JP2005066870A - 複合材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】曲げ方向に応じて剛性の差を顕著に生じさせることができる複合材料を提供する。
【解決手段】複合材料は、第2表層部13、芯部11及び第1表層部12を積層して形成されている。これら第2表層部13、芯部11及び第1表層部12は、それぞれ繊維からなるシート材を積層することによって構成されたものであり、未硬化の合成樹脂を含浸させ、硬化させることにより、それら繊維によって複合材料が強化されている。当該複合材料の一面側には第1表層部12等を切削することによって撓み調整凹部16が凹設されている。この撓み調整凹部16の内部には装填材17が嵌入され、装填されている。
【選択図】 図1
【解決手段】複合材料は、第2表層部13、芯部11及び第1表層部12を積層して形成されている。これら第2表層部13、芯部11及び第1表層部12は、それぞれ繊維からなるシート材を積層することによって構成されたものであり、未硬化の合成樹脂を含浸させ、硬化させることにより、それら繊維によって複合材料が強化されている。当該複合材料の一面側には第1表層部12等を切削することによって撓み調整凹部16が凹設されている。この撓み調整凹部16の内部には装填材17が嵌入され、装填されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用構造材、航空機用構造材、レジャー用具、スポーツ用具、福祉用具、医療用具等の材料に使用される複合材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、FRP(Fiber Reinforced Plastics)等の複合材料は、例えばガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等といった強度又は剛性の高い繊維を強化材とし、この強化材に合成樹脂等を含浸させて得られたものである。当該複合材料は、軽量、高弾性率、高強度等の利点を有する他、使用する材料に応じて曲げ剛性、捻り剛性等の力学特性を任意に設計することが可能であり、また防錆等といった金属材料では有し得ない性質を有していることから、様々な分野で広く利用されている。そして、このような複合材料の一例として、主に高弾性率の発現を目的とした板発条が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−211734号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記板発条等のような複合材料で曲げ方向に応じて剛性の差を生じさせようと試みる場合、図7(a),(b)に示すように、第1層部51及び第2層部52を積層し、第1層部51と第2層部52とで弾性率がそれぞれ異なるように構成する方法が考えられる。実際に、第1層部51には弾性率が引張時で68GPa、圧縮時で67GPaのものを、第2層部52には弾性率が引張時で230GPa、圧縮時で200GPaのものを使用し、図7(a),(b)の各状態における剛性の差を測定した。その結果、各状態における剛性の差は、最大で7.6%であった。そして、このように各層で弾性率を違えても、曲げ方向に応じた剛性の差は極僅かなものとしかならないという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、曲げ方向に応じて剛性の差を顕著に生じさせることができる複合材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の複合材料の発明は、繊維によって強化された合成樹脂製の複合材料であって、芯部と、当該芯部に対して積層された表層部とを有し、これら芯部及び表層部はそれぞれが繊維によって強化されたものであるとともに、少なくとも当該表層部を切削して撓み調整凹部を設けるとともに、当該撓み調整凹部の内部には装填材を装填したことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の複合材料の発明は、請求項1に記載の発明において、前記芯部及び表層部は、それぞれが繊維を所定方向に配列して得られた複数枚のシート材を積層して構成されたものであることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の複合材料の発明は、請求項2に記載の発明において、前記撓み調整凹部の周縁には、芯部を構成するシート材同士を縫合することによって補強部を設けたことを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の複合材料の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記芯部を強化する繊維は、前記表層部を強化する繊維に比べて破断歪みが大きいものであることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の複合材料の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記表層部は、前記芯部に比べて切削性に優れたものであることを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の複合材料の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記撓み調整凹部を外部から覆う被覆材を設けたことを要旨とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、実施形態の複合材料は、強化材として繊維を含むことにより、同繊維で強化された合成樹脂製のものであり、長板状に形成されている。当該複合材料は、芯部11と、当該芯部11の一面(表面)側に積層された表層部としての第1表層部12と、芯部11の他面(裏面)側に積層された表層部としての第2表層部13とを備えている。さらに、前記芯部11は、第1表層部12側に配設された第1層14と、第2表層部13側に配設された第2層15とから形成されている。これら第1表層部12、第2表層部13、第1層14及び第2層15は、それぞれが強化材である繊維を含むシート材を複数枚積層することによって板状に形成されたものである。
【0013】
当該複合材料において、対向する一対の面となる表面と裏面のうち、一面側となる表面には複数の撓み調整凹部16が設けられている。当該撓み調整凹部16は、第1表層部12及び芯部11の第1層14と、芯部11の第2層15の表面とを切削して形成されている。すなわち、撓み調整凹部16は、その内側部が第1表層部12及び第1層14によって、内底部が第2層15によって形作られている。この撓み調整凹部16の内部には、矩形状をなす装填材17が装填されている。
【0014】
当該装填材17は、その縦幅(複合材料の長手方向の長さ)及び横幅(複合材料の短手方向の長さ)が撓み調整凹部16の縦幅及び横幅と略同一になるように形成されている。この装填材17は、その側面と撓み調整凹部16の内側面との間に出来る限り隙間が形成されないように、撓み調整凹部16の内部に嵌入されている。また、装填材17の高さは、撓み調整凹部16の深さに比べて短くなっている。当該装填材17には、変形しづらい硬質の材料を使用することが好ましい。これは、複合材料の形状変化時において、撓み調整凹部16の変形を抑制するためである。このような材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄等の金属、硬質ゴム、硬質樹脂等が挙げられる。
【0015】
当該複合材料は、両端面を除く外周面が被覆材18によって被覆されている。この被覆材18は、撓み調整凹部16を外部から覆うことにより、撓み調整凹部16の内部から装填材17が抜け出すことを規制するものである。また、撓み調整凹部16の周縁部である両側部には、補強部19が設けられている。この補強部19は、芯部11となる第1層14及び第2層15を構成するそれぞれのシート材同士を補強糸20で厚み方向に縫合することによって形成されている。そして、これら補強部19は、第1層14と第2層15との間の剥離、あるいは第1層14及び第2層15を構成するそれぞれのシート材同士の間の剥離を抑制するように機能している。当該補強糸20には、引張り応力に対し、切れ、伸び等の変形を発生しにくい糸を使用することが好ましい。これは、複合材料の形状変化時に各シート材同士が剥離しようとするとき、当該補強糸20には主に引張り応力が加わるためである。このような糸としては、アラミド繊維製の糸、ポリエステル繊維製の糸等が挙げられる。
【0016】
