JP2005044937A - 固体撮像デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】開口部3を有するパッケージ2と、パッケージ2内に開口部3と対向して固定されている固体撮像素子4と、開口部3を閉塞している板状の光学ローパスフィルタ110とを備え、光学ローパスフィルタ110が、第1複屈折板111と、第2複屈折板112と、これらの第1複屈折板111と第2複屈折板112に挟まれ、入射する光の波長が大きくなるに従って複屈折率が大きくなる波長分散特性を有する1/4波長板としての高分子フィルム113とを有する構造とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体撮像デバイスに関し、特に、パッケージに固体撮像素子と光学ローパスフィルタを組み込んだ固体撮像デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラの小型化、薄型化が急激に進行している。これらのイメージセンサとして用いられるCCDやCMOS等の固体固体撮像素子は、ゴミが付着することを防止するため、パッケージ内に封入されて固体撮像デバイスとして用いられることが多い。小型化、薄型化の要請に伴って固体撮像デバイスも小型化、薄型化の要請が大きい。
【0003】
固体撮像デバイスのパッケージには固体撮像素子に入射光を通すと共に、パッケージを密封するシーリングガラスが組み込まれている。デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラでは、画像のモアレを防止するために空間周波数の高域成分を抑制する光学ローパスフィルタが組み込まれている。
【0004】
小型化、薄型化、部品点数の削減のために、光学ローパスフィルタをシーリングガラスとしたり、あるいは光学ローパスフィルタをシーリングガラスに接着することによって固定撮像デバイスに組み込むことが、例えば次の特許文献で提案されている。
【特許文献1】
特開昭60−66201号公報
【特許文献2】
特開2003−68908
【特許文献3】
特開2002−373977
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来、固体撮像デバイスに組み込まれた光学ローパスフィルタには次のような問題点があった。まず、入射光を4点分離できる高性能な光学ローパスフィルタは、複屈折板として用いられる比較的厚い水晶板を3枚必要とするため、非常に厚くなり、固体撮像デバイスに組み込むことが困難である。たとえ組み込めたとしても固体撮像デバイスが厚くなってしまい、薄型化の要請には不十分である。一方、水晶板を一枚用いる光学ローパスフィルタは、薄く、固定撮像素子デバイスに容易に組み込めるが、入射光を常光線と異常光線の2点に分離できるだけであり、一方向の疑似信号の除去にしか有効でなく、モアレ防止性能が劣るという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、薄型化が可能な高性能な光学ローパスフィルタが組み込まれた固体撮像デバイスを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、第1に、開口部を有するパッケージと、前記パッケージ内に前記開口部と対向して固定されている固体撮像素子と、前記開口部を閉塞している板状の光学ローパスフィルタとを備え、前記光学ローパスフィルタが、第1複屈折板と、第2複屈折板と、これらの第1複屈折板と第2複屈折板に挟まれた1/4波長板としての高分子フィルムとを有することを特徴とする固体撮像デバイスを提供する。
【0008】
開口部を有するパッケージのその開口部を閉塞するシーリングガラスを光学ローパスフィルタとしているため、部品点数を削減できる。また、従来の複屈折板が3枚構成の光学的ローパスフィルタの中間の複屈折板を高分子フィルムとした構造の光学ローパスフィルタを用いている。この光学ローパスフィルタは、4点分離で高性能である。また、この光学ローパスフィルタは、水晶などの複屈折板2枚と薄い高分子フィルムの合計の厚さであり、従来の複屈折板が3枚構成の光学ローパスフィルタと比較して薄いため、パッケージの開口部を閉塞する用途に用いることができ、固体撮像デバイスの薄型化に寄与することができる。
