JP2005055228A - 酸化的ストレスの検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 実質的に無侵襲で酸化的ストレスを簡便に短時間で検出でき、酸化的ストレス状態と正常状態とを明確に区別化することができる、酸化的ストレスの検出装置を提供する。
【解決手段】 400〜2500nmの波長の光を被検試料に照射するための照射手段と、被検試料からの反射光、透過光及び拡散光からなる群より選ばれた光の強度を検出するための検出手段と、光の強度スペクトルの情報を受け取り、該情報を、多変量解析により処理し、スペクトルのパターン変動を分類し、該スペクトルのパターン変動と、多変量解析により処理され、かつ分類された分類モデルとの間のクラス間距離により酸化的ストレスを判定するための処理手段とを備えてなる、酸化的ストレスの検出装置。
【選択図】 なし

Description

本発明は、酸化的ストレスの検出方法及び酸化的ストレスの検出装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、実質的に無侵襲的に、酸化的ストレスを検出することができる、酸化的ストレスの検出方法及び酸化的ストレスの検出装置に関する。
現在、酸化的ストレスは、血液を採血し、得られた血液にチオバルビツール酸を添加し、発色を測定するTBARS法等により測定されうる(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4等を参照のこと)。
しかしながら、前記TBARS法においては、(1)採血等の侵襲性の操作を要すること、(2)測定前の処理の操作が複雑であり、測定に時間を要すること、(3)測定感度が低いこと等の欠点がある。
ド ザウォート(De zawart)ら、Free Radical Bio. Med.、26、202−226、1999 ドラパー(Draper)ら、Free Radical Bio. Med.、29、1017−1077、2000 ノワック(Nowak)ら、Free Radical Bio. Med.、30、178−186、2001 ミウラ(Miura)ら、Free Radical Bio. Med.、28、854−859、2000
本発明は、実質的に無侵襲で酸化的ストレスの検出を行なうこと、酸化的ストレス状態と正常状態とを明確に区別化すること、検出を簡便に行なうこと、検出を短時間で行なうこと等の少なくとも1つを可能にする、酸化的ストレスの検出方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記酸化的ストレスの検出方法を簡便かつ迅速に行なうこと、実質的に無侵襲で酸化的ストレスの検出を行なうこと、酸化的ストレス状態と正常状態とを明確に区別化すること、検出を簡便に行なうこと、検出を短時間で行なうこと等の少なくとも1つを可能にする、酸化的ストレスの検出装置を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、
〔1〕 (I)被検試料に、400〜2500nmの波長の光を照射して、スペクトルを得るステップ、
(II)前記ステップ(I)で得られたスペクトルを、多変量解析により処理し、ついで、スペクトルのパターン変動を分類するステップ、及び
(III)前記ステップ(II)で分類されたスペクトルのパターン変動と、多変量解析により処理され、かつ分類された分類モデルとの間のクラス間距離を指標として酸化的ストレスを検出するステップ
を行なうことを特徴とする、酸化的ストレスの検出方法、
〔2〕 ステップ(II)において、ステップ(I)で得られたスペクトル中の600〜1000nmの波長の領域を多変量解析により処理する、前記〔1〕記載の検出方法、
〔3〕 ステップ(II)において、多変量解析に先立ち、スペクトルをSNV変換処理又は二次微分変換処理する、前記〔1〕又は〔2〕記載の検出方法、
〔4〕 (A)400〜2500nmの波長の光を発生するための光発生手段と、
(B)前記(A)の光発生手段から発生した光を被検試料に照射するための照射手段と、
(C)前記(B)の照射手段からの光の照射により被検試料から発生する光であって、かつ反射光、透過光及び拡散光からなる群より選ばれた光の強度を検出するための検出手段と
(D)前記(C)の検出手段で検出された反射光、透過光及び拡散光からなる群より選ばれた光の強度を示すスペクトルの情報を受け取り、該情報を、多変量解析により処理し、スペクトルのパターン変動を分類し、該スペクトルのパターン変動と、多変量解析により処理され、かつ分類された分類モデルとの間のクラス間距離により酸化的ストレスを判定するための処理手段と
