JP2005064819A - アレイアンテナ受信装置及び受信信号の校正方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 アンテナ部において不要輻射が発生することなく、かつ、受信信号の電力レベルが低いときでも、受信信号を高精度で校正できるアレイアンテナ受信装置を提供すること。
【解決手段】 アンテナ部111に捕捉される受信信号の電力レベルが低いときに限り、基準信号発生部123が作動し、基準信号が生成される。誤差算出部122は、基準信号が多重された受信信号についての情報S3と校正用信号S4とを比較することにより、受信ユニット110における信号処理によって受信信号に生じた受信信号の誤差を算出し、算出された受信信号の誤差に基づいて受信信号処理部121に受信信号の補償を命じる。
【選択図】 図1
【解決手段】 アンテナ部111に捕捉される受信信号の電力レベルが低いときに限り、基準信号発生部123が作動し、基準信号が生成される。誤差算出部122は、基準信号が多重された受信信号についての情報S3と校正用信号S4とを比較することにより、受信ユニット110における信号処理によって受信信号に生じた受信信号の誤差を算出し、算出された受信信号の誤差に基づいて受信信号処理部121に受信信号の補償を命じる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、アレイアンテナ方式の無線装置及び受信信号の校正方法に関する。特に、アンテナ指向性を制御できるアダプティブアレイアンテナ方式の無線装置及びこの装置を用いた受信信号の校正方法に関する。
従来、複数の無線部を備え、その無線部を介して送受信される信号に位相や振幅の重み付け処理を行うことによってアンテナ指向性を制御するアダプティブアレイアンテナ方式の無線装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなアダプティブアレイアンテナ方式の無線装置では、そのアンテナ指向性を通信開始前に予め設定することよって送受信される信号の信号対干渉波比を改善することができ、使用する無線通信回線の周波数利用効率や品質を高めることができる。
図7に、特許文献1に記載のアダプティブアレイアンテナ方式の無線装置の構成を示す。このアダプティブアレイアンテナ方式の無線装置は、アンテナ素子71、重み付け器72及び図示しない増幅器等を含む無線部を複数備える。各無線部における重み付け器72は、送受信される信号の位相及び振幅にそれぞれ重み付け処理を施す。この重み付け処理によって前記無線装置のアンテナ指向性が制御され、その結果この無線装置の信号対干渉波比が改善されることになる。
しかしながら、このようなアダプティブアレイアンテナ方式の無線装置では、各無線部の個体差等によって送受信される信号に初期設定と異なる重みが負荷されるようになり、前記無線装置のアンテナ指向性が損なわれる場合が生じる。そのため、アダプティブアレイアンテナ方式の無線装置では、重みが負荷された送受信される信号についてその位相又は振幅を周期的に観測する必要があり、その観測値に基づいて前記重みを校正する必要がある。その校正方法の一例が、特許文献2に記載されている。
図8に、特許文献2に記載されたアダプティブアレイアンテナ方式の無線装置の構成を示す。この無線装置は、アンテナ部81、多重分配回路82、無線送受信部83、多重分配回路84及びユーザ信号処理部85からなる無線信号処理部をn個具備し、さらに多重分配回路86、キャリブレーション信号送受信処理部87、キャリブレーション信号処理部88及びキャリブレーション信号間隔決定部89からなる校正用回路を具備する。
次いで、特許文献2に記載の無線装置におけるn個のアンテナ部81で受信される受信信号の位相及び振幅の校正方法について、この無線装置に具備される構成部の動作と共に説明する。この無線装置では、個々のアンテナ部81で受信された受信信号に多重分配回路82においてそれぞれキャリブレーション信号が多重される。キャリブレーション信号が多重された受信信号は、無線送受信部83に入力され、ここで増幅や復調等の公知の信号処理が施される。その後、受信信号は多重分配回路84に入力され、ここで前記キャリブレーション信号が抽出される。n個の多重分配回路84においてそれぞれ抽出されたキャリブレーション信号は、全てキャリブレーション信号処理部88に入力される。そして、キャリブレーション信号処理部88において、各キャリブレーション信号の位相及び振幅が相互に比較されることにより、n個の無線送受信部83におけるそれぞれの信号処理によって生じた影響即ちキャリブレーション信号間の位相及び振幅に関する歪が算出される。そして、複数の無線信号処理部それぞれについて算出された歪に関する情報が、キャリブレーション信号処理部88から各々対応するユーザ信号処理部85に入力される。この歪に関する情報を入力されたユーザ信号処理部85では、その情報に基づいて多重分配回路84から入力されてくる受信信号に重み付け処理が施される。この重み付け処理により、各無線送受信部83での信号処理によって生じる受信信号の歪が解消される。
また、その他の受信信号の校正方法として、図9に示す構成からなるアダプティブアレイアンテナ方式の無線装置を用いる方法が例示される。この無線装置の各構成部の動作について、以下に説明する。アンテナ素子91で捕捉された受信信号は、無線受信系92において増幅、周波数ダウンコンバート及び直交復調等の信号処理を施され、その後ベースバンド部96に入力される。また、この受信信号はアンテナ素子91から無線受信系92の間で分配され、この分配された受信信号が減衰器93及び無線部選択部94を介して校正用無線受信系95に入力される。校正用無線受信系95に入力された受信信号は、周波数ダウンコンバートや直交復調等の信号処理を施された後にベースバンド部96に入力される。ベースバンド部96では、無線受信系92を経由して入力されてくる受信信号と校正用無線受信系95を経由して入力されてくる受信信号とが比較され、それら受信信号の位相及び振幅の差即ち無線受信系92における信号処理によって生じた受信信号の歪が測定される。そして、無線部選択部94を適宜切り替えることにより、複数の無線受信系92それぞれについての受信信号の歪が測定され、その歪をベースバンド部96で補償することにより、複数の無線受信系92間における受信信号の位相及び振幅のばらつきが抑制される。このベースバンド部96における補償により、この無線装置は、所望のアンテナ指向性を獲得して維持することができる。
特開平9−219615号公報
特開2002−353865号公報
しかしながら、特許文献2に記載の受信信号の校正方法では、受信信号の電力レベルが高いときに電力の小さいキャリブレーション信号を受信信号に多重すると、キャリブレーション信号にとって受信信号が大きな雑音となってしまい、キャリブレーション信号を基準とした場合の信号対雑音電力比が劣化して受信信号の校正精度が低下する問題がある。また、特許文献2に記載の校正方法では、電力の大きいキャリブレーション信号を受信信号に多重すると、アンテナ部81において不要輻射が発生するという問題がある。
