JP2005048692A - 内燃機関の燃焼制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 排気浄化装置の状態に応じた排気空燃比のリッチ化及び/又は排気温度の上昇要求を、スモークを増加させることなく、然も、高い燃焼安定性で実現できるようにする。
【解決手段】 少なくとも上死点近傍で1回行われる予備燃焼と、該予備燃焼が全て終了した後に開始され主トルクを発生させる主燃焼とからなる分割リタード燃焼により、排気空燃比のリッチ化及び/又は排気温度の上昇を図る。また、前記分割リタード燃焼を行うときに、圧縮端温度が目標温度になるように、排気還流量(吸入新気量),圧縮比をフィードバック制御する。
【選択図】 図25

Description

本発明は、予備燃焼と主燃焼とからなる燃焼モードで運転される内燃機関の燃焼制御装置に関する。
従来、ディーゼルエンジンにおいて、触媒の昇温を促すときに、要求出力に応じて決定された燃料噴射量を、燃料噴射による燃焼が継続するように、圧縮上死点近傍で複数回に分割して噴射させる構成が知られている(特許文献1参照)。
特開2000−320386号公報
ところで、上記のように分割して噴射された燃料が継続して燃焼する構成では、2回目以降の噴射は、前回に噴射された燃料の火炎中に燃料を噴射することになり、2回目以降に噴射された燃料は、拡散燃焼主体の燃焼となる。
前記拡散燃焼主体の燃焼の場合、空燃比をリッチ化していくと、部分的に空燃比が大きくリッチ化して、スモークが多く発生してしまうことになる。
このため、前記従来の燃焼制御によって、例えば排気空燃比リッチ化して排気浄化装置の再生を図る場合には、多くのスモークが発生してしまうという問題を生じる。
本願発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、排気空燃比のリッチ化及び/又は排気温度の上昇を、スモークを増加させることなく、然も、高い燃焼安定性で実現できる内燃機関の燃焼制御装置を提供することを目的とする。
そのため本発明では、少なくとも上死点近傍で1回行われる予備燃焼と、該予備燃焼が全て終了した後に開始され主トルクを発生させる主燃焼とからなる燃焼モードでの運転を行う構成であって、前記燃焼モードによる運転時に、圧縮端温度の目標値を設定すると共に、実際の圧縮端温度を検知し、前記実際の圧縮端温度を前記目標値に制御する構成とした。
かかる構成によると、前記燃焼モードでは、予備燃焼が終了した後に主燃焼が開始することで、前記主燃焼を予混合燃焼主体の燃焼とすることができ、リッチ化によるスモークの悪化を抑制できる。
また、予備燃焼により筒内温度が高められるので、主燃焼の発生時期をリタードすることができ、これにより排気温度を高くすることも可能である。
従って、例えば排気浄化装置の状態に応じて排気空燃比のリッチ化及び/又は排気温度の昇温が要求されるときに、前記燃焼モードに切り替えることで、スモークを悪化させることなく、前記要求を実現できる。
更に、目標の圧縮端温度を設定し、実際の圧縮端温度を前記目標値に制御するので、圧縮端温度が高すぎることによるスモークの発生、及び、圧縮端温度が低すぎることによる失火の発生を防止することができる。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。
図1は、車両用内燃機関としてのディーゼルエンジン1の燃焼制御装置を示すシステム構成図である。
エンジン1の吸気通路2の上流に、ターボチャージャ3のコンプレッサ3aが配置されている。
吸入空気は、前記コンプレッサ3aによって過給された後、インタークーラ4で冷却され、吸気絞り弁6を通過した後、各気筒の燃焼室内へ流入する。
燃料は、燃料噴射ポンプ8により高圧化されてコモンレール9に送られ、各気筒の燃料噴射弁10から燃焼室内へ直接噴射される。
即ち、前記燃料噴射ポンプ8,コモンレール9及び燃料噴射弁10によって、コモンレール式燃料噴射装置が構成される。
そして、燃焼室内に流入した空気と燃焼室内に噴射された燃料とによって生成される混合気は、圧縮着火により燃焼し、排気は排気通路12へ排出される。
前記排気通路12へ排出された排気の一部は、排気還流制御弁19が介装される排気還流通路11を介して吸気側へ還流される。
排気の残りは、ターボチャージャ3のタービン3bを回転駆動し、該タービン3bと同軸に設けられる前記コンプレッサ3aが吸気を過給する。
前記排気通路12のタービン3bの下流には、NOxトラップ触媒13及びディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter;以下「DPF」という)14が、上流側からこの順に配設される。
前記NOxトラップ触媒13は、排気空燃比が理論空燃比よりもリーンのときに、排気中のNOxをトラップし、排気空燃比が理論空燃比よりもリッチのときにNOxを脱離して浄化する触媒である。
尚、前記NOxトラップ触媒13には、酸化触媒(Ptなどの貴金属)を担持させて、HC,COを酸化する機能を持たせてある。
前記DPF14は、排気中の微粒子(PM:Particulate Matter)を捕集するトラップ機能を有する。
尚、前記DPF14にも酸化触媒(貴金属)を担持させて、排気成分(HC,CO)を酸化する機能を持たせてある。
但し、前記NOxトラップ触媒13とDPF14との配置関係を逆にし、前記DPF14の下流側に前記NOxトラップ触媒13を配置することが可能で、また、前記DPF14とNOxトラップ触媒13とを一体に構成することができる。
また、本実施形態のエンジン1には、可変圧縮比機構31が設けられている。
前記可変圧縮比機構31としては、例えば、特開2003−097288号公報に開示されるようなピストンとクランクシャフトとを複数のリンクで連係した複リンク式の可変圧縮比機構を用いることができる。
前記可変圧縮比機構31を、図30に示す。
図30において、シリンダ内に配設されるピストン101には、アッパリンク102の一端がピストンピンを介して回転可能に連結されている。
前記アッパリンク102の他端は、第1連結ピン103を介してロアリンク104に回転可能に連結されている。
前記ロアリンク104は、クランクシャフトのクランクピン105に回転可能に取り付けられていると共に、コントロールリンク106の一端が第2連結ピン107を介して回転可能に連結されている。
前記コントロールリンク106の他端は、制御軸108の偏心カム(図示せず)に回転可能に取り付けられている。
