JP2005061487A - 動力伝達装置及びそれを備えたハイブリッド車両の駆動装置 - Google Patents

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Hideo Nakai
英雄 中井
Katsuhiro Asano
勝宏 浅野
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賢 菅井
Masashi Nakamura
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Abstract

【課題】装置の大型化を招くことなく歯打ち衝撃によるギアノイズを低減する。
【解決手段】永久磁石104A〜104Hが歯車100の歯底部100−1に配設され、コイル106A〜106Hが歯車102の歯底部102−1に配設されている。歯車100が歯車102に対して相対的に回転して歯面同士の衝突の発生が予測された場合は、コイル106A〜106Hが永久磁石104A〜104Hからの鎖交磁束の変化を抑える磁束を発生するように、コイル106A〜106Hに流れる電流が制御される。
【選択図】図3

Description

本発明は、歯車を介して動力を伝達する動力伝達装置、及びそれを備えたハイブリッド車両の駆動装置に関する。
歯車間の噛み合いにおいて、バックラッシュを大きくすると、動力の伝達効率は向上するものの、歯打ち衝撃によるギアノイズが発生しやすくなるという問題点がある。この歯打ち衝撃によるギアノイズの低減を図った装置の一例が特開平11−27994号公報(特許文献1)に開示されている。この従来の装置は、エンジン側の歯車とモータジェネレータ側の歯車との間で発生するギアノイズの低減を図るものであり、エンジンの回転に同期したある任意のタイミングにおいて、トルクT1、持続時間t1の略パルス状トルクに引き続き、これとは反対方向のトルクT2、持続時間t2の略パルス状トルクからなる制御トルクをモータジェネレータにより発生させている。これによって、ギア当接面切り換え時の歯打ち衝撃によるギアノイズの低減を図っている。
また、特開平7−322665号公報(特許文献2)に示す電動機制御装置においては、バックラッシュ等による負荷の機械的振動を抑制するために、制御装置内のフィードバックループに時定数可変のフィルタが設けられている。そして、そのフィルタの時定数を電動機の加減速時には定常時より小さい値に変化させている。これによって、電動機の加減速性能の改善を図っている。
なお、その他の背景技術として、電動機の負荷装置を慣性シミュレータを用いて制御する例が非特許文献1に開示されている。
特開平11−27994号公報 特開平7−322665号公報 堀洋一、茅陽一、「他励直流機による慣性シミュレータ」、シミュレーション(日本シミュレーション学会論文誌)、1988年3月、第7巻第1号、p.25−29
特許文献1に示す装置においては、ギアノイズを低減するためにモータジェネレータを必要とするため、ギアノイズを低減するための装置が大型化してしまうという問題点がある。
また、特許文献2に示す装置においては、定常運転時におけるフィルタの時定数は、負荷に作用する外乱レベルに関係なく大きい値に設定される。したがって、本来長い時定数を設定する必要がない外乱レベルが小さい場合でも、フィルタの時定数が大きい値に設定されることになる。そのような時定数の設定だと、例えば負荷の急加減速が必要なときには、フィルタの応答が遅れて負荷の加減速の応答が遅れてしまう。このように、この従来の装置では、負荷に作用する外乱変動によって発生する機械的振動の抑制制御を最適に行うことについて、まだ改善の余地がある。
本発明は、装置の大型化を招くことなく歯打ち衝撃によるギアノイズを低減することができる動力伝達装置を提供することを目的の1つとする。また、本発明は、負荷に作用する外乱変動によって発生するギアノイズを効果的に低減することができる動力伝達装置及びそれを備えたハイブリッド車両の駆動装置を提供することを目的の1つとする。
本発明に係る動力伝達装置及びそれを備えたハイブリッド車両の駆動装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明に係る動力伝達装置は、駆動力が入力される第1の歯車と、該第1の歯車と所定のバックラッシュをもった状態で噛み合い該駆動力を負荷へ伝達する第2の歯車と、を有する動力伝達装置であって、第1及び第2の歯車の一方に配設された永久磁石と、第1及び第2の歯車の他方における前記永久磁石からの磁束が鎖交する位置に配設されたコイルと、第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関する歯面同士の衝突の発生を予測する予測手段と、該予測手段により歯面同士の衝突の発生が予測された場合に、前記コイルが歯面間相対距離の変化による前記永久磁石からの鎖交磁束の変化を抑える磁束を発生するように、該コイルに流す電流を制御する制御手段と、を有することを要旨とする。
この本発明によれば、第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関する歯面同士の衝突の発生が予測された場合は、コイルが歯面間相対距離の変化による永久磁石からの鎖交磁束の変化を抑える磁束を発生するように、コイルに流す電流が制御されるので、歯面同士の衝突力を低減することができ、ギアノイズを低減することができる。その際に、歯車に配設された永久磁石及びコイルの発生する磁束を利用して歯面同士の衝突力を低減しているため、装置の大型化を招くことなく歯打ち衝撃によるギアノイズを低減することができる。
この本発明に係る動力伝達装置において、前記永久磁石及び前記コイルはともに複数配設され、前記永久磁石の各々は、第1及び第2の歯車の一方における歯の間の歯底部に配設されており、前記コイルの各々は、第1及び第2の歯車の他方における歯の間の歯底部に配設されているものとすることもできる。こうすれば、第1及び第2の歯車における歯の強度を確保しながら永久磁石及びコイルを互いに磁束が鎖交しやすい位置関係に配置させることができる。この態様の本発明に係る動力伝達装置において、隣り合って配設された永久磁石に関し、磁極は互いに逆方向であり、隣り合って配設されたコイルに関し、歯底部に対する巻回方向は互いに逆方向であるものとすることもできる。