を備えてなる、酸化的ストレスの検出装置。
〔5〕 (B)の照射手段が、600〜1000nmの波長の近赤外光を照射するものである、前記〔4〕記載の検出方法、
〔6〕 (C)の検出手段が、600〜1000nmのスペクトルを検出する、前記〔4〕記載の検出方法、
に関する。
本発明の酸化的ストレスの検出方法によれば、実質的に無侵襲で、酸化的ストレス状態と正常状態とを明確に区別化し、簡便かつ短時間に酸化的ストレスを検出することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の酸化的ストレスの検出装置によれば、前記酸化的ストレスの検出方法を簡便かつ迅速に行なうことができ、実質的に無侵襲で、酸化的ストレス状態と正常状態とを明確に区別化し、簡便かつ短時間に酸化的ストレスを検出することができるという優れた効果を奏する。
本発明の酸化的ストレスの検出方法は、
(I)被検試料に、400〜2500nmの波長の光を照射して、スペクトルを得るステップ、
(II)前記ステップ(I)で得られたスペクトルを、多変量解析により処理し、ついで、スペクトルのパターン変動を分類するステップ、及び
(III)前記ステップ(II)で分類されたスペクトルのパターン変動と、多変量解析により処理され、かつ分類された分類モデルとの間のクラス間距離を指標として酸化的ストレスを検出するステップ
を行なうことを特徴とする方法である。
本発明の検出方法は、被検試料に、400〜2500nmの波長の光を照射して、スペクトルを得ることを1つの大きな特徴とする〔ステップ(I)という〕。したがって、本発明の検出方法は、被検試料に、400〜2500nmの波長の光を照射して得られたスペクトルに基づき、酸化的ストレスを検出するため、実質的に無侵襲で、簡便かつ短時間に、酸化的ストレスを検出することができる優れた効果を発揮する。
前記被検試料としては、動物、具体的には、哺乳動物、昆虫、微生物、植物等、より具体的には、ヒト、非ヒト哺乳動物、実験動物、家畜等が挙げられ、例えば、サル、ラット、マウス、ウシ、ブタ、ウサギ、モルモット、線虫、ハエ、ゴキブリ等が挙げられる。
前記ステップ(I)において、400〜2500nmの波長の光の照射は、例えば、光源、分光器等を用いることにより行なわれうる。
前記光源としては、タングステンランプ、ハロゲンランプ、ヨウ素ランプ、レーザー発光ダイオード等が挙げられる。
前記分光器としては、測定様式により異なるが、例えば、前記光源から発生した光を集光するためのレンズ、スリット、回折格子、フィルター、反射ミラー等を備えた回折格子方式の分光器;干渉フィルター等を備えた干渉フィルター式の分光器;干渉計等を備えたフーリエ変換型の分光器等が挙げられる。
本発明においては、400〜2500nmの波長の光を発生するに適した光源を用いてもよく、400〜2500nmの範囲の波長よりも広い波長の範囲の光を発生する光源からの光を、スリット、フィルター等を介して、400〜2500nmの範囲の波長の光を選別して用いてもよい。
400〜2500nmの波長の光の照射により、被検試料から、反射光、透過光及び拡散光からなる群より選ばれた光が発生する。
なお、前記ステップ(I)においては、400〜2500nmの波長の光の照射の代わりに、400〜2500nmの範囲の波長よりも広い波長の範囲の光を照射し、400〜2500nmの範囲の波長の光に対応するスペクトルを適切な方法で選択的に取得してもよい。
前記反射光、透過光及び拡散光からなる群より選ばれた光は、少なくとも400〜2500nmの範囲の光を検出しうる検出器、例えば、InGaAs、PbS、Silicon、CCD等の検出器により検出されうる。
前記反射光、透過光及び拡散光からなる群より選ばれた光を検出することにより、対応するスペクトルを得ることができる。
ついで、前記ステップ(I)で得られたスペクトルを、多変量解析により処理し、ついで、スペクトルのパターン変動を分類する〔ステップ(II)という〕。
本発明の検出方法は、スペクトルを多変量解析により処理し、ついで、スペクトルのパターン変動を分類することに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の検出方法は、酸化的ストレス状態と正常状態とを明確に区別化することができるという優れた効果を発揮する。また、本発明の検出方法によれば、スペクトルのパターン変動に基づき、酸化的ストレスを検出するため、被検試料における酸化的ストレスを、高い感度で検出することができるという優れた効果を発揮する。また、本発明の検出方法は、400〜2500nmの範囲の光の照射に対応するスペクトルのパターン変動を被検試料から直接検出するため、酸化的ストレスの検出を実質的に無侵襲で行なうことができるという優れた効果を発揮する。さらに、本発明の検出方法は、400〜2500nmの範囲の光の照射に対応するスペクトルのパターン変動を被検試料から直接検出するので、前処理等を実質的に必要としないため、検出に要する時間が短時間でよいという優れた効果を発揮する。