従って、機関運転状態に応じて制御軸108をモータ109により回転駆動すると、偏心カムからなるコントロールリンク106の支持点の位置が変化する。
この結果、コントロールリンク106によるロアリンク104の運動拘束条件が変化して、ピストン上死点位置、ひいては圧縮比が変化する。
一方、エンジンコントロールユニット(以下「ECU」と称する)25には、エンジン1の制御のため、各種センサからの検出信号が入力される。
前記各種センサとしては、エンジン回転速度Neを検出する回転速度センサ(クランク角センサ)20、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ21、前記NOxトラップ触媒13の温度を検出する触媒温度センサ22、前記DPF14の入口側で排気圧力を検出する排気圧力センサ17、DPF14の温度を検出するDPF温度センサ23、DPF14出口側で排気空燃比を検出する空燃比センサ16、コモンレール9の燃料圧力を検出する燃料圧力センサ24、燃料温度を検出する燃料温度センサ28、吸気圧力センサ26、排気還流が行われる吸気コレクタ部での吸気温度を検出する吸気温度センサ29が設けられている。
尚、前記NOxトラップ触媒13及びDPF14の温度は、これらの下流側に排気温度センサを設け、該排気温度センサで検出される排気温度に基づいて推定することができる。
前記ECU25は、前記各種センサの検出信号に基づいて、燃料噴射量及び噴射時期を制御するための燃料噴射弁10への燃料噴射指令信号、吸気絞り弁6への開度指令信号、排気還流制御弁19への開度指令信号等を出力する。
また、ECU25は、前記NOxトラップ触媒13,DPF14(排気浄化装置)の再生処理を行う。
前記再生処理として、DPF14に堆積した微粒子PMを高温かつリーン雰囲気で酸化させる処理、NOxトラップ触媒13に堆積したNOxをリッチ雰囲気での脱離・還元する処理、NOxトラップ触媒13の硫黄被毒を高温かつリッチ雰囲気で解除する処理が行われる。
本実施形態のエンジン1では、リーン条件での通常運転において、初期の急激な燃焼を緩和するために、主噴射の前に予備噴射を行う構成としてある。
ここで、予備噴射時期は40〜10°BTDC、予備噴射量は1〜3mm3/st、主噴射時期は10〜−5°BTDC程度に設定され、予備噴射と主噴射との間隔は10〜30°CA(クランク角)程度に設定される。
一方、排気空燃比のリッチ化及び/又は高排気温度が要求される前記DPF14及びNOxトラップ触媒13の再生時には、前記通常の燃焼モードとは異なる再生用の燃焼モードである分割リタード燃焼に切り替えるよう構成される。
前記通常運転時の燃焼モードにおける予備噴射の設定では、空燃比をリッチ化させるために吸気量を絞ると、筒内の圧縮端温度が低下してしまう。
このため、リッチ化と同時に排気温度を上げるべく主噴射の噴射時期をリタードさせようとしても、要求通りにリタードさせることができず、例えば、硫黄被毒解除に要求される、空気過剰率λが1以下でかつ排気温度が600℃以上での運転を実現することができない。
そこで、本実施形態では、DPF再生等が要求されるときに、前記通常の燃焼モードとは異なる分割リタード燃焼に切り替えて、要求のリッチ空燃比及び/又は高排気温度を実現できるようにしてある。
前記分割リタード燃焼では、少なくとも上死点近傍で1回行われる予備燃焼と、該予備燃焼が全て終了した後に開始され主トルクを発生させる主燃焼とが行われるように、燃料噴射が制御される。
図2は、前記分割リタード燃焼における燃料噴射パターン及び熱発生率を示す。
前記分割リタード燃焼では、まず圧縮行程で燃料を噴射し、圧縮上死点(TDC)近傍における筒内温度を高めるための予備燃焼を行わせる。
前記圧縮行程での予備燃焼用の燃料噴射における噴射量は、主燃焼の燃料噴射時の筒内温度が、自己着火可能な温度を上回るために必要な量とする。
上記上死点近傍の予備燃焼によって筒内温度を高めることで、主燃焼のリタードを進めることができる。
尚、分割リタード燃焼における予備燃焼は、1サイクルにおいて複数回行われるようにしてもよく、複数回の予備燃焼のうち少なくとも1回の燃焼が圧縮上死点近傍で起こるように燃料噴射を行う。
また、分割リタード燃焼における予備燃焼は、エンジン1の運転状態(エンジン回転速度Ne,燃料噴射量など)から筒内の圧縮端温度を推定して、この圧縮端温度に応じて、予備燃焼用の燃料噴射量及び/又は噴射時期を変更するようにしてもよい。
一方、分割リタード燃焼では、前記予備燃焼が終了してから主燃焼が開始するように、主燃焼のための燃料を上死点以降に噴射する。
前記主燃焼のための燃料噴射時期は、主燃焼の燃焼開始時期が、予備燃焼の燃焼開始時期からクランク角度で20度以上離れた時期になるように制御される。
これにより、主燃焼の予混合燃焼割合を高くすることができ、スモークの排出を抑制することができる。
また、分割リタード燃焼における主燃焼の燃焼終了時期は、圧縮上死点からクランク角度で50度以上離れた時期に制御される。
これら予備燃焼及び主燃焼からなる分割リタード燃焼では、予備燃焼によって主燃焼のリタード限界を広げることで、目標の排気温度への制御性を向上させることができる。
また、予備燃焼が終了した後に主燃焼が開始するようにすることで、主燃焼の予混合燃焼割合が増し、空燃比のリッチ化によるスモークの増加を抑制することができる。
図3は、前記分割リタード燃焼の主燃焼時期に対する排気ガスの状態を示した図であり、(イ)は排気ガス温度、(ロ)はスモーク濃度、(ハ)はCO(一酸化炭素)濃度、(ニ)はHC濃度を示している。
この図に示すように、主燃焼の時期がリタードされると、それだけ主燃焼の予混合燃焼割合が増えるため、スモークが抑制され、同時に、主燃焼のリタードに伴って排気温度が上昇する。
図4は、前記主燃焼のための目標燃料噴射時期を示す図であり、横軸はエンジン回転速度Ne、縦軸は燃料噴射量Qを示している。
この図に示すように、低負荷・低回転域では、目標排温を達成するために主燃焼をより大きくリタードする必要があり、1回の予備燃焼では、主燃焼の燃料噴射時の筒内温度を高く維持できないこともあり得る。
その場合には、図5に示すように、それぞれの熱発生が重ならないように予備燃焼を複数回行うようにすることで、低負荷・低回転条件であっても要求の高排温を実現できるタイミングにまで主燃焼をリタードさせることが可能である。
次に、前記DPF14及びNOxトラップ触媒13の再生制御の詳細を、図6〜図17のフローチャートに基づいて説明する。
