JP2005048824A - 自在継手 - Google Patents
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Abstract
【課題】コストの上昇を招くことなくシール部材の脱落を防止することができ、軽量・コンパクトで長寿命な自在継手を提供する。
【解決手段】シェルカップ2の開口を密封する環状のシール部材5を、金属製の環状体6を介して十字軸1の軸部外周1xに嵌め入れて固定する。このシール部材5のリップ部5a,5bは、環状の基体5cからシェルカップ2の開口に向かって傾斜し、かつ、その先端がシェルカップ2の内周面2yに摺接する形状に形成されている。以上の構成により、このシール部材5は、シェルカップ2のヨーク嵌合孔4xへの圧入による影響を受けず、カップ2組み付け時の内圧の上昇や運転時のころ3の突き上げに起因する脱落がない。また、このシール部材5の固定方法は、シール部材5の位置ずれやリップの反転が発生し難く、リップ5a,5bのシェルカップ内周面2yに対する接圧が安定し、シール効果を長期に渡り維持できる。
【選択図】 図2
【解決手段】シェルカップ2の開口を密封する環状のシール部材5を、金属製の環状体6を介して十字軸1の軸部外周1xに嵌め入れて固定する。このシール部材5のリップ部5a,5bは、環状の基体5cからシェルカップ2の開口に向かって傾斜し、かつ、その先端がシェルカップ2の内周面2yに摺接する形状に形成されている。以上の構成により、このシール部材5は、シェルカップ2のヨーク嵌合孔4xへの圧入による影響を受けず、カップ2組み付け時の内圧の上昇や運転時のころ3の突き上げに起因する脱落がない。また、このシール部材5の固定方法は、シール部材5の位置ずれやリップの反転が発生し難く、リップ5a,5bのシェルカップ内周面2yに対する接圧が安定し、シール効果を長期に渡り維持できる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自在継手に関し、更に詳しくは、小型軽量でありながら負荷容量が大きく、自動車のプロペラシャフト等に適した自在継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車や各種産業機械に使用される自在継手(ユニバーサルジョイント)として、十字軸を用いた十字軸自在継手が使用されている。中でも、自動車のプロペラシャフト等に用いられる自在継手は、近年のエンジンの出力向上により、トルク容量(負荷容量)を向上させることが求められてきている。
【0003】
そこで、十字軸の軸部に被せる軸受カップに、従来の肉厚の削り出しタイプに代えて、鋼板をプレス成形したシェル状軸受カップ(シェルカップ)を使用することにより、この軸受カップの外径を増大させることなく、自在継手のトルク容量を向上させる提案がなされている(例えば、特許文献1等を参照。)。
【0004】
図3は、このようなシェルタイプの軸受カップを用いた自在継手の構造を示す一部断面図であり、図4は、この自在継手における軸受部の拡大断面図である。なお、参考として、従来の削り出しタイプの軸受カップを使用した自在継手を図5に示す。
【0005】
この自在継手は、各軸部1aが四方に突出した十字軸1によって、二又状となった一対のヨーク4,4を相互に連結した構造である。これら各ヨーク4の両外側端部4bには、溶接、スプラインあるいはフランジ等により、トルク伝達部材(プロペラシャフト,トランスミッションのアウトプットシャフト等)がそれぞれ連結されている。また、これらヨーク4の二又状となった端部4a,4aには、十字軸1の各軸部1aを支持するための嵌合孔4xがそれぞれ形成されており、十字軸1とヨーク4とは、十字軸1の軸部1aを内輪とし、金属製の軸受カップ(シェルカップ)2を外輪として、これら内外輪の間に複数の針状ころ3,3,・・・を配置したラジアル軸受を介在させて連結されている。
【0006】
シェルカップ2は、図4のように、円筒部2aと底部2bからなる有底円筒体であり、板材をプレスして形成されている。また、このシェルカップ2は、その円筒部2aの外周面2xを嵌合孔4xに圧入して、ヨーク4の二又状端部4aに固定されているとともに、この嵌合孔4xの内周をかしめることによって、軸方向の位置決めと抜け止めがなされている。
【0007】
シェルカップ2の内周面2yと軸部1aの外周面1xとによって形成される環状空間の中には、複数の針状ころ3が配置されている。また、この環状空間内には、これら針状ころ3の潤滑を維持するためのグリース等の潤滑剤(図示省略)が充填されているとともに、シェルカップ2の開口は、環状のシール部材10により密封されている。
