JP2005062651A - 定着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 定着ベルトに密着している記録用紙が水蒸気の発生により部分的に剥がされる剥離ブリスタに起因して光沢むらが発生することを抑制することができる定着装置を提供する。
【解決手段】 回転する無端状の定着ベルト(10)と、この定着ベルトを加熱する加熱手段(20、21)と、この加熱手段により加熱された定着ベルトの外周面に所定の距離だけ接触して同じ方向に回転する無端状の搬送支持ベルト(35)と、この搬送支持ベルトと定着ベルトとが接触する間に導入される定着対象のトナー像(T)を担持する記録用紙(P)をその定着ベルトの外周面に圧接させるように加圧する加圧手段(30,31)とを備え、その加圧手段の加圧により定着ベルトに密着した状態で搬送される記録用紙を冷却した後に定着ベルトから剥離する定着装置であって、その定着ベルトと搬送支持ベルトとが接触する領域(E)の少なくとも所定の部分で静電的に吸着した状態になり得る電荷を付与する電荷付与手段(50)を設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】 回転する無端状の定着ベルト(10)と、この定着ベルトを加熱する加熱手段(20、21)と、この加熱手段により加熱された定着ベルトの外周面に所定の距離だけ接触して同じ方向に回転する無端状の搬送支持ベルト(35)と、この搬送支持ベルトと定着ベルトとが接触する間に導入される定着対象のトナー像(T)を担持する記録用紙(P)をその定着ベルトの外周面に圧接させるように加圧する加圧手段(30,31)とを備え、その加圧手段の加圧により定着ベルトに密着した状態で搬送される記録用紙を冷却した後に定着ベルトから剥離する定着装置であって、その定着ベルトと搬送支持ベルトとが接触する領域(E)の少なくとも所定の部分で静電的に吸着した状態になり得る電荷を付与する電荷付与手段(50)を設けた。
【選択図】 図1
Description
本発明は、定着対象のトナー像を担持する記録用紙を、加熱されて回転する無端状の定着ベルトの外周面に圧接して密着させた状態で搬送した後に剥離して排出するタイプの定着装置に関するものである。また本発明は、特に、その定着ベルトに密着する記録用紙が水蒸気の発生により定着ベルトから部分的に剥がれることで光沢むらを誘発することを抑制することが可能な定着装置に関するものである。
近年、電子写真方式、静電記録方式等を利用したプリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置に使用される定着装置として、次のようなベルト定着装置が提案されている。そのベルト定着装置とは、一定の方向に回転する無端状の定着ベルトと、この定着ベルトに所定の距離だけ接触しながら同じ方向に回転する無端状の搬送支持ベルトとを使用し、その定着ベルトと搬送支持ベルトが接触して形成されるベルトニップ部に、未定着のトナー像が担持された記録用紙をそのトナー画像担持面が定着ベルトの外周面に密着するように加圧された状態で導入し、その記録用紙を定着ベルトに密着させた状態で搬送する過程で冷却した後に定着ベルトから剥離させるタイプのものである(特許文献1、2、3)。
そして、このタイプの定着装置によれば、記録用紙上の定着対象のトナー像が定着ベルトの平滑な表面に密着した状態で冷却固化された後に定着ベルトから剥離されることで定着ベルトの平滑面にならった表面平滑なものとなるため、特に光沢感に優れた定着画像が得られるという利点がある。また、記録用紙の定着ベルトからの剥離はトナーが冷却固化された後に行われるため、そのトナーの一部が定着ベルトに転移付着してしまうトナーのオフセット現象も発生しにくくなるという利点もある。
ところが、このようなタイプの定着装置にあっては次のような問題がある。
すなわち、定着ベルトに加圧されて密着した記録用紙が、その用紙自体に含まれる水分が定着時の加熱により水蒸気として噴出し、その定着ベルト側に噴出して滞留する水蒸気の蒸気圧により記録用紙が冷却途上で定着ベルトから部分的に剥がれる(浮き上がる)ことがある(以下、この現象を「剥離ブリスタ」とも呼ぶ)。この剥離ブリスタによりトナー像が冷却固化される前に定着ベルトから部分的に剥離してしまうと、その剥離した部分のトナー像等の表面に定着ベルトの外周面の平滑面状態が十分に写し取られず、この結果、その剥離した部分の光沢(度)がその剥離しない部分の光沢よりも低下してばらつくという光沢むらが発生することがある。
本発明は、前述したような背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的とするところは、定着ベルトに密着している記録用紙が部分的に剥がされる剥離ブリスタに起因して光沢むらが発生することを抑制することができる定着装置を提供することにある。
本発明の定着装置は、回転する無端状の定着ベルトと、この定着ベルトを加熱する加熱手段と、この加熱手段により加熱された前記定着ベルトの外周面に所定の距離だけ接触して同じ方向に回転する無端状の搬送支持ベルトと、この搬送支持ベルトと前記定着ベルトとが接触する間に導入される定着対象のトナー像を担持する記録用紙をその定着ベルトの外周面に圧接させるように加圧する加圧手段とを備え、その加圧手段の加圧により定着ベルトに密着した状態で搬送される記録用紙を冷却した後に定着ベルトから剥離する定着装置において、前記定着ベルトと前記搬送支持ベルトとが接触する領域の少なくとも所定の部分で静電的に吸着した状態になり得る電荷を付与する電荷付与手段を設けたことを特徴とするものである。
上記定着ベルトと搬送支持ベルトとが静電的に吸着した状態になり得るとは、両ベルトどうしが付与される電荷に基づいて生じる静電吸着力により吸着される状態のほか、両ベルトどうしが静電的に吸着するよりも主に一方のベルトが付与される電荷に基づいて生じる静電吸着力によりその他方のベルト側に配置される対向電極部材に対して当該他方のベルトを挟んだ状態で静電的に吸着される状態を含むものである。また、上記所定の部分とは、好ましくは定着ベルトと搬送支持ベルトの接触する領域の全域であるが、その接触領域のうちで、定着ベルトに密着した記録用紙が水蒸気の発生により部分的に剥がれる(浮き上がる)ことがあっても、その剥がれた記録用紙を両ベルトどうしが分離する前に定着ベルトと搬送支持ベルトとの静電的な密着により再び定着ベルトに密着させることが可能となる領域を少なくとも含むものであればよい。