また、図9に記載の無線装置においても、アンテナ素子91からの受信信号の電力レベルが低いときには、受信信号が雑音の影響を受けやすくなり、受信信号の校正精度が劣化するという問題がある。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、アンテナ素子において不要輻射が発生することなく、かつ、受信信号の電力レベルが低いときでも、受信信号を高精度で校正できるアレイアンテナ受信装置及びその受信信号の校正方法を提供することを目的とする。
本発明に係るアレイアンテナ受信装置は、受信信号の受信レベルが閾値以下のときに限り、基準信号を発生させる基準信号発生手段と、前記受信信号に前記基準信号を多重する複数の受信手段と、前記基準信号が多重された受信信号と前記基準信号とを比較することによって前記受信手段それぞれにおける前記受信信号の誤差を算出する誤差算出手段と、算出された前記受信信号の誤差に基づいて、前記受信信号を補正する受信信号処理手段と、を具備する構成を採る。
この構成によれば、受信信号の受信レベルが所定の閾値以下のときに限り、基準信号が生成されるため、校正用信号として基準信号が不要なときには基準信号が受信信号に多重されないことから、基準信号が受信信号の雑音となって受信信号を劣化させることを防止することができる。
本発明に係るアレイアンテナ受信装置は、前記発明において、複数の前記受信手段の中から前記受信信号を取り出す前記受信手段を選択する選択手段と、前記選択手段により取り出された前記受信信号を校正用信号として前記誤差算出手段に提供する校正用受信手段と、を具備し、前記基準信号発生手段は、発生させた前記基準信号を前記校正用受信手段に提供し、前記校正用受信手段は、提供された前記基準信号を前記受信信号に多重して前記誤差算出手段に提供する構成を採る。
この構成によれば、前記発明による効果に加えて、基準信号を多重された受信信号が校正用信号として誤差算出手段に提供されるため、校正用信号自身の歪を検出することができる。
本発明に係るアレイアンテナ受信装置は、前記発明において、前記基準信号が多重された前記受信信号における前記基準信号と雑音との電力レベルの比を算出し、算出された電力レベルの比に応じて前記基準信号の電力レベルを調整する電力比算出手段を具備する構成を採る。
この構成によれば、前記発明による効果に加えて、基準信号の電力レベルと雑音の電力レベルとの比に応じて受信信号に多重される基準信号の電力レベルが調整されるため、受信信号が弱電界の場合でも基準信号電力対雑音電力比を受信信号の校正精度が劣化しない値に維持することができる。
本発明に係るアレイアンテナ受信装置は、前記発明において、前記電力比算出手段は、ユーザ別に前記基準信号と前記雑音との電力レベルの比を算出し、算出された電力レベルの比に応じて前記基準信号の電力レベルを調整する構成を採る。
この構成によれば、前記発明による効果に加えて、ユーザ別の基準信号電力対雑音電力比に基づいて受信信号に多重される基準信号の電力レベルが調整されるため、受信信号の電力レベルが低いユーザにとって基準信号が大きな干渉波となって通信品質が劣化する問題を回避することができる。
本発明に係るアレイアンテナ受信装置は、前記発明において、複数の前記受信手段の中から前記受信信号を取り出す前記受信手段を選択する選択手段と、前記選択手段により取り出された前記受信信号を校正用信号として前記誤差算出手段に提供する校正用受信手段と、前記校正用受信手段又は前記基準信号発生手段のいずれか一方を前記選択手段に接続する切替手段と、を具備する構成を採る。
この構成によれば、前記発明による効果に加えて、切替手段が設けられるため、基準信号発生手段と校正用受信手段とを完全に分離することができる。
本発明に係るアレイアンテナ受信装置は、前記発明において、複数の前記受信手段の中から前記受信信号を取り出す前記受信手段を選択する選択手段と、前記選択手段により取り出された前記受信信号を校正用信号として前記誤差算出手段に提供する校正用受信手段と、を具備し、前記受信手段はそれぞれ、入力端子、前記入力端子と方向性のある端子、前記入力端子と反対の方向性のある端子及び前記入力端子と方向性のない端子を備える方向性結合器を有し、前記方向性結合器の前記入力端子に前記受信信号が入力される場合において、前記入力端子と方向性のある端子には前記選択手段を介して前記校正用受信手段が接続され、かつ、前記入力端子と反対の方向性のある端子には前記基準信号が入力され、かつ、前記入力端子と方向性のない端子には前記受信信号処理手段が接続される構成を採る。
この構成によれば、前記発明による効果に加えて、アレイアンテナ受信装置の各構成部が方向性結合器の所定の端子に接続されるため、基準信号が不要輻射を発生させることを防止できると伴に、基準信号発生手段と校正用受信手段とのアイソレーションを十分に確保することができる。
本発明に係るアレイアンテナ受信装置は、前記発明において、複数の前記受信手段の中から前記受信信号を取り出す前記受信手段を選択する選択手段と、前記選択手段により取り出された前記受信信号を校正用信号として前記誤差算出手段に提供する校正用受信手段と、を具備し、前記受信手段はそれぞれ、入力端子、前記入力端子と方向性のある端子、前記入力端子と反対の方向性のある端子及び前記入力端子と方向性のない端子を備える方向性結合器を二つ有し、一方の前記方向性結合器の前記入力端子に前記受信信号が入力される場合において、前記入力端子と方向性のある端子には前記選択手段を介して前記校正用受信手段が接続され、かつ、前記入力端子と反対の方向性のある端子には終端が接続され、かつ、前記入力端子と方向性のない端子には他方の前記方向性結合器の入力端子が接続され、さらに、他方の前記方向性結合器においては、前記入力端子と方向性のある端子には終端が接続され、かつ、前記入力端子と反対の方向性のある端子には前記基準信号が入力され、かつ、前記入力端子と方向性のない端子には前記受信信号処理手段が接続される構成を採る。
この構成によれば、前記発明による効果に加えて、連結された方向性結合器の所定の端子にアレイアンテナ受信装置の各構成部が接続されるため、基準信号が不要輻射を発生させることを防止できると伴に、基準信号発生手段と校正用受信手段とのアイソレーションを容易、かつ、確実に確保することができる。
本発明に係る受信信号の校正方法は、受信信号の電力レベルを測定する測定ステップと、測定された前記受信信号の電力レベルが閾値以下のときに限り、基準信号を発生させる基準信号発生ステップと、前記受信信号に前記基準信号を多重する多重ステップと、前記基準信号が多重された前記受信信号の電力レベルと前記基準信号の電力レベルとを比較することによって前記受信信号への信号処理に起因する前記受信信号の誤差を算出する誤差算出ステップと、算出された前記受信信号の誤差に基づいて前記受信信号を補正する受信信号処理ステップと、を具備するようにした。
この方法によれば、受信信号の受信レベルが所定の閾値以下のときに限り、基準信号が生成されるため、校正用信号として基準信号が不要なときには基準信号が受信信号に多重されないことから、基準信号が受信信号の雑音となって受信信号を劣化させることを防止することができる。
本発明によれば、受信信号の電力レベルが高いときには、受信信号を分配して校正用信号として使用し、一方で受信信号の受信レベルが低いときには、基準信号を発生させてこの基準信号を校正用信号として使用するため、基準信号が受信信号に多重されても、基準信号が受信信号の雑音となって受信信号の校正精度を低下させることを効果的に抑制することができる。