図6は、再生制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
ステップS1では、エンジン回転速度Ne、アクセル開度APO、NOxトラップ触媒13の温度、DPF14の入口側及び出口側の排気圧力、DPF14の温度などの運転状態を読み込む。
また、ステップS1では、エンジン回転速度Neとアクセル開度APOとをパラメータとするマップから演算されている燃料噴射量Qを読み込む。
ステップS2では、前記NOxトラップ触媒13が活性状態(暖機状態)であるか否かを判定する。
この判定は、NOxトラップ触媒13出口の排気温度センサ15の出力信号に基づいて算出される排気温度Tが、NOxトラップ触媒13の活性開始時の所定排気温度T5より高いか否かにより行う。
前記排気温度Tが所定排気温度T5より高い場合には、NOxトラップ触媒13が活性状態であると判断し、ステップS3へ進む。
一方、排気温度Tが所定排気温度T5以下である場合には、NOxトラップ触媒13が非活性状態であると判定し、図16のステップS1001へ移行する。
前記ステップS1001以降では、NOxトラップ触媒13の活性を促進させる制御が行われるが、係る制御については後で説明する。
ステップS3では、NOxトラップ触媒13に堆積されたNOxの量を推定する。
前記NOx量は、エンジン回転速度Neや車両走行距離の積算値から推定することができる。
尚、NOx量の推定結果は、NOxの脱離・還元処理が完了した時点(硫黄被毒解除の実施によりNOxの脱離・還元処理が同時になされた場合を含む)でリセットされる。
ステップS4では、NOxトラップ触媒13に堆積した硫黄分(SOx)の量を推定する。
前記硫黄堆積量の推定は、前述のNOx堆積量と同様に、エンジン回転速度Neや走行距離の積算値から推定することができ、硫黄被毒解除が完了した時点で推定結果はリセットされる。
ステップS5では、DPF14に堆積している微粒子PMの量を推定する。
前記微粒子PMの堆積量は、排気圧力センサ17により検出されるDPF14の入口側排気圧力と、現在の運転状態(エンジン回転速度Ne,燃料噴射量)に応じた基準排気圧力とを比較することで推定される。
尚、前回のDPF14の再生時からの走行距離又はエンジン回転速度Neの積算値から前記微粒子PMの堆積量を推定させることもでき、更に、走行距離又はエンジン回転速度Neの積算値と、排気圧力とのを組み合わせから、前記微粒子PMの堆積量を推定することも可能である。
ステップS6では、DPF14の再生モード(微粒子PMの酸化処理)中であるか否かを示すregフラグを判定する。
そして、regフラグ=0であってDPF14の再生モード中でない場合には、ステップS7へ進む。
一方、regフラグ=1であってDPF14の再生モード中である場合には、図7のフローチャートに示すDPF再生モードの処理を行う。
ステップS7では、NOxトラップ触媒13の硫黄被毒解除モード中であるか否かを示すdesulフラグを判定する。
そして、desulフラグ=0であって硫黄被毒解除モード中でない場合には、ステップS8へ進む。
一方、desulフラグ=1であって硫黄被毒解除モード中である場合には、図8のフローチャートに示す硫黄被毒解除モードの処理を行う。
ステップS8では、NOxトラップ触媒13における堆積NOxを脱離・還元処理するために、排気空燃比を一時的にリッチ化するリッチスパイクモード中であるか否かを示すspフラグを判定する。
そして、spフラグ=0であってリッチスパイクモード中でない場合には、ステップS9へ進む。
一方、spフラグ=1であってリッチスパイクモード中である場合には、図9のフローチャートに示すリッチスパイクモードの処理を行う。
ステップS9では、DPF再生モード又は硫黄被毒解除モード後の溶損防止モード中であるか否かを示すrecフラグを判定する。
そして、recフラグ=0であって溶損防止モード中でない場合には、ステップS10へ進む。
一方、recフラグ=1であって溶損防止モード中である場合には、図10のフローチャートに示す溶損防止モードの処理を行う。
ステップS10では、DPF14の再生要求が出ているか否かを示すrq−DPFフラグを判定する。
そして、rq−DPFフラグ=0であってDPF再生要求が出ていない場合には、ステップS11へ進む。
一方、rq−DPFフラグ=1であってDPF再生要求が出ている場合には、図11のフローチャートに示す、優先順位に従った再生モードへの移行処理を行う。
ステップS11では、NOxトラップ触媒13の硫黄被毒解除要求が出ているか否かを示すrq−desulフラグを判定する。
そして、rq−desulフラグ=0であって被毒解除要求が出ていない場合には、ステップS12へ進む。
一方、rq−desulフラグ=1であって被毒解除要求が出ている場合には、図12のフローチャートに示す、優先順位に従った再生モードへの移行処理を行う。
ステップS12では、ステップS4において算出したDPF14におけるPM堆積量が、再生が必要な所定量PM1に達しているか否か、即ち、DPF再生時期になったかを判定する。
そして、PM堆積量<PM1であってDPF再生時期でないと判定された場合には、ステップS13へ進む。
一方、PM堆積量≧PM1であってDPF再生時期であると判定された場合には、図13のフローチャートのステップS701へ進み、rq−DPFフラグに1をセットして、DPF再生要求を出す。
ステップS13では、ステップS4において算出したNOxトラップ触媒13の硫黄堆積量が所定量S1(被毒解除要求量)に達して、再生時期になったか否か、即ち、硫黄被毒解除要求の要否を判定する。
硫黄堆積量が所定量S1未満である場合には、硫黄被毒解除が不要と判定し、ステップS14へ進む。
一方、硫黄堆積量Sが所定量S1以上である場合には、硫黄被毒解除が必要と判定し、図14のフローチャートのステップS801へ進み、rq−desulフラグ(硫黄被毒解除要求フラグ)に1をセットして、硫黄被毒解除要求を出す。
ステップS14では、ステップS3において算出したNOxトラップ触媒13のNOx堆積量が所定量NOx1(NOx脱離・還元の要求レベル)に達して、NOxの脱離・還元処理時期になったか否かを判定する。
NOx堆積量が所定量NOx1未満である場合には、そのまま本ルーチンを終了させる。
一方、NOx堆積量が所定量NOx1以上である場合には、NOxの脱離・還元処理が必要であると判定し、図15のフローチャートのステップS901においてrq−spフラグに1をセットして、NOxの脱離・還元処理の要求を出す。