上記電荷付与手段は、上述したような電荷を定着ベルトおよび搬送支持ベルトの一方または双方に付与することができるものであればよい。その具体例としては、例えば、コロトロン等のコロナ放電器や、被帯電対象物に接触させて電荷を付与する静電ブラシ、静電フィルム等の接触部材を用いた接触式帯電器などが挙げられる。また、電荷付与手段の設置する数量や付与する電荷の極性については適宜選定される。
また、本発明の定着装置においては、その電荷付与手段を、前記接触する領域にある前記搬送支持ベルトおよび前記定着ベルトの一方の内周面に電荷を付与するように設置し、かつ、その電荷付与手段が設置されない定着ベルトまたは搬送支持ベルトの内周面側で当該電荷付与手段と少なくとも対向する位置にその内周面に接触する対向電極部材を設けるように構成することができる。
このように構成した場合には、接触する領域にある搬送支持ベルトおよび定着ベルトのうち電荷が付与された側のベルトがその他方のベルトに静電吸着により吸着するとともにその他方のベルトを挟むような状態で対向電極部材に静電吸着力により吸着するようになる。そして、この場合の電荷付与手段は、いずれのベルト側に設置してよいが、搬送支持ベルト側であることが好ましい。また、対向電極部材は、ロール形態のものでも可能であるが、特に定着ベルトと記録用紙との平面的な密着状態を確保する観点から、ベルト内周面との接触面が少なくとも平面状に形成された部材であることが好ましい。
さらに、本発明の定着装置においては、電荷付与手段を、前記搬送支持ベルトの内周面または外周面に電荷を付与するように設置する第1電荷付与手段と、前記定着ベルトの内周面または外周面に前記電荷とは逆極性の電荷を付与するように設置する第2電荷付与手段とで構成することができる。
このように構成した場合には、各電荷付与手段にて極性が相異なる電荷が付与された搬送支持ベルトと定着ベルトどうしがその電荷に基づいて生じる静電吸着により吸着するようになる。そして、この場合における第1電荷付与手段および第2電荷付与手段は、一般に、定着ベルトおよび搬送支持ベルトの各内周面どうしに電荷を付与するように設置されるか、またはその各外周面どうしに電荷を付与するように設置されるが、必要に応じて可能であれば、その一方の電荷付与手段は定着ベルトまたは搬送支持ベルトの内周面に電荷を付与するように設置する一方で、その他方の電荷付与手段は搬送支持ベルトまたは定着ベルトの外周面に電荷を付与するように設置するように構成してもよい。また、第1電荷付与手段および第2電荷付与手段は、定着ベルトおよび搬送支持ベルトの接触する領域の各内周面どうしに電荷を付与するように設置する場合、付与した電荷に基づく両ベルトの静電的な吸着が効率よく的確に発生するようにできる観点から、その両電荷付与手段は両ベルトを挟んで対向する位置に設置することが好ましい。
また、本発明の上記各定着装置においては、電荷付与手段(第1電荷付与手段および第2電荷付与手段の場合も含む)を、前記トナー像が加熱により軟化溶融した状態にあるうちに前記定着ベルトと搬送支持ベルトとが静電的に吸着した状態になり得る位置に設置するとよい。
このように構成した場合には、トナー像が軟化溶融した状態にあって定着ベルトと搬送支持ベルトとが静電的に吸着した状態にあるときに、たとえ定着ベルトに密着した記録用紙が水蒸気の発生により部分的に剥がれることが発生しても、その記録用紙はトナー像が軟化溶融した状態にあるうちに定着ベルトと再び密着し得るようになる。このため、当該トナー像は、その離れた部分などが冷却により固化してしまう前に再び定着ベルトの外周面の平滑性に沿った状態になり、その光沢性が維持されるようになる。
上記トナー像が軟化溶融した状態とは、トナー像がその像を構成するトナーが加熱により溶融軟化している状態をいい、換言すれば、トナーの軟化温度よりも高くかつその溶融温度よりも低い温度状態にあることをいう。ここで、その軟化温度は、トナーのガラス転移温度よりも高くかつその溶融温度よりも低い温度である。また、ガラス転移温度とは、中間点転移温度をいい、JIS K7122のDSC法に準拠して(加熱速度:毎分10℃)求められる。この発明では、上記ガラス転移温度に20℃を加えた温度を「トナーの軟化温度」とする。そして、トナーがこの軟化温度よりも高くその溶融温度よりも低い温度の状態にあるときを、トナー像が軟化溶融した状態にあることとする。トナー像が溶融した状態にあるか否かは、定着動作可能な状態において、記録用紙が一旦剥がされるときの定着ベルト部分またはそのベルトを支持するロール等の支持部材の表面温度を測定することで確認することができる。
さらに、本発明の上記定着装置(両ベルトの接触領域に電荷付与手段を配置する場合を除く)においては、電荷付与手段を、接触する前の前記定着ベルトおよび搬送支持ベルトの外周面または内周面に電荷を付与する位置に設置することもできる。
このように構成した場合には、定着ベルトと搬送支持ベルトが接触し始める時点から両電気力により吸着し合う状態になるため、その両ベルトの間に導入された記録用紙が水蒸気の発生により定着ベルトから部分的に剥がれようとする現象が発生しにくくなる。
なお、上記定着ベルトは、その外周面が平滑性に優れた面に形成されたものが使用される。上記加熱手段としては、例えば加熱ロール、接触式加熱板、輻射型加熱器等などを使用することができる。上記加圧手段としては、一般に加圧ロール対が使用されるが、特にこれに限定されない。上記冷却は、定着時に加熱されたトナーが定着ベルトから離れやすい粘度となる温度以下の温度に下げるための工程である。この冷却は一般に冷却装置を用いた冷却が適用されるが、自然(放熱)による冷却を適用しても構わない。
また、上記記録用紙は、定着装置内を搬送してトナー像の定着が可能なものであればよく、通常の用紙や塗工紙に限らず、OHPシート、ハガキ、封筒等のような部材を含むものである。上記トナー像を構成するトナーは、着色剤等を含有させた熱可塑性のバイダー樹脂からなる微粉体であり、一般に一成分現像剤または二成分現像剤として使用されるものである。
本発明の定着装置によれば、定着時において、定着対象のトナー像を担持する記録用紙が加熱された定着ベルトと搬送支持ベルトの接触する間に導入されて加熱加圧されることで定着ベルトの外周面に密着した状態になる。また、電荷付与手段により付与される電荷によって、その定着ベルトと搬送支持ベルトとが接触する領域の少なくとも所定の部分で静電的に吸着した状態になる。
