JP2005063834A - 有機el装置、有機el装置の製造方法および電子機器 - Google Patents

有機el装置、有機el装置の製造方法および電子機器 Download PDF

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克行 森井
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Abstract

【課題】 製造コストの低減が可能であり、また仕事関数が小さい金属について製造プロセスにおける安定性を確保することが可能な、有機EL装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 対向する陽極23と主陰極50aとの間に、少なくとも発光層60を備えた有機EL装置であって、導電性材料および電子注入性材料が混合された液状体を発光層60上に塗布して、主陰極50aを形成する。前記導電性材料は、エチレンジオキシチオフェンを含む高分子化合物であることが望ましい。また前記電子注入性材料は、カルシウム等の仕事関数が小さい金属を中心原子とするアセチルアセトナト錯体であることが望ましい。さらに、主陰極50aの表面に、金属微粒子からなる補助陰極50bを形成することが望ましい。
【選択図】 図5

Description

本発明は、有機EL装置、有機EL装置の製造方法および電子機器に関するものである。
一般に、有機EL装置を構成する有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機発光性材料を薄膜形成した構造となっている。そして、両電極から注入された電子と正孔とが発光層内で再結合し、励起したエネルギーが発光として放出される機構となっている。このような有機EL装置は、各電極と発光層との間の電荷注入障壁が高いため、通常は陽極バッファ層となる正孔注入層(正孔輸送層)、および陰極バッファ層となる電子注入層(電子輸送層)をそれぞれ設けた積層構造となっている。この積層構造において、特に電子注入層としては、例えばフッ化リチウム(LiF)や酸化マグネシウム(MgO)が知られており、これらを設けることで低電圧駆動を実現した有機EL装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また陰極としては、例えば仕事関数の小さいカルシウム(Ca)等が用いられている。さらに陰極のキャップ層として、導電性の高いアルミニウム(Al)等の被膜が形成されている。
この電子注入層および陰極の薄膜形成については、主に気相プロセスである真空蒸着法が用いられている。この真空蒸着法は真空雰囲気下で行われるため、エネルギーコストが高価となり、しかも今後ディスプレイとして実用化される際に基板の大型化を妨げる一因になると考えられている。また、気相プロセスを用いた場合には下地となる有機物や基板が高熱環境に晒されることから、耐熱性に乏しい材料の場合には発光特性の劣化や基板の変形といった問題が起こることが懸念される。
そこで、電子注入層および陰極を液相プロセスによって形成する方法が検討されている。これは、各層の構成材料を含む液状体をスピンコート法等によって塗布し、さらに焼成して電子注入層および陰極を形成するものである。このような液相プロセスを採用することにより、エネルギー消費量を低減することができる。また、塗布された液状体は比較的低温で焼成することが可能であり、下地となる有機物等へのダメージを低減することができる。なお、液相プロセスにより陰極を形成する方法として、導電性微粒子が分散した高分子溶液を用いるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−237389号公報
しかしながら、電子注入層および陰極を液相で形成するには、以下のような問題がある。まず、電子注入層および陰極についてそれぞれ液状体の塗布および焼成を行うので、工程数が多くなり、製造コストの削減に限界があるという問題がある。また、電子注入層および陰極の構成材料として仕事関数が小さい金属を使用するため、非真空雰囲気下では不安定であるという問題がある。なお、液相プロセスでは各層の構成材料を溶媒に溶解させた液状体または分散媒に分散させた液状体を使用するが、使用する溶媒または分散媒によっては下地層が溶出してしまうという問題もある。また、下地層の表面に液状体を塗布する際に、液状体が濡れ広がりにくいという問題もある。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、製造コストの低減が可能であり、また仕事関数が小さい金属について製造プロセスにおける安定性を確保することが可能な、有機EL装置およびその製造方法の提供を目的とする。
また、良好な表示特性を有する電子機器の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の有機EL装置は、対向する陽極と主陰極との間に、少なくとも発光層を備えた有機EL装置であって、前記発光層に隣接して前記主陰極が形成され、前記主陰極は導電性材料と電子注入性材料との混合材料によって構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、1回の液相プロセスにより、導電性および電子注入性を備えた主陰極を形成することができる。また、気相プロセスのように真空条件を必要としないので、エネルギー消費量を低減することができる。したがって、製造コストを低減することができる。
また、前記電子注入性材料は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属または遷移金属を中心原子とする金属錯体であることが望ましい。
この構成によれば、仕事関数が小さい金属を用いて主陰極が形成されるので、発光層に対する電子注入性を向上させることができる。
また、前記電子注入性材料は、β−ジケトン錯体であることが望ましい。
特に、前記電子注入性材料は、アセチルアセトナト錯体であることが望ましい。
この構成によれば、中心原子を取り囲むように配置された配位子により、中心原子が安定的に保持される。したがって、仕事関数が小さい金属を用いて主陰極を形成する場合でも、その金属を錯体の中心原子とすることにより、製造プロセスにおける当該金属の安定性を確保することができる。