本発明の検出方法においては、酸化的ストレス状態と正常状態とを、より明確に区別化する観点から、前記ステップ(I)で得られたスペクトル中の600〜1000nmの波長の領域を多変量解析により処理することが好ましい。前記スペクトル中の600〜1000nmの波長の領域は、酸化的ストレスにより、驚くべく、より特徴的にパターン変動を生じることが本発明者らにより見出された領域である。
前記多変量解析としては、例えば、SIMCA法、識別解析、パターン認識解析、クラスター分析等が挙げられる。酸化的ストレス状態と正常状態とを明確に区別化する観点から、SIMCA法が好適である。
前記SIMCA(Soft Independent Modeling of Class Analogy)法〔ウォルド(Wold)ら、Am.Chem.Soc.、242−282(1977)〕によれば、主成分モデルが作成され、各クラスとのクラス間距離及び識別力がそれぞれ算出される。前記クラス間距離は、大きな数値を示した場合、2つのクラスが大きく異なることの指標となる。また、前記識別力は、大きな数値を示した場合、該識別力を呈する波長のスペクトルが、スペクトルにおける分類に適した領域であることの指標となる。前記SIMCA法によれば、酸化的ストレス状態に特異的な波長のスペクトルの変動を、酸化的ストレス状態に非特異的な変動と区別化することができるため、酸化的ストレス状態と正常状態とを明確に区別化することができる。
本明細書において、前記「スペクトルのパターン変動」とは、波長毎の変動の集合を意味する。
なお、本発明の検出方法においては、前記多変量解析に先立ち、スペクトルをSNV変換処理又は二次微分変換処理してもよい。前記SNV変換処理又は二次微分変換処理を行なうことにより、酸化的ストレス状態と正常状態とを、より明確に区別化することができる。
前記SNV変換処理は、例えば、バーンズ(Barnes)、Appl.Spectrosc、46、772−779、(1989)に記載の方法等により行なわれうる。前記SNV変換処理によれば、試料に依存した分散を低減し、ベースラインシフトを補整し、重複した吸収バンドを分離することができる。前記SNV変換処理には、例えば、ソフトウェア 商品名:Pirouette、MathWorks PLS Toolbox等が用いられうる。
前記二次微分変換処理は、例えば、25ポイントウインドウとSavitzky−Golay重畳法〔ザビッキー(Savitzky)及びゴーレイ(Golay)、Anal.Chem.、36、1627−1639、1964〕のゴリー(Gorry)による改良法〔ゴリーら、Anal.Chem.、62、570−573(1990)〕との組み合わせ等により行なわれうる。前記二次微分変換処理によれば、ランダムなノイズピークの影響を低減し、ベースラインシフトを補整し、重複した吸収バンドを分離することができる。前記二次微分変換処理には、例えば、ソフトウェア 商品名:Pirouette ver.3.0〔インフォマティックス社製〕等が用いられうる。
前記多変量解析による処理、SNV変換処理及び二次微分変換処理は、例えば、スペクトルのデータの信号を入力し、又は該信号を取り込み、該信号について、該多変量解析による処理、SNV変換処理、二次微分変換処理等を行なうためのデータ処理手段(例えば、前記多変量解析による処理、SNV変換処理及び二次微分変換処理を、コンピュータ上で行なうためのプログラムを稼動させうるコンピュータ等)で演算処理することにより行なわれうる。
ついで、前記ステップ(II)で分類されたスペクトルのパターン変動と、多変量解析により処理され、かつ分類された分類モデルとの間のクラス間距離を指標として酸化的ストレスを検出する〔ステップ(III)という〕。
本発明の検出方法は、前記ステップ(II)で分類されたスペクトルのパターン変動と、多変量解析により処理され、かつ分類された分類モデルとの間のクラス間距離を調べることに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の検出方法は、酸化的ストレス状態と正常状態とを、より一層明確に区別化することができるという優れた効果を発揮する。
前記「多変量解析により処理され、かつ分類された分類モデル」としては、予め、酸化的ストレス状態にあることがわかっている被検試料について、多変量解析により処理され、かつ分類された主成分モデルが挙げられる。
