JP2005059012A - 鉄合金系チクソキャスティング用素材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【構成】白鋳鉄成分の溶鉄を、水冷銅鋳型を有する連続鋳造機を用いてチクソキャスティング用素材の鋳片を製造することを特徴とするチクソキャスティング用素材の製造方法。この場合、連続鋳造する溶湯の過熱度を50℃以下とすること、及び、白鋳鉄となる成分が、質量%で、(%C)≦4.3−1.3×(%Si)、C≧1.7%を満足する組成であることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鉄合金系のチクソキャスティング用素材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
チクソキャスト用鉄系合金とそれを用いた鋳造方法としては特許文献1に、直径50mm、長さが65mmの円柱状鉄系合金を鋳造用素材として、この素材を加熱して半溶融状態にした後に鋳造装置に挿入し、半溶融金属を金型に充填して鋳造部品を製造する方法が開示されている。従来は、この素材は溶融金属を素材の形状に近い形状の鋳型に注入、鋳込んで1個ずつ製造していた。
また、連続鋳造によるチクソトロピー性の金属製品の製造方法としては特許文献2に、アルミニウム合金に関するものが開示されている。鉄合金に比べて、アルミニウム合金は比重も小さく、融点も低く、熱伝導性が良いので連続鋳造が容易である。従って、連続鋳造の鋳型は断熱性材料やグラファイトで作られており、溶融合金を凝固させるための冷却は鋳型を出た後で行っている。また、形状を電磁力で制御することが容易である。
【0003】
しかし、特許文献1の様に、素材を1個ずつ鋳込んで製造する場合には、コストが高く、また得られた素材にばらつきがある。さらに、引け巣が内部にできやすく、鋳造してできた部品に欠陥が生じるという問題がある。
また、チクソキャスティング用素材は固液共存域が広いことが必要であり、特許文献2とは違って、鉄系合金では亜共晶となる成分であり、いわゆる白鋳鉄となる合金が用いられる。通常鋳鉄の連続鋳造ではチルの生成を防止する等の目的でグラファイトのモールドが用いられているが、白鋳鉄は固液共存域が広いために連続鋳造が困難であり、特許文献3に示されている様に、ごく一部を除いてほとんど行われていない。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−144304号公報
【特許文献2】
特公平3−38019号公報
【特許文献3】
US Patent 4074747号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に着目してなされたものであって、チクソキャスティング用素材を安価に効率よく製造するとともに、それを用いて製造した品質の優れた鋳造品の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の構成は、以下の通りである。
(1) 白鋳鉄成分の溶鉄から、水冷銅鋳型を有する連続鋳造機を用いてチクソキャスティング用素材の鋳片を製造することを特徴とするチクソキャスティング用素材の製造方法。
(2) 連続鋳造する溶湯の過熱度を50℃以下とすることを特徴とする(1)に記載のチクソキャスティング用素材の製造方法。
(3) 白鋳鉄となる成分が、質量%で、(%C)≦4.3−1.3×(%Si)、C≧1.7%を満足する組成であることを特徴とする(1)または(2)に記載のチクソキャスティング用素材の製造方法。
(4) モールドフラックスを使用して連続鋳造することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のチクソキャスティング用素材の製造方法。
(5) (1)〜(4)のいずれかの方法により得られた鋳片を切断することを特徴とするチクソキャスティング用素材の製造方法。
(6) (1)〜(4)のいずれかの方法に引き続き、鋳片を圧延することを特徴とするチクソキャスティング用素材の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
チクソキャスティング用材料としては、固液共存域が大きい方が良く、さらに黒鉛が生成していると製品の材質が損なわれるので亜共晶となる成分であることが良く、これらを満足するものとしては白鋳鉄となる成分系が最適である。
白鋳鉄成分の鋳片を製造する際に、通常の砂型等の鋳型を用いて鋳造すると冷却速度が小さいために、黒鉛が生成しやすい傾向があるので、比較的冷却速度が大きくなる連続鋳造機で製造する事が望ましい。さらに、連続鋳造機を用いることによって生産性が上がり、安価に製造が可能である。
【0008】
しかし、白鋳鉄成分の鋳鉄の連続鋳造においては、通常グラファイトや耐火物の鋳型が使われてきたが、これでは冷却速度が小さいことから、凝固シェルの成長が遅いために白鋳鉄の鋳造は困難であり、また黒鉛の生成も起こり易かった。
すなわち、白鋳鉄成分の溶鉄を、通常鋳鉄の連続鋳造で用いられている黒鉛鋳型を用いて連続鋳造すると、溶鉄中に炭素が溶解していくために鋳型の損耗が激しく、長時間の鋳造ができないことや、白鋳鉄は固液共存域が広いために、黒鉛鋳型では凝固シェルの強度が弱く、ブレークアウトが発生しやすく鋳造が困難であった。