次に、前記ステップS6で、regフラグ=1と判定されたときのDPF再生処理を、図7のフローチャートに従って詳細に説明する。
ステップS101では、DPF再生要求に基づいて、燃焼を通常のリーン燃焼から、少なくとも上死点近傍で1回行われる予備燃焼と、該予備燃焼が全て終了した後に開始され主トルクを発生させる主燃焼とからなる分割リタード燃焼に切り替える。
燃焼モード切り替えの指示が出た場合は、図17のフローチャートに示すようにして燃焼の切り替えを行う。
以下、燃焼切り替えの指示がでた場合はすべて、図17のフローチャートに示す処理で燃焼切り替えが行われるものとする。
ステップS1101では、図18に示すように、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに応じて予備燃焼のための燃料噴射量を設定し、かつ、図19に示すように、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに応じて予備燃焼のための噴射時期を設定し、前記燃料噴射量を前記噴射時期に噴射させ、予備燃焼を発生させる。
次いで、ステップS1102では、図4に示すように、そのときのエンジン回転速度Ne及び燃料噴射量Qに応じて主燃焼のための噴射時期を設定し、該噴射時期に向けて徐々に主燃焼のための噴射時期をリタードさせる。
ここで、図20に示すように、主燃焼のための噴射時期がリタードされるほどより大きく噴射量を増量補正する補正係数を、通常の燃料噴射量に積算した量を前記主燃焼のための噴射量とし、主燃焼のための噴射時期がリタードされるに従って燃料を増量し、通常燃焼モード時と同等のトルクが得られるようにする。
ステップS102では、図21に示すように、PM堆積量に応じてDPF14の再生時における目標空燃比を設定する。
前記目標空燃比は、PM堆積量が多きときほどリッチに設定され、多量の微粒子が急激に酸化されることがないようにしてある。
ここで、吸気絞り弁6及び/又は排気還流制御弁19による新気量,排気還流量の調整によって前記目標空燃比に制御される。
尚、目標空燃比が理論空燃比もしくはそれに近い値まで小さくなった場合は、吸気絞りによるポンピングロスが生じるため、図22に示すように目標空燃比に応じた補正係数で主燃焼のための燃料噴射量を補正する。
ステップS103では、圧縮端温度の制御を行うが、該圧縮端温度制御の詳細は、後で詳細に説明する。
ステップS104では、DPF14の温度が再生中の目標下限値T22以上であるか否かを判定する。
DPF温度が目標下限値T22以上である場合には、ステップS105へ進む。
一方、DPF温度が目標下限値T22未満である場合には、ステップS111へ進む。
ステップS111では、DPF温度を目標下限値T22以上に上昇させるべく、主燃焼の燃料噴射時期をリタードする。
次のステップS112では、燃料噴射時期のリタードによるトルク落ちを補償するためのトルク補正(主燃焼用噴射量の増量補正)を行う。
ステップS105では、DPF14の温度が再生中の目標上限値T21以下であるか否かを判定する。
DPF温度が目標上限値T21以下である場合には、ステップS106へ進む。
一方、DPF温度が目標上限値T21を越えている場合には、ステップS113へ進み、主燃焼の燃料噴射時期を進角して、これにより排気温度が低下してDPF温度が目標上限値T21以下になるようにする。
次のステップS114では、燃料噴射時期の進角によるトルク増大を補償するためのトルク補正(主燃焼用噴射量の減量補正)を行う。
ステップS106では、排気空燃比を目標値に制御した時間tが基準時間tDPFreg1だけ経過したか否かを判定する。
基準時間tDPFreg1を経過したと判断した場合には、DPF再生が終了したものと判断して、ステップS107へ進む。
前記ステップS107では、分割リタード燃焼による運転を通常燃焼による運転に切り替えて、DPF14の加熱を停止させ、目標空燃比を通常値に戻す。
ステップS108では、前記regフラグを0にする。
ステップS109では、溶損防止モードのrecフラグに1をセットし、DPF14で燃え残りの微粒子PMが一気に燃えてDPF14が溶損することを防止する。
一方、ステップS106で、基準時間tDPFreg1を経過していないと判断した場合には、DPF再生を継続させるべく、ステップS107〜ステップS109を迂回して本ルーチンを終了させる。
次に、前記ステップS7で、desulフラグ=1と判定されたときの硫黄被毒解除処理を、図8のフローチャートに従って詳細に説明する。
ステップS201では、硫黄被毒解除要求がなされたことに基づいて、分割リタード燃焼に切り替える。
ステップS202では、硫黄被毒解除のために空燃比をストイキ(理論空燃比)に制御する。
前記空燃比の制御は、DPF再生時と同様に、吸気絞り弁6や排気還流制御弁19による新気量,排気還流量の調整で行われる。
ステップS203では、前記ステップS103と同様に、圧縮端温度の制御を行う。
ステップS204では、NOxトラップ触媒13の温度が所定温度T4より高いか否かを判定する。
例えば、NOxトラップ触媒13としてBa系のNOxトラップ触媒を使った場合には、リッチ〜ストイキ雰囲気でNOxトラップ触媒13の温度を600℃より高くする必要があることから、所定温度T4は600℃以上に設定される。
触媒温度が所定温度T4より高い場合には、ステップS205へ進む。
一方、触媒温度が所定温度T4以下場合には、ステップS211へ進む。
ステップS211へ進んだ場合、図7のフローチャートのステップS111及びステップS112と同じ処理をする。
即ち、ステップS211では、NOxトラップ触媒13の温度が所定温度T4以下であるため、主燃焼の燃料噴射時期をリタード(遅角)して排気温度を上昇させる。
ステップS212では、リタードによるトルク減少を、主燃焼用の噴射量の増量で補う。
一方、ステップS205では、所定の時間tdesulだけ、ストイキ空燃比及び高排気温度での硫黄被毒解除が行われたか否か、即ち、硫黄被毒解除が完了したか否かを判定する。
硫黄被毒解除処理の時間tが所定の時間tdesulを超えた場合には、ステップS206へ進む。
一方、硫黄被毒解除処理の時間tが所定の時間tdesul以下であれば、硫黄被毒解除処理を継続させるべく、ステップS206〜ステップS210を迂回して本ルーチンを終了させる。
