JP2005058841A - 脱硫装置、脱硫方法 - Google Patents

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奈美 松本
Osamu Hamamoto
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Abstract

【課題】有機性廃棄物を発酵または熱分解させて得られるガス中の硫黄化合物や不純物を低濃度になるまで効率良く除去できる脱硫装置を提供する。
【解決手段】脱硫塔10は、硫黄化合物を含むガスを通過させる脱硫塔内部に気液接触部として充填材層51が設けられ、該気液接触部には硫黄化合物を酸化する微生物が増殖しており、前記気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係が、下式(1)
【数1】
Figure 2005058841

を充たすように構成されている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は脱硫装置および脱硫方法に関し、詳細には、有機性物質を嫌気性条件で発酵、熱分解等した際に発生するガス中の硫黄化合物を、生物学的に酸化してガス中から除去する脱硫装置および脱硫方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
家畜糞尿や屠体、都市の一般ごみ、汚泥などの有機性廃棄物の処理にあたり、これを嫌気性条件の下で発酵または炭化処理し、肥料原料等に転換するとともに、発酵や熱分解の過程で生成したメタンを主成分とするガスを利用して発電を行うコージェネレーションシステムが注目されている。
【0003】
しかし、発酵や熱分解により生成するガス中には、硫化水素などの硫黄化合物が多量に含まれるため、これらをそのまま燃料電池やガスエンジンなどに導入すると、機器の腐蝕の問題を生じるおそれがある。このため、メタン発酵によって生成した消化ガス中の硫化水素を分離除去する目的で、消化ガス中に二酸化硫黄を混合した後、光触媒と紫外線を作用させて硫化水素を硫黄に転換する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
なお、硫化水素の除去ではないが、消化ガス中のメタンガスを精製するために、二酸化炭素を選択的に吸着する分子ふるい炭を充填した吸着塔を通過させて消化ガス中の二酸化炭素を吸着、除去するメタンガス精製設備も提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−97003号公報
【特許文献2】
特開2001−170695号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
有機性廃棄物の発酵や熱分解により生成したガスをコージェネレーションシステムで利用するためには、硫化水素等の濃度を望ましくは数十ppbオーダーまで低下させておく必要がある。しかし、上記特許文献1のように硫化水素を除去するために紫外線を照射する方法では、大きな電力を必要とすることから処理コストが上昇し、実用的な方法とは言い難い。
【0007】
また、発酵ガスや熱分解ガス中には、硫化カルボニルなど硫化水素以外の不純物も含まれており、脱硫と併せてこれらの不純物を効率的に除去することも必要である。
【0008】
本発明の課題は、有機性廃棄物を発酵または熱分解させて得られるガス中の硫黄化合物や不純物を低濃度になるまで効率良く除去できる脱硫装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る脱硫装置は、硫黄化合物を含むガスを通過させる脱硫塔内部に気液接触部が設けられ、該気液接触部には硫黄化合物を酸化する微生物が増殖しており、該微生物の作用によってガス中の硫黄化合物を除去する脱硫装置であって、前記気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係が、下式(1)を充たすように構成されていることを特徴とする。
【0010】
【数4】
Figure 2005058841
【0011】