【0009】
そこで、本発明の方法では、白鋳鉄成分の溶鉄を、水冷銅鋳型を有する連続鋳造機を用いて連続鋳造することによって冷却速度をさらに増加させることが可能となり、これにより凝固シェルの生成をさらに促進できることによって長時間、安定して連続鋳造することが可能であり、さらに鋳片での黒鉛の生成も防止できるために、チクソキャスティング用素材を安定して供給できるというものである。
さらに、本発明の方法ではグラファイトや耐火部の鋳型を用いるよりも、鋳造速度も大きくすることが可能となるために生産性が向上するという利点もある。
【0010】
他方、本発明の方法の様に、白鋳鉄成分の溶鉄を、水冷銅鋳型を有する連続鋳造機を用いて、大きな冷却速度で鋳造することにより、鋳造ままで材料全体にわたってほぼ均一な白鋳鉄成分の鋳片が得られる。
この鋳片の組織は、鋳造時の冷却速度が速いために、パーライトとレデブライトが微細に分散した白銑組織が得られ易くなり、チクソキャスティング時の加工性が良好なものが得られる。
さらに、インゴット鋳造では鋳片上部に形成されやすい、引け巣の発生もきわめて少ない。従って、チクソキャスティングした製品は欠陥が少ないものが得られる。
【0011】
本発明の鋳造速度は、鋳造ままで材料全体にわたって白鋳鉄が得られる冷却速度を有するものであれば、特に規定するものではなく、鋳造条件等を考慮して適宜設定すれば良い。但し、冷却速度を表すものとしての凝固速度は大きい方が白鋳鉄となりやすいため、10−4mm/s程度以上が好ましく、特に10−2mm/s程度以上がより好ましい。
【0012】
また、冷却速度の大きい連続鋳造機としては、具体的には、薄スラブ連続鋳造機、または鋳型壁面が鋳片と同期して移動する連続鋳造機等を用いることができる。
通常、薄スラブ連鋳機で鋳造して得られる鋳片の厚みは30〜120mm程度、さらにはベルトやロールといった移動鋳型を用いる双ベルト、短ベルト、双ドラム、短ドラム鋳造機で鋳造して得られる鋳片の厚みは1〜30mm程度である。
【0013】
また、連続鋳造する際には、溶銑の過熱度を所定の温度以下にすることで、凝固シェルが形成され易くなるため好ましい。ここで過熱度とは鋳造前の溶銑温度と、その溶銑成分の液相線温度との差のことである。
特に、過熱度を50℃以下とすることで、凝固シェルの強度を確保してブレークアウトの発生が防止され易くなり、連続鋳造がより安定して実施できるため好ましい。
白鋳鉄の液相線温度は1350〜1150℃であり、溶銑温度は1500℃以上あるので、溶銑温度を調節して、過熱度を50℃以下とすることが好ましい。
【0014】
次に、白鋳鉄となる成分について説明する。CとSiは白鋳鉄を得るためには、最も重要な元素であって、かつ黒鉛化速度に大きく影響するものである。CとSiが質量%で、(%C)≦4.3−1.3×(%Si)、C≧1.7%を満足すると、白鋳鉄となる。ここで、(%C)は白鋳鉄中のCの質量%、(%Si)は白鋳鉄中のSiの質量%を、それぞれ示している。Cの含有量は1.7質量%未満では白鋳鉄が得られないため、1.7質量%以上の範囲とする。
【0015】
また、通常モールドフラックスを使用して連続鋳造を行うが、溶鉄の凝固温度が1150℃と低いために凝固点の低いモールドフラックスを用いることが、モールドと凝固シェル間にモールドフラックスを流入させて潤滑性を確保する観点で好ましい。
すなわち、モールドフラックスの凝固点が低いと、鋳型壁とモールドフラックス間にエアギャップが生成し難いため、熱伝達が良好に保持されることから、より急冷にすることが可能となるので好ましい。モールドフラックスの凝固温度は、溶鉄の凝固温度よりも低ければ良く、特に規定するものではないが、実際の操業面から970℃以下が望ましい。
【0016】
本発明の方法により連続鋳造して得られた鋳片が、所望の厚みとなっている場合は、所望の長さに切断することで、そのままチクソキャスティング用素材として提供可能である。
鋳片の所望の厚みや長さは、要求されているチクソキャスティング用素材に応じて、適宜設定されるものである。
鋳片の切断は、通常は連続鋳造機の後工程に設けられたカッターで行うことができる。
また、本発明の方法により連続鋳造して得られた鋳片が、所望の厚みとなっていない場合は、連続鋳造に引き続き、鋳片を圧延することにより、所望の厚みのチクソキャスティング用素材の鋳鉄板として提供可能である。鋳鉄板の長さは要求されているチクソキャスティング用素材に応じて、適宜切断すれば良い。
【0017】
【実施例】
(実施例1)
C:3.4質量%、Si:0.3質量%の鋳鉄溶湯を、過熱度を50℃(溶湯温度で1280℃)に調整し、タンディッシュを介して水冷銅モールドを用いた縦型の連続鋳造機で凝固点970℃のモールドフラックスを使用して、厚み200mm、幅1000mmのスラブを連続鋳造し、鋳片を製造した。図1に連続鋳造機の概要を示す。この鋳片の一部は1000℃で熱間圧延して50mm厚の熱延スラブとした。得られた鋳片よりサンプルを採取して、ナイタールエッチングし、光学顕微鏡で組織、および引け巣(以降はキャビティと記載する)の分布を観察すると共に、熱延スラブよりサンプルを採取して超音波探傷法で内部欠陥の分布を調査した。