【0008】
このシール部材10は、一般にリップ部(ラジアルリップ10a(メインリップ),サイドリップ10b)を有するゴム等からなる環状の基体10cと、この基体10cをシェルカップ2の内周面2yに固定する芯金10dとから構成されている。これらラジアルリップ10aおよびサイドリップ10bは、それぞれ十字軸軸部1aの肩部(外周面1x)に当接することで、このシェルカップ2内のグリースの漏れを防止するとともに、外部からの水分や塵埃等の浸入を防止している。なお、このシール部材10の更に外側には、シェルカップ2の外周面2xに摺接して泥水等の浸入を防止するダストシールド11が配置されている場合もある。
【0009】
以上の構造によって、この自在継手は、図5のような肉厚の削り出しタイプの軸受カップ12を使用した自在継手に比して、軸受カップの外径寸法を変更することなく、十字軸軸部の外径を大きくしたり、ころの数を増やしたりあるいはころ径を大きくしたりすることが可能となる。従って、自在継手全体のサイズをそのままに、トルク容量を向上させることができる。
【0010】
ところで、以上のような構成の自在継手においては、シェルカップ2の円筒部2aの肉厚が薄いため、シェルカップ2をヨーク4の嵌合孔4xに嵌め入れた場合、このシェルカップ2のシール部材10に対する保持力が低下してしまい、シェルカップ2の組み付け時の内圧の上昇や運転時のころ3の突き上げによって、このシール部材10が、シェルカップ2から抜け出してしまうという問題があった。
【0011】
そこで、シェルカップ2の開口近傍に配置されるシール部材10の抜けを防止する手段として、図4のP部に示すように、シェルカップ円筒部2aの端部をかしめて、シール部材10を固定する方法が取られる場合がある。
【0012】
また、シール部材の脱落を防止する別の手段として、本出願人らは、シール部材の芯金の外周面を先端に向かって肉厚が減少する傾斜面に形成し、この芯金の傾斜面と軸受カップの開口端部内周面との間の断面略三角状の空間に、くさび部材を圧入してシール部材を固定する方法(特許文献2)、あるいは、軸受カップの開口端部外周面を、その肉厚が開口端に向かって徐々に薄くなる傾斜面に形成し、シール部材の芯金とこの芯金が接触する部位の軸受カップとの間のしめしろの増大を防ぐことにより、シール部材の変形を抑えて抜けを防止する方法(特許文献3)を提案している。
【0013】
【特許文献1】特開2001−146924号公報
【特許文献2】特開2002−98163号公報
【特許文献3】特開2002−106594号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のような従来のシール部材の脱落防止手段は、部材の加工や組立の複雑化を招き、自在継手のコストアップ要因となってしまっていた。
【0015】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、コストの上昇を招くことなくシール部材の脱落を防止することができ、小型・軽量で長寿命な自在継手を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、板材をプレスすることにより形成され、ヨークの二又状端部に設けられた孔に嵌め入れられたシェル状軸受カップと、この軸受カップの内周に配置された複数の針状ころとによって、十字軸の各軸部を回転自在に支持する自在継手において、前記十字軸の各軸部の外周に、リップ部が前記軸受カップの内周面に摺接する環状シール部材が配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明は、シェル状の軸受カップを用いた自在継手において、グリース等を封入するシール部材を、十字軸の軸部に嵌合させて固定することにより、所期の目的を達成しようとするものである。
【0018】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、従来の自在継手において、シェルカップ内周の開口端近傍に配置されていたシール部材を、十字軸の軸部外周に配置することにより、このシール部材はシェルカップのヨークへの圧入による影響を受けず、所要の位置に固定されることとなる。従って、本発明の自在継手は、このシェルカップのヨークへの圧入によっても、シール部材に対する保持力の低下がなく、シェルカップ組み付け時の内圧の上昇や運転時のころの突き上げによるシール部材の脱落を防止することができる。