この本発明に係る動力伝達装置において、前記複数配設されたコイルは、共通の導電線を巻回することにより構成されているものとすることもできる。こうすれば、複数のコイルに流す電流を共通の制御回路により制御することができる。
この本発明に係る動力伝達装置において、第1の歯車の回転速度を検出する第1の回転速度検出手段と、第2の歯車の回転速度を検出する第2の回転速度検出手段と、を有し、前記予測手段は、第1の回転速度検出手段の検出値及び第2の回転速度検出手段の検出値に基づいて歯面同士の衝突の発生を予測するものとすることもできる。こうすれば、第1及び第2の歯車の回転速度に基づいて、歯面同士の衝突の発生を予測することができる。
また、本発明に係る動力伝達装置は、駆動力が入力される第1の歯車と、該第1の歯車と所定のバックラッシュをもった状態で噛み合い該駆動力を負荷へ伝達する第2の歯車と、を有する動力伝達装置であって、第1及び第2の歯車の一方に配設された永久磁石と、第1及び第2の歯車の他方における前記永久磁石からの磁束が鎖交する位置に配設されたコイルと、を有し、第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関して歯面間相対距離が変化したときに、前記コイルは、歯面間相対距離の変化による前記永久磁石からの鎖交磁束の変化を抑えるための磁束を発生することを要旨とする。
この本発明によれば、第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関して歯面間相対距離が変化したときに、コイルは、歯面間相対距離の変化による永久磁石からの鎖交磁束の変化を抑えるための磁束を発生する。このように、歯車に配設された永久磁石及びコイルの発生する磁束を利用することにより、歯面同士の衝突力を低減することができるので、装置の大型化を招くことなく歯打ち衝撃によるギアノイズを低減することができる。
また、本発明に係る動力伝達装置は、駆動力が入力される第1の歯車と、該第1の歯車と所定のバックラッシュをもった状態で噛み合い該駆動力を負荷へ伝達する第2の歯車と、を有する動力伝達装置であって、第1及び第2の歯車の一方に配設された第1のコイルと、第1及び第2の歯車の他方における前記第1のコイルからの磁束が鎖交する位置に配設された第2のコイルと、第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関する歯面同士の衝突の発生を予測する予測手段と、該予測手段により歯面同士の衝突の発生が予測された場合に、第1のコイルが第2のコイルからの磁気力に反発する磁気力を発生するように、第1及び第2のコイルに流す電流を制御する制御手段と、を有することを要旨とする。
この本発明によれば、第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関する歯面同士の衝突の発生が予測された場合は、第1のコイルが第2のコイルからの磁気力に反発する磁気力を発生するように、第1及び第2のコイルに流す電流が制御される。このように、歯車に配設されたコイルの発生する磁気力を利用することにより、歯面同士の衝突力を低減することができるので、装置の大型化を招くことなく歯打ち衝撃によるギアノイズを低減することができる。
また、本発明に係る動力伝達装置は、駆動力が入力される第1の歯車と、該第1の歯車と所定のバックラッシュをもった状態で噛み合い該駆動力を駆動軸を介して負荷へ伝達する第2の歯車と、を有する動力伝達装置であって、発電運転及び前記駆動軸の駆動運転が可能な第1のモータジェネレータと、負荷に作用する外乱レベルを推定する外乱推定手段と、該外乱推定手段による外乱レベルに基づいて、第1のモータジェネレータの模擬慣性を設定する模擬慣性設定手段と、第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関する歯面同士の前記外乱による衝突力を低減するために、前記第1のモータジェネレータの模擬慣性を用いた慣性シミュレータモデルに基づいて外乱抑制用制御指令値を算出し、該外乱抑制用制御指令値を出力することで第1のモータジェネレータの運転制御を行う慣性シミュレータ制御手段と、を有することを要旨とする。
この本発明においては、第1のモータジェネレータの模擬慣性を用いた慣性シミュレータモデルに基づいて外乱抑制用制御指令値を算出し、この外乱抑制用制御指令値を出力することで第1のモータジェネレータの運転制御を行っている。この第1のモータジェネレータの模擬慣性によって負荷に作用する外乱変動を抑制することができ、歯面同士の衝突力を低減することができる。そして、負荷に作用する外乱レベルに基づいて第1のモータジェネレータの模擬慣性を設定することにより、負荷に作用する外乱変動を抑制するための第1のモータジェネレータの模擬慣性を適切な値に設定することができる。したがって、この本発明によれば、負荷に作用する外乱変動によって発生するギアノイズを効果的に低減することができる。
この本発明に係る動力伝達装置において、前記模擬慣性設定手段は、前記外乱推定手段による外乱レベルが増大するほど、前記第1のモータジェネレータの模擬慣性を大きい値に設定するものとすることもできる。こうすれば、負荷に作用する外乱レベルが増大するほど第1のモータジェネレータの等価慣性を大きい値にすることができるので、負荷に作用する外乱変動を効果的に抑制することができる。
この本発明に係る動力伝達装置において、前記負荷の加減速度を予測する加減速状態予測手段を有し、前記模擬慣性設定手段は、前記加減速状態予測手段により予測された負荷の加減速度の絶対値が増大するほど、前記第1のモータジェネレータの模擬慣性を小さい値に設定するものとすることもできる。こうすれば、負荷の加減速時には第1のモータジェネレータの等価慣性を小さい値にすることができるので、負荷を加減速させるときの応答性を向上させることができる。
本発明に係る動力伝達装置を備えたハイブリッド車両の駆動装置において、発電運転及び前記第1の歯車が連結された推進軸の駆動運転が可能な第2のモータジェネレータと、前記推進軸の駆動及び第2のモータジェネレータの発電駆動が可能な内燃機関と、内燃機関が発生する駆動力を前記推進軸及び第2のモータジェネレータに分配可能な動力分配機構と、内燃機関が発生する駆動力変動により前記推進軸に発生する駆動力変動を抑制するための変動抑制用制御指令値を算出し、該変動抑制用制御指令値を出力することで第2のモータジェネレータの運転制御を行う変動抑制制御手段と、を有するものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の駆動力変動により推進軸に発生する駆動力変動を抑制することができるので、歯面同士の衝突力をさらに低減することができ、ギアノイズをさらに低減することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