当該複合材料において、第1表層部12、第2表層部13、第1層14及び第2層15をそれぞれ構成するシート材は、繊維を所定方向に配列して得られたものである。このシート材に対して合成樹脂は、シート材によって複合材料を所定形状に成形する前に予め又は成形するとき、未硬化の状態で含浸されるようになっている。例えば、複合材料を成形するときに未硬化の合成樹脂を含浸させるものとして、繊維のみからなるシート材が挙げられる。これに対し、複合材料を所定形状に成形する前に予め未硬化の合成樹脂が含浸されたものとして、所謂プリプレグ等のようなシート材が挙げられる。この実施形態では、繊維のみからなるシート材を用い、合成樹脂は複合材料を所定形状に成形するときにシート材に含浸させるものとする。なお、成形するときに合成樹脂を含浸させる場合、合成樹脂中に気泡が生じ、強度低下等の不具合が起こることを抑制するため、真空脱泡等の作業を必要とする場合がある。
【0017】
前記合成樹脂には熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の何れを使用してもよく、所望に応じて適宜選択される。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。なお、第1表層部12、第2表層部13、第1層14及び第2層15には、それぞれに異なる種類の合成樹脂を使用してもよいし、あるいは全て同じ種類の合成樹脂を使用してもよい。
【0018】
前記繊維は、複合材料を曲げたり、捻ったり等した際、第1表層部12、第2表層部13、第1層14及び第2層15の剛性を向上させる強化材としての機能の他、それらが折れたり、変形したり等して破損することを抑制する補強材としての機能を有する。従って、当該繊維には、切れたり、延伸されたり等されにくい、つまり剛性の高いものを使用することが好ましい。このような剛性の高い繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、カーボン(炭素)繊維等の合成繊維が挙げられる。
【0019】
当該繊維を積層する方向(プライ方向)、つまり各シート材におけるそれぞれの繊維の配列方向は、所望する力学特性に応じて適宜変更される。また同様に、繊維の積層数(プライ数)、つまりシート材を積層する枚数も、所望する力学特性に応じて適宜変更される。例えば、繊維を複合材料の長手方向と平行に配列した場合、プライ方向の配向角が0゜であり、この場合には複合材料の長手方向における引張、圧縮、曲げ等の強度、剛性等を向上させた力学特性とすることができる。これとは逆に繊維を複合材料の短手方向と平行に配列した場合、プライ方向の配向角が90゜であり、この場合には複合材料の短手方向における引張、圧縮、曲げ等の強度、剛性等を向上させた力学特性とすることができる。また、繊維を複合材料の長手方向に対して45゜傾けた場合、プライ方向の配向角は45゜であり、この場合には複合材料の長手方向を軸とした捻れ等に対する強度、剛性等を向上させた力学特性とすることができる。
【0020】
当該複合材料においては、主に撓み調整凹部16を設けることによる強度低下、剛性低下等を抑制するため、プライ方向及びプライ数が適宜変更される。また、当該繊維は、1本ずつ単純に積層するのみならず、複数本を織り上げる、編み上げる等して織布、編布等といった布帛としてもよい。例えば、繊維を織り上げて織布とする場合、織り上げる方法として、平織、繻子織、綾織等が挙げられるが、各方法で得られた織布は、それぞれが異なる力学特性を示し、所望に応じて適宜使い分け、組み合わせ等される。
【0021】
各シート材において、芯部11を強化するためにシート材に使用される繊維は、第1表層部12及び第2表層部13を強化するためにシート材に使用される繊維に比べ、JIS R 7601に規定される破断歪みが同じか又は大きいものとすることが好ましい。具体的に、芯部11を強化する繊維は、破断歪みが2〜6%のものとすることが好ましい。また、第1表層部12及び第2表層部13を強化する繊維は、芯部11を強化する繊維の破断歪みを基準に、その破断歪みが同じか又は小さいものとすることが好ましい。
【0022】
ここで、繊維の破断歪みと、複合材料を構成する第1表層部12等の剛性との関係について説明する。第1表層部12等の剛性は、主として強化する繊維の剛性と相関する関係にあり、シート材に使用される繊維の剛性が高まるに従って第1表層部12等の剛性も高まる。一方、これら繊維の剛性は、繊維の破断歪みと逆相関の関係にあり、繊維の剛性が高まるに従って繊維の破断歪みは小さくなる。これは、繊維は、その剛性が高まった分だけ破断しにくくなり、破断時に生じた歪みも小さくなるためである。
【0023】
ところで、当該複合材料を曲げる際、後述するが、特に他面(裏面)側の方向へ曲げたときには、その曲げに係る応力が撓み調整凹部16の内底部に集中することとなる。この撓み調整凹部16の内底部を剛性の高いものとした場合、当該内底部を強化する繊維の破断歪みは小さくなり、曲げによる変形が過剰に大きくなれば、当該内底部を強化している繊維が破断してしまい、複合材料が折れる等の不具合が発生しやすくなる。従って、過剰に大きな変形に耐え得る複合材料とするためには、撓み調整凹部16の内底部を構成する芯部11において、これを強化する繊維を他箇所である第1表層部12等を強化する繊維に比べ、破断歪みが大きいものとすることが好ましい。そして、芯部11を強化する繊維を破断歪みの大きなものとする、具体的には破断歪みを2%以上とすることにより、当該複合材料は、撓み調整凹部16の内底部に集中する応力を緩和し、破損等の不具合の発生を抑制している。また、繊維に破断歪みが過剰に大きなもの、具体的には破断歪みが6%を超えるものを使用する場合、曲げの応力に繊維が抗しきれず伸びてしまい、芯部11を十分に強化することができなくなるおそれがある。
【0024】
さらに、芯部11を強化する繊維は、第1表層部12及び第2表層部13を強化する繊維に比べ、破断歪みが大きいものとすることがより好ましい。この芯部11の繊維が第1表層部12等の繊維に比べて破断歪みが大きいということは、芯部11の剛性が第1表層部12等の剛性に比べ、低いことを意味する。換言すれば、第1表層部12及び第2表層部13は剛性の高いものであり、芯部11は柔軟性の高いものである。このように、第1及び第2表層部12,13を強化する繊維を破断歪みの小さなものとし、それらの剛性を高めることにより、複合材料が元の形状を保持することができ、曲げた後でも形状が変化したままとなることを防止することができる。
【0025】
なお、芯部11を強化する繊維を破断歪みの大きなものとすることは、芯部11の剛性が第1表層部12等の他箇所に比べ劣ることとなり、複合材料全体の剛性が低下するとも考えられる。しかし、複合材料全体に対する各箇所の剛性の影響は、複合材料の厚さ方向において、中心からの距離の3乗に比例して大きくなる。つまり、厚さ方向の中心に近づくに従い、複合材料全体の剛性に与える影響は、小さくなる。従って、厚さ方向の中心を含む芯部11の剛性が複合材料全体に与える影響は、極僅かなものとなり、実際の複合材料全体の剛性の低下も極僅かである。
【0026】
前記第1表層部12及び第2表層部13は、芯部11に比べ、切削性に優れたものとすることが好ましい。加えて、芯部11の第1層14は、芯部11の第2層15に比べ、切削性に優れたものとすることが好ましい。ここで、切削性とは、第1表層部12等を強化するそれぞれの繊維について、当該繊維の切断性又は当該繊維を切断した際の毛羽の発生率をいう。つまり、切削性に優れたものとは、換言すれば複合材料を構成する第1表層部12等を切削した際、その切断面に繊維の毛羽立ちが発生しにくいものを示す。
【0027】
当該切削性の優劣は、次に示すような方法で評価される。すなわち、評価方法は、所定サイズに成形された複合材料を試料片とし、この試料片に対して合計で3本の溝を切削形成した後、各溝の内面でそれぞれ毛羽の有無を観察するものである。試料片には、JIS K 7016−1、7072に規定された方法で作製し、そのサイズを厚さ4mm、長さ50mm、幅20mmとしたものが使用される。切削形成には、Φ1の超硬エンドミルを装着したフライス盤が使用される。溝は、深さが2mmとされ、試料片の幅方向へ延びるように形成される。毛羽の有無は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス製のVH−8000)を使用し、レンズ倍率100倍として、各溝のそれぞれの両端部(合計で6箇所)で観察した。優劣の評価基準は、観察された6箇所のうち、いずれか1つで毛羽が1本以上観察された試料片を切削性に劣るものとし、これ以外、つまり観察された6箇所の全てで毛羽が発生しなかった試料片を切削性に優れたものとした。そして、第2層15、第1表層部12及び第2表層部13には、切削性に優れたものとした試料片に使われた材料を使用することとした。
【0028】
