(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態(請求項1〜6、16、17に対応)を図面に基づいて説明する。
まず、図1〜図4に基づいて、本発明の一実施の形態に係る車両用表示装置1の構成及び各構成要素の主な機能について説明する。ここで、図1は車両用表示装置1の構成を示す説明図であり、図2〜図3は、フロントガラス101上に表示される運転支援画像の内容を示す説明図である。また、図4は、運転支援画像の表示タイミングを示すグラフである。
図1に示すように、車両用表示装置1は、運転支援を行う車両制御部(運転支援手段)10を備える車両Pに搭載され、当該運転支援の内容が描かれた運転支援情報を、車両Pのフロントガラス101上に意識的な知覚限界値よりも低く、無意識的な知覚の範囲内(以下「閾下知覚の範囲内」と称する)で表示するものである。そして、当該車両用表示装置1は、表示制御部11と、ヘッドアップディスプレイ(表示手段)12を備える。
車両制御部10は、図示しない前方認識装置(例えば、レーザレーダやカメラ等)と、車速センサを備える。
また、カメラにより車両Pの前方を撮影し、当該撮影により得られた画像信号を処理して、車両Pの前方に存在する白線(目標物)の位置(目標物の状態)を検出する。
また、レーザレーダにより車両Pの前方をスキャニングし、当該スキャニングにより先行車両(目標物)が検出された場合には、先行車両の形状、先行車両の位置及び先行車両の車両Pに対する相対車速(目標物の状態)を検出する。また、車速センサにより車両Pの速度を検出する。
そして、当該検出された車両P前方の白線の位置、車両Pの速度、先行車両の形状、位置、及び相対速度に関する車両信号を生成して、表示制御部11に出力する。
また、当該検出された白線の位置に基づいて操舵制御を行うことにより、車両Pを走行路に敷設されたレーン内に保持する(レーンキープ制御)。
また、当該検出された車両Pの速度が予め定められた設定速度になるように、車両Pの速度を調整する。さらに、先行車両が検出された場合には、検出された先行車両の位置及び相対車速に基づいて、車両Pの速度を調整する(車間距離制御(ACC制御))。
また、当該検出された車両P前方の白線の位置、車両Pの速度、先行車両の形状、位置、及び相対速度に基づいて、演算結果レベル値を算出する。なお、当該演算結果レベル値は、運転支援の内容に応じて算出される。即ち、レーンキープ制御を行う場合と、車間距離制御を行う場合とで、別々の演算結果レベル値を算出する。
また、運転支援の内容に応じて設定された制御しきい値を図示しないメモリに保存しており、演算結果レベル値を算出した場合には、当該演算結果レベル値に対応する制御しきい値をメモリから取得する。そして、演算結果レベル値が当該制御しきい値を越えた際に、当該制御しきい値に対応する運転支援を開始する。
また、当該算出された演算結果レベル値に関する演算結果レベル値信号を生成し、表示制御部11に出力する。また、運転支援を開始する際に車両制御開始信号を生成し、表示制御部11に出力する。
表示制御部11は、図示しないメモリを備えており、当該メモリに運転支援の内容に対応する表示しきい値を保存する。
また、車両制御部10から与えられた演算結果レベル値信号に基づいて、演算結果レベル値と、当該演算結果レベル値に対応する運転支援の内容を認識する。そして、当該認識された運転支援の内容に対応する表示しきい値をメモリから取得し、演算結果レベル値が表示しきい値を越えた際に、表示開始信号を生成してヘッドアップディスプレイ12に出力する。
さらに、車両制御部10から与えられた車両信号に基づいて運転支援画像信号(後述する運転支援画像をヘッドアップディスプレイ12に表示させるための信号)を生成し、閾下知覚の範囲内の出力タイミングでヘッドアップディスプレイ12に出力する。
具体的には、運転支援画像信号を所定時間(当該所定時間は、閾下知覚の範囲内の時間となる)毎に表示時間(当該時間は、15〜100〔msec〕程度となるが、閾下知覚の範囲内で極力短くすることが望ましい)の間出力する。その後、車両制御部10から車両制御開始信号を与えられた場合に、運転支援画像信号の出力を停止する。
ヘッドアップディスプレイ12は、表示体121と、反射体122を備える。表示体121は、車両Pのインストルメントパネル102内部に設けられ、表示制御部11から表示開始信号を与えられた後に以下の処理を行う。
即ち、表示制御部11から運転支援画像信号を与えられている間、当該運転支援画像信号に対応する運転支援画像を表示する。ここで、表示制御部11は、運転支援画像信号を閾下知覚の範囲内の出力タイミングで出力するので、表示体121は、運転支援画像を閾下知覚の範囲内で表示する。また、当該表示に伴って表示体121から発せられた光は、反射体122に入射される。したがって、表示体121は、運転支援画像を閾下知覚の範囲内で反射体122に投影することとなる。
反射体122は、フロントガラス101上に設けられ、表示体121から投影された運転支援画像を反射する。そして、当該反射された光は、車両Pの乗員(使用者)の目105aに入射される。したがって、当該乗員にとっては、運転支援画像が反射体122上、即ちフロントガラス101上に表示されているように見える。これにより、ヘッドアップディスプレイ12は、フロントガラス101上に運転支援画像を表示するので、乗員にとっては、運転支援画像に対応する虚像が領域Xに存在するように見える。
次に、運転支援画像の内容を図2〜図3に基づいて説明する。図2は、レーンキープ制御が行われる場合にフロントガラス101上に表示される運転支援画像を示し、図3は、車間距離制御が行われる場合にフロントガラス101上に表示される運転支援画像を示す。
図2に示すように、運転支援がレーンキープ制御である場合、運転支援画像には、レーンキープ制御の内容(運転支援の内容)(例えば、操舵方向)が描かれた内容表示画像や、白線画像が含まれる。なお、図2では、運転支援画像として白線画像110が表示されている場合を示している。なお、運転支援画像として白線画像110が表示される場合、当該白線画像110のフロントガラス101上での表示位置及び白線画像110の形状は、車両制御部10により検出された白線の位置(目標物の状態)に応じて異なる(例えば、後述する第6の変形例参照)。
一方、図3に示すように、運転支援が車間距離制御である場合、運転支援画像には、車間距離制御の内容(運転支援の内容)(例えば、減速または加速)が描かれた内容表示画像や、先行車両画像が含まれる。なお、図3では、運転支援画像として、車間距離制御の内容が描かれた内容表示画像111が表示される場合を示している。また、運転支援画像として先行車両画像が表示される場合、当該先行車両画像のフロントガラス101上での表示位置及び先行車両画像の形状は、車両制御部10により検出された先行車両の位置及び形状に応じて異なる(例えば、後述する第6の変形例参照)。
次に、図4に基づいて、表示しきい値と制御しきい値の関係及び運転支援画像の表示タイミングについて説明する。ここで、図4中、曲線10aは演算結果レベル値と時刻との関係を示し、直線10bは制御しきい値の大きさを示し、直線10cは表示しきい値の大きさを示す。
