的は、厳しい腐蝕環境下においても鋼製部材に塗布することで、鋼製部材に優れた耐蝕性を付与して長期に亘って防錆性能を発揮することができる鋼製部材防蝕用塗料を提供することにある。
すなわち、本発明は、鋼製部材の表面に塗膜層を形成して鋼製部材を防蝕する鋼製部材防蝕用塗料であり、塗膜形成成分と、アルミニウムからなり表面に酸化皮膜層を有するアルミニウム粉末とを含み、上記アルミニウム粉末の酸化皮膜層の厚みが酸素量換算で0.01wt%以上0.1wt%以下の範囲である鋼製部材防蝕用塗料である。尚、本発明においてアルミニウムとは、アルミニウム又はアルミニウム合金を意味する場合がある。
本発明において、鋼製部材は、例えば、ボルトナット、リベット等の締結部材やH鋼、アングル、鋼管柱等の土木、建築用部材をはじめとして、プラント、橋梁、船舶、鉄塔、煙突、タンク等の各種構造物に用いられる鋼製部材等を挙げることができる。これらの鋼製部材は、屋内で使用されるものや屋外で使用されるもの等の使用環境における制限はなく、また、鋼製部材は上記具体例に制限されることなく、その他の鋼製のものや鋼製のものを一部に含むもの等に対しても同様に、本発明の鋼製部材防蝕用塗料を適用することができる。
本発明におけるアルミニウム粉末は、アルミニウムからなり表面に酸化皮膜層を有するものである。そして、本発明においては、このアルミニウム粉末の酸化皮膜層の厚みが、酸素量換算で0.01wt%以上0.1wt%以下、好ましくは0.024wt%以上0.08wt%以下の範囲であることが必要である。アルミニウム粉末の酸化皮膜層の厚みが薄くなって酸素量換算の値が小さくなればアルミニウムが犠牲陽極としてより機能を発揮しやすくなるが、酸素量換算で0.01wt%より小さいアルミニウム粉末を製造するのは実用上困難である。反対に、酸化皮膜層の厚みが酸素量換算で0.1wt%より多くなると、酸化皮膜抵抗が大きくなり、このようなアルミニウム粉末を含んだ本発明の塗料を鋼製部材の表面に塗布して塗膜層を形成しても、アルミニウム粉末が犠牲陽極層とはならずに障壁層として作用してしまうので、鋼防蝕電位を発現することができずに犠牲陽極としての機能を発揮し得ない。
上記のように、アルミニウム粉末の酸化皮膜層の厚みを酸素量換算で表わすために、例えば不活性ガス溶解赤外線吸収法(LECO法)によりアルミニウム粉末を全量溶解して発生したCOガスより測定する方法が利用できる。実際の酸化皮膜層の厚みは、LECO法で定量した酸素量と、試料アルミニウム粉末の表面積をBET比表面積測定法により測定し、計算により算出できる。計算方法は、アルミニウム粉末の酸化皮膜層をアルミナとして、LECO法で定量した酸素量から酸化皮膜層をアルミナ重量に換算し、さらにこの重量をアルミナの比重ρで除して体積に換算し、この体積をBET比表面積で除して厚みを算出する。
本発明においては、アルミニウム粉末が純度99.0wt%以上の純アルミニウムからなるのがよい。Si、Fe、Cu等の不純物が多くなって純度が99.0wt%より低いアルミニウムであると、自己腐蝕が多くなって鋼製部材に対して安定した防蝕電位を供給することができなくなる。
また、本発明においては、下記の理由から、アルミニウム粉末が、好ましくはIn、Ga、Sn、Bi、及びCaから選ばれた1種又は2種類以上の元素を合計含有量0.005〜0.2wt%の範囲、より好ましくは0.01〜0.1wt%の範囲で含有するように上記元素を添加して調製したアルミニウムからなるのがよい。アルミニウム粉末が上記のような低融点金属である元素を含有したアルミニウムからなると、このような元素を含有したアルミニウムを溶解炉等で溶解してアルミニウム粉末を製造する際、溶融金属が最後に凝固する最終凝固部分に上記低融点金属が析出するため、得られたアルミニウム粉末の表面には自然酸化皮膜が形成され難くなる。そのため、上記元素を含有したアルミニウムから得られたアルミニウム粉末を用いて鋼製部材防蝕用塗料とすることで、アルミニウムが有する本来の活性電位を最大限引き出し、鋼製部材に対して優れた防蝕効果を発揮することができる。