上記のように、第1表層部12及び第2表層部13を芯部11に比べて切削性に優れたものとする又は第1層14を第2層15に比べて切削性に優れたものとすることにより、撓み調整凹部16の形成時における切削作業を容易なものとすることが可能である。特に、第1表層部12等を切削性に優れたものとした場合、撓み調整凹部16の内面で毛羽立ちの発生を抑制することが可能であり、撓み調整凹部16の内部に装填材17を隙間なく装填することが可能となる。この切削性は、第1表層部12等を強化する繊維を適宜変更することによって調整される。この実施形態では、第1表層部12及び第2表層部13を強化する繊維にはカーボン繊維が、第1層14を強化する繊維にはガラス繊維が、第2層15を強化する繊維にはアラミド繊維が使用されている。すなわち、カーボン繊維及びガラス繊維は、アラミド繊維に比べて切断しやすく、切断時に繊維の毛羽立ちを発生させにくい繊維である。
【0029】
次に、当該複合材料の製造方法について説明する。
当該複合材料は、前記芯部11を形成する芯部形成工程、第1表層部12等を形成する表層部形成工程、撓み調整凹部16を形成する切削工程、装填材17を装填する装填工程及び被覆材18を設ける被覆工程の各工程を経て製造される。
【0030】
前記芯部形成工程においては、まず第1層14を構成するシート材及び第2層15を構成するシート材が順番に積層される。このとき、各シート材は、目的とする複合材料のサイズにもよるが主として、その縦幅及び横幅が当該複合材料の縦幅及び横幅よりも長いものが使用される。その後、図4に示すように、撓み調整凹部16を設ける位置に応じ、ミシン等を使用して補強糸20で各シート材を縫合し、補強部19を形成することにより、芯部11が形成される。なお、当該芯部11が形成された時点で、未だ合成樹脂は含浸されていない。
【0031】
当該補強部19の形成において、補強糸20は、撓み調整凹部16の一側部に1列以上が縫い込まれる。この実施形態では、撓み調整凹部16の一側部に2列の補強糸20が縫い込まれている。また、2列以上の補強糸20を縫い込む場合、補強糸20同士の間隔は、3±1mmとすることが好ましい。補強糸20同士の間隔が過剰に短い場合、撓み調整凹部16の形成時に補強糸20を切断してしまうおそれがある。補強糸20同士の間隔が過剰に長い場合、第1層14と第2層15との剥離又は第1層14及び第2層15を構成するそれぞれのシート材同士の剥離を抑制することができなくなるおそれがある。
【0032】
前記表層部形成工程においては、図5に示すように、まず基台31の表面において、第2表層部13を構成する複数枚の第2シート材13aが積層される。次いで、積層された第2シート材13aの表面に芯部形成工程で形成された芯部11が積層され、当該芯部11の表面に第1表層部12を構成する複数枚の第1シート材12aが積層される。その後、芯部11を構成するシート材、第1表層部12及び第2表層部13を構成するそれぞれのシート材に未硬化の合成樹脂が含浸される。そして、高温、高圧条件下で未硬化の合成樹脂を硬化させることにより、第2表層部13、芯部11及び第1表層部12がそれぞれ積層された状態で接合され、複合素材が形成される。なお、合成樹脂を硬化させる手段は、例えば基台31を金型等として使用したホットプレス法、レジンインジェクション法等、オートクレーブ等による方法等が挙げられ、特には限定されない。
【0033】
前記切削工程においては、表層部形成工程にて形成された複合素材に対して切削加工が施される。この切削加工においては、複合素材を切削することが可能ならばいかなる方法を用いてもよく、例えばダイヤモンド製のドリル、ブレード等といった工具を用いる方法、ウォータージェット切断、レーザー切断等の方法が挙げられる。そして、撓み調整凹部16が複合素材上の予め定められた位置に形成される。すなわち、複合材料を製造するに当たって、当該複合材料に加わる応力分布、サイズ、使用目的等に応じて撓み調整凹部16を設ける位置、撓み調整凹部16の縦幅等が予め設定される。この設定に従い、前記芯部形成工程における補強糸20の縫い込み位置、当該切削工程における撓み調整凹部16の形成位置が定められる。
【0034】
前記装填工程においては、撓み調整凹部16のサイズに応じて予め形成された装填材17が当該撓み調整凹部16の内部に嵌入される。当該撓み調整凹部16の内面においては、前記切削工程で形成する際に繊維が切断されることにより、若干ではあるが毛羽立ちが発生している可能性がある。このまま装填材17を嵌入しようとすれば、毛羽立ちが発生した分だけ撓み調整凹部16の内部が狭まっており、装填材17を装填することができなくなったり、装填材17の外側面と撓み調整凹部16の内側面との間に隙間が形成されたり等の不具合を生じる。そこで、装填材17の厚みを撓み調整凹部16の深さに比べて短くすることにより、図2に示したように、撓み調整凹部16の内底部には空間部16aが設けられる。すなわち、当該空間部16aを設けることにより、撓み調整凹部16の内部に装填材17を嵌入するとき、毛羽が空間部16a内へと押し込まれて片寄り、装填材17の嵌入を阻害しないように構成されている。特に、第2層15では毛羽立ちが発生する可能性が高く、当該空間部16aを設けることが有効となる。
【0035】
前記被覆工程においては、複合素材の表面に被覆材18が設けられ、当該被覆材18で撓み調整凹部16が外部から被覆されることにより、複合材料が形成される。この被覆材18を設ける方法としては、主に複合素材の表面で被覆材18を成形する方法と、熱収縮性を有する材料から形成された筒体を外嵌する方法とが挙げられる。この実施形態では後者の方法で被覆材18が設けられる。また、複合材料の形状変化時に当該被覆材18もこの形状変化に追従することができるように、被覆材18に使用する材料にはゴム、ビニル、エラストマー等の弾性材料を使用することがより好ましい。
【0036】
続いて、当該複合材料の作用について説明する。
図6(a)に示すように、当該複合材料を一面(表面)側の方向へ曲げたとき、凸状に曲げられた第2表層部13、第2層15等には伸張方向に応力が加わる。これとは逆に、凹状に曲げられた第1表層部12、第1層14等には収縮方向に応力が加わる。このとき、撓み調整凹部16は、加わる応力によって縦幅を狭めるように変形しようとする。しかし、撓み調整凹部16の内部には装填材17が装填されていることから、当該装填材17によって撓み調整凹部16の変形が抑制され、応力は同装填材17を縦幅方向へ潰すように作用することとなる。特に、装填材17の外側面と撓み調整凹部16の内側面との間には隙間がほとんど形成されていないことから、当該応力は撓み調整凹部16を変形させるように作用することはなく、ほぼ全てが装填材17を潰すように作用する。なお、装填材17の外側面と撓み調整凹部16の内側面との間に隙間が存在すれば、その隙間の分だけ撓み調整凹部16が変形し、当該撓み調整凹部16が設けられた箇所で複合材料が破損する可能性がある。この結果、一面側の方向へ曲げられた複合材料には、主に第2表層部13等に加わる伸張方向の応力と、第1表層部12等に加わる収縮方向の応力と、そして装填材17を縦幅方向へ潰す力とが作用する。
【0037】
一方、図6(b)に示すように、当該複合材料を他面(裏面)側の方向へ曲げたとき、凸状に曲げられた第1表層部12、第1層14等には伸張方向に応力が加わり、凹状に曲げられた第2表層部13、第2層15等には収縮方向に応力が加わる。このとき、撓み調整凹部16は、加わる応力によって縦幅を拡げるように変形しようとする。この場合、装填材17が撓み調整凹部16の変形を抑制することはなく、撓み調整凹部16は、このまま変形される。さらには、撓み調整凹部16を切削によって形成したことにより、加わる応力に対して第1表層部12等はその全体で一体的に抗することができず、各撓み調整凹部16の間の部分でそれぞれ個々に抗することとなる。この結果、他面側の方向へ曲げられた複合材料には、主に第1表層部12等に加わる伸張方向の応力と、第2表層部13等に加わる収縮方向の応力とが作用する。さらに、第1表層部12等に加わる応力は、撓み調整凹部16を設けたことによって緩和される。従って、複合材料に作用する力は、一面側の方向へ曲げたときに比べ、他面側の方向へ曲げたときには圧倒的に弱くなり、一面側の方向と他面側の方向とで曲げ方向に応じて剛性の差が顕著に生じる。
【0038】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態の複合材料によれば、対向する一対の面の内、一方の面には撓み調整凹部16が凹設されており、当該撓み調整凹部16には装填材17が装填されている。この複合材料を撓み調整凹部16側が凹となるように曲げた場合、撓み調整凹部16を変形させようとする応力が装填材17を潰そうとする力として働き、さらに装填材17がこの力に抗することにより、当該曲げ方向における変形は抑制される。これとは逆に撓み調整凹部16側が凸となるように曲げた場合、撓み調整凹部16の変形は抑制されず、さらには第1表層部12全体を伸張させるように加わろうとする応力も撓み調整凹部16を設けたことによって緩和される。従って、一方向に曲げたときと他方向に曲げたときでそれぞれの弾性率が大きく異なり、曲げ方向に応じて剛性の差を顕著に生じさせることができる。