図4に示すように、制御しきい値は表示しきい値よりも大きい。したがって、運転支援が行われる場合、演算結果レベル値はまず表示しきい値を越え、その後制御しきい値を越えることとなる。したがって、表示制御部11は、運転支援が開始される前に運転支援画像信号を出力するので、ヘッドアップディスプレイ12は、運転支援が開始される前に、運転支援画像をフロントガラス101上に表示する。例えば、図4に示すように、演算結果レベル値が時刻t1で表示しきい値を超え、時刻t4で制御しきい値を超えた場合には、時刻t0から時刻t1までの間(時間T)、運転支援画像をフロントガラス101上に表示する。
次に、車両用表示装置1による処理の手順を図5に示すフローチャートに沿って説明する。
図5に示すステップS10にて、車両用表示装置1がオンされると、ステップS11にて、車両制御部10は、カメラにより車両Pの前方を撮影し、当該撮影により得られた画像信号を処理して、車両Pの前方に存在する白線の位置を検出する。
また、レーザレーダにより車両Pの前方をスキャニングし、当該スキャニングにより先行車両が検出された場合には、先行車両の位置、形状及び相対車速を検出する。また、車速センサにより車両Pの速度を検出する。
次いで、当該検出された車両P前方の白線の位置、車両Pの速度、先行車両の位置、形状及び相対速度に関する車両信号を生成して、表示制御部11に出力する。
次いで、当該検出された車両P前方の白線の位置、車両Pの速度、先行車両の位置、形状、及び相対速度に基づいて、運転支援の内容に対応する演算結果レベル値を算出する。
次いで、当該算出された演算結果レベル値に関する演算結果レベル値信号を生成し、表示制御部11に出力する。
次いで、表示制御部11は、車両制御部10から与えられた演算結果レベル値信号に基づいて、演算結果レベル値と、当該演算結果レベル値に対応する運転支援の内容を認識する。
次いで、当該認識された運転支援の内容に対応する表示しきい値をメモリから取得し、演算結果レベル値が当該表示しきい値を超えたかどうかを判断する。この結果、超えた場合にはステップS12に進み、超えない場合(ステップS11にてNO)には、ステップS11の処理を繰り返す。
ステップS12にて、表示制御部11は、表示開始信号を生成してヘッドアップディスプレイ12に出力する。一方、車両制御部10から与えられた車両信号に基づいて運転支援画像信号を生成して、閾下知覚の範囲内の出力タイミングでヘッドアップディスプレイ12に出力する。
次いで、ヘッドアップディスプレイ12は、表示制御部11から表示開始信号を与えられた後、当該表示制御部11から与えられた運転支援画像信号に対応する運転支援画像を閾下知覚の範囲内でフロントガラス101上に表示する。
次いで、車両制御部10は、ステップS11の処理において算出された演算結果レベル値に対応する制御しきい値をメモリから取得し、当該演算結果レベル値が当該制御しきい値を超えたかどうかを判断する。この結果、超えた場合には、車両制御開始信号を生成して表示制御部11に出力し、表示制御部11は、車両制御部10から車両制御開始信号を与えられた際に、運転支援画像信号の出力を停止する。これにより、ヘッドアップディスプレイ12は、運転支援画像の表示を停止する。その後、ステップS13に進む。一方、演算結果レベル値が制御しきい値を超えない場合には、ステップS11に戻る。
ステップS13にて、車両制御部10は、当該制御しきい値に対応する運転支援を行う。例えば、ステップS12の処理において、演算結果レベル値が車間距離制御に対応する制御しきい値を超えた場合には、車間距離制御を行う。
次いで、ステップS14にて、車両制御部10は、運転支援が終了したかどうかを判断し、終了した場合にはステップS15に進み、終了しない場合(ステップS14にてNO)にはステップS13に戻る。
ステップS15にて、車両用表示装置1は、当該車両用表示装置1がオフされた場合には本処理を終了し、オン状態が継続されている場合(ステップS15にてNO)には、ステップS11に戻る。
次に、運転支援画像の表示タイミングを図6に示すタイミングチャートに沿って説明する。
まず、時刻t1までは、演算結果レベル値が当該演算結果レベル値に対応する表示しきい値を超えないので、ヘッドアップディスプレイ12は運転支援画像を表示しない。
その後、時刻t1にて演算結果レベル値が当該演算結果レベル値に対応する表示しきい値を超えると、表示制御部11は、表示開始信号及び運転支援画像信号を生成してヘッドアップディスプレイ12に出力する。ここで、表示制御部11は、運転支援画像信号を表示時間の間出力し続ける。これにより、ヘッドアップディスプレイ12は、運転支援画像信号を表示時間の間フロントガラス101上に表示し続ける。
その後、時刻t2(時刻t1から時刻t2までの時間は、閾下知覚の範囲内の時間となる)にて、表示制御部11は、運転支援画像信号を表示時間の間出力し続ける。これにより、ヘッドアップディスプレイ12は、運転支援画像信号を表示時間の間フロントガラス101上に表示し続ける。
その後、表示制御部11は、時刻t4にて車両制御部10から車両制御開始信号を与えられて運転支援画像信号の出力を停止するまで、同様の出力タイミングで運転支援画像信号を出力する。
以上により、本第1の実施の形態では、車両用表示装置1は、運転支援の内容が描かれた運転支援画像を閾下知覚の範囲内で表示するので、車両Pの乗員は、煩わしさを感じることなく運転支援画像の内容を把握することができる。
また、乗員が運転支援画像の内容を把握する前に運転支援が開始されると、乗員が戸惑う可能性がある。しかし、車両用表示装置1は、運転支援が開始される前に運転支援画像を表示するので、乗員は、運転支援が開始される前に運転支援の内容を把握することができる。これにより、運転支援が開始された際に乗員が戸惑うことを防止することができる。
次に、車両用表示装置1の第1の変形例を図7に基づいて説明する。ここで、図7は、運転支援画像の表示タイミングを示したタイミングチャートである。
図7に示すように、本変形例では、表示制御部11は、表示開始信号を出力してから現在までの時間、即ち運転支援画像の表示を開始してから現在までの時間に応じて、運転支援画像信号の出力時間を閾下知覚の範囲内で長くする。例えば、時刻t1では15〔msec〕の間出力し、時刻t2では30〔msec〕の間出力し、時刻t3では60〔msec〕の間出力する。これにより、ヘッドアップディスプレイ12は、表示開始信号を出力してから現在までの時間に応じて、運転支援画像の表示時間を閾下知覚の範囲内で長くする。
本第1の変形例によれば、運転支援画像の表示が開始されてから現在までの時間に応じて運転支援画像の表示時間が長くなるので、乗員は、運転支援画像の表示が開始されてから現在までの時間を把握することができる。特に、本実施の形態では、運転支援開始前に運転支援画像の表示を開始するので、運転支援開始時刻までのおおよその時間を把握することができる。
なお、表示開始信号を出力してから現在までの時間に応じて、運転支援画像の出力時間を短くしても、同様の効果を得ることができる。
次に、車両用表示装置1の第2の変形例を図8及び図9に基づいて説明する。ここで、図8は、運転支援画像の表示タイミングを示したタイミングチャートであり、図9は、車間距離制御の内容が描かれた内容表示画像111a〜111cが運転支援画像としてフロントガラス101上に表示されている様子を示している。
