JP2005053942A - 塩化ビニル系重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塩化ビニル、または塩化ビニルおよび共重合性単量体の混合物を、還流コンデンサー付き重合器内において水性媒体中で重合し塩化ビニル系重合体を製造する方法であって、前記重合器に備えられた4〜20GHzのマイクロ波を放射する電波式液面計を用いて、重合器内容物の液面レベルを検知することを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合工程のみならず、原料仕込み工程および/または重合体分散液抜き出し洗浄工程を含め、常に重合器内容物の液面レベルを検知し計測することにより、重合器内の状態を正確に把握することができる塩化ビニル系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、塩化ビニル系重合体の製造において、製品の品質を損なうことなく生産性を向上させてコスト削減を図る方法が、多数の観点から提案され、かつ実用化されている。塩化ビニル系重合体は、通常、バッチ式で製造されるため、重合反応工程を含め1バッチに要する時間を適切に短縮し、単位期間当たりのバッチ数を増大させることが望ましい。
【0003】
重合反応時間の短縮化を図るため、還流コンデンサーを備えた重合器を用いて、冷却ジャケット(必要により、更に冷却コイル)による除熱と合わせて重合反応熱を最大限効率的に除去することが通常に行われている。また、総除熱量に対する還流コンデンサーによる除熱割合を、より増大させる傾向になってきている。還流コンデンサーによる除熱は気化した単量体の凝縮によって行われる。従って、重合器内の液相表面の発泡現象が必然的に生じ、気液界面部におけるスケールの生成の問題や、泡に同伴した重合体粒子が還流コンデンサー等へ吹き上げおよび付着し、ひいては次バッチ時における製品中へ混入してフィッシュアイ増大の原因となる等の問題があり、その対策が検討されてきた。
【0004】
例えば、重合器の気相部に泡センサーを設置し、液相表面部の泡の量が一定量以上に達した時点を検知して、消泡剤を添加することにより、泡の量を抑制することが提案されている(特許文献1参照)。また、重合器内の液面を連続的に計量値として計測する液面計を装備した重合器を用い、その計測値に基づいて還流コンデンサーへの冷却水温度もしくは流量を変えることにより、還流コンデンサーにより還流する単量体の量を増減させ、気液界面が所定の範囲内で常時攪拌流動されて静止滞留しないように制御することにより、スケール生成等を抑制することが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
更に、重合反応後の未反応単量体回収時に生じる発泡現象も液面計を利用することにより制御することが可能となってきている。しかしながら、上記のとおり、液面計の利用は、主として重合工程における発泡相レベルの検知手段として採用されているにすぎず、他についての適用は提案されていない。
【0006】
塩化ビニル系重合体のバッチ式製造は、主として、重合器内への水性媒体の充填および単量体等の原料の仕込み、重合反応、重合反応後の重合体含有分散液の抜き出し、および重合器内面の水洗を含む工程からなるバッチを繰り返すことによって行われている。そして、前記重合反応の前後における工程に要する時間を管理し制御することも生産性向上の点から重要である。
【0007】
通常、塩化ビニル系単量体の仕込み量は、仕込みライン中に設置されている流量計にて測定され、所要の一定量となるように制御されている。しかし、この流量計は液状で供給される塩化ビニル系単量体を計量しているので、前記単量体を圧送・供給する仕込みポンプ内におけるキャビテーション現象の発生によってトラブルが生じ、前記単量体が一部ガス化して含まれていても、その量は流量計によりカントされないため、結果的に所定量を超える単量体が仕込まれてしまうという問題が生じる場合があった。近年、単量体仕込み時間を短縮するために、仕込みポンプをその仕様性能を超えて使用する場合が多くなっており、前記トラブルの発生頻度が増大している。また、長期間にわたる流量計の使用の結果、その精度が低下し単量体の仕込み量を正確に計測することができないという問題も生じる。そして、この単量体仕込み量の誤差は設計仕様の製品の品質に少なからぬ影響を及ぼす。更に、水性媒体等の仕込み量の管理においても、影響の程度に差異はあるが、ほぼ同様な問題がある。従来の生産工程において、上記仕込みポンプに起因する現象の発生を検知することは非常に困難であり、製品品質の低下の原因を解明するために、多大な時間とコストを必要としていた。
【0008】
また、重合反応終了後の工程に要する時間の短縮を図ることも必要とされる。