本発明の検出方法により酸化的ストレス状態にあることが示された被検試料は、例えば、癌、神経変性疾患、動脈硬化症、糖尿病、高血圧症、骨関節炎、急性膵炎、老人性白内障、アミロイドーシス、肝硬変、痴呆症、パーキンソン病、アルツハイマー病、アレルギー性疾患、虚血性心疾患、脳軟化症、炎症(例えば、肝炎、腎炎等)、風邪、感冒等の疾患に罹患した状態若しくは疾患を発症する徴候がある状態であることが示唆される。したがって、本発明の検出方法により得られた酸化的ストレス状態にあることの情報を、前記疾患の診断に用いることができる。
本発明の検出方法は、例えば、
(A)400〜2500nmの波長の光を発生するための光発生手段と、
(B)前記(A)の光発生手段から発生した光を被検試料に照射するための照射手段と、
(C)前記(B)の照射手段からの光の照射により被検試料から発生する光であって、かつ反射光、透過光及び拡散光からなる群より選ばれた光の強度を検出するための検出手段と
(D)前記(C)の検出手段で検出された反射光、透過光及び拡散光からなる群より選ばれた光の強度を示すスペクトルの情報を受け取り、該情報を、多変量解析により処理し、スペクトルのパターン変動を分類し、該スペクトルのパターン変動と、多変量解析により処理され、かつ分類された分類モデルとの間のクラス間距離により酸化的ストレスを判定するための処理手段と
を備えてなる、酸化的ストレスの検出装置を用いることにより、簡便かつ迅速に行なうことができる。前記検出装置も本発明に含まれる。
前記(A)の光発生手段は、前記光源、前記分光器等から構成される。前記(A)の光発生手段においては、前記光源から発生した光を、前記分光器に通すことにより赤外光を分光し、それにより、近赤外光を取り出す。
前記(B)の照射手段は、適切なレンズ、ミラー、スリット、フィルター等で構成される。前記(B)の照射手段において、前記(A)の光発生手段から発生した光を被検試料に向けて照射する。具体的には、前記(B)の照射手段においては、適切なレンズ、ミラー、スリット、フィルター等を介して、被検試料に向けて、適切な状態で、光を照射させる。前記(B)の照射手段は、被検試料への光の照射に適した形状等を有する。したがって、本発明の検出装置は、被検試料に対し、実質的に無侵襲で用いられうる。なお、前記(B)の照射手段は、600〜1000nmの波長の近赤外光を照射するものであってもよい。
前記(C)の検出手段は、前記検出器、検出されたスペクトルのデータの信号の出力手段等で構成される。前記(C)の検出手段において、前記(B)の照射手段により、被検試料に照射された光が、被検試料における状態、例えば、酸化的ストレス状態を反映して、反射及び/又は透過及び/又は拡散した光の強度を検出する。なお、前記(C)の検出手段は、600〜1000nmのスペクトルを検出するものであってもよい。
前記(D)の分析手段は、前記データ処理手段、該データ処理手段で得られたデータの分析結果の出力手段等により構成される。前記(D)の分析手段においては、前記(C)の検出手段から出力されたスペクトルのデータの信号を前記データ処理手段に取り込み、多変量解析により処理される。なお、前記(D)の分析手段は、多変量解析による処理に先立ち、SNV変換処理又は二次微分変換処理するための手段をさらに有していてもよい。前記(D)の分析手段においては、スペクトルのパターン変動が解析され、主成分モデルの形成、クラス間距離の算出等が行なわれうる。前記(D)の分析手段においては、分析結果を出力させ、酸化的ストレス状態の有無の判定、さらには、疾患の徴候の有無の診断の情報を提供する。
8週齢の雄Wistar/STラット〔静岡実験動物株式会社供給〕を1週間飼育し、順応させた。全動物を、ステンレススチールのカゴ中、23±2℃の温度で12時間明暗サイクルで飼育した。また、全動物を自由に摂餌及び摂水させた。
ラット腹腔における近赤外スペクトルを、商品名:フルーツテスター 20〔株式会社果実非破壊品質研究所FANTEC社製〕及び商品名:フルーツセレクター K−BA100〔株式会社クボタ製〕の2タイプのポータブル近赤外分光光度計で測定した。フルーツテスター20を用いる場合、16スキャンの平均で行ない、600〜1000nmの波長範囲において、1nm間隔で取得することにより測定を行なった。フルーツセレクターK−BA100を用いる場合、500〜1100nmの波長範囲において、2nm間隔で取得することにより測定を行なった。ノイズの多い部分を含むスペクトル、特に700nmより短波長の領域及び1000nmより高波長の領域をケモメトリックス解析に供した。なお、近赤外分析に先立ち、ラットについて、2日前に腹部周辺の毛を剃り、3時間前、絶食させた。