図8〜図9に示すように、本第2の変形例では、表示制御部11は、表示開始信号を出力してから現在までの時間、即ち、運転支援画像の表示を開始してから現在までの時間に応じて運転支援画像の表示サイズが閾下知覚の範囲内で大きくなるように、運転支援画像データを生成して出力する。これにより、ヘッドアップディスプレイ12により表示される運転支援画像の表示サイズは、運転支援画像の表示を開始してから現在までの時間に応じて大きくなる。
例えば、ヘッドアップディスプレイ12は、図8に示す時刻t1では、図9(a)に示す内容表示画像111aを表示し、図8に示す時刻t2では、図9(b)に示すように、図9(a)に示す内容表示画像111aよりも大きい表示サイズの内容表示画像111bを表示する。その後、図8に示す時刻t3では、図9(c)に示すように、図9(b)に示す内容表示画像111bよりも大きい表示サイズの内容表示画像111cを表示する。
本第2の変形例によれば、運転支援画像の表示が開始されてから現在までの時間に応じて運転支援画像の表示サイズが大きくなるので、乗員は、運転支援画像の表示が開始されてから現在までの時間を把握することができる。特に、本実施の形態では、運転支援開始前に運転支援画像の表示を開始するので、運転支援開始時刻までのおおよその時間を把握することができる。
なお、表示開始信号を出力してから現在までの時間に応じて、運転支援画像の表示サイズを小さくしても、同様の効果を得ることができる。
次に、車両用表示装置1の第3の変形例を図10及び図11に基づいて説明する。ここで、図10は、運転支援画像の表示タイミングを示したタイミングチャートであり、図11は、車間距離制御の内容が描かれた内容表示画像111d〜111fが運転支援画像としてフロントガラス101上に表示されている様子を示している。
図10〜図11に示すように、本第3の変形例では、表示制御部11は、表示開始信号を出力してから現在までの時間、即ち、運転支援画像の表示を開始してから現在までの時間に応じて運転支援画像の表示輝度が閾下知覚の範囲内で大きくなるように、運転支援画像データを生成して出力する。これにより、ヘッドアップディスプレイ12により表示される運転支援画像の表示輝度は、運転支援画像の表示を開始してから現在までの時間に応じて大きくなる。
例えば、ヘッドアップディスプレイ12は、図10に示す時刻t1では、図11(a)に示す内容表示画像111dを表示し、図10に示す時刻t2では、図11(b)に示すように、図11(a)に示す内容表示画像111dよりも大きい表示輝度の内容表示画像111eを表示する。その後、図10に示す時刻t3では、図11(c)に示すように、図11(b)に示す内容表示画像111eよりも大きい表示輝度の内容表示画像111fを表示する。なお、図11では、表示輝度の変化を、網掛けの濃度変化により示している。
本第3の変形例によれば、運転支援画像の表示が開始されてから現在までの時間に応じて運転支援画像の表示輝度が大きくなるので、乗員は、運転支援画像の表示が開始されてから現在までの時間を把握することができる。特に、本実施の形態では、運転支援開始前に運転支援画像の表示を開始するので、運転支援開始時刻までのおおよその時間を把握することができる。
なお、表示開始信号を出力してから現在までの時間に応じて、運転支援画像の表示輝度を小さくしても、同様の効果を得ることができる。
次に、車両用表示装置1の第4の変形例を図12に基づいて説明する。ここで、図12は、車間距離制御の内容が描かれた内容表示画像111g〜111hが運転支援画像としてフロントガラス101上に表示されている様子を示している。
図12に示すように、本第4の変形例では、表示制御部11は、運転支援画像の内容に応じて異なる表示色で運転支援画像が表示されるように、運転支援画像信号を生成して出力する。これにより、ヘッドアップディスプレイ12により表示される運転支援画像の表示色は、運転支援画像の内容に応じて変更される。
例えば、車両Pが減速される場合には、ヘッドアップディスプレイ12は赤色の内容表示画像111gを表示し、車両Pが加速される場合には、青色の内容表示画像111hを表示する。
本第4の変形例によれば、運転支援画像の内容に応じて運転支援画像の表示色が変更されるので、乗員は、運転支援画像の内容を容易に把握することができる。
次に、車両用表示装置1の第5の変形例を図13〜図15に基づいて説明する。ここで、図13は運転者の目の位置を検出する方法を示した平面図であり、図14〜図15は、当該方法を示した側面図である。
図13に示すように、本第5の変形例に係る車両用表示装置1は、車両制御部10、表示制御部11、及びヘッドアップディスプレイ12の他、目位置検出部13を備える。
目位置検出部13は、図13〜図14に示すように、ルームミラー103に設けられ、運転者(使用者)の目の位置を、ルームミラー103の設置位置を原点としたXYZ空間上の座標点(X1、Y1、Z1)として検出する。
具体的には、ルームミラー103の水平方向の回転角度αと、上下方向の回転角度βを検出する。さらに、以下の式(1)〜(4)により、Y1及びZ1を算出する。なお、X1は、水平面上でのルームミラー103から運転席までの距離となるので、車両Pの内部構造に対応する定数となる。したがって、X1の値は予め目位置検出部13のメモリ(図示省略)に記憶される。
Y1=X1/tanθY …(1)
Z1=Y1*tanθZ …(2)
θY=2*α …(3)
θZ=2*β …(4)
そして、当該検出された目の位置に関する目位置信号を生成して表示制御部11に出力する。
表示制御部11は、上述した処理の他、以下の処理を行う。即ち、目標物(先行車両または白線)画像を含む運転支援画像を生成する場合、運転支援画像信号を生成する際に、車両制御部10から与えられた車両信号に基づいて、目標物の位置を上述したXYZ空間上の座標点(X2、Y2、Z2)として算出する。
そして、目位置検出部13から与えられた目位置信号に基づいて運転者の目の位置を認識し、当該認識された目の位置と、当該算出された目標物の位置に基づいて、図15に示すように、フロントガラス101上での運転支援画像の表示位置Rを上述したXYZ空間上の座標点(X3、Y3、Z3)として算出する。なお、当該表示位置Rは、目位置検出部13により検出された目の位置と目標物の位置とを結ぶ直線がフロントガラス101と交差する位置となる。
ここで、X3、Y3、Z3の算出方法について説明する。即ち、Z3について、以下の式(5)〜式(8)が成立する。
Z3=H*(L−L1)/L …(5)
H=Z1−Z2 …(6)
L=Y1−Y2 …(7)
L1=Y1−Y3 …(8)
また、Z1、Z2についても同様の式が成り立つので、これらの式に基づいて、X3、Y3、Z3を算出することができる。
さらに、運転支援画像に含まれる目標物画像の形状を目標物の種類及び位置に基づいて決定する。そして、当該決定された形状の目標物画像を表示位置Rに表示させるための運転支援画像信号を生成して、ヘッドアップディスプレイ12に出力する。したがって、ヘッドアップディスプレイ12は、当該決定された形状の目標物画像を表示位置Rに表示する。
以上により、第5の変形例では、ヘッドアップディスプレイ12は、目位置検出部13により検出された目の位置と目標物の位置とを結ぶ直線がフロントガラス101と交差する位置に、当該目標物の種類及び位置に対応した形状の目標物画像を表示することができる。