【0019】
また、このシール部材の固定方法によれば、シール部材の軸方向位置のずれや、十字軸とシェルカップの間の軸方向すき間のばらつき等による影響を受けることなく、シール部材のリップ部がシェルカップ内周面に接する接圧が安定する。従って、本発明の自在継手は、グリース等の漏れを長期に渡り効果的に防止することが可能で、その寿命を向上させることができる。
【0020】
更にまた、このシール部材の固定方法は、従来のシェルカップの内周をかしめる方法や、シェルカップの開口端部外周面を傾斜面に形成する方法、あるいは、シール部材の芯金の外周面を傾斜面に形成し、別のくさび部材を圧入してシール部材を固定する方法等に比べ、製造コストの上昇を最小限に抑えることができるというメリットもある。
【0021】
ここで、シール部材のリップ部の形状としては、リップ部がその根本部から前記軸受カップの開口端側に向かって傾斜する形が好ましい。(請求項2)
【0022】
すなわち、シール部材のリップ部を、シェルカップ開口に向かって傾斜して形成することにより、十字軸に対してシェルカップを被せる場合、シェルカップの挿入方向とこのリップの傾斜方向が一致することとなる。従って、本発明の自在継手は、シェルカップを被せる工程においても、シール部材の各リップが反転させられる恐れがなく、グリース等のシール効果を確実に発揮することができる。
【0023】
また、前記シール部材は、金属製環状体を介して、前記軸部に嵌め入れても良い。(請求項3)
【0024】
すなわち、本発明における自在継手は、十字軸軸部に嵌合されるシール部材の基体の内周面に、金属製の環状体を介在配置することにより、十字軸の軸部に対するシール部材の位置決めを、より正確に行なうことができるようになる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつこの発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明における自在継手の構造を示す一部断面図であり、図2は、この自在継手における軸受部の構造を示す拡大断面図である。なお、従来例と同様の機能を有する構成部材には、同じ符号を付記する。
【0026】
この自在継手も、基本的な構造は従来例と同様であり、各軸部1aが四方に突出した十字軸1によって、二又状となった一対のヨーク4,4を相互に連結して構成されている。これら各ヨーク4の二又状となった端部4a,4aには、十字軸1の各軸部1aを支持するための嵌合孔4xがそれぞれ設けられており、これら十字軸1とヨーク4とは、十字軸1の軸部1aを内輪とし、金属製の軸受カップ(シェルカップ)2を外輪として、これら内外輪の間に複数の針状ころ3,3,・・・を配置したラジアル軸受を介在させて連結されている。
【0027】
金属製のシェルカップ2も、従来例と同様の円筒部2aと底部2bからなる有底円筒体であり、板材をプレスして形成されている。また、このシェルカップ2は、その円筒部2aの外周面2xを嵌合孔4xに圧入して、ヨーク4の二又状端部4aに固定されている。そして、シェルカップ2の内周面2yと軸部1aの外周面1xとによって形成される環状空間の中には、複数の針状ころ3が配置され、これら針状ころ3の潤滑を維持するためのグリース等の潤滑剤(図示省略)が充填されている。なお、軸部1aの肩部には、シェルカップ2の外周面2xに摺接して泥水等の浸入を防止する樹脂製のダストシール11が配置されている。
【0028】
本発明における自在継手の特徴は、シェルカップ2の開口を密封する環状のシール部材5が、金属製の環状体6を介して十字軸1の軸部外周1xに嵌め入れられている点である。このシール部材5は、例えばゴム等の弾性材料を用いて形成されており、そのリップ部(ラジアルリップ5a,サイドリップ5b)が、環状の基体5cからシェルカップ2の開口に向かって傾斜する形状に形成されている。また、これらリップ5a,5bは、その先端がシェルカップ2の内周面2yに摺接するように形成されている。
【0029】
この構成により、シール部材5は、シェルカップ2のヨーク4の嵌合孔4xへの圧入による影響を受けず、シェルカップ2組み付け時の内圧の上昇や運転時のころ3の突き上げによるシール部材5の脱落がない。
【0030】
また、金属製環状体6には、十字軸1の軸部1aに設けられている円周段部1bに係合する折り返し6aが形成されている。従って、シール部材5は、この金属製環状体6を介して、寸法精度の高い十字軸1の軸部外周面1xに嵌合固定されることから、軸方向の位置決めが容易で、かつ、シェルカップ2をヨーク4へ圧入する時にも位置ずれが発生し難く、リップ5a,5b先端のシェルカップ内周面2yに対する接圧が安定する。なお、金属製環状体6は、折り返し6aを形成することなく、十字軸1の軸部1aに嵌合固定しても良い。