これにより、加熱された記録用紙から水蒸気が発生することがあっても、かかる記録用紙は水蒸気の発生時からその静電的に吸着した状態にある定着ベルトと搬送支持ベルトの間に挟まれた状態に保持される場合には、その水蒸気の発生による剥がれ(浮き)が防止される。また、その定着ベルトに密着した記録用紙が水蒸気の発生により部分的に剥がれてしまった場合であっても、かかる記録用紙は静電的に吸着する定着ベルトと搬送支持ベルトとに挟まれた状態に保持されるようになるため、定着ベルトに再び密着した状態になる。
この結果、記録用紙は水蒸気の発生により定着ベルトから部分的に剥がれ、しかもその剥がれた状態のままになることがないため、トナー像等が定着ベルトと密着してそのベルトの平滑な外周面にならうことができる状態が確保されて均一な光沢性を得ることができるようになる。したがって、この定着装置による定着を行った場合には、剥離ブリスタに起因した光沢むらの発生が抑制される。
本発明の定着装置は、電子写真方式、静電記録方式等を利用したプリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置において、画像情報に応じて形成される未定着のトナー像を記録用紙に転写した後に定着させるための定着装置として使用することができる。以下、実施例などを挙げて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る定着装置1Aの要部を示す概略構成図である。図中の実線矢印は主な回転部品の回転方向を示す。
この定着装置1Aは、記録用紙P上に画像形成装置で形成されて担持された未定着のトナー像Tを定着させるために回転する無端状の定着ベルト10と、この定着ベルト10を加熱するための第1加熱ロール20および第2加熱ロール21と、定着ベルト10の外周面に所定の距離だけ接触して同じ方向に回転するように装置本体の部位に設置される無端状の搬送支持ベルト35と、定着ベルト10と搬送支持ベルト35をその各ベルトの内周面側から挟み込んで加圧接触させて加圧ニップ部N1を形成しながら回転するように対向配置される加圧ロール対30、31と、この加圧ロール対30、31を通過した後の定着ベルト10の内周面に接触するように配置されて第2定着ベルト12等を冷却する冷却装置としての熱循環器40等を具備している。図中矢付一点鎖線は記録用紙Pの定着装置内における搬送経路を示す。
定着ベルト10は、カーボンブラック等の導電材を含有させた合成樹脂等からなる厚さ10〜100μm程度のベルト基材上に、厚さ40〜100μm程度のシリコーン系ゴム、フッ素系ゴム等からなる弾性層を形成するか、あるいは、必要に応じてその弾性層上に離型性を有する合成樹脂からなる厚さ1〜100μm程度の表面離型層をさらに形成した構造のものである。この定着ベルト10は、その外周面が平滑性にきわめて優れた平滑面に形成されている。ベルト基材を形成する合成樹脂としては、耐熱性に優れてシート形状に成形し得るものが好ましく、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリイミドアミド、ポリアミド等が使用できる。表面離型層を形成する合成樹脂としては、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が使用できる。
定着ベルト10は、第1加熱ロール20、第2加熱ロール21、加圧ロール30、複数のベルト支持ロール15〜18等に図示するような形態で張架されており、駆動ロールとして兼用される加圧ロール30の回転動力が加圧ロール対30、31にて形成される加圧ニップ部N1において伝えられることで矢印A方向に回転するようになっている。
加熱ロール20、21はいずれも、回転可能に支持される円筒状の金属製ロール基体の内部に、ハロゲンランプ等の加熱源22、23を固定した状態で配置した構造からなるものである。第1加熱ロール20は、定着ベルト10の内周面にそれぞれ接してその各内周面側から加熱する。また、第2加熱ロール21は、第1定着ベルト11の外周面に接してその外周面側から加熱する。さらに、第2加熱ロール21については、その回転軸の一端側が変位して定着ベルト10の蛇行走行を矯正するステアリングロールとして機能するとともに、定着ベルト10に所定の張力を付与するテンションロールとして機能するように構成されている。そして、第1および第2加熱ロール20、21により定着ベルト10が所定の定着温度に維持されるように加熱される。加熱源22、23の動作は、その各ロールの表面温度を温度センサ等で実測した検知情報に基づいて制御される。
上記ベルト支持ロール17は、比較的小径のロールを使用して定着ベルト10を急激に曲げた状態で移動走行させるように支持し、これにより定着ベルト10に密着して搬送される記録用紙Pをそれ自身のこしの強さにより定着ベルト10の急激に曲がった部分から自力で剥がすようにするための剥離用ロールとして機能する。
上記加圧ロール30、31はいずれも、回転可能に支持される円筒形の金属製ロール基体にシリコーンゴム等からなる耐熱弾性層を形成した構造のものであり、その回転軸に大して図示しない加圧機構により所定の加圧力が加えられ、そのニップ幅(回転方向のニップ長さ)が所定の値となるように設置されている。また、これらの加圧ロール30、31は、その各ロール基体の内部空間に図示しないハロゲンランプ等の加熱源を配し、主にその各ロールを定着動作時の温度まで上昇させるいわゆるウォームアップ時の加熱を行うようにしている。
熱循環器40は、加圧ロール31とベルト支持ロール17との間で定着ベルト10の内周面に接する第1金属板41と、ベルト支持ロール18と第1加熱ロール20の間で定着ベルト10の内周面と接する第2金属板42と、その第1金属板41と第2金属板42に結合されて第1金属板41の熱を第2金属板42に移動させて循環させる熱輸送体43とで構成されている。
金属板41、42はいずれもアルミニウム等の金属にて形成される板状の部材であり、そのベルト接触面が少なくとも外側に突出しかつベルト走行方向に方向に緩やかに湾曲した湾曲面に形成されている。熱輸送体43としては、管のなかに液体を減圧して封入し、熱抵抗が非常に小さく、小さな温度差でも多くの熱を低温側に高速で輸送できる複数本のヒートパイプを使用している。そのヒートパイプは、各金属板41、42の内面側にそれぞれ触れて通過しながら各板間を循環するようなほど四角形の環状形状に組んで使用している。