ここで、「気液接触部のみかけの体積」は、充填材や棚段が設けられた気液接触部の体積を、充填物や棚段を無視し、単に空塔とした場合の体積(充填物や棚段の占有体積と、空隙、空間部分を含む体積)として算出した値である。また、「時間平均ガス流量」とは、任意の1時間あたりのガス流量を意味する。
【0012】
この脱硫装置の発明によれば、気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係が上記式を充たすように構成されているので、ガス中の硫黄化合物を効率良く除去できる。
【0013】
すなわち、生物脱硫反応においては、反応分子となるガス中の硫黄化合物の拡散状態や濃度は、反応効率を高める上で支配的な要因ではなく、反応効率は微生物による処理能力に律せられるところが大きい。このため気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係にも、微生物による処理能力に応じた最適な範囲が存在する。本発明では、上記式の関係を充足するように脱硫装置を構成することによって、低酸素条件においても効率的な脱硫が可能になった。また、この脱硫装置は、微生物の作用による生物脱硫方式を採用しているため、低コストで継続的な処理が可能になる。
【0014】
本発明の第2の態様に係る脱硫装置は、第1の態様において、前記脱硫塔の後段に吸着塔を接続配備したことを特徴とする。この特徴によれば、脱硫塔の後段(ガス流れ方向の下流側)に吸着塔を配することによって、万一脱硫塔において硫黄化合物の除去が十分に行われなかった場合でも、ガス中に残留した硫黄化合物を吸着塔で吸着し、確実に除去することができる。また、ガス中に含まれるケイ素化合物等の不純物についても吸着塔によりガス中から除去できる。
【0015】
本発明の第3の態様に係る脱硫装置は、第2の態様において、前記吸着塔のみかけの体積と、吸着塔を通過する時間平均ガス流量との関係が、下式(2)を充たすように構成されていることを特徴とする。
【0016】
【数5】
Figure 2005058841
【0017】
この特徴によれば、吸着塔が上記式を充たすように構成されることにより、被吸着物質分子の拡散および吸着材への吸着が良好な状態で行われ、ガス中に残留する硫黄化合物や不純物を効率よく除去することが可能となる。
【0018】
本発明の第4の態様に係る脱硫方法は、硫黄化合物を酸化する微生物が増殖している気液接触部を備えた脱硫塔内部に硫黄化合物を含むガスを通過させ、前記微生物の作用によってガス中の硫黄化合物を除去する脱硫方法であって、前記気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係が、下式(1)を充たすように処理することを特徴とする。
【0019】
【数6】
Figure 2005058841
【0020】
この第4の態様に係る脱硫方法の発明によれば、ガス中の硫黄化合物を効率良く除去できるとともに、低コストで継続的な処理が可能になる。
【0021】
本発明の第5の態様に係る脱硫装置は、第4の態様において、前記脱硫塔内に加圧状態のガスを導入し、加圧状態を維持したまま脱硫を行うことを特徴とする。この特徴によれば、ガスを加圧した状態で脱硫塔を通過させる構成によって、外部からの酸素の混入を防ぎ、酸素濃度を確実に制御しながら生物脱硫反応を進行させることが可能になる。
【0022】
【発明の実施の形態】
脱硫の対象となる硫黄化合物を含むガスは、家畜糞尿や家畜屠体等の畜産廃棄物、都市の一般ごみ、下水処理汚泥などの有機物を含む廃棄物(これらを「有機性廃棄物」と総称する)を、メタン発酵(嫌気消化)や熱分解する際に発生するガスである。かかるガスの主成分はメタンであり、硫黄化合物を少量含むものである。硫黄化合物としては、硫化水素のほか、メチルメルカプタン、硫化メチルなどが挙げられる。例えばメタン発酵により得られるバイオガスの場合、50〜70体積%のメタン、30〜50体積%の二酸化炭素、0.1〜0.3体積%の硫化水素を含んでいる。
【0023】
脱硫塔は、内部をガスが通過できるように中空状容器で構成されており、ガス通路には気液接触部が設けられている。気液接触部は、充填塔方式の場合は図1に例示するように充填材が充填された充填材層51により構成されており、棚段塔方式の場合は、図2に例示するようにトレイが重層されている。