その結果、フルーツテスター 20及びフルーツセレクター K−BA100で測定したラット腹腔における近赤外スペクトルは、図1のパネルa及びパネルbに示されるように、ランダムなベースラインのシフトを示した。これらの現象は、スペクトルの解釈を困難にし、多変数分析においてエラーを生じるであろう。そこで、それらを除去するに適切なデータ変換を適用することが重要である。図1のパネルc〜パネルfは、バーンズ(Barnes)〔Appl.Spectrosc、46、772−779、(1989)〕の標準正規分散(SNV)変換処理と二次微分変換処理とにより得られたスペクトルを示す。両方の変換は、ベースラインシフトを較正した。
SNV変換処理及び二次微分変換処理のどちらがデータ変換に適切であるかを調べるため、18スペクトルのうち、6匹の未処理動物から得られるデータセットに対して、SNV変換処理又は二次微分変換処理を行ない、主成分分析を行なった。結果を表1に示す。
Figure 2005055228
その結果、表1に示されるように、SNV変換処理されたデータセットの固有値は、至適な因子を選別した後の二次微分変換処理よりも大きく、SNV変換処理セットが、より多くの数の有意な主成分を抽出するポテンシャルを有することが示唆された。
また、表1に示されるように、SNV変換処理データは、二次微分変換処理よりも、より大きな累積固有値を示し、SNV変換処理により、データセットを十分に説明できることが示唆された。
さらに、SNV変換セットの主成分分析−スコアスキャタープロットは、図2に示されるように、二次微分変換処理よりも、より均等な分散を示した。これらの結果により、SNV変換処理が、腹腔スペクトルの分析の二次微分変換処理よりも優れることが示唆された。
8週齢の雄Wistar/STラット〔静岡実験動物株式会社供給〕を1週間飼育し、順応させた。全動物を、ステンレススチールのカゴ中、23±2℃で、12時間明暗サイクル下で飼育した。また、全動物を自由に摂餌及び摂水させた。
四塩化炭素(CCl4)〔和光純薬工業株式会社製〕を、等量のミネラルオイル〔ナカライテスク社製〕で希釈し、腹腔内注射により、500μl CCl4/kg体重の量を、24時間間隔で、3回、4匹のラットに投与した。対照として、4匹のラットに、ミネラルオイル〔ナカライテスク社製〕を腹腔内注射した。
最初の投与の10分前、投与3時間後、投与24時間後、投与48時間後及び投与51時間後に、フルーツセレクターK−BA100を用い、ラット腹腔における近赤外スペクトルを測定した。なお、近赤外分析に先立ち、2日前に腹部周辺の毛を剃り、3時間前、絶食させた。測定は、500〜1100nmにおいて、2nm間隔で取得した。
ノイズの多い部分を含むスペクトル、特に700nmより短波長の領域及び1000nmより高波長の領域を、以下のように、ケモメトリックス解析に供した。データ解析は、ソフトウェアPirouette ver.3.0〔商品名、インフォマティックス社製〕により行なった。また、25ポイントウインドウと、Savitzky−Golay重畳法〔ザビッキー(Savitzky)及びゴーレイ(Golay)、Anal.Chem.、36、1627−1639、1964〕のゴリー(Gorry)による改良法〔ゴリーら、Anal.Chem.、62、570−573(1990)〕により、補整(smoothing)変換と二次微分変換処理とを行なった。補整変換により、ランダムなノイズピークの影響が低減された。二次微分変換処理により、ベースラインシフトが補整され、重複した吸収バンドが分離された。さらに、バーンズ(Barnes)〔Appl.Spectrosc.、43、772−777(1989)〕のSMV変換を行ない、試料による分散、ベースラインの変化及び多重共線性を除去した。
ついで、SIMCA〔ウォルド(Wold)ら、Am.Chem.Soc.、242−282(1977)〕を行なった。各データセットを、測定時に従って、いくつかのクラスに分類した。クラス1(投与前測定されたスペクトル)を、他のクラス(投与後に測定されたスペクトル)と比較した。因子の数を、各クラスについて、主成分分析により測定した。クラス間距離及び識別力(discriminating power)をそれぞれ算出して、2つのクラスを分離する変数の重要性を評価した。なお、クラス間距離は、2つのクラスが大きく異なる場合、大きな数値を示す。また、より大きな識別力は、スペクトルにおけるより分類に有効な領域を示す。
近赤外スペクトルの最後の測定後、麻酔下にラットを屠殺した。心臓穿刺により、ヘパリン化シリンジで血液を採取し、ついで、前記血液を1600×gで遠心分離して、血漿を回収した。肝臓、腎臓及び肺のそれぞれを洗浄し、リン酸緩衝化生理的食塩水中でホモジナイズし、10% ホモジネート溶液を調製した。