この熱循環器40は、第1金属板41が定着ベルト10から熱を奪うと、その熱が熱輸送体43としてのヒートパイプの熱伝導作用により、第1金属板41に比べて低温状態にある第2金属板42側に伝えられる。これにより、第1金属板41が接する定着ベルト部分を吸熱して所定の温度まで冷却する一方、第2金属板42が接する定着ベルト部分を所定の温度になるまで加熱する仕組みになっている。また、この熱循環器40は、その上記したような熱循環の効果をより高める観点から、例えば定着ベルト10のベルト支持ロール17、18の間となる内周面に冷却装置(例えばヒートシンク等の放熱部材など)を設置し、第1金属板41と第2金属板42との間の温度勾配を大きくするとよい。
搬送支持ベルト35は、定着ベルト10の場合と同様の合成樹脂等からなる厚さ40〜100μm程度のベルト基材上に、合成ゴム等からなる厚さ40〜100μm程度の弾性層と、さらに必要に応じて離型性を有する合成樹脂等からなる厚さ3〜15μm程度の表面離型層をこの順に積層形成した構造のものである。この表面離型層は、記録用紙P(トナーを含む)と定着ベルト10に対して良好な離型性を示すものである。またこの表面離型層は、記録用紙P上のトナー像Tを構成するトナーに対しても良好な離型性を示す。この搬送支持ベルト35は、その全体が高い電気抵抗を有する(例えば、その体積抵抗率が1013Ωcm以上となる)ように形成されている。
また、搬送支持ベルト35は、加圧ロール31、ステアリングロール36、複数のベルト支持ロール37〜39に図示するような形態で張架されており、加圧ロール対30、31の間に挟まれて加熱ロール30の回転動力が伝達されることによって矢印B方向に従動回転するようになっている。この搬送支持ベルト35は、加圧ロール31とベルト支持ロール19の区間で定着ベルト10の外周面に接して同じ方向に回転移動する。ステアリングロール36は、その回転軸の一端側が所定の方向に所定量だけ変位することにより搬送支持ベルト35の蛇行走行を矯正するようになっている。さらに、搬送支持ベルト35は、その加圧ニップ部N1で記録用紙Pと接触する前の表面温度が所定の温度以下に維持されるように冷却装置としての冷却ファン45により必要に応じて冷却される。
そして、この定着装置1Aにおいては、図1や図2に示すように、搬送支持ベルト35の加圧ロール31(加圧ニップ部N1)とベルト支持ロール39の間となる内周面側に、その内周面に電荷を付与するためのコロナ放電器50Aを設けている。また、このコロナ放電器50Aを搬送支持ベルト35の内周面側に設置したことに伴い、定着ベルト10の内周面側には、その放電器50と対向する位置にその内周面に接触する対向電極として熱交換器40における第1金属板41の上流側端部41aを加圧ニップ部N1側に少し延長した状態で設けている。
コロナ放電器50Aは、電荷を付与する対象物(搬送支持ベルト35)と向き合う側が開口された長尺なシールド筐体51と、このシールド筐体51の内部空間に張架された放電電極としての放電ワイヤ52と、この放電ワイヤ52に所定の放電電圧(電流)を配線ケーブル(2点鎖線)を介して印加する電源装置53とで主に構成されている。また、コロナ放電器50Aは、そのシールド筐体51や放電ワイヤ52が搬送支持ベルト35の幅方向(回転軸と平行な方向)の全域にわたって対向するように設定されている。
また、このコロナ放電器50Aは、その放電ワイヤ52が加圧ニップ部N1(ニップ幅の中心)から記録用紙Pの搬送方向にむけて所定の距離Lだけ離れたところに位置するように設置している。この距離Lは、定着ベルト10に密着して搬送される記録用紙P上の加熱されたトナー像Tが軟化溶融した状態にある間(冷却固化される前)に、電荷付与対象のベルトに電荷を付与することが可能な距離に設定される。この際、定着ベルト10に密着しているときの記録用紙P上にあるトナー像Tの温度は、熱交換器40における第1金属板41の表面側の温度を測定することでほぼ予測できる。図2中の符号Eは、定着ベルト10と搬送支持ベルト35が接触している領域を示す。この領域Eは加圧ニップ部N1から支持ロール39までの区間に相当する。
さらに、このコロナ放電器50Aは、搬送支持ベルト35の内周面にプラス極性の電荷(プラスイオン)を付与するように設定されており、このため定着時になると電源装置53から放電ワイヤ52へ所定の電圧電流が供給される。このときの所定の電圧電流とは、搬送支持ベルト35の内周面における電荷密度が590μC/m2以上、好ましくは1100μC/m2以上となるように制御しながら供給されるものである。コロナ放電器50Aの稼動は、記録用紙Pが加圧ニップ部N1に導入される前から開始される。に一方、コロナ放電器50Aの対向電極としての第1金属板41(の上流側端部41a)は、接地(アース処理)されている。また、定着装置1Aにおいては、搬送支持ベルト35を支持する加圧ロール31、ステアリングロール36、複数のベルト支持ロール37〜39等も接地されている。
このような定着装置1Aでは、画像形成装置の作像部側においてトナー像Tが転写された記録用紙Pに対して以下のごとき定着が行われる。ちなみに、この定着対象となるトナー像Tを構成するトナーとしては、一般にその軟化温度が70〜90℃程度であり、マイナス帯電極性のものが使用される。
まず、未定着のトナー像Tが転写された記録用紙Pが、図1に示すように、用紙搬送ベルト、搬送ガイド等の搬送手段(図示せず)によりそのトナー像担持面を定着ベルト10に当接させる姿勢で搬送されて、その定着ベルト10と搬送支持ベルト35とが加圧ロール30、31に挟まれた状態で互いに接触し始める加圧ニップ部N1に導入される。
この際、定着ベルト10は、主に第1加熱ロール20および第2加熱ロール21を通過する際にその内周面側および外周面側から順次加熱されて回転移動する。このときの定着条件は、例えば、定着ベルト10が記録用紙Pに接触する前までに定着温度に必要な温度に加熱される。また、定着ベルト10は定着処理時間を満たす速度で回転するとともに、熱交換器40によってトナーが定着ベルト10から剥がれやすい粘度となる温度以下まで冷却される。さらに、搬送支持ベルト35は、記録用紙Pに接触する前までに定着温度よりも低い温度になるように冷却される。搬送支持ベルト35の冷却は、前記した冷却ファン45にて行われるが、この冷却ファン45を使用せず自然放熱による冷却に任せてもよい。また、コロナ放電器50Aが稼動して搬送支持ベルト35の内周面にプラスの電荷(図2中において丸で囲って示すプラス記号)が付与される。
続いて、加圧ニップ部N1に導入された記録用紙Pは、その搬送方向の先端部側から定着ベルト10と搬送支持ベルト35とに挟持された状態で加熱加圧され、定着ベルト10の外周面に密着した状態で搬送された後、熱循環器40の熱循環により熱が奪われる第1金属板41を通過する際にトナー像と一緒に所定の温度以下まで冷却される。この冷却によりトナー像が固化される。このように冷却された記録用紙Pは、小径のベルト支持ロール17に支持されて急激に曲がって走行する定着ベルト10の部分を通過するときにそのベルト10からトナー像と共に剥離される。この剥離された記録用紙Pは装置外に排出される。