【0031】
更に、シール部材2のリップ部を、シェルカップ2の開口に向かって傾斜して形成したことにより、十字軸1に対してシェルカップ2を被せる場合でも、シール部材5の各リップ5a,5bが反転させられる恐れがない。
【0032】
以上の構成によって、本発明の自在継手は、グリース等のシール効果を確実に再現することが可能で、その漏れを長期に渡り効果的に防止し、自在継手の寿命を向上させることができる。
【0033】
なお、本発明におけるシール部材5の材料や構成は、上記での例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、リップ部の形状や数は、自在継手が使用される環境に応じて変更すれば良く、介在配置される金属製環状体6に代わり、シール部材5に芯金等を設けても良い。また、ダストシールド11の材料も、特に樹脂に限定されるものではない。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明の自在継手によれば、従来品に比してコストの上昇を招くことなく、シェルカップ組み付け時の内圧の上昇や運転時のころの突き上げによるシール部材の脱落を防止することができる。従って、軽量・コンパクトで高負荷容量でありながら、グリース等の漏れを長期に渡り効果的に防止し、長寿命な自在継手を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における自在継手の構造を示す一部断面図である。
【図2】本発明の自在継手おける軸受部の構造を示す拡大断面図である。
【図3】シェル状軸受カップを用いた従来の自在継手の構造を示す一部断面図である。
【図4】シェル状軸受カップを用いた従来の自在継手における軸受部の構造を示す拡大断面図である。
【図5】削り出しタイプの軸受カップを用いた従来の自在継手の構造を示す一部断面図である。
【符号の説明】
1 十字軸
1a 軸部
1b 円周段部
1x 軸部外周面
2 シェルカップ(軸受カップ)
2a 円筒部
2b 底部
2x 外周面
2y 内周面
3 針状ころ
4 ヨーク
4a 二又状端部
4b 外側端部
4x 嵌合孔
5 シール部材
5a ラジアルリップ(メインリップ)
5b サイドリップ
5c 基体
6 金属製環状体
6a 折り返し
10 シール部材
11 ダストシールド
12 軸受カップ
【発明の属する技術分野】
本発明は、自在継手に関し、更に詳しくは、小型軽量でありながら負荷容量が大きく、自動車のプロペラシャフト等に適した自在継手に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車や各種産業機械に使用される自在継手(ユニバーサルジョイント)として、十字軸を用いた十字軸自在継手が使用されている。中でも、自動車のプロペラシャフト等に用いられる自在継手は、近年のエンジンの出力向上により、トルク容量(負荷容量)を向上させることが求められてきている。
【0003】
そこで、十字軸の軸部に被せる軸受カップに、従来の肉厚の削り出しタイプに代えて、鋼板をプレス成形したシェル状軸受カップ(シェルカップ)を使用することにより、この軸受カップの外径を増大させることなく、自在継手のトルク容量を向上させる提案がなされている(例えば、特許文献1等を参照。)。
【0004】
図3は、このようなシェルタイプの軸受カップを用いた自在継手の構造を示す一部断面図であり、図4は、この自在継手における軸受部の拡大断面図である。なお、参考として、従来の削り出しタイプの軸受カップを使用した自在継手を図5に示す。
【0005】
この自在継手は、各軸部1aが四方に突出した十字軸1によって、二又状となった一対のヨーク4,4を相互に連結した構造である。これら各ヨーク4の両外側端部4bには、溶接、スプラインあるいはフランジ等により、トルク伝達部材(プロペラシャフト,トランスミッションのアウトプットシャフト等)がそれぞれ連結されている。また、これらヨーク4の二又状となった端部4a,4aには、十字軸1の各軸部1aを支持するための嵌合孔4xがそれぞれ形成されており、十字軸1とヨーク4とは、十字軸1の軸部1aを内輪とし、金属製の軸受カップ(シェルカップ)2を外輪として、これら内外輪の間に複数の針状ころ3,3,・・・を配置したラジアル軸受を介在させて連結されている。