【0009】
本発明は、第2に、上記第1の固体撮像デバイスにおいて、前記高分子フィルムが、入射する光の波長が大きくなるに従って複屈折率が大きくなる波長分散特性を有することを特徴とする固体撮像デバイスを提供する。
【0010】
1/4波長板としての高分子フィルムが、入射する光の波長が大きくなるに従って複屈折率が大きくなる波長分散特性を有することにより、広い波長範囲で直線偏光を円偏光に変換する機能を有するため、従来の複屈折板が3枚構成の光学的ローパスフィルタよりも高性能である。
【0011】
本発明は、第3に、上記第1の固体撮像デバイスにおいて、前記高分子フィルムが、一軸延伸した高分子フィルムであることを特徴とする固体撮像デバイスを提供する。
【0012】
1/4波長板としての高分子フィルムは、一軸延伸した高分子フィルムで構成することができる。この構成によれば、比較的厚い水晶板の使用枚数を減らすことができ、入射光を4点分離できる高性能で且つ薄型である光学ローパスフィルタを得ることができる。
【0013】
本発明は、第4に、上記第1の固体撮像デバイスにおいて、前記第1複屈折板と前記第2複屈折板のうち少なくとも1枚が水晶板であることを特徴とする固体撮像デバイスを提供する。
【0014】
第1複屈折板と第2複屈折板のうち、少なくとも一枚が水晶板を用いるという構成により、光学フィルタ特性に優れた光学ローパスフィルタを安価に大量生産することができる。
【0015】
本発明は、第5に、上記第1の固体撮像デバイスにおいて、前記光学ローパスフィルタの一面側に誘電体多層膜で構成される赤外カットフィルタを有することを特徴とする固体撮像デバイスを提供する。
【0016】
光学ローパスフィルタに誘電体多層膜で構成される赤外カットフィルタを形成することによって、部品としての赤外カットフィルタを削減することができる。
【0017】
本発明は、第6に、上記第5の固体撮像デバイスにおいて、前記赤外カットフィルタが、500〜600nmの波長領域で90%以上の平均透過率、半値が600〜700nm、750〜1000nmの波長領域で10%以下の平均透過率、透過率が90%から10%へ減少するときの波長幅が40nm以上100nm以下の分光透過率を備えることを特徴とする固体撮像デバイスを提供する。
【0018】
赤外カットフィルタとして、透過波長域から不透過波長域へ変化する傾斜を緩やかな分光透過率とすることにより、有害な近赤外線をカットする機能はそのままで可視光領域で人間の眼の網膜の感度に近い分光透過率とすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の固体撮像デバイスの実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の固体撮像デバイスの一実施形態を示す断面図である。この固体撮像デバイス1は、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等に用いられ、光学像を電気信号に変換する固体イメージセンサである。固体撮像デバイス1は、セラミックや樹脂等の絶縁性の素材で構成される凹型のパッケージ2を有し、このパッケージ2は図示しない光学系で集光された光が入射する開口部3を備える。パッケージ2の内部の底面中央には、CCDやCMOS等の固体撮像素子4が開口部3と対向して接着剤で固定されている。固体撮像素子4は、複数の画素が二次元状に配列されている。パッケージ2の内部と外部を接続する外部接続配線5がパッケージ2の側壁を貫通して設けられ、固体撮像素子4と外部接続配線5とはボンディングワイヤ6を介して電気的に接続されている。パッケージ2の開口部3の内周壁には段差部7が設けられ、この段差部7に対して光学ローパスフィルタ部材100が装着されている。光学ローパスフィルタ部材100と段差部7との間に介在する封止剤8により光学ローパスフィルタ部材100がシーリングガラスとして開口部3を閉塞し、パッケージ2は密封され、ゴミの進入が防止されている。
【0021】