本発明の骨子は、アレイアンテナ受信装置において、受信信号の受信レベルが低いときに限り基準信号を発生させ、発生させた基準信号を校正用信号として受信信号に多重して、基準信号が多重された受信信号と基準信号とを異なる経路で誤差算出部に入力することにより、アレイアンテナ受信装置内の信号処理によって受信信号に生じた受信信号の誤差を算出し、算出された受信信号の誤差に基づいて受信信号を補償することである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、アダプティブアレイアンテナ方式の受信装置であって、複数の受信ユニット110と、ベースバンド部120と、受信ユニット選択部131と、基準信号処理部132と、校正用受信部133と、を具備する。また、受信ユニット110はそれぞれ、アンテナ部111、分配・結合部112及び受信無線部113を具備する。また、ベースバンド部120は、受信信号処理部121、誤差算出部122及び基準信号発生部123を具備する。
図1は、本発明の実施の形態1に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、アダプティブアレイアンテナ方式の受信装置であって、複数の受信ユニット110と、ベースバンド部120と、受信ユニット選択部131と、基準信号処理部132と、校正用受信部133と、を具備する。また、受信ユニット110はそれぞれ、アンテナ部111、分配・結合部112及び受信無線部113を具備する。また、ベースバンド部120は、受信信号処理部121、誤差算出部122及び基準信号発生部123を具備する。
アンテナ部111は、通信相手から送信されてくる無線信号を受信する。また、複数のアンテナ部111が規則的に配置されることにより、アレイアンテナが構成される。
分配・結合部112は、コンデンサや分配合成器等により構成され、アンテナ部111から入力されてくる受信信号を少なくとも2つの経路に分配した後に、その一方の経路における受信信号に基準信号発生部123で生成された基準信号を多重する。なお、分配・結合部112は、基準信号がアンテナ部111側に流入しないように、基準信号を遮断できるバンドパスフィルタ等を具備することが望ましい。
受信無線部113は、低雑音増幅器、ミキサー及び減衰器等で構成され、受信信号の増幅、周波数変換及び利得調整等を行う。
受信信号処理部121は、受信信号及び基準信号の電力レベルやそれらの位相等を測定する測定器を具備し、それらの電力レベルや位相等を常時又は周期的に測定して、その測定データS3を誤差算出部122に入力する。また、受信信号処理部121は、低雑音増幅器、重み付け器乃至変調器等をも具備して、誤差算出部122から入力されてくる誤差補正情報S5に基づいて受信信号が所望の振幅及び位相となるように、前記受信信号に所定の信号処理を施す。さらに、受信信号処理部121は、復調器等を具備し、受信信号を復調して受信データとして出力する。
誤差算出部122は、受信信号処理部121から入力されてくる受信信号及び基準信号の電力レベルやそれらの位相等についての測定データを、具備するメモリに受信ユニット110別に保持する。また、誤差算出部122は、校正用受信部133から入力されてくる校正用信号S4の電力レベルやその位相を測定する測定器を具備し、さらに校正用信号S4の電力レベルや位相等を前記メモリに保持される受信信号処理部121から入力されてくる測定データS3と比較する比較器も具備する。また、誤差算出部122は、具備する比較器を用いて受信ユニット110毎の受信信号又は基準信号の周波数、位相及び電力レベルとその受信ユニット110に対応する校正用信号S4の位相等とを比較して、受信ユニット110毎の受信信号又は基準信号とそれに対応する校正用信号S4とのずれ即ち受信ユニット110毎の受信信号の誤差を算出する。そして、誤差算出部122は、算出された受信ユニット110毎の受信信号の誤差に基づいて、受信信号処理部121が受信信号を受信データとして出力する際に理想的なアンテナ指向性を示すように、受信信号処理部121に対して各受信ユニット110の受信信号の周波数、位相乃至振幅等の補正を命じる誤差補正情報S5を入力する。
また、誤差算出部122は、基準信号発生部123から入力されてくる基準信号S1の位相等と基準信号が多重された校正用信号S4の位相等とを比較する比較器を具備する。ここで、基準信号S1は、基準信号発生部123によって生成された後、誤差算出部122に直接入力されると伴に、基準信号処理部132及び校正用受信部133を経由して誤差算出部122に入力される。従って、誤差算出部122は、基準信号S1と基準信号が多重された校正用信号S4とを比較することにより、基準信号処理部132及び校正用受信部133における信号処理によって基準信号に生じる歪を測定することができる。そして、誤差算出部122は、測定された基準信号の歪に基づいて校正用受信部133の信号処理に関する特性を把握できるため、この把握された特性を利用することにより、前記受信信号の誤差の算出精度を一層高めることができる。これは即ち、誤差補正情報S5の有効性を向上させることと同義であり、前記受信信号の誤差の算出精度が向上すれば、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置のアンテナ指向性がより明確に示されるようになる。
基準信号発生部123は、クロック発信器等を具備し、所定の周波数及び振幅の基準信号を発生させる。なお、基準信号発生部123は、受信信号処理部121において測定される受信信号の電力レベルが所定の閾値以下となったときに限り、ベースバンド部120からの指示に基づいて基準信号を発生させる。従って、受信信号の電力レベルが十分に高いときには、基準信号発生部123は基準信号を発生させない。
受信ユニット選択部131は、半導体スイッチ等によって構成され、複数の受信ユニットの中からいずれかを適宜又は周期的に選択し、選択された受信ユニットの分配・結合部112から受信信号を入力される。
基準信号処理部132は、増幅器、ミキサー乃至減衰器等で構成され、基準信号発生部123から入力されてくる基準信号に対して、増幅、周波数変換乃至利得調整等の信号処理を施す。
校正用受信部133は、低雑音増幅器、ミキサー及び減衰器等で構成され、受信ユニット選択部131から入力されてくる分配・結合部112で分配された受信信号に対して、増幅、周波数変換及び利得調整等の信号処理を施す。さらに、校正用受信部133は、コンデンサや分配合成器等をも具備して、基準信号処理部132から入力されてくる基準信号S2を受信ユニット選択部131から入力されてくる受信信号に多重する。
次いで、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の動作について説明する。先ず、受信ユニット110のアンテナ部111に捕捉される受信信号の電力レベルが十分高い場合について説明する。この場合は、基準信号発生部123は作動せず、基準信号は生成されない。
アンテナ部111によって受信された受信信号は、分配・結合部112に入力され、ここで受信無線部113に向かう経路と受信ユニット選択部131に向かう経路との2つの経路に分配される。受信無線部113において受信信号は、増幅、周波数変換及び利得調整等の周知の信号処理を施される。その後、受信信号は、受信信号処理部121において、その周波数、位相及び電力レベル(振幅)等が測定される。なお、受信信号処理部121における受信信号についての前記測定は、 受信ユニット110毎に行われる。そして、 受信ユニット110毎の受信信号の周波数、位相及び電力レベル等についての測定データS3が、受信信号処理部121から誤差算出部122に入力されてメモリに保持される。