以上の工程を経ることによりトナー像が記録用紙Pに定着される。このときの定着画像は、定着ベルト10の平滑な外周面にならい平滑化された光沢感に富む画像として得られる。
また、特にこの定着装置1Aでは、剥離ブリスタに起因した定着画像の光沢むらが発生することがほとんどない。
すなわち、この定着装置1Aにおいては、前述したようにコロナ放電器50Aにより搬送支持ベルト35の内周面にプラスの電荷が付与されるため、その電荷が付与された側の搬送支持ベルト35が全体的には、アース処理された第1金属板41に定着ベルト10を挟むような状態で静電的に吸着するようになる。これと同時に、その搬送支持ベルト35は、互いに接触する定着ベルト10自体に対しても誘電分極による静電引力によって静電的に吸着するようになる。また、この際、搬送支持ベルト35に付与された電荷は、そのベルト35が高電気抵抗の基材で形成されているため、ベルト支持ロール39を通過して定着ベルト10から離間するまで減衰することがない。この結果、搬送支持ベルト35は、少なくとも定着ベルト10から離間するまでは第1金属板41に対して持続的に静電吸着した状態に保持される。図中の記号Fは搬送支持ベルト35に働く静電吸着力を示す。
これにより、加圧ニップ部N1の通過により加熱された記録用紙Pから水蒸気が発生することがあっても、かかる記録用紙Pは水蒸気の発生時または直後からその静電的に吸着した状態にある定着ベルト10と搬送支持ベルト35の間に挟まれた状態に保持される場合には、その水蒸気の発生による定着ベルト10からの部分的な剥がれが防止される。また、その定着ベルト10に密着した記録用紙Pが水蒸気の発生により部分的に剥がれてしまった場合であっても、かかる記録用紙Pは静電的に吸着する定着ベルト10と搬送支持ベルト35とに挟まれた状態に保持されるようになるため(しかも、厳密には、定着ベルト10が第1金属板41との接触により冷却され始めることで水蒸気の圧力も低下するため)、定着ベルト10に再び密着した状態になる。
しかも、記録用紙Pは、そのトナー像Tが軟化溶融した状態にあるうちに吸着された定着ベルト10と搬送支持ベルト35の間に挟まれて定着ベルト10の外周面と密着した状態で冷却されるため、そのトナー像は密着する定着ベルト10の平滑な外周面にならって冷却固化されて表面平滑となり、光沢性に富むものとなる。
このように剥離ブリスタの発生が抑制されて定着が行われる結果、光沢むらのない高光沢の定着画像を得ることができる。
次に、定着装置1Aとして以下の条件に設定したものを用いて定着性能に関する評価試験を行った。
定着ベルト10としては、カーボンブラックを含有させたポリイミドからなる厚さ50μm程度の無端状ベルト基体の外周面に、シリコーン共重合体(硬度24°)からなる厚さ60μm程度の弾性層と、フッ素樹脂からなる厚さ5μm程度の表面離型層とをこの順に積層形成したものを使用した。一方、搬送支持ベルト35としては、ポリイミドからなる厚さ80μm程度の無端状ベルト基体の外周面に、シリコーンゴムからなる厚さ45μm程度の弾性層と、シリコーン樹脂からなる厚さ5μm程度の表面離型層とをこの順に積層形成したものを使用した。この定着ベルト10の体積抵抗率は1014Ωcmであり、搬送支持ベルト35の体積抵抗率は1015Ωcmであった。
加熱ロール20、21としては、いずれも各外径の円筒形状からなるアルミニウム製ロールの内部にハロゲンランプを設置したものを使用した。加圧ロール30〜31としては、いずれも外径が68mmの円筒形からなるロール基体の外周面に、シリコーンゴム(ゴム硬度:例えば17度程度)からなる厚さ6mm程度の耐熱弾性層を形成したものを使用した。また、その加圧ロール対30、31にて形成される2加圧ニップ部N1については、そのニップ圧力が3.5×105pa程度となるように加圧するとともに、そのニップ幅が20mm程度となるような条件に設定をした。
定着ベルト10は、ニップ部N1で記録用紙Pと接触する前までに加熱ロール20、21等により175℃に加熱した。また、定着ベルト10は355mm/secの速度で回転させた。さらに、定着ベルト10は、熱交換装置40によって剥離用のベルト支持ロール17が90℃以下、このましくは80℃以下の温度になるまで冷却するように設定した。一方、搬送支持ベルト35は、ニップ部N1で記録用紙Pに接触する前までに冷却装置45により70℃程度の温度になるまで冷却するようにした。トナーとしては、その軟化温度が80℃程度のものを使用した。
記録用紙Pとしては、56gsm(gram per square meter)の薄紙(富士ゼロックス社製:S紙)と、82gsmのカラー複写専用の普通紙(富士ゼロックス製:J紙)と、104.7および127.9gsmのコート紙(王子製紙製:OKトップコート紙)と、256gsmの高光沢コート紙(王子製紙製:ミラーコートプラチナ紙)を使用した(いずれもA4版サイズのもの)。
そして、第1金属板41は、記録用紙Pが加圧ニップ部N1を通過してその上流側端部41aに到達するまでの所要時間が約0.1秒となるような位置に設置した。また、コロナ放電器50Aは、記録用紙Pが加圧ニップ部N1を通過して放電ワイヤ52に到達するまでの所要時間が約0.25秒となるような位置に(L=355×0.25(mm)となる位置)に設置した。コロナ放電器50Aの放電ワイヤ52には、その電源装置53から5〜8kVの電圧を印加して、ベルト35への放電電流が70μAとなるように制御設定した。
このような配置設定により、熱交換器40の第1金属板41に達してコロナ放電器50Aに至る間における記録用紙Pの表面温度およびその記録用紙上のトナー像Tのトナー温度は、直接測定することはできないが、それらとほぼ同等のとみなせる金属板41に取り付けた温度計(サーミスタ)によるの測定温度が115〜125℃であった。
ちなみに、この定着装置1Aにおける加圧ニップ部N1を通過する前後における記録用紙P(種類:前記した「127.9gsmのOKトップコート紙」の表面温度(トナー像の担持面)の変化をシミュレーションした結果を図3に示す。この場合、用紙の初期温度は25℃とした。記録用紙Pの表面温度は、加圧ニップ部N1で定着ベルト10から付与された熱がそのニップ部N1を通過した直後から用紙の厚さ方向に移動することで徐々に低下する。以上のことから、この定着装置においては、コロナ放電器50Aを、トナーが固まっていない目安とされる100℃以上の温度状態にあるときに相当する、記録用紙Pが加圧ニップ部N1を通過してから約0.4秒の時間が経過するまでの範囲内となる位置に設置することが望ましいことがわかる。
そして、評価試験は、上記各記録用紙Pに所定のテスト用画像をそれぞれ形成し、これを上記条件設定からなる定着装置1Aにより毎分80枚(A4版用紙横送り)の処理速度からなる高速の定着を連続して(同じ種類の用紙について500枚程度)行った。定着性能については、この定着を行って得られた定着画像を肉眼で観察し、その剥離ブリスタに起因した光沢にむらがあるか否かを調べた。また、各記録用紙に対する連続定着が終了した時点で、定着ベルト10の外周面にトナーが付着するトナーオフセットが発生しているか否かを調べた。ちなみに、上記テスト用画像は、約2cm角のパッチ像を、単色(Y:イエロー,M:マゼンタ,C:シアン,K:ブラック)、二次色(R:レッド,G:グリーン,B:ブルー)及び三次色について、面積率が10%〜100%の範囲内において10%刻みで段階的に異なるものを列状に並べるように形成したトナー像である。
上記試験の結果は、記録用紙Pの種類の違いに関わらず、そのいずれの定着画像にも剥離ブリスタに起因した光沢むらの発生が認められず、高光沢な画像であった。また、いずれの定着においても、定着ベルト10に対するトナーオフセットの発生もなかった。
なお、この実施例1に係る定着装置1Aにおいては、コロナ放電器50Aに代えて、接触式の帯電器を使用することも可能である。この場合、接触式帯電器としては、シールド筐体51および放電ワイヤ52に代えて、静電ブラシ、静電フィルム等の接触部材を搬送支持ベルト35の内周面に接触させるように設置し、その接触部材に対して電源装置53から所定の帯電用電圧を印加するように構成したものを使用することができる。
そして、このような接触式帯電器を適用した場合には、搬送支持ベルト35の内周面がその接触部材により接触帯電されて所定の電荷が付与される。これにより、コロナ放電器50Aを適用した場合と同様に、搬送支持ベルト35を定着ベルト10を挟んだ状態で第1金属板41に静電的に吸着させることができ、その結果、剥離ブリスタに起因した光沢むらの発生を抑制することが可能となる。
また、実施例1に係る定着装置1Aにおいては、必要に応じて、定着ベルト10の外周面に付着するトナー、紙粉等を除去するためのクリーニング装置を設けることができる。そのクリーニング装置については、そのベルト外周面に直接接触するように設けることなく、そのベルト外周面に接触する第2加熱ロール21の空き周面(定着ベルト10と接触していない領域)に設けることが可能である。
図4は、本発明の実施例2に係る定着装置1Bの要部を示す概略構成図である。図中の実線矢印は主な回転部品の回転方向を示す。
この定着装置1Bは、熱交換器40における第1金属板41の上流側端部41aを延長形成することなく通常の寸法形状とし、そのときの端部41aと加圧ロール30との間となる定着ベルト10の内周面側に、コロナ放電器50Aと対向した状態で第2のコロナ放電器50Bを設けた以外は実施例1に係る定着装置1A(図1)と同じ構成(変形例の構成も含む)からなるものである。
第2のコロナ放電器50Bは、図5に示すように、実施例1における(第1の)コロナ放電器50Aと同様の構成からなるものである。電源装置については、第1のコロナ放電器50Aの電源装置53Aとは別個の電源装置53Bを使用する。また、第2のコロナ放電器50Bは、実施例1の場合と同様に、その放電ワイヤ52が加圧ニップ部N1から記録用紙Pの搬送方向にむけて所定の距離Lだけ離れた部位に位置するように設置される。さらに、第2のコロナ放電器50Bは、定着ベルト10の内周面に第1のコロナ放電器50Aの場合とは逆極性であるマイナス極性の電荷(マイナスイオン)を付与するように設定されており、このため定着時になると電源装置53Bから放電ワイヤ52へ所定の電圧電流が供給されるようになっている。このときの所定の電圧電流とは、搬送支持ベルト35の内周面における電荷密度が−590μC/m2以上、好ましくは−1100μC/m2以上となるように制御しながら供給されるものである。
このような定着装置1Bでは、画像形成装置の作像部側においてトナー像Tが転写された記録用紙Pに対して基本的に実施例1に係る定着装置1Aの場合と同様の定着が行われる。
また、この定着装置1Bによれば、基本的に実施例1に係る定着装置1Aの場合と同様に、その定着画像は定着ベルト10の平滑な表面状態にならい平滑化された光沢感に富む画像として得られる。しかも、この定着装置1Bによっても、剥離ブリスタに起因した定着画像の光沢むらが発生することがほとんどない。
すなわち、この定着装置1Bにおいては、図5に示すように、定着時に第1のコロナ放電器50Aおよび第2のコロナ放電器50Bが稼動することにより、搬送支持ベルト35の内周面にプラス極性の電荷が付与される一方で、定着ベルト10の内周面にマイナス極性の電荷(図5中において丸で囲んで示すマイナス記号)が付与されるため、加圧ニップ部N1を通過して接触している搬送支持ベルト35と定着ベルト10とが更に静電的に吸着するようになる。また、この際、定着ベルト10と搬送支持ベルト35とにそれぞれ付与された電荷は、いずれも高電気抵抗である搬送支持ベルト35および定着ベルト10に保持されているため、ベルト支持ロール39を通過して定着ベルト10と搬送支持ベルト35が互いに離間するまで減衰することがない。この結果、定着ベルト10と搬送支持ベルト35とは、少なくとも互いに接触している区間(換言すれば離間するまで)は持続的に静電吸着した状態に保持される。図中の記号Fa、Fbは、電荷の付与によって搬送支持ベルト35または定着ベルト10にそれぞれ働く静電吸着力を示す。
これにより、加圧ニップ部N1の通過により加熱された記録用紙Pから水蒸気が発生することがあっても、かかる記録用紙Pは水蒸気の発生時または直後からその静電的に吸着した状態にある定着ベルト10と搬送支持ベルト35の間に挟まれた状態に保持される場合には、その水蒸気の発生による定着ベルト10からの部分的な剥がれが防止される。また、その定着ベルト10に密着した記録用紙Pが水蒸気の発生により部分的に剥がれてしまった場合であっても、かかる記録用紙Pは静電的に吸着する定着ベルト10と搬送支持ベルト35とに挟まれた状態に保持されるようになるため(しかも、厳密には、定着ベルト10が第1金属板41との接触により冷却され始めることで水蒸気の圧力も低下するため)、定着ベルト10に再び密着した状態になる。