そして、前記電子注入性材料は、ビスアセチルアセトナトカルシウム錯体であることが望ましい。
この構成によれば、仕事関数が小さいカルシウムを用いて主陰極が形成されるので、発光層に対する電子注入性を向上させることができる。またカルシウムを錯体の中心原子とすることにより、製造プロセスにおけるカルシウムの安定性を確保することができる。
なお、前記電子注入性材料は、有機リチウム化合物であってもよい。
また、前記電子注入性材料は、フッ化リチウムであってもよい。
これらの構成によっても、発光層に対する電子注入性を確保しつつ、製造プロセスにおける安定性を確保することができる。
一方、前記導電性材料は、導電性高分子化合物であることが望ましい。
特に、前記導電性材料は、エチレンジオキシチオフェンを含む高分子化合物であることが望ましい。
なお、前記導電性材料は、PEDOT/PSSであってもよい。
これらの構成によれば、比較的低温で主陰極を焼成することが可能になり、主陰極の下地層に対する熱影響を低減することができる。
なお、前記導電性材料は、金属微粒子であってもよい。
また、前記導電性材料は、導電性高分子化合物と金属微粒子との混合材料であってもよい。
この構成によれば、主陰極の導電性を向上させることができる。特に、導電性高分子化合物と金属微粒子との混合材料によって主陰極を構成することにより、比較的低温で主陰極を焼成しつつ、主陰極の導電性を確保することが可能になる。
また、前記主陰極の表面に、金属微粒子からなる補助陰極が形成されていることが望ましい。
この構成によれば、陰極全体の導電性を向上させることができる。
一方、本発明の有機EL装置の製造方法は、対向する陽極と主陰極との間に、少なくとも発光層を備えた有機EL装置の製造方法であって、導電性材料および電子注入性材料が混合された液状体を前記発光層上に塗布して、前記主陰極を形成することを特徴とする。
この構成によれば、1回の液相プロセスにより、導電性および電子注入性を備えた主陰極を形成することができる。また、気相プロセスのように真空条件を必要としないので、エネルギー消費量を低減することができる。したがって、製造コストを低減することができる。
また、前記液状体を、液滴吐出装置によって前記発光層上に塗布してもよい。
この構成によれば、所定量の液状体を所定位置に正確に吐出して、主陰極を形成することができる。
また、塗布された前記液状体を150℃以下で焼成して、前記主陰極を形成することが望ましい。
この構成によれば、比較的低温で主陰極を焼成するので、主陰極の下地層に対する熱影響を低減することができる。
一方、本発明の他の有機EL装置は、上述した有機EL装置の製造方法を使用して製造したことを特徴とする。
この構成によれば、製造コストの低減が可能な有機EL装置を提供することができる。
一方、本発明の電子機器は、上述した有機EL装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、良好な表示特性を有する電子機器を提供することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。なお、この実施の形態は、本発明の一部の態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
[有機EL装置]
まず、本発明の有機EL装置の一実施形態を説明する。
(等価回路)
図1は、本実施形態の有機EL装置の配線構造を示す模式図であり、図1において符号1は有機EL装置である。この有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とからなる配線構成を有し、走査線101と信号線102との各交点付近に画素領域Xを形成したものである。信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
さらに、画素領域X各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)23と、この画素電極23と共通陰極(電極)50との間に挟み込まれた機能層110とが設けられている。このような画素電極23と共通陰極50と機能層110とにより、発光素子、すなわち有機EL素子が構成されている。
このような構成の有機EL装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して電源線103から画素電極23に電流が流れ、さらに機能層110を介して共通陰極50に電流が流れる。すると、機能層110は、これを流れる電流量に応じて発光する。
(平面構成)
次に、本実施形態の有機EL装置1の具体的な態様を、図2〜5を参照して説明する。なお、図2は有機EL装置1の構成を模式的に示す平面図である。
図2に示すように本実施形態の有機EL装置1は、光透過性と電気絶縁性とを備える基板20と、スイッチング用TFT(図示せず)に接続された画素電極が基板20上にマトリックス状に配置されてなる画素電極域(図示せず)と、画素電極域の周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線と、少なくとも画素電極域上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図2中一点鎖線枠内)とを備えて構成されている。なお、本実施形態において画素部3は、中央部分の実表示領域4(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
実表示領域4には、それぞれ画素電極を有する発光素子R、G、BがA−B方向およびC−D方向に規則的に配置されている。
また、実表示領域4の図2中両側には、走査線駆動回路80、80が配置されている。この走査線駆動回路80、80は、ダミー領域5の下層側に位置して設けられている。
また、実表示領域4の図2中上方側には検査回路90が配置されており、この検査回路90はダミー領域5の下層側に配置されて設けられている。この検査回路90は、有機EL装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時における表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