光学ローパスフィルタ部材100は、板状の光学ローパスフィルタ110の外面側に誘電体多層膜で構成される赤外カットフィルタ120が設けられ、内面側に反射防止膜130が設けられている。赤外カットフィルタ120を光学的ローパスフィルタに設けることによって、赤外線吸収板のような独立した部品としての赤外カットフィルタが不要になり、部品点数を削減することができる。また、反射防止膜130を設けることによって、内面の反射を抑制し、光学的ローパスフィルタ部材100の光透過性を高め、固体撮像素子4に入射する光線量を増加させることができる。赤外カットフィルタ120と反射防止膜130は省略することが可能であり、光学ローパスフィルタ110の外面側に反射防止膜130を、内面側に赤外カットフィルタ120を設けることも可能である。
【0022】
光学ローパスフィルタ110は、第1複屈折板111と第2複屈折板112の間に1/4波長板として機能する高分子フィルム113が挟まれた構造を有する。第1複屈折板111と第2複屈折板112は、水晶、ニオブ酸リチウム等の複屈折性を有する結晶板であり、水晶板のみを双方に用いる場合や、水晶とニオブ酸リチウムの組み合わせ、あるいは他の複屈折板等の異なる材料種を組み合わせて用いてもよい。複屈折とは、入射した光が、互いに垂直な振動方向を持つ二つの光に分離する現象を言う。高分子フィルム113は、一軸延伸法によって形成されたプラスチックフィルムで構成され、複屈折性を考慮してフィルム厚を適宜選定することにより1/4波長板として機能する。1/4波長板は、通った光の常光線成分と異常光線成分の間の位相が四分の一サイクルずれるような厚さにしたシートであり、平面偏光を円偏光に変換する機能を有する。
【0023】
図2を参照してこの光学ローパスフィルタ110の機能を説明する。光入射側に配置された第1複屈折板111は、光入射面と直交し、かつ紙面と平行な面(x−z平面)において、z軸と約45゜の方位角をなす方向(矢印A1)に光学軸を有する。第1複屈折板111に入射した光Lは、2つの光線L11とL21に分離されて出射し、これらの偏光状態が直線偏光に変化する。
【0024】
1/4波長板113は、光入射面(x−y平面)において、x軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A2)に光学軸を有する。1/4波長板に入射した光線L11とL21は、それぞれ直線偏光から円偏光に偏光状態が変えられ、それぞれ光線L12とL22となって出射する。
【0025】
第2複屈折板112は、光入射面と直交し、かつ紙面と直交する面(y−z平面)において、y軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A3)に光学軸を有する。この第2複屈折板112に入射した円偏光の光線L12は、2つの光線L1とL2に分離され、円偏光の光線L22は、2つの光線L3とL4に分離する。これらのL1,L2,L3,L4の偏光状態は直線偏光である。
【0026】
このように、この光学ローパスフィルタ110は、入射光線を4点分離できる高性能なローパスフィルタである。
【0027】
図3に、高分子フィルム113の複屈折率差Δnの波長分散特性を示すグラフを示す。ここで、複屈折率差とは、常光線に対応する屈折率noと異常光線に対応する屈折率neの差の絶対値|no−ne|をいう。
【0028】
1/4波長板としての高分子フィルム113は、少なくとも可視光の範囲内において、入射光の波長λが大きくなるにつれて複屈折率差Δnが大きくなる波長分散特性を有する。このような波長分散特性を有する1/4波長板を用いることにより、直線偏光を円偏光に変化する1/4波長板としての機能が広い波長領域において実現することができる。従来の1/4波長板では、厳密には、特定の波長以外の場合には1/4波長板としての性能が得られない。入射光の波長λが大きくなるにつれて複屈折率差Δnが大きくなる波長分散特性を有する1/4波長板は、入射光線を均一に4点分離することができ、高い空間周波数成分を除去することによって疑似信号を除去し、水平線がギザギザに見えたり、白黒の格子縞に色が付く現象を効果的に抑制することができる。
【0029】
このように、本発明の固体撮像デバイス1に用いられる光学ローパスフィルタ110は、4点分離である上、従来の水晶板を3枚用いる光学ローパスフィルタよりも高性能である。また、厚さは、複屈折板111,112が2枚と薄い高分子フィルム113の合計の厚さであり、従来の水晶板を3枚用いる4点分離の高性能な光学ローパスフィルタと比較して概ね厚さが2/3になる。複屈折板として一般的に用いられる水晶板は比較的厚いため、複屈折板の一枚分の厚さの削減は、固体撮像デバイスの薄型化に寄与できる。特に、固体撮像素子の面積が大きくなり、光学ローパスフィルタの面積が大きくなって、光学ローパスフィルタを強度的に厚くしなければならないときには、特に有効である。