【0006】
シェルカップ2は、図4のように、円筒部2aと底部2bからなる有底円筒体であり、板材をプレスして形成されている。また、このシェルカップ2は、その円筒部2aの外周面2xを嵌合孔4xに圧入して、ヨーク4の二又状端部4aに固定されているとともに、この嵌合孔4xの内周をかしめることによって、軸方向の位置決めと抜け止めがなされている。
【0007】
シェルカップ2の内周面2yと軸部1aの外周面1xとによって形成される環状空間の中には、複数の針状ころ3が配置されている。また、この環状空間内には、これら針状ころ3の潤滑を維持するためのグリース等の潤滑剤(図示省略)が充填されているとともに、シェルカップ2の開口は、環状のシール部材10により密封されている。
【0008】
このシール部材10は、一般にリップ部(ラジアルリップ10a(メインリップ),サイドリップ10b)を有するゴム等からなる環状の基体10cと、この基体10cをシェルカップ2の内周面2yに固定する芯金10dとから構成されている。これらラジアルリップ10aおよびサイドリップ10bは、それぞれ十字軸軸部1aの肩部(外周面1x)に当接することで、このシェルカップ2内のグリースの漏れを防止するとともに、外部からの水分や塵埃等の浸入を防止している。なお、このシール部材10の更に外側には、シェルカップ2の外周面2xに摺接して泥水等の浸入を防止するダストシールド11が配置されている場合もある。
【0009】
以上の構造によって、この自在継手は、図5のような肉厚の削り出しタイプの軸受カップ12を使用した自在継手に比して、軸受カップの外径寸法を変更することなく、十字軸軸部の外径を大きくしたり、ころの数を増やしたりあるいはころ径を大きくしたりすることが可能となる。従って、自在継手全体のサイズをそのままに、トルク容量を向上させることができる。
【0010】
ところで、以上のような構成の自在継手においては、シェルカップ2の円筒部2aの肉厚が薄いため、シェルカップ2をヨーク4の嵌合孔4xに嵌め入れた場合、このシェルカップ2のシール部材10に対する保持力が低下してしまい、シェルカップ2の組み付け時の内圧の上昇や運転時のころ3の突き上げによって、このシール部材10が、シェルカップ2から抜け出してしまうという問題があった。
【0011】
そこで、シェルカップ2の開口近傍に配置されるシール部材10の抜けを防止する手段として、図4のP部に示すように、シェルカップ円筒部2aの端部をかしめて、シール部材10を固定する方法が取られる場合がある。
【0012】
また、シール部材の脱落を防止する別の手段として、本出願人らは、シール部材の芯金の外周面を先端に向かって肉厚が減少する傾斜面に形成し、この芯金の傾斜面と軸受カップの開口端部内周面との間の断面略三角状の空間に、くさび部材を圧入してシール部材を固定する方法(特許文献2)、あるいは、軸受カップの開口端部外周面を、その肉厚が開口端に向かって徐々に薄くなる傾斜面に形成し、シール部材の芯金とこの芯金が接触する部位の軸受カップとの間のしめしろの増大を防ぐことにより、シール部材の変形を抑えて抜けを防止する方法(特許文献3)を提案している。
【0013】
【特許文献1】特開2001−146924号公報
【特許文献2】特開2002−98163号公報
【特許文献3】特開2002−106594号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のような従来のシール部材の脱落防止手段は、部材の加工や組立の複雑化を招き、自在継手のコストアップ要因となってしまっていた。
【0015】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、コストの上昇を招くことなくシール部材の脱落を防止することができ、小型・軽量で長寿命な自在継手を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、板材をプレスすることにより形成され、ヨークの二又状端部に設けられた孔に嵌め入れられたシェル状軸受カップと、この軸受カップの内周に配置された複数の針状ころとによって、十字軸の各軸部を回転自在に支持する自在継手において、前記十字軸の各軸部の外周に、リップ部が前記軸受カップの内周面に摺接する環状シール部材が配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明は、シェル状の軸受カップを用いた自在継手において、グリース等を封入するシール部材を、十字軸の軸部に嵌合させて固定することにより、所期の目的を達成しようとするものである。