「第1実施形態」
図1,2は本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の構成の概略を示す図であり、図1は各歯車の構成を示し、図2は各コイルとコントローラとの接続関係を示す。本実施形態に係る動力伝達装置は、歯車100,102、複数の永久磁石104A〜104H、複数のコイル106A〜106H、スリップリング108、回転速度センサ110,112及びコントローラ120を備えている。
歯車100には、図示しないエンジンやモータ等の原動機が発生する駆動トルクが入力される。歯車100の中央部100−2は非磁性材料で構成され、それ以外の部分は磁性材料で構成されている。
歯車102は、歯車100と所定のバックラッシュをもった状態で噛み合うことが可能であり、歯車100からの駆動トルクを図示しない負荷へ伝達する。歯車102は磁性材料で構成されている。
永久磁石104A〜104Hの各々は、歯車100の各歯の間における歯底部100−1の各々にそれぞれ配設されている。そして、隣り合って配設された永久磁石(例えば永久磁石104Aと永久磁石104B)に関し、N極及びS極の磁極は互いに逆方向である。
コイル106A〜106Hの各々は、歯車102の各歯の間における歯底部102−1の各々にそれぞれ配設されている。コイル106A〜106Hの各々は、歯底部102−1の周方向に磁束を発生可能なように巻回されており、永久磁石104A〜104Hの発生する磁束がコイル106A〜106H内を鎖交可能となっている。そして、隣り合って配設されたコイル(例えばコイル106Aとコイル106B)に関し、歯底部102−1に対する巻回方向は互いに逆方向である。また、コイル106A〜106Hは、図2に示すように、共通の導電線を巻回することにより構成されており、スリップリング108を介してコントローラ120に接続されている。
なお、図1では、すべての歯底部100−1,102−1に永久磁石104A〜104H及びコイル106A〜106Hがそれぞれ配設されている場合を示しているが、必ずしもすべての歯底部100−1,102−1に永久磁石104A〜104H及びコイル106A〜106Hがそれぞれ配設されている必要はない。
回転速度センサ110は歯車100の回転速度を検出し、回転速度センサ112は歯車102の回転速度を検出する。回転速度センサ110,112の検出値はコントローラ120に入力される。
ここで、歯車100,102は所定のバックラッシュをもった状態で噛み合う。バックラッシュを大きくするとトルク伝達効率を向上できるが、駆動トルク変動や負荷への外乱変動が原因で、歯が噛み合う面である歯面同士の衝突によるギヤノイズが発生しやすくなってしまう。
そこで、本実施形態におけるコントローラ120は、この歯面同士の衝突力を低減するために、コイル106A〜106Hに流す電流の制御を行う。そのために、コントローラ120は、歯面衝突予測手段122及びコイル電流制御手段124を有している。
歯面衝突予測手段122には、回転速度センサ110による歯車100の回転速度の検出値ω1、及び回転速度センサ112による歯車102の回転速度の検出値ω2が入力される。そして、歯面衝突予測手段122は、回転速度センサ110の検出値ω1及び回転速度センサ112の検出値ω2に基づいて、歯車100,102の噛み合いに関する歯面同士の衝突が発生する状態を予測する。ここでの予測の例としては、回転速度センサ110の検出値ω1と回転速度センサ112の検出値ω2との差δωの絶対値が所定値X1より大きい場合に、歯面同士の衝突が発生すると判定する例が挙げられる。あるいは、回転速度センサ110の検出値ω1と回転速度センサ112の検出値ω2との差δωの絶対値が所定値X2(<X1)となってからの差δωの積分値(累積値)が所定値X3より大きい場合に、歯面同士の衝突が発生すると判定する例も挙げられる。さらに、これらの例を組み合わせて判定することも可能である。
コイル電流制御手段124には、回転速度センサ110による歯車100の回転速度の検出値ω1、及び回転速度センサ112による歯車102の回転速度の検出値ω2が入力される。そして、コイル電流制御手段124は、歯面衝突予測手段122により歯面同士の衝突が発生すると予測された場合に、コイル106A〜106Hに流す電流の制御を行う。この電流制御によって、歯打ち衝撃によるギアノイズの低減が行われる。以下、コイル106A〜106Hに流す電流の制御の一例について説明する。
ここで一例として、図3に示すように、歯車100が歯車102に対して相対的に時計回りに回転して歯面間相対距離が変化する場合を考える。この場合は、例えば図3の反時計回り方向にコイル106D内を貫く永久磁石104Dからの磁束Φ104Dの数、及び図3の時計回り方向にコイル106E内を貫く永久磁石104Eからの磁束Φ104Eの数が増加しようとする。そして、回転速度センサ110の検出値ω1(図3の時計回りを正とする)と回転速度センサ112の検出値ω2(図3の時計回りを正とする)との差δωが大きいほど、単位時間あたりの鎖交磁束増加量は大きくなろうとする。また、図3の例では、回転速度センサ110の検出値ω1、回転速度センサ112の検出値ω2、及び検出値ω1,ω2のそれぞれの積分値である回転角度に基づいて歯面衝突予測手段122により歯車100の歯面100Rと歯車102の歯面102Lとの衝突が発生すると予測される。
本実施形態におけるコイル電流制御手段124は、コイル106A〜106Hが歯面間相対距離の変化による永久磁石104A〜104Hからの鎖交磁束数の変化を抑える磁束を発生するように、コイル106A〜106Hに流す電流を制御する。例えばコイル106Dが図3の時計回り方向(磁束Φ104Dと反対方向)に磁束Φ106Dを発生するようにコイル106Dに流れる電流の方向が制御され、コイル106Eが図3の反時計回り方向(磁束Φ104Eと反対方向)に磁束Φ106Eを発生するようにコイル106Eに流れる電流の方向が制御される。このコイル106D,106Eが発生する磁束Φ106D,Φ106Eによって、コイル106D内を貫く永久磁石104Dからの磁束Φ104D、及びコイル106E内を貫く永久磁石104Eからの磁束Φ104Eの増加がそれぞれ抑制される。その結果として、歯面100Rと歯面102Lとの間における磁束数の増加及び歯面100Lと歯面102Rとの間における磁束数の減少が抑制されるため、歯車102に対する歯車100の相対回転速度が抑制され、歯面100Rと歯面102Lとの衝突エネルギーが低減される。