走査線駆動回路80および検査回路90の駆動電圧は、所定の電源部から駆動電圧導通部310(図3参照)および駆動電圧導通部340(図4参照)を介して印加されている。また、これら走査線駆動回路80および検査回路90への駆動制御信号および駆動電圧は、この有機EL装置1の作動制御を司る所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部320(図3参照)および駆動電圧導通部350(図4参照)を介して送信および印加されるようになっている。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80および検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
(断面構成)
図3は図2のA−B線に沿う断面図、図4は図2のC−D線に沿う断面図、図5は図3の要部拡大断面図である。図3、図4に示すように、有機EL装置1は、基板20と封止基板30とが封止樹脂40を介して貼り合わされてなるものである。基板20、封止基板30および封止樹脂40で囲まれた領域においては、封止基板30の内面に水分や酸素を吸収するゲッター剤45が貼着されている。また、その空間部は窒素ガスが充填されて窒素ガス充填層46となっている。このような構成のもとに、有機EL装置1内部に水分や酸素が浸透するのが抑制され、これにより有機EL装置1はその長寿命化が図られたものとなっている。
基板20としては、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置の場合、この基板20の対向側である封止基板30側から発光光を取り出す構成であるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミック、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
また、いわゆるボトムエミッション型の有機EL装置の場合には、基板20側から発光光を取り出す構成であるので、基板20としては、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。なお、本実施形態では、基板20側から発光光を取り出すボトムエミッション型とし、よって基板20としては透明あるいは半透明のものを用いるようにする。
封止基板30としては、例えば電気絶縁性を有する板状部材を採用することができる。また、封止樹脂40は、例えば熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂からなるものであり、特に熱硬化樹脂の一種であるエポキシ樹脂よりなっているのが好ましい。
また、図5に示すように、基板20上には、画素電極23を駆動するための駆動用TFT123などを含む回路部11が設けられている。この回路部11は基板20上に形成されたものである。すなわち、基板20の表面にはSiO2 を主体とする下地保護層281が下地として形成され、その上にはシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面には、SiO2 および/またはSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成されている。
また、前記シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は、図示しない走査線101の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242を形成したゲート絶縁層282の表面には、SiO2 を主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。
また、シリコン層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain )構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、前述した電源線103(図1参照、図5においてはソース電極243の位置に紙面垂直方向に延在する)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール244aを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層は、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする第2層間絶縁層284によって覆われている。この第2層間絶縁層284は、アクリル系の絶縁膜以外の材料、例えば、SiN、SiO2 などを用いることもできる。そして、ITOからなる画素電極23が、この第2層間絶縁層284の表面上に形成されるとともに、該第2層間絶縁層284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。すなわち、画素電極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241の高濃度ドレイン領域241Dに接続されている。
以上に説明した基板20から第2層間絶縁層284までの層が、回路部11を構成するものとなっている。
なお、走査線駆動回路80および検査回路90(図2参照)に含まれるTFT(駆動回路用TFT)、すなわち、例えばこれらの駆動回路のうち、シフトレジスタに含まれるインバータを構成するNチャネル型又はPチャネル型のTFTは、画素電極23と接続されていない点を除いて前記駆動用TFT123と同様の構造とされている。
画素電極23が形成された第2層間絶縁層284の表面は、画素電極23と、例えばSiO2 などの親液性材料を主体とする親液性制御層25と、アクリル樹脂やポリイミド樹脂などからなる有機バンク層221とによって覆われている。なお、本実施形態における親液性制御層25の「親液性」とは、少なくとも有機バンク層221を構成するアクリル樹脂やポリイミド樹脂などの材料と比べて親液性が高いことを意味するものとする。そして、親液性制御層25に設けられた開口部25aおよび有機バンク層221に設けられた開口部221aの開口内部が、画素領域を構成している。なお、各色表示領域(画素領域)の境界には、金属クロムをスパッタリングなどにて成膜した図示略のBM(ブラックマトリクス)が、有機バンク層221と親液性制御層25との間に位置して形成されている。