【0018】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、従来の自在継手において、シェルカップ内周の開口端近傍に配置されていたシール部材を、十字軸の軸部外周に配置することにより、このシール部材はシェルカップのヨークへの圧入による影響を受けず、所要の位置に固定されることとなる。従って、本発明の自在継手は、このシェルカップのヨークへの圧入によっても、シール部材に対する保持力の低下がなく、シェルカップ組み付け時の内圧の上昇や運転時のころの突き上げによるシール部材の脱落を防止することができる。
【0019】
また、このシール部材の固定方法によれば、シール部材の軸方向位置のずれや、十字軸とシェルカップの間の軸方向すき間のばらつき等による影響を受けることなく、シール部材のリップ部がシェルカップ内周面に接する接圧が安定する。従って、本発明の自在継手は、グリース等の漏れを長期に渡り効果的に防止することが可能で、その寿命を向上させることができる。
【0020】
更にまた、このシール部材の固定方法は、従来のシェルカップの内周をかしめる方法や、シェルカップの開口端部外周面を傾斜面に形成する方法、あるいは、シール部材の芯金の外周面を傾斜面に形成し、別のくさび部材を圧入してシール部材を固定する方法等に比べ、製造コストの上昇を最小限に抑えることができるというメリットもある。
【0021】
ここで、シール部材のリップ部の形状としては、リップ部がその根本部から前記軸受カップの開口端側に向かって傾斜する形が好ましい。(請求項2)
【0022】
すなわち、シール部材のリップ部を、シェルカップ開口に向かって傾斜して形成することにより、十字軸に対してシェルカップを被せる場合、シェルカップの挿入方向とこのリップの傾斜方向が一致することとなる。従って、本発明の自在継手は、シェルカップを被せる工程においても、シール部材の各リップが反転させられる恐れがなく、グリース等のシール効果を確実に発揮することができる。
【0023】
また、前記シール部材は、金属製環状体を介して、前記軸部に嵌め入れても良い。(請求項3)
【0024】
すなわち、本発明における自在継手は、十字軸軸部に嵌合されるシール部材の基体の内周面に、金属製の環状体を介在配置することにより、十字軸の軸部に対するシール部材の位置決めを、より正確に行なうことができるようになる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつこの発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明における自在継手の構造を示す一部断面図であり、図2は、この自在継手における軸受部の構造を示す拡大断面図である。なお、従来例と同様の機能を有する構成部材には、同じ符号を付記する。
【0026】
この自在継手も、基本的な構造は従来例と同様であり、各軸部1aが四方に突出した十字軸1によって、二又状となった一対のヨーク4,4を相互に連結して構成されている。これら各ヨーク4の二又状となった端部4a,4aには、十字軸1の各軸部1aを支持するための嵌合孔4xがそれぞれ設けられており、これら十字軸1とヨーク4とは、十字軸1の軸部1aを内輪とし、金属製の軸受カップ(シェルカップ)2を外輪として、これら内外輪の間に複数の針状ころ3,3,・・・を配置したラジアル軸受を介在させて連結されている。
【0027】
金属製のシェルカップ2も、従来例と同様の円筒部2aと底部2bからなる有底円筒体であり、板材をプレスして形成されている。また、このシェルカップ2は、その円筒部2aの外周面2xを嵌合孔4xに圧入して、ヨーク4の二又状端部4aに固定されている。そして、シェルカップ2の内周面2yと軸部1aの外周面1xとによって形成される環状空間の中には、複数の針状ころ3が配置され、これら針状ころ3の潤滑を維持するためのグリース等の潤滑剤(図示省略)が充填されている。なお、軸部1aの肩部には、シェルカップ2の外周面2xに摺接して泥水等の浸入を防止する樹脂製のダストシール11が配置されている。
【0028】
本発明における自在継手の特徴は、シェルカップ2の開口を密封する環状のシール部材5が、金属製の環状体6を介して十字軸1の軸部外周1xに嵌め入れられている点である。このシール部材5は、例えばゴム等の弾性材料を用いて形成されており、そのリップ部(ラジアルリップ5a,サイドリップ5b)が、環状の基体5cからシェルカップ2の開口に向かって傾斜する形状に形成されている。また、これらリップ5a,5bは、その先端がシェルカップ2の内周面2yに摺接するように形成されている。