ここで、コイル106A〜106Hに流す電流の方向及び大きさを制御するための電流指令値については、回転速度センサ110の検出値ω1、回転速度センサ112の検出値ω2、及び検出値ω1,ω2のそれぞれの積分値である回転角度をフィードバックして算出することができる。例えば、回転速度差の目標値δωtと検出値δωとの偏差に所定の比例ゲインを乗じた値を電流指令値として算出する。ただし、ここでは比例項だけでなく、積分項や微分項も考慮して電流指令値を算出してもよい。なお、回転速度差の目標値δωt及びフィードバックゲインについては、例えば実験的に設定することができる。
また、歯面100Rと歯面102Lとが当接している状態を考えると、永久磁石104A〜104Hは、N極を出て歯車102を経てS極に戻る磁束を発生している。図4に示すように、例えば永久磁石104DはN極を出て歯面100R〜歯面102L〜コイル106D〜歯面102L〜歯面100Rを経てS極に戻る磁束Φ104D(図4の反時計回り方向)を発生しており、永久磁石104EはN極を出て歯面100R〜歯面102L〜コイル106E〜歯面102L〜歯面100Rを経てS極に戻る磁束Φ104E(図4の時計回り方向)を発生している。したがって、所定レベル以下の駆動トルク変動や負荷への外乱変動が発生しても、コイル106A〜106Hに流す電流の制御を行うことなく、永久磁石104A〜104Hの発生する磁気力によって歯面100Rと歯面102Lとの当接状態を維持することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、駆動トルク変動や負荷変動による歯面同士の衝突の発生が予測された場合に、コイル106A〜106Hが歯面間相対距離の変化による永久磁石104A〜104Hからの鎖交磁束数の変化を抑える磁束を発生するように、コイル106A〜106Hに流す電流が制御される。これによって、歯面同士の衝突力を低減することができる。このように、歯車100に配設された永久磁石104A〜104Hの発生磁束及び歯車102に配設されたコイル106A〜106Hの発生磁束を利用して歯面同士の衝突力を低減することができるので、装置の大型化を招くことなく歯打ち衝撃の際のギアノイズを低減することができる。
さらに、歯面同士が当接しているときは、所定レベル以下の駆動トルク変動や負荷変動が発生しても永久磁石104A〜104Hの発生する磁気力によって歯面同士の当接状態を維持することができる。したがって、所定レベル以下の駆動トルク変動や負荷変動に対し、コイル106A〜106Hに流す電流の制御を行うことなく、ギアノイズの発生を抑制できる。
また、永久磁石104A〜104Hを歯車100の歯底部100−1に配設し、コイル106A〜106Hを歯車102の歯底部102−1に配設することにより、歯車100,102の歯の強度を確保しながら永久磁石104A〜104H及びコイル106A〜106Hを互いに磁束が鎖交しやすい位置関係に配置させることができる。なお、コイル106A〜106Hの配設位置については、歯底部102−1以外に歯元部に配設することもできる。
さらに、コイル106A〜106Hを共通の導電線を巻回することにより構成することにより、複数のコイル106A〜106Hに流す電流を共通の制御回路により制御することができる。
本実施形態においては、図5に示すように、コイル106A〜106Hをコントローラ120に接続せずに抵抗Rを介して短絡してもよい。このコイル106A〜106Hを抵抗Rを介して短絡した構成における他の構成については、図1と同様であるため説明を省略する。この構成において、歯面間相対距離が変化した場合を考えると、コイル106A〜106Hは、歯面間相対距離の変化による永久磁石104A〜104Hからの鎖交磁束の変化を抑えるための磁束を発生することができる。したがって、この構成においては、コイル106A〜106Hに流す電流の制御を行うことなく、歯面同士の衝突力を低減することができる。
また、本実施形態においては、永久磁石104A〜104Hとコイル106A〜106Hの配置を入れ換えてもよく、歯車100にコイル106A〜106Hを配設し、歯車102に永久磁石104A〜104Hを配設してもよい。さらに、図6に示すように永久磁石104A〜104Hの代わりにコイル116A〜116Hを配設することも可能である。その場合、コイル116A〜116Hは、歯底部100−1の周方向に磁束を発生可能なように巻回されており、隣り合って配設されたコイル(例えばコイル116Aとコイル116B)に関し、歯底部100−1に対する巻回方向は互いに逆方向である。そして、コイル116A〜116Hも、コイル106A〜106Hと同様に、共通の導電線を巻回することにより構成されており、スリップリングを介してコントローラ120に接続される。この構成においては、歯面衝突予測手段122により歯面同士の衝突の発生が予測された場合に、コイル106A〜106Hがコイル116A〜116Hからの磁気力に反発する磁気力を発生するように、コイル106A〜106Hに流す電流及びコイル116A〜116Hに流す電流がそれぞれ制御される。このように、歯車100,102にそれぞれ配設されたコイル116A〜116H,106A〜106Hの発生する磁気力を利用することにより、歯面同士の衝突力を低減することができる。
以上の説明においては、内歯車の場合について説明したが、図7に示すように、本発明は他の種類の歯車においても適用可能である。図7における歯車102の中央部102−2は非磁性材料で構成され、それ以外の部分は磁性材料で構成される。なお、図7においては、歯車100,102同士の噛み合い部分以外における歯、永久磁石及びコイルについて図示を省略している。
「第2実施形態」
図8は、本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置を含むハイブリッド車両の構成の概略を示す図である。本実施形態の動力伝達装置を含むハイブリッド車両は、モータジェネレータMG1,MG2,MG3、エンジン12、動力分配機構16、インバータ20、バッテリ22、プロペラシャフト24、ドライブシャフト26−1,26−2、ディファレンシャルギヤ28、コントローラ30及び車輪32−1,32−2を備えている。