(発光素子)
そして、各画素領域における画素電極23の上方には、発光素子(有機EL素子)R、G、Bが設けられている。発光素子R、G、Bは、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔注入層70と、有機EL物質からなる発光層60(60R、60G、60B)と、共通陰極50とが順に形成されたことによって構成されている。そして、このような構成のもとに発光素子R、G、Bは、正孔注入層70から注入された正孔と、共通陰極50から送られてきた電子とが発光層60で結合することにより、赤色、緑色あるいは青色の発光をなすようになっている。
陽極として機能する画素電極23は、本例ではボトムエミッション型であることから透明導電材料によって形成されている。透明導電材料としてはITOが好適とされるが、これ以外にも、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide :IZO/アイ・ゼット・オー)(登録商標))(出光興産社製)等を用いることができる。なお、本実施形態ではITOを用いるものとする。また、トップエミッション型である場合には、特に光透過性を備えた材料を採用する必要はなく、例えばITOの下層側にAl等を設けて反射層として用いることもできる。
正孔注入層70の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)[商品名;バイトロン−p(Bytron-p):バイエル社製]の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水やイソプロピルアルコール等の極性溶媒に溶解させたものが好適に用いられる。なお、正孔注入層70の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。また、本実施形態では、フルカラー表示を行うべく、その発光波長帯域が光の三原色にそれぞれ対応して形成されている。すなわち、発光波長帯域が赤色に対応した発光層60R、緑色に対応した発光層60G、青色に対応した発光層60Bの三つの発光層により、1画素が構成され、これらが階調して発光することにより、有機EL装置1が全体としてフルカラー表示をなすようになっている。
発光層60の形成材料として具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
なお、「高分子」とは、分子量が数百程度の所謂「低分子」よりも分子量の大きい重合体を意味し、上述の高分子材料には、一般に高分子と呼ばれる分子量10000以上の重合体の他に、分子量が10000以下のオリゴマーと呼ばれる低重合体が含まれる。
なお、本実施形態では、赤色の発光層60Rの形成材料としてMEHPPV(ポリ(3−メトキシ 6−(3−エチルヘキシル)パラフェニレンビニレン)を、緑色の発光層60Rの形成材料としてポリジオクチルフルオレンとF8BT(ジオクチルフルオレンとベンゾチアジアゾールの交互共重合体)の混合溶液を、青色の発光層60Rの形成材料としてポリジオクチルフルオレンを用いている。また、これら各発光層60については、特にその厚さについては制限がなく、また各色毎に好ましい厚さも変わるものの、例えば青色発光層60Bの厚さとしては、60〜70nm程度とするのが好ましい。
共通陰極50は、図2ないし図4に示すように、実表示領域4およびダミー領域5の総面積より広い面積を備え、それぞれを覆うように形成されたものである。図5に示すように、共通陰極50は、発光層の表面に接する主陰極50aと、主陰極50aの表面に形成された補助陰極50bとによって構成されている。主陰極50aの膜厚は、100〜1000nmとするのが好ましく、特に200〜500nm程度とするのが好ましい。その主陰極50aは、導電性材料と電子注入性材料との混合材料によって構成されている。
(電子注入性材料)
主陰極50aを構成する電子注入性材料として、有機金属錯体を採用することが可能である。この有機金属錯体を構成するキレート配位子として、アセチルアセトン(acac),ジピパロイルメタン(dpm),ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa),2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−オクタンジオアセトン(TMOD),テノイルトリフルオロアセトン(TTA),1−フェニル−3−イソヘプチ−1,3−プロパンジオン(商品名LIX54,LIX51;ヘンケル社)等のβ−ジケトン系の配位子、8−キノリノール(オキシン),2−メチル−8−キノリノール等のキノリノール系の配位子、トリオクチルホフフィンオキシド(TOPO),リン酸トリブチル(TBP),イソブチルメチルケトン(MBK),ビス(2−エチルヘキシル)リン酸(D2EHPA)等のリン酸系の配位子、酢酸,安息香酸等のカルボン酸系の配位子、ジフェニルチオカルバゾン配位子等を好適に用いることができる。中でもβ−ジケトン系の配位子を有する錯体(β−ジケトン錯体)は、酸性試薬で且つ酸素原子による多座配位子であるため、安定な錯体を形成できる。
また、有機金属錯体を構成する中心原子として、アルカリ金属やアルカリ土類金属、希土類金属、遷移金属等の金属元素を採用することが可能である。例えば、アルカリ金属としてLi、Na、Cs等が採用可能であり、アルカリ土類金属としてCa、Ba、Sr等が採用可能であり、希土類金属としてSm、Tb、Er等が採用可能である。特に、仕事関数が3.0eV以下の金属を採用することが望ましい。これにより、低電圧で電子を放出させることが可能になり、低電圧で発光層を発光させることができるようになる。
そして、具体的な有機金属錯体として、アセチルアセトナト金属錯体であるビスアセチルアセトナト/カルシウム錯体(Ca(acac)2)を採用することが望ましい。カルシウム(仕事関数;2.6eV)等の低仕事関数の金属元素は、電子注入性に優れているが、非真空雰囲気下では不安定である。そこで、アセチルアセトナト等のキレート配位子を備えた錯体とすることにより、電子注入性を維持しつつ、製造プロセスにおける安定性を確保することができる。