ステップS206では、硫黄被毒解除が終了したので、分割リタード燃焼によるストイキ運転を解除し、通常燃焼に戻す。
ステップS207では、溶損防止モードを実行させるべくrecフラグに1をセットする。
これにより、排気空燃比を急にリーンにすることでDPF14においてPMが一気に燃えてしまうことによるDPF14の溶損を防止する。
ステップS208では、desulフラグを0にし、次のステップS209では、NOxトラップ触媒13の硫黄堆積量を0にリセットにする。
ステップS210では、リッチスパイクの要求フラグであるrq−spフラグを0にする。
これは硫黄被毒解除を行うことで、NOxトラップ触媒13が長時間ストイキの空燃比に晒されることにより、同時にNOxの脱離・還元処理が行われるためである。
次に、リッチスパイクモード(NOxの脱離・還元処理)を、図9のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS301では、通常燃焼から分割リタード燃焼への切り替えを行う。
ステップS302では、空燃比を、リッチスパイクを行うための所定の目標空燃比(リッチ空燃比)に制御する。
ここで、吸入空気量を図23に示す目標吸気量に調整することで、前記目標空燃比を実現する。
これにより、NOxトラップ触媒13の雰囲気を一時的にリッチ(還元雰囲気)にして、NOxトラップ触媒13にトラップされていたNOxを脱離・還元処理する。
ステップS303では、前記ステップS103,ステップS203と同様に、圧縮端温度の制御を行う。
ステップS304では、リッチスパイク制御を行った時間tが所定の時間tspikeを超えたか否かを判定する。
リッチスパイク制御時間tが所定時間tspikeを超えると、ステップS305へ進む。
ステップS305では、スパイクフラグモードを示すspフラグを0にする。
一方、リッチスパイク制御時間tが所定時間tspikeを超えていない場合には、リッチスパイク制御を継続させるべく、ステップS305を迂回して本ルーチンを終了する。
次に、溶損防止モードを、図10のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS401では、DPF14の温度を検出する。
ステップS402では、DPF14の温度が所定温度T3未満であるか否かを判定することで、DPF温度が、微粒子PMの急激な酸化が開始することがない温度領域内であるか否かを判定する。
DPF14の温度が所定温度T3以上である場合には、ステップS405へ進む。
ステップS405では、排気温度を低くして、DPF14の温度を所定温度T3未満に低下させる必要があるので、吸気絞り弁6及び/又は排気還流制御弁19の制御によって空燃比を所定値以下に制御する。
一方、DPF14の温度が所定温度T3未満である場合には、溶損防止策は不要と判断し、ステップS403へ進む。
ステップS403では、前記ステップS405における空燃比制御を停止させ、次のステップS404では、前記recフラグを0にする。
次に、DPF再生要求時の処理を、図11のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS501では、NOxトラップ触媒13における硫黄堆積量が硫黄被毒解除の必要な所定量S1未満であるか否かを判定する。
硫黄堆積量が所定量S1未満である場合には、ステップS502へ進む。
一方、硫黄堆積量が所定量S1以上である場合には、図14のステップS801へ進んで、rq−desulフラグ(硫黄被毒解除要求フラグ)に1をセットする。
ステップS502では、リッチスパイク要求(NOxの脱離・還元処理要求)の有無をrq−spフラグに基づいて判定する。
rq−spフラグが0であってリッチスパイク要求(NOxの脱離・還元処理要求)がない場合には、ステップS503へ進む。
一方、rq−spフラグが1であってリッチスパイク要求(NOxの脱離・還元処理要求)がある場合には、ステップS506へ進む。
ステップS503では、NOxトラップ触媒13におけるNOx堆積量が、リッチスパイク(NOxの脱離・還元処理)の必要な所定量NOx1未満であるか否かを判定する。
NOx堆積量が所定量NOx1未満である場合には、ステップS504へ進む。
一方、NOx堆積量が所定量NOx1以上である場合には、図15のステップS901へ進んで、rq−spフラグに1をセットする。
ステップS504では、分割リタード燃焼によるDPF再生,硫黄被毒解除が可能な運転領域に、現在の運転条件が該当しているか否かを判定する。
現在のエンジン回転速度Ne及び負荷が、前記DPF再生,硫黄被毒解除可能領域内に該当する場合には、ステップS505へ進む。
ステップS505では、regフラグに1をセットすることで、DPF再生モードの処理が行われるようにする。
現在のエンジン回転速度Ne及び負荷が、前記DPF再生,硫黄被毒解除可能領域内に該当しない場合には、DPF再生が行えないので、ステップS505を迂回して本ルーチンを終了させる。
また、ステップS502からステップS506へ進んだ場合、即ち、DPF再生要求とNOx脱離・還元処理要求との両方が発生している場合には、現在の運転条件が、NOx排出量が少ない運転条件(例えば定常運転条件)であるか否かを判定する。
NOx排出量が多い運転条件である場合には、ステップS508へ進み、spフラグを1にすることで、DPF再生に対してNOx脱離・還元処理(リッチスパイク処理)を優先させる。
一方、NOx排出量が少ない運転条件である場合には、ステップS507へ進む。
ステップS507では、DPF14のベッド温度Tbedが所定温度T3より高いか否かを判定する。
DPF14のベッド温度Tbedが所定温度T3より高い場合には、ステップS504へ進み、運転条件がDPF再生可能領域に該当していれば、regフラグに1をセットする。
一方、DPF14のベッド温度Tbedが所定温度T3以下である場合には、ステップS508へ進んで、spフラグに1をセットする。
これは、DPF14のベッド温度Tbedが所定温度T3以下である場合には、昇温を開始しても、ベッド温度Tbedが再生可能温度に到達するまで時間がかかるので、NOxの脱離・還元処理を優先させるためである。
次に、硫黄被毒解除要求時の処理を、図12のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS601では、DPF14に堆積した微粒子PMの量が所定量PM1未満であるか否かを判定する。