一方で、分配・結合部112によって分配されたもう一つの経路の受信信号は、受信ユニット選択部131によってその帰属する受信ユニット110が選択されたときに、校正用受信部133に入力される。校正用受信部133に入力された受信信号は、増幅、周波数変換及び利得調整等の周知の信号処理を施された後に校正用信号S4として誤差算出部122に入力される。誤差算出部122では、メモリに保持される受信ユニット110毎の測定データS3とそれに対応する校正用信号S4とについて、それぞれの周波数、位相及び電力レベル等が比較され、校正用信号S4を基準とした受信ユニット110毎の測定データS3のずれ即ち受信信号の誤差が算出される。そして、この算出された受信信号の誤差を校正するための誤差補正情報S5が生成され、この誤差補正情報S5が誤差算出部122から受信信号処理部121に入力される。受信信号処理部121では、誤差補正情報S5に基づいて、受信信号が理想的なアンテナ指向性を示すように受信ユニット110別に受信信号が校正される。
このように本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、受信信号の電力レベルが十分高い場合には、基準信号を発生させることなく、受信信号を分配して校正用信号S4として利用することにより、受信信号が理想的なアンテナ指向性を示すように、受信信号を効果的に校正することができる。またこの場合は、基準信号を発生させない方が受信信号の校正精度が高くなる。なぜなら、受信信号の電力レベルが高いときに、受信信号に電力レベルの低い基準信号を多重しても、電力レベルの違いから基準信号を取り出すことができないため、多重された基準信号が受信信号にとって単なる雑音になってしまうからである。加えて、受信信号の電力レベルに合わせて、多重する基準信号の電力レベルを高くすると、アンテナ部111において不要輻射が発生するからである。
ところが、受信ユニット110におけるアンテナ部111に捕捉される受信信号の電力レベルが低い場合には、熱雑音等の除去することが困難な要因に由来する受信信号の劣化が顕在化するため、これに伴って受信信号の誤差も大きくなり、受信信号を分配した校正用信号だけでは受信信号を的確に校正できなくなる。そこで、受信信号の受信レベルが低いときには、分配された受信信号以外の校正用信号即ち本実施の形態における基準信号を使用する必要がある。
続いて、受信ユニット110のアンテナ部111に捕捉される受信信号の電力レベルが予め設定された閾値以下である場合における本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の動作について説明する。なお、前述の受信信号の電力レベルが十分高い場合と重複する説明は割愛する。
複数の受信ユニット110から受信信号処理部121に入力される複数の受信信号の電力レベルについて、その過半数が所定の閾値以下になったことを受信信号処理部121が検出したときは、ベースバンド部120から基準信号発生部123に作動開始命令が入力される。この作動開始命令に従い、基準信号発生部123は、具備するクロック発生器を用いて所定の周波数及び振幅の基準信号を発生させる。そして、基準信号発生部123は、発生させた基準信号を誤差算出部122に直接入力する(S1)と伴に、基準信号処理部132にも入力する。基準信号処理部132に入力された基準信号は、増幅、周波数変換乃至利得調整等の信号処理を施された後に、受信ユニット選択部131と校正用受信部133(S2)とにそれぞれ入力される。受信ユニット選択部131に入力された基準信号は、受信ユニット選択部131が選択する受信ユニット110の分配・結合部112に入力され、その分配・結合部112によって受信信号に所定の電力比で多重される。なお、この分配・結合部112は、基準信号が受信信号に多重される際に、基準信号がアンテナ部111側に流入して不要輻射を生じさせないように、基準信号を遮断するバンドパスフィルタ等を具備することが好ましい。この基準信号が多重された受信信号は、受信無線部113及び受信信号処理部121において所定の信号処理を施される。そして、受信信号処理部121において、基準信号を多重された受信信号から基準信号と受信信号が分離され、基準信号及び受信信号それぞれの周波数、位相及び電力レベル等についての情報とが生成され、これらの情報S3が受信ユニット110毎に誤差算出部122に保持される。
一方で、基準信号処理部132から校正用受信部133に入力される基準信号S2は、校正用受信部133において受信ユニット選択部131から入力されてくる受信信号と所定の電力レベルの比となるように多重された後に、誤差算出部122に入力される。
誤差算出部122では、具備するメモリに保持された受信ユニット110毎の測定データS3と、この測定データS3に対応する即ち受信信号の提供元が同じ受信ユニット110である校正信号S4と、基準信号S1と、について、それぞれの周波数、位相及び電力レベルが比較され、受信信号の誤差が算出される。そして、算出された受信信号の誤差を校正するための誤差補正情報S5が生成され、この誤差補正情報S5が受信信号処理部121に入力される。受信信号処理部121では、受信信号が理想的なアンテナ指向性を示すように、誤差補正情報S5に従い受信ユニット110別に受信信号が校正される。
なお、本発明において、基準信号発生部123が作動開始する基準となる閾値の具体的な値は特定されるものではない。なぜなら、アレイアンテナ受信装置の構成や使用環境によって、基準信号が受信信号の校正精度を改善できるようになる閾値が異なるからである。
このように本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置によれば、受信信号の電力レベルが所定の閾値より高いときには、基準信号を発生させることなく校正用信号として受信信号を分配して利用し、一方で受信信号の電力レベルが所定の閾値以下のときには、基準信号を発生させて校正用信号として基準信号を利用するため、受信信号の電力レベルに応じて受信信号のアンテナ指向性が常時有効に示されるように受信信号の高い校正精度を適応的に維持することができる。
また、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置によれば、受信信号の受信レベルが所定の閾値より高いときには、基準信号を発生させないため、アンテナ部111において基準信号に起因する不要輻射が生じることもない。
なお、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置を、以下のように応用したり、変形したりしてもよい。
本実施の形態では、受信信号の電力レベル及び基準信号の電力レベルに基づいて閾値を設定する場合について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、例えば信号電力対雑音電力比(SNR:Signal to Noise Ratio)や信号電力対干渉電力比(SIR)を用いてもよい。