上記において、アルミニウムに含有されるIn、Ga、Sn、Bi、及びCaから選ばれた1種又は2種以上の元素の合計含有量が0.005wt%より少ないと、アルミニウムの自然酸化皮膜が安定的に生成するためアルミニウム本来の低電位が発現しにくくなり電位卑化効果が小さくなり、鋼防蝕効果が小さくなる。反対に、合計含有量が0.2wt%より多くなると、効果が飽和すると共にコスト高となってしまう。
また、本発明においては、下記の理由から、アルミニウム粉末が、亜鉛を含有量1〜10wt%の範囲、好ましくは1.2〜7.0wt%の範囲で含有するように亜鉛を添加して調製したアルミニウムからなるのがよい。アルミニウム粉末が、亜鉛を上記含有量の範囲内で含有したアルミニウムからなると、鋼製部材に対して犠牲陽極効果を発揮するアルミニウム粉末の電位をさらに卑にすることができる。アルミニウム粉末中の亜鉛の含有量が1wt%より少ないとアルミニウム粉末の電位を卑にする効果が小さ過ぎ、反対に10wt%より多くなると効果が飽和するばかりか、NOx、SOx等の酸性雨に起因する物質の存在下でアルミニウム粉末の消耗が大きくなって、鋼製部材防蝕用塗料自体の耐久性が低下する。
また、本発明においては、下記の理由から、アルミニウム粉末が、Mgを含有量1〜5wt%の範囲、好ましくは1.2〜4.5wt%の範囲で含有するようにMgを添加して調製したアルミニウムからなるのがよい。アルミニウム粉末が、Mgを上記含有量の範囲内で含有したアルミニウムからなると、鋼製部材に対して犠牲陽極効果を発揮するアルミニウム粉末の電位をさらに卑にすることができると共に、本発明の鋼製部材防蝕用塗料に含まれるアルミニウム粉末自体の耐蝕性を向上させることができる。例えば、多量の海塩粒子が存在する環境下において本発明の防蝕用塗料を鋼製部材に塗布した場合でも、長期に亘って鋼製部材に対して優れた防蝕効果を付与せしめることができるようになる。アルミニウム粉末中のMgの含有量が1wt%より少ないと、アルミニウム粉末の電位を卑にする効果が小さくなりすぎると共に、アルミニウム粉末自体の耐蝕性向上効果も認められない。反対に、含有量が5wt%より多くなると効果が飽和し、更にはアルミニウム粉末製造時の溶湯粘度が上昇してアルミニウム粉末の製造工程において悪影響を及ぼす。
本発明におけるアルミニウム粉末については、上述したIn、Ga、Sn、Bi、及びCaから選ばれた1種又は2種以上の金属元素や亜鉛及びMgのうち、これらの各金属元素を上述したそれぞれの所定含有量の範囲内となるように適宜選択し、組み合わせて含有するように調製したアルミニウムからなるアルミニウム粉末としてもよい。
例えば、アルミニウム粉末が、In、Ga、Sn、Bi及びCaから選ばれた1種又は2種類以上の元素を合計含有量0.005〜0.2wt%の範囲で含有し、かつ、亜鉛を含有量1〜10wt%の範囲で含有して、残部がアルミニウムとなるように調製したアルミニウムからなるアルミニウム粉末であってもよく、また、アルミニウム粉末が、In、Ga、Sn、Bi及びCaから選ばれた1種又は2種類以上の元素を合計含有量0.005〜0.2wt%の範囲で含有し、かつ、亜鉛を含有量1〜10wt%の範囲で含有し、かつ、Mgを含有量1〜5wt%の範囲で含有して、残部がアルミニウムとなるように調製したアルミニウムからなるアルミニウム粉末であってもよい。あるいは、上記以外にも、本発明において添加される金属を適宜選択して組み合わせてアルミニウムを調製することができる。
尚、アルミニウム粉末が、本発明において調製のために添加された金属元素を含んだアルミニウムからなる場合、これらの金属元素以外の残部にあたるアルミニウムについては、純度99.0wt%以上の純アルミニウムと同等の純度となるようにSi、Fe、Cu等の不純物を含まないアルミニウムであるのがよい。
尚、アルミニウム粉末が、本発明において調製のために添加された金属元素を含んだアルミニウムからなる場合、これらの金属元素以外の残部にあたるアルミニウムについては、純度99.0wt%以上の純アルミニウムと同等の純度となるようにSi、Fe、Cu等の不純物を含まないアルミニウムであるのがよい。
本発明におけるアルミニウム粉末の形状については、特に制限はなく、球状、涙型、鱗片状等の形状をしたアルミニウム粉末を例示することができ、好ましくは球状又は鱗片状の形状をしたアルミニウム粉末であるのがよい。このような形状をしたアルミニウム粉末であると塗料化した場合にその積層性、集積密度が良好なため、防蝕電位維持性の点で有利である。