PM堆積量が所定量PM1未満である場合には、ステップS602へ進む。
一方、PM堆積量が所定量PM1以上である場合には、図13のステップS701に進み、rq−DPFフラグを1にする。
ステップS602では、NOxトラップ触媒13のベッド温度Tbedが所定温度T1より高いか否かを判定する。
尚、前記所定温度T1は、硫黄被毒解除に適するNOxトラップ触媒13のベッド温度である。
そして、NOxトラップ触媒13のベッド温度Tbedが所定温度T1より高い場合には、ステップS603へ進む。
ステップS603では、前記分割リタード燃焼によるDPF再生,硫黄被毒解除の可能領域に、現在の運転条件が該当しているか否かを判定する。
現在の運転条件が前記再生可能領域内である場合には、ステップS604へ進み、desulフラグに1をセットして、硫黄被毒解除処理が行われるようにする。
一方、現在の運転条件が前記DPF再生,硫黄被毒解除の可能領域に該当しない場合には、ステップS604を迂回して本ルーチンを終了させる。
また、NOxトラップ触媒13のベッド温度Tbedが所定温度T1以下である場合には、ステップS605へ進む。
ステップS605では、リッチスパイク要求(NOx脱離・還元要求)の有無を、rq−spフラグに基づいて判定する。
リッチスパイク要求がない(rq−sp=0)場合には、ステップS606へ進む。
ステップS606では、NOx堆積量がNOxの脱離・還元処理を要する所定量NOx1未満であるか否かを判定する。
NOx堆積量が所定量NOx1未満である場合にはそのまま本ルーチンを終了させ、NOx堆積量が所定量NOx1以上である場合には、図15に示すステップS901においてrq−spフラグに1をセットし、NOx脱離・還元処理要求(リッチスパイク処理要求)を発生させる。
一方、ステップS605においてリッチスパイク要求がある(rq−sp=1)と判定された場合には、ステップS607へ進み、spフラグに1をセットし、NOxの脱離・還元処理を行わせるようにする。
次に、前記分割リタード燃焼を活用してNOxトラップ触媒13を早期に活性化させる処理を、図16のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS1001では、NOxトラップ触媒13の暖機を促進させる運転が可能であるか否かを判定する。
即ち、前記分割リタード燃焼によりNOxトラップ触媒13の暖機促進を図るので、前記ステップS1001では、前記分割リタード燃焼による運転が可能な運転条件であるか否かを判定する。
分割リタード燃焼による運転によってNOxトラップ触媒13の暖機促進を図ることができる条件であれば、ステップS1002へ進み、通常の燃焼モードから前記分割リタード燃焼へ切り替える。
前記分割リタード燃焼では、主燃焼の時期を大きくリタードさせることができ、これによって排気温度の上昇が図られ、NOxトラップ触媒13の暖機が促進される。
ステップS1003では、NOxトラップ触媒13の温度が活性温度T5より高くなったか否かを判定する。
そして、NOxトラップ触媒13の温度が活性温度T5より高くなると、ステップS1004へ進み、分割リタード燃焼から通常燃焼モードに戻すことで、NOxトラップ触媒13の暖機を促進する処理を解除する。
次に、前記ステップS103,ステップS203,ステップS303に共通の圧縮端温度の制御を、図24,図25のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
ステップS1011では、下限目標圧縮端温度Ta0を、前記ステップS1で検出したエンジンの運転状態に基づいて決定する。
ここでは、エンジン回転数(rpm)及びエンジン負荷と下限目標圧縮端温度Ta0との関係を予め記憶したマップから、そのときのエンジン回転数(rpm)及びエンジン負荷に対応する下限目標圧縮端温度Ta0を検索する。
前記下限目標圧縮端温度Ta0は、エンジン1で実験を行って失火が生じない圧縮端温度を回転速度・負荷の条件毎に求め、これをマップに記憶させたものである。
ステップS1012では、上限目標圧縮端温度Tb0を、前記ステップS1で検出したエンジンの運転状態に基づいて決定する。
ここでは、エンジン回転数(rpm)及びエンジン負荷と上限目標圧縮端温度Tb0との関係を予め記憶したマップから、そのときのエンジン回転数(rpm)及びエンジン負荷に対応する上限目標圧縮端温度Tb0を検索する。
前記上限目標圧縮端温度Tb0は、エンジン1で実験を行ってスモークが所定量を超えない圧縮端温度を回転速度・負荷の条件毎に求め、これをマップに記憶させたものである。
ステップS103では、燃料性状として、燃料(軽油)のセタン価を検出する。
前記セタン価の検出は、例えば特願2003−031832号のようにして行われる。
まず、エアフロメータ7によって検出される吸入空気流量Qairと、空燃比センサ16で検出される実空燃比AFrealとから、実燃料供給重量Gmainを求める。
次いで、前記実燃料供給重量Gmainと燃料噴射弁10による実際の燃料噴射量(燃料供給量)Qmainとに基づいて実比重G fuelを求める。
そして、上記の実比重Gfuelと燃料温度TFとから標準比重(基準温度、例えば標準温度20℃での比重)Gstdを求め、該標準比重Gstdをパラメータとして、軽油のセタン価を求める。
ステップS1014では、ステップS1013で検出したセタン価に基づいて、図26のマップから、下限目標圧縮端温度Ta0の補正係数Ta1を求める。
燃料のセタン価が低いほど着火遅れ期間が長くなり、失火しやすくなるため、セタン価の低い燃料ほど、前記補正係数Ta1をより大きく設定し、下限目標圧縮端温度Ta0がより高く補正されるようにする。
ステップS1015では、ステップS1013で検出したセタン価に基づいて、図27のマップから上限目標圧縮端温度Tb0の補正係数Tb1を求める。
燃料のセタン価が高いときは着火遅れ期間が短くなるため、スモークが悪化する傾向にある。
そのため、セタン価の高い燃料ほど補正係数Tb1をより小さく設定し、上限目標圧縮端温度Tb0がより低く補正されるようにする。
ステップS1016では、ステップS102、ステップS202、ステップS302で設定される目標空気過剰率λに応じて、図28のマップから下限目標圧縮端温度Ta0の補正係数Tb2を求める。
目標空気過剰率λが小さいと(目標空燃比がリッチであると)、筒内の作動ガス量が減少制御される結果、圧縮端温度が低下傾向となって着火性が悪くなるため、失火しやすくなる。