本実施の形態では、基準信号処理部132から校正用受信部133に基準信号S2が入力される場合について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、例えば基準信号S2が校正用受信部133から入力されないようにしてもよい。このように基準信号S2が校正用受信部133に入力されなくても、基準信号発生部123から誤差算出部122に基準信号S1が直接入力されるため、受信信号処理部121から誤差算出部122に入力される測定データS3について、誤差算出部122は誤差補正情報S5を生成することができる。
また、本実施の形態では、受信信号の電力レベルが低く基準信号が生成されるときでも、校正用受信部133において分配・結合部112で分配された受信信号と基準信号とを多重する場合について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、例えば基準信号が生成されるときには、受信ユニット選択部131から校正用受信部133に受信信号が入力されないようにしてもよい。このようにすれば、校正用受信部133から誤差算出部122に入力される校正用信号S4が基準信号だけで構成されるため、校正用信号S4において受信信号が基準信号の雑音となって校正用信号S4を劣化させることを防止できる。
(実施の形態2)
図2に、本発明の実施の形態2に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示す。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置において、ベースバンド部120の代わりに、ベースバンド部120に基準信号対雑音電力比算出部221を付加したベースバンド部220を具備するものである。従って、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成要素の多くは、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置の構成要素と同じ機能を発揮する。そこで、このような同じ機能を発揮する構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図2に、本発明の実施の形態2に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示す。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置において、ベースバンド部120の代わりに、ベースバンド部120に基準信号対雑音電力比算出部221を付加したベースバンド部220を具備するものである。従って、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成要素の多くは、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置の構成要素と同じ機能を発揮する。そこで、このような同じ機能を発揮する構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
基準信号対雑音電力比算出部221には、各受信ユニット110から受信信号処理部121に基準信号の多重された受信信号が入力される際に、それらの受信信号が受信信号処理部121に入力される前に分配されて入力される。ここで、例えば分配・結合部112において基準信号が受信信号に対して+10dBで多重されるように設定され、かつ、基準信号電力対雑音電力比(SNR)が0dB以下になると受信信号処理部121における受信信号の校正精度が急激に低下すると仮定する。この仮定において、受信信号の電力レベルが低下すると、それに伴って基準信号の電力レベルも低下する。そのため、アレイアンテナ受信装置が弱電界地域において使用される場合は、基準信号に対する熱雑音の影響が相対的に大きくなり、基準信号電力対雑音電力比が0dB以下となってしまう。そこで、本実施の形態では、基準信号対雑音電力比算出部221に入力されてくる基準信号が多重された受信信号について、基準信号の電力レベルとその他の雑音の電力レベルとの比を算出して、この電力レベルの比が常に0dB以上となるように、基準信号対雑音電力比算出部221から基準信号処理部132に対してそれらの利得を制御する制御信号S6を入力する。
以上のように本実施の形態のアレイアンテナ受信装置によれば、受信信号が弱電界の場合でも基準信号電力対雑音電力比を校正精度が劣化しない値に維持することができるため、受信信号の弱電界時においてもアンテナ指向性の校正精度を確実に向上させることができる。
(実施の形態3)
図3に、本発明の実施の形態3に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示す。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置において、ベースバンド部120の代わりに、ベースバンド部120にユーザ別電力比算出部321を付加したベースバンド部320を具備するものである。従って、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成要素の多くは、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置の構成要素と同じ機能を発揮する。そこで、このような同じ機能を発揮する構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図3に、本発明の実施の形態3に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示す。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置において、ベースバンド部120の代わりに、ベースバンド部120にユーザ別電力比算出部321を付加したベースバンド部320を具備するものである。従って、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成要素の多くは、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置の構成要素と同じ機能を発揮する。そこで、このような同じ機能を発揮する構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
アレイアンテナ受信装置は、CDMA(符号分割多元接続)等の公知の多重接続方式を利用して複数のユーザから同時に受信信号を受け取る。この受信信号は、受信信号処理部121に入力され、ここでユーザ別の受信信号に分割される。そして、ユーザ別に分割された受信信号は、受信信号処理部121からユーザ別電力比算出部321に入力され、ここでユーザ別の受信電力の電力レベルがそれぞれ算出される。そして、算出されたユーザ別の受信信号の電力レベルに基づいて、ユーザ別電力比算出部321は、受信信号の電力レベルが最も低いユーザを選択する。さらに、ユーザ別電力比算出部321は、選択されたユーザの受信信号の電力レベルに対して、基準信号の電力レベルを干渉波としたときの信号電力対干渉電力比(SIR)が例えば+10dBで分配・結合部112によって多重されるように、基準信号処理部132にそれらの利得を制御する制御信号S7を入力する。なお、CDMA方式で複数のユーザと同時に通信を行う場合、分配・結合部112において受信信号に実際に多重される基準信号の電力レベルは、受信信号の電力レベルが最も低いユーザについて算出された基準信号の電力レベルに対して同時通信を行うユーザ数を乗じた電力レベルとなる。