しかも、記録用紙Pは、そのトナー像Tが軟化溶融した状態にあるうちに吸着された定着ベルト10と搬送支持ベルト35の間に挟まれて定着ベルト10の外周面と密着した状態で冷却されるため、そのトナー像は密着する定着ベルト10の平滑な外周面にならって冷却固化されて表面平滑となり、光沢性に富むものとなる。
このように剥離ブリスタの発生が抑制されて定着が行われる結果、光沢むらのない高光沢の定着画像を得ることができる。
次に、定着装置1Bとして、実施例1の試験と同じ条件に設定したものを用いて定着性能に関する同様の評価試験を行った。なお、この評価試験では、第2のコロナ放電器50Bの放電ワイヤ52に対して、その電源装置53Bから−5〜−8kVの電圧を印加し、ベルト35への放電電流が−70μAとなるように制御設定した。第1のコロナ放電器50Aには実施例1の試験と同じ条件の電圧電流を供給した。
この試験の結果は、実施例1の試験結果と同様に、記録用紙Pの種類の違いに関わらず、そのいずれの定着画像にも剥離ブリスタに起因した光沢むらの発生が認められず、高光沢な画像であった。また、いずれの定着においても、定着ベルト10に対するトナーオフセットの発生もなかった。
図6は、本発明の実施例3に係る定着装置1Cの要部を示す概略構成図である。図中の実線矢印は主な回転部品の回転方向を示す。
この定着装置1Cは、いずれも搬送支持ベルト35および定着ベルト10の内周面側に設置する第1のコロナ放電器50Aおよび第2のコロナ放電器50Bに代えて、いずれもその各ベルト35、10の外周面側に第3のコロナ放電器50Cおよび第4のコロナ放電器50Dとして設置したほか、その各ベルト35、10を挟んで各コロナ放電器50C,50Dとそれぞれ対向する当該各ベルト内周面に接触しかつ接地された対向電極54C,54Dを設置した以外は実施例2に係る定着装置1A(図4)と同じ構成(変形例の構成も含む)からなるものである。
この第3のコロナ放電器50Cおよび第4のコロナ放電器50Dはいずれも、図7に示すように、実施例2における(第1および第2の)コロナ放電器50A、50Bと同様の構成からなるものである。電源装置については、実施例2の場合と同様に、2つのコロナ放電器50C,50Dごとに個別の電源装置53C,53Dを使用している。
そして、第3のコロナ放電器50Cは、搬送支持ベルト35の支持ロール37と支持ロール38の間となる外周面側に設置されたものである。また、このコロナ放電器50Cは、その搬送支持ベルト35の外周面にプラス極性の電荷を付与するように設定されており、このため定着時になると電源装置53Cから放電ワイヤ52へ所定の電圧電流が供給されるようになっている。このときの所定の電圧電流とは、搬送支持ベルト35の内周面における電荷密度が590μC/m2以上、好ましくは1100μC/m2以上となるように制御しながら供給されるものである。
一方、第4のコロナ放電器50Dは、定着ベルト10の支持ロール15と支持ロール16の間となる外周面側に設置されたものである。また、このコロナ放電器50Dは、その定着ベルト10の外周面にマイナス極性の電荷を付与するように設定されており、このため定着時になると電源装置53Dから放電ワイヤ52へ所定の電圧電流が供給されるようになっている。このときの所定の電圧電流とは、搬送支持ベルト35の内周面における電荷密度が−590μC/m2以上、好ましくは−1100μC/m2以上となるように制御しながら供給されるものである。
このような定着装置1Cでは、画像形成装置の作像部側においてトナー像Tが転写された記録用紙Pに対して基本的に実施例2に係る定着装置1Bの場合と同様の定着が行われる。
また、この定着装置1Cによれば、基本的に実施例2に係る定着装置1Bの場合と同様に、その定着画像は定着ベルト10の平滑な表面状態にならい平滑化された光沢感に富む画像として得られる。しかも、この定着装置1Cによっても、剥離ブリスタに起因した定着画像の光沢むらが発生することがほとんどない。
すなわち、この定着装置1Cでは、図7に示すように、定着時に第3のコロナ放電器50Cおよび第4のコロナ放電器50Dが稼動することにより、定着ベルト10と搬送支持ベルト35が加圧ニップN1で接触する前において、その搬送支持ベルト35の外周面にプラス極性の電荷が付与される一方で、その定着ベルト10の外周面にマイナス極性の電荷が付与されるため、加圧ニップ部N1に侵入して接触し始めると、かかる搬送支持ベルト35と定着ベルト10とが静電吸着力により吸着するようになる。また、この際、定着ベルト10と搬送支持ベルト35とにそれぞれ付与された電荷は、いずれも高電気抵抗である搬送支持ベルト35および定着ベルト10に保持されているため、ベルト支持ロール39を通過して定着ベルト10と搬送支持ベルト35が互いに離間するまで減衰することがない。この結果、定着ベルト10と搬送支持ベルト35とは、少なくとも互いに接触している区間(換言すれば離間するまで)は持続的に静電吸着した状態に保持される。図中の記号Fc、Fdは、電荷の付与によって搬送支持ベルト35または定着ベルト10にそれぞれ働く静電吸着力を示す。
これにより、加圧ニップ部N1の通過により加熱された記録用紙Pから水蒸気が発生しても、かかる記録用紙Pは水蒸気の発生時または直後からその静電的に吸着した状態にある定着ベルト10と搬送支持ベルト35の間に挟まれた状態に保持される場合には、その水蒸気の発生による定着ベルト10からの部分的な剥がれが防止される。また、その定着ベルト10に密着した記録用紙Pが水蒸気の発生により部分的に剥がれてしまった場合であっても、かかる記録用紙Pは静電的に吸着する定着ベルト10と搬送支持ベルト35とに挟まれた状態に保持されるようになるため(しかも、厳密には、定着ベルト10が第1金属板41との接触により冷却され始めることで水蒸気の圧力も低下するため)、定着ベルト10に再び密着した状態になる。
しかも、記録用紙Pは、そのトナー像Tが軟化溶融した状態にあるうちに吸着された定着ベルト10と搬送支持ベルト35の間に挟まれて定着ベルト10の外周面と密着した状態で冷却されるため、そのトナー像は密着する定着ベルト10の平滑な外周面にならって冷却固化されて表面平滑となり、光沢性に富むものとなる。
このように剥離ブリスタの発生が抑制されて定着が行われる結果、光沢むらのない高光沢の定着画像を得ることができる。