得られた重合体を含む分散液を重合器から抜き出した後に重合器内面の水洗が行われるが、通常、水洗を開始する時期は重合器内の撹拌機の負荷値を測定し、その測定値に基づいて制御されており、重合器内反応物の液面低下に伴う前記負荷値が一定値以下となった時点で攪拌機の作動を停止し、前記水洗を開始している。しかし、生産する重合体の仕様・品種により、重合器内反応物の粘度が異なることから、この攪拌機の負荷値から、重合器内反応物の液面が一定値以下となったことを確認することは困難であった。即ち、水洗開始時期を撹拌機の負荷値に基づき設定しても、残留する重合器内反応物の液面の高さが異なる場合がある。
このため、水洗開始時期を適正に決定することは困難であるので、重合器内反応物の抜き出しが十分に行われることを確保するために、通常、安全を見込んで必要以上の時間をかけているのが現状であり、生産性の点からみて有効なものではなかった。
【0009】
【特許文献1】
特開平4−130103号公報
【特許文献2】
特開平7−25909号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液面計を用いて、重合工程のみならず、単量体等の原料の仕込み工程並びに未反応単量体の回収、重合体スラリーの抜き出しおよび重合器内の水洗等の重合外工程においても、重合器内容物の液面レベルを正確に把握することを可能とする塩化ビニル系重合体の製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、塩化ビニル、または塩化ビニルおよび共重合性単量体の混合物を、還流コンデンサー付き重合器内において水性媒体中で重合し塩化ビニル系重合体を製造する方法であって、前記重合器に備えられた4〜20GHzのマイクロ波を放射する電波式液面計を用いて、重合器内容物の液面レベルを検知することを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法を提供するものである。
なお、本明細書において、液面とは、重合反応工程における発泡現象により生じた発泡相を含め、前記発泡相表面を意味する用語としても使用する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明方法に用いる重合反応装置の1例を図1に示す。重合器1には、例えば、その外周面に冷却ジャケット(図示せず)が設けられており、この冷却ジャケットにはライン(図示せず)を通じて冷却水等の冷媒が通導される。また、必要に応じて、重合器1内に冷却バッフル11や冷却コイル(図示せず)を設けてもよい。また、重合器1の上部には還流コンデンサー5が設けられ、この還流コンデンサー5にもライン(図示せず)を通じて冷却水等の冷媒が通導される。
還流コンデンサー5は重合器1内で発生した単量体蒸気を凝縮し、液化して還流させる。
【0013】
重合器1には、イオン交換水等の水性媒体仕込みライン6、重合開始剤仕込みライン7、単量体仕込みライン8、重合反応終了後に未反応単量体を回収するライン9が接続されている。また、重合器1内に仕込まれた内容物2を攪拌するパドル翼を供えた攪拌機3が、重合器1に備えられた駆動モータ4により回転するようになっている。そして、図示した例においては、液面計10が重合器1の上部に備えられている。
【0014】
本発明の重合装置に用いる重合容器の内面、バッフル、パドル翼、シャフト等の材質としては、高クロム高純度フェライト系ステンレス鋼、2相ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼等のステンレス鋼が好ましい。
【0015】
[液面計]
本発明では、重合器内の液面レベルの連続的な検知および計測を行うことができ、また、非接触型であり重合器内の圧力による制限を受けないとの利点を有することから電波式液面計を使用する。
【0016】
通常、非接触型の液面計はその測定精度を上げるためにセンサー先端部を重合器の上方内面より器内に突出させて設置していたが、センサー先端部にスケールが付着してしまうことがあった。また、センサー先端部へ泡が付着しないようにするためには、還流コンデンサーによる除熱量の上限値を制限して、重合反応工程における発泡時の発泡相の高さを抑制する必要があり、還流コンデンサーによる除熱機能を最大限に発揮させることができないという難点もあった。センサーの先端部を重合器上方部に設けた凹部内側に収容して設置するようにすることで、上記スケールの付着および還流コンデンサーの除熱量の制限の問題は解消する。しかし、この場合には、センサーに反射してくるマイクロ波に外乱によるノイズが混在して液面レベルの計測精度が低下する可能性がある。
【0017】
本発明方法で用いられる電波式液面計の場合、その構造としては被測定対象である重合器内容物の液面から反射してくるマイクロ波を確実に受信するためにセンサーの先端にホーンアンテナを取り付けることが好ましく、設置条件にもよるが可能な限り大きなホーンアンテナを設置することで測定精度を向上させることができる。また、ホーンアンテナと本体センサー部を連結する導波管を採用することが好ましく、導波管の長さを適宜調整することにより、ホーンアンテナをより好ましい位置に正確に設置することが可能となる。また、上記導波管の採用により、ホーンアンテナの先端開口部を液面に対して水平に設置すれば、導波管の設置角度は特に制限されず、液面に対して傾斜していても何ら問題はない。そして、マイクロ波を検出するホーンアンテナの先端開口部は、重合器の内部に最小限突出させれば十分であり、計測精度の低下、重合反応時の発泡相の高さもしくは還流コンデンサーによる除熱機能の制限、センサー部へのスケールの付着等の問題もなく、長期の運転操作を行ってもメンテナンスの頻度を必要最小限にできる。なお、マイクロ波はセンサー部下から送受信される。