【0039】
・ また、撓み調整凹部16の両側部にはシート材同士を補強糸20で縫合することによって補強部19が設けられている。このため、複合材料を曲げたときに各シート材同士の間等で剥離が発生することを抑制することができ、複合材料の破損を防止することができる。
【0040】
・ また、芯部11を強化する繊維には、第1及び第2表層部12,13を強化する繊維に比べて破断歪みが大きいものが使用されている。このため、複合材料を曲げたときの前後で、剛性の高い第1及び第2表層部12,13によって形状を保持することができるとともに、曲げによって撓み調整凹部16の内底部に加わる応力を柔軟性の高い芯部11で緩和することができる。
【0041】
・ また、第1及び第2表層部12,13には、芯部11に比べて切削性の優れたものが使用されている。このため、撓み調整凹部16を形成しやすく、かつ撓み調整凹部16の内面に繊維の毛羽立ちが発生し、装填材17の周囲に隙間が形成されることを抑制することができる。
【0042】
・ また、複合材料の外面は、撓み調整凹部16を外部から覆うように、被覆材18によって被覆されている。このため、複合材料を曲げて撓み調整凹部16が拡がったとき、装填材17が撓み調整凹部16の内部から抜け出すことを防止することができる。さらには、当該被覆材18が複合材料の外面全体を被覆することにより、当該被覆材18で複合材料を外部から補強するとともに、複合材料が折れたり等して破損してしまった場合にも破損片等が散逸することを防止することができる。
【0043】
【実施例】
以下、前記実施形態をさらに具体化した実施例及び比較例について説明する。
(実施例)
複数枚のシート材を積層することにより、図2に示したような、一面側に撓み調整凹部16を有し、当該撓み調整凹部16の内部に装填材17を装填した複合材料を得た。このとき、第1表層部12及び第2表層部13は、繊維としてカーボン繊維を使用した織物からなるシート材より形成し、カーボン繊維の破断歪みは1.5%であった。芯部11においては、第1層14をガラス繊維を使用した織物からなるシート材より、第2層15をアラミド繊維を使用した織物からなるシート材より形成し、破断歪みはガラス繊維が3.0%、アラミド繊維が2.8%であった。その後、図6(a),(b)に示したように、x及びyの長さを適宜変更しつつ複合材料を曲げ、それぞれで剛性を測定した。そして、x及びyの長さが同値の状態で、図6(b)の状態における剛性と、図6(a)の状態における剛性との差を測定した。その結果、各状態における剛性の差は、最大で100%となり、従来の7.6%に比べて差が顕著であることが示された。
【0044】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 実施形態では複合材料を長板状としたが、当該複合材料の形状は長板状に限定されるものではなく、円板状等の板状、箱状、筒状等の立体状等としてもよい。
【0045】
・ 実施形態では撓み調整凹部16を第1表層部12側のみに設けたが、これに限らず第2表層部13側のみ、又は第1表層部12側及び第2表層部13側の両方に設けてもよい。特に、第1表層部12側及び第2表層部13側の両方に撓み調整凹部16を設ける場合には、第1表層部12側に設けられる撓み調整凹部16に対し、第2表層部13側に設けられる撓み調整凹部16を位置ずれさせて配設してもよい。このように撓み調整凹部16を位置ずれさせて配設した場合、同一の複合材料でありながら曲げ方向に応じた剛性の差を曲げ箇所毎に違えて発現させることができる。
【0046】
・ 第1表層部12又は第2表層部13と芯部11、第1層14と第2層は、実施形態のように未硬化の合成樹脂を硬化させるときに接合されるものに限らず、接着剤等を用いて接合してもよい。
【0047】
・ 補強糸20による縫合を省略することにより、補強部19を省略して複合材料を構成してもよい。
・ 被覆材18は、撓み調整凹部16内からの装填材17の抜け出しを規制可能ならば、必ずしも複合材料の外面全体に設ける必要はなく、撓み調整凹部16のみを覆うように設けてもよい。また、被覆材18を省略するとともに、接着等の方法によって撓み調整凹部16内からの装填材17の抜け出しを規制してもよい。
【0048】
・ 第1表層部12又は第2表層部13のいずれか一方を省略して複合材料を構成してもよい。
・ 実施形態では複合材料を撓み調整凹部16が設けられた側へ曲がりにくくなるように構成したが、これとは逆に撓み調整凹部16が設けられた側へ曲がりやすくなるように構成してもよい。この場合、装填材17には、撓み調整凹部16の過剰な変形を抑制しつつも、作用する応力によって変形可能な程度の柔らかさを有する、例えば合成ゴム、エラストマー、スポンジ、コイルスプリング等の弾性体を使用することが好ましい。
【0049】
・ 実施形態では、繊維のみからなるシート材を使用したが、これに限らず、例えばプリプレグ等のように予め繊維に未硬化の合成樹脂を含浸させたシート材を使用してもよい。
【0050】
・ 実施形態では、シート材を積層し、最後に未硬化の合成樹脂を含浸させたが、これに限らず、例えば芯部11を形成した後、同芯部11に合成樹脂を含浸させた後、第1表層部12等を構成するシート材を積層してもよい。また、合成樹脂の硬化についても、芯部11に合成樹脂を含浸させ、これを硬化させた後、予め硬化させた第1表層部12等を積層したり、合成樹脂が未硬化のまま第1表層部12等を積層させたり等してもよい。
【0051】
・ 芯部11において、撓み調整凹部16の内底部を構成する第2層15は、第1層14に比べてJIS R 7601に規定される破断歪みが大きいものを使用することが好ましい。換言すれば、芯部11の第2層15は、第1層14に比べ、柔軟性が高く、軟らかいものとすることが好ましい。これは、複合材料を曲げたときに応力が集中する撓み調整凹部16の内底部が、第2層15によって形作られているためである。
【0052】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記撓み調整凹部を、対向する一対の面のうち一面側のみに設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の複合材料。
【0053】
・ 前記芯部は、撓み調整凹部の内側部を形成する第1層と、撓み調整凹部の内底部を形成する第2層とを備えるとともに、第2層は、第1層に比べて切削性の優れたものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の複合材料。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、曲げ方向に応じて剛性の差を顕著に生じさせることができる。
【0055】
請求項2、請求項3又は請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、複合材料の形状変化時における破損を抑制することができる。
【0056】
請求項5に記載の発明によれば、他の請求項に記載の発明の効果に加えて、撓み調整凹部の内面における毛羽の発生を抑制することができる。
請求項6に記載の発明によれば、他の請求項に記載の発明の効果に加えて、装填材が撓み調整凹部の内部から抜け出すことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の複合材料を示す一部を破断した斜視図。
【図2】複合材料を示す縦断面図。
【図3】複合材料を示す横断面図。
【図4】芯部を形成した状態を示す斜視図。
【図5】複合材料を形成する状態を示す概念図。
【図6】(a)は実施形態の複合材料を一方向に曲げた状態を示す概念図、(b)は実施形態の複合材料を他方向に曲げた状態を示す概念図。
【図7】(a)は従来の複合材料を一方向に曲げた状態を示す概念図、(b)は従来の複合材料を他方向に曲げた状態を示す概念図。
【符号の説明】
11…芯部、16…撓み調整凹部、17…装填材、18…被覆材、19…補強部。