本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置によれば、全てのユーザからの受信信号が多重された状態を基準として受信信号に多重する基準信号の電力レベルを設定した場合に生じる問題、即ち受信信号の電力レベルが低いユーザにとって基準信号が大きな干渉波となり通信品質を劣化させる問題を回避することができる。換言すれば、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置によれば、ユーザ別に分割された受信信号について最低の電力レベルを基準としてSIRが所定の電力レベルの比となるように実際に多重される基準信号の電力レベルが設定されるため、基準信号が大きな干渉波となって受信信号に悪影響を与えることを抑制し、その結果受信信号の電力レベルが低いユーザの通信品質の劣化を防止することができる。
(実施の形態4)
図4に、本発明の実施の形態4に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示す。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置において、受信ユニット選択部131と校正用受信部133と基準信号処理部132との間に、これらの構成部に接続される切替器401を具備するものである。この切替器401は、受信ユニット選択部131と基準信号処理部132又は校正用受信部133のいずれか一方とを選択的に接続する。従って、本実施の形態においては、基準信号処理部132から校正用受信部133に基準信号S2は入力されない。
図4に、本発明の実施の形態4に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示す。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置において、受信ユニット選択部131と校正用受信部133と基準信号処理部132との間に、これらの構成部に接続される切替器401を具備するものである。この切替器401は、受信ユニット選択部131と基準信号処理部132又は校正用受信部133のいずれか一方とを選択的に接続する。従って、本実施の形態においては、基準信号処理部132から校正用受信部133に基準信号S2は入力されない。
次いで、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成及び動作について説明する。なお、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成要素の多くは実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置の構成要素と同じ機能を発揮する。そこで、このような同じ機能を発揮する構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
切替器401は、例えば半導体スイッチによって構成され、受信信号の電力レベルが所定の閾値より高いときには、校正用受信部133と受信ユニット選択部131とを接続する。このとき、基準信号処理部132と校正用受信部133とは、完全に分離される。一方で、受信信号の電力レベルが所定の閾値以下のときには、切替器401は、作動開始した基準信号発生部123から入力されてくる切替信号S8に従って受信ユニット選択部131と基準信号処理部132とを接続する。このときも、基準信号処理部132と校正用受信部133とは、完全に分離される。さらに、切替器401は、基準信号発生部123が作動停止するとき、基準信号発生部123から再度切替信号S8を入力されることにより、再び受信ユニット選択部131と校正用受信部133とを接続する。
このように本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置によれば、基準信号処理部132と校正用受信部133とが完全に分離されるため、受信信号の電力レベルが所定の閾値より高いときに、基準信号処理部132の出力端のインピーダンス変動が校正用受信部133の入力端に影響を与えなくなることから、校正用受信部133における受信信号の劣化を抑制することができる。また、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置によれば、受信信号の電力レベルが所定の閾値以下のときにも、基準信号処理部132と校正用受信部133とが完全に分離されるため、校正用受信部133の入力端のインピーダンス変動が基準信号処理部132の出力端に影響を与えなくなることから、受信信号に多重される基準信号の劣化を抑制することができる。
(実施の形態5)
図5に、本発明の実施の形態5に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示す。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置において、分配・結合部112の代わりに方向性結合器512を備える受信ユニット510を具備し、また受信ユニット選択部131の代わりに方向性結合器512の端子にそれぞれ接続される2つの受信ユニット選択部531、532を具備する。さらに、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、方向性結合器512と受信ユニット選択部531、532との間に、それぞれアイソレータ521、522を具備する。なお、受信ユニット選択部531,532は、受信ユニット選択部131の代わりに使用されるものであって、受信ユニット選択部131と同様の機能を発揮する。
図5に、本発明の実施の形態5に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示す。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置において、分配・結合部112の代わりに方向性結合器512を備える受信ユニット510を具備し、また受信ユニット選択部131の代わりに方向性結合器512の端子にそれぞれ接続される2つの受信ユニット選択部531、532を具備する。さらに、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、方向性結合器512と受信ユニット選択部531、532との間に、それぞれアイソレータ521、522を具備する。なお、受信ユニット選択部531,532は、受信ユニット選択部131の代わりに使用されるものであって、受信ユニット選択部131と同様の機能を発揮する。
次いで、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成及び動作について説明する。なお、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成要素の多くは、実施の形態1におけるアレイアンテナ受信装置の構成要素と同じ機能を発揮するため、このような同じ機能を発揮する構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