そこで、目標空気過剰率λが小さいほど補正係数Ta2をより大きく設定し、下限目標圧縮端温度Ta0がより高く補正されるようにする。
ステップS1017では、ステップS1011で求めた下限目標圧縮端温度Ta0に、ステップS1014で求めた補正係数Ta1とステップS1016で求めた補正係数Ta2を乗じて、下限目標圧縮端温度TAを求める。
TA=Ta0×Ta1×Ta2
ステップS1018では、ステップS1012で求めた上限目標圧縮端温度Tb0に、ステップS1015で求めた補正係数Tb1を乗じて上限目標圧縮端温度TBを求める。
TB=Tb0×Tb1
ステップS1019では、実圧縮端温度Tを検出する。
前記実圧縮端温度Tは、排気還流によるガス組成の変化に対応した比熱比kと、実圧縮比εと、吸気温度Tintとから、
T=Tint×ε(k-1)
として算出することができる。
ここで、吸入ガスの酸素濃度DO2intが低くなるのに伴って、排気還流によるCO2、H2Oの濃度が高いことにより、吸入ガスの比熱比kが低下することになるため、前記比熱比kに相関するパラメータとして吸入ガスの酸素濃度DO2intを求め、該吸入ガスの酸素濃度DO2int,吸気温度Tint,実圧縮比εから、圧縮端温度Tを求めることが可能である。
前記吸入ガスの酸素濃度DO2intは、下式に基づいて算出することができる。
DO2int=(0.21×Qair+DO2EGR×QEGR)/(Qair+QEGR)
上式で、Qairは吸入新気量、QEGRは排気還流量、DO2EGRは還流排気における酸素濃度である。
前記排気還流量QEGRは、吸気圧力Pintと排気圧力Pexhの差、及び、排気還流制御弁19のリフトLから求めることができる。
また、還流排気における酸素濃度DO2EGRは、下式に基づいて算出される。
DO2EGR=0.21−C1×Qf/(Qair/Ne)
上式で、C1は定数、Qfは燃料噴射量、Neはエンジン回転数(rpm)である。
ステップS1021では、ステップS1017で決定した下限目標圧縮端温度TAとステップS1019で検出した実圧縮端温度Tとを比較する。
TA≦Tの場合は、ステップS1022へ進み、TA>Tの場合は、ステップS1023へ進む。
ステップS1023へ進んだ場合には、ステップS1019で検出された圧縮端温度Tが下限目標圧縮端温度TAよりも低いので、下限目標圧縮端温度TAよりも実際の圧縮端温度Tが高くなるように、排気還流量(EGR量)を増やして吸気温を高める制御を行う。
また、排気還流量を増やすことで不活性ガスが増し、これにより空気過剰率が小さくなるから(リッチになるから)、排気還流量(EGR量)を増やす制御と並行して、目標空気過剰率を維持すべく吸入新気量を増やす制御(吸気絞り弁の開制御,過給圧増大制御)が行われ、これによっても圧縮端温度の上昇が図られる。
但し、新気量増加には、過給機性能などによる限界があるため、排気還流量による圧縮端温度の補正に制限を設けるため、最大排気還流量をエンジン回転数及び負荷とに基づいてマップから決定する。
尚、前記最大排気還流量マップは、エンジン回転数及び負荷と最大排気還流量との関係を2次元マップ化したものであり、予めECU25のROMに記憶しておく。
最大排気還流量は、スモーク排出量の大幅な悪化が伴わない排気還流量を、エンジン1での実験結果などからエンジンの運転状態に応じて求められる。
そして、ステップS1024では、前記最大排気還流量以下の範囲内で排気還流量を増やすことで、圧縮端温度Tを下限目標圧縮端温度TA以上に制御できるか否か、換言すれば、排気還流量が前記最大排気還流量に達しているか否かを判断する。
ここで、排気還流量が前記最大排気還流量に達していて、排気還流量を最大排気還流量に制御しても、圧縮端温度Tを下限目標圧縮端温度TA以上に制御できない場合には、ステップS1025に進み、前記可変圧縮比機構31により圧縮比を増大変化させて圧縮端温度を増大制御する。
一方、前記最大排気還流量以下の範囲内で排気還流量を増やすことで、圧縮端温度Tを下限目標圧縮端温度TA以上に制御できる場合には、ステップS1022へ進む。
ステップS1025では、圧縮端温度Tを目標圧縮端温度に制御するため前記可変圧縮比機構31により圧縮比を変更する。
圧縮比εの目標値は次式に基づいて算出される。
ε=(T/T0)1/(n-1)
上式で、Tは目標圧縮端温度、T0は圧縮前筒内温度、nはポリトロープ指数である。
ここで、目標圧縮端温度Tは、前記下限目標圧縮端温度TAと上限目標圧縮端温度TBとの間の値、例えば、両者の中間値である。
圧縮前筒内温度T0は、吸気温度センサ29の信号に基づいて求める。
ポリトロープ指数nは、ステップ1019で求めた吸入ガスの酸素濃度DO2intに基づいて、図29のマップにより求める。
ステップS1022では、ステップS1018で決定した上限目標圧縮端温度TBとステップS1019で検出した圧縮端温度Tとを比較する。
TB≧Tの場合は、圧縮端温度Tが要求範囲内に制御されていることになるから、そのまま本ルーチンを終了させる。
一方、TB≦Tであった場合は、ステップS1026に進む。
ステップS1026では、ステップS1019で検出された圧縮端温度Tが上限目標圧縮端温度TBよりも高いので、上限目標圧縮端温度TBよりも低くなるように、排気還流量(EGR量)を減らして吸気温を低下させる制御を行う。
尚、排気還流量を減らすことで、空気過剰率が大きくなる(リーンになる)ため、排気還流量を減らす制御と並行して、目標空気過剰率を維持すべく吸入新気量を減らす制御(吸気絞り弁の閉制御,過給圧減少制御)が行われ、これによっても圧縮端温度の低下が図られる。
但し、排気還流量を大きく減らすと、予混合燃焼割合が減ってしまうなどの問題が生じるので、排気還流量の減少補正に制限を設けるため、最小排気還流量をエンジン回転数及び負荷に基づいてマップから決定する。
尚、前記最小排気還流量のマップは、エンジン回転数及び負荷と最小排気還流量との関係を2次元マップ化したものであり、予めECU25のROMに記憶しておく。
前記最小排気還流量は、失火が生じない排気還流量を、エンジン1での実験結果などから、エンジンの運転状態に応じて求められる。
ステップS1027では、排気還流量を前記最小排気還流量以上の範囲で制御することで圧縮端温度Tを上限目標圧縮端温度TB以下に制御することが可能であるか否かを判別する。
そして、排気還流量が最小排気還流量に達した状態でも、圧縮端温度Tが上限目標圧縮端温度TBよりも高い場合は、ステップS1025に進み、可変圧縮比機構31により圧縮比を減少制御することで圧縮端温度の低下を図る。