また、主陰極50aを構成する電子注入性材料として、金属のハロゲン化物あるいは酸化物を採用することも可能である。その金属として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属または遷移金属等の金属元素を採用することが可能である。また金属ハロゲン化物は、金属フッ化物であることが望ましいが、これ以外の金属塩化物や金属臭化物等であってもよい。そして、具体的な金属ハロゲン化物として、フッ化リチウム(LiF)を使用することが望ましい。
なお、主陰極50aを構成する電子注入性材料として、フッ化リチウム等の無機リチウム化合物の他に、安息香酸リチウムや酢酸リチウム等の有機リチウム化合物を採用することも可能である。
また、主陰極50aを構成する電子注入性材料として、複数種類の有機金属錯体を混合して用いることも可能である。例えば、本実施形態のように1画素内にR,G,Bの複数種類の発光層60が設けられている場合に、それぞれの発光層60に対して最適な有機金属錯体を混合して主陰極50aを構成してもよい。この場合、各錯体が機能を補完し合うことにより、発光効率を更に高めることができる。また、各発光層60の表面にそれぞれ別個の主陰極50aを形成し、各主陰極50aを構成する電子注入性材料として、各発光層60に最適な金属錯体を採用してもよい。この場合、発光層60毎に最適な材料設計を行なうことが可能になり、また各発光層60の色バランスを調節することも容易となる。
特に、青の発光素子については、上述した有機金属錯体とともに、または上述した有機金属錯体に代えて、リチウム化合物を採用するのが好ましい。これにより、青の発光層60Bを低電圧で発光させることができる。
また、上記錯体はそれ自体単独で用いることもできるし、従来から知られている電子注入性材料と混合して使用することもできる。このような公知の電子注入性材料としては、シクロペンタジエン誘導体,オキサジアゾール誘導体,ビススチリルベンゼン誘導体,p−フェニレン化合物,フェナントロリン誘導体,トリアゾール誘導体等が挙げられる。
(導電性材料)
一方、主陰極50aを構成する導電性材料として、導電性高分子材料を採用することが可能である。特に、導電性高分子材料として、エチレンジオキシチオフェンを含む高分子化合物を採用することが望ましい。具体的には、正孔注入層70の構成材料でもある3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS=1/20)[商品名;バイトロン−p(Bytron-p):バイエル社製]の分散液を使用する。これは、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させたものである。
また、主陰極50aを構成する導電性材料として、上述した導電性高分子に代えて、または導電性高分子とともに、導電性を有する金属微粒子を採用することも可能である。特に、導電性高分子と金属微粒子との混合材料によって主陰極50aを構成した場合には、比較的低温で主陰極50aを焼成しつつ、主陰極50aの導電性を確保することが可能になる。金属微粒子として、具体的にはAuやAg、Al等を使用することができる。AuやAgは、導電性に優れているが、仕事関数が大きい金属である。しかし本実施形態では、電子注入性材料を導電性材料に混合して主陰極50aを構成するので、仕事関数の大きい物質を導電性材料として採用することも可能である。なお、主陰極50aを構成する導電性材料として、AuやAg等の金属微粒子以外に、カーボンペーストを採用することも可能である。
なお、導電性材料に非導電性の電子注入性材料を混合して主陰極50aが構成される場合には、主陰極50aの電気抵抗が大きくなる場合がある。そこで、共通陰極50全体の導電性を高めるため、主陰極50aの表面に補助陰極50bを設けることが望ましい。なお補助陰極50bは、主陰極50aを覆って酸素や水分などからこれを保護する機能も有している。補助陰極50bは、導電性を有する金属微粒子によって構成されている。この金属微粒子として、化学的に安定な導電性材料であれば特に限定されることなく、任意のもの、例えば金属や合金などが使用可能であり、具体的にはAl(アルミニウム)やAu(金)、Ag(銀)などが好適に用いられる。この補助陰極50bの厚さとしては、100nm〜500nm程度とするのが好ましく、特に200nm程度とするのが好ましい。100nm未満では保護機能が十分に得られないおそれがあり、また500nmを越えると製造時における熱的負荷が高くなり、発光層60に劣化や変質等の悪影響を及ぼすおそれがあるからである。なお、本実施形態ではAgによって補助陰極50bを形成している。また、特にトップエミッション型の有機EL装置とする場合には、十分に薄い補助陰極50bを形成してこれに透光性を持たせることが可能であり、あるいは透光性を有するITO等の導電性材料を用いて補助陰極50bを形成することも可能である。
このような構成からなる有機EL装置1にあっては、主陰極50aによって前記発光層60に対する電子注入性を確保することができる。したがって、良好な発光特性が得られるようになる。
[有機EL装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る有機EL装置1の製造方法の一例を、図6および図7を参照して説明する。なお、図6および図7に示す各断面図は、図2中のA−B線の断面図に対応しており、各製造工程順に示している。
まず、図6(a)に示すように、基板20上の回路部11の表面に、画素電極23を形成する。具体的には、まず基板20の全面を覆うように、ITO等の導電材料からなる導電膜を形成する。その際、第2層間絶縁層284のコンタクトホール23aの内部に導電材料を充填してコンタクトを形成する。そして、この導電膜をパターニングすることにより画素電極23を形成するとともに、コンタクトを介して駆動用TFT123のドレイン電極244に導通させる。これと同時に、ダミー領域のダミーパターン26も形成する。なお図3および図4では、画素電極23およびダミーパターン26を総称して画素電極23としている。