【0024】
図1の充填塔方式の脱硫塔10では、中空容器により形成される脱硫塔10の内部に、充填材が充填され、充填材層51を形成している。使用可能な充填材としては、表面積を大きくとるために合成樹脂製のラシヒリングなどが好ましい。充填材の比表面積は、100m/m以上(つまり、みかけの充填材体積当り100m以上)のものが好ましく、通常は200m/m程度である。充填材が充填された充填材層51は気液接触部となり、そのみかけの体積は脱硫塔の内部断面積と気液接触部の長さ(高さ)との積として求めることができる。塔内には、図示しない液体供給手段によって上部から下部へ向けて連続的あるいは非連続的に液体が供給される。この液体としては、汚泥消化タンク30内の消化液を利用することができる。その結果、充填材51の表面は水分と適度な栄養分を含む消化液により濡れた状態となり、好気性の硫黄細菌などの微生物が増殖する。ガスは、脱硫塔10の下部から導入され、上部の排出口から排出される。ガスが充填材層51を通過する際に、気液接触が起こり、生物脱硫反応が進行する。
【0025】
図2の棚段塔方式の脱硫塔11では、中空状容器の内部にトレイ52が重層的に配備されている。トレイ52が重層された部分は気液接触部となり、そのみかけの体積は脱硫塔の内部断面積と気液接触部の長さ(高さ)との積として求めることができる。トレイ52には細孔が形成され、図示しない液体供給手段によって塔上部から連続的あるいは非連続的に導入された液体は、トレイ52上に所定時間滞留しながら順次下部のトレイ52に流下していく。トレイ52表面は常に濡れた状態にあるため、好気性の硫黄細菌などの微生物が増殖している。ガスは、脱硫塔11の下部から導入され、上部の排出口から排出される。ガスが細孔の空いたトレイを通過する際に、気液接触が起こり、生物脱硫反応が進行する。
【0026】
硫黄化合物を酸化する微生物は、いわゆる硫黄細菌に代表される微生物群であり、好気条件で硫黄化合物を酸化する作用を持つものである。これらの微生物は、環境中から自然に気液接触部に定着し、充填材や棚段の表面で生育し、増殖する。また、メタン発酵ガスを脱硫処理する場合は、メタン発酵液を脱硫塔に投入することによって、メタン発酵液中で休眠状態であった硫黄細菌を気液接触部に定着させることができる。
【0027】
前記微生物の作用により、気液接触部ではガス中の硫黄化合物を硫酸に変化させて除去する。例えばバイオガス中に含まれる硫化水素は硫黄細菌の作用によって酸化され硫酸に変化する。このような硫黄細菌等による生物脱硫反応は、ガス中の酸素濃度、温度等の条件に依存するところが大きい。例えば硫黄細菌は、好気的な代謝過程で脱硫反応を起こすため、脱硫塔に導入するバイオガスや熱分解ガス中に、低濃度の酸素を存在させることが重要となる。しかし、メタンを主成分とする処理ガス中の酸素濃度が高くなりすぎると、爆発を引き起こす危険性がある。従って、混入酸素の濃度は、処理ガスの爆発の危険性を抑えつつ、生物脱硫反応の効率を維持するため、脱硫塔出口で0.2体積%以下となるように調整することが好ましい。ガス中の酸素濃度は、例えば処理ガスの経路上に酸素濃度計を配備することによりモニターできる。
【0028】
また、気液接触部における生物脱硫反応を効率よく進行させるためには、気液接触部の温度を20〜70℃に設定することが好ましく、25〜50℃の範囲が望ましい。上記温度範囲では、硫黄細菌等の酵素活性が高まり、活発な代謝活動が行われるため、生物脱硫反応が効率よく進行する。
【0029】
酸化反応によって生成した硫酸は、脱硫塔内を酸性に傾けるので、中和することを要するが、メタン発酵ガス(バイオガス)を処理する場合には、バイオガス中にアンモニアが含まれているので、特に中和剤を添加しなくとも硫酸が中和される。また、メタン発酵液中には、アンモニアが溶存しているため、メタン発酵液を脱硫塔内に導入することによって、硫酸を中和することができる。高い脱硫率を維持するためには、脱硫塔内のpHを8.0〜6.5程度に維持することが好ましい。このpH範囲であれば、液中にアンモニアを保持できるとともに硫化水素を硫酸根にまで酸化でき、硫安を生成させることが可能となる。前記pH範囲を維持するために、ガス中のアンモニア濃度を数百ppm程度に調整することが好ましい。中和により生成する硫安などの中和物はメタン発酵液とともに脱硫塔から排出することができる。