モータジェネレータMG2については、その回転軸がドライブシャフト26−1を介して負荷である車輪32−1と連結されている。そして、モータジェネレータMG2を駆動(力行)運転させることにより車輪32−1を駆動させることができる。さらに、車輪32−1の回転エネルギーを利用してモータジェネレータMG2を発電運転(回生制動)させることもできる。同様に、モータジェネレータMG3については、その回転軸がドライブシャフト26−2を介して負荷である車輪32−2と連結されている。そして、モータジェネレータMG3を駆動(力行)運転させることにより車輪32−2を駆動させることができるとともに、車輪32−2の回転エネルギーを利用してモータジェネレータMG3を発電運転(回生制動)させることもできる。
なお、図8では、モータジェネレータMG2,MG3の回転軸がドライブシャフト26−1,26−2とそれぞれ直接連結されている場合を示しているが、モータジェネレータMG2,MG3の回転軸をギヤを介してドライブシャフト26−1,26−2とそれぞれ連結させるようにしてもよい。
内燃機関としてのエンジン12については、その出力軸12−1が動力分配機構16、プロペラシャフト24、ディファレンシャルギヤ28及びドライブシャフト26−1,26−2を介して車輪32−1,32−2と連結されている。そして、エンジン12を駆動させることによっても、プロペラシャフト24を駆動させて車輪32−1,32−2を駆動させることができる。
モータジェネレータMG1については、その回転軸MG1−1が動力分配機構16を介してエンジン12の出力軸12−1と連結されている。そして、エンジン12を駆動させることによりモータジェネレータMG1を発電運転させることができる。さらに、モータジェネレータMG1の駆動によってエンジン12を始動させることもできる。また、モータジェネレータMG1の回転軸MG1−1は動力分配機構16を介してプロペラシャフト24とも連結されているため、モータジェネレータMG1によるプロペラシャフト24の駆動も可能である。
動力分配機構16は、エンジン12が発生する駆動力をプロペラシャフト24の駆動分とモータジェネレータMG1の発電分とに分配する。そして、動力分配機構16は、例えばリングギヤ16−1、キャリア16−2及びサンギヤ16−3を有する遊星歯車機構によって構成することができる。ここで、プロペラシャフト24、モータジェネレータMG1及びエンジン12と、遊星歯車機構との間の接続関係の一例を挙げると、図8に示すように、プロペラシャフト24はリングギヤ16−1と連結され、エンジン12の出力軸12−1はキャリア16−2と連結され、モータジェネレータMG1の回転軸MG1−1はサンギヤ16−3と連結される。ただし、プロペラシャフト24、モータジェネレータMG1及びエンジン12と、遊星歯車機構との間の接続関係については、この例に限るものではなく、任意に設定することができる。
ディファレンシャルギヤ28は、所定のバックラッシュをもった状態で噛み合う歯車(図示せず)を有している。そして、ディファレンシャルギヤ28は、プロペラシャフト24に伝達された駆動力をこの歯車を介してドライブシャフト26−1,26−2へそれぞれ伝達する。
インバータ20は、バッテリ22からの直流電圧をスイッチング動作により交流に変換してモータジェネレータMG1,MG2,MG3の各コイル(図示せず)に交流電流を供給することが可能である。さらに、インバータ20は、モータジェネレータMG1,MG2,MG3の各コイルの交流電流を直流に変換してバッテリ22に回生する方向の変換も可能である。このように、モータジェネレータMG2,MG3の回生制動及びモータジェネレータMG1の発電によって生成された電気エネルギーは、インバータ20を介してバッテリ22に充電され、モータジェネレータMG2,MG3の駆動の際に用いられる。
本実施形態におけるハイブリッド車両の駆動状態を検出するためのセンサとして、ドライブシャフト26−1,26−2の回転速度を検出する回転速度センサ36−1,36−2、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ38、ブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量センサ40、エンジン12内のクランク軸の角度を検出するクランク角センサ42、及びエンジン12の回転速度を検出する回転速度センサ44が設けられている。これらのセンサ36−1,36−2,38〜44の検出値はコントローラ30に入力される。
コントローラ30は、アクセル開度センサ38の検出値及びブレーキ操作量センサ40の検出値等の車両状態を示す信号に基づいてモータジェネレータMG1,MG2,MG3の発生トルクを制御するための電流指令値Iref1,Iref2,Iref3をそれぞれ算出する。そして、コントローラ30は、この電流指令値Iref1,Iref2,Iref3に基づいてインバータ20の駆動を制御することにより、モータジェネレータMG1,MG2,MG3の運転状態をそれぞれ制御する。さらに、コントローラ30は、これらの車両状態を示す信号に応じてエンジン12の始動/停止を制御し、エンジン12が駆動されているときの運転状態も制御する。
本実施形態のハイブリッド車両においては、ディファレンシャルギヤ28の歯車が所定のバックラッシュをもった状態で噛み合っている。バックラッシュを大きくするとトルク伝達効率を向上できるが、エンジン12のトルク変動や車輪32−1,32−2への路面外乱変動が原因で、ディファレンシャルギヤ28での歯面同士の衝突によるギヤノイズが発生しやすくなってしまう。
そこで、本実施形態においては、コントローラ30は、エンジン12のトルク変動及び車輪32−1,32−2への路面外乱変動によるディファレンシャルギヤ28での歯面同士の衝突力を低減させるために、モータジェネレータMG1,MG2,MG3の運転制御を行う。以下、本実施形態における制御を行うためのコントローラ30内の構成について説明する。
図9は、コントローラ30内における各機能を説明するブロック図である。コントローラ30は、エンジントルク変動演算手段50、エンジントルク変動抑制用指令演算手段52、路面外乱抑制用指令演算手段54、インバータ駆動信号生成手段56、及び模擬慣性設定手段58を有している。