【0030】
封止剤8は、熱硬化性や紫外線硬化性の各種のエポキシ樹脂、シリコン樹脂等の接着剤が用いられる。作業性の点から紫外線硬化性の接着剤が一般的に用いられる。
【0031】
図1に示す固体撮像デバイス1の光学的ローパスフィルタ部材100は、段差部7に収まり、光学的ローパスフィルタ部材100の側面はパッケージ2で覆われているため、側面からの入射光を防止するための遮光部材を必要としない。光学的ローパスフィルタ部材100の側面を露出させるときには、側面を遮光する遮光部材を用いる場合がある。
【0032】
誘電体多層膜で構成される赤外カットフィルタ120は、TiO2、Nb2O5、Ta2O5等の高屈折率の誘電体からなる高屈折率層とSiO2、MgF2等の低屈折率の誘電体層からなる低屈折率層が交互に数層から数十層積層されている構造を有する。
【0033】
図4に赤外カットフィルタの分光特性を示す。図4には、実線Aで示される分光特性を有する赤外カットフィルタと、破線Bで示される分光特性を有する赤外カットフィルタが示されている。
【0034】
実線Aで示される分光特性と破線Bで示される分光特性を比較すると、500〜600nmの可視光領域で、90%以上、好ましくは95%以上の透過率を示し、半値が600〜700nmであり、図4ではほぼ650nmで、750〜1000nmの赤外領域では10%以下、好ましくは5%以下でほとんど遮断できる共通点を有するが、実線Aで示される分光特性は、650nm近傍の立ち下がり特性が破線Bで示される分光特性と比較して傾斜が緩くなっている。具体的には、透過率が90%から10%へ減少するときの波長幅が40nm以上、、好ましくは50nm以上、最も好ましくは60nm以上で100nm以下の緩やかな傾斜の立ち下がり特性を備える。破線Bで示す赤外カットフィルタの立ち下がり特性は、透過率が90%から10%へ減少するときの波長幅が約10nmであり、急峻である。
【0035】
実線Aの分光特性は、半値近傍における透過波長域から不透過波長域へ変化する立ち下がり特性を緩くしたもので、可視光の長波長側を弱くして、実際の眼の感度を示す視感スペクトル感度に近い分光透過率を有する。そのため、固体撮像素子に入射する光線から近赤外線をカットすると共に、可視光の長波長側を弱くして、実際の眼の感度を示す視感スペクトル感度に近い光線を固体撮像素子に入射させることができる。これにより、CCD等で受光した画像信号の分光分布を人間の眼の感度に近い分光分布に変換することを行っている画像処理を簡略化でき、低コストとすることができると共に画像処理速度を高速化することができる。
【0036】
実線Aで示される分光特性を有する赤外カットフィルタは、例えば、次のような構造を有する。高屈折率層(H)がTa2O5、低屈折率層(L)がSiO2である。膜厚構成は、(1H、1L)Sのように表される。ここで、カットしたい波長の中心近くの波長を設計波長λとして、高屈折率層(H)の膜厚を光学的膜厚nd=1/4λの値を1Hとして表記し、低屈折率層(L)を同様に1Lとする。Sはスタック数と呼ばれる繰り返しの回数で、括弧内の構成を周期的に繰り返すことを表している。
【0037】
設計波長λ=755nm、基板側から1.17H、1.13L、1.01H、1.05L、(0.95H、0.99L)4、1.02H、1.11L、1.11H、1.12L、1.04H、1.05L、1.03H、1.12L、(1.18H、1.22L)2、(1.25H、1.28L)2、1.29H、(1.34L、1.33H)3、1.33L、1.28H、1.24L、1.16H、0.59Lの40層である。
【0038】
実線Bで示される分光特性を有する赤外カットフィルタは、例えば次のような膜厚構造を有する。高屈折率層(H)がTa2O5、低屈折率層(L)がSiO2であり、設計波長λ=755nm、基板側から1.141H、1.088L、1.03H、1.01L、(0.994H、0.994L)6、1.024H、1.077L、1.309H、0.175L、1.368H、1.241L、1.273H、1.277L、(1.275H、1.276L)6、1.257H、1.278L、1.254H、0.626Lの40層である。