【0018】
その結果、鋳片はパーライトとレデブライトが微細に分散した白鋳鉄組織となっており、中心部にキャビティは観察されなかった。さらに、熱延スラブにも内部欠陥は検出されなかった。
さらに、熱延スラブは縦に切断し50mm角とした。この材料を固液共存域である1150〜1210℃まで加熱して加圧鋳造装置でチクソキャスティングを行い、鋳物を得た。こうして得た鋳物50個の中央部を切断し、組織および内部欠陥を調査した。50個いずれにも内部欠陥は検出されず、ほぼ同様の組織であった。
【0019】
(実施例2)
C:2.4質量%、Si:0.7質量%の鋳鉄溶湯を、過熱度を10℃(溶湯温度で1325℃)に調整し、タンディッシュを介して水冷銅モールドを用いた縦型の薄スラブ連続鋳造機で凝固点970℃のモールドフラックスを使用して、厚み50mm、幅900mmの薄スラブを鋳造した。得られた鋳片よりサンプルを採取して、ナイタールエッチングし、光学顕微鏡で組織およびキャビティの分布を観察、調査した。
【0020】
その結果、鋳片はパーライトとレデブライトが微細に分散した組織となっており、中心部にキャビティは観察されなかった。
さらに、この鋳片を縦に切断し50mm角とした。この材料を固液共存域である1150〜1300℃まで加熱して加圧鋳造装置でチクソキャスティングを行い、鋳物を得た。こうして得た鋳物50個の中央部を切断し、組織および内部欠陥を調査した。50個いずれにも内部欠陥は検出されず、ほぼ同様の組織であった。
【0021】
(実施例3)
C:3.0質量%、Si:0.6質量%の鋳鉄溶湯を、過熱度を45℃(溶湯温度で1305℃)に調整し、タンディッシュを介して水冷銅モールドを用いた縦型の連続鋳造機で凝固点970℃のモールドフラックスを使用して、100mm角のビレットを連続鋳造し、鋳片を製造した。さらに、鋳片の一部は1000℃で熱間圧延して直径50mm径の棒とした。得られた鋳片よりサンプルを採取して、ナイタールエッチングし、光学顕微鏡で組織およびキャビティの分布を観察すると共に、熱延された棒よりサンプルを採取して超音波探傷法で内部欠陥の分布を調査した。
【0022】
その結果、鋳片はパーライトとレデブライトが微細に分散した組織となっており、中心部にキャビティは観察されなかった。さらに、熱延された棒にも内部欠陥は検出されなかった。
さらに、熱延板は縦に切断し50mm長さの円柱とした。この材料を固液共存域である1150〜1240℃まで加熱して加圧鋳造装置でチクソキャスティングを行い、鋳物を得た。こうして得た鋳物50個の中央部を切断し、組織および内部欠陥を調査した。50個いずれにも内部欠陥は検出されず、ほぼ同様の組織であった。
【0023】
(比較例)
C:3.4質量%、Si:0.3質量%の鋳鉄溶湯を、過熱度を170℃(溶湯温度で1400℃)に調整し、高さ100mm、直径50mmの鋳鉄製の鋳型に注入し、鋳片を製造した。得られた鋳片よりサンプルを採取して、ナイタールエッチングし、光学顕微鏡で組織およびキャビティの分布を観察した。
【0024】
その結果、鋳片は粗大なパーライトとレデブライトが分散した組織となっており、中心部にはキャビティが観察された。
この材料を固液共存域である1150〜1210℃まで加熱して加圧鋳造装置でチクソキャスティングを行い、鋳物を得た。こうして得た鋳物50個の中央部を切断し、組織および内部欠陥を調査した。50個いずれにも内部欠陥が検出され、鋳物による組織のばらつきが観察された。
【0025】
【発明の効果】
本発明に係る薄板鋳鉄板および製造方法によれば、チクソキャスティング用素材を安価に効率よく製造することが可能となる。これによって、品質の優れた鋳造品の製造方法を得ることが可能となり、これを用いて様々な製品を提供する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る連続鋳造機を示す図である。
Claims (6)
- 白鋳鉄成分の溶鉄から、水冷銅鋳型を有する連続鋳造機を用いてチクソキャスティング用素材の鋳片を製造することを特徴とするチクソキャスティング用素材の製造方法。
- 連続鋳造する溶湯の過熱度を50℃以下とすることを特徴とする請求項1に記載のチクソキャスティング用素材の製造方法。
- 白鋳鉄となる成分が、質量%で、(%C)≦4.3−1.3×(%Si)、C≧1.7%を満足する組成であることを特徴とする請求項1または2に記載のチクソキャスティング用素材の製造方法。
- モールドフラックスを使用して連続鋳造することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチクソキャスティング用素材の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかの方法により得られた鋳片を切断することを特徴とするチクソキャスティング用素材の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかの方法に引き続き、鋳片を圧延することを特徴とするチクソキャスティング用素材の製造方法。
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