エンジントルク変動演算手段50には、アクセル開度センサ38の検出値、クランク角センサ42の検出値、及び回転速度センサ44の検出値が入力される。そして、エンジントルク変動演算手段50は、これらのセンサ38,42,44の検出値に基づいてエンジン12が発生するトルク変動を算出する。ここで、エンジン12が発生するトルク変動は、基本的には周期的な変動であるため、アクセル開度、クランク角度、及びエンジン回転速度等から推定することができる。
エンジントルク変動抑制用指令演算手段52には、エンジントルク変動演算手段50により求められたエンジン12のトルク変動値が入力される。そして、エンジントルク変動抑制用指令演算手段52は、このトルク変動値に基づいてモータジェネレータMG1の発生トルクの制御を行うための変動抑制用電流指令値Iff1を算出し、この変動抑制用電流指令値Iff1をインバータ駆動信号生成手段56へ出力する。ここでの変動抑制用電流指令値Iff1としては、エンジン12のトルク変動によって発生するプロペラシャフト24のトルク変動を打ち消すための指令値が算出される。具体的には、エンジン12のトルク変動によって発生するプロペラシャフト24のトルク変動を推定し、このプロペラシャフト24のトルク変動を打ち消すために必要なモータジェネレータMG1の発生トルクを算出することにより変動抑制用電流指令値Iff1を算出することができる。
なお、上記の例では、フィードフォワード制御を用いて変動抑制用電流指令値を算出する例を説明したが、例えばプロペラシャフト24の回転速度変動をセンサにより検出し、このセンサの検出値から求められる回転速度変動をフィードバックし、この回転速度変動を抑制するための変動抑制用電流指令値を算出してもよい。さらに、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせて変動抑制用電流指令値を算出してもよい。
模擬慣性設定手段58には、回転速度センサ36−1,36−2の検出値、アクセル開度センサ38の検出値、及びブレーキ操作量センサ40の検出値が入力される。そして、模擬慣性設定手段58は、これらのセンサ36−1,36−2,38,40の検出値に基づいてモータジェネレータMG2,MG3の模擬慣性モーメントをそれぞれ設定して路面外乱抑制用指令演算手段54へ出力する。
路面外乱抑制用指令演算手段54には、回転速度センサ36−1,36−2の検出値、及び模擬慣性設定手段58により設定されたモータジェネレータMG2,MG3の模擬慣性モーメントが入力される。そして、路面外乱抑制用指令演算手段54は、ドライブシャフト26−1,26−2の回転速度をフィードバックしてモータジェネレータMG2,MG3の発生トルクの制御を行うための外乱抑制用電流指令値Ifb2,Ifb3をそれぞれ算出し、この外乱抑制用電流指令値Ifb2,Ifb3をインバータ駆動信号生成手段56へ出力する。
インバータ駆動信号生成手段56には、前述した車両状態を示す信号に基づく電流指令値Iref1,Iref2,Iref3、変動抑制用電流指令値Iff1、及び外乱抑制用電流指令値Ifb2,Ifb3が入力される。そして、インバータ駆動信号生成手段56は、電流指令値Iref1に変動抑制用電流指令値Iff1が付加された電流指令値(Iref1−Iff1)、電流指令値Iref2に外乱抑制用電流指令値Ifb2が付加された電流指令値(Iref2−Ifb2)、及び電流指令値Iref3に外乱抑制用電流指令値Ifb3が付加された電流指令値(Iref3−Ifb3)に応じたトルクで、モータジェネレータMG1、モータジェネレータMG2、及びモータジェネレータMG3がそれぞれ運転されるように、インバータ20の駆動信号をそれぞれ生成して出力する。これによって、各電流指令値に応じたモータジェネレータMG1,MG2,MG3の運転制御がそれぞれ行われる。
本実施形態における路面外乱抑制用指令演算手段54は、ディファレンシャルギヤ28での歯面同士の路面外乱による衝突力を低減するために、モータジェネレータMG2,MG3の模擬慣性モーメントを用いた慣性シミュレータモデルに基づいて外乱抑制用電流指令値Ifb2,Ifb3をそれぞれ算出する。以下、慣性シミュレータモデルを用いた外乱抑制用電流指令値Ifb2,Ifb3の算出例について説明する。
ここで、モータジェネレータMG2に関する制御系を図10に示すブロック図で考えることができる。図10において、ブロック60,62,64における伝達特性は、ラプラス変換領域での伝達特性を示す。そして、以下の説明では、モータジェネレータMG2の運転制御について説明するが、モータジェネレータMG3の運転制御についてもモータジェネレータMG2と同様の制御で実現できる。
ブロック60は、モータジェネレータMG2の運転制御を行うための電流指令値とモータジェネレータMG2の発生トルクとの間の伝達特性を示すブロックであり、例えばモータジェネレータMG2のトルク定数Ktで表すことができる。
ブロック62は、ドライブシャフト26−1に作用するトルクとドライブシャフト26−1の回転速度ωとの間の伝達特性を示すブロックであり、例えばモータジェネレータMG2の回転軸の実慣性モーメントをJ、ラプラス演算子をsとして、1/(J×s)で表すことができる。ここで、ドライブシャフト26−1には、モータジェネレータMG2の発生トルクの他に路面外乱による外乱トルクTLが作用する。
ブロック64は、回転速度センサ36−1により検出されたドライブシャフト26−1の回転速度ωをフィードバックして外乱抑制用電流指令値Ifb2を演算するためのブロックである。ブロック64においては、モータジェネレータMG2の回転軸の模擬慣性モーメントJNを用いた慣性シミュレータモデルに基づいてフィードバックゲインが設定される。この模擬慣性モーメントJNと実慣性モーメントJとの和がモータジェネレータMG2の回転軸の等価慣性モーメントとなる。ここで、ブロック64の入出力間における慣性シミュレータモデルによる伝達関数G(s)は、以下の(1)式で表すことができる。
Figure 2005061487
(1)式における制御系応答時定数τinについては、例えば実験的に設定することができる。あるいはτin=0と仮定して伝達関数G(s)を簡略化することも可能である。なお、外乱トルクTLと回転速度ωとの間の伝達関数ω/TLは、以下の(2)式で表される。
Figure 2005061487