【0039】
高屈折率層と低屈折率層とを交互に基板上に成膜するには、物理的成膜法が一般的であり、通常の真空蒸着法でも可能であるが、膜の屈折率の安定した制御が可能で、保管・仕様環境変化による分光特性の経時変化が少ない膜を作成できるイオンアシスト蒸着やイオンプレーティング法、スパッタリング法が望ましい。
【0040】
真空蒸着法は、高真空中で薄膜材料を加熱蒸発させ、この蒸発粒子を基板上に堆積させて薄膜を形成する方法である。イオンアシスト蒸着は、真空蒸着装置の中にイオンビーム発生装置とニュートライザーを備え、薄膜材料を気化させ、イオンビーム発生装置で不活性ガス又は酸素ガスをイオン化及び加速してイオンビームを基板に向けて出射すると共にニュートライザーでイオンビームを無帯電気体化しながら気化した薄膜材料を加速したり、基板上に付着した薄膜材料を撹拌(ミキシング)することにより活性化して蒸着させる方法である。イオンプレーティング法は、蒸着粒子をイオン化し、電界により加速して基板に付着させたり、ガスイオンで基板上を活性化させながら成膜する方法であり、APS(Advanced Plasma Source)、EBEP(Electron Beam Excited Plasma)法、RF(Radio Frequency)直接基板印加法(成膜室内に高周波ガスプラズマを発生させた状態で反応性の真空蒸着を行う方法)などの方式がある。スパッタリング法は、電界により加速したイオンを薄膜材料に衝突させて薄膜材料を叩き出すスパッタリングにより薄膜材料を蒸発させ、蒸発粒子を基板上に堆積させる薄膜形成方法である。
【0041】
複屈折板111,112の間に高分子フィルム113を挟んだ構造の光学ローパスフィルタ110では、高分子フィルム113の耐熱性が低いため、150℃程度が上限となる低温成膜を行う必要がある。
【0042】
低温成膜では、成膜時にイオンビームアシスト蒸着やイオンプレーティングを行うことで結晶が緻密で耐環境性に優れた膜を成膜することができる。材料によっては基板を加熱しない場合でも通常の蒸着(低温での)より優れた膜の強度や光学特性が得られるため、いずれかの方法を必要に応じて採用する。実際にTa2O5,TiO2については、低温での蒸着では膜が酸素不足状態となり光の吸収が生じてしまう問題があるので、酸素ガスによるイオンビームアシスト蒸着やイオンプレーティングを行うことが好ましい。低温成膜では、イオンビーム照射やプラズマにより基板の温度上昇が生じるため、必要最小限のパワーで済ませることが好ましい。
【0043】
Ta2O5,TiO2のイオンビームアシスト条件に関しては、酸素ガスをチャンバに導入して1×10−3Pa程度の真空度として、イオン電流密度20μA/cm2以下、加速電圧300V以下にする。通常の条件は、30μA/cm2以上、加速電圧も500V以上に設定する。
【0044】
同じくイオンプレーティングに関しては酸素ガスを使ったRFプラズマ方式において、1KW以下のRF出力とすることが好ましい。通常の条件では数kWかける。
【0045】
1×10−3Pa程度の真空度で0.5〜0.75kWのRF印加をすると膜の強度が実用上問題なく、吸収も少ない膜が得られる。成膜速度に関しては急速に成膜することにより、プラズマやイオンビームの作用が薄れて吸収が生じたりしないように0.1nm/s〜0.5nm/sの範囲で調節することが好ましい。
【0046】
蒸着時に、蒸発源からの輻射熱によって表面温度が上昇する問題もある。蒸発源と成膜面の距離を離すのが好ましい。
【0047】
一方、SiO2に関しては、プラスチック眼鏡レンズの蒸着に古くから使われているように、100℃以下の低温での通常蒸着でも実用上十分な膜強度と光学特性が得られるため通常の蒸着で成膜できる。
【0048】
赤外カットフィルタと共に形成される反射防止膜は、無機被膜、有機被膜の単層または多層で構成される。無機被膜と有機被膜との多層構造であってもよい。無機被膜の材質としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、Ta2O5、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3等の無機物が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。また、多層膜構成とした場合は、最外層はSiO2とすることが好ましい。