【0030】
本発明の脱硫措置では、前記気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係が、前記式(1)を充たすように構成されている。気液接触部のみかけの体積と時間平均ガス流量とを式(1)のように規定することによって、前記した低酸素条件においても、ガス中の硫黄化合物の脱硫反応を効率よく進行させることができる。
すなわち、生物脱硫反応においては、反応分子である硫黄化合物の拡散状態や濃度は、反応効率を高める上で支配的な要因ではなく、反応効率は微生物の処理能力に律せられるところが大きい。従って、気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係にも、微生物の処理能力に応じた最適な範囲が存在する。本実施形態の脱硫装置では、上記式(1)の関係を充足するように構成することによって、低酸素条件でも効率的な生物脱硫が可能になった。なお、式(1)により示される気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との比の下限値は、実用的な装置という点で10−4(秒−1)程度である。
【0031】
また、脱硫塔における脱硫をより確実に行うため、脱硫塔からの出口ガスを再び脱硫塔入口に導入する循環経路を設けることが好ましい。さらに、高い脱硫率を維持した状態で継続運転を行うため、例えば脱硫塔の出口付近に硫黄化合物の濃度を検知するための検出器を設置することが好ましい。
【0032】
脱硫塔の後段には、吸着塔を配備することが好ましい。有機性廃棄物のメタン発酵や熱分解のガス中には不純物が含まれることがあり、吸着塔を通過させることによって不純物を除去できる。特に、下水汚泥のメタン発酵によるバイオガス中には揮発分としてケイ素化合物が含まれており、これらを含んだ状態でガスエンジンなどの発電機器に導入すると、ガスエンジンのシリンダ内等にシリカが析出し、発電能力を低下させ、さらには故障の原因となるが、吸着塔を通過させれば、ガス中のケイ素化合物を確実に除去できる。
【0033】
吸着塔は、例えば活性炭を充填した吸着材層を有し、この吸着材層のみかけの体積と、吸着塔を通過する時間平均ガス流量との関係が、前記式(2)を充たすような構成とすることが好ましい。これにより、多孔質の活性炭内に、被吸着物質分子(ケイ素化合物など)が十分に拡散し、効率よく吸着が行われる。
【0034】
また、式(2)により示される活性材層のみかけの体積と、吸着塔を通過する時間平均ガス流量との比の下限値は、前記脱硫塔の場合と同様に、10−4(秒−1)程度である。
【0035】
本発明の脱硫方法は、硫黄化合物を酸化する微生物が増殖している気液接触部を備えた脱硫塔内部に、硫黄化合物を含むガスを通過させ、前記微生物の作用によってガス中の硫黄化合物を硫酸に変化させて除去する際に、前記気液接触部の体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係が、前記式(1)を充たすように処理することにより実施される。本発明脱硫方法は、好ましくは前記脱硫装置を使用して実施することができる。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態に係る脱硫装置を使用したバイオガス発電システム200の概要を示す図面である。このバイオガス発電システム200は、主要な構成として、下水汚泥をメタン発酵する汚泥消化タンク30と、脱硫装置100と、ガスエンジン40とを備えている。なお、図3中、一点鎖線で囲まれた部分が脱硫装置100を構成する。また、ガス経路の脱硫塔10より上流部位にはブロワなどの空気導入器15が設けられ、ガス経路の脱硫塔10より下流部位には、酸素濃度計17が配備されている。
【0037】
汚泥消化タンク30では、下水汚泥が嫌気性微生物の作用により発酵し、汚泥中に含まれる有機物が分解される。発酵液は肥料等の原料となり、発酵過程で生成した大量のバイオガスが、タンク上部の抜出し口から脱硫装置100に送出できるように構成されている。