そして、本実施形態における模擬慣性設定手段58は、車輪32−1に作用する路面外乱レベル及び車輪32−1の回転加減速度の予測値に基づいて、モータジェネレータMG2の回転軸の模擬慣性モーメントJNを設定する。ここで、車輪32−1に作用する路面外乱レベルについては、例えば回転速度センサ36−1の検出値の差分値により推定することができる。あるいは車両のばね下振動成分のレベル(例えば加速度センサにより検出)によっても路面外乱レベルを推定することができる。また、アクセル開度の増大に応じて車輪32−1の回転加速度が増大し、ブレーキ操作量の増大に応じて車輪32−1の回転減速度が増大すると予測されるため、車輪32−1の回転加減速度の予測値については、例えばアクセル開度センサ38の検出値及びブレーキ操作量センサ40の検出値から予測することができる。
より具体的には、模擬慣性設定手段58は、車輪32−1に作用する路面外乱レベルが増大するほど、モータジェネレータMG2の回転軸の模擬慣性モーメントJNを大きい値に設定する。ここで、車輪32−1の回転加減速度の予測値を一定として、車輪32−1に作用する路面外乱レベルの変化に対する模擬慣性モーメントJNの設定例を図11に示す。
さらに、模擬慣性設定手段58は、予測された車輪32−1の回転加減速度の絶対値が増大するほど、モータジェネレータMG2の回転軸の模擬慣性モーメントJNを小さい値に設定する。ここで、車輪32−1に作用する路面外乱レベルを一定として、予測された車輪32−1の回転加減速度の絶対値の変化に対する模擬慣性モーメントJNの設定例を図12に示す。
車両状態を示す信号に基づく電流指令値Iref2にブロック64からの出力である外乱抑制用電流指令値Ifb2が付加された電流指令値(Iref2−Ifb2)によって、モータジェネレータMG2の運転制御が行われる。ここで、外乱抑制用電流指令値Ifb2によって発生するトルク成分が外乱トルクTL成分を打ち消すように作用することにより、外乱トルクTLによるドライブシャフト26のトルク変動が抑制され、ディファレンシャルギヤ28での歯面同士の衝突力が低減される。
以上説明したように、本実施形態においては、モータジェネレータMG2,MG3の回転軸の模擬慣性モーメントを用いた慣性シミュレータモデルに基づいて外乱抑制用電流指令値Ifb2,Ifb3をそれぞれ算出し、この外乱抑制用電流指令値Ifb2,Ifb3を用いてモータジェネレータMG2,MG3の運転制御をそれぞれ行っている。モータジェネレータMG2,MG3の回転軸の模擬慣性モーメントによって車輪32−1,32−2に作用する路面外乱変動を抑制することができ、未知の路面外乱に対しても対応することができる。そして、路面外乱レベルが増大するほど、モータジェネレータMG2,MG3の回転軸の模擬慣性モーメントを大きい値に設定することにより、路面外乱変動を抑制するために設定されるモータジェネレータMG2,MG3の回転軸の模擬慣性モーメントを適切な値に設定することができるので、車輪32−1,32−2に作用する路面外乱変動を効果的に抑制することができる。したがって、路面外乱変動によって発生するディファレンシャルギヤ28でのギアノイズを効果的に低減することができる。
さらに、本実施形態においては、予測された車輪32−1,32−2の回転加減速度の絶対値が増大するほど、モータジェネレータMG2,MG3の回転軸の模擬慣性モーメントを小さい値に設定している。これによって、車両の加減速時には、モータジェネレータMG2,MG3の等価慣性モーメントを小さい値にすることができるので、車両の加減速時の応答性を向上させることができる。
また、本実施形態においては、エンジン12のトルク変動によりプロペラシャフト24に発生するトルク変動を抑制するための変動抑制用電流指令値Iff1を算出し、この変動抑制用電流指令値Iff1を用いてモータジェネレータMG1の運転制御を行っている。これによって、エンジン12が発生するトルク変動とモータジェネレータMG1が発生するトルク変動とがプロペラシャフト24において互いに打ち消し合うように作用するので、プロペラシャフト24のトルク変動を抑制することができる。したがって、ディファレンシャルギヤ28でのギアノイズをさらに低減することができる。
なお、本実施形態のディファレンシャルギヤ28に第1実施形態の構成を適用することもできる。例えば、ディファレンシャルギヤ28において、互いに噛み合っている歯車の一方の歯底部に第1実施形態の永久磁石104A〜104Hを配設し、他方の歯底部に第1実施形態のコイル106A〜106Hを配設し、コイル106A〜106Hに流す電流の制御を行ってもよい。本実施形態での慣性シミュレータモデルを用いたモータジェネレータMG2,MG3の運転制御は、車両の定常走行時に特に有効である。ただし、加減速時には、模擬慣性モーメントが定常走行時より小さい値に設定されるため、定常走行時と比較すると効果が低減する。そこで、本実施形態のディファレンシャルギヤ28に第1実施形態の構成を適用することにより、車両の加減速時におけるディファレンシャルギヤ28でのギヤノイズの低減効果を向上させることができる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の構成の概略を示す図である。 各コイルとコントローラとの接続関係を説明する図である。 本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の動作を説明する図である。 本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の動作を説明する図である。 本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の他の構成の概略を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の他の構成の概略を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の他の構成の概略を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置を含むハイブリッド車両の構成の概略を示す図である。 本発明の第2実施形態のコントローラ内における各機能を説明するブロック図である。 本発明の第2実施形態における制御系を説明するブロック図である。 模擬慣性モーメントの設定の一例を説明する図である。 模擬慣性モーメントの設定の一例を説明する図である。
符号の説明
12 エンジン、16 動力分配機構、20 インバータ、22 バッテリ、24 プロペラシャフト、26−1,26−2 ドライブシャフト、28 ディファレンシャルギヤ、30,120 コントローラ、32−1,32−2 車輪、50 エンジントルク変動演算手段、52 エンジントルク変動抑制用指令演算手段、54 路面外乱抑制用指令演算手段、58 模擬慣性設定手段、100,102 歯車、104A〜104H 永久磁石、106A〜106H コイル、122 歯面衝突予測手段、124 コイル電流制御手段、MG1,MG2,MG3 モータジェネレータ。