【0049】
無機被膜の多層膜としては、基材側からZrO2層とSiO2層の合計光学膜厚がλ/4,ZrO2層の光学的膜厚がλ/4、最上層のSiO2層の光学的膜厚がλ/4の4層構造を例示することができる。ここで、λは設計波長であり、通常520nmが用いられる。
【0050】
無機被膜の成膜方法は、例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を採用することができる。
【0051】
有機被膜の材質は、例えばFFP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)等を挙げることができ、基材の屈折率を考慮して選定される。成膜方法は、真空蒸着法の他、スピンコート法、ディップコート法などの量産性に優れた塗装方法で成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体撮像素子の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の固体撮像素子に用いられる光学ローパスフィルタの機能を説明する概念図である。
【図3】本発明の固体撮像素子に組み込まれる光学ローパスフィルタに用いられる1/4波長板としての高分子フィルムの複屈折率差Δnの波長分散特性を示すグラフである。
【図4】赤外カットフィルタの分光特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1:固体撮像デバイス、2:パッケージ、3:開口部、4:固体撮像素子、5:外部接続配線、6:ボンディングワイヤ、7:段差部、8:封止剤、100:光学ローパスフィルタ部材、110:光学ローパスフィルタ、111:第1複屈折板、112:第2複屈折板、113:高分子フィルム、120:赤外カットフィルタ、130:反射防止膜
Claims (6)
- 開口部を有するパッケージと、前記パッケージ内に前記開口部と対向して固定されている固体撮像素子と、前記開口部を閉塞している板状の光学ローパスフィルタとを備え、
前記光学ローパスフィルタが、第1複屈折板と、第2複屈折板と、これらの第1複屈折板と第2複屈折板に挟まれた1/4波長板としての高分子フィルムとを有することを特徴とする固体撮像デバイス。 - 請求項1記載の固体撮像デバイスにおいて、
前記高分子フィルムが、入射する光の波長が大きくなるに従って複屈折率が大きくなる波長分散特性を有することを特徴とする固体撮像デバイス。 - 請求項1記載の固体撮像デバイスにおいて、
前記高分子フィルムが、一軸延伸した高分子フィルムであることを特徴とする固体撮像デバイス。 - 請求項1記載の固体撮像デバイスにおいて、
前記第1複屈折板と前記第2複屈折板のうち少なくとも1枚が水晶板であることを特徴とする固体撮像デバイス。 - 請求項1記載の固体撮像デバイスにおいて、
前記光学ローパスフィルタの一面側に誘電体多層膜で構成される赤外カットフィルタを有することを特徴とする固体撮像デバイス。 - 請求項5記載の固体撮像デバイスにおいて、
前記赤外カットフィルタが、500〜600nmの波長領域で90%以上の平均透過率、半値が600〜700nm、750〜1000nmの波長領域で10%以下の平均透過率、透過率が90%から10%へ減少するときの波長幅が40nm以上100nm以下の分光透過率を備えることを特徴とする固体撮像デバイス。
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JP (1) | JP2005044937A (ja) |
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JP2006243674A (ja) * | 2005-03-07 | 2006-09-14 | Canon Inc | 光学素子及び光学機器 |
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-
2003
- 2003-07-25 JP JP2003201895A patent/JP2005044937A/ja not_active Withdrawn
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