また、本発明におけるアルミニウム粉末の大きさについては、長径が3〜120μmの範囲、好ましくは5〜100μmの範囲であるのがよい。粉末の長径が3μmより小さくなると、アルミニウム粉末の耐久性が低くなり、また、アルミニウム粉末を製造する際に少量しか得ることができなくなって高価になってしまう。反対に、長径が120μmより大きくなると、鋼製部材防蝕用塗料として鋼製部材に塗布した際に平滑な塗膜層を形成し難くなる。
本発明においては、鋼製部材の表面に本発明の鋼製部材防蝕用塗料を塗布して塗膜層を形成した際、アルミニウム粉末がこの塗膜層中に55〜97wt%、好ましくは65〜95wt%含有されるようにするのがよい。ここで、このアルミニウム粉末の含有量とは、鋼製部材防蝕用塗料を鋼製部材の表面に塗布して乾燥した後の塗膜層におけるアルミニウム粉末の含有量を表わす。アルミニウム粉末が塗膜層中に55wt%より少ない量で含有されると、防蝕効果は発揮するものの、鋼製部材に対して長期間防蝕能を発揮するのが難しくなり、反対に、97wt%より多くなると相対的に塗膜形成成分の割合が少なくなりすぎて塗膜の形成が困難となる。
そして、本発明において、鋼製部材防蝕用塗料を鋼製部材の表面に塗布して形成した塗膜層が、好ましくは当該鋼製部材の自然電位を鋼腐蝕電位より50mV以上卑とすることができるのがよい。本発明における鋼製部材防蝕用塗料を塗布して塗膜層を形成した鋼製部材の自然電位が鋼腐蝕電位より50mV以上卑であれば、鋼製部材の使用される環境の変化に対応でき、鋼製部材を長期に亘って防蝕することができる。
本発明において、鋼製部材防蝕用塗料に含まれる塗膜形成成分は、アルミニウム粉末との分散性がよいものであればよく、また、アルミニウム粉末が犠牲陽極作用によって溶解した際に生成するアルカリに耐え得る樹脂系であればよい。このような塗膜形成成分として、例えば、水ガラス系、水性シリカゾル系、アルキルシリケート系、オルガノゾル系等の無機系樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、スチレン系樹脂塗料等を挙げることができる。
本発明における鋼製部材防蝕用塗料には、上述したようなアルミニウム粉末や塗膜形成成分として挙げた成分以外のものを含んでもよく、エチルアルコールやイソプロパノール等のアルコール類、キシレンやトルエン等を含むこともできる。また、本発明における鋼製部材防蝕用塗料を鋼製部材に塗布する手段については特に制限はなく、例えば、スプレー塗装、ロールコート、浸漬塗装等の手段を用いて鋼製部材に塗布することができる。
本発明における鋼製部材防蝕用塗料では、塗布する対象である鋼製部材の使用される環境に応じて、用いるアルミニウム粉末を適宜選択することができる。すなわち、鋼製部材は使用される周辺環境によって鋼腐蝕電位が変動するため、アルミニウム粉末については、上述したIn、Ga、Sn、Bi、及びCaから選ばれた1種又は2種以上の金属元素や亜鉛及びMgを、それぞれの金属元素について上記で説明した所定含有量の範囲内となるように適宜選択し、組み合わせて含有したアルミニウムを調製することで、鋼製部材に対する防蝕効果や防蝕用塗料自体の耐久性等が最適になるように設計することができる。例えば、田園地帯や山間地のような腐蝕性の小さい環境下で使用される鋼製部材に対しては、純度99.0wt%以上の純アルミニウムからなるアルミニウム粉末を用いて鋼製部材防蝕用塗料とすることで、十分な防蝕効果を発揮させることができる。また、海浜、重塩害地域、臨海工業地のような腐蝕性の大きい環境下で使用される鋼製部材に対しては、鋼製部材に十分電子を供給できるように、鋼腐蝕電位よりも十分卑となるような電位差を確保できる金属元素(上述したIn、Ga、Sn、Bi、及びCaから選ばれた1種又は2種以上の金属元素や、亜鉛、及びMg)を各金属元素について所定含有量の範囲内となるように適宜選択し、組み合わせて含有するように調製したアルミニウムからなるアルミニウム粉末を用いることができる。
この発明によれば、厳しい腐蝕環境下においても鋼製部材に塗布することで、鋼製部材に優れた耐蝕性を付与して長期に亘って防錆性能を発揮することができる鋼製部材防蝕用塗料を提供することができる。