【0018】
上記電波式液面計の一例の全体の概略を図2(I)に示す。電波式液面計12は、マイクロ波送受信部13、導波管14、およびホーンアンテナ15を具備している。該電波式液面計の適用の形態の例を図2(a),(b)に示す。ホーンアンテナの先端開口部16が液面Wに対して水平に設置されていれば、導波管の設置角度は制限されないことが図示されている。
【0019】
本発明方法で用いる電波式液面計は、4〜20GHz、好ましくは5〜10GHzのマイクロ波を放射することが必要である。20GHzを超え30GHz未満のマイクロ波を放射した場合には、攪拌等の比較的穏やかな液面変動に対しては対応することができるが、例えば、重合反応工程における激しく発泡した状態の液面の場合には、反射波が乱反射する結果、液面レベルの検知が困難となる場合がある。また、30GHz以上のマイクロ波を放射した場合には、攪拌による液面変動が大きな状態や、激しく発泡した状態における液面レベルの検知がほぼ不可能となる。逆に、4GHz未満のマイクロ波を放射した場合には、測定精度が低下し、液面レベルの正確な検知および計測が困難となる。
本発明では、上記の特定範囲の周波数のマイクロ波を放射する電波式液面計を採用することにより、重合工程および重合外工程の全工程における重合器内容物の液面レベルの変動を、連続的かつ正確に把握することを可能としたものである。
【0020】
[単量体]
本発明で用いられる単量体原料は、塩化ビニルまたは塩化ビニルを主成分とする単量体混合物である。塩化ビニルを主成分とする単量体混合物は、少なくとも 50重量%以上の塩化ビニルと、塩化ビニルと共重合可能な他の単量体とからなる混合物である。前記他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;無水マレイン酸;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0021】
[分散剤]
本発明の方法において、塩化ビニル等を水性媒体中で重合する場合に使用される分散剤は、特に限定されず、従来の塩化ビニル系重合体の製造に使用されているものでよい。この分散剤としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロースエーテル、水溶性部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ゼラチン等の水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体等の油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレエート、ラウリン酸ナトリウム等の水溶性乳化剤等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0022】
[重合開始剤]
本発明の方法において用いられる重合開始剤は特に限定されず、従来の塩化ビニル系重合体の製造に用いられているものでよい。例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート等のパーオキシエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド等の過酸化物;アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0023】
[酸化防止剤]
本発明に用いられる酸化防止剤は特に制限はなく、塩化ビニル系重合体の製造において一般に用いられているものでよい。例えば、2,2−ジ(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルヒドロキシアニソール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、4.4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−t−ブチル−4−sec−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、t−ブチルカテコール、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、トコフェロール、ノルジヒドログアイアレチン酸等のフェノール化合物;セミカルバジド、および1−アセチルセミカルバジド、1−クロルアセチルセミカルバジド、1−ジクロルアセチルセミカルバジド、1−ベンゾイルセミカルバジド、セミカルバゾン等のセミカルバジド誘導体;カルボヒドラジド、チオセミカルバジド、チオセミカルバゾン等のチオカルバジドの誘導体;フェニルナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ビス(ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のアミン化合物;ニトロソアニソール、N−ニトロソジフェニルアミン、ニトロアニリン、N−ニトロソフェニルヒドロキシリルアミンアルミニウム塩等のニトロまたはニトロソ化合物;トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、サイクリックイソペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等のリン化合物;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ドデシルメルカプタン、1,3−ジフェニル−2−チオ尿素等の硫黄化合物等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。これらの中でも、得られる重合体の抗初期着色性が良好で、重合器へのスケール付着が少ない点で、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、t−ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−sec−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0024】
[スケール付着防止剤]
本発明で用いられるスケール付着防止剤としては、公知のものでよく、例えば、多価フェノール類および多価ナフトール類の自己縮合物;1−ナフトールとホルムアルデヒドとの縮合物;フェノール化合物とアルデヒド類との縮合物;キノン−アミン化合物と有機シリカゾルとの混合溶液;ナフトール類スルフェイド化合物;電子供与性の染料とアリールスルホン酸との混合物および/または反応生成物;フェノチアジン誘導体;キノン化合物および/またはその還元処理物;ケトン樹脂とフェノール性化合物との反応生成物;染料、顔料、共役π結合を5個以上有する芳香族化合物、共役π結合を5個以上有する複素環式化合物;ポリ芳香族アミン;カチオン化合物とアニオン化合物との塩;ポリビニルアルコールとアミノ安息香酸との反応生成物;フェノール類とアルデヒド類との初期縮合変性物等を挙げることができる。なお、塗布液を重合容器の内壁面等に塗布する方法は、特に限定されず、例えばハケ塗り、スプレー塗布、スチーム塗布、重合体スケール付着防止剤で重合容器を満たした後に抜き出す方法等を含め、様々な塗布方法を用いることができる。
【0025】
最近の塩化ビニル系重合体の製造におけるスケール付着防止剤の塗布はスチームを媒体とした塗布方法が主流を占めてきているが、このスチーム塗布法を採用する場合、上記の中では多価フェノール類および多価ナフトール類の自己縮合物、1−ナフトールとホルムアルデヒドとの縮合物、ナフトール類スルフェイド化合物を用いることが好ましい。
【0026】
[他の条件等]
また、重合における他の条件、例えば、重合器へのイオン交換水等の水性媒体、塩化ビニルまたは塩化ビニルを含む単量体混合物、分散剤、重合開始剤等の仕込み方法、仕込み割合、あるいは重合温度(例えば、20〜80℃)等も従来と同様でよい。
【0027】
本発明の方法においては、必要に応じて塩化ビニル系重合体の製造に一般的に使用されている重合度調整剤、連鎖移動剤、pH調整剤、ゲル化改良剤、帯電防止剤、架橋剤、安定剤、充填剤等を適宜使用することもできる。また、酸化防止剤を重合反応の制御、生成重合体の劣化防止等の目的で、重合開始前、重合中あるいは重合終了後に重合系に添加することもできる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。
なお、実施例および比較例では、図1に示す装置を用いた。重合器1としては、円筒直胴部を有する重合器を用いた。図1中に、重合器1の円筒直胴部の上端水平面を「TL線」で示した。前記TL線より上部へ 0.5m高い水平面を「B線」で示した。電波式液面計10は、そのホーンアンテナの先端開口部の面が、前記「B線」で示した前記水平面の位置と一致し、重合器内容物の液面に対し平行に、即ち水平となるように設置されている。また、前記ホーンアンテナの先端開口部の直径は 241mmであり、導波管の直径は 40mmである。
【0029】
[実施例1]