肝臓、腎臓及び肺のホモジネート溶液又は血漿 0.8mlを氷酢酸中0.8% BHT溶液 50μl、8.1% SDS溶液 0.2ml及び1N NaOHでpH3.5に調整された20% 酢酸と混合した。得られた混合物を、0.8% チオバルビツール酸(TBA)溶液 1.5mlが入った試験管に移した。混合物を、4℃で60分間維持し、ついで、100℃で60分間加熱した。前記混合物を冷却した後、混合物を水 1ml及びn−ブタノール:ピリジン (15:1、v/v) 5mlに添加し、ついで、1600×g 10分間遠心分離した。蛍光光度計F−2500(日立製作所製)上清の蛍光強度をλex=535nm及びλem=553nmを測定し、血漿及び組織におけるチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)を調べた。
その結果、図3のパネル(C)に示されるように、四塩化炭素は、血漿及び肝臓では、TBARS量を増加させなかった。しかしながら、パラコートと四塩化炭素とを投与した動物は、体重を減少し、後述のパラコートを投与した動物は、肺及び腎臓の肥大をまねいた。
また、図4のパネル(f)に示されるように、CCl4を投与した場合、ミネラルオイルを投与した場合〔図4のパネル(e)〕に比べ、各測定時における近赤外スペクトルが変化することがわかった。また、図5に示されるように、投与3時間後におけるスペクトルは、24時間でのスペクトルに比べ、より変化することがわかった。クラス間距離は、48時間と51時間とにおいて、広がっていた。
さらに、飼料及び水消費並びに体重減少は、最初の投与の48時間後に顕著に現れ、近赤外スペクトルに影響を及ぼしうることがわかった。したがって、3時間でのデータセットにおけるケモメトリックス解析を行なうほうが望ましいことが示唆された。
図5に示されるように、0〜3時間における分類に重要な領域は、約712〜716nm、744nm、772nm、804nm、866nm、922nm、964nm、982nm及び994nmであった。
なお、ミネラルオイルが投与された動物においては、スペクトルの変化は、712−716nm、744nm、772nm、804nm、866nm、994nmでは観察されなかった。さらに、CCl4が投与されたラットでのスペクトルの変化は、ミネラルオイルが投与されたラットでのスペクトルの変化に比べ、964nmにおいて、より強かった。
したがって、前記領域における変化は、CCl4により誘導された酸化的ストレスに特異的であろうことがわかった。
Fe−NTA溶液を使用直前に調製した。硝酸酸化鉄九水和物〔ナカライテスク社製〕及びニトリロ三酢酸ニナトリウム〔ナカライテスク社製〕を、それぞれ300mM及び600mMとなるように、水に溶解させた。得られた硝酸酸化鉄九水和物の溶液とニトリロ三酢酸ニナトリウムの溶液とを、1:2の体積比(モル比として、1:4)で混合し、重炭酸ナトリウムでpHを6〜7に調整し、Fe−NTA溶液を得た。腹腔内注射により、鉄量として、15mg/kg体重の量の前記Fe−NTA溶液を、10匹のラットに投与した。
その後、前記実施例2と同様に、投与10分前、投与1時間後、2時間後、3時間後、6時間後、24時間後に、フルーツテスターを用い、腹腔のスペクトルを分析した。投与3時間後、4匹のラットを麻酔下で屠殺し、他の6匹を、投与24時間後で屠殺した。また、等量の0.9% 生理的食塩水を、7匹のラットに腹腔内注射し、対照群として用いた。それらの3匹を投与3時間後、屠殺し、他の4匹を、投与24時間後屠殺した。血漿、肝臓及び腎臓について、前記実施例2と同様に処理し、TBARSアッセイを行なった。
その結果、図3のパネル(A)及びパネル(B)に示されるように、Fe−NTAを投与した場合、投与3時間後では、肝臓、腎臓及び血漿において、TBARS量が著しく増加し、投与24時間後では、肝臓及び血漿において、TBARS量が増加した。
一方、図4のパネル(b)に示されるように、Fe−NTA投与3時間後で、クラス間距離が最大になることがわかり、体重減少は、24時間で観察された。これは、脂質過酸化が、Fe−NTAの投与3時間後に生じていることと一致した。
また、図6に示されるように、711nm、764nm、789nm、816nm、835nm、877〜882nm、933nm、963nm及び994nmの各領域は、分類に最も有効であった。
なお、図7に示されるように、711nm付近、764nm付近及び835nm付近の各領域は、生理的食塩水が投与されたラットにおいて、変化した。したがって、媒体の作用は、恐らく、Fe−NTAの作用と重複したのであろう。