これにより、運転支援画像に目標物画像が含まれる場合、運転者が認識する目標物の実際の形態(当該形態は、例えば、フロントガラス101上での位置、形状等を意味する。以下同じ)と、運転者が認識する目標物画像の形態とが一致するので、運転者にとっては、目標物と目標物画像とが重なって見える。したがって、運転者は、運転支援画像の内容と車両P前方の光景との対応付けを容易に行うことができる。よって、運転者は、運転支援画像の内容を容易に把握することができるので、運転支援の内容を容易に把握することができる。
特に本第5の変形例では、目標物の種類及び位置に応じた形状の目標物画像を表示するので、運転者が認識する目標物の実際の形態と、運転者が認識する目標物画像の形態とがより正確に一致するので、運転者は、運転支援画像の内容と車両P前方の光景との対応付けをより容易に行うことができる。したがって、運転支援の内容を容易に把握することができる(例えば、運転支援画像が白線画像であれば運転支援は、レーンキープ制御となる)。
なお、本第5の変形例では、運転者の目の位置と目標物の位置とを結ぶ直線がフロントガラス101と交差する位置に、当該目標物画像を表示することとしたが、他の乗員の目の位置と目標物の位置とを結ぶ直線がフロントガラス101と交差する位置に、当該目標物画像を表示するようにしても良い。この場合、目位置検出部13は、当該他の乗員の目の位置を検出する。
次に、車両用表示装置1の第6の変形例について図16に基づいて説明する。図16に示すように、車両用表示装置1は、第5の変形例に係る車両用表示装置1に、ステアリング106、運転席107、及びペダル108の位置を変更、設定する可動装置14を備えさせたものである。この可動装置14によりステアリング106、運転席107、及びペダル108の位置を変更、設定することで、運転者の乗車位置、即ち運転者の目の移動範囲105を固定することができる。
以上により、第6の変形例では、運転者の目の移動範囲105を固定することができるので、運転者がフロントガラス101を視認した場合に、運転者が認識する目標物の実際の形態と、運転者が認識する目標物画像の形態とのずれを小さくすることができる。
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態(請求項7〜9、11、13〜15、18、19に対応)を図面に基づいて説明する。まず、図17〜図19に基づいて、本第2の実施の形態に係る車両用表示装置2の構成及び各構成要素の主な機能について説明する。ここで、図17は、車両用表示装置2の構成を示したブロック図であり、図18は、グラフィックディスプレイ25の設置位置を示した説明図であり、図19は、画像縮小変換の様子を示した説明図である。
図17〜図18に示すように、車両用表示装置2は、レーンキープ制御を行うレーンキープ制御装置23を備える車両Qに搭載され、当該レーンキープ制御の内容が描かれた運転支援情報を、車両Qのコンビメータ251内に設けられたグラフィックディスプレイ25に閾下知覚の範囲内で表示するものである。
車両用表示装置2は、ECU(車両情報検出手段)20と、GPS受信機21と、ナビゲーション装置(曲率算出手段)22と、レーンキープ制御装置(運転支援手段)23と、表示制御装置(目標物追尾状態監視手段)24と、グラフィックディスプレイ(表示手段)25を備える。
ECU20は、図示しない車速センサ及びヨーレートセンサを備え、これらのセンサにより車両Qの車速及びヨーレート(車両の状態)を検出し、当該検出された車速及びヨーレートに関する車両情報信号を生成して表示制御装置24に出力する。なお、ECU20を、車両の状態として他の状態(例えば、加速度または舵角)を検出するようにしても良い。
GPS(Global Positioning System)受信機21は、図示しないGPS衛星から送信されたGPS信号を受信してナビゲーション装置22に出力する。
ナビゲーション装置22は、図示しない地図データベースを備える。ここで、地図データベースには、レーンキープ制御装置23がレーンキープ制御を停止する可能性のあるカーブ(以下、「制御停止カーブ」と称する)の位置及び当該カーブの入り口における曲率が保存されている。なお、制御停止カーブは、一般的に曲率の大きなカーブとなる。
ナビゲーション装置22は、GPS受信機21から与えられたGPS信号に基づいて車両Qの現在位置を算出し、当該算出された現在位置及び地図データベースに基づいて、車両Qの進行方向前方に制御停止カーブが存在するかどうかを判断する。この結果、存在すると判断した場合には、車両Qから当該制御停止カーブまでの距離を算出する。そして、当該制御停止カーブの入り口の曲率及び当該算出された距離に関する制御停止カーブ信号を生成して表示制御装置24に出力する。
レーンキープ制御装置23は、カメラ231と、画像処理装置232と、レーンキープコントロールユニット233と、ステアリングアクチュエータ234と、信号音発生装置235を備える。
カメラ231は、車両Qの前方を撮影し、当該撮影により得られた画像信号を画像処理装置232に出力する。
画像処理装置232は、カメラ231から与えられた画像信号を処理して、車両Qの前方に存在する白線(目標物)の位置(目標物の状態)を3次元座標として検出する。そして、当該検出された白線の位置に関する白線信号を生成してレーンキープコントロールユニット233に出力する。
レーンキープコントロールユニット233は、画像処理装置232から与えられた白線信号を表示制御装置24に出力する一方、当該白線信号に基づいて、車両Qを走行路に敷設されたレーン内に保持するために必要な操舵量を決定する。そして、当該決定された操舵量に関する操舵量信号を生成してステアリングアクチュエータ234に出力する。
また、画像処理装置232が白線の位置を検出しなかった場合(以下、「白線をロストした場合」と称する)や、当該決定された操舵量が所定の操舵量(当該所定の操舵量は予め設定される)を超えた場合には、制御停止信号を生成して、ステアリングアクチュエータ234及び表示制御装置24に出力する。また、これと同時に、発生命令信号を生成して信号音発生装置235に出力する。
ステアリングアクチュエータ234は、レーンキープコントロールユニット233から与えられた操舵量信号に基づいて、車両Qを走行路に敷設されたレーン内に保持するために必要な操舵量だけステアリングを操舵する。これにより、レーンキープ制御を行う。
また、レーンキープコントロールユニット233から制御停止信号を与えられた場合には、ステアリング操舵を停止する。これにより、レーンキープ制御を停止する。
信号音発生装置235は、レーンキープコントロールユニット233から発生命令信号を与えられた際に、信号音を発生させる。これにより、車両Qの乗員にレーンキープ制御が停止された旨を提示する。
表示制御装置24は、レーンキープコントロールユニット233から制御停止信号を与えられた場合には、ECU20から与えられた車両情報信号及びレーンキープコントロールユニット233から与えられた白線信号に基づいた外挿計算により、白線の現在位置を3次元座標として算出する。そして、当該算出された3次元座標を運転者の視野座標に変換し、図19に示すように、当該変換された3次元座標を運転者前面の仮想投影面252に投影する。さらに、当該投影されることにより得られた3次元座標をグラフィックディスプレイ25の表示サイズ253に縮小することで、白線画像の形態を算出する。さらに、当該形態の白線画像を生成する。