【0038】
脱硫装置100は、脱硫塔10と、その後段に接続された吸着塔20とを含んでいる。脱硫塔10は中空状の容器内部に充填材が充填され、充填材層51を構成している充填塔方式である。この脱硫塔10は前記式(1)を充たすように構成されている。一方、吸着塔20は、中空状の容器内部に活性炭が充填された吸着材層55を備えている。この吸着塔20は、前記式(2)を充たすように構成されている。
【0039】
ガスエンジン40は、既知の構成のものを利用でき、脱硫、生成されたバイオガス中のメタンを燃料として発電を行う。
【0040】
以上の構成において、汚泥消化タンク30から供給されたバイオガスは、空気導入器15において所定量(例えば0.5体積%以下の混入量)の酸素が導入された後、脱硫塔10の下部から導入され、上部から排出されていく。バイオガス中には数千ppm程度の硫化水素などの硫黄化合物が含まれているが、充填材は、大きな比表面積を持つため、導入されたガスが充填材層51を通過する際に気液接触が起こり、前記微生物の作用によってガス中の硫黄化合物が酸化される。ガス中の硫化水素については、酸化されて硫酸に変化するが、バイオガスや消化液中に含まれるアンモニアにより中和され硫安となるため、塔内のpH低下が抑制される。生物脱硫反応において影響を与える因子である酸素濃度は、酸素濃度計17によりモニターしながら運転を行うことができる。また、生物脱硫反応に影響を与える他の因子である温度は、後記するようにガスエンジン40の余熱を利用して気液接触部(充填材層51)を外部から加温することによって好適な範囲に保つことができる。
【0041】
バイオガス中には硫黄化合物以外にケイ素化合物などの不純物も含まれているため、脱硫されたガスは吸着塔20に送られる。吸着塔20では、活性炭の吸着材層55を通過させることによって、ケイ素化合物が除去される。精製されたバイオガスは、ガスエンジン40において発電に利用される。ガスエンジン40における発電では、熱が生じるため、水と熱交換され、温水が汚泥消化タンク30および脱硫塔10の加温に利用される。
【0042】
また、本実施形態では、脱硫塔10内には加圧状態でガスを導入し、この加圧状態を維持したまま、さらに吸着塔20に導入するようにした。脱硫塔10内が減圧になると、外部の空気が脱硫塔10内に混入しやすくなる。本来脱硫塔10に導入されるガスは、バイオガス、熱分解ガスなどの酸素を含まないガスであるため、脱硫塔10内は前記した酸素導入によって酸素濃度が制御された状態に置かれている。しかし、外部空気が混入すると酸素濃度を制御できなくなり、酸素濃度が上昇して最悪の場合バイオガスの爆発を引き起こす可能性がある。このため、脱硫塔10およびこれに引き続く吸着塔20内の酸素濃度を維持するために、加圧状態に置くことが好ましい。加圧の程度は、脱硫塔10内および吸着塔20内が減圧にならない程度で、かつ脱硫塔10内の微生物の活動を阻害しない範囲の圧力とすることができる。なお、加圧は、ガス経路上にポンプ、ブロア等の既知の手段を設けることにより実行できる。
【0043】
図4は、別の実施形態に係る脱硫塔12の概要を示す図である。この脱硫塔12は、充填材が充填された二つの充填材層53、54を備えており、前記式(1)を充たすように構成されている。この場合、第一充填材層53と第二充填材層54の体積の合計が気液接触部のみかけの体積となる。
【0044】
第一および第二充填材層53、54の充填材は、汚泥消化液により濡れた状態に保たれ、表面に好気性微生物が増殖している。また、脱硫塔12のガス排出部には硫化水素の検知部65が配備されている。
【0045】
脱硫装置200は、汚泥消化液を塔内に循環供給する循環ライン60を備えている。汚泥消化液は、送液ポンプ61により第一および第二充填材層53,54の上に設けられたスプレーノズル70,70から塔内に導入され、各充填材層の空隙を流下した後、底部から排出される。排出された汚泥消化液は、循環ライン60の一時貯留タンク63を介して送液ポンプ61により再び塔内に導入されるか、あるいは外部に排出される。
【0046】