スペクトルの変化は、789nm、816nm、877〜892nm、933nm、963nm及び994nmにおいて、Fe−NTAに特異的であることがわかった。特に、877〜892nm、963nm及び994nmn領域は、経時的に強度を増加した。
したがって、これらの領域は、Fe−NTAにより誘導された酸化的ストレスを反映することが示唆された。
2,2’アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH)〔和光純薬工業株式会社製〕を、1.5%(w/v)の濃度で、0.9% 生理的食塩水に溶解し、腹腔内注射により、50mg/kg体重の量を、6匹のラットに投与した。その後、前記実施例2と同様に、腹腔の近赤外スペクトルを、投与10分前、投与1時間後、2時間後、3時間後、フルーツテスター 20で測定した。最後の測定後、麻酔下にラットを屠殺し、血漿、肝臓及び腎臓について、前記実施例2と同様に処理し、TBARSアッセイを行なった。
その結果、スペクトルの変化は、投与3時間後に観察された。
図4及び図8に示されるように、最も影響を受けた領域は、約715nm、約727nm、約739nm、約763nm、約781nm、約807nm、約847〜857nm、約888nm、約911nm、約922〜938nm、約959nm、約973nm及び約994nmであった。
なお、図7に示されるように、いくつかの領域は、生理的食塩水が投与されたラットでも検出された。
スペクトルの変化は、763nm、850nm、872nm、888nm、911nm、959nm、973nm及び994nmにおいて、AAPHに特異的であることがわかった。AAPHを投与した場合、959nmにおける変化は、生理的食塩水を投与した場合よりも、より明らかであり、850nm、911nm、973nm及び994nmにおける変化は、経時的に強度を増加した。
したがって、これらの領域は、AAPHにより誘導された酸化的ストレスを示すであろうことが示唆された。
パラコート〔ナカライテスク社製〕を、1.5%(w/v)の濃度で、0.9% 生理的食塩水に溶解し、腹腔内注射により、50mg/kg体重の量を、6匹のラットに投与した。その後、前記実施例2と同様に、腹腔のスペクトルを、投与10分前、投与1時間後、2時間後、3時間後、フルーツテスター 20で測定した。最後の測定後、麻酔下にラットを屠殺し、血漿、肝臓及び腎臓について、前記実施例2と同様に処理し、TBARSアッセイを行なった。
その結果、パラコートを投与した場合、投与24時間後、ラットは、体重を15〜18%減少した。
クラス間距離は、経時的に増加し、3時間時点で最大に達した。また、図4のパネル(d)に示されるように、パラコートが投与されたラットにおけるスペクトルの変化のパターンは、生理的食塩水が投与されたラットの場合とは異なることがわかった。また、媒体の影響を示す6時間時点でのクラス間距離は、減少した。
さらに、図3のパネル(B)に示されるように、パラコートを投与した場合、投与24時間後、血漿においてTBARS量が顕著に増加したが、肝臓及び腎臓の組織では、増加しなかった。
図9に示されるように、3時間時点で、705nm、730nm、747nm、812nm、820nm、840nm、880nm、920〜934nm、965nm、980nmにおいてスペクトル変化が観察された。また、0時間時点に比べ、6時間時点では、747nm付近、803nm付近、913nm付近、934nm付近、965nm付近及び995nm付近の各領域で変化した。
したがって、これらの領域は、パラコートにより誘導された酸化的ストレスを示すことが示唆された。
さらに、実施例2〜実施例5において得られた投与3時間後におけるそれぞれのスペクトルを図10にまとめて示す。
その結果、図10に示されるように、930nm、960〜975nm及び995nmの各領域における変化は、四塩化炭素、Fe−NTA、AAPH及びパラコートのそれぞれを投与した場合に共通しているため、内因的な酸化的ストレスを示す指標となることが示唆された。また、860〜880nm付近の領域における変化は、四塩化炭素及びFe−NTAのそれぞれを投与した場合に共通していることがわかった。
本発明の酸化的ストレスの検出方法及び検出装置によれば、被検試料における酸化的ストレスの簡便かつ迅速な検出、癌、神経変性疾患、動脈硬化症、糖尿病、高血圧症、骨関節炎、急性膵炎、老人性白内障、アミロイドーシス、肝硬変、痴呆症、パーキンソン病、アルツハイマー病、アレルギー性疾患、虚血性心疾患、脳軟化症、炎症(例えば、肝炎、腎炎等)、風邪、感冒等の疾患に罹患した状態若しくは疾患を発症する徴候の診断に用いられうる。