さらに、必要に応じてレーンキープ制御の内容が描かれた内容表示画像を生成し、当該生成された白線画像及び内容表示画像を運転支援画像とする。そして、当該運転支援画像をグラフィックディスプレイ25に表示させるための運転支援画像信号を生成して閾下知覚の範囲内の出力タイミングでグラフィックディスプレイ25に出力する。
また、レーンキープコントロールユニット233から制御停止信号を与えられない場合には、ナビゲーション装置22から与えられた制御停止カーブ信号、及びECU20から与えられた車両情報信号に基づいて、車両Qから制御停止カーブまでの距離及び車速を認識する。
そして、当該認識された距離及び車速と、ナビゲーション装置22の検出誤差に基づいて、制御停止カーブに進入するまでの残り時間を算出する。
そして、当該残り時間が所定の基準時間(当該基準時間は予め定められる)未満となった場合には、レーンキープ制御装置23によるレーンキープ制御が悪化するかまたはレーンキープ制御装置23が白線をロストすると予測する。なお、本第2の実施の形態及び後述する第3の実施の形態において、「悪化」とは、例えば、運転支援(レーンキープ制御または車間距離制御)の精度が悪化することを意味する。
そして、当該予測がなされた場合には、ECU20から与えられた車両情報信号に基づいて、車両Qが現在走行している道路の曲率を算出する一方、ナビゲーション装置22から与えられた制御停止カーブ信号に基づいて、制御停止カーブの曲率を認識する。
そして、制御停止カーブの曲率と車両Qが現在走行している道路の曲率とが所定の誤差範囲(当該誤差範囲については、予め定められる)内で一致した場合には、車両Qが当該制御停止カーブに進入したものとして、上述した方法により運転支援画像を生成する。そして、閾下知覚の範囲内の出力タイミングでグラフィックディスプレイ25に出力する。
グラフィックディスプレイ25は、図18に示すように、コンビメータ251内に設けられたディスプレイである。なお、グラフィックディスプレイ25は、他のディスプレイ、例えば、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、網膜投射型ディスプレイ、またはダッシュボードに設置されたディスプレイであってもよい。
そして、グラフィックディスプレイ25は、表示制御装置24から運転支援画像信号を与えられている間、当該運転支援画像信号に対応する運転支援画像を表示する。ここで、表示制御装置24は、運転支援画像信号を閾下知覚の範囲内の出力タイミングで出力するので、グラフィックディスプレイ25は、運転支援画像を閾下知覚の範囲内の表示タイミングで表示する。
次に、車両用表示装置2による処理の手順を図20に示すフローチャートに沿って説明する。
車両用表示装置2がオンされると、ステップS20にて、ECU20、GPS受信機21、ナビゲーション装置22、及びレーンキープ制御装置23は、上述した処理を行う。
次いで、表示制御装置24は、レーンキープコントロールユニット233から制御停止信号が与えられたかどうかを判断する。この結果、与えられた場合にはステップS21に進み、与えられない場合(ステップS20にてNO)には、ステップS22に進む。
ステップS21にて、レーンキープ制御装置23は、レーンキープ制御を停止する。一方、表示制御装置24は、ECU20から与えられた車両情報信号及びレーンキープコントロールユニット233から与えられた白線信号に基づいた外挿計算により、白線の現在位置を3次元座標として算出する。次いで、上述した処理により白線の現在位置に対応する白線画像を生成する。さらに、必要に応じてレーンキープ制御の内容が描かれた内容表示画像を生成し、当該生成された白線画像及び内容表示画像を運転支援画像とする。
次いで、当該運転支援画像をグラフィックディスプレイ25に表示させるための運転支援画像信号を生成して閾下知覚の範囲内の出力タイミングでグラフィックディスプレイ25に出力する。
次いで、グラフィックディスプレイ25は、表示制御装置24から運転支援画像信号を与えられている間、当該運転支援画像信号に対応する運転支援画像を表示する。即ち、運転支援画像を閾下知覚の範囲内の表示タイミングで表示する。その後、ステップS22に進む。
ステップS22にて、表示制御装置24は、グラフィックディスプレイ25が運転支援画像を表示しているかどうかを判断する。この結果、表示している場合にはステップS24に進み、表示していない場合(ステップS22にてNO)にはステップS23に進む。
ステップS23にて、表示制御装置24は、白線ロスト予測に基づく白線表示処理を行う。具体的には、ステップS231〜ステップS233の処理を行う。
ステップS231にて、表示制御装置24は、ナビゲーション装置22から与えられた制御停止カーブ信号、及びECU20から与えられた車両情報信号に基づいて、車両Qから制御停止カーブまでの距離及び車速を認識する。
次いで、当該認識された距離及び車速と、ナビゲーション装置22の検出誤差に基づいて、制御停止カーブに進入するまでの残り時間を算出し、当該算出された残り時間と所定の基準時間とを比較する。
この結果、残り時間が所定の基準時間未満となった場合には、レーンキープ制御装置23によるレーンキープ制御が悪化するかまたはレーンキープ制御装置23が白線をロストすると予測して、ステップS232に進む。一方、残り時間が基準時間以上となる場合には、ステップS20に戻る。
次いで、ステップS232にて、表示制御装置24は、ECU20から与えられた車両情報信号に基づいて、車両Qが現在走行している道路の曲率を算出する一方、ナビゲーション装置22から与えられた制御停止カーブ信号に基づいて、制御停止カーブの曲率を認識する。
次いで、制御停止カーブの曲率と車両Qが現在走行している道路の曲率とを比較する。この結果、これらが所定の誤差範囲内で一致した場合にはステップS233に進み、一致しない場合(ステップS232にてNO)には、車両用表示装置2は本処理を終了する。
ステップS233にて、表示制御装置24は、上述した方法により運転支援画像を生成して、閾下知覚の範囲内の出力タイミングでグラフィックディスプレイ25に出力する。
次いで、グラフィックディスプレイ25は、表示制御装置24から運転支援画像信号を与えられている間、当該運転支援画像信号に対応する運転支援画像を表示する。即ち、運転支援画像を閾下知覚の範囲内の表示タイミングで表示する。その後、車両用表示装置2は、運転支援画像の表示を閾下知覚の範囲内で継続させた状態で、本処理を終了する。
一方、上述したステップS22の処理において、グラフィックディスプレイ25が運転支援画像を表示していると判断された場合には、ステップS24にて、表示制御装置24は以下の処理を行う。
即ち、グラフィックディスプレイ25がステップS21の処理により運転支援画像を表示している場合には、運転支援画像の表示が開始されてから所定の表示継続時間(当該表示継続時間は予め定められる)経過した際に、運転支援画像信号の出力を停止する。これにより、グラフィックディスプレイ25は、運転支援画像の表示を停止する。その後、車両用表示装置2は本処理を終了する。なお、この時点で、レーンキープ制御装置23は、レーンキープ制御を再開する。