【0029】
この構成により、シール部材5は、シェルカップ2のヨーク4の嵌合孔4xへの圧入による影響を受けず、シェルカップ2組み付け時の内圧の上昇や運転時のころ3の突き上げによるシール部材5の脱落がない。
【0030】
また、金属製環状体6には、十字軸1の軸部1aに設けられている円周段部1bに係合する折り返し6aが形成されている。従って、シール部材5は、この金属製環状体6を介して、寸法精度の高い十字軸1の軸部外周面1xに嵌合固定されることから、軸方向の位置決めが容易で、かつ、シェルカップ2をヨーク4へ圧入する時にも位置ずれが発生し難く、リップ5a,5b先端のシェルカップ内周面2yに対する接圧が安定する。なお、金属製環状体6は、折り返し6aを形成することなく、十字軸1の軸部1aに嵌合固定しても良い。
【0031】
更に、シール部材2のリップ部を、シェルカップ2の開口に向かって傾斜して形成したことにより、十字軸1に対してシェルカップ2を被せる場合でも、シール部材5の各リップ5a,5bが反転させられる恐れがない。
【0032】
以上の構成によって、本発明の自在継手は、グリース等のシール効果を確実に再現することが可能で、その漏れを長期に渡り効果的に防止し、自在継手の寿命を向上させることができる。
【0033】
なお、本発明におけるシール部材5の材料や構成は、上記での例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、リップ部の形状や数は、自在継手が使用される環境に応じて変更すれば良く、介在配置される金属製環状体6に代わり、シール部材5に芯金等を設けても良い。また、ダストシールド11の材料も、特に樹脂に限定されるものではない。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明の自在継手によれば、従来品に比してコストの上昇を招くことなく、シェルカップ組み付け時の内圧の上昇や運転時のころの突き上げによるシール部材の脱落を防止することができる。従って、軽量・コンパクトで高負荷容量でありながら、グリース等の漏れを長期に渡り効果的に防止し、長寿命な自在継手を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における自在継手の構造を示す一部断面図である。
【図2】本発明の自在継手おける軸受部の構造を示す拡大断面図である。
【図3】シェル状軸受カップを用いた従来の自在継手の構造を示す一部断面図である。
【図4】シェル状軸受カップを用いた従来の自在継手における軸受部の構造を示す拡大断面図である。
【図5】削り出しタイプの軸受カップを用いた従来の自在継手の構造を示す一部断面図である。
【符号の説明】
1 十字軸
1a 軸部
1b 円周段部
1x 軸部外周面
2 シェルカップ(軸受カップ)
2a 円筒部
2b 底部
2x 外周面
2y 内周面
3 針状ころ
4 ヨーク
4a 二又状端部
4b 外側端部
4x 嵌合孔
5 シール部材
5a ラジアルリップ(メインリップ)
5b サイドリップ
5c 基体
6 金属製環状体
6a 折り返し
10 シール部材
11 ダストシールド
12 軸受カップ
Claims (3)
- 板材をプレスすることにより形成され、ヨークの二又状端部に設けられた孔に嵌め入れられたシェル状軸受カップと、この軸受カップの内周に配置された複数の針状ころとによって、十字軸の各軸部を回転自在に支持する自在継手において、
前記十字軸の各軸部の外周に、リップ部が前記軸受カップの内周面に摺接する環状シール部材が配置されていることを特徴とする自在継手。 - 前記シール部材のリップ部が、その根本部から前記軸受カップの開口端側に向かって傾斜する形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自在継手。
- 前記シール部材が、金属製環状体を介して前記軸部に嵌め入れられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自在継手。
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-
2003
- 2003-07-31 JP JP2003204571A patent/JP2005048824A/ja active Pending
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