脱硫塔12では、塔の下部から導入されたガスは、塔内を上昇し、第一および第二充填材層53,54を通過する際に気液接触が図られ、微生物の作用により硫黄化合物が酸化される。脱硫塔12の上部のガス排出部では、処理ガス中の硫黄化合物濃度を検知し、モニターすることにより確実に脱硫を行うことができる。
【0047】
【実施例】
次に、実施例、試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって制約されるものではない。
実施例1〜3、比較例1
内径2.2mの脱硫塔内に、充填材(ポリプロピレン製;かさ重量65kgm−3、表面積190m−3;孔隙率93%)を充填した吸収塔を用いてメタン発酵ガスの脱硫を実施した(実施例1および2、比較例1)。また、同様の脱硫塔内に3段の棚板を設けた場合についても同様に脱硫を実施した(実施例3)。メタン発酵ガスは、下水汚泥の消化タンクから供給した。ガスの流量および組成は次の通りである。
【0048】
<ガス流量および組成>
発生ガス流量(最大時) 0.025m/秒
硫化水素濃度 2,200ppm
メタン 約60%
CO 約40%
温度 35℃
酸素濃度(脱硫塔出口) 0.18体積%
(脱硫塔内は水蒸気飽和状態とした)
充填塔内の充填材層の高さ(気液接触部)を0.5m、1m、1.5mとして硫化水素脱硫率を比較した。また、棚段塔については棚段部分の高さ(気液接触部)を1.0mとした。硫化水素濃度の測定は検知管法で行った。結果は表1に示すとおりである。
【0049】
【表1】
Figure 2005058841
【0050】
実施例1、2は、出口ガス濃度が、それぞれ11ppm、15ppmであり、低酸素条件でも十分な脱硫性能を発揮したが、比較例1では、330ppmという高濃度になっていた。実施例3の棚段塔の場合は、出口ガス濃度が平均99ppmまで上昇したが、100ppm以下の値を維持した。
【0051】
実施例4〜6
実施例1のガスの一部(約15m/時)をガスエンジンに導入し、発電を行った。しかし、約半年でガスエンジンシリンダ内等にシリカが析出し、ガスエンジンの使用に支障が生じた。そこで、脱硫塔の後段に活性炭吸着塔を設けてシリカ発生成分の除去を試みた。活性炭吸着塔の内径1.2m、活性炭層の厚さ0.2m、0.3mおよび0.5mとして、吸着処理後のガスのシリカ析出状態を比較した。シリカ析出状態は500℃に加熱した管状炉内に一辺5mm角の磁性ハニカムを置き、吸着処理後のガスを約1リットル/分で10時間通じ、走査型電子顕微鏡でハニカム内部の表面を観察した。その結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
Figure 2005058841
【0053】
表2より、脱硫塔の後段に活性炭吸着塔を設け、かつ、上記式(I)を充たすように構成することにより、ガス中のケイ素化合物を除去してシリカの析出を防止できることが判明した。
【0054】
試験例
第4図に示したものと同様の構成の脱硫塔12を用い、畜産廃棄物の嫌気消化ガスの脱硫を行った。ガスの組成は以下のとおりである。
<ガス組成および処理量>
メタン 52%
二酸化炭素 48%(ドライベース)
硫化水素 2500ppm
処理量 1,200Nm/日
酸素濃度(脱硫塔出口) 0.18体積%
脱硫塔の第一充填材層における充填材53として、直径約50mmのプラスチック製のラシヒリングを使用し、その充填高さを3mとした。第二充填材層における充填材54としては、NによるBET比表面積が70m−1の塊状炭化物(平均径20mm)を高さ1mになるように充填した。
【0055】
全充填材層体積に対する時間平均ガス流量比を0.01秒−1に設定しガスを通過させた。循環液には、メタン発酵液を使用し、pHが7以下になったとき、循環液の一部(数十%以下)を排出し、排出した分と同量の発酵液を新たに補充した。循環液は1時間に5分間、4m/時量で充填塔に供給した。検知部65において、硫化水素を検出した場合は15分に5分間循環液を循環させた。送液量の比は、第一充填材層を2、第二充填材層を1の割合とした。充填材層は温水コイルで約50℃に維持した。
【0056】