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用構造材、航空機用構造材、レジャー用具、スポーツ用具、福祉用具、医療用具等の材料に使用される複合材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、FRP(Fiber Reinforced Plastics)等の複合材料は、例えばガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等といった強度又は剛性の高い繊維を強化材とし、この強化材に合成樹脂等を含浸させて得られたものである。当該複合材料は、軽量、高弾性率、高強度等の利点を有する他、使用する材料に応じて曲げ剛性、捻り剛性等の力学特性を任意に設計することが可能であり、また防錆等といった金属材料では有し得ない性質を有していることから、様々な分野で広く利用されている。そして、このような複合材料の一例として、主に高弾性率の発現を目的とした板発条が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−211734号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記板発条等のような複合材料で曲げ方向に応じて剛性の差を生じさせようと試みる場合、図7(a),(b)に示すように、第1層部51及び第2層部52を積層し、第1層部51と第2層部52とで弾性率がそれぞれ異なるように構成する方法が考えられる。実際に、第1層部51には弾性率が引張時で68GPa、圧縮時で67GPaのものを、第2層部52には弾性率が引張時で230GPa、圧縮時で200GPaのものを使用し、図7(a),(b)の各状態における剛性の差を測定した。その結果、各状態における剛性の差は、最大で7.6%であった。そして、このように各層で弾性率を違えても、曲げ方向に応じた剛性の差は極僅かなものとしかならないという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、曲げ方向に応じて剛性の差を顕著に生じさせることができる複合材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の複合材料の発明は、繊維によって強化された合成樹脂製の複合材料であって、芯部と、当該芯部に対して積層された表層部とを有し、これら芯部及び表層部はそれぞれが繊維によって強化されたものであるとともに、少なくとも当該表層部を切削して撓み調整凹部を設けるとともに、当該撓み調整凹部の内部には装填材を装填したことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の複合材料の発明は、請求項1に記載の発明において、前記芯部及び表層部は、それぞれが繊維を所定方向に配列して得られた複数枚のシート材を積層して構成されたものであることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の複合材料の発明は、請求項2に記載の発明において、前記撓み調整凹部の周縁には、芯部を構成するシート材同士を縫合することによって補強部を設けたことを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の複合材料の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記芯部を強化する繊維は、前記表層部を強化する繊維に比べて破断歪みが大きいものであることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の複合材料の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記表層部は、前記芯部に比べて切削性に優れたものであることを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の複合材料の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記撓み調整凹部を外部から覆う被覆材を設けたことを要旨とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、実施形態の複合材料は、強化材として繊維を含むことにより、同繊維で強化された合成樹脂製のものであり、長板状に形成されている。当該複合材料は、芯部11と、当該芯部11の一面(表面)側に積層された表層部としての第1表層部12と、芯部11の他面(裏面)側に積層された表層部としての第2表層部13とを備えている。さらに、前記芯部11は、第1表層部12側に配設された第1層14と、第2表層部13側に配設された第2層15とから形成されている。これら第1表層部12、第2表層部13、第1層14及び第2層15は、それぞれが強化材である繊維を含むシート材を複数枚積層することによって板状に形成されたものである。
【0013】
当該複合材料において、対向する一対の面となる表面と裏面のうち、一面側となる表面には複数の撓み調整凹部16が設けられている。当該撓み調整凹部16は、第1表層部12及び芯部11の第1層14と、芯部11の第2層15の表面とを切削して形成されている。すなわち、撓み調整凹部16は、その内側部が第1表層部12及び第1層14によって、内底部が第2層15によって形作られている。この撓み調整凹部16の内部には、矩形状をなす装填材17が装填されている。
【0014】
当該装填材17は、その縦幅(複合材料の長手方向の長さ)及び横幅(複合材料の短手方向の長さ)が撓み調整凹部16の縦幅及び横幅と略同一になるように形成されている。この装填材17は、その側面と撓み調整凹部16の内側面との間に出来る限り隙間が形成されないように、撓み調整凹部16の内部に嵌入されている。また、装填材17の高さは、撓み調整凹部16の深さに比べて短くなっている。当該装填材17には、変形しづらい硬質の材料を使用することが好ましい。これは、複合材料の形状変化時において、撓み調整凹部16の変形を抑制するためである。このような材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄等の金属、硬質ゴム、硬質樹脂等が挙げられる。
【0015】
当該複合材料は、両端面を除く外周面が被覆材18によって被覆されている。この被覆材18は、撓み調整凹部16を外部から覆うことにより、撓み調整凹部16の内部から装填材17が抜け出すことを規制するものである。また、撓み調整凹部16の周縁部である両側部には、補強部19が設けられている。この補強部19は、芯部11となる第1層14及び第2層15を構成するそれぞれのシート材同士を補強糸20で厚み方向に縫合することによって形成されている。そして、これら補強部19は、第1層14と第2層15との間の剥離、あるいは第1層14及び第2層15を構成するそれぞれのシート材同士の間の剥離を抑制するように機能している。当該補強糸20には、引張り応力に対し、切れ、伸び等の変形を発生しにくい糸を使用することが好ましい。これは、複合材料の形状変化時に各シート材同士が剥離しようとするとき、当該補強糸20には主に引張り応力が加わるためである。このような糸としては、アラミド繊維製の糸、ポリエステル繊維製の糸等が挙げられる。
【0016】
当該複合材料において、第1表層部12、第2表層部13、第1層14及び第2層15をそれぞれ構成するシート材は、繊維を所定方向に配列して得られたものである。このシート材に対して合成樹脂は、シート材によって複合材料を所定形状に成形する前に予め又は成形するとき、未硬化の状態で含浸されるようになっている。例えば、複合材料を成形するときに未硬化の合成樹脂を含浸させるものとして、繊維のみからなるシート材が挙げられる。これに対し、複合材料を所定形状に成形する前に予め未硬化の合成樹脂が含浸されたものとして、所謂プリプレグ等のようなシート材が挙げられる。この実施形態では、繊維のみからなるシート材を用い、合成樹脂は複合材料を所定形状に成形するときにシート材に含浸させるものとする。なお、成形するときに合成樹脂を含浸させる場合、合成樹脂中に気泡が生じ、強度低下等の不具合が起こることを抑制するため、真空脱泡等の作業を必要とする場合がある。
【0017】
前記合成樹脂には熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の何れを使用してもよく、所望に応じて適宜選択される。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。なお、第1表層部12、第2表層部13、第1層14及び第2層15には、それぞれに異なる種類の合成樹脂を使用してもよいし、あるいは全て同じ種類の合成樹脂を使用してもよい。
【0018】
前記繊維は、複合材料を曲げたり、捻ったり等した際、第1表層部12、第2表層部13、第1層14及び第2層15の剛性を向上させる強化材としての機能の他、それらが折れたり、変形したり等して破損することを抑制する補強材としての機能を有する。従って、当該繊維には、切れたり、延伸されたり等されにくい、つまり剛性の高いものを使用することが好ましい。このような剛性の高い繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、カーボン(炭素)繊維等の合成繊維が挙げられる。