一方、グラフィックディスプレイ25がステップS233の処理により運転支援画像を表示している場合(車両用表示装置2が、運転支援画像の表示を閾下知覚の範囲内で継続させた状態で前回のステップS233の処理を終了した場合)には、ECU20から与えられた車両情報信号に基づいて、車両Qが直進しているかどうかを判断する。この結果、直進している場合には、白線のロストが回避されたものとして、運転支援画像信号の出力を停止する。これにより、グラフィックディスプレイ25は、運転支援画像の表示を停止する。なお、この時点で、レーンキープ制御装置23は、レーンキープ制御を再開する。
一方、直進していない場合には、車両用表示装置2は、運転支援画像の表示を継続させた状態で、本処理を終了する。
以上により、本第2の実施の形態では、グラフィックディスプレイ25は、レーンキープ制御装置23がレーンキープ制御を停止する際(具体的には、停止された後)に、白線画像を運転支援画像に含めて閾下知覚の範囲内で表示する(図20に示すステップS21参照)。
これにより、運転者は、レーンキープ制御が停止される際に、運転支援画像を煩わしく感じることなく、運転支援画像の内容、即ち車両Q前方に白線が存在することを把握することができる。
なお、従来では、レーンキープ制御が停止される際に、信号音発生装置235により信号音を発生させ、且つグラフィックディスプレイ25にレーンキープ制御が停止される旨を表示していた。しかし、この方法では、運転者にとっては、まず信号音が何を意味しているのかを確認した上で、グラフィックディスプレイ25の表示内容を確認することで、レーンキープ制御が停止されることを確認する必要がある。したがって、運転者にとっては、レーンキープ制御が停止されたことを迅速に把握することが容易でない場合が生じうるので、手動によるステアリング操舵を迅速に再開することが容易でない場合が生じうる。
しかし、本第2の実施の形態では、運転者は、レーンキープ制御が停止される際に、運転支援画像を煩わしく感じることなく、運転支援画像の内容、即ち車両Q前方に白線が存在することを把握することができる。したがって、運転者は、レーンキープ制御が停止された後に、手動によるステアリング操舵を迅速且つ的確に再開することができる。
また、グラフィックディスプレイ25に表示された白線画像の形態は、レーンキープ制御装置23により検出された白線の位置に基づいて算出されるので、運転者は、車両Q前方に存在する白線の現在位置を容易に把握することができる。なお、本第2の実施の形態では、表示制御装置24は、外挿計算により白線画像の形態を算出したので、運転者が認識する白線画像の形態と、運転者が認識する白線の実際の形態とが異なる場合がある。しかし、白線画像は閾下知覚の範囲内で表示されるので、このような場合であっても、運転者に混乱を生じさせることはない。また、白線画像の形態は外挿計算により算出されるので、このような場合であっても、運転者が認識する白線画像の形態と、運転者が認識する白線の実際の形態との誤差は小さい。よって、このような場合であっても、上述した効果を得ることができる。なお、外挿計算は簡易な計算方法であるので、白線画像の形態を効率的に算出することができるという効果も得ることができる。
また、表示制御装置24は、レーンキープ制御装置23によるレーンキープ制御が悪化するかまたはレーンキープ制御装置23が白線をロストすると予測し、グラフィックディスプレイ25は、当該予測がなされた場合には、運転支援画像を表示する(図20に示すステップS23参照)。したがって、レーンキープ制御が停止される前に運転支援画像の表示を開始することができるので、運転者は、レーンキープ制御が停止される前に、運転支援画像の内容を把握することができる。したがって、運転者は、レーンキープ制御が停止された際に、手動によるステアリング操舵を迅速且つ的確に再開することができる。
一方、レーンキープ制御が停止されなかった場合であっても、運転支援画像は閾下知覚の範囲内で表示されるので、運転者に混乱を生じさせることはない。
また、表示制御装置24は、ECU20から与えられた車両情報信号、即ち車速及びヨーレート(車両の状態)に基づいて、レーンキープ制御装置23によるレーンキープ制御が悪化するかまたはレーンキープ制御装置23が白線をロストすると予測するので、当該予測を確実に行うことができる。また、車両情報信号の入力と演算により当該予測を行うことができるので、当該予測を簡易に行うことができる。
また、表示制御装置24は、制御停止カーブ信号、即ちレーンキープ制御装置23により算出された道路の曲率に基づいて、当該予測を行うので、当該予測を確実に行うことができる。
特に、本実施の形態では、車両情報信号及び制御停止カーブ信号に基づいて当該予測を行うので、当該予測をより迅速且つ確実に行うことができる。
また、グラフィックディスプレイ25は、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、網膜投射型ディスプレイ、ダッシュボードに設置されたディスプレイ、またはインストルメントパネルに設置されたディスプレイであるので、グラフィックディスプレイ25がこれらのディスプレイの何れであっても、上述した効果を得ることができる。
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態(請求項7、8、10〜12に対応)を図面に基づいて説明する。まず、図21〜図28に基づいて、本第3の実施の形態に係る車両用表示装置3の構成及び各構成要素の主な機能について説明する。ここで、図21は、車両用表示装置3の構成を示したブロック図であり、図22は、運転支援画像331の表示位置を示した説明図であり、図23、図25及び図27は、レーザレーダ311によりスキャニングされる領域311aを示した平面図であり、図24、図26及び図28は、運転支援画像331の内容を示した説明図である。
図21〜図22に示すように、車両用表示装置3は、車間距離制御を行う車間距離制御装置31を備える車両Sに搭載され、当該車間距離制御の内容が描かれた運転支援情報を、ヘッドアップディスプレイ33に閾下知覚の範囲内で表示するものである。
車両用表示装置3は、ECU(車両情報検出手段)30と、車間距離制御装置(運転支援手段)31と、表示制御装置(目標物追尾状態監視手段)32と、ヘッドアップディスプレイ(HUD)(表示手段)25を備える。
ヘッドアップディスプレイ33は、図22に示すように、表示制御装置32から運転支援画像信号を与えられている間、当該運転支援画像信号に対応する運転支援画像331をフロントガラス101a上に表示する。ここで、表示制御装置32は、後述するように、運転支援画像信号を閾下知覚の範囲内の出力タイミングで出力するので、ヘッドアップディスプレイ33は、運転支援画像331を閾下知覚の範囲内の表示タイミングで表示する。なお、ヘッドアップディスプレイ33は、他のディスプレイ、例えばヘッドマウントディスプレイであっても良い。
図1に示すECU30は、図示しない車速センサ及び加速度センサを備え、これらのセンサにより車両Sの車速及び加速度を検出し、当該検出された車速及び加速度に関する車両情報信号を生成して車間距離制御装置31に出力する。
車間距離制御装置31は、レーザレーダ311と、車間自動制御コントロールユニット312と、スロットル313と、ブレーキ314と、変速機315と、信号音発生装置316を備える。
