JP2005061874A - 特定高分子結晶の位置検出方法 - Google Patents

特定高分子結晶の位置検出方法 Download PDF

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Hiroki Yoshida
博喜 吉田
Takahisa Sato
貴久 佐藤
Akito Yamano
昭人 山野
Shoichi Yasukawa
昇一 安川
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Abstract

【課題】試料溶液中に存在する特定高分子結晶の高さ位置を自動的に検出する。
【解決手段】顕微鏡の焦点と試料溶液との間の相対高さ位置を逐次変更し、各相対高さ位置において顕微鏡をとおして得られる平面画像を撮像するとともに、各高さ位置における特定高分子結晶の平面画像からそれぞれの面積を算出し、この面積が最小となるときの前記相対高さ位置を算出する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、試料溶液中に存在する特定高分子結晶の位置を検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
DNAの二重らせん構造が発見されて以来、ゲノム計画の展開と相まって、蛋白質の構造解析が世界的に注目を集めている。蛋白質の構造解析には、NMR(核磁気共鳴装置)を用いた手法、電子顕微鏡を用いた手法、X線の回折現象を利用した手法等が開発されており、特に、X線の回折現象を利用したX線結晶構造解析は、イメージングプレート等の二次元X線検出器や二次元データからの解析ソフトウエア等の開発に伴い飛躍的な進展をみせている。
【0003】
従来、X線の回折現象を利用した蛋白質の結晶構造解析は、まず溶液中で蛋白質を結晶化させて得られた蛋白質の結晶粒を、キャピラリーと称するガラス製の細管に溶液ごと注入し、このキャピラリーをX線回折装置に装着して行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
さて、上述したようにX線回折装置を利用して蛋白質結晶のX線構造解析を行うためには、X線の照射位置にターゲットである蛋白質結晶を正確に位置決めしなければならない。このため、従来は、試料溶液注入キャピラリーをX線回折装置に装着した後、キャピラリー内の蛋白質結晶を顕微鏡を用いて目視観察し、手作業にてX線の照射位置へ位置決めしていた。
このような目視観察による蛋白質結晶の探索と、位置決めの作業は繁雑で時間がかかる。しかも、従来は一回の測定が終了する都度、これらの作業を行う必要があり、自動化により多くの試料を迅速に測定・評価するには適さなかった。
【0005】
例えば、人体を構成する蛋白質は5万〜10万種類にも及ぶとされており、それら多くの蛋白質の構造を短期間で解明することが、近年の構造生物学における緊急の課題となっている。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みさなされたもので、その目的は、試料溶液中に存在する特定高分子結晶の位置を自動的に検出することができ、特定高分子結晶に対する測定・評価の迅速処理に貢献し得る特定高分子結晶の位置検出方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、試料溶液中に存在する特定高分子結晶の位置を検出する方法であって、次のステップを含むことを特徴としている。
(a)顕微鏡の焦点と試料溶液との間の相対高さ位置を逐次変更し、各相対高さ位置において顕微鏡をとおして得られる平面画像を撮像する撮像ステップ
(b)撮像された各相対高さ位置における平面画像の中から特定高分子結晶を認識する結晶認識ステップ
(c)認識された各特定高分子結晶に関し、各相対高さ位置における平面画像からそれぞれの面積を算出する面積算出ステップ
(d)認識された各特定高分子結晶に関し、面積が最小となるときの相対高さ位置を求める高さ決定ステップ
【0008】
高分子結晶、特に生体高分子の多くは、紫外線を照射したとき蛍光を発する。本明細書では、このように紫外線を照射したとき蛍光を発する特性を有した高分子結晶を「特定高分子結晶」と称する。例えば、蛋白質結晶がこの特定高分子結晶に該当する。
【0009】
かかる特定高分子結晶の特性を利用して、上記撮像ステップでは、試料溶液に向かって紫外線を照射することが好ましい。紫外線の照射により特定高分子結晶からは蛍光が発せられる。結晶認識ステップにおいては、紫外線の照射により現れる特定高分子結晶の蛍光像から特定高分子結晶を認識することができる。
【0010】
一方、上記撮像ステップでは、試料溶液に向かって可視光線を照射することにより特定高分子結晶の可視光像を撮像してもよい。
【0011】
さらに、上記撮像ステップは、試料溶液に向かって紫外線を照射することにより、各相対高さ位置における特定高分子結晶の蛍光像を撮像するとともに、試料溶液に向かって可視光線を照射することにより、各相対高さ位置における特定高分子結晶の可視光像を撮像するようにしてもよい。
この場合、結晶認識ステップにおいては、紫外線の照射により現れる蛍光像から特定高分子を認識することができる。さらに、可視光像からその特定高分子の外形を検出することで、その外形から結晶とそれ以外のもの(例えば、針状に成長した凝集)とを区別することができる。これにより、「特定高分子」の「結晶」を高精度に認識することが可能となる。
【0012】
また、上記高さ決定ステップでは、具体的には、認識された各特定高分子結晶に関し、面積を相対高さ位置の関数として、当該面積が最小となるときの前記相対高さ位置を最小二乗法により求めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、蛋白質結晶を検出対象(特定高分子結晶)として説明する。
図1は、本発明方法の実施に適した蛋白質結晶検出装置の概要を示す模式図である。
【0014】
図1に示す蛋白質結晶検出装置は、試料台1の下方に可視光照射ユニット2および紫外線照射ユニット3を備えている。これら可視光照射ユニット2および紫外線照射ユニット3は、試料台1上に配置された試料容器10内の試料溶液Lに対し、可視光又は紫外線を照射する光源である。
可視光照射ユニット2および紫外線照射ユニット3は、横方向にスライドしていずれか一方のユニットが透孔1aを介して試料台1上の試料容器10と対向配置される。なお、試料容器10と可視光照射ユニット2および紫外線照射ユニット3の中間に反射ミラーを配置して、可視光照射ユニット2から発射される可視光線又は紫外線照射ユニット3から発射される紫外線を試料容器10に導く構成とすれば、これら各照射ユニット2,3は、試料容器10と対向配置する必要はない。
【0015】
試料台1には、可視光照射ユニット2から照射される可視光および紫外線照射ユニット3から照射される紫外線をそれぞれ透過するための透孔1aが形成してあり、この透孔の上に試料容器10が載置される。
【0016】
試料容器10は、紫外線、可視光線およびX線を透過するポリイミド等の材料で形成された結晶化プレートを用いることが好ましい。結晶化プレートを利用した試料容器10には、図2(a)に示すように、多数の凹部11が形成されており、この凹部11内で蛋白質の結晶を生成することができる。結晶化プレートを用いた蛋白質の結晶生成方法は、蒸気拡散法をはじめとして種々の方法が知られている。図2(b)は、蒸気拡散法により蛋白質結晶Sが生成された状態を模式的に示す図であり、カバープレート12の下面においた試料溶液Lの滴中に蛋白質結晶Sが生成されている。試料容器10に形成された多数の凹部11には、それぞれ生成条件を違えたり、異なる種類の蛋白質結晶を別個に生成することができる。
【0017】
図1に戻り、試料台1の上方には、顕微鏡4と2次元撮像ユニット5が配設されている。顕微鏡4は、紫外線又は可視光の照射により試料容器10内の試料溶液Lを透して得られる画像を拡大して2次元撮像ユニット5へ導く。この顕微鏡4は上下方向に焦点位置を変更して、試料溶液L中の蛋白質結晶Sを探索することができるように構成されている。
【0018】
2次元撮像ユニット5としては、例えば、CCDを用いることができる。2次元撮像ユニット5は、顕微鏡4を介して入射した拡大画像を電気信号(画像データ)に変換し、中央処理装置(CPU)6へ出力する。中央処理装置6は、2次元撮像ユニット5から入力された画像データを処理して、試料溶液L中の蛋白質結晶Sを検出するとともに、その位置を認識する。
【0019】
次に、上記の装置を用いた蛋白質結晶の位置検出方法について説明する。
図3は中央処理装置により実行される蛋白質結晶の位置検出方法を示すフローチャートである。
まず、蛋白質結晶Sが試料溶液L中に生成された試料容器10を、試料台1の透孔1a上に配置する。次いで、顕微鏡4の高さ方向の焦点位置(以下、高さ位置と称することもある)Zをあらかじめ設定した任意の位置に調整する(ステップS1)。
【0020】
続いて、光源を紫外線照射ユニット3に設定し、該紫外線照射ユニット3から発射される紫外線を試料容器10内の試料溶液Lに照射する。このとき、試料容器10内の試料溶液Lを透して得られる平面画像は、顕微鏡4により拡大されて2次元撮像ユニット5へ入射する。この平面画像は、2次元撮像ユニット5によって撮像され、中央処理装置6に保存される(ステップS2)。
【0021】
任意の高さ位置Zでの試料溶液Lの平面画像を撮像した後、再び顕微鏡4の高さ位置Zを変更し、同様に試料溶液Lの平面画像を撮像する。このようにして、あらかじめ設定した複数の高さ位置(Z:1,2,・・・,n)における試料溶液Lの平面画像を撮像して、次のステップに移行する(ステップS3)。
【0022】
次のステップでは、顕微鏡4の高さ位置Zを上述と同じあらかじめ設定した任意の位置に調整する(ステップS4)。続いて、光源を可視光照射ユニット2に切り替え、該可視光照射ユニット2から発射される可視光線を試料容器10内の試料溶液Lに照射する。このとき、試料容器10内の試料溶液Lを透して得られる平面画像は、顕微鏡4により拡大されて2次元撮像ユニット5へ入射する。この平面画像は、2次元撮像ユニット5によって撮像され、中央処理装置6に保存される(ステップS5)。
【0023】
任意の高さ位置Zでの試料溶液Lの平面画像を撮像した後、再び顕微鏡4の高さ位置Zを変更し、同様に試料溶液Lの平面画像を撮像する。このようにして、紫外線照射ユニット3を用いて撮像した高さ位置と同じ複数の高さ位置(Z:1,2,・・・,n)における試料溶液Lの平面画像を撮像する(ステップS6)。
以上の各ステップにより、紫外線照射による複数の高さ位置Zにおける試料溶液Lの平面画像と、可視光線の照射による複数の高さ位置Zにおける試料溶液Lの平面画像とが得られる。
【0024】
次いで、中央処理装置6は、各高さ位置Zにおける試料溶液Lの平面画像を画像処理して蛋白質結晶を探索する(ステップS7)。ここでは、公知の画像処理技術を用いて、各画像データを2値化処理するとともに、エッジ検出を行う。そして、連結領域を抽出(ラベリング)して、連結図形を認識する。
【0025】
既述したとおり、蛋白質は紫外線を照射したとき蛍光を発する。つまり、ステップS2で得た紫外線照射による試料溶液Lの平面画像において、蛋白質は蛍光像として現れる。一方、蛋白質以外の物質からは蛍光が発せられない。これにより、紫外線照射による試料溶液Lの平面画像から蛋白質を特定することができる。
【0026】
しかし、結晶化されていない蛋白質の凝集なども蛍光像として現れる。そこで、本実施の形態では、ステップS5で得た可視光線の照射による試料溶液Lの平面画像を参照して、結晶とそれ以外のものを高精度に区別している。
【0027】
すなわち、蛋白質が凝集した場合は、明瞭な結晶の稜線は観察されずに、不連続であったり、針状の外形をとったりする場合がほとんどであるため、その2値画像は閉じた輪郭線を有する連続図形とならない。一方、結晶の2値画像は閉じた輪郭線を有する連結図形として現れる。これにより、結晶を特定することができる。
【0028】
このように、本実施の形態では、紫外線照射による試料溶液Lの平面画像に基づき蛋白質を特定するとともに、可視光線の照射による試料溶液Lの平面画像に基づき結晶を特定し、それらの分析結果を複合して蛋白質結晶を認識している。
【0029】
上記のとおりステップS7において蛋白質結晶を認識した後、次いで、各高さ位置Zにおいて検出された蛋白質結晶について、それぞれ平面座標(X,Y)と面積(A)を求める(ステップS8)。ここでは、紫外線照射による試料溶液Lの平面画像と、可視光線の照射による試料溶液Lの平面画像のいずれを利用してもよいが、本実施の形態では、紫外線照射による平面画像を利用して、蛋白質結晶の平面座標(X,Y)と面積(A)を求める。
【0030】
任意の高さ位置Zで撮像した一つの平面画像に、複数の蛋白質結晶が存在することもある。その場合は、各蛋白質結晶につき、図4に示すごとく平面座標(X,Y)と面積(A)を求める。
【0031】
上述した蛋白質結晶の探索(ステップS7)と、蛋白質結晶の平面座標(X,y)および面積(A)の解析(ステップS8)を、各高さ位置Z(1,2,・・・,n)での平面画像について実行する(ステップS9)。
このとき、各高さ位置Z(1,2,3・・・,n)における平面画像には、新たに別の蛋白質結晶が写し出されることもあるが、通常、同一の蛋白質結晶が写し出されていることが多い。そこで、各高さ位置Z(1,2,3・・・,n)における平面画像で探索された蛋白質結晶について、その平面座標(X、Y)に基づき関連性を分析し、同一の蛋白質結晶と判断されるものは、まとめてその平面座標(X,Y)と面積(A)を登録する(図4参照)。
【0032】
次に、各高さ位置Z(1,2,・・・,n)における蛋白質結晶の面積(A)に基づき、蛋白質結晶の最外形部分が存在する高さ位置Zaを求める(ステップS10)。この高さ位置Zaに顕微鏡4の焦点を合わせることで、明瞭な蛋白質結晶の画像を得ることができ、しかも後述するX線回折測定においても、この高さ位置ZaにX線の焦点を合わせることで、高精度な測定が可能となる。
【0033】
さて、顕微鏡4の高さ方向の焦点位置(高さ位置)Zを変更して蛋白質結晶を観察すると、図5(a)に示すように、蛋白質結晶Sの最外形部分が存在する高さ位置Zaに顕微鏡4の焦点が合ったとき、図5(d)に示すように、シャープな輪郭の蛋白質結晶Sの像Saが観察される。一方、顕微鏡4の焦点が、この高さ位置Zaよりも上方または下方にずれているときは、図5(b),(c),(e),(f)に示すように、顕微鏡4からは焦点がぼけた像Sb,Sc,Se,Sfが観察される。これらの焦点がぼけた像は、シャープな輪郭の蛋白質結晶Sの像Saよりも広がりをもつため、その面積(A)は大きくなる。
【0034】
この現象を利用して、本発明では蛋白質結晶Sの最外形部分が存在する高さ位置Zaを、各高さ位置Z(1,2,・・・,n)における蛋白質結晶の面積(A)から算出する。具体的には、各蛋白質結晶に関し、面積(A)を高さ位置Zの関数として、当該面積(A)が最小となるときの高さ位置Zaを最小二乗法により求める(図6参照)。
【0035】
ところで、顕微鏡4で蛋白質結晶を観察するとき、カバープレート12や試料溶液Lと大気との間の屈折率の違いにより光路差が生じるため、実際の蛋白質結晶の高さ位置に対し、顕微鏡4で観察される蛋白質結晶の高さ位置Zaが、実際の高さ位置Zrよりも若干ずれてしまうことがある。そこで、本実施の形態では、ステップS11において、顕微鏡4で観察される蛋白質結晶の高さ位置Zaとその実際の高さ位置Zrとの間の位置ずれを、次を関係式に基づいて補正している。
【0036】
すなわち、図7に示すように、ある基準点Z=0からカバープレート12の上面までの距離をZp(定数)、実際の結晶位置までの距離をZr、顕微鏡4で観察される結晶位置までの距離をZaとすると、それらの間には次式で示す関係が成立する。ここで、Nairは空気の屈折率、Npはカバープレー12の屈折率である。なお、試料溶液Lの屈折率はカバープレーと12の屈折率にほぼ等しいので、その間の屈折率差は無視する。
Figure 2005061874
【0037】
次に、ステップS7で検出された各蛋白質結晶につき、その平面上の位置である平面座標(Xa,Ya)を決定するとともに、各蛋白質結晶の重心位置を求める(ステップS12)。
ここで、平面座標(Xa,Ya)は、各高さ位置Zにおける蛋白質結晶の平面座標(X,Y)の平均値を用いる。
各蛋白質結晶の重心位置は、例えば、結晶として認識された連結図形Sのモーメント量を求め、このモーメント量から計算することができる。すなわち、連結図形Sの各画素の重みを均等に1とした場合、モーメントM(m,n)は次式(数1)で定義される。
【0038】
【数1】
Figure 2005061874
M(0,0)は、連結図形Sの面積
M(1,0)は、x軸に対するモーメント
M(0,1)は、y軸に対するモーメント
【0039】
そして、上記のモーメント量を用いて重心座標(p,q)は、次式で計算できる。
p=M(1,0)/M(0,0)
q=M(0,1)/M(0,0)
【0040】
以上の各ステップにより試料溶液中に存在する蛋白質結晶の平面座標(Xa,Ya)、高さ位置Zaおよび重心位置が自動的に求められる。
【0041】
図8は図1の特定高分子検出装置を組み込んだ蛋白質結晶評価装置の概要を示す模式図である。
特定高分子検出装置20は、X線回折装置30と組み合わせて、蛋白質結晶を自動評価する装置を構成することができる。すなわち、特定高分子検出装置20の試料台1と、X線回折装置30の試料台31との間を、X−Yテーブル等の移動手段40で結び、試料容器10を特定高分子検出装置20からX線回折装置30へと自動搬送して、X線回折装置30による蛋白質結晶Sの評価を自動にて実行させることが可能である。
【0042】
X線回折装置30は、周知のとおり、X線源32とX線検出器33を備え、X線源32から発射したX線を蛋白質結晶Sに照射したとき、所定の回折角度に出射してくる回折X線をX線検出器33により検出する装置である。この回折X線が出射してくる回折角度は物質の結晶構造によって決まっているため、該回折角度に基づき蛋白質結晶の構造を評価することができる。
【0043】
ここで、X線回折装置30による蛋白質結晶の評価を実施するためには、X線の照射位置に蛋白質結晶を正確に位置決めする必要がある。そこで、まず、特定高分子検出装置20を用いて試料容器10内に存在する蛋白質結晶Sの高さ位置および重心位置を求め、該高さ位置と重心位置がX線回折装置30のX線照射位置に位置決めされるように、移動手段40を制御して試料容器10を搬送する。蛋白質結晶Sの高さ位置と重心位置は、既述した方法をもって自動的に求めることができる。
【0044】
このような構成の蛋白質結晶評価装置を用いれば、図2に示したごとき結晶化プレートの各凹部11内に生成した蛋白質結晶を自動的に測定・評価することができ、作業の容易化と測定・評価の迅速化が実現可能となる。
【0045】
なお、上記実施形態では、蛋白質結晶を検出対象として説明してきたが、本発明方法の対象はこれに限定されるものではなく、紫外線を照射したとき蛍光を発する特性を有した各種の特定高分子結晶を検出対象とすることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、顕微鏡の焦点を移動させることにより、試料溶液との間の相対高さ位置を変更させたが、試料溶液が挿入された試料容器10を高さ方向に移動させることで、顕微鏡の焦点との間の相対高さ位置を変更させることもできる。
【0047】
上記実施形態では、紫外線照射により得られる蛍光像から蛋白質(特定高分子)を検出するとともに、可視光線の照射により得られる可視光像から結晶を検出し、これらを複合して蛋白質結晶(特定高分子結晶)を検出した。しかし、探索精度は低下するものの、必要に応じて、紫外線照射により得られる蛍光像のみを用いて蛋白質結晶(特定高分子結晶)を探索することもでき、また可視光線の照射により得られる可視光像のみを用いて蛋白質結晶(特定高分子結晶)を探索することもできる。
【0048】
また、上記実施形態では、蒸気拡散法を用いて蛋白質結晶を生成していたが、図9に示すように、その他の方法を用いて試料容器10(結晶化プレート)の凹部11内に充填した試料溶液L内で蛋白質結晶Sを生成することもできる。
さらに、試料容器10に対して、同図に示すごとく、その下方に顕微鏡4を配置するとともに、可視光照射ユニット2からの可視光線は、試料容器10の上方から蛋白質結晶Sに向けて照射し、一方、紫外線照射ユニット3からの紫外線は試料容器10の下方から蛋白質結晶Sに向けて照射してもよい。さらに、顕微鏡4は、試料容器10の下方位置に配置し、下方から蛋白質結晶Sを観察する構成としてもよい。
【0049】
このように構成した場合であっても、顕微鏡4で観察される蛋白質結晶の高さ位置Zaとその実際の高さ位置Zrとの間の位置ずれを、次を関係式に基づいて補正することが好ましい。
【0050】
すなわち、図9に示すように、ある基準点Z=0から試料容器10の下面までの距離をZp(定数)、実際の結晶位置までの距離をZr、顕微鏡4で観察される結晶位置までの距離をZaとすると、それらの間には次式で示す関係が成立する。ここで、Nairは空気の屈折率、Npは試料容器10の屈折率である。なお、試料溶液Lの屈折率は試料容器10の屈折率にほぼ等しいので、その間の屈折率差は無視する。
Za=Zp+(Zr−Zp)×(Nair/Np)
ゆえに、
Zr=Zp+(Za−Zp)×(Np/Nair)
【0051】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、顕微鏡の焦点と試料溶液との間の相対高さ位置を逐次変更し、各相対高さ位置において顕微鏡をとおして得られる平面画像を撮像するとともに、各高さ位置における特定高分子結晶の平面画像からそれぞれの面積を算出し、さらにこの面積が最小となるときの前記相対高さ位置を算出することで、高分子結晶の位置を自動的に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施に適した蛋白質結晶検出装置の概要を示す模式図である。
【図2】試料容器の構成例を示す図である。
【図3】中央処理装置により実行される蛋白質結晶の位置検出方法を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS8で求められた蛋白質結晶の平面座標と面積に関する登録例を示す表である。
【図5】顕微鏡により観察される蛋白質結晶の輪郭を模式的示す図で、(a)は正面図、(b)〜(f)は平面図である。
【図6】最小二乗法を用いて算出される蛋白質結晶の高さ位置に関するデータを示す図である。
【図7】蛋白室結晶の位置に関する補正方法を説明するための模式図である。
【図8】図1の特定高分子検出装置を組み込んだ蛋白質結晶評価装置の概要を示す模式図である。
【図9】本発明の応用例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1:試料台
1a:透孔
2:可視光照射ユニット
3:紫外線照射ユニット
4:顕微鏡
5:2次元撮像ユニット
6:中央処理装置
10:試料容器
11:凹部
12:カバープレート
20:特定高分子検出装置
30:X線回折装置
31:試料台
32:X線源
33:X線検出器
40:移動手段

Claims (5)

  1. 試料溶液中に存在する特定高分子結晶の位置を検出する方法であって、
    顕微鏡の焦点と前記試料溶液との間の相対高さ位置を逐次変更し、各相対高さ位置において前記顕微鏡をとおして得られる平面画像を撮像する撮像ステップと、
    前記撮像された各相対高さ位置における平面画像の中から特定高分子結晶を認識する結晶認識ステップと、
    前記認識された各特定高分子結晶に関し、各相対高さ位置における平面画像からそれぞれの面積を算出する面積算出ステップと、
    前記認識された各特定高分子結晶に関し、前記面積が最小となるときの前記相対高さ位置を求める高さ決定ステップと、を含む特定高分子結晶の位置検出方法。
  2. 前記撮像ステップでは、前記試料溶液に向かって紫外線を照射することを特徴とする請求項1に記載した特定高分子結晶の位置検出方法。
  3. 前記結晶認識ステップでは、前記紫外線の照射により現れる特定高分子結晶の蛍光像から特定高分子結晶を認識することを特徴とする請求項2に記載した特定高分子結晶の位置検出方法。
  4. 前記撮像ステップでは、前記試料溶液に向かって可視光線を照射することを特徴とする請求項1に記載した特定高分子結晶の位置検出方法。
  5. 前記高さ決定ステップでは、前記認識された各特定高分子結晶に関し、面積を前記相対高さ位置の関数として、当該面積が最小となるときの前記相対高さ位置を最小二乗法により求めることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載した特定高分子結晶の位置検出方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013108940A (ja) * 2011-11-24 2013-06-06 Rigaku Corp X線分析装置

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