【0019】
当該繊維を積層する方向(プライ方向)、つまり各シート材におけるそれぞれの繊維の配列方向は、所望する力学特性に応じて適宜変更される。また同様に、繊維の積層数(プライ数)、つまりシート材を積層する枚数も、所望する力学特性に応じて適宜変更される。例えば、繊維を複合材料の長手方向と平行に配列した場合、プライ方向の配向角が0゜であり、この場合には複合材料の長手方向における引張、圧縮、曲げ等の強度、剛性等を向上させた力学特性とすることができる。これとは逆に繊維を複合材料の短手方向と平行に配列した場合、プライ方向の配向角が90゜であり、この場合には複合材料の短手方向における引張、圧縮、曲げ等の強度、剛性等を向上させた力学特性とすることができる。また、繊維を複合材料の長手方向に対して45゜傾けた場合、プライ方向の配向角は45゜であり、この場合には複合材料の長手方向を軸とした捻れ等に対する強度、剛性等を向上させた力学特性とすることができる。
【0020】
当該複合材料においては、主に撓み調整凹部16を設けることによる強度低下、剛性低下等を抑制するため、プライ方向及びプライ数が適宜変更される。また、当該繊維は、1本ずつ単純に積層するのみならず、複数本を織り上げる、編み上げる等して織布、編布等といった布帛としてもよい。例えば、繊維を織り上げて織布とする場合、織り上げる方法として、平織、繻子織、綾織等が挙げられるが、各方法で得られた織布は、それぞれが異なる力学特性を示し、所望に応じて適宜使い分け、組み合わせ等される。
【0021】
各シート材において、芯部11を強化するためにシート材に使用される繊維は、第1表層部12及び第2表層部13を強化するためにシート材に使用される繊維に比べ、JIS R 7601に規定される破断歪みが同じか又は大きいものとすることが好ましい。具体的に、芯部11を強化する繊維は、破断歪みが2〜6%のものとすることが好ましい。また、第1表層部12及び第2表層部13を強化する繊維は、芯部11を強化する繊維の破断歪みを基準に、その破断歪みが同じか又は小さいものとすることが好ましい。
【0022】
ここで、繊維の破断歪みと、複合材料を構成する第1表層部12等の剛性との関係について説明する。第1表層部12等の剛性は、主として強化する繊維の剛性と相関する関係にあり、シート材に使用される繊維の剛性が高まるに従って第1表層部12等の剛性も高まる。一方、これら繊維の剛性は、繊維の破断歪みと逆相関の関係にあり、繊維の剛性が高まるに従って繊維の破断歪みは小さくなる。これは、繊維は、その剛性が高まった分だけ破断しにくくなり、破断時に生じた歪みも小さくなるためである。
【0023】
ところで、当該複合材料を曲げる際、後述するが、特に他面(裏面)側の方向へ曲げたときには、その曲げに係る応力が撓み調整凹部16の内底部に集中することとなる。この撓み調整凹部16の内底部を剛性の高いものとした場合、当該内底部を強化する繊維の破断歪みは小さくなり、曲げによる変形が過剰に大きくなれば、当該内底部を強化している繊維が破断してしまい、複合材料が折れる等の不具合が発生しやすくなる。従って、過剰に大きな変形に耐え得る複合材料とするためには、撓み調整凹部16の内底部を構成する芯部11において、これを強化する繊維を他箇所である第1表層部12等を強化する繊維に比べ、破断歪みが大きいものとすることが好ましい。そして、芯部11を強化する繊維を破断歪みの大きなものとする、具体的には破断歪みを2%以上とすることにより、当該複合材料は、撓み調整凹部16の内底部に集中する応力を緩和し、破損等の不具合の発生を抑制している。また、繊維に破断歪みが過剰に大きなもの、具体的には破断歪みが6%を超えるものを使用する場合、曲げの応力に繊維が抗しきれず伸びてしまい、芯部11を十分に強化することができなくなるおそれがある。
【0024】
さらに、芯部11を強化する繊維は、第1表層部12及び第2表層部13を強化する繊維に比べ、破断歪みが大きいものとすることがより好ましい。この芯部11の繊維が第1表層部12等の繊維に比べて破断歪みが大きいということは、芯部11の剛性が第1表層部12等の剛性に比べ、低いことを意味する。換言すれば、第1表層部12及び第2表層部13は剛性の高いものであり、芯部11は柔軟性の高いものである。このように、第1及び第2表層部12,13を強化する繊維を破断歪みの小さなものとし、それらの剛性を高めることにより、複合材料が元の形状を保持することができ、曲げた後でも形状が変化したままとなることを防止することができる。
【0025】
なお、芯部11を強化する繊維を破断歪みの大きなものとすることは、芯部11の剛性が第1表層部12等の他箇所に比べ劣ることとなり、複合材料全体の剛性が低下するとも考えられる。しかし、複合材料全体に対する各箇所の剛性の影響は、複合材料の厚さ方向において、中心からの距離の3乗に比例して大きくなる。つまり、厚さ方向の中心に近づくに従い、複合材料全体の剛性に与える影響は、小さくなる。従って、厚さ方向の中心を含む芯部11の剛性が複合材料全体に与える影響は、極僅かなものとなり、実際の複合材料全体の剛性の低下も極僅かである。
【0026】
前記第1表層部12及び第2表層部13は、芯部11に比べ、切削性に優れたものとすることが好ましい。加えて、芯部11の第1層14は、芯部11の第2層15に比べ、切削性に優れたものとすることが好ましい。ここで、切削性とは、第1表層部12等を強化するそれぞれの繊維について、当該繊維の切断性又は当該繊維を切断した際の毛羽の発生率をいう。つまり、切削性に優れたものとは、換言すれば複合材料を構成する第1表層部12等を切削した際、その切断面に繊維の毛羽立ちが発生しにくいものを示す。
【0027】
当該切削性の優劣は、次に示すような方法で評価される。すなわち、評価方法は、所定サイズに成形された複合材料を試料片とし、この試料片に対して合計で3本の溝を切削形成した後、各溝の内面でそれぞれ毛羽の有無を観察するものである。試料片には、JIS K 7016−1、7072に規定された方法で作製し、そのサイズを厚さ4mm、長さ50mm、幅20mmとしたものが使用される。切削形成には、Φ1の超硬エンドミルを装着したフライス盤が使用される。溝は、深さが2mmとされ、試料片の幅方向へ延びるように形成される。毛羽の有無は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス製のVH−8000)を使用し、レンズ倍率100倍として、各溝のそれぞれの両端部(合計で6箇所)で観察した。優劣の評価基準は、観察された6箇所のうち、いずれか1つで毛羽が1本以上観察された試料片を切削性に劣るものとし、これ以外、つまり観察された6箇所の全てで毛羽が発生しなかった試料片を切削性に優れたものとした。そして、第2層15、第1表層部12及び第2表層部13には、切削性に優れたものとした試料片に使われた材料を使用することとした。
【0028】
上記のように、第1表層部12及び第2表層部13を芯部11に比べて切削性に優れたものとする又は第1層14を第2層15に比べて切削性に優れたものとすることにより、撓み調整凹部16の形成時における切削作業を容易なものとすることが可能である。特に、第1表層部12等を切削性に優れたものとした場合、撓み調整凹部16の内面で毛羽立ちの発生を抑制することが可能であり、撓み調整凹部16の内部に装填材17を隙間なく装填することが可能となる。この切削性は、第1表層部12等を強化する繊維を適宜変更することによって調整される。この実施形態では、第1表層部12及び第2表層部13を強化する繊維にはカーボン繊維が、第1層14を強化する繊維にはガラス繊維が、第2層15を強化する繊維にはアラミド繊維が使用されている。すなわち、カーボン繊維及びガラス繊維は、アラミド繊維に比べて切断しやすく、切断時に繊維の毛羽立ちを発生させにくい繊維である。
【0029】
次に、当該複合材料の製造方法について説明する。
当該複合材料は、前記芯部11を形成する芯部形成工程、第1表層部12等を形成する表層部形成工程、撓み調整凹部16を形成する切削工程、装填材17を装填する装填工程及び被覆材18を設ける被覆工程の各工程を経て製造される。
【0030】
前記芯部形成工程においては、まず第1層14を構成するシート材及び第2層15を構成するシート材が順番に積層される。このとき、各シート材は、目的とする複合材料のサイズにもよるが主として、その縦幅及び横幅が当該複合材料の縦幅及び横幅よりも長いものが使用される。その後、図4に示すように、撓み調整凹部16を設ける位置に応じ、ミシン等を使用して補強糸20で各シート材を縫合し、補強部19を形成することにより、芯部11が形成される。なお、当該芯部11が形成された時点で、未だ合成樹脂は含浸されていない。