また、この発明によれば、鋼製部材の使用される環境に応じてアルミニウム粉末を選択することができ、効率良く鋼製部材の防蝕を行うことができる。また、鋼製部材防蝕用塗料の耐久性も優れることから、本発明の鋼製部材防蝕用塗料を塗布した鋼製部材は、長期間に亘ってメンテナンスフリーで使用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
実施例1〜16、比較例1〜3
[鋼製部材防蝕用塗料の調製]
原料となるアルミニウムを溶解炉中で所定の組成に溶解し、これを窒素雰囲気中のセラミック受け台に噴出させて急冷して、表1に示した金属含有量のアルミニウム粉末を製造した。この際、周辺雰囲気の窒素濃度を調製することによって、各アルミニウム粉末の表面には、表1に示したような所定の酸素量換算で示した厚さの酸化皮膜層を形成した(酸素量換算で0.25wt%、0.15wt%、0.10wt%、0.025wt%の4水準)。また、得られたアルミニウム粉末を分級し、粉末径70〜120μm(最大粒径120μm)、30〜50μm(最大粒径50μm)、5〜20μm(最大粒径20μm)、5μm以下(最大粒径5μm)の計4水準の寸法形状を有するアルミニウム粉末を用意した。
次に、上記アルミニウム粉末を塗膜形成成分であるエチルシリケート40(コルコート社製)、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、及びスチレン系樹脂塗料とそれぞれ混合し、よく攪拌して表1に示すような鋼製部材防蝕用塗料を得た。この際、得られた鋼製部材防蝕用塗料を被塗物に塗布し、乾燥させて塗膜層を形成した場合に、塗膜層における上記アルミニウム粉末の含有量が55〜97wt%の範囲となるように各鋼製部材防蝕用塗料を調製した。
[鋼製部材防蝕用塗料の調製]
原料となるアルミニウムを溶解炉中で所定の組成に溶解し、これを窒素雰囲気中のセラミック受け台に噴出させて急冷して、表1に示した金属含有量のアルミニウム粉末を製造した。この際、周辺雰囲気の窒素濃度を調製することによって、各アルミニウム粉末の表面には、表1に示したような所定の酸素量換算で示した厚さの酸化皮膜層を形成した(酸素量換算で0.25wt%、0.15wt%、0.10wt%、0.025wt%の4水準)。また、得られたアルミニウム粉末を分級し、粉末径70〜120μm(最大粒径120μm)、30〜50μm(最大粒径50μm)、5〜20μm(最大粒径20μm)、5μm以下(最大粒径5μm)の計4水準の寸法形状を有するアルミニウム粉末を用意した。
次に、上記アルミニウム粉末を塗膜形成成分であるエチルシリケート40(コルコート社製)、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、及びスチレン系樹脂塗料とそれぞれ混合し、よく攪拌して表1に示すような鋼製部材防蝕用塗料を得た。この際、得られた鋼製部材防蝕用塗料を被塗物に塗布し、乾燥させて塗膜層を形成した場合に、塗膜層における上記アルミニウム粉末の含有量が55〜97wt%の範囲となるように各鋼製部材防蝕用塗料を調製した。
[防蝕試験用供試体の作製]
次に、70mm×150mm×厚さ1.2mmのSS400鋼板を用意し、その表面に付着した錆を#400エメリー研磨紙で磨いた。これを被塗物として上記鋼製部材防蝕用塗料を塗布し、室温で6時間硬化させて厚さ80μm及び120μmの塗膜層を有する防蝕試験用供試体1を作製した(実施例1〜16、比較例1、2)。また、アルミニウム粉末のかわりに100wt%Znからなる亜鉛粉末を用いた塗料を塗布したものを比較例3とした。
次に、70mm×150mm×厚さ1.2mmのSS400鋼板を用意し、その表面に付着した錆を#400エメリー研磨紙で磨いた。これを被塗物として上記鋼製部材防蝕用塗料を塗布し、室温で6時間硬化させて厚さ80μm及び120μmの塗膜層を有する防蝕試験用供試体1を作製した(実施例1〜16、比較例1、2)。また、アルミニウム粉末のかわりに100wt%Znからなる亜鉛粉末を用いた塗料を塗布したものを比較例3とした。
[耐蝕性評価試験]