塩化ビニルの懸濁重合用の重合器として、還流コンデンサー5が付設され、予めスケール付着防止剤が塗布され、スケール付着防止性塗膜が形成されている内容積 130m3 の重合器1を使用した。該重合器1に、イオン交換水 54,900kg、部分ケン化ポリビニルアルコール 13.8kg、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース 9.2kgを仕込んだ。放射するマイクロ波の周波数が 5.8GHzの電波式液面計10を用いて、この時点の液面レベルが温度換算による計算液量と等しいことを確認した。次いで、真空ポンプで内圧が 7.98kPa(ゲージ圧)になるまで排気した後、塩化ビニル単量体 47,700kgを仕込んだ。この時点においても、同様に、電波式液面計10を用いて、液面レベルが流量計により表示された流量換算による計算液量と等しいことを確認した。そして、攪拌しながら重合開始剤として、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート 25.3kgを重合容器内に圧入した。
【0030】
なお、重合開始時の攪拌動力は、重合容器の内容物の重量(t)当り、1.3×103 W(130 Kg・m/s)であった。また、攪拌開始時から後記スラリー抜き出し時までにおける攪拌回転数は86 rpmであった。次いで、冷却ジャケットに温水を通して、重合器内液相温度を 53℃に上昇させ、前記温度に到達した以降は、前記 53℃の温度に保ちながら重合反応を行い、重合器の内圧が588 kPa(ゲージ圧)に達した時点で重合を停止し、未反応単量体を回収し、得られた重合体スラリーの重合器外への抜き出しながら、重合器の水洗を行った。上記の重合工程および重合外工程(未反応単量体回収、水洗等)において、重合器内容物の液面レベルを測定することができた。
【0031】
[実施例2]
実施例1に記載の周波数が 5.8GHzの電波式液面計に代えて、周波数が 6.0GHzの電波式液面計を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、重合、抜き出し、水洗を行った。重合工程および重合外工程において、重合器内容物の液面レベルを測定することができた。
【0032】
[比較例1]
実施例1に記載の周波数が 5.8GHzの電波式液面計に代えて、周波数が3GHzの電波式液面計を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、重合を行った。塩化ビニル単量体の仕込み段階において、重合器内で液面レベルが上昇していく際に、受信されるノイズ(重合器内壁からの反射波)が多く、測定対象である液面レベルからの反射波(信号)が、前記ノイズに混信してしまい、液面レベルの検知が困難となった。
【0033】
[比較例2]
実施例1に記載の周波数が 5.8GHzの電波式液面計に代えて、周波数が 26GHzの電波式液面計を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、重合を行った。還流コンデンサー5の稼動時に重合器内に発生する発泡相面で、マイクロ波が乱反射し、その結果、受信波量が極端に少なくなったため、液面レベルの検知が困難となった。
上記各実施例、比較例における電波式液面計が放射するマイクロ波の周波数および比較例における液面レベル検知が不能となった要因を、表1にまとめて示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、4〜20GHzのマイクロ波を放射する電波式液面計を設置した重合器を用いることにより、重合工程および重合外工程の全ての工程における、重合器内容物の液面レベルを検知し計測することができ、重合器内の状況を常に正確に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に用いられる重合器の1例を示す概略図である。
【図2】(I)実施例および比較例で用いられている電波式液面計の概略図である。
(a)電波式液面計の適用形態の一例を示す図である。
(b)電波式液面計の適用形態の他の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 重合器
2 重合器内容物
3 攪拌機
4 攪拌機駆動モータ
5 還流コンデンサー
6 水性媒体仕込みライン
7 重合開始剤仕込みライン
8 単量体仕込みライン
9 未反応単量体回収ライン
10 液面計
11 冷却バッフル
12 電波式液面計
13 マイクロ波送受信部
14 導波管
15 ホーンアンテナ
16 ホーンアンテナ先端開口部
Claims (3)
- 塩化ビニル、または塩化ビニルおよび共重合性単量体の混合物を、還流コンデンサー付き重合器内において水性媒体中で重合し塩化ビニル系重合体を製造する方法であって、前記重合器に備えられた4〜20GHzのマイクロ波を放射する電波式液面計を用いて、重合器内容物の液面レベルを検知することを特徴とする塩化ビニル系重合体の製造方法。
- 重合前工程、重合工程、および重合後工程の全工程において、常に前記重合器内容物の液面レベルを検知する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記電波式液面計において、センサーの先端にホーンアンテナが取り付けられている、請求項1に記載の製造方法。
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