【0031】
当該補強部19の形成において、補強糸20は、撓み調整凹部16の一側部に1列以上が縫い込まれる。この実施形態では、撓み調整凹部16の一側部に2列の補強糸20が縫い込まれている。また、2列以上の補強糸20を縫い込む場合、補強糸20同士の間隔は、3±1mmとすることが好ましい。補強糸20同士の間隔が過剰に短い場合、撓み調整凹部16の形成時に補強糸20を切断してしまうおそれがある。補強糸20同士の間隔が過剰に長い場合、第1層14と第2層15との剥離又は第1層14及び第2層15を構成するそれぞれのシート材同士の剥離を抑制することができなくなるおそれがある。
【0032】
前記表層部形成工程においては、図5に示すように、まず基台31の表面において、第2表層部13を構成する複数枚の第2シート材13aが積層される。次いで、積層された第2シート材13aの表面に芯部形成工程で形成された芯部11が積層され、当該芯部11の表面に第1表層部12を構成する複数枚の第1シート材12aが積層される。その後、芯部11を構成するシート材、第1表層部12及び第2表層部13を構成するそれぞれのシート材に未硬化の合成樹脂が含浸される。そして、高温、高圧条件下で未硬化の合成樹脂を硬化させることにより、第2表層部13、芯部11及び第1表層部12がそれぞれ積層された状態で接合され、複合素材が形成される。なお、合成樹脂を硬化させる手段は、例えば基台31を金型等として使用したホットプレス法、レジンインジェクション法等、オートクレーブ等による方法等が挙げられ、特には限定されない。
【0033】
前記切削工程においては、表層部形成工程にて形成された複合素材に対して切削加工が施される。この切削加工においては、複合素材を切削することが可能ならばいかなる方法を用いてもよく、例えばダイヤモンド製のドリル、ブレード等といった工具を用いる方法、ウォータージェット切断、レーザー切断等の方法が挙げられる。そして、撓み調整凹部16が複合素材上の予め定められた位置に形成される。すなわち、複合材料を製造するに当たって、当該複合材料に加わる応力分布、サイズ、使用目的等に応じて撓み調整凹部16を設ける位置、撓み調整凹部16の縦幅等が予め設定される。この設定に従い、前記芯部形成工程における補強糸20の縫い込み位置、当該切削工程における撓み調整凹部16の形成位置が定められる。
【0034】
前記装填工程においては、撓み調整凹部16のサイズに応じて予め形成された装填材17が当該撓み調整凹部16の内部に嵌入される。当該撓み調整凹部16の内面においては、前記切削工程で形成する際に繊維が切断されることにより、若干ではあるが毛羽立ちが発生している可能性がある。このまま装填材17を嵌入しようとすれば、毛羽立ちが発生した分だけ撓み調整凹部16の内部が狭まっており、装填材17を装填することができなくなったり、装填材17の外側面と撓み調整凹部16の内側面との間に隙間が形成されたり等の不具合を生じる。そこで、装填材17の厚みを撓み調整凹部16の深さに比べて短くすることにより、図2に示したように、撓み調整凹部16の内底部には空間部16aが設けられる。すなわち、当該空間部16aを設けることにより、撓み調整凹部16の内部に装填材17を嵌入するとき、毛羽が空間部16a内へと押し込まれて片寄り、装填材17の嵌入を阻害しないように構成されている。特に、第2層15では毛羽立ちが発生する可能性が高く、当該空間部16aを設けることが有効となる。
【0035】
前記被覆工程においては、複合素材の表面に被覆材18が設けられ、当該被覆材18で撓み調整凹部16が外部から被覆されることにより、複合材料が形成される。この被覆材18を設ける方法としては、主に複合素材の表面で被覆材18を成形する方法と、熱収縮性を有する材料から形成された筒体を外嵌する方法とが挙げられる。この実施形態では後者の方法で被覆材18が設けられる。また、複合材料の形状変化時に当該被覆材18もこの形状変化に追従することができるように、被覆材18に使用する材料にはゴム、ビニル、エラストマー等の弾性材料を使用することがより好ましい。
【0036】
続いて、当該複合材料の作用について説明する。
図6(a)に示すように、当該複合材料を一面(表面)側の方向へ曲げたとき、凸状に曲げられた第2表層部13、第2層15等には伸張方向に応力が加わる。これとは逆に、凹状に曲げられた第1表層部12、第1層14等には収縮方向に応力が加わる。このとき、撓み調整凹部16は、加わる応力によって縦幅を狭めるように変形しようとする。しかし、撓み調整凹部16の内部には装填材17が装填されていることから、当該装填材17によって撓み調整凹部16の変形が抑制され、応力は同装填材17を縦幅方向へ潰すように作用することとなる。特に、装填材17の外側面と撓み調整凹部16の内側面との間には隙間がほとんど形成されていないことから、当該応力は撓み調整凹部16を変形させるように作用することはなく、ほぼ全てが装填材17を潰すように作用する。なお、装填材17の外側面と撓み調整凹部16の内側面との間に隙間が存在すれば、その隙間の分だけ撓み調整凹部16が変形し、当該撓み調整凹部16が設けられた箇所で複合材料が破損する可能性がある。この結果、一面側の方向へ曲げられた複合材料には、主に第2表層部13等に加わる伸張方向の応力と、第1表層部12等に加わる収縮方向の応力と、そして装填材17を縦幅方向へ潰す力とが作用する。
【0037】
一方、図6(b)に示すように、当該複合材料を他面(裏面)側の方向へ曲げたとき、凸状に曲げられた第1表層部12、第1層14等には伸張方向に応力が加わり、凹状に曲げられた第2表層部13、第2層15等には収縮方向に応力が加わる。このとき、撓み調整凹部16は、加わる応力によって縦幅を拡げるように変形しようとする。この場合、装填材17が撓み調整凹部16の変形を抑制することはなく、撓み調整凹部16は、このまま変形される。さらには、撓み調整凹部16を切削によって形成したことにより、加わる応力に対して第1表層部12等はその全体で一体的に抗することができず、各撓み調整凹部16の間の部分でそれぞれ個々に抗することとなる。この結果、他面側の方向へ曲げられた複合材料には、主に第1表層部12等に加わる伸張方向の応力と、第2表層部13等に加わる収縮方向の応力とが作用する。さらに、第1表層部12等に加わる応力は、撓み調整凹部16を設けたことによって緩和される。従って、複合材料に作用する力は、一面側の方向へ曲げたときに比べ、他面側の方向へ曲げたときには圧倒的に弱くなり、一面側の方向と他面側の方向とで曲げ方向に応じて剛性の差が顕著に生じる。
【0038】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態の複合材料によれば、対向する一対の面の内、一方の面には撓み調整凹部16が凹設されており、当該撓み調整凹部16には装填材17が装填されている。この複合材料を撓み調整凹部16側が凹となるように曲げた場合、撓み調整凹部16を変形させようとする応力が装填材17を潰そうとする力として働き、さらに装填材17がこの力に抗することにより、当該曲げ方向における変形は抑制される。これとは逆に撓み調整凹部16側が凸となるように曲げた場合、撓み調整凹部16の変形は抑制されず、さらには第1表層部12全体を伸張させるように加わろうとする応力も撓み調整凹部16を設けたことによって緩和される。従って、一方向に曲げたときと他方向に曲げたときでそれぞれの弾性率が大きく異なり、曲げ方向に応じて剛性の差を顕著に生じさせることができる。
【0039】
・ また、撓み調整凹部16の両側部にはシート材同士を補強糸20で縫合することによって補強部19が設けられている。このため、複合材料を曲げたときに各シート材同士の間等で剥離が発生することを抑制することができ、複合材料の破損を防止することができる。
【0040】
・ また、芯部11を強化する繊維には、第1及び第2表層部12,13を強化する繊維に比べて破断歪みが大きいものが使用されている。このため、複合材料を曲げたときの前後で、剛性の高い第1及び第2表層部12,13によって形状を保持することができるとともに、曲げによって撓み調整凹部16の内底部に加わる応力を柔軟性の高い芯部11で緩和することができる。
【0041】
・ また、第1及び第2表層部12,13には、芯部11に比べて切削性の優れたものが使用されている。このため、撓み調整凹部16を形成しやすく、かつ撓み調整凹部16の内面に繊維の毛羽立ちが発生し、装填材17の周囲に隙間が形成されることを抑制することができる。
【0042】
・ また、複合材料の外面は、撓み調整凹部16を外部から覆うように、被覆材18によって被覆されている。このため、複合材料を曲げて撓み調整凹部16が拡がったとき、装填材17が撓み調整凹部16の内部から抜け出すことを防止することができる。さらには、当該被覆材18が複合材料の外面全体を被覆することにより、当該被覆材18で複合材料を外部から補強するとともに、複合材料が折れたり等して破損してしまった場合にも破損片等が散逸することを防止することができる。