耐食性評価試験として、図1に示したように1000mlプラスチックビーカー2に5wt%NaCl水溶液3を500ml採取し、この中に上記防蝕試験用供試体1を略垂直となるように立てて半浸漬させた。そして2ヶ月間室温でこのような半浸漬試験を継続した後、防蝕試験用供試体1の大気曝露部1a及び水中浸漬部1bの発錆状況を観察して、○:発錆なし、△:微量の発錆あり、×:大量の発錆あり、の三段階の評価を行った。また、プラスチックビーカー2の中の5wt%NaCl水溶液3に照合用電極4を入れ、デジタルボルトメーター5を用いて5wt%NaCl水溶液中における防蝕試験用供試体1の鋼板自然電位を測定した。これらの結果を表1に示す。尚、5wt%NaCl水溶液中の鋼腐蝕電位は−650mVvsSCEである。
耐食性評価試験として、図1に示したように1000mlプラスチックビーカー2に5wt%NaCl水溶液3を500ml採取し、この中に上記防蝕試験用供試体1を略垂直となるように立てて半浸漬させた。そして2ヶ月間室温でこのような半浸漬試験を継続した後、防蝕試験用供試体1の大気曝露部1a及び水中浸漬部1bの発錆状況を観察して、○:発錆なし、△:微量の発錆あり、×:大量の発錆あり、の三段階の評価を行った。また、プラスチックビーカー2の中の5wt%NaCl水溶液3に照合用電極4を入れ、デジタルボルトメーター5を用いて5wt%NaCl水溶液中における防蝕試験用供試体1の鋼板自然電位を測定した。これらの結果を表1に示す。尚、5wt%NaCl水溶液中の鋼腐蝕電位は−650mVvsSCEである。
実施例1〜16については、SS400鋼板の発錆が長期間に渡って防止されることが確認され、本発明における鋼製部材防蝕用塗料が優れた防蝕効果を示すことが分かる。
実施例5及び6については、アルミニウム粉末の最大粒径が5μmであるが、最大粒径120μmや50μmの場合と比較して遜色ない結果を示した。また、実施例1〜6では、純度99.0wt%以上の純アルミニウムからなるアルミニウム粉末を用いており、実施例7〜16では、純アルミニウムに低融点金属をはじめ、亜鉛及びMgを含有したアルミニウム合金からなるアルミニウム粉末を用いており、いずれの場合であっても5wt%NaCl水溶液中の鋼腐蝕電位より100mV以上卑な電位をSS400鋼板に対して付与することができることが確認された。実施例7〜16では、特に鋼腐蝕電位より卑な電位をSS400鋼板に付与することができ、5wt%NaCl水溶液中の水中浸漬部1b及び潮解性物質であるNaClが析出する大気曝露部1aにおいても確実に防蝕効果を発揮することが示された。更に、実施例1〜16から明らかなように、塗膜形成成分の種類によらずに安定した防蝕能を発揮することが分かる。
実施例5及び6については、アルミニウム粉末の最大粒径が5μmであるが、最大粒径120μmや50μmの場合と比較して遜色ない結果を示した。また、実施例1〜6では、純度99.0wt%以上の純アルミニウムからなるアルミニウム粉末を用いており、実施例7〜16では、純アルミニウムに低融点金属をはじめ、亜鉛及びMgを含有したアルミニウム合金からなるアルミニウム粉末を用いており、いずれの場合であっても5wt%NaCl水溶液中の鋼腐蝕電位より100mV以上卑な電位をSS400鋼板に対して付与することができることが確認された。実施例7〜16では、特に鋼腐蝕電位より卑な電位をSS400鋼板に付与することができ、5wt%NaCl水溶液中の水中浸漬部1b及び潮解性物質であるNaClが析出する大気曝露部1aにおいても確実に防蝕効果を発揮することが示された。更に、実施例1〜16から明らかなように、塗膜形成成分の種類によらずに安定した防蝕能を発揮することが分かる。
これに対し、比較例1〜3における塗料では、防蝕効果が小さいことが分かる。
比較例1及び2に示されるように、アルミニウム粉末の酸化皮膜層の厚みが酸素量換算で0.1wt%を超えるとアルミニウム粉末の犠牲陽極効果が十分に発揮されず、特に大気曝露部1aでの発錆が著しく、防食効果が大幅に低下することが確認された。また、亜鉛粉末を用いた塗料を塗布した比較例3の場合では、上記半浸漬試験を開始しておよそ1時間経過後に白い亜鉛腐蝕生成物の付着が起こり、2週間程度経過した後に大気曝露部1aの発錆が確認された。この比較例3では塗膜層の消耗が激しく、半浸漬試験終了時には水中浸漬部1bにおいても発錆が著しく認められた。