出口ガス中の硫化水素濃度は、FPD検出器のガスクロマトグラフィー(GC)で定量した。結果は、7ppbであった。また、アンモニアについては入口濃度280ppm、出口濃度12ppmであった。
【0057】
上記実験において、以下のように条件を変えて脱硫試験を行った。
(条件1)第一充填材層を除き、そこへのメタン発酵液の供給も停止したところ、出口での硫化水素の濃度は約400ppmに達した。これは第一充填材層を除くことにより、前記式(1)の条件に合致しなくなったためと考えられる。
【0058】
(条件2)pHが5.2まで低下した循環液を使用して処理を継続した。その結果、硫黄の単体が析出して充填材が目詰まりし、長期運転に支障をきたした。循環液pHを6.3にすると著しい硫黄析出はなくなり、長期運転が可能になった。
【0059】
(条件3)気液接触部の加温を行わず15℃で運転したところ、出口での硫化水素の濃度は約250ppmに達した。よって、気液接触部を加温することが脱硫効率を高める上で有利であることが判る。
【0060】
(条件4)ガス流量を3倍に上昇させたところ、前記式(1)を充たさなくなり、出口での硫化水素の濃度は約120ppmに達した。ガス流量2倍では同30ppmであった。
【0061】
以上、本発明を種々の実施形態に関して述べたが、本発明は上記実施形態に制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、他の実施形態についても適用可能である。
【0062】
【発明の効果】
本発明の脱硫装置は、気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係が上記式(1)を充たすように構成されているので、低酸素条件にもかかわらず十分に生物脱硫反応が進行するため、ガス中の硫黄化合物を効率良く除去できる。また、この脱硫装置は、微生物の作用による生物脱硫方式を採用しているため、低コストで継続的な処理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】充填塔方式の脱硫塔の概要を示す模式図。
【図2】棚段塔方式の脱硫塔の概要を示す模式図。
【図3】バイオガス発電システムの概要を示す図面。
【図4】二層型の充填塔方式の脱硫塔の概要を示す模式図。
【符号の説明】
10〜12 脱硫塔
15 空気導入器
17 酸素濃度計
30 汚泥処理タンク
40 ガスエンジン
51 充填材層
52 トレイ
53 充填材層(第一充填材層)
54 充填材層(第二充填材層)
55 吸着材層
60 循環経路
61 水流ポンプ
63 一時貯留タンク
65 検知部
67,69 弁
70 スプレーノズル

Claims (5)

  1. 硫黄化合物を含むガスを通過させる脱硫塔内部に気液接触部が設けられ、該気液接触部には硫黄化合物を酸化する微生物が増殖しており、該微生物の作用によってガス中の硫黄化合物を除去する脱硫装置であって、
    前記気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係が、下式(1)
    Figure 2005058841
    を充たすように構成されていることを特徴とする、脱硫装置。
  2. 請求項1において、前記脱硫塔の後段に吸着塔を接続配備したことを特徴とする脱硫装置。
  3. 請求項2において、前記吸着塔の吸着材層のみかけの体積と、吸着塔を通過する時間平均ガス流量との関係が、下式(2)
    Figure 2005058841
    を充たすように構成されていることを特徴とする、脱硫装置。
  4. 硫黄化合物を酸化する微生物が増殖している気液接触部を備えた脱硫塔内部に硫黄化合物を含むガスを通過させ、
    前記微生物の作用によってガス中の硫黄化合物を除去する脱硫方法であって、前記気液接触部のみかけの体積と、脱硫塔を通過する時間平均ガス流量との関係が、下式(1)
    Figure 2005058841
    を充たすように処理することを特徴とする、脱硫方法。
  5. 請求項4において、前記脱硫塔内に加圧状態のガスを導入し、加圧状態を維持したまま脱硫を行うことを特徴とする、脱硫方法。
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