なおダミーパターン26は、実表示領域に形成されている画素電極23と同様に島状に形成されているが、第2層間絶縁層284を介して下層のメタル配線へ接続しない構成とされている。もちろん、表示領域に形成されている画素電極23とは異なる形状であってもよい。なお、この場合、ダミーパターン26は少なくとも前記駆動電圧導通部310(340)の上方に位置するものも含むものとする。
次いで、図6(b)に示すように、画素電極23、ダミーパターン26上、および第2層間絶縁層284上に、絶縁層である親液性制御層25を形成する。なお、画素電極23においては一部が開口する態様にて親液性制御層25を形成し、開口部25a(図3も参照)において画素電極23からの正孔移動が可能とされている。続いて、親液性制御層25において、異なる2つの画素電極23の間に位置して形成された凹状部に、BM(図示せず)を形成する。具体的には、親液性制御層25の前記凹状部に対して、金属クロムを用いスパッタリング法にて成膜する。
次いで、図6(c)に示すように、親液性制御層25の所定位置、詳しくは前記BMを覆うように有機バンク層221を形成する。具体的な有機バンク層221の形成方法としては、例えばアクリル樹脂やポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に溶解したものを、スピンコート法、ディップコート法などの各種塗布法により塗布して有機質層を形成する。なお、有機質層の構成材料は、後述するインクの溶媒に溶解せず、しかもエッチングなどによってパターニングし易いものであればどのようなものでもよい。
続いて、有機質層をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術を用いてパターニングし、有機質層にバンク開口部221aを形成することにより、開口部221aに壁面を有した有機バンク層221を形成する。なお、この場合、有機バンク層221は、少なくとも前記駆動制御信号導通部320の上方に位置するものを含むものとする。
次いで、有機バンク層221の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを形成する。本実施形態においては、プラズマ処理によって各領域を形成するものする。そのプラズマ処理は、予備加熱工程と、有機バンク層221の上面および開口部221aの壁面ならびに画素電極23の電極面23cおよび親液性制御層25の上面をそれぞれ親液性にする親インク化工程と、有機バンク層の上面および開口部の壁面を撥液性にする撥インク化工程と、冷却工程とによって構成される。
すなわち、基材(バンクなどを含む基板20)を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、次いで親インク化工程として大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2 プラズマ処理)を行う。次いで、撥インク化工程として大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4 プラズマ処理)を行い、その後、プラズマ処理のために加熱された基材を室温まで冷却することで、親液性および撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
なお、このCF4 プラズマ処理においては、画素電極23の電極面23cおよび親液性制御層25についても多少の影響を受けるが、画素電極23の材料であるITOおよび親液性制御層25の構成材料であるSiO2 、TiO2 などはフッ素に対する親和性に乏しいため、親インク化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれる。
次いで、正孔注入層形成工程によって正孔注入層70を形成する。この正孔注入層形成工程では、液滴吐出法として、特にインクジェット法が好適に採用される。すなわち、このインクジェット法により、正孔注入層形成材料を電極面23c上に選択的に配し、これを塗布する。その後、乾燥処理および熱処理を行い、電極23上に正孔注入層70を形成する。正孔注入層70の形成材料としては、例えば前記のPEDOT/PSSを水やイソプロピルアルコールなどの極性溶媒に溶解させたものが用いられる。
ここで、このインクジェット法による正孔注入層70の形成にあたっては、まず、インクジェットヘッド(図示略)に正孔注入層形成材料を充填し、インクジェットヘッドと基材(基板20)とを相対移動させながら、インクジェットヘッドの吐出ノズルを親液性制御層25に形成された前記開口部25a内に位置する電極面23cに対向させる。そして、1滴当たりの液量が制御された液滴を吐出ノズルから電極面23cに吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理し、正孔注入層材料に含まれる分散媒や溶媒を蒸発させることにより、正孔注入層70を形成する。
このとき、吐出ノズルから吐出された液滴は、親液性処理がなされた電極面23c上にて広がり、親液性制御層25の開口部25a内に満たされる。その一方で、撥インク処理された有機バンク層221の上面では、液滴がはじかれて付着しない。したがって、液滴が所定の吐出位置からずれて、液滴の一部が有機バンク層221の表面にかかったとしても、該表面が液滴で濡れることがなく、弾かれた液滴が親液性制御層25の開口部25a内に引き込まれる。
なお、この正孔注入層形成工程以降では、各種の形成材料や形成した要素の酸化・吸湿を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
次いで、図7(d)に示すように、発光層形成工程による発光層60の形成を行う。この発光層形成工程では、前記の正孔注入層70の形成と同様に、液滴吐出法であるインクジェット法が好適に採用される。すなわち、インクジェット法により、発光層形成材料を正孔注入層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、有機バンク層221に形成された開口部221a内に発光層60を形成する。この発光層60の形成は、その色毎に行う。なお、インクジェット法(液滴吐出法)を用いることにより、発光層60の形成材料を、所定位置、すなわち画素領域のみに選択的に配置することが可能であり、また個々の位置において吐出量を変えることも可能である。また、前記発光層形成工程では、正孔注入層70の再溶解を防止するため、発光層形成材料に用いる溶媒として、正孔注入層70に対して不溶な無極性溶媒を用いる。一方、焼成温度としては150℃〜200℃の範囲とするのが好ましく、特に180℃程度とするのが好ましい。150℃未満では、形成材料が十分に硬化せず、したがって後述するようにその上に青色発光層の形成材料が設けられると、形成材料どうしが混ざり合ってしまうおそれがあるからである。また、200℃を越えると、形成材料が熱により変質し劣化してしまうおそれがあるからである。