図1は、ラット腹腔の近赤外スペクトルを示す。パネル(a)は、フルーツテスター20で測定した結果、パネル(b)は、フルーツセレクターK−BA100で測定した結果、パネル(c)25ポイント補整とともに、サビッキー−ゴーレイ重畳法の原理により変換された前記(a)に関する二次微分スペクトル、パネル(d)は、25ポイント補整とともに、サビッキー−ゴーレイ重畳法の原理により変換された前記(b)に関する二次微分スペクトル、パネル(e)は、25ポイント補整とともに、(a)のSNV変換で得られたスペクトル、パネル(f)は、25ポイント補整とともに、(b)のSNV変換で得られたスペクトルを示す。 図2は、主成分1と主成分2とのスコアプロットを示す。パネル(a)は、6匹の未処理ラットに関する生データのスペクトルから得られたスコアプロット、パネル(b)は、6匹の未処理ラットに関する二次微分変換スペクトルから得られたスコアプロット、パネル(c)は、6匹の未処理ラットに関するSNV変換スペクトルから得られたスコアプロットを示す。 図3は、組織及び血漿におけるTBARS量を示す。パネル(A)は、0.9% 生理的食塩水、Fe−NTA又はAAPHにより腹腔内注射し、投与3時間後に屠殺したラットの結果を示し、パネル(B)は、0.9% 生理的食塩水、Fe−NTA又はパラコートにより腹腔内注射し、投与24時間後に屠殺したラットの結果を示し、パネル(C)は、ミネラルオイル又は四塩化炭素により、24時間間隔で3日間、腹腔内注射し、最後の投与から3時間後に屠殺したラットの結果を示す。データは、平均±S.Eであり、対照と酸化的ストレス誘発剤投与ラットとの間の有意差は、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005であった。 図4は、種々の試薬の腹腔スペクトルへの影響のクラス内距離を示す。パネル(a)は、0.9% 生理的食塩水を投与した場合の結果、パネル(b)は、Fe−NTAを投与した場合の結果、パネル(c)は、AAPHを投与した場合の結果、パネル(d)は、パラコートを投与した場合の結果、パネル(e)は、ミネラルオイルを投与した場合の結果、パネル(f)は、四塩化炭素を投与した場合の結果を示す。 図5は、四塩化炭素投与による経時的影響の識別力を示す。 図6は、Fe−NTA投与による経時的影響の識別力を示す。 図7は、0.9% 生理的食塩水投与による経時的影響の識別力を示す。 図8は、AAPH投与されたラットの腹腔スペクトルにおける経時変化の識別力を示す。 図9は、パラコート投与されたラットの腹腔スペクトルにおける経時変化の識別力を示す。 図10は、四塩化炭素、Fe−NTA、0.9% 生理的食塩水及びAAPHのそれぞれにより影響の識別力を示す。

Claims (6)

  1. (I)被検試料に、400〜2500nmの波長の光を照射して、スペクトルを得るステップ、
    (II)前記ステップ(I)で得られたスペクトルを、多変量解析により処理し、ついで、スペクトルのパターン変動を分類するステップ、及び
    (III)前記ステップ(II)で分類されたスペクトルのパターン変動と、多変量解析により処理され、かつ分類された分類モデルとの間のクラス間距離を指標として酸化的ストレスを検出するステップ
    を行なうことを特徴とする、酸化的ストレスの検出方法。
  2. ステップ(II)において、ステップ(I)で得られたスペクトル中の600〜1000nmの波長の領域を多変量解析により処理する、請求項1記載の検出方法。
  3. ステップ(II)において、多変量解析に先立ち、スペクトルをSNV変換処理又は二次微分変換処理する、請求項1又は2記載の検出方法。
  4. (A)400〜2500nmの波長の光を発生するための光発生手段と、
    (B)前記(A)の光発生手段から発生した光を被検試料に照射するための照射手段と、
    (C)前記(B)の照射手段からの光の照射により被検試料から発生する光であって、かつ反射光、透過光及び拡散光からなる群より選ばれた光の強度を検出するための検出手段と
    (D)前記(C)の検出手段で検出された反射光、透過光及び拡散光からなる群より選ばれた光の強度を示すスペクトルの情報を受け取り、該情報を、多変量解析により処理し、スペクトルのパターン変動を分類し、該スペクトルのパターン変動と、多変量解析により処理され、かつ分類された分類モデルとの間のクラス間距離により酸化的ストレスを判定するための処理手段と
    を備えてなる、酸化的ストレスの検出装置。
  5. (B)の照射手段が、600〜1000nmの波長の近赤外光を照射するものである、請求項4記載の検出方法。
  6. (C)の検出手段が、600〜1000nmのスペクトルを検出する、請求項4記載の検出方法。
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