方向性結合器512は、アンテナ部111に接続されることにより受信信号が入力されてくる入力端子a(以下、単に「入力端子a」という)と、受信無線部113を介して受信信号処理部121に接続される入力端子と方向性のない端子b(以下、単に「無方向端子b」という)と、アイソレータ522を介して受信ユニット選択部532に接続される入力端子と方向性のある端子c(以下、単に「方向性端子c」という)と、アイソレータ521を介して受信ユニット選択部531に接続される入力端子と反対の方向性のある端子d(以下、単に「反対端子d」という)と、の4つの端子を具備する。ここで、例えば方向性結合器512の結合度が20dBで、そのアイソレーションが60dBであるとすると、反対端子dから入力される基準信号は、20dB減衰されて入力端子aから入力されてくる受信信号に多重され、無方向端子bから受信無線部113に向けて出力される。このように、基準信号が20dB減衰されて受信信号に多重されるのは、反対端子dに対して無方向端子bが方向性を示すからである。そして、反対端子dから入力された基準信号は、入力端子aから60dB減衰されて出力される。従って、この方向性結合器512を使用すれば、アンテナ部111には基準信号が殆ど流入しないことから、アンテナ部111で不要輻射が生じて問題となることはない。
このように本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置よれば、入力端子aと反対端子dとのアイソレーションが高いため、受信信号に基準信号を多重してもアンテナ部111に基準信号が流入することを効果的に抑制することができ、その結果アンテナ部111において不要輻射が発生することを防止することができる。また、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置よれば、アイソレータ521、522を具備するため、基準信号処理部132にインピーダンス変動が起きても校正用受信部133にその影響が及ぶことを防止することができ、同様に校正用受信部133にインピーダンス変動が起きても基準信号処理部132にその影響が及ぶことを防止することができる。
なお、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置を、以下のように応用したり、変形したりしてよい。
本実施の形態では、アイソレータ521、522を使用する場合について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、例えばアイソレータ521、522の代わりに単極双投接点(SPDT:Single-Pole Double-Throw)をそれぞれ用いてよい。このようにSPDTを2つ用いる場合は、基準信号処理部132又は校正用受信部133のいずれか一方のみが方向性結合器512と接続されるように、2つのSPDTを連動させて制御することが好ましい。
(実施の形態6)
図6に、本発明の実施の形態6に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示す。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、実施の形態5におけるアレイアンテナ受信装置において、受信ユニット510の方向性結合器512の代わりに、連結された方向性結合器612、613を備える受信ユニット610を具備するものである。従って、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成要素の多くは、実施の形態5におけるアレイアンテナ受信装置の構成要素と同じ機能を発揮する。以下、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成及び動作について説明するが、実施の形態5に係るアレイアンテナ受信装置の構成要素と同じ機能を発揮する構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図6に、本発明の実施の形態6に係るアレイアンテナ受信装置の構成を示す。本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置は、実施の形態5におけるアレイアンテナ受信装置において、受信ユニット510の方向性結合器512の代わりに、連結された方向性結合器612、613を備える受信ユニット610を具備するものである。従って、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成要素の多くは、実施の形態5におけるアレイアンテナ受信装置の構成要素と同じ機能を発揮する。以下、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置の構成及び動作について説明するが、実施の形態5に係るアレイアンテナ受信装置の構成要素と同じ機能を発揮する構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
方向性結合器612、613には、実施の形態5における方向性結合器512と同じ機能を発揮するものを利用することができる。そこで、方向性結合器612、613の4つの端子について、方向性結合器512と同様に表記して、受信信号が入力されてくる端子を入力端子aと、入力端子aと方向性のない端子を無方向端子bと、入力端子aと方向性のある端子を方向性端子cと、入力端子aと反対の方向性のある端子を反対端子dと、する。
方向性結合器612の入力端子aには、アンテナ部111が接続され、アンテナ部111から受信信号が入力されてくる。また、方向性結合器612の無方向端子bには、方向性結合器613の入力端子aが接続される。また、方向性結合器612の方向性端子cには、受信ユニット選択部532を介して校正用受信部133が接続される。また、方向性結合器612の反対端子dには、不要な反射が生じないように、終端抵抗614が接続される。さらに、方向性結合器613の無方向端子bには、受信無線部113を介して受信信号処理部121が接続される。また、方向性結合器613の方向性端子cには、不要な反射が生じないように、終端抵抗615が接続される。また、方向性結合器613の反対端子dには、受信ユニット選択部531を介して基準信号処理部132が接続される。
ここで、前記実施の形態5と同様に方向性結合器612、613の結合度が20dBで、それらのアイソレーションが60dBであると仮定する。そうすると、基準信号処理部132と校正用受信部133との間には、方向性結合器612、613が介在することから、それらの端子の接続状態に鑑みれば、基準信号処理部132と校正用受信部133との間には、方向性結合器612、613それぞれのアイソレーションが重畳的に作用する結果、都合120dBのアイソレーションが確保されることになる。そのため、基準信号処理部132と校正用受信部133とにおいて、それぞれインピーダンス変動が生じても、その影響が他方に及ぶおそれはない。