(陰極の形成)
次いで、図7(e)に示すように、共通陰極50を形成する。共通陰極50の形成工程では、まず発光層60および有機バンク層221を覆うように主陰極50aを形成する。主陰極50aの形成は、主陰極50aの構成材料を含む液状体を塗布することによって行う。そのため、まず主陰極50aの構成材料を含む液状体を作製する。導電性材料として前記PEDOT/PSSを採用する場合には、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水やイソプロピルアルコール等の極性溶媒に溶解させる。また、導電性材料として金属微粒子を採用する場合には、分散媒として、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ジメチルケトンなどの極性物質を用いる。
さらに、電子注入性材料として前記Ca(acac)2を採用する場合には、これを水等の極性物質に溶解させる。Ca(acac)2の濃度は、例えば1wt%とする。なお電子注入性材料として、Na、K、Rb、Csのフッ化物など、水溶性を示すものを採用する場合にも、これを水等の極性物質に溶解させることができる。そして、上述した導電性材料の分散液と電子注入性材料の溶液とを混合することにより、前記液状体を作製する。このように、分散媒または溶媒として極性物質を採用すれば、塗布された液状体に対する発光層60の再溶解を抑制することが可能になる。なお、例外的に発光層60が前記極性物質に溶出してしまう場合には、分散媒または溶媒としてトルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラデカン、イソオクタンなどの非極性物質を用いてもよい。
そして、上記のように作製した液状体を、発光層60および有機バンク層221の表面に塗布する。塗布法にはスピンコート法などを採用することができるが、発光層60や正孔注入層70と同様にインクジェット法を採用することも可能である。さらに、塗布された液状体を乾燥および焼成することにより、主陰極50aの被膜を形成する。主陰極50aの成膜温度は、150℃以下とすることが望ましい。150℃を超える温度で熱処理を行うと、有機物によって構成される発光層60の機能を低下させるおそれがあるからである。この点、導電性材料としてPEDOT/PSSを採用すれば、100℃×10分程度の条件で焼成することが可能であり、発光層60に対するダメージを抑制することができる。
次いで、主陰極50aの表面を覆うように、補助陰極50bを形成する。補助陰極50bの形成は、補助陰極50bの構成材料を含む液状体を塗布することによって行う。その液状体は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ジメチルケトンなどの分散媒に、AuやAgなどの金属微粒子を分散させて作製する。液状体の塗布には、主陰極50aの形成と同様に、スピンコート法やインクジェット法などを採用することが可能である。さらに、塗布された液状体を乾燥および焼成することにより、補助陰極50bの被膜を形成する。補助陰極50bの成膜温度は、主陰極50aの成膜温度と同様に、150℃以下とすることが望ましい。
なお、主陰極50aおよび補助陰極50bの構成材料を含む液状体をスピンコート法によって塗布した場合には、画素領域にのみ選択的に形成材料を配するのでなく、基板20のほぼ全面に被膜が形成されることになる。そこで、後工程となる封止工程に先立ち、基板周辺部に形成された主陰極50aおよび補助陰極50bの被膜を、図7(e)に示すように除去する。また、成膜時においてマスク等を用いることにより、基板周辺部には成膜しないようにしてもよい。
以上により、共通陰極50が形成される。
その後、図7(f)に示すように、封止基板30により基板20の表面を封止する。この封止工程では、内側にゲッター剤45を貼り付けた封止基板30を、基板20に対して封止樹脂40により接着する。この封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、基板20、封止基板30および封止樹脂40によって包囲される空間に、不活性ガスが気密封止される。
以上により、本実施形態の有機EL装置1が形成される。
以上に詳述したように、本実施形態の有機EL装置およびその製造方法では、導電性材料と電子注入性材料との混合材料によって主陰極50aを構成した。この構成によれば、1回の液相プロセスにより、導電性および電子注入性を備えた主陰極50aを形成することができる。また、気相プロセスのように真空条件を必要としないので、エネルギー消費量を低減することが可能になる。したがって、製造コストを低減することができる。このように液相プロセスを用いれば、基板サイズの制限がなくなって、大画面ディスプレイの製造に有効となる。また、蒸着マスクが不要となるので、高精細なディスプレイの製造に有効となる。さらに、耐熱性の低いプラスチック基板を用いたフレキシブルなディスプレイの開発に有効となる。
さらに本実施形態では、電子注入性材料として、低仕事関数金属を中心原子とする錯体を採用した。この構成によれば、金属錯体の配位子は中心原子を取り囲むように配置されるため、これが立体障害となって中心原子はこれらの配位子の内部に安定的に保持される。そのため、低仕事関数金属の表面を安定金属で覆う工程や、安定雰囲気下で低仕事関数金属を封止する工程などを要することなく、製造プロセスにおける低仕事関数金属の安定性を確保することができる。したがって、製造プロセスが簡略化され、製造コストを低減することができる。また、安定した錯体を採用することにより、発光層内への不純物の混入を未然に防ぐことができるので、耐湿性が向上する。したがって、発光効率が高く安定した特性を有する有機EL装置を得ることができる。