レーザレーダ311は、図23に示すように、車両S前方の領域311aをスキャニングし、当該スキャニングにより先行車両(目標物)が検出された場合には、当該先行車両の形状、位置及び先行車両の車両Sに対する相対車速(目標物の状態)を検出する。
そして、当該検出された先行車両の形状、位置及び相対速度に関する先行車両検出信号を生成して、車間自動制御コントロールユニット312に出力する。
車間自動制御コントロールユニット312は、レーザレーダ311から与えられた先行者量検出信号を表示制御装置32に出力する一方、当該先行車両検出信号及びECU30から与えられた車両情報信号に基づいて、車両Sから先行車両までの距離が一定となるように、車速の調整量を決定する。そして、スロットル313、ブレーキ314、及び変速機315を操作して、車速を当該調整量だけ変化させる。これにより、車間距離制御を行う。
また、車間距離制御の誤差を算出し、当該算出された車間距離制御の誤差に関する制御誤差信号を生成して、表示制御装置32に出力する。なお、本第3の実施の形態における「車間距離制御の誤差」とは、例えば、車速の調整量の理想量と、車間自動制御コントロールユニット312により算出された調整量との差を意味する。
また、レーザレーダ311が先行車両を検出しなかった場合(以下、「先行車両をロスとした場合」と称する)または、車速が所定の基準速度(当該基準速度は、予め定められる)以下となった場合には、スロットル313、ブレーキ314、及び変速機315の操作を停止する。これにより、車間距離制御を停止する。また、これと同時に、制御停止信号を生成して表示制御装置32に出力すると共に、発生命令信号を生成して信号音発生装置316に出力する。
信号音発生装置316は、車間自動制御コントロールユニット312から発生命令信号を与えられた際に、信号音を発生させる。これにより、車両Sの乗員に車間距離制御が停止された旨を提示する。
表示制御装置32は、車間自動制御コントロールユニット312から制御停止信号を与えられた場合には、車間自動制御コントロールユニット312から与えられた先行車両検出信号に基づいて、先行車両の位置を3次元座標として認識する。そして、当該認識された3次元座標を運転者の視野座標に変換し、当該変換された3次元座標が図23に示す領域A〜E(基準領域の組)のうち、どの領域に対応するかを決定する。なお、当該領域A〜Eは、領域311aを分割することで得られる。
そして、図24に示すように、形態が予め設定された矩形画像331a〜331e(目標物画像の形態の組)のうち、当該算出された現在位置に対応する矩形画像を選択する。そして、これを先行車両画像(目標物画像)とすることで、先行車両画像の形態を算出すると共に、先行車両画像を生成する。なお、図23に示す領域Aは、図24に示す矩形画像331aに、領域Bは、矩形画像331bに、領域Cは、矩形画像331cに、領域Dは、矩形画像331dに、領域Eは、矩形画像331eに、それぞれ対応する。
例えば、図25に示すように、車両Sの近距離に存在する先行車両Uが車両Sに対して右側にレーンチェンジした場合、図26に示すように、表示制御装置32は、矩形画像331eを選択する。この矩形画像331eは、先行車両Uの位置に対応する。また、例えば、図27に示すように、先行車両Uが右カーブにさしかかった場合、図28に示すように、表示制御装置32は、矩形画像331eを選択する。この矩形画像331eは、先行車両Uの位置に対応する。したがって、表示制御装置32により選択される矩形画像の形態と、運転者が認識する先行車両の実際の形態とは、ほぼ一致する。
さらに、必要に応じて車間距離制御の内容が描かれた内容表示画像を生成し、当該生成された先行車両画像及び内容表示画像を運転支援画像331とする。そして、当該運転支援画像331をヘッドアップディスプレイ33に表示させるための運転支援画像信号を生成して、閾下知覚の範囲内の出力タイミングでヘッドアップディスプレイ33に出力する。
また、車間自動制御コントロールユニット312から制御停止信号を与えられない場合には、車間自動制御コントロールユニット312から与えられた制御誤差信号に基づいて、車間距離制御の誤差を認識する。そして、当該認識された車間距離制御の誤差が所定の誤差しきい値(当該誤差しきい値は、予め定められる)以上である場合には、車間距離制御が悪化するかまたは車間距離制御装置31が先行車両をロストすると予測する。
そして、当該予測がなされた場合には、上述した方法により運転支援画像を生成して、閾下知覚の範囲内の出力タイミングでヘッドアップディスプレイ33に出力する。
次に、車両用表示装置3による処理の手順を図29に示すフローチャートに沿って説明する。
車両用表示装置3がオンされると、ステップS30にて、ECU30及び車間距離制御装置31は、上述した処理を行う。
次いで、表示制御装置32は、車間自動制御コントロールユニット312から制御停止信号が与えられたかどうかを判断する。この結果、与えられた場合にはステップS31に進み、与えられない場合(ステップS30にてNO)には、ステップS32に進む。
ステップS31にて、車間距離制御装置31は、車間距離制御を停止する。一方、表示制御装置32は、車間自動制御コントロールユニット312から与えられた先行車両検出信号に基づいて、上述した処理により、先行車両の現在位置に対応する先行車両画像を生成する。さらに、必要に応じて車間距離制御の内容が描かれた内容表示画像を生成し、当該生成された先行車両画像及び内容表示画像を運転支援画像とする。
次いで、当該運転支援画像をヘッドアップディスプレイ33に表示させるための運転支援画像信号を生成して閾下知覚の範囲内の出力タイミングでヘッドアップディスプレイ33に出力する。
次いで、ヘッドアップディスプレイ33は、表示制御装置32から運転支援画像信号を与えられている間、当該運転支援画像信号に対応する運転支援画像を表示する。即ち、運転支援画像を閾下知覚の範囲内の表示タイミングで表示する。その後、ステップS32に進む。
ステップS32にて、表示制御装置32は、ヘッドアップディスプレイ33が運転支援画像を表示しているかどうかを判断する。この結果、表示している場合にはステップS34に進み、表示していない場合(ステップS32にてNO)にはステップS33に進む。
ステップS33にて、表示制御装置32は、先行車両ロスト予測に基づく先行車両画像表示処理を行う。具体的には、ステップS331〜ステップS332の処理を行う。
ステップS331にて、表示制御装置32は、車間自動制御コントロールユニット312から与えられた制御誤差信号に基づいて、車間距離制御の誤差を認識する。
次いで、当該認識された車間距離制御の誤差と所定の誤差しきい値とを比較する。この結果、車間距離制御の誤差が誤差しきい値以上である場合にはステップS332に進み、車間距離制御の誤差が誤差しきい値未満である場合(ステップS331にてNO)には、車両用表示装置3は、本処理を終了する。
ステップS332にて、表示制御装置32は、上述した方法により運転支援画像を生成して、閾下知覚の範囲内の出力タイミングでヘッドアップディスプレイ33に出力する。
次いで、ヘッドアップディスプレイ33は、表示制御装置32から運転支援画像信号を与えられている間、当該運転支援画像信号に対応する運転支援画像を表示する。即ち、運転支援画像を閾下知覚の範囲内の表示タイミングで表示する。その後、車両用表示装置3は、運転支援画像の表示を閾下知覚の範囲内で継続させた状態で、本処理を終了する。