また、基準信号は、方向性結合器613の反対端子dから入力され20dB減衰されて、入力端子aから入力されてくる受信信号に多重される。また、基準信号は、アンテナ部111に流入するとしても、方向性結合器613の入力端子aから出力されるときに60dB減衰されることから、アンテナ部111からの不要輻射を充分に小さくできる。
このように本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置によれば、方向性結合器612、613の端子の接続態様を調整することにより、アンテナ部111へ流入する基準信号の電力レベルを効果的に減衰させることができる。その結果、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置によれば、アンテナ部111から放射される不要輻射を小さくすることができる。
また、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置によれば、方向性結合器612、613の端子の接続態様を調整することにより、基準信号処理部132及び校正用受信部133との間のアイソレーションを十分に取ることができる。そのため、方向性結合器612、613と基準信号処理部132及び校正用受信部133との間にアイソレータを配置しなくても、基準信号処理部132又は校正用受信部133のいずれかにおいてインピーダンス変動が生じたときに、その影響が他方に及ぶことを効果的に抑制することができる。従って、本実施の形態に係るアレイアンテナ受信装置によれば、アイソレータを具備する必要がなくなるため、装置の小型化を図ることができる。
本発明にかかるアレイアンテナ受信装置及び受信信号の校正方法は、基準信号が多重された受信信号について基準信号が受信信号の雑音となって受信信号の校正精度を低下させる問題を回避する必要のあるアレイアンテナ方式の無線装置や受信信号の校正方法等の用途に適用できる。
110 受信ユニット
111 アンテナ部
112 分配・結合部
113 受信無線部
120、220、320 ベースバンド部
121 受信信号処理部
122 誤差算出部
123 基準信号発生部
131、531、532 受信ユニット選択部
132 基準信号処理部
133 校正用受信部
221 基準信号対雑音電力比算出部
321 ユーザ別電力比算出部
401 切替器
512、612、613 方向性結合器
521、522 アイソレータ
111 アンテナ部
112 分配・結合部
113 受信無線部
120、220、320 ベースバンド部
121 受信信号処理部
122 誤差算出部
123 基準信号発生部
131、531、532 受信ユニット選択部
132 基準信号処理部
133 校正用受信部
221 基準信号対雑音電力比算出部
321 ユーザ別電力比算出部
401 切替器
512、612、613 方向性結合器
521、522 アイソレータ
Claims (8)
- 受信信号の受信レベルが閾値以下のときに限り、基準信号を発生させる基準信号発生手段と、
前記受信信号に前記基準信号を多重する複数の受信手段と、
前記基準信号が多重された受信信号と前記基準信号とを比較することによって前記受信手段それぞれにおける前記受信信号の誤差を算出する誤差算出手段と、
算出された前記受信信号の誤差に基づいて、前記受信信号を補正する受信信号処理手段と、を具備することを特徴とするアレイアンテナ受信装置。 - 複数の前記受信手段の中から前記受信信号を取り出す前記受信手段を選択する選択手段と、
前記選択手段により取り出された前記受信信号を校正用信号として前記誤差算出手段に提供する校正用受信手段と、を具備し、
前記基準信号発生手段は、発生させた前記基準信号を前記校正用受信手段に提供し、
前記校正用受信手段は、提供された前記基準信号を前記受信信号に多重して前記誤差算出手段に提供する、ことを特徴とする請求項1記載のアレイアンテナ受信装置。 - 前記基準信号が多重された前記受信信号における前記基準信号と雑音との電力レベルの比を算出し、算出された電力レベルの比に応じて前記基準信号の電力レベルを調整する電力比算出手段を具備することを特徴とする請求項1記載のアレイアンテナ受信装置。
- 前記電力比算出手段は、ユーザ別に前記基準信号と前記雑音との電力レベルの比を算出し、算出された電力レベルの比に応じて前記基準信号の電力レベルを調整することを特徴とする請求項3記載のアレイアンテナ受信装置。
- 複数の前記受信手段の中から前記受信信号を取り出す前記受信手段を選択する選択手段と、
前記選択手段により取り出された前記受信信号を校正用信号として前記誤差算出手段に提供する校正用受信手段と、
前記校正用受信手段又は前記基準信号発生手段のいずれか一方を前記選択手段に接続する切替手段と、を具備することを特徴とする請求項1記載のアレイアンテナ受信装置。 - 複数の前記受信手段の中から前記受信信号を取り出す前記受信手段を選択する選択手段と、
前記選択手段により取り出された前記受信信号を校正用信号として前記誤差算出手段に提供する校正用受信手段と、を具備し、
前記受信手段はそれぞれ、入力端子、前記入力端子と方向性のある端子、前記入力端子と反対の方向性のある端子及び前記入力端子と方向性のない端子を備える方向性結合器を有し、
前記方向性結合器の前記入力端子に前記受信信号が入力される場合において、前記入力端子と方向性のある端子には前記選択手段を介して前記校正用受信手段が接続され、かつ、前記入力端子と反対の方向性のある端子には前記基準信号が入力され、かつ、前記入力端子と方向性のない端子には前記受信信号処理手段が接続される、ことを特徴とする請求項1記載のアレイアンテナ受信装置。 - 複数の前記受信手段の中から前記受信信号を取り出す前記受信手段を選択する選択手段と、
前記選択手段により取り出された前記受信信号を校正用信号として前記誤差算出手段に提供する校正用受信手段と、を具備し、
前記受信手段はそれぞれ、入力端子、前記入力端子と方向性のある端子、前記入力端子と反対の方向性のある端子及び前記入力端子と方向性のない端子を備える方向性結合器を二つ有し、
一方の前記方向性結合器の前記入力端子に前記受信信号が入力される場合において、前記入力端子と方向性のある端子には前記選択手段を介して前記校正用受信手段が接続され、かつ、前記入力端子と反対の方向性のある端子には終端が接続され、かつ、前記入力端子と方向性のない端子には他方の前記方向性結合器の入力端子が接続され、
さらに、他方の前記方向性結合器においては、前記入力端子と方向性のある端子には終端が接続され、かつ、前記入力端子と反対の方向性のある端子には前記基準信号が入力され、かつ、前記入力端子と方向性のない端子には前記受信信号処理手段が接続されることを特徴とする請求項1記載のアレイアンテナ受信装置。 - 受信信号の電力レベルを測定する測定ステップと、
測定された前記受信信号の電力レベルが閾値以下のときに限り、基準信号を発生させる基準信号発生ステップと、
前記受信信号に前記基準信号を多重する多重ステップと、
前記基準信号が多重された前記受信信号の電力レベルと前記基準信号の電力レベルとを比較することによって前記受信信号への信号処理に起因する前記受信信号の誤差を算出する誤差算出ステップと、
算出された前記受信信号の誤差に基づいて前記受信信号を補正する受信信号処理ステップと、を具備することを特徴とする受信信号の校正方法。
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