【0043】
【実施例】
以下、前記実施形態をさらに具体化した実施例及び比較例について説明する。
(実施例)
複数枚のシート材を積層することにより、図2に示したような、一面側に撓み調整凹部16を有し、当該撓み調整凹部16の内部に装填材17を装填した複合材料を得た。このとき、第1表層部12及び第2表層部13は、繊維としてカーボン繊維を使用した織物からなるシート材より形成し、カーボン繊維の破断歪みは1.5%であった。芯部11においては、第1層14をガラス繊維を使用した織物からなるシート材より、第2層15をアラミド繊維を使用した織物からなるシート材より形成し、破断歪みはガラス繊維が3.0%、アラミド繊維が2.8%であった。その後、図6(a),(b)に示したように、x及びyの長さを適宜変更しつつ複合材料を曲げ、それぞれで剛性を測定した。そして、x及びyの長さが同値の状態で、図6(b)の状態における剛性と、図6(a)の状態における剛性との差を測定した。その結果、各状態における剛性の差は、最大で100%となり、従来の7.6%に比べて差が顕著であることが示された。
【0044】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 実施形態では複合材料を長板状としたが、当該複合材料の形状は長板状に限定されるものではなく、円板状等の板状、箱状、筒状等の立体状等としてもよい。
【0045】
・ 実施形態では撓み調整凹部16を第1表層部12側のみに設けたが、これに限らず第2表層部13側のみ、又は第1表層部12側及び第2表層部13側の両方に設けてもよい。特に、第1表層部12側及び第2表層部13側の両方に撓み調整凹部16を設ける場合には、第1表層部12側に設けられる撓み調整凹部16に対し、第2表層部13側に設けられる撓み調整凹部16を位置ずれさせて配設してもよい。このように撓み調整凹部16を位置ずれさせて配設した場合、同一の複合材料でありながら曲げ方向に応じた剛性の差を曲げ箇所毎に違えて発現させることができる。
【0046】
・ 第1表層部12又は第2表層部13と芯部11、第1層14と第2層は、実施形態のように未硬化の合成樹脂を硬化させるときに接合されるものに限らず、接着剤等を用いて接合してもよい。
【0047】
・ 補強糸20による縫合を省略することにより、補強部19を省略して複合材料を構成してもよい。
・ 被覆材18は、撓み調整凹部16内からの装填材17の抜け出しを規制可能ならば、必ずしも複合材料の外面全体に設ける必要はなく、撓み調整凹部16のみを覆うように設けてもよい。また、被覆材18を省略するとともに、接着等の方法によって撓み調整凹部16内からの装填材17の抜け出しを規制してもよい。
【0048】
・ 第1表層部12又は第2表層部13のいずれか一方を省略して複合材料を構成してもよい。
・ 実施形態では複合材料を撓み調整凹部16が設けられた側へ曲がりにくくなるように構成したが、これとは逆に撓み調整凹部16が設けられた側へ曲がりやすくなるように構成してもよい。この場合、装填材17には、撓み調整凹部16の過剰な変形を抑制しつつも、作用する応力によって変形可能な程度の柔らかさを有する、例えば合成ゴム、エラストマー、スポンジ、コイルスプリング等の弾性体を使用することが好ましい。
【0049】
・ 実施形態では、繊維のみからなるシート材を使用したが、これに限らず、例えばプリプレグ等のように予め繊維に未硬化の合成樹脂を含浸させたシート材を使用してもよい。
【0050】
・ 実施形態では、シート材を積層し、最後に未硬化の合成樹脂を含浸させたが、これに限らず、例えば芯部11を形成した後、同芯部11に合成樹脂を含浸させた後、第1表層部12等を構成するシート材を積層してもよい。また、合成樹脂の硬化についても、芯部11に合成樹脂を含浸させ、これを硬化させた後、予め硬化させた第1表層部12等を積層したり、合成樹脂が未硬化のまま第1表層部12等を積層させたり等してもよい。
【0051】
・ 芯部11において、撓み調整凹部16の内底部を構成する第2層15は、第1層14に比べてJIS R 7601に規定される破断歪みが大きいものを使用することが好ましい。換言すれば、芯部11の第2層15は、第1層14に比べ、柔軟性が高く、軟らかいものとすることが好ましい。これは、複合材料を曲げたときに応力が集中する撓み調整凹部16の内底部が、第2層15によって形作られているためである。
【0052】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記撓み調整凹部を、対向する一対の面のうち一面側のみに設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の複合材料。
【0053】
・ 前記芯部は、撓み調整凹部の内側部を形成する第1層と、撓み調整凹部の内底部を形成する第2層とを備えるとともに、第2層は、第1層に比べて切削性の優れたものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の複合材料。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、曲げ方向に応じて剛性の差を顕著に生じさせることができる。
【0055】
請求項2、請求項3又は請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、複合材料の形状変化時における破損を抑制することができる。
【0056】
請求項5に記載の発明によれば、他の請求項に記載の発明の効果に加えて、撓み調整凹部の内面における毛羽の発生を抑制することができる。
請求項6に記載の発明によれば、他の請求項に記載の発明の効果に加えて、装填材が撓み調整凹部の内部から抜け出すことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の複合材料を示す一部を破断した斜視図。
【図2】複合材料を示す縦断面図。
【図3】複合材料を示す横断面図。
【図4】芯部を形成した状態を示す斜視図。
【図5】複合材料を形成する状態を示す概念図。
【図6】(a)は実施形態の複合材料を一方向に曲げた状態を示す概念図、(b)は実施形態の複合材料を他方向に曲げた状態を示す概念図。
【図7】(a)は従来の複合材料を一方向に曲げた状態を示す概念図、(b)は従来の複合材料を他方向に曲げた状態を示す概念図。
【符号の説明】
11…芯部、16…撓み調整凹部、17…装填材、18…被覆材、19…補強部。
Claims (6)
- 繊維によって強化された合成樹脂製の複合材料であって、
芯部と、当該芯部に対して積層された表層部とを有し、これら芯部及び表層部はそれぞれが繊維によって強化されたものであるとともに、少なくとも当該表層部を切削して撓み調整凹部を設けるとともに、当該撓み調整凹部の内部には装填材を装填したことを特徴とする複合材料。 - 前記芯部及び表層部は、それぞれが繊維を所定方向に配列して得られた複数枚のシート材を積層して構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
- 前記撓み調整凹部の周縁には、芯部を構成するシート材同士を縫合することによって補強部を設けたことを特徴とする請求項2に記載の複合材料。
- 前記芯部を強化する繊維は、前記表層部を強化する繊維に比べて破断歪みが大きいものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の複合材料。
- 前記表層部は、前記芯部に比べて切削性に優れたものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の複合材料。
- 前記撓み調整凹部を外部から覆う被覆材を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の複合材料。
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JPH08156186A (ja) * | 1994-12-12 | 1996-06-18 | Sakai Composite Kk | 複合板およびその製造方法 |
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2003
- 2003-08-26 JP JP2003208887A patent/JP2005066870A/ja active Pending
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