一方、排気還流量が最小排気還流量に達する前に、TB≧Tになった場合は、そのまま本ルーチンを終了させる。
尚、前記可変圧縮比機構31を用いて圧縮比を変更する以外に、可変バルブタイミング装置を用い、バルブタイミングを変更することで、圧縮比を変更することも可能である。
実施形態における内燃機関の燃焼制御装置のシステム構成図。 実施形態における分割リタード燃焼(再生用の燃焼モード)の噴射パターン及び燃焼パターンを示す図。 実施形態における分割リタード燃焼の主燃焼時期に対する排気ガスの状態を示す図。 実施形態における分割リタード燃焼の主燃焼のための噴射時期の特性を示す図。 実施形態における分割リタード燃焼の噴射パターン及び燃焼パターンを示す図。 実施形態における再生制御のメインルーチンを示すフローチャート。 実施形態におけるDPF再生処理を示すフローチャート。 実施形態における硫黄被毒解除処理を示すフローチャート。 実施形態におけるリッチスパイク処理を示すフローチャート。 実施形態における溶損防止モードを示すフローチャート。 実施形態におけるDPF再生要求時の再生処理の決定を示すフローチャート。 実施形態における硫黄被毒解除要求時の再生処理の決定を示すフローチャート。 実施形態におけるDPF再生要求の設定を示すフローチャート。 実施形態における硫黄被毒解除要求の設定を示すフローチャート。 実施形態におけるリッチスパイク要求の設定を示すフローチャート。 実施形態におけるNOxトラップ触媒の活性化を促進する制御を示すフローチャート。 実施形態における燃焼モードの切り替え制御を示すフローチャート。 実施形態における分割リタード燃焼の予備燃焼のための目標噴射量の特性を示す図。 実施形態における分割リタード燃焼の予備燃焼のための目標噴射時期の特性を示す図。 実施形態における分割リタード燃焼の主燃焼のための噴射時期とトルク補正係数との相関を示す図。 実施形態における微粒子PM堆積量とDPF再生時の目標空燃比との相関を示す図。 実施形態における分割リタード燃焼の目標空燃比と主燃焼用噴射量の補正係数との相関を示す図。 実施形態におけるリッチスパイクにおける目標吸入空気量の特性を示す図。 実施形態における圧縮端温度制御を示すフローチャート。 実施形態における圧縮端温度制御を示すフローチャート。 実施形態におけるセタン価と下限目標圧縮端温度の補正係数Ta1との相関を示す線図。 実施形態におけるセタン価と上限目標圧縮端温度の補正係数Tb1との相関を示す線図。 実施形態における空気過剰率λと下限目標圧縮端温度の補正係数Ta2との相関を示す線図。 実施形態における吸入ガスの酸素濃度とポリトロープ指数との相関を示す線図。 実施形態における可変圧縮比機構を示す斜視図。
符号の説明
1…エンジン,2…吸気通路,6…吸気絞り弁,8…燃料噴射ポンプ,9…コモンレール,10…燃料噴射弁,11…排気還流通路,12…排気通路,13…NOxトラップ触媒,14…DPF,16…空燃比センサ,17…排気圧力センサ,19…排気還流制御弁,20…クランク角センサ,21…アクセル開度センサ,22…触媒温度センサ,23…DPF温度センサ,24…燃料圧力センサ,25…ECU,26…吸気圧力センサ,28…燃料温度センサ,29…吸気温度センサ,31…可変圧縮比機構

Claims (10)

  1. 少なくとも上死点近傍で1回行われる予備燃焼と、該予備燃焼が全て終了した後に開始され主トルクを発生させる主燃焼とからなる燃焼モードでの運転を行う構成であって、
    前記燃焼モードによる運転時に、圧縮端温度の目標値を設定すると共に、実際の圧縮端温度を検知し、前記実際の圧縮端温度を前記目標値に制御することを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。
  2. 前記内燃機関の排気系に排気浄化装置を備え、前記排気浄化装置の状態に基づいて排気温度の上昇要求及び/又は理論空燃比以下のリッチ運転要求があったときに、通常燃焼モードから前記燃焼モードに切り替えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃焼制御装置。
  3. 前記圧縮端温度の目標値の下限値が、前記予備燃焼のために噴射された燃料が上死点の近傍で着火できる温度に設定され、前記圧縮端温度の目標値の上限値が、前記主燃焼によるスモークの発生量が所定量を超えない温度に設定されることを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の燃焼制御装置。
  4. 前記圧縮端温度の目標値を、機関回転速度と機関負荷に応じて設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の内燃機関の燃焼制御装置。
  5. 前記圧縮端温度の目標値を、空気過剰率に応じて設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の内燃機関の燃焼制御装置。
  6. 前記圧縮端温度の目標値を、燃料の性状に応じて設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の内燃機関の燃焼制御装置。
  7. 前記内燃機関の吸入新気量及び/又は排気還流量を制御することにより、前記実際の圧縮端温度を前記目標値に制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の内燃機関の燃焼制御装置。
  8. 前記内燃機関が可変圧縮比機構を備え、該可変圧縮比機構によって圧縮比を制御することにより、前記実際の圧縮端温度を前記目標値に制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の内燃機関の燃焼制御装置。
  9. 前記予備燃焼の燃焼開始時期と前記主燃焼の燃焼開始時期との間隔を、クランク角度で20°以上に制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の内燃機関の燃焼制御装置。
  10. 前記主燃焼の終了時期を、圧縮上死点からクランク角度で50°以降に制御することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の内燃機関の燃焼制御装置。
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