次に、定着装置1Cとして、実施例2の試験と同じ条件に設定したものを用いて定着性能に関する同様の評価試験を行った。なお、この評価試験では、第3のコロナ放電器50Cの放電ワイヤ52に対して、その電源装置53Cから5〜8kVの電圧を印加し、ベルト35への放電電流が70μAとなるように制御設定した。また、第4のコロナ放電器50Dの放電ワイヤ52に対して、その電源装置53Dから−5〜−8kVの電圧を印加し、ベルト35への放電電流が−70μAとなるように制御設定した。
この試験の結果は、実施例2の試験結果と同様に、記録用紙Pの種類の違いに関わらず、そのいずれの定着画像にも剥離ブリスタに起因した光沢むらの発生が認められず、高光沢な画像であった。また、いずれの定着においても、定着ベルト10に対するトナーオフセットの発生もなかった。
[比較例1]
比較例1は、実施例2に係る定着装置1B(図4)において2つのコロナ放電器50A,50Bの設置を省略したものを比較例用の定着装置とした。
比較例1は、実施例2に係る定着装置1B(図4)において2つのコロナ放電器50A,50Bの設置を省略したものを比較例用の定着装置とした。
このような比較例1に係る定着装置により定着を行ったところ、図8に例示するように、特に両面画像形成時の定着を行うと、記録用紙(特にコート紙(前記したOKトップコート紙のような記録用紙)の場合)Pは、加圧ニップ部N1で定着ベルト10と加圧ロール対30、31により加熱加圧されて定着ベルト10の外周面に密着した状態で搬送される途上で、水蒸気の発生により定着ベルト10の一部から部分的に剥がれて浮いた状態(PX)となり、いわゆる剥離ブリスタが発生した。これにより、その剥離した記録用紙部分PXにおける画像の光沢度がその剥離しない部分に比べて低下してしまい、定着むらが存在する定着画像になった。
[比較例2]
図9は、比較例2に係る定着装置102の要部を示す概略構成図である。図中の実線矢印は主な回転部品の回転方向を示す。
図9は、比較例2に係る定着装置102の要部を示す概略構成図である。図中の実線矢印は主な回転部品の回転方向を示す。
この定着装置102は、比較例1に係る定着装置(コロナ放電器を設置しないもの)において、加圧ニップ部N1から熱交換器40に至る区間を広げるように構成したうえで、その区間における定着ベルト10および搬送支持ベルト35を挟んで加圧する第2のロール対32、33を設置し、第2の加圧ニップ部N2を形成した以外は比較例1に係る定着装置と同じ構成からなるものである。
第2のロール対32、33は、(第1の)加圧ロール対30、31と同じ構成のものを使用している。また、この第2のロール対32、33で形成される第2の加圧ニップ部Nは、(第1の)加圧ニップ部N1から100mm程度下流側に離れたところに位置するように設定されている。この第2のロール対32、33の設置により、第1の加圧ニップ部N1を通過した後の定着ベルト10と搬送支持ベルト35は、その第2の加圧ニップ部N2で再び圧接されるようになる。
このような定着装置102により定着を行ったところ、記録用紙Pは、第1の加圧ニップ部N1で定着ベルト10と加圧ロール対30、31により加熱加圧されて定着ベルト10の外周面に密着した状態で搬送された後、第2の加圧ニップ部N2で第2加圧ロール対32、33により加圧されるため、水蒸気の発生により定着ベルト10の一部から部分的に剥がれて浮いた状態になろうとしても、その浮きは第2の加圧ニップ部N2で加圧されることにより堰き止められ、その加圧ニップ部N2を通過した以降には存在しなくなる。しかし、第2加圧ニップ部N2で堰きとめられる浮きは、その第2加圧ニップ部N2で次第に蓄積され、遂にはその蓄積された浮き部分をきっかけとして紙しわになってしまう。特に、記録用紙の送り方向後端部側に高濃度のトナー像がある場合には、その高濃度のトナー像部分が定着ベルト10に強く付着されてしまうため、第2加圧ニップ部N2で蓄積された浮き部分がそれ以上浮くことがなく、そこで用紙自身が折れてしわになりやすくなる。
1A,1B,1C…定着装置、10…定着ベルト、20,21…加熱ロール(加熱手段)、30、31…加圧ロール(加圧手段)、35…搬送支持ベルト、50…コロナ放電器(電荷付与手段)、50A,50B…第1のコロナ放電器、50C,50D…第2のコロナ放電器、T…トナー像、P…記録用紙、E…定着ベルトと搬送支持ベルトとが接触する領域。
Claims (5)
- 回転する無端状の定着ベルトと、この定着ベルトを加熱する加熱手段と、この加熱手段により加熱された前記定着ベルトの外周面に所定の距離だけ接触して同じ方向に回転する無端状の搬送支持ベルトと、この搬送支持ベルトと前記定着ベルトとが接触する間に導入される定着対象のトナー像を担持する記録用紙をその定着ベルトの外周面に圧接させるように加圧する加圧手段とを備え、
その加圧手段の加圧により定着ベルトに密着した状態で搬送される記録用紙を冷却した後に定着ベルトから剥離する定着装置において、
前記定着ベルトと前記搬送支持ベルトとが接触する領域の少なくとも所定の部分で静電的に吸着した状態になり得る電荷を付与する電荷付与手段を設けたことを特徴とする定着装置。 - 前記電荷付与手段は、前記接触する領域にある前記搬送支持ベルトおよび前記定着ベルトの一方の内周面に電荷を付与するように設置され、
かつ、その電荷付与手段が設置されない定着ベルトまたは搬送支持ベルトの内周面側で当該電荷付与手段と少なくとも対向する位置にその内周面に接触する対向電極部材を設けた請求項1に記載の定着装置。 - 前記電荷付与手段は、前記搬送支持ベルトの内周面または外周面に電荷を付与するように設置する第1電荷付与手段と、前記定着ベルトの内周面または外周面に前記電荷とは逆極性の電荷を付与するように設置する第2電荷付与手段とで構成されている請求項1に記載の定着装置。
- 前記電荷付与手段は、前記トナー像が加熱により軟化溶融した状態にあるうちに前記定着ベルトと搬送支持ベルトとが静電的に吸着した状態になり得る位置に設置される請求項1〜3のいずれかに記載の定着装置。
- 前記電荷付与手段は、接触する前の前記定着ベルトおよび搬送支持ベルトの外周面または内周面に電荷を付与する位置に設置される請求項1または3に記載の定着装置。
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Cited By (2)
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2003
- 2003-08-19 JP JP2003294953A patent/JP2005062651A/ja not_active Withdrawn
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