[電子機器]
次に、本発明の電子機器について、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態の有機EL装置を備えた携帯電話の斜視図である。図8において符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は表示部を示している。この携帯電話1000は、本実施形態の有機EL装置からなる表示部1001を備えているので、良好な表示特性を発揮することができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態では発光層60に高分子材料を用いたが、この代わりに低分子材料を用いることもできる。また、上述の回路部11の構成はほんの一例であり、これ以外の構成を採ることも可能である。
ガラス基板の上面にITOからなる画素電極を形成し、その上面にPEDOT/PSSからなる正孔注入層を形成し、その上面に高分子材料からなる発光層を形成した。そして発光層の上面に、導電性材料であるPEDOT/PSSと、電子注入性材料であるカルシウムアセチルアセトナト錯体(Ca(acac)2)とで構成される主陰極を形成した。具体的には、1wt%に調整したCa(acac)2の水溶液と、PEDOT/PSS分散液とを、1:4の割合で混合して液状体を作製し、スピンコート法によって塗布した。その回転速度は500rpm、回転時間は60秒である。さらに、塗布された液状体を100℃で10分間加熱して焼成し、厚さ300nmの主陰極の被膜を形成した。
このように形成した有機EL装置は、10V以下の電圧で良好に発光した。
実施形態の有機EL装置の配線構造を示す模式図である。 実施形態の有機EL装置の構成を模式的に示す平面図である。 図2のA−B線に沿う側面断面図である。 図2のC−D線に沿う側面断面図である。 図3の要部拡大断面図である。 有機EL装置の製造方法を工程順に説明する断面図である。 有機EL装置の製造方法を工程順に説明する断面図である。 実施形態の有機EL装置を備えた携帯電話の斜視図である。
符号の説明
23陽極 50a主陰極 50b補助陰極 60発光層

Claims (18)

  1. 対向する陽極と主陰極との間に、少なくとも発光層を備えた有機EL装置であって、
    前記発光層に隣接して前記主陰極が形成され、前記主陰極は導電性材料と電子注入性材料との混合材料によって構成されていることを特徴とする有機EL装置。
  2. 前記電子注入性材料は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属または遷移金属を中心原子とする金属錯体であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
  3. 前記電子注入性材料は、β−ジケトン錯体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機EL装置。
  4. 前記電子注入性材料は、アセチルアセトナト錯体であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の有機EL装置。
  5. 前記電子注入性材料は、ビスアセチルアセトナトカルシウム錯体であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の有機EL装置。
  6. 前記電子注入性材料は、有機リチウム化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
  7. 前記電子注入性材料は、フッ化リチウムであることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
  8. 前記導電性材料は、導電性高分子化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の有機EL装置。
  9. 前記導電性材料は、エチレンジオキシチオフェンを含む高分子化合物であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の有機EL装置。
  10. 前記導電性材料は、PEDOT/PSSであることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の有機EL装置。
  11. 前記導電性材料は、金属微粒子であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の有機EL装置。
  12. 前記導電性材料は、導電性高分子化合物と金属微粒子との混合材料であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の有機EL装置。
  13. 前記主陰極の表面に、金属微粒子からなる補助陰極が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の有機EL装置。
  14. 対向する陽極と主陰極との間に、少なくとも発光層を備えた有機EL装置の製造方法であって、
    導電性材料および電子注入性材料が混合された液状体を前記発光層上に塗布して、前記主陰極を形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
  15. 前記液状体を、液滴吐出装置によって前記発光層上に塗布することを特徴とする請求項14に記載の有機EL装置の製造方法。
  16. 塗布された前記液状体を150℃以下で焼成して、前記主陰極を形成することを特徴とする請求項14または請求項15に記載の有機EL装置の製造方法。
  17. 請求項14ないし請求項16のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法を使用して製造したことを特徴とする有機EL装置。
  18. 請求項1ないし請求項13または請求項17のいずれかに記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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