比較例1及び2に示されるように、アルミニウム粉末の酸化皮膜層の厚みが酸素量換算で0.1wt%を超えるとアルミニウム粉末の犠牲陽極効果が十分に発揮されず、特に大気曝露部1aでの発錆が著しく、防食効果が大幅に低下することが確認された。また、亜鉛粉末を用いた塗料を塗布した比較例3の場合では、上記半浸漬試験を開始しておよそ1時間経過後に白い亜鉛腐蝕生成物の付着が起こり、2週間程度経過した後に大気曝露部1aの発錆が確認された。この比較例3では塗膜層の消耗が激しく、半浸漬試験終了時には水中浸漬部1bにおいても発錆が著しく認められた。
本発明における鋼製部材防蝕用塗料を塗布することで、鋼製部材に対して優れた耐蝕性を付与することができ、また、鋼製部材防蝕用塗料の耐久性も優れていることから、厳しい腐蝕環境下で使用される鋼製部材に対しても防蝕用塗料として適用することができる。そして、本発明の鋼製部材防蝕用塗料を塗布した鋼製部材は、長期に亘ってメンテナンスフリーで使用することができる。
1:防蝕試験用供試体、1a:大気曝露部、1b:水中浸漬部、2:プラスチックビーカー、3:5wt%NaCl水溶液、4:照合用電極、5:デジタルボルトメーター
Claims (9)
- 鋼製部材の表面に塗膜層を形成して鋼製部材を防蝕する鋼製部材防蝕用塗料であり、塗膜形成成分と、アルミニウムからなり表面に酸化皮膜層を有するアルミニウム粉末とを含み、上記アルミニウム粉末の酸化皮膜層の厚みが酸素量換算で0.01wt%以上0.1wt%以下の範囲であることを特徴とする鋼製部材防蝕用塗料。
- アルミニウム粉末が、In、Ga、Sn、Bi、及びCaから選ばれた1種又は2種類以上の元素を合計含有量0.005〜0.2wt%の範囲で含有したアルミニウムからなる請求項1に記載の鋼製部材防蝕用塗料。
- アルミニウム粉末が、亜鉛を含有量1〜10wt%の範囲で含有したアルミニウムからなる請求項1又は2に記載の鋼製部材防蝕用塗料。
- アルミニウム粉末が、Mgを含有量1〜5wt%の範囲で含有したアルミニウムからなる請求項1〜3のいずれかに記載の鋼製部材防蝕用塗料。
- アルミニウム粉末が、純度99.0wt%以上の純アルミニウムからなる請求項1又は2に記載の鋼製部材防蝕用塗料。
- アルミニウム粉末の最大径が3〜120μmの範囲内である請求項1〜5のいずれかに記載の鋼製部材防蝕用塗料。
- 塗膜層が鋼製部材の自然電位を鋼腐蝕電位より50mV以上卑とする請求項1〜6のいずれかに記載の鋼製部材防蝕用塗料。
- アルミニウム粉末が、塗膜層中に55〜97wt%含有される請求項1〜7のいずれかに記載の鋼製部材防蝕用塗料。
- 塗膜形成成分が、無機系樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、及びスチレン系樹脂塗料から選ばれた1種又は2種以上である請求項1〜8のいずれかに記載の鋼製部材防蝕用塗料。
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JP2008516023A (ja) * | 2004-10-08 | 2008-05-15 | フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト | 金属表面の被覆方法 |
WO2012148016A1 (ko) * | 2011-04-26 | 2012-11-01 | 해동메탈(주) | 낮은 부식전위를 가지는 선박 부식방지용 희생 양극 |
JP2014031505A (ja) * | 2012-07-11 | 2014-02-20 | Dainippon Toryo Co Ltd | 防錆塗料、防錆塗膜、及び防錆積層塗膜 |
-
2003
- 2003-08-21 JP JP2003297908A patent/JP2005068253A/ja active Pending
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JP2018048332A (ja) * | 2012-07-11 | 2018-03-29 | 大日本塗料株式会社 | 防錆塗料、防錆塗膜、及び防錆積層塗膜 |
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