一方、上述したステップS32の処理において、ヘッドアップディスプレイ33が運転支援画像を表示していると判断された場合には、ステップS34にて、表示制御装置32は以下の処理を行う。
即ち、ヘッドアップディスプレイ33がステップS21の処理により運転支援画像を表示している場合には、運転支援画像の表示が開始されてから所定の表示継続時間(当該表示継続時間は予め定められる)経過した際に、運転支援画像信号の出力を停止する。これにより、ヘッドアップディスプレイ33は、運転支援画像の表示を停止する。その後、車両用表示装置3は本処理を終了する。なお、この時点で、車間距離制御装置31は、車間距離制御を再開する。
一方、ヘッドアップディスプレイ33がステップS332の処理により運転支援画像を表示している場合(車両用表示装置3が、運転支援画像の表示を継続させた状態で前回のステップS233の処理を終了した場合)には、車間自動制御コントロールユニット312から与えられた制御誤差信号に基づいて、車間距離制御の誤差を認識する。
次いで、当該認識された車間距離制御の誤差と所定の誤差しきい値とを比較する。この結果、車間距離制御の誤差が誤差しきい値未満となった場合には、先行車両のロストが回避されたものとして、運転支援画像信号の出力を停止する。これにより、ヘッドアップディスプレイ33は、運転支援画像の表示を停止する。なお、この時点で、車間距離制御装置31は、車間距離制御を再開する。
一方、車間距離制御の誤差が誤差しきい値以上である場合には、車両用表示装置3は、運転支援画像の表示を閾下知覚の範囲内で継続させた状態で、本処理を終了する。
以上により、本第3の実施の形態では、ヘッドアップディスプレイ33は、車間距離制御装置31が車間距離制御を停止する際(具体的には、停止された後)に、先行車両画像を運転支援画像に含めて閾下知覚の範囲内で表示する(図29に示すステップS31参照)。
これにより、運転者は、車間距離制御が停止される際に、運転支援画像を煩わしく感じることなく、運転支援画像の内容、即ち車両S前方に先行車両が存在することを把握することができる。
なお、従来では、車間距離制御が停止される際に、信号音発生装置316により信号音を発生させ、且つヘッドアップディスプレイ33に車間距離制御が停止される旨を表示していた。しかし、この方法では、運転者にとっては、まず信号音が何を意味しているのかを確認した上で、ヘッドアップディスプレイ33の表示内容を確認することで、車間距離制御が停止されることを確認する必要がある。したがって、運転者にとっては、車間距離制御が停止されたことを迅速に把握することが容易でない場合が生じうるので、手動によるステアリング操舵を迅速に再開することが容易でない場合が生じうる。
しかし、本第3の実施の形態では、運転者は、車間距離制御が停止される際に、運転支援画像を煩わしく感じることなく、運転支援画像の内容、即ち先行車両が存在することを把握することができる。したがって、運転者は、車間距離制御が停止された後に、手動によるステアリング操舵を迅速且つ的確に再開することができる。
また、ヘッドアップディスプレイ33に表示された先行車両画像の形態は、車間距離制御装置31により検出された先行車両の位置に基づいて算出されるので、運転者は、先行車両の現在位置を容易に把握することができる。なお、本第3の実施の形態では、図23〜図24に示すように、表示制御装置32は、車間距離制御装置31により検出された先行車両の位置が領域A〜Eのうちどの領域に対応するかを決定し、さらに、当該決定された領域に対応する矩形画像を選択することで、先行車両画像の形態を算出したので、運転者が認識する先行車両画像の形態と、運転者が認識する先行車両の実際の形態とが異なる場合がある。しかし、先行車両画像は閾下知覚の範囲内で表示されるので、このような場合であっても、運転者に混乱を生じさせることはない。また、先行車両画像の形態は、車間距離制御装置31により検出された先行車両の位置に基づいて算出されるので、このような場合であっても、運転者が認識する先行車両画像の形態と、運転者が認識する先行車両の実際の形態との誤差は小さい。よって、このような場合であっても、上述した効果を得ることができる。なお、矩形画像331a〜331eから、車間距離制御装置31により検出された先行車両の位置に対応する矩形画像を選択することで、先行車両画像の形態を算出するので、先行車両画像の形態を簡易に算出することができる。
また、表示制御装置32は、車間距離制御装置31による車間距離制御が悪化するかまたは車間距離制御装置31が白線をロストすると予測し、ヘッドアップディスプレイ33は、当該予測がなされた場合には、運転支援画像を表示する(図29に示すステップS32参照)。したがって、車間距離制御が停止される前に運転支援画像の表示を開始することができるので、運転者は、車間距離制御が停止される前に、運転支援画像の内容を把握することができる。したがって、運転者は、車間距離制御が停止された際に、手動によるステアリング操舵を迅速且つ的確に再開することができる。
一方、車間距離制御が停止されなかった場合であっても、運転支援画像は閾下知覚の範囲内で表示されるので、運転者に混乱を生じさせることはない。
また、表示制御装置32は、車間距離制御装置31から与えられた制御誤差信号、即ち車間距離制御の誤差に基づいて、車間距離制御装置31による車間距離制御が悪化するかまたは車間距離制御装置31が白線をロストすると予測するので、当該予測を確実に行うことができる。また、制御誤差信号の入力と演算により当該予測を行うことができるので、当該予測を簡易に行うことができる。
なお、第1の実施の形態では、表示手段としてヘッドアップディスプレイ12を使用したが、他のディスプレイ、例えば、ヘッドマウントディスプレイ、網膜投射型ディスプレイ、ダッシュボードに設置されたディスプレイ、またはインストルメントパネルに設置されたディスプレイであってもよい。
また、第2〜第3の実施の形態に上述した第1の実施の形態の第1〜第6の変形例に係る技術を適用しても良い。この場合、以下の効果を得ることができる。
即ち、第1〜第4の変形例に係る技術を適用することで、レーンキープ制御または車間距離制御が停止される前に運転支援画像を表示する場合には、運転者は、レーンキープ制御または車間距離制御が停止されるまでのおおよその時間を把握することができる。一方、レーンキープ制御または車間距離制御が停止された後に運転支援画像を表示する場合には、運転者は、レーンキープ制御または車間距離制御が停止されてからのおおよその時間を把握することができる。
また、第5〜第6の変形例に係る技術を適用することで、上述した第5〜第6の変形例に対応する効果を得ることができる。具体的には、運転者が認識する白線画像(または先行車両画像)の形態と、運転者が認識する白線(または先行車両)の実際の形態との誤差を小さくすることができる。
また、第3の実施の形態では、表示制御装置32により選択される画像を矩形画像としたが、他の形態の画像であっても良い。
また、第1〜第3の実施の形態では、目標物が先行車両または白線である場合を一例として示したが、他の物体が目標物である場合にも本発明を適用することができる。
また、第1〜第3の実施の形態では、本発明をレーンキープ制御または車間距離制御を行う装置に適用したが、他の運転支援を行う装置に適用することができるのは勿論である。