Claims (11)

  1. 駆動力が入力される第1の歯車と、該第1の歯車と所定のバックラッシュをもった状態で噛み合い該駆動力を負荷へ伝達する第2の歯車と、を有する動力伝達装置であって、
    第1及び第2の歯車の一方に配設された永久磁石と、
    第1及び第2の歯車の他方における前記永久磁石からの磁束が鎖交する位置に配設されたコイルと、
    第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関する歯面同士の衝突の発生を予測する予測手段と、
    該予測手段により歯面同士の衝突の発生が予測された場合に、前記コイルが歯面間相対距離の変化による前記永久磁石からの鎖交磁束の変化を抑える磁束を発生するように、該コイルに流す電流を制御する制御手段と、
    を有することを特徴とする動力伝達装置。
  2. 請求項1に記載の動力伝達装置であって、
    前記永久磁石及び前記コイルはともに複数配設され、
    前記永久磁石の各々は、第1及び第2の歯車の一方における歯の間の歯底部に配設されており、
    前記コイルの各々は、第1及び第2の歯車の他方における歯の間の歯底部に配設されていることを特徴とする動力伝達装置。
  3. 請求項2に記載の動力伝達装置であって、
    隣り合って配設された永久磁石に関し、磁極は互いに逆方向であり、
    隣り合って配設されたコイルに関し、歯底部に対する巻回方向は互いに逆方向であることを特徴とする動力伝達装置。
  4. 請求項2または3に記載の動力伝達装置であって、
    前記複数配設されたコイルは、共通の導電線を巻回することにより構成されていることを特徴とする動力伝達装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1に記載の動力伝達装置であって、
    第1の歯車の回転速度を検出する第1の回転速度検出手段と、
    第2の歯車の回転速度を検出する第2の回転速度検出手段と、
    を有し、
    前記予測手段は、第1の回転速度検出手段の検出値及び第2の回転速度検出手段の検出値に基づいて歯面同士の衝突の発生を予測することを特徴とする動力伝達装置。
  6. 駆動力が入力される第1の歯車と、該第1の歯車と所定のバックラッシュをもった状態で噛み合い該駆動力を負荷へ伝達する第2の歯車と、を有する動力伝達装置であって、
    第1及び第2の歯車の一方に配設された永久磁石と、
    第1及び第2の歯車の他方における前記永久磁石からの磁束が鎖交する位置に配設されたコイルと、
    を有し、
    第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関して歯面間相対距離が変化したときに、前記コイルは、歯面間相対距離の変化による前記永久磁石からの鎖交磁束の変化を抑えるための磁束を発生することを特徴とする動力伝達装置。
  7. 駆動力が入力される第1の歯車と、該第1の歯車と所定のバックラッシュをもった状態で噛み合い該駆動力を負荷へ伝達する第2の歯車と、を有する動力伝達装置であって、
    第1及び第2の歯車の一方に配設された第1のコイルと、
    第1及び第2の歯車の他方における前記第1のコイルからの磁束が鎖交する位置に配設された第2のコイルと、
    第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関する歯面同士の衝突の発生を予測する予測手段と、
    該予測手段により歯面同士の衝突の発生が予測された場合に、第1のコイルが第2のコイルからの磁気力に反発する磁気力を発生するように、第1及び第2のコイルに流す電流を制御する制御手段と、
    を有することを特徴とする動力伝達装置。
  8. 駆動力が入力される第1の歯車と、該第1の歯車と所定のバックラッシュをもった状態で噛み合い該駆動力を駆動軸を介して負荷へ伝達する第2の歯車と、を有する動力伝達装置であって、
    発電運転及び前記駆動軸の駆動運転が可能な第1のモータジェネレータと、
    負荷に作用する外乱レベルを推定する外乱推定手段と、
    該外乱推定手段による外乱レベルに基づいて、第1のモータジェネレータの模擬慣性を設定する模擬慣性設定手段と、
    第1の歯車と第2の歯車との噛み合いに関する歯面同士の前記外乱による衝突力を低減するために、前記第1のモータジェネレータの模擬慣性を用いた慣性シミュレータモデルに基づいて外乱抑制用制御指令値を算出し、該外乱抑制用制御指令値を出力することで第1のモータジェネレータの運転制御を行う慣性シミュレータ制御手段と、
    を有することを特徴とする動力伝達装置。
  9. 請求項8に記載の動力伝達装置であって、
    前記模擬慣性設定手段は、前記外乱推定手段による外乱レベルが増大するほど、前記第1のモータジェネレータの模擬慣性を大きい値に設定することを特徴とする動力伝達装置。
  10. 請求項8または9に記載の動力伝達装置であって、
    前記負荷の加減速度を予測する加減速状態予測手段を有し、
    前記模擬慣性設定手段は、前記加減速状態予測手段により予測された負荷の加減速度の絶対値が増大するほど、前記第1のモータジェネレータの模擬慣性を小さい値に設定することを特徴とする動力伝達装置。
  11. 請求項8〜10のいずれか1に記載の動力伝達装置を備えたハイブリッド車両の駆動装置であって、
    発電運転及び前記第1の歯車が連結された推進軸の駆動運転が可能な第2のモータジェネレータと、
    前記推進軸の駆動及び第2のモータジェネレータの発電駆動が可能な内燃機関と、
    内燃機関が発生する駆動力を前記推進軸及び第2のモータジェネレータに分配可能な動力分配機構と、
    内燃機関が発生する駆動力変動により前記推進軸に発生する駆動力変動を抑制するための変動抑制用制御指令値を算出し、該変動抑制用制御指令値を出力することで第2のモータジェネレータの運転制御を行う変動抑制制